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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021893
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】免震建物の増築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240208BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E04G23/02 J
E04H9/02 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125065
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長澤 剛哉
(72)【発明者】
【氏名】月田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】美田 武尊
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AD03
2E139CA02
2E139CC03
2E176AA01
2E176BB34
(57)【要約】
【課題】増築部の建設工事中に地震が発生しても、免震建物の構造安全性を迅速に確保できる、免震建物の増築方法を提供すること。
【解決手段】先行建物2に増築建物3を増築する免震建物の増築方法である。すなわち、増築建物3の新設免震装置50を設置して、新設免震装置50上に増築建物3の一部を構築するステップS2、S3と、増築建物3の残りのうち先行建物2との接合部以外の部分を構築するステップS4と、先行建物2と増築建物3との水平距離が免震クリアランスの管理基準値の範囲外である場合は、ジャッキ70により先行建物2と増築建物3との水平距離を免震クリアランスの管理基準値の範囲内とするステップS5と、増築建物3のうち免震層51の直上階および最上階を接合梁72により先行建物2に接合するステップS6と、増築建物3の残りの階を接合梁72により先行建物3に接合するステップS7と、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震構造の既存建物に、免震構造の増築部を増築する免震建物の増築方法であって、
前記既存建物に隣接して前記増築部の新設免震装置を設置して仮拘束し、この状態で、前記新設免震装置上に前記増築部の一部を構築する工程と、
前記新設免震装置の仮拘束を解除し、この状態で、前記増築部の残りのうち前記既存建物との接合部以外の部分を構築する工程と、
前記既存建物と前記増築部との水平距離を測定し、前記水平距離が免震クリアランスの管理基準値の範囲外である場合には、前記既存建物および前記増築部のうち少なくとも一方の免震層よりも上側の部分をジャッキにより水平移動させて、前記既存建物と前記増築部との水平距離を前記免震クリアランスの管理基準値の範囲内とする工程と、
前記増築部のうち前記免震層の直上階および最上階を接合手段により前記既存建物に接合する工程と、
前記増築部の残りの階を前記接合手段により前記既存建物に接合する工程と、を含むことを特徴とする免震建物の増築方法。
【請求項2】
前記増築部のうち前記既存建物との接合部以外の部分を構築する工程では、平面視で前記増築部のうち前記既存建物との接合部の近傍において、上階の床躯体を下階の床躯体から仮設支柱で支持するとともに、前記仮設支柱のうち免震層に配置されるものには、仮設免震支承を設けることを特徴とする請求項1に記載の免震建物の増築方法。
【請求項3】
前記既存建物および前記増築部のうち少なくとも一方の免震層よりも上側の部分をジャッキにより水平移動させる場合、前記ジャッキを、所定の免震装置の下側の躯体と前記所定の免震装置に隣接する免震装置の上側の躯体との間に配置して駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の免震建物の増築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震構造の既存建物に、免震構造の増築部を増築する免震建物の増築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、免震建物を増築することが行われている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、免震建物の増築方法が示されている。すなわち、まず、既存の免震建物に隣接する免震装置セット用基礎に免震装置を設置する。そして、免震装置上に第1建物基礎を設置し、この第1建物基礎上に第1上部躯体を施工して既存の免震建物と独立した増築免震建物を構築する。そして、既存の免震建物の建物基礎と第1建物基礎との間を第2建物基礎で接合し、第2建物基礎上に第2上部躯体を施工し、且つこの第2上部躯体を既存の免震建物の上部躯体及び増築免震建物の第1上部躯体に一体化する。
【0003】
特許文献2には、免震装置により免震支持してなる免震構造の建物を段階的に構築していくための増築方法が示されている。まず、免震装置により免震支持してなる免震建物としての先行建物を先行構築してその供用を開始する。その後、先行建物の周囲に確保しておいた増築スペースに、免震装置により免震支持してなる増築建物を構築し、その増築建物を先行建物に制振部材を介して接合し、それら先行建物と増築建物の全体を新たな免震建物としてその供用を開始する。
特許文献3には、免震構造物の増築方法が示されている。まず、増設構造物を、これの免震装置をロックした状態で既存構造物から切り離して構築する。増設構造物が所要の構造体形を整えた段階で、増設構造物を既存構造物に接続する。そして、この接続完了後に増設構造物の免震装置をロック解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3816183号公報
【特許文献2】特開2008-214969号公報
【特許文献3】特開2000-204772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、増築部の建設工事中に地震が発生しても、免震建物の構造安全性を迅速に確保できる、免震建物の増築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の免震建物の増築方法は、免震構造の既存建物(例えば、後述の先行建物2)に、免震構造の増築部(例えば、後述の増築建物3)を増築する免震建物の増築方法であって、前記既存建物に隣接して前記増築部の新設免震装置(例えば、後述の新設免震装置50)を設置して仮拘束し、この状態で、前記新設免震装置上に前記増築部の一部を構築する工程(例えば、後述のステップS2、S3)と、前記新設免震装置の仮拘束を解除し、この状態で、前記増築部の残りのうち前記既存建物との接合部以外の部分を構築する工程(例えば、後述のステップS4)と、前記既存建物と前記増築部との水平距離を測定し、前記水平距離が免震クリアランスの管理基準値の範囲外である場合には、前記既存建物および前記増築部のうち少なくとも一方の免震層よりも上側の部分をジャッキ(例えば、後述のジャッキ70)により水平移動させて、前記既存建物と前記増築部との水平距離を前記免震クリアランスの管理基準値の範囲内とする工程(例えば、後述のステップS5)と、前記増築部のうち前記免震層の直上階および最上階を接合手段(例えば、後述の接合梁72、増し打ち床部、エキスパンションジョイント)により前記既存建物に接合する工程(例えば、後述のステップS6)と、前記増築部の残りの階を前記接合手段により前記既存建物に接合する工程(例えば、後述のステップS7)と、を含むことを特徴とする。
【0007】
ここで、免震クリアランスの管理基準値とは、免震クリアランスの設定値に対して、想定外の地震動の大きさや施工誤差等を考慮して設定された、所定の数値範囲である。
この発明によれば、増築部のうち免震層の直上階および最上階を接合手段で先行して既存建物に接合した。このように、増築部のうち免震層の上下端を先行して既存建物に接合することで、建設工事中に地震が発生しても、既存建物と増築部とが一体として免震機能を発揮するので、免震建物の構造安全性を迅速に確保できる。
また、増築部の建設中、大きな地震の発生により、既存建物と増築部との水平距離が免震クリアランスの管理基準値の範囲外になる場合がある。
そこで、この発明によれば、既存建物と増築部との水平距離が免震クリアランスの管理基準値の範囲外になった場合には、既存建物および増築部のうち少なくとも一方の免震層よりも上側の部分をジャッキにより水平移動させて、既存建物と増築部との水平距離を免震クリアランスの管理基準値の範囲内とする。このように、既存建物と増築部との距離を適宜補正して、既存建物と増築部との水平距離を免震クリアランスの管理基準値の範囲内にすることで、既存建物と増築部とが一体化された免震建物の免震性能を確保できる。
【0008】
第2の発明の免震建物の増築方法は、前記増築部のうち前記既存建物との接合部以外の部分を構築する工程では、平面視で前記増築部のうち前記既存建物との接合部の近傍において、上階の床躯体を下階の床躯体から仮設支柱(例えば、後述の仮設支柱80)で支持するとともに、前記仮設支柱のうち免震層に配置されるものには、仮設免震支承(例えば、後述のすべり支承81、転がり支承、積層ゴム支承)を設けることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、平面視で増築部のうち既存建物との接合部の近傍において、上階の床躯体を下階の床躯体から仮設支柱で支持したので、増築部の既存建物との接合部における各階の床躯体の撓みを防止できる。
また、仮設支柱のうち免震層に配置されるものに仮設免震支承を設けたので、建設工事中に地震が発生した場合でも、免震装置により増築部を円滑に水平移動させることが可能であり、増築部の変形や損傷を防止できる。
【0010】
第3の発明の免震建物の増築方法は、前記既存建物および前記増築部のうち少なくとも一方の免震層よりも上側の部分をジャッキにより水平移動させる場合、前記ジャッキを、所定の免震装置の下側の躯体と前記所定の免震装置に隣接する免震装置の上側の躯体との間に配置して駆動することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、既存建物および増築部のうち少なくとも一方の免震層よりも上側の部分をジャッキにより水平移動させる場合、ジャッキを、所定の免震装置の下側の躯体と所定の免震装置に隣接する免震装置の上側の躯体との間に配置して駆動した。よって、ジャッキの反力をとるための反力ブロックを新たに構築することなく、既存建物や増築部をジャッキにより水平移動することができ、施工コストを低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、増築部の建設工事中に地震が発生しても、免震建物の構造安全性を迅速に確保できる、免震建物の増築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る免震建物の増築方法により構築される免震建物の縦断面図である。
図2】実施形態に係る免震建物を構築する手順のフロ-チャートである。
図3】実施形態に係る免震建物の構築手順の説明図(その1、先行建物を構築した状態)である。
図4】実施形態に係る免震建物の構築手順の説明図(その2、増築建物の1階床部分を構築した状態)である。
図5】実施形態に係る免震建物の構築手順の説明図(その3、増築建物のうち先行建物との接合部以外の部分を構築した状態)である。
図6】実施形態に係る増築建物と先行建物との境界部分の拡大図である。
図7】実施形態に係る免震建物の構築手順の説明図(その4、増築建物のうち免震層の直上階および最上階を先行建物に接合した状態)である。
図8】実施形態に係る免震建物の上部躯体または新設上部躯体を水平移動させる場合のジャッキの設置状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、免震構造の既存建物に、免震構造の増築部を増築する免震建物の構築方法である。具体的には、既存建物と増築部との水平距離を免震クリアランスの管理基準値の範囲内とした状態で、既存建物に増築部の免震層の直上階および最上階を先行して接合し、その後、残りの階を接合することで、免震建物を構築した。また、増築部を構築する際、増築部の各階を仮設支柱で支持しながら構築した。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る免震建物の増築方法により構築される免震建物1の縦断面図である。
免震建物1は、免震構造であり、免震構造の既存建物としての先行建物2と、この先行建物2に隣接して構築された免震構造の増築部としての増築建物3と、を接合して構築された建物である。
【0015】
先行建物2は、下部躯体10と、下部躯体10の上に設けられた複数の免震装置20と、これら免震装置20の上に設けられた上部躯体30と、を備える。
免震装置20は、1階柱(1階梁)の直下に設けられており、免震層21を構成している。この免震装置20は、図示しない下部プレート、この下部プレートの上に設けられた図示しない積層ゴム、積層ゴムの上に設けられた図示しない上部プレートを含んで構成されている。
下部躯体10は、基礎11と、基礎11の上に設けられた複数の地下柱12と、地下柱12同士を接合する複数の地下梁13と、を備える。上述の免震装置20は、地下1階の地下柱12の頂部に設置されている。
上部躯体30は、免震装置20上に設けられた柱31と、柱31同士を接合する梁32と、を備える。
【0016】
増築建物3は、新設下部躯体40と、新設下部躯体40の上に設けられた複数の新設免震装置50と、これら新設免震装置50の上に設けられた新設上部躯体60と、を備える。
新設免震装置50は、先行建物2の免震装置20と同様に、1階柱(1階梁)の直下に設けられており、免震層51を構成している。この新設免震装置50は、免震装置20と同様の構成である。
【0017】
新設下部躯体40は、基礎41と、基礎41の上に設けられた複数の地下柱42と、地下柱42同士を接合する複数の地下梁43と、を備える。上述の新設免震装置50は、地下1階の地下柱42の頂部に設置されている。
新設上部躯体60は、新設免震装置50上に設けられた柱61と、柱61同士を接合する梁62と、を備える。
【0018】
以下、免震建物1を構築する手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。この免震建物1では、先行建物2を先行して構築し、この先行建物2の使用を継続しながら、増築建物3を構築して、この増築建物3を先行建物2に接合する。
ステップS1では、図3に示すように、地盤4を掘削して先行建物2を構築する。この先行建物2は、免震装置20を稼働させて、免震構造の建物として使用する。なお、先行建物2の増築建物3側の開口は、仮設の外壁90で塞いでおく(図6参照)。
ステップS2では、図4に示すように、先行建物2に隣接する地盤4を掘削して、この掘削した部分に、先行建物2に隣接して増築建物3の新設下部躯体40を構築する。
【0019】
ステップS3では、図4に示すように、新設下部躯体40上に新設免震装置50を設置して仮拘束する。つまり、新設免震装置50の積層ゴムが変形しないように拘束する。この状態で、新設免震装置50上に増築建物3の新設上部躯体60の1階床部分(1階柱61および1階梁62)を構築する。
このとき、先行建物2の1階床部分と増築建物3の1階床部分との水平距離が免震クリアランスの管理基準値dとなるようにする(図6参照)。
また、平面視で、新設上部躯体60の1階床部分のうち先行建物2との接合部の近傍において、上階の床躯体を下階の床躯体から仮設支柱80で支持する。仮設支柱80のうち免震層51に配置されるものについては、上階の床躯体と下階の床躯体との水平方向の相対移動を許容する仮設免震支承としてのすべり支承81を設ける。なお、免震層51に配置された仮設支柱80およびすべり支承81は、新設上部躯体60の構築中に地震が発生した際に、新設上部躯体60に作用する地震荷重を低減させて、免震建物の構造安全性を確保する手段である。
【0020】
ステップS4では、図5に示すように、新設免震装置50の仮拘束を解除し、新設免震装置50が稼働するようにする。この状態で、増築建物3の新設上部躯体60のうち先行建物2との接合部以外の部分を構築する。
このとき、図6に示すように、先行建物2と増築建物3との水平距離が免震クリアランスの設定値dとなるようにする。この免震クリアランスの設定値dは、先行建物2の免震装置20の免震クリアランスの設定値dと増築建物3の新設免震装置50の免震クリアランスの設定値dとの和である。例えば、免震クリアランスの設定値dは、1200mmである。
また、このとき、増築建物3の先行建物2側の開口は、養生枠91および防音シート92で塞いでおく
また、平面視で、新設上部躯体60のうち先行建物2との接合部の近傍において、上階の床躯体を下階の床躯体から仮設支柱80で支持する。
【0021】
ステップS5では、図7に示すように、先行建物2の上部躯体30と増築建物3の新設上部躯体60との水平距離を測定し、この水平距離が免震クリアランスの管理基準値dの範囲外である場合には、上部躯体30および新設上部躯体60のうち少なくとも一方をジャッキ70により水平移動させて、上部躯体30と新設上部躯体60との水平距離を免震クリアランスの管理基準値の範囲内に補正する。
ここで、免震クリアランスの管理基準値とは、免震クリアランスの設定値dに対して、想定外の地震動の大きさや施工誤差等を考慮して設定された、所定の数値範囲である。例えば、免震クリアランスの設定値dが1200mmで、免震クリアランスの管理基準値が1100mm以上1300mm以下である。
具体的には、図8に示すように、ジャッキ70および鋼材である反力桁71を、所定の免震装置20、50の下側の下部躯体10、40と、この所定の免震装置20、50に隣接する免震装置20、50の上側の上部躯体30、60と、の間に配置して、ジャッキ70を駆動することで、上部躯体30と新設上部躯体60との水平距離を補正する。
【0022】
ステップS6では、図7に示すように、増築建物3の新設上部躯体60のうち免震層51の直上階および最上階を接合手段としての接合梁72により先行建物2の上部躯体30に接合する。この作業は、最短一日で行う。
ステップS7では、増築建物3の新設上部躯体60の残りの階を接合梁72により先行建物2に接合する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)増築建物3のうち免震層51の直上階および最上階を接合梁72で先行して先行建物2に接合した。このように、増築建物3のうち免震層51の上下端を先行して先行建物2に接合することで、増築建物3の建設工事中に地震が発生しても、既存建物と増築部とが一体として免震機能を発揮するので、免震建物1の構造安全性を迅速に確保できる。
また、先行建物2と増築建物3との水平距離が免震クリアランスの管理基準値の範囲外である場合は、上部躯体30および新設上部躯体60のうち少なくとも一方をジャッキ70により水平移動させて、上部躯体30と新設上部躯体60との水平距離を免震クリアランスの管理基準値の範囲内とする。このように、先行建物2と増築建物3との距離を適宜補正したので、先行建物2と増築建物3とが一体化した免震建物1の免震性能を確保できる。
【0024】
(2)平面視で、増築建物3のうち先行建物2との接合部の近傍において、上階の床躯体を下階の床躯体から仮設支柱80で支持したので、増築建物3の先行建物2との接合部における各階の床躯体の撓みを防止できる。
また、仮設支柱80のうち免震層51に配置されるものにすべり支承81を設けたので、建設工事中に地震が発生した場合でも、新設免震装置50により増築建物3を円滑に水平移動させることが可能であり、増築建物3の変形や損傷を防止できる。
【0025】
(3)上部躯体30および新設上部躯体60のうち少なくとも一方をジャッキ70により水平移動させる場合、ジャッキ70を、所定の免震装置20、50の下側の躯体10、40と、この所定の免震装置20、50に隣接する免震装置20、50の上側の躯体30,60と、の間に配置して駆動した。よって、ジャッキ70の反力をとるための反力ブロックを新たに構築することなく、先行建物2や増築建物3をジャッキ70により水平移動することができ、施工コストを低減できる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態では、先行建物2と増築建物3の新設上部躯体60とを接合梁72で接合したが、これに限らず、増打ち床部で一体化してもよいし、先行建物2と増築建物3の新設上部躯体60との間に隙間を確保し、この隙間にエキスパンションジョイントを設けて、地震発生時に、先行建物2と増築建物3の新設上部躯体60とが衝突しないようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、仮設免震支承としてすべり支承81を設けたが、これに限らず、転がり支承や積層ゴム支承としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…免震建物 2…先行建物(既存建物) 3…増築建物(増築部) 4…地盤
10…下部躯体 11…基礎 12…地下柱 13…地下梁
20…免震装置 21…免震層
30…上部躯体 31…柱 32…梁
40…新設下部躯体 41…基礎 42…地下柱 43…地下梁
50…新設免震装置 51…免震層
60…新設上部躯体 61…柱 62…梁
70…ジャッキ 71…反力桁 72…接合梁(接合手段)
80…仮設支柱 81…すべり支承(仮設免震支承)
90…外壁 91…養生枠 92…防音シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8