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  • 特開-青果物の鮮度保持方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021914
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】青果物の鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B65D85/50 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125111
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】508219715
【氏名又は名称】株式会社ベルグリーンワイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】清水 佑基
【テーマコード(参考)】
3E035
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA08
3E035BB02
3E035BC02
3E035CA06
(57)【要約】
【課題】従来の鮮度保持袋よりも製造が容易で、安価に実現が可能な青果物の鮮度保持方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリエチレン系樹脂を含む層を少なくとも1層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムよりなる青果物の鮮度保持用収納袋に青果物を挿入し、開口部を捻り、該捻り部を固定具あるいは固定テープで固定する青果物の鮮度保持方法であって、下式(1)で求められる絞り度が7~35%であることを特徴とするものである。
絞り度=[フィルム断面積(鮮度保持用袋の底面長さ(mm)×2×鮮度保持用袋厚み(mm)]÷捻り部断面積(mm)×100(%) ・・(1)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を含む層を少なくとも1層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムよりなる青果物の鮮度保持用収納袋に青果物を挿入し、開口部を捻り、該捻り部を固定することを特徴とする青果物の鮮度保持方法であって、下式(1)で求められる絞り度が7~35%であることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
絞り度=[フィルム断面積(鮮度保持用袋の底面長さ(mm)×2×鮮度保持用袋厚み(mm)]÷捻り部断面積(mm)×100(%) ・・(1)
【請求項2】
前記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの基材層中のポリエチレン系樹脂の含有量が5~15重量%であることを特徴とする請求項1に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムが非穴あけ加工フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項4】
前記捻り部の固定テープがバックシーリングテープであることを特徴とする請求項1に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項5】
前記ポリエチレンがバイオマス由来ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の青果物の鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルムによって形成された青果物の鮮度保持用の収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
葉菜類、果菜類、根菜類、フルーツ、菌茸類等の青果物は、収穫された後も呼吸作用を持続している。この呼吸作用によってエネルギーが消費されるため、収穫後になされる貯蔵、流通等における保存中に、青果物の鮮度が著しく低下している。
【0003】
近年の青果物販売においては、鮮度の低下を抑制する意図をも含めて、フィルムで青果物を包装する事が多くなっている。青果物をフィルム包装する場合、単に包むだけでなく密封包装し、MA(Modified Atomosphere)効果の得られる青果物鮮度保持資材がフィルムとして用いられる。このような青果物の包装方法は、MA包装と呼ばれている。
【0004】
MA包装とは、ガス透過量を制御した袋に青果物を包装し、包装した青果物の呼吸量と包装袋のガス透過量のバランスによって包装体内を低酸素濃度、高二酸化炭素濃度状態とすることで青果物の呼吸を抑制して鮮度を保持するものである。
【0005】
MA包装として、例えば、特許文献1-5に記載の技術においては、フィルムに穴あけ加工を施すことにより、ガス透過量を制御する方法が取られ、MA包装の主流の技術となっているが、穴あけ加工を施す必要があり青果物の鮮度保持用収納袋に用いる合成樹脂フィルムのコストが高価になるという課題がある。
【0006】
上記課題を解決する方法として、特許文献6において、非穴あけ加工フィルムをより構成され、かつ一辺に根菜類を挿入する開口部より挿入して、該挿入開口部を、袋密封用シール部材を結束させて該開口部を塞ぐ方法で、上記MA包装効果で根菜類の鮮度保持性を向上する根菜類の鮮度保持方法が開示されている。しかしながら、該該方法は、非穴あけ加工フィルムとしてエチレン・ビニルアルコール共重合体が用いられておりフィルム価格が高価である上に、青果物が根菜類に限定されるという課題を有する。
【0007】
一方、特許文献7において、合成樹脂フィルムの開口部を結束材を用いて結束した青果物包装体において、結束材の締め付け具合で包装体のガス通気性を制御して上記MA包装効果で青果物の鮮度保持包装体の技術が開示されている。該方法は、安価なフィルムである二軸延伸ポリプロピレンフィルムが用いられているので、特許文献6である課題が改善されているが、結束材としてポリカーボネート製カシメ具が用いられているために高価であり、他の結束材を使う場合でも、結束材の種類によって結束材の締め付け具合を変える必要があり煩雑であるという課題を有する。
【0008】
更に、特許文献8において、特定特性を有したプラスチックフィルムにより、生鮮植物の全体を個別に包被し、折り返し包装又は捻り包装した非密封状態でMA包装する生鮮植物の個別包装体の技術が開示されている。しかしながら、該方法は、プラスチックフィルムとしてスチレン・ブタジエンブロック共重合体が用いられており高価である上に包装体内の酸素濃度を2~10%に制御する必要があるという課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4-53445号公報
【特許文献2】特開平7-170907号公報
【特許文献3】特開昭63-44837号公報
【特許文献4】特開昭61-259982号公報
【特許文献5】特開2003-199490号公報
【特許文献6】特開2018-172146号公報
【特許文献7】特開2003-180242号公報
【特許文献8】特開平8-48382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、安価なポリオレフィン樹脂を用いた非穴開き加工の安価な透明フィルムを用いて、MA包装効果で青果物の鮮度保持効果を改善できる青果物の鮮度保持包装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題解決するため鋭意検討した結果、上記した安価な透明フィルム製の収納袋に青果物を挿入し、収納袋の開口部を捻り、該捻り部を固定テープ等で特定範囲の断面積で固定する事で達成出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
[1] ポリエチレン系樹脂を含む層を少なくとも1層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムよりなる青果物の鮮度保持用収納袋に青果物を挿入し、開口部を捻り、該捻り部を固定することを特徴とする青果物の鮮度保持方法であって、下式(1)で求められる絞り度が7~35%であることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
絞り度・・・[フィルム断面積(鮮度保持用袋の底面長さ(mm)×2×鮮度保持用袋厚み(mm)]÷捻り部断面積(mm2)×100(%) (1)
[2]前記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの基材層中のポリエチレン系樹脂の含有量が5~15重量%であることを特徴とする[1]に記載の青果物の鮮度保持方法。
[3] 前記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムが非穴あけ加工フィルムであることを特徴とする[1]または[2]に記載の青果物の鮮度保持方法。
[4] 前記捻り部の固定テープがバックシーリングテープであることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の青果物の鮮度保持方法。
[5] 前記ポリエチレンがバイオマス由来ポリエチレンであることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の青果物の鮮度保持方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に関わる青果物の鮮度保持方法は、安価な合成樹脂フィルムを用いて、かつフィルムの製造時や製袋工程の途中で合成樹脂フィルムに複数の微細な孔やスリットを均一に設ける必要が無い上に、青果物を挿入後に開口部を捻り封入し、該捻り部を固定するという安価で、かつ簡便な方法で青果物の鮮度保持効果を発現できることが可能であるので経済性に優れている。更に、上記捻り部の断面積に含まれるフィルム断面積の割合を調整することで、青果物の鮮度保持用収納袋のMA包装特性を制御することができるので、多種類の青果物に対して効果的な鮮度保持効果を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】バックシーリングテープによって固定されている包装袋の切断面を示したものである。
図2】バックシーリングテープで囲まれた捻り部の断面積を計測するためにシール面の内側を12点指定したときの図である。
図3】実施例及び比較例の結果を用いて、絞り度と鮮度保持評価結果との関係を示した相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
{青果物の鮮度保持用収納袋の材質及び構成}
本発明に係る青果物の鮮度保持用収納袋は、ポリエチレン系重合体を含んだ層を少なくとも1層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フイルムが好ましい。
【0016】
上記二軸延伸ポリプロピレン系フイルムは、単層タイプであっても良いが、少なくとも2層よりなる多層タイプよりなる事がより好ましい。
【0017】
例えば、2層タイプの場合は、基材層(A)及びシール層(B)よりなるのが好ましく、3層タイプの場合は、上記2層タイプのシール層の反対面に表面層(C)が積層されてなることが好ましい。
【0018】
{基材層(A)}
基材層(A)は、ポリプロピレン系樹脂から主としてなることが好ましい。 該ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン単独重合体、結晶性ポリプロピレン系樹脂を挙げることができる。結晶性ポリプロピレン系樹脂が好ましい 。該結晶性ポリプロピレン系樹脂は、融点が155℃~165℃のものが好ましい。
【0019】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~10のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンを挙げることができる。また、炭素数2~4の、例えば、エチレン、1-ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であっても良い。プロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、1.3重量%以下が適当であり、0 .5重量%以下が好ましい。
【0020】
{基材層(A)へのポリエチレン樹脂の配合}
本発明においては、基材層(A)に、ポリエチレン系樹脂を配合してなる事が好ましい。
【0021】
上記ポリエチレン系樹脂としては、融点が100℃~135℃が好ましく、105℃~130℃がより好ましい。また、密度については、JIS K7113に準じて測定し、0.90g/cm以上0.94g/cm以下が好ましく、0.91g/cm以上0.93g/cm以下がより好ましい。
該ポリエチレン系樹脂としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等をランダムあるいはブロック共重合体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。また環境に配慮したバイオマス由来エチレン系樹脂であることがより好ましい。該環境に配慮したバイオマス由来のエチレン系重合体としては、サトウキビ、ジャガイモ、トウモロコシなどの植物より得られる植物由来のエチレンを用いたもの等が挙げられる。
【0022】
上記ポリエチレン系樹脂を配合することで捻り部の戻りがよく、捻り部を固定しても好ましいMA包装効果が確保できる。該ポリエチレン系樹脂は、後述するシール層(B)や表面層(C)にも配合しても良い。
【0023】
基材層(A)を形成する樹脂中には防曇剤を添加するのが好ましい。防曇剤を添加しない場合、青果物を包装した際に内部が曇り、また腐敗が進みやすくなるため、商品価値が低下してしまう。本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムの防曇性発現のメカニズムとしては、基材層(A)を形成する樹脂中に防曇剤を添加することで、フィルム製造時及びフィルム形成後の保管時に、防曇剤がシール層(B)へ移行し、シール層(B)表面が防曇性を有する状態になる。収穫後も生理作用を持続することが特徴である青果物を包装対象としたときに、その効果を発揮することができる。そして、流通過程で長期的に優れた防曇性を持続させるためには、保存、流通時の気温変化を考慮して、5~40℃の間で温度変化を繰り返す環境下でも、継続して防曇性を示すような防曇剤を選定することが好ましい。
【0024】
基材層(A)を形成する樹脂中に添加する防曇剤としては、例えば、多価アルコ-ルの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、 高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などを典型的なものとして挙げることができる。防曇剤のフィルム中での存在量は全 層換算で0.1~10重量%、特に0.2~5重量%が好ましい。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
【0026】
{シール層(B)}
本発明におけるシール層(B)は、本発明の青果物の鮮度保持用収納袋を形成するに際して熱シール法で製袋されるので、熱シール性特性が優れているのが好ましい。また、本発明においては経済性の点で非穴あけ加工フィルムを用いるのが好ましいのでガス透過性の優れた樹脂を用いるのが好ましい。
【0027】
上記シール層(B)を構成する樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であれば限定されないが、融点が120~140℃のプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体であるのが好ましい。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、 1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましく 、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても 、2種以上の併用であってもよい。
【0028】
該プロピレン系共重合体中のプロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は 、14重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0029】
更に、上記シール層(B)は青果物と接するので、シール層には消臭剤や抗菌剤を適当量配合することができる。また、該消臭剤や抗菌剤の配合は、異臭の抑制等に有効である。消臭剤は、シール層に、層を構成する樹脂100重量部に対して、例えば、1~6重量部の範囲内で配合することが、また、該抗菌剤は、シール層を構成する樹脂100重量部に対して、例えば、0.1~1重量部の範囲内で配合することが好ましい。
【0030】
上記シール層(B)には、上記防曇剤を配合しなくても基材層(A)に配合された防曇剤が移行(ブリードアウト)され、該シール層のシール面の防曇性が発現される。該シール層にも上記防曇剤を配合することでシール層(B)面の防曇性がより安定化される。上記シール層(B)に配合する防曇剤の種類は、基材層(A)に配合する防曇剤と同じでもよいし、異なっても良い。
【0031】
{表面層(C)}
本発明の表面層(C)は、シール層(B)と同じであっても良いし、異なっていても良い。シール層(B)に用いるプロピレン系共重合体中のプロピレン以外のα-オレフィンの含有割合の少し低い融点が130~140℃の共重合樹脂を用いるのが好ましい。
【0032】
上記表面層(C)にも防曇剤を配合するのが好ましい実施態様である。青果物を包装し、スーパー等で陳列する際に結露などにより表面が良くなる等が改善される。
【0033】
上記表面層(C)に配合する防曇剤の種類は、基材層(A)に配合する防曇剤と同じでもよいし、異なっても良い。
【0034】
{アンチブロッキング剤の配合}
上記シール層(B)及び表面層(C)の表面層の外表面は平滑になり、フィルム同士が密着するためにフィルム同士の滑り性が劣りフィルムの取り扱い性が劣る。そこで、該課題を防ぐ目的で、本発明の効果を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤または滑剤を含んでいてもよい。かかるアンチブロッキング剤としては、一般的に用いられている無機系のシリカやカオリン、ゼオライト等、または有機系の架橋アクリルビーズ等が挙げられる。また、滑剤としては、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。アンチブロッキング剤および滑剤は、いずれも1種のみでもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記アンチブロッキング剤または滑剤の添加量は、樹脂の種類等により適宜調整するのが良く、層を構成する樹脂100重量部に対して、0.3~3.0重量部が適当であり、好ましくは0.5~2.0重量部である。
【0036】
{鮮度保持用収納袋の形状}
本発明に係る鮮度保持用収納袋の形状は、特に限定されない。端面と下部をヒートシールしてなる三方袋や、合成樹脂フィルムを二つ折りしたのち、端面をそれぞれヒートシールしてなる二方袋やフィルムの左右を折り込んで背面でヒートシールした合掌袋等の形状で実施することが可能である。
【0037】
{青果物の鮮度保持用収納袋のサイズ}
本発明に係わる鮮度保持用収納袋のサイズは限定されない。そのサイズは、包装をする青果物の種類やその収納される青果物の重量等により適宜選択できる。
【0038】
{バックシーリングテープ}
片面に粘着層が積層されたポリエステル系の結束用粘着テープの使用が好ましい。ただし、バックシーリングテープの種類や材質等は限定されない。
【0039】
{鮮度保持用収納袋による青果物の包装方法}
上記形状鮮度保持用収納袋の開口部より青果物を挿入して、開口部と野菜収納部の間のいずれかを捻り、該捻り部を固定する。固定用部材は、特に限定されないが、捻り部の戻りの良さを利用するため金属やクリップなどよりも柔軟性のある、バックシーリングテープ、紐、輪ゴムなどが好ましく、特に、バックシーリングテープを用いるのが好ましい。特に、バックシーリングテープを用いてバックシーラー装置等を用いて結束するのが好ましい。固定場所は限定されないが、開口部と野菜収納部の中間部が好ましい。バックシーリングテープの種類や材質等は限定されないが、片面に粘着層が積層されたポリエステル系の結束用粘着テープの使用が好ましい。該包装時にエチレン吸着剤や脱酸素剤などを青果物とともに封入して包装することも可能である。
【0040】
{絞り度}
絞り度は下記(1)式によって求めることが出来る。
{絞り度}=[フィルム断面積(鮮度保持用袋の底面長さ(mm)×2×鮮度保持用袋厚み(mm)]÷捻り部断面積(mm)×100(%) ・・(1)
【0041】
上記捻り部断面積は固定用部材で囲まれた部分を指す。例えばバックシーリングテープによって固定されている場合、バックシーリングテープで固定された部分の中心部を切断し、バックシーリングテープで囲まれたシール面の内側の切断面を指す(図1)。バックシーリングテープ以外の結束材で固定された場合は、該結束材に沿って切断して結束材で固定された部分の切断面を計測する。フィルム断面積は捻り部断面積中に含まれる袋の表面と裏面の両方を絞りこんで固定している部分の断面積を指す。
【0042】
捻り部断面積の計測方法としては捻り部面積をカメラで撮影し、画像処理ソフトを使用して面積を計測する。画像処理ソフトは写真で撮影した画像の範囲を指定することで面積を算出できるものであればよい。撮影した画像内に長さが分かるスケールを一緒に写し込む必要があるため、定規等を一緒に撮影することが望ましい。なお本文以下に示す捻り部面積は写真撮影をOMデジタルソリューションズ株式会社製「Tough TG-6」を使用して撮影し、株式会社エステック社の画像処理ソフト「AreaQ」を用いてバックシーリングテープで囲まれたシール面の内側を等間隔に12点指定(図2)することで、捻り部の断面積を指定し、計測した。本発明の青果物の包装方法においては、絞り度が7%以上35%以内であることが好ましい。9%以上32%以内であることがより好ましい。さらに14%以上27%以内であることが最も好ましい。
【0043】
本発明の青果物の鮮度保持法においては、上記捻り度の度合いにより包装体内の気体の透気度が変化し、MA包装効果が変化するので、該捻り部の断面積に含まれるフィルム断面積の割合を特定範囲にするのが好ましい。絞り度が、9%未満だと気体の透過性が低下し、嫌気呼吸が発生しやすく、臭気等の問題が発生しやすい。一方32%以上だと気体の透過性が向上しすぎるため、呼吸のし過ぎによる変色等が発生しやすい。
【0044】
また、本発明の青果物の鮮度保持用収納袋の形成材料である合成樹脂のフィルムの厚みは特に限定されないが、10~70μmの範囲であると好ましく、15~40μmの範囲であるとより好ましい。厚みが10μmを下回ると、フィルムの“腰”がなくなってしまい捻り部が戻りにくくなってしまうため好ましくなく、反対に、70μmを上回ると、フィルムの剛性が高くなりすぎて開口部を固定しにくくなるので好ましくない。
【0045】
{適用可能な青果物の種類}
また本発明に係る青果物の鮮度保持方法に適用できる青果物の種類は、どのような青果物を包装してもよく、例えば、葉菜類、根菜類、果菜類や菌茸類の各種の青果物で収納可能であり、限定されない。とくに葉菜類や菌茸類で鮮度保持効果が発揮されやすい。
【0046】
{非穴開け加工フィルム}
本発明の青果物の鮮度保持包装方法は、上記の如く絞り度の最適化によるMA効果を付与することで、青果物の鮮度保持性を向上する方法であるので、本発明に用いる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、経済性の点で非穴開け加工フィルムを用いても良い。非穴あけ加工フィルムは、非貫通状の穴や溝などの加工が入っているものを使用しても良い。加えて、本発明に係る鮮度保持用包装袋は、鮮度保持機能を良好なものとするために、任意の位置に微細な貫通状の孔を穿設することも可能である。
【0047】
また、本発明の青果物の鮮度保持包装袋に量子論に基づいた物質変性等の処理をすることも可能である。
【実施例0048】
以下は実施例・比較例をもって本発明の鮮度保持用包装袋について詳細に説明するが、本発明の包装袋は実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0049】
(1)青果物の鮮度保持性
(2)―1 ブロッコリー
開口部および底辺の幅260mm×長さ380mmの大きさの青果物の鮮度保持用収納袋にブロッコリー1株(約500g)を入れ、開口部から30mmの位置を手で絞り該捻り部をバックシーリングテープで捻り部を固定した。
該包装体を20℃60%RHの雰囲気下で120時間(約5日間)保管した。その時のブロッコリーの状態を色、臭気観点から以下の4段階で官能評価を実施した。
4:色・臭気共に包装前と変化が認められない
3:部分的な変色、またはかすかな異臭が認められるが販売が可能であるもの
2:変色、異臭が認められ販売が出来ないもの
1:全体的な変色、異臭が認められるもの
4評価が最も好ましく、1評価が最も好ましくない。4ないし3評価であることが好ましい。
【0050】
(2)―2 シイタケ
開口部及び底辺の幅200mm×長さ250mmの大きさの青果物の鮮度保持収納袋に、シイタケ(約200g)を入れて、開口部から30mmの位置を手で絞り該捻り部をバックシーリングテープで捻り部を固定した包装袋を、20℃60%RHの雰囲気下で120時間(約5日間)保管した。その時のシイタケの状態を色、臭気、かさの開きの観点から以下の4段階で官能評価を実施した。
4:色・臭気・傘の開き共に包装前と変化が認められない
3:部分的な変色、またはかすかな異臭やかさの開きが認められるが販売が可能であるもの
2:変色、異臭やかさの開きが認められ、販売が出来ないもの
1:全体的な変色、明確な異臭やかさのひらきが認められるもの
4評価が最も好ましく、1評価が最も好ましくない。4ないし3評価であることが好ましい。
【0051】
(2)―3 ニンジン
幅100mm×高さ250mmの大きさの青果物の鮮度保持用収納袋にニンジン約250gを入れ、開口部から3cmの位置を手で絞り該捻り部をバックシーリングテープで捻り部を固定した。 20℃60%RHの雰囲気下で120時間(約5日間)保管した。その時のニンジンの状態を色、臭気、芽の伸びの観点から以下の4段階で官能評価を実施した。
4:色・臭気・芽の伸び共に包装前と変化が認められない
3:部分的な変色、またはかすかな異臭や芽の伸びが認められるが販売が可能であるもの
2:部分的な変色、またはかすかな異臭やかさの開きが認められ販売が出来ないもの
1:全体的な変色、明確な異臭やかさのひらきが認められるもの
4評価が最も好ましく、1評価が最も好ましくない。4ないし3評価であることが好ましい。
【0052】
{二軸延伸ポリプロピレン系フィルムA}
下記構成の厚さ18μmの二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを用いて評価した。
(1)基材層(A)
厚み:16.9μm
樹脂:プロピレン/エチレンランダム共重合体(エチレン共重合量:0.6モル%、融点;158℃)/バイオマス由来ポリエチレン(融点:126℃、バイオベース度:84%)=90/10(質量比)
添加剤:防曇剤3種合計1.0質量%
(2)シール層(B)
厚み:0.5μm
樹脂:プロピレン/ブテンー1共重合体(ブテンー1共重合量25モル%)
添加剤:防曇剤1種及び平均粒子3.5μmを配合。
(3)表面層(C)
厚み:0.4μm
プロピレン/エチレン/ブテンー1のランダム共重合体=90.5/2.5/7(モル%)
添加剤:防曇剤1種を配合
【0053】
{二軸延伸ポリプロピレン系フィルムB}
二軸延伸ポリプロピレン系フィルムAの基材層(A)の質量比を以下の条件に変更した以外は同条件とする、厚さ18μmの二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを用いて評価した。
樹脂:プロピレン/エチレンランダム共重合体(エチレン共重合量:0.6モル%、融点;158℃)/バイオマス由来ポリエチレン(融点:126℃、バイオベース度:84%)=95/5(質量比)
添加剤:防曇剤3種合計1.0質量%
【0054】
{二軸延伸ポリプロピレン系フィルムC}
二軸延伸ポリプロピレン系フィルムAの基材層(A)の質量比を以下の条件に変更した以外は同条件とする、厚さ18μmの二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを用いて評価した。
樹脂:プロピレン/エチレンランダム共重合体(エチレン共重合量:0.6モル%、融点;158℃)/バイオマス由来ポリエチレン(融点:126℃、バイオベース度:84%)=85/15(質量比)
添加剤:防曇剤3種合計1.0質量%
【0055】
{二軸延伸ポリプロピレン系フィルムD}
二軸延伸ポリプロピレン系フィルムAの基材層(A)の質量比を以下の条件に変更した以外は同条件とする、厚さ18μmの二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを用いて評価した。
樹脂:プロピレン/エチレンランダム共重合体(エチレン共重合量:0.6モル%、融点;158℃)/バイオマス由来ポリエチレン(融点:126℃、バイオベース度:84%)=80/20(質量比)
添加剤:防曇剤3種合計1.0質量%
【0056】
{二軸延伸ポリプロピレン系フィルムE}
東洋紡株式会社「P5562」の厚さ20μmを用いて評価した。
【0057】
{実施例1}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムAを用いて、開口部および底辺の幅260mm×長さ380mmの大きさの青果物の鮮度保持用収納袋にブロッコリー1株(約500g)を入れ、開口部から30mmの位置を手で絞り該捻り部を、バックシーリングテープを用いてバックシーラー装置で捻り部を固定し、上記青果物の鮮度保持性評価法に従ってブロッコリーの鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0058】
{実施例2}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムBを用いた以外は、実施例1と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0059】
{実施例3}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムCを用いた以外は、実施例1と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0060】
{比較例1}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムDを用いた以外は、実施例1と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0061】
{比較例2}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムEを用いた以外は、実施例1と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0062】
{実施例4}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムAを用いて、開口部及び底辺の幅200mm×長さ250mmの大きさの青果物の鮮度保持収納袋に、シイタケ(約200g)を入れて、開口部から30mmの位置を手で絞り該捻り部をバックシーリングテープで捻り部を固定し、上記青果物の鮮度保持性評価法に従ってブロッコリーの鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0063】
{実施例5}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムBを用いた以外は、実施例4と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0064】
{実施例6}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムCを用いた以外は、実施例4と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0065】
{比較例3}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムDを用いた以外は、実施例4と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0066】
{比較例4}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムEを用いた以外は、実施例4と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0067】
{実施例7}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムAを用いて、幅100mm×高さ250mmの大きさの青果物の鮮度保持用収納袋にニンジン約250gを入れ、開口部から30mmの位置を手で絞り該捻り部をバックシーリングテープで捻り部を固定し、上記青果物の鮮度保持性評価法に従ってニンジンの鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0068】
{実施例8}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムBを用いた以外は、実施例7と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0069】
{実施例9}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムCを用いた以外は、実施例7と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0070】
{比較例5}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムDを用いた以外は、実施例7と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0071】
{比較例6}
上記二軸延伸ポリプロピレン系フィルムEを用いた以外は、実施例7と同条件にて包装し、鮮度変化を観察した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
〔表1〕
【0073】
表1から実施例1~9の包装袋は、いずれも鮮度保持機能が優れていることが確認できる。これに対して要件を満たさない比較例1~6については鮮度保持機能が不良であることが確認できる。捻り部の断面積に含まれるフィルム断面積の割合の値をコントロールすることで今までよりも簡易な鮮度保持性を実現することが出来る。
【0074】
表1の実施例1~9、比較例1~6の結果を用いて、捻り部の断面積に含まれるフィルム断面積の割合と鮮度保持評価結果との関係を図3に示した。該図3より本発明の好ましい範囲が臨界的であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に関わる青果物の鮮度保持方法は、安価な合成樹脂フィルムを用いて、かつフィルムの製造時や製袋工程の途中で合成樹脂フィルムに複数の微細な孔やスリットを均一に設ける必要が無い上に青果物を挿入後に開口部を捻り封入し、該捻り部を固定するという安価で、かつ簡便な方法で青果物の鮮度保持効果を発現できることが可能であるので経済性に優れている。更に、絞り度を調整することで、青果物の鮮度保持用収納袋のMA包装特性を制御することができるので、多種類の青果物に対して効果的な鮮度保することが出来ることから、産業界に寄与すること大である。
【符号の説明】
【0076】
1:バックシーリングテープ
2:捻り部の断面積
図1
図2
図3