(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021926
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】射撃訓練システム
(51)【国際特許分類】
F41J 5/10 20060101AFI20240208BHJP
F41J 5/14 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F41J5/10
F41J5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125132
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝則
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 利明
(57)【要約】 (修正有)
【課題】射撃訓練システムの準備の時間を短縮でき、かつ、多くの訓練パターンから訓練者の熟練度に合った訓練内容を容易に選択できる射撃訓練システムの技術を提供する。
【解決手段】射撃訓練システムは、サーバPCとクライアントPCとを備えた統制装置と、プロジェクターと、弾着位置検出装置と、スクリーンと、を備える。サーバPCによりシナリオに基づいた標的映像を、プロジェクターを通じてスクリーンへ映す。訓練者はスクリーン上の標的を狙い実弾による射撃を行う。弾着位置検出装置により、命中または非命中、および、着弾座標を判定し、クライアントPCの表示画面に表示することで訓練者に通知する。訓練者と標的が映されたスクリーンとの距離を一定に保った状態で、サーバPCの操作により射程距離を選択でき、選択された射程距離に応じて、スクリーンに映る標的のサイズを変更することで、指定した射程距離を模擬する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバPCとクライアントPCとを備えた統制装置と、プロジェクターと、弾着位置検出装置と、スクリーンと、を備えた構成の射撃訓練システムにおいて、
前記サーバPCによりシナリオに基づいた標的映像を前記プロジェクターを通じて前記スクリーンへ映し、
訓練者は前記スクリーン上の標的を狙い実弾による射撃を行い、
前記弾着位置検出装置により着弾座標の検出及び前記サーバPCへの通知を行い、
前記サーバPCは保有する標的座標と前記弾着位置検出装置より受信した前記着弾座標から、命中または非命中、および、前記着弾座標を判定し、前記クライアントPCの表示画面に表示することで前記訓練者に通知するものであり、
前記訓練者と前記標的が映された前記スクリーンとの距離を一定に保った状態で、前記サーバPCの操作により射程距離を選択でき、
前記選択された射程距離に応じて、前記スクリーンに映る前記標的のサイズを変更することで、指定した射程距離を模擬する、射撃訓練システム。
【請求項2】
請求項1に記載の射撃訓練システムであって、
前記シナリオとは、標的種類や射程距離を含む訓練条件と、前記標的の隠顕や移動を含む標的動作と、を組み合わせた情報を指す、射撃訓練システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の射撃訓練システムであって、
前記選択した射程距離に応じて、前記スクリーンに映す前記標的の移動速度を変更することで、指定した射程距離を模擬する、射撃訓練システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の射撃訓練システムであって、
前記スクリーンに映る移動標的を射撃した際、前記弾着位置検出装置で検出する着弾座標情報を、実距離での着弾座標に補正し表示する、射撃訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実弾射撃訓練の支援を行うための射撃訓練システムに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
射撃訓練システムによる射撃訓練は、統制装置から標的装置及び移動標的装置に対し、標的隠顕制御(「現出」及び「隠滅」)及び移動制御(前進や後進)を行い、訓練者は現出中の標的装置又は移動標的装置を照準し、射撃を行うものである。統制装置では標的装置及び移動標的装置を自動で制御するための複数のシナリオを作成でき、訓練に応じてシナリオを選択することで、タイムスケジュールに基づいた隠顕制御や移動制御を行うことができる。
【0003】
射撃訓練システムに関する技術として、例えば、リアルタイムな着弾位置検出に関する特開2022-45943号公報、移動標的台車に関する特開2013-100958号公報等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-45943号公報
【特許文献2】特開2013-100958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射撃訓練システムの準備においては、訓練の度に倉庫から、統制装置、標的装置、移動台車装置、移動台車装置が走行するレールなどの軌道等を、訓練フィールドへ運んで設置する必要がある。そのため、射撃訓練システムの準備に、多くの人と長い時間を要するという問題がある。
【0006】
また、訓練においては、移動標的装置の移動範囲は設置した軌道長に制限されてしまい、単調な動作となっている。このため、訓練者の熟練度に関わらず訓練内容に変化が見られない単調な訓練、言い換えると、訓練がワンパターンとなってしまう問題がある。
【0007】
本開示は、射撃訓練システムの準備の時間を短縮でき、かつ、多くの訓練パターンから訓練者の熟練度に合った訓練内容を容易に選択できる射撃訓練システムの技術を提供することにある。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0010】
一実施の形態に係る射撃訓練システムは、
サーバPCとクライアントPCとを備えた統制装置と、プロジェクターと、弾着位置検出装置と、スクリーンと、を備えた構成の射撃訓練システムにおいて、
前記サーバPCによりシナリオに基づいた標的映像を、前記プロジェクターを通じて前記スクリーンへ映し、
前記スクリーン上の標的を狙い実弾による射撃を行い、
前記弾着位置検出装置により着弾座標の検出及び前記サーバPCへの通知を行い、
前記サーバPCは保有する標的座標と前記弾着位置検出装置より受信した前記着弾座標から、命中または非命中、および、前記着弾座標を判定し、前記クライアントPCの表示画面に表示することで通知するものであり、
訓練者と前記標的が映された前記スクリーンとの距離を一定に保った状態で、前記サーバPCの操作により射程距離を選択でき、
前記選択された射程距離に応じて、前記スクリーンに映る前記標的のサイズを変更することで、指定した射程距離を模擬する。
【発明の効果】
【0011】
上記一実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、射撃訓練システムの準備の時間を短縮でき、かつ、多くの訓練パターンから訓練者の熟練度に合った訓練内容を容易に選択できるので、より効果のある射撃訓練を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例に係る射撃訓練システムの全体図である。
【
図2】
図2は、比較例に係る射撃訓練システムの全体図である。
【
図3】
図3は、実施例に係る射撃訓練システムのシナリオ作成画面の説明図である。
【
図4】
図4は、実施例に係る射撃訓練システムのシナリオ動作編集画面の説明図である。
【
図5】
図5は、実施例に係る射撃訓練システムの移動標的の動作のシナリオ作成画面の説明図である。
【
図6】
図6は、実施例に係る射撃訓練システムの訓練諸元設定画面の説明図である。
【
図7】
図7は、実施例に係る射撃訓練システムのスクリーンの表示例の説明図である。
【
図8】
図8は、実施例に係る射撃訓練システムの訓練状況の表示画面の説明図である。
【
図9】
図9は、実施例に係る射撃訓練システムのスクリーン着弾イメージの説明図である。
【
図10】
図10は、実施例に係る射撃訓練システムの弾着位置検出装置の検出範囲の説明図である。
【
図11】
図11は、実施例に係る射撃訓練システムの使用標的の説明図である。
【
図13】
図13は、25mで射撃時の銃毎の補正値を示す補正テーブルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例0014】
(射撃訓練システムの全体構成)
図1は、実施例に係る射撃訓練システムの全体図である。
図1に示す射撃訓練システム1は、実弾射撃訓練の支援を行うための射撃訓練システムであり、統制装置10と、プロジェクター20と、スクリーン30と、弾着位置検出装置40と、から構成されている。
【0015】
統制装置10は、射撃訓練システム1の全体の制御を司る装置であり、サーバPC11とクライアントPC12とから構成されている。
【0016】
サーバPC11は、例えば、1)プロジェクター20に映し出す標的90の映像の生成、2)標的90である移動標的の移動の制御、3)着弾の有無の検出、4)着弾座標の判定などを行う。着弾座標の判定の結果は、例えば、サーバPC11内の記憶装置内のデータベース(DB1)へ登録される。
【0017】
クライアントPC12は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置と、CPUや記憶装置などから構成された制御装置と、表示画面12Dを有する表示装置などから構成されている。クライアントPC12は、例えば、1)訓練者情報の入力および作成、および、作成した訓練者情報のクライアントPC12内のデータベース(DB2)への登録、2)訓練諸元(シナリオ等)の作成および作成したシナリオのクライアントPC12内のデータベース(DB3)への登録、3)訓練開始の操作および訓練終了の操作、4)訓練状況の表示または着弾位置の表示、5)訓練結果の表示、例えば、点数の表示などを行う。データベース(DB2、DB3)は、例えば、クライアントPC12内の記憶装置内に構成されている。
【0018】
ここで、シナリオとは、標的種類や射程距離等の「訓練条件」と、標的の隠顕(表示/非表示)や移動(前進/後進)などの「標的動作」と、を組み合わせた情報を指すものである。
【0019】
プロジェクター20は、サーバPC11により生成された標的90の映像データ(映像情報)を受け取って、その映像データ(映像情報)をスクリーン30へ投写する。この射撃訓練システム1では、例えば、訓練者50は、スクリーン30へ投写された標的90をライフルやピストルなどの火器を用いた実弾により射撃する射撃訓練を行う。訓練者50と標的が映されたスクリーン30との距離(D)を一定に保った状態、例えば、D=25mとされている。
【0020】
スクリーン30は、プロジェクター20からの映像データ(映像情報)が投写され、標的90が映し出される。スクリーン30は、例えば、ベニヤ板やゴム等、銃弾により穴が空いても破損しにくい材質とするのが好ましい。
【0021】
スクリーン30に映し出された標的90は、映像データ(映像情報)に基づいて、例えば、縦方向(垂直方向)や横方向(水平方向)に移動させることが可能であり、また、標的90のサイズ(大きさ)を変更できるように構成されている。標的90の移動速度は、自由に設定および変更できる。訓練者50と標的が映されたスクリーン30との距離(D)を一定に保った状態で、スクリーン30上の標的90のサイズ(大きさ)を変更する事は、射程距離を自由に選択することが可能であるということである。射程距離は、例えば、100m、200m、300m等から選択または指定することが可能である。サーバPC11は、スクリーン30に映し出される標的90のサイズを変更できるように、スクリーン30に映し出される標的90の映像データ(映像情報)を所望に調整可能に構成されている。また、選択した射程距離に応じて、スクリーン30に映す標的90の移動速度を変更することで、指定(選択)した射程距離による射撃訓練を模擬することができる。
【0022】
弾着位置検出装置40は、訓練者50の火器から発射された実弾51である銃弾のスクリーン30へ当った時に発生する銃弾の衝撃波により、銃弾の着弾位置を検出し、着弾位置の(X、Y)座標を着弾座標41として統制装置10のサーバPC11へ通知する。
図10は、実施例に係る射撃訓練システムの弾着位置検出装置の検出範囲の説明図である。
図10に示すように、弾着位置検出装置40の最大検出範囲(DTA)は、例えば、縦(L)の高さ(長さ)が3.5m(L=3500mm)、横(W)の幅(長さ)が5m(W=5000mm)である。着弾座標41である着弾位置の(X、Y)座標の検出精度は、例えば、5mm×5mmである。
【0023】
射撃訓練システム1は、以下の構成とされている。
【0024】
1)作成したシナリオに基づいた標的映像が、サーバPC12により、プロジェクター20を通じてスクリーン30へ映す。シナリオの作成については、後で、
図3から
図6を用いて説明する。
【0025】
2)訓練者50はスクリーン30上の標的90を狙い実弾による射撃を行う。
【0026】
3)弾着位置検出装置40により実弾の着弾座標の検出が行われる。弾着位置検出装置40により検出された着弾座標の検出結果がサーバPC11へ通知される。
【0027】
4)サーバPC11は保有する標的座標と弾着位置検出装置40より受信した着弾座標から、命中または非命中、および、着弾座標を判定する。そして、サーバPC11はクライアントPC12の表示画面12Dに、訓練状況を表示または着弾位置を表示することで、訓練者50に訓練状況を通知する。
【0028】
5)
図1に示すように、訓練者50と標的が映されたスクリーン30との距離(D)を一定に保った状態、例えば、D=25mで、後述するように、サーバPC11の操作により射程距離を選択できるように構成されている。射程距離は、例えば、100m、200m、300mなどが選択できる。
【0029】
6)選択された距離に応じてスクリーン30に映る標的90のサイズを変更することで、指定した射程距離を模擬する。
【0030】
射撃訓練システム1によれば、標的装置や軌道を設置する必要がないため、射撃訓練システム1の準備時間の短縮及び省スペースで移動標的に対する射撃訓練を実施できるという利点がある。また、作成したシナリオに基づいた標的映像を変更することで、標的の移動速度や射撃距離が容易に変更できる。そのため、訓練者のスキルに対応するバリエーションに富んだ射撃訓練を提供できるという利点がある。したがって、射撃訓練システム1によれば、より効果のある射撃訓練を提供することができる。
【0031】
(比較例)
図2は、比較例に係る射撃訓練システムの全体図である。
図2に示すように、比較例に係る射撃訓練システム1rは、統制装置10r(サーバPC11rとクライアントPC12rとを含む)、標的装置94r、移動台車装置95r、軌道93rで構成される。
【0032】
サーバPC10rは、アンテナAntを用いた空中線を有し、標的装置94rや移動標的装置92rと無線で通信を行う。サーバPC10rは、射撃訓練情報に従い標的装置94r及び移動標的装置92rの制御を行う。また、標的装置94r及び移動標的装置92rを常時監視し、着弾有無や装置状態を検出する。
【0033】
クライアントPC12rは、サーバPC11rより通知された標的装置94r又は移動標的装置92rの着弾状況を表示し、訓練者50rに通知する。また、クライアントPC12rは、射撃訓練情報の作成、保存、読込みを行う。
【0034】
標的装置94rと移動標的装置92rは、空中線を有し、統制装置10rとアンテナAntを用いて無線で通信を行う。標的装置94rは、移動台車装置95rと連結することで、移動標的装置92rを構成する。標的装置94r及び移動標的装置92rは、統制装置10rからの受信データを解析し、標的90rの隠顕制御や移動台車装置95rの移動制御を行う。また、振動又は弾着位置検出装置(接続した場合のみ)からの座標通知により、着弾を検知し、統制装置10rへ通知する。
【0035】
移動台車装置95rは、標的装置94rからの制御に従い、前方又は後方へ移動する。また、センサーにより軌道の前方末端部分及び後方末端部分を検知すると自動で停止する。
【0036】
軌道93rは、移動標的装置95rが走行するレールであり、連結することで長さを延長させる。通常の軌道93rに加え、例えば、移動台車装置95rへレール末端を通知するためのセンサーを有する軌道と、衝突により強制的に台車を停止させるストッパーを有する軌道がある。
【0037】
比較例の射撃訓練システム1rよる射撃訓練は、統制装置10rから標的装置94r及び移動標的装置92rに対し、標的90rの標的隠顕制御(「現出」及び「隠滅」)及び移動標的装置92rの移動制御(前進や後進)を行い、訓練者50rは現出中の標的装置94rの標的90r又は移動標的装置92rの標的90rを照準し、射撃を行うものである。
【0038】
統制装置10rでは、標的装置94r及び移動標的装置92rを自動で制御するための複数のシナリオを作成でき、訓練に応じてシナリオを選択することで、タイムスケジュールに基づいた標的90rの隠顕制御や移動標的装置92rの移動制御を行える。
【0039】
比較例に係る射撃訓練システム1rは、欠点と問題点について説明する。射撃訓練システム1rの準備においては、訓練の度に倉庫から統制装置10r、標的装置94r、移動台車装置95r、軌道93rを訓練フィールドへ運んで設置する必要がある。各装置(統制装置10r、標的装置94r、移動台車装置95r、軌道93r)は重量があり運搬に労力を要している。特に、軌道93rは、運搬後に、連結を行う必要があり、準備に多くの人と時間を要する問題がある。また、軌道93rを設置するには、平坦で一定の広さが必要となり、訓練場所が限定されてしまう問題もある。
【0040】
訓練においては、移動標的装置92rの移動範囲は設置した軌道93rの設置長に制限されてしまい、単調な動作となっている。また、標的90rのサイズを変更する場合は、一度訓練を停止する必要があるなど、手間がかかっており、瞬時に訓練内容を変更することが難しい。このことから、訓練者90rの熟練度に関わらず、訓練内容がワンパターンとなってしまうという問題がある。
【0041】
したがって、実施例に係る射撃訓練システム1では、先に説明したように、比較例に係る射撃訓練システム1rの問題点を解決することが可能である。
【0042】
次に、実施例に係る射撃訓練システム1のシナリオの作成について、図面を用いて説明する。
図3から
図6は、クライアントPC12の表示装置の表示画面12Dに表示される構成例である。
図3は、実施例に係る射撃訓練システムのシナリオ作成画面の説明図である。
図4は、実施例に係る射撃訓練システムのシナリオ動作編集画面の説明図である。
図5は、実施例に係る射撃訓練システムの移動標的の動作のシナリオ作成画面の説明図である。
図6は、実施例に係る射撃訓練システムの訓練諸元設定画面の説明図である。
図7は、実施例に係る射撃訓練システムのスクリーンの表示例の説明図である。
図8は、実施例に係る射撃訓練システムの訓練状況の表示画面の説明図である。
図9は、実施例に係る射撃訓練システムのスクリーン着弾イメージの説明図である。
図11は、実施例に係る射撃訓練システムの使用標的の説明図である。
【0043】
(1)シナリオ情報の作成
(シナリオ作成画面)
スクリーン30に映す標的を動作させるためのシナリオ情報は、射撃訓練を行う前に作成する。シナリオ情報は、
図3のシナリオ作成画面で訓練条件、
図4及び
図5で標的動作の情報を作成する。
【0044】
訓練条件は、
図3のシナリオ作成画面の上段に表示されている訓練シナリオリスト部129で、登録する行をクリックして選択状態とする。この時、選択行の背景色が、例えば、青色(この図では、灰色)へ変更される。ここでは、訓練シナリオリスト部129の3行目の行が選択されている状態である。そして、この状態で、
図3のシナリオ作成画面の下段に表示される入力情報エリア130において、シナリオ名称131の入力領域を例えば「xxxxxxxxxxx3」と、標的種類132の入力領域を例えば「XXXXXX」と、射程距離(
図3では、射距離と記載)133の入力領域を例えば「100m」と入力する。そして、各入力領域への入力の完了後、登録ボタン134を押下することで、選択行(3行目)に、入力情報エリア130の入力領域に入力した各内容が反映される。削除ボタン135を押下することで、入力情報エリア130の入力情報が削除される。これにより、選択したシナリオを削除することができる。訓練時間137は、動作編集の完了した時に、自動的に計算されて入力されるように構成されている。
【0045】
なお、標的種類132は、登録された複数の標的の中から選べるものとする。参考として、
図11に登録されている標的の一例として、a)得点タイプと、b)人形タイプと、を示す。標的は、a)得点タイプやb)人形タイプの標的以外としてもよい。
【0046】
言い換えると、
図3のシナリオ作成画面は、シナリオ情報作成手段ということができる。シナリオ情報作成手段は、スクリーン30に映す標的90を動作させるためのシナリオ情報であって、標的90の動作の情報を作成するために設けられている。シナリオ情報作成手段は、入力情報エリア(130)を有し、入力情報エリア(130)は、訓練条件である、シナリオ名称(131)、標的種類(132)、射程距離(
図3では、射距離と記載)(133)を入力するための入力領域を有する。
【0047】
(シナリオ動作編集画面)
標的動作の登録は、
図3の画面で訓練条件が登録済の行を選択すると動作編集ボタン136が有効となるので、有効化された動作編集ボタン136を押下すると表示される
図4に示すシナリオ動作編集画面で行う。
【0048】
図4の上段に示す時間軸(0~600秒(s))は訓練開始からの訓練終了までの標的制御情報143を示す。訓練者50は、この標的制御情報143により、タイムスケジュールを視覚的に認識することができる。標的制御情報143の有無はバー(140、141)で表し、第1バー140は「現出中且つ移動動作」、第2バー141は「現出中且つ停止」を示し、バー表示なしは隠滅状態(隠滅中)を示す。バー(140、141)を押下すると、選択されたバー(140、141)の定義内容が表示欄147に表示されるように構成されている。
【0049】
標的動作情報143は、動作情報欄144の開始時間145に入力した時間を起点に作成される。開始時間145に任意の時間を入力し、設定ボタン146を押下すると、
図5の移動標的動作シナリオ作成画面が表示される。なお、
図4に示すシナリオ動作編集画面には、削除ボタン150、戻るボタン151、登録ボタン152、ファイル読込ボタン154、および、ファイル書出ボタン155、も備えられている。
【0050】
(移動標的動作シナリオ作成画面)
図5の移動標的動作シナリオ作成画面で、開始座標170、終了座標171、速度172を入力すると標的の移動時間を算出し、現出時間欄173に現出時間を自動入力する。移動なしで現出させる場合は、開始座標170を入力し、現出時間欄173に現出時間を手動で入力する。開始座標170と終了座標171は、ラジオボタンRBを選択し、移動標的動作シナリオ作成画面の左側のスクリーンイメージ173上でマウスをクリックするとX座標175、Y座標176が入力される。スクリーンイメージ173上の座標は、
図3のシナリオ作成画面で選択された射程距離133が反映される。必要事項を入力し、登録ボタン178を押下すると、
図4に示すシナリオ動作編集画面に切り替わり、
図4や
図5で設定した標的について、現出時間のバー表示(140,141等)を行う。なお、
図5の移動標的動作シナリオ作成画面には、戻るボタン179も備えられている。
【0051】
上記を必要に応じて繰返し行って、必要なすべての標的について標的動作情報を作成し、登録ボタン178を押下すると、
図3のシナリオ作成画面に切り替わる。そして、
図3の訓練時間137に、ライアントPC12の制御装置により計算された訓練時間が表示される。そして、作成されたシナリオは、クライアントPC12の制御装置内の記憶装置に構築されたデータベースに登録されるように構成されている。以上で、所望のシナリオが作成および登録される。
【0052】
(2)訓練諸元の設定および射撃訓練の準備
(訓練諸元設定画面)
射撃訓練は、
図6に示す訓練諸元設定画面で、作成したシナリオの中から訓練に使用するシナリオを選択し、選択したシナリオを実行することで行うことができる。
【0053】
訓練情報欄60の「シナリオ」の選択欄61を訓練に使用するシナリオを選択すると、関連する「使用標的」の欄62、「射距離」の欄63は自動的に選択され、「使用標的」および「射距離」の設定内容が表示される。
【0054】
「プレビュー」ボタン64を押下すると、設定した「シナリオ、使用標的、射距離」に従い、2倍速でプロジェクター20に訓練映像を表示し、訓練内容を確認できる。プレビュー表示を途中で停止する場合、停止ボタン66を押下すると、プレビュー表示が停止できる。
【0055】
なお、「使用標的」、「射距離」は所望に変更することが可能である。
図6に示す訓練諸元設定画面には、訓練開始時に押下される訓練開始ボタン65、メニュー画面を表示するメニュー画面ボタン67が設けられている。
【0056】
図7に訓練情報の「シナリオ」と「使用標的」は同一で、「射距離」を「100m」(
図7のA)参照)から「200m」(
図7のB)参照)へと変えた場合のプレビュー表示イメージを示す。
図7のA)およびB)において、標的90は、得点タイプの移動標的であり、90A->90B->90C->90Dへと移動する構成とされている。「射距離」が100mから200mへ変更されると、標的90のサイズが小さく表示されるように構成されている。
【0057】
図7の表示例は、例えば、
図6に示す訓練諸元設定画面の「射距離」の欄63が100mから200mへ変更された場合と見なすことも可能である。または、
図3のシナリオ作成画面の射程距離(
図3では、射距離と記載)133を例えば「100m」から「200m」へ変更された場合と見なすことも可能である。つまり、「シナリオ」の射程距離(
図3や
図6の「射距離」)は、比較的容易に変更することができる。射距離を変えることで、容易に100mから200mの射場を模擬した射撃訓練が可能となる。
【0058】
(3)訓練開始、標的制御および訓練状況の表示
図6に示す訓練諸元設定画面に設けられた「訓練開始」ボタン65の押下で、クライアントPC12の表示画面12Dには、
図8に示す訓練状況表示画面が表示される。また、スクリーン30に選択したシナリオの訓練映像がプロジェクター20から投影され、射撃訓練が開始される。
【0059】
訓練の開始後、訓練者50はスクリーン30に映された標的90を狙い射撃を行う。
【0060】
図8に示す訓練状況表示画面の左側には、標的90と4回の射撃の位置(射撃の順番(着弾番号とも言う)は、
1、
2、
3、
4で示される。)が示される訓練状況表示領域80が設けられている。ここでは、2回目の射撃が、標的90から大きく外れた場合であり、表示領域外であったことが右向き太矢印(→)で示されている。
図8に示す訓練状況表示画面の右側には、部隊名、訓練者名、シナリオ(番号3)、標的(得点タイプ)、射程距離(200m)、経過時間(101秒)、訓練時間(300秒)、4回の射撃の「射撃番号(No)」、「得点」、「X座標」、「Y座標」および、「着弾時間」をまとめた訓練状況表81と、総得点82(ここでは、4点と表示されている)とが表示される。
【0061】
図8の4回の射撃の位置についてのスクリーン30の着弾イメージが
図9に示される。スクリーン30の着弾位置は、弾着位置検出装置40で取得し、サーバPC11へ着弾座標41を通知する。弾着位置検出装置40は、水平方向:5000mm、垂直方向:3500mmの範囲を5mmの精度で着弾位置を検出できる。
図10に弾着位置検出装置40の弾着検出範囲(DTA)を示す。
【0062】
サーバPC11は、受信した着弾座標41から射距離を考慮した補正座標を求め、サーバPC11内のデータベース(DB1)に登録する。座標補正方法について後で説明する。
【0063】
クライアントPC12はデータベース(DB1)を参照して着弾位置(補正された着弾座標)を取得し、
図8に示す訓練状況表示画面の訓練状況表示領域80に、着弾位置の点のプロットと着弾番号表示とを行い、また、訓練状況表81に「得点」、「X座標」、「Y座標」、「着弾時間」を表示する。標的90の中心座標から水平及び垂直方向に1m以上外れている着弾は、例えば、「→(矢印)」で的外着弾であることを表示する。また、「シナリオで設定した訓練時間経過後の着弾」はプロット及び表を、例えば、灰色で表示し、得点は0点とする。隠滅表示中の着弾はプロット及び表を、例えば、赤色で表示し、得点は0点とする。
【0064】
(4)座標の補正方法
座標の補正方法は、サーバPC11で行われるものであり、一例を以下に説明する。以下に説明する座標の補正方法を行うことにより、スクリーン30に映る移動する移動標的90を射撃した際、弾着位置検出装置40で検出する着弾座標の情報を、実距離(選択した射程距離での距離)での実際の着弾座標に補正して、例えば、
図8に示す訓練状況表示画面の訓練状況表示領域80や訓練状況表81などに表示することができる。
【0065】
(4-1)水平方向の補正
条件は、以下である。
【0066】
射程距離は、ここでは、300mとする。
【0067】
火器は小銃として、小銃の弾丸の弾速度は900m/sとする。この弾速度の値は、小銃の弾丸の初速が920m/sであることから推測した値である。
【0068】
手順1)実際の射撃距離の着弾時間を求める。
【0069】
火器からスクリーン30の距離Dは25mであり、小銃の弾丸は、発射から28msecで、スクリーン30に到達する。スクリーン30での、着弾座標が(XXX,YYY)であり、着弾時間が13:30:01.000とする。
【0070】
小銃の弾丸が、発射されてから300m先の標的90に到達するには、28mse(25m)+306msec(275m)の時間が必要である。
【0071】
実際の射撃距離の着弾時間TRは、着弾時間(13:30:01.000)に、275m分の時間である306msecを加算することで求められる(着弾時間TRは、13:30:01.306)。
【0072】
手順2)着弾時間より、着弾時の移動パターンを求める。
【0073】
標的90は、例えば、
図7のA)、B)に示すように、移動標的であり、90A->90B->90C->90Dへと移動する。ここで、標的90が標的90Aの位置にある時の時刻は、13:30:00.000である。標的90が標的90Aの位置から移動して標的90Bの位置にある時の時刻は、13:30:03.600から13:30:10.000である。標的90が標的90Bの位置から標的90Cの位置にある時の時刻は、13:30:11.200から13:30:15.000である。標的90が標的90Dの位置にある時の時刻は、13:30:17.400である。
【0074】
したがって、実際の着弾時間TR(13:30:01.306)は、標的90が標的90Aの位置から移動して標的90Bの位置へ移動している途中であることが分かる。
【0075】
ここで、標的90は、例えば、時速30kmで、水平方向に移動するとシナリオによって定義されているものとする。
【0076】
手順3)300m地点での着弾座標を求める。
【0077】
標的90Aの移動開始の位置の時点から着弾時間の位置の時点までの標的90の移動時間TTBは(13:30:01.306)-(13:30:00.000)であり、TB=1306msecである。
【0078】
標的90は、時速30kmで、水平方向に移動しているので、標的90の移動距離LTは、30km×1.306msec=(30×1000m)×(1.306msec/3600s)=10.883mである(LT=10.883m)。
【0079】
そして、移動距離LTがX座標へ変換される。
【0080】
手順4)300m地点の着弾座標(X座標)と着弾座標(スクリーン30での着弾座標(XXX,YYY))の差を算出する。300m地点の標的90の座標を中心座標(0,0)とした着弾座標をサーバPC11のデータベース(DB1)に登録する。
【0081】
手順5)クライアントPC12でサーバPC11のデータベース(DB1)を参照し、補正した着弾座標(補正後のX座標)をプロットする。
【0082】
(4-2)垂直方向の補正
垂直方向の補正についても、小銃で射距離300mの標的90を射撃する場合を例に説明する。
図12は、小銃の弾道イメージを示す図である。
図13は、25mで射撃時の銃毎の垂直補正値を示す補正テーブルの図である。
【0083】
小銃100では、照門部の上下転輪に、「1」、「2」、「3」等と打刻があり、それぞれ100m、200m、300mの射程距離に合わせて調整することができる。
【0084】
図12に示すように、弾丸の弾道110は、放物線を描いて飛ぶ。その際、上下輪転を打刻「3」とし、300m先の標的90を射撃する場合、25mの距離Dでは標的90の中心の垂直座標が300m先の標的90の中心の垂直座標と一致するという特性がある。この特性を利用することで、垂直方向については補正なしとすることができる。なお、
図12には、銃軸線111と照準線112も描かれている。
【0085】
ただし、銃の種類によっては25m地点において補正が必要となることも考えられる。そのため、サーバPC11が、
図13に示すような、25mで射撃時の銃毎(例えば、XX式小銃、XXX式小銃)の垂直補正値の補正テーブルTABを持つことで、25m地点で補正することも考慮する必要がある。
【0086】
以上、本開示者によってなされた開示を実施例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。