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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021931
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】乳化組成物及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20240208BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240208BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/06
A61K8/55
A61K8/37
A61Q19/00
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125138
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】522313662
【氏名又は名称】株式会社平安バイオメディカル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞人
(72)【発明者】
【氏名】荒河 純
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC372
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC662
4C083AD282
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD662
4C083BB04
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083DD01
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】グリチルレチン酸誘導体を含有し、透明性及び経時安定性に優れた乳化組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(C)の成分:(A)下記一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体、(B)リン脂質、(C)HLBが12以上の界面活性剤、及び(D)特定のジエステル化合物を含有し、かつ(A)成分に対する(D)成分の量が50質量%~400質量%である乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)の成分:
(A)下記一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体、
【化1】
(式(1)中、R及びRは、
が、-C1225、-C1429、-C1633、-C1837、又は-C2041を表し、且つRが水素原子を表すか、或いは、
が水素原子を表し、且つRが、-(C=O)C1123、-(C=O)C1327、-(C=O)C1531、又は-(C=O)C1735を表す。)
(B)リン脂質、
(C)HLBが12以上の界面活性剤、及び
(D)下記一般式(2)又は(3)で表される化合物を一種以上、
【化2】
(式(2)中、
及びRが、それぞれ独立して、炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
Qが、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルキル基、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルケニル基、非置換若しくは置換基を有するフェニル基、又は非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基であり、前記直鎖若しくは分岐アルキル基、前記直鎖若しくは分岐アルケニル基、前記フェニル基、及び前記シクロアルキル基の置換基は1又は2個のヒドロキシ基である)
【化3】
(式(3)中、
3及びR4が、それぞれ独立して、炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
Qが、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルキル基、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルケニル基、非置換若しくは置換基を有するフェニル基、又は非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基であり、前記直鎖若しくは分岐アルキル基、前記直鎖若しくは分岐アルケニル基、前記フェニル基、及び前記シクロアルキル基の置換基は1又は2個のヒドロキシ基である)
を含有し、かつ、(A)成分に対する(D)成分の量が50質量%~400質量%である乳化組成物。
【請求項2】
(D)成分が、炭素鎖2~18の脂肪酸とグリコールのジエステルを含む請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
トコフェロール及びトコフェロール誘導体からなる群より選択される少なくとも一種をさらに含有する請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項4】
(B)成分が、レシチンを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
【請求項5】
(C)成分が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エーテルから成る群より選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の乳化組成物を含む化粧料。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の乳化組成物を含む皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
グリチルレチン酸ステアリル等のグリチルレチン酸誘導体が、抗炎症効果を有する薬剤として化粧料等に配合されている。グリチルレチン酸誘導体は油溶性薬剤であり、乳化組成物の粒子径を小さくしてナノ乳化することで浸透性が向上して大きな効果が期待できるが、乳化、特に乳化安定性の確保が非常に難しい素材である。
【0003】
特許文献1は、下記(A)~(E)の成分:(A)下記一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体、(B)トコフェロール、酢酸トコフェロール及びトコトリエノールから選択される少なくとも1種、(C)リン脂質、(D)HLBが12以上の界面活性剤、及び、(E)トリリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選択される少なくとも1種を含む脂肪酸グリセリド、を含有し、かつ、一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体の含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下である乳化組成物について開示している。
【0004】
特許文献1では、グリチルレチン酸誘導体に、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を配合することで、透明性の高い乳化組成物及び化粧料を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5918163号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリチルレチン酸誘導体を含有し、より優れた透明性及び経時安定性を有する乳化組成物及び化粧料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
【0008】
項1.下記(A)~(D)の成分:
(A)下記一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体、
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、R及びRは、
が、-C1225、-C1429、-C1633、-C1837、又は-C2041を表し、且つRが水素原子を表すか、或いは、
が水素原子を表し、且つRが、-(C=O)C1123、-(C=O)C1327、-(C=O)C1531、又は-(C=O)C1735を表す。)
(B)リン脂質、
(C)HLBが12以上の界面活性剤、及び
(D)下記一般式(2)又は(3)で表される化合物を一種以上、
【0011】
【化2】
【0012】
(式(2)中、
及びRが、それぞれ独立して、炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
Qが、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルキル基、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルケニル基、非置換若しくは置換基を有するフェニル基、又は非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基であり、前記直鎖若しくは分岐アルキル基、前記直鎖若しくは分岐アルケニル基、前記フェニル基、及び前記シクロアルキル基の置換基は1又は2個のヒドロキシ基である)
【0013】
【化3】
【0014】
(式(3)中、
3及びR4が、それぞれ独立して、炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
Qが、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルキル基、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルケニル基、非置換若しくは置換基を有するフェニル基、又は非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基であり、前記直鎖若しくは分岐アルキル基、前記直鎖若しくは分岐アルケニル基、前記フェニル基、及び前記シクロアルキル基の置換基は1又は2個のヒドロキシ基である)
を含有し、かつ、(A)成分に対する(D)成分の量が50質量%~400質量%である乳化組成物。
【0015】
項2.(D)成分が、炭素鎖2~18の脂肪酸とグリコールのジエステルを含む項1に記載の乳化組成物。
【0016】
項3.トコフェロール及びトコフェロール誘導体からなる群より選択される少なくとも一種をさらに含有する項1に記載の乳化組成物。
【0017】
項4.(B)成分が、レシチンを含む項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
【0018】
項5.(C)成分が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エーテルから成る群より選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む項1~3のいずれか一項に記載の乳化組成物。
【0019】
項6.項1~5のいずれか一項に記載の乳化組成物を含む化粧料。
【0020】
項7.項1~5のいずれか一項に記載の乳化組成物を含む皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、グリチルレチン酸誘導体を含有し、透明性及び経時安定性に優れた乳化組成物及びこれを含有する化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
乳化組成物
本発明の乳化組成物は、
下記(A)~(D)の成分:
(A)下記一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体、
【0023】
【化4】
【0024】
式(1)中、R及びRは、
が、-C1225、-C1429、-C1633、-C1837、又は-C2041を表し、且つRが水素原子を表すか、或いは、
が水素原子を表し、且つRが、-(C=O)C1123、-(C=O)C1327、-(C=O)C1531、又は-(C=O)C1735を表す
(B)リン脂質、
(C)HLBが12以上の界面活性剤、及び
(D)下記一般式(2)又は(3)で表される化合物を一種以上、
【0025】
【化5】
【0026】
(式(2)中、
及びRが、それぞれ独立して、炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
Qが、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルキル基、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルケニル基、非置換若しくは置換基を有するフェニル基、又は非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基であり、前記直鎖若しくは分岐アルキル基、前記直鎖若しくは分岐アルケニル基、前記フェニル基、及び前記シクロアルキル基の置換基は1又は2個のヒドロキシ基である)
【0027】
【化6】
【0028】
(式(3)中、
3及びR4が、それぞれ独立して、炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数2~18の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
Qが、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルキル基、非置換若しくは置換基を有する炭素数2~40の直鎖若しくは分岐アルケニル基、非置換若しくは置換基を有するフェニル基、又は非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基であり、前記直鎖若しくは分岐アルキル基、前記直鎖若しくは分岐アルケニル基、前記フェニル基、及び前記シクロアルキル基の置換基は1又は2個のヒドロキシ基である)
を含有し、かつ、(A)成分に対する(D)成分の量が50質量%~400質量%である。
【0029】
(A)グリチルレチン酸誘導体
一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体は、グリチルレチン酸誘導体は、油溶性薬剤として作用する。
【0030】
(A)一般式(1)で表されるグリチルレチン酸誘導体には、i)グリチルレチン酸の3位の水酸基を、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又はエイコサン酸でエステル化させることより製造されるグリチルレチン酸エステル、及び、ii)グリチルレチン酸の20位のカルボキシル基を、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、又はエイコサノールでエステル化することにより製造されるグリチルレチン酸エステルが包含される。
【0031】
一般式(1)中、Rが、-C1633、-C1837、又は-C2041を表し、且つ、Rが水素原子を表すグリチルレチン酸誘導体、或いは、Rが水素原子を表し、且つ、Rが、-(C=O)C1531、又は-(C=O)C1735を表すグリチルレチン酸誘導体が好ましい。更には、Rが、-C1837、且つ、Rが水素原子で表されるグリチルレチン酸ステアリルが最も好ましい。
【0032】
Qが非置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基の場合、シクロアルキル基の炭素数は3~8であることが好ましい。
グリチルレチン酸ステアリルは、CAS番号13832-70-7の化合物であり、脂溶性物質である上に、一般的な油剤に対する相溶性の低い化合物である。グリチルレチン酸ステアリルは、従来、抗炎症、抗アレルギー剤として、石鹸、クリーム、乳液に用いられている。
【0033】
グリチルレチン酸誘導体は、上記のエステル化反応により合成して得ることもできるし、市販品を利用することもできる。
【0034】
本発明の乳化組成物におけるグリチルレチン酸誘導体の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。グリチルレチン酸誘導体に期待される抗炎症作用などの所望の効果を充分に発揮させるためには、下限値は0.9質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。乳化組成物中におけるグリチルレチン酸誘導体の含有量の上限は、溶解性の観点から、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。
【0035】
本発明の乳化組成物における、グリチルレチン酸誘導体の含有量はさらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下であり、最も好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下である。グリチルレチン酸誘導体の含有量が、上記の範囲であることで、グリチルレチン酸誘導体を高濃度に含有しながらも、高い透明性が長期間に亘って安定に維持することができる。また、本発明の透明性の高い乳化組成物を、その好適な用途の一つである化粧料に適用した場合においては、グリチルレチン酸誘導体を高濃度に含有しながらも、優れた経時安定性が得られる。
【0036】
(B)リン脂質
リン脂質としては、グリセロリン脂質が挙げられる。グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ビスホスアチジン酸、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセリン、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等が挙げられ、これらの任意の混合物も用いることができる。
【0037】
乳化組成物の透明性及び経時安定性の点で、リン脂質中のホスファチジルコリンの含有率が50質量%以上であることが好ましい。リン脂質中のホスファチジルコリンの含有率が50質量%以上であると、乳化組成物の透明性及び経時安定性がより向上する。リン脂質中のホスファチジルコリンの含有率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。リン脂質中のホスファチジルコリンの含有率の上限値は、好ましくは100質量%以下である。
【0038】
グリセロリン脂質を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンをリン脂質の供給源として使用することができる。
【0039】
レシチンは、グリセロリン脂質の一種で、自然界の動植物のすべての細胞中に存在しており、生体膜の主要構成成分である。工業的には、大豆と卵黄を原料として得られた大豆レシチン及び卵黄レシチンが製造及び市販されている。
【0040】
大豆レシチンは、大豆油精製工程で副生する油滓を乾燥、精製することにより製造される。通常、リン脂質含量が70質量%以下であるペースト状レシチンは、大豆粗油を30質量%程度含むが、安価なため、特に食品分野ではほとんどこのペースト状のレシチンが用いられる。また、近年では、リン脂質自体の生理活性や、より高度な乳化剤へのニーズから、高度精製、分別、酵素分解などの技術が加えられ、性能、機能の異なる種々のレシチン群が作られている。
【0041】
高度精製レシチンは、上記ペースト状レシチンから、アセトン等の溶媒を用いて脱油し、粉末化したもので、一般にレシチン含量が90質量%以上となっている。この高度精製レシチンの例としては、PHOSPHOLIPON20(リポイド社)、レシオンP(理研ビタミン株式会社)、SLPホワイト(辻製油株式会社)、エマルメティック300(ルーカスマイヤーコスメティックス社)などが市販されている。
【0042】
分別レシチンは、上記高度精製レシチンに対して、各種溶媒への溶解度差を利用したり、蒸留等の操作を行なうことにより、特定のリン脂質の含有量を高めたものであり、一般には、ホスファチジルコリン含量を高めたものが市販されている。ホスファチジルコリン含量を高めた市販の分別レシチンの例としては、PHOSPHOLIPON50(PC含量:45質量%)、PHOSPHOLIPON85G(PC含量:80質量%)、PHOSPHOLIPON90G(PC含量:94質量%)(以上、リポイド社)、エメルメティック900(PC含量:50質量%)、エメルメティック930(PC含量:95質量%)(以上、ルーカスマイヤーコスメティックス社)、SLP-PC70、SLP-PC90(以上、辻製油株式会社)などが挙げられる。
【0043】
本発明において、グリセロリン脂質として、酵素分解したグリセロリン脂質を使用することもできる。例えば、前記レシチンを酵素分解したリゾレシチン(酵素分解レシチン)は、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られる他、ホスホリパーゼA1、又はA2を用いたレシチンの加水分解により得ることもできる。このようなリゾレシチンに代表されるリゾ化合物を化合物名で示すと、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。
【0044】
リン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。リン脂質としては、乳化組成物の透明性及び経時安定性の観点から、リゾレシチン以外のリン脂質が好ましく、精製レシチンが好ましく、分別レシチンがより好ましい。これらのレシチンを含有することで、乳化組成物の透明性及び経時安定性がより向上し、乳化組成物を含有する化粧料の透明性及び経時安定性が向上する。
【0045】
本発明の乳化組成物におけるリン脂質の含有量は、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.2質量%~8質量%がより好ましく、1質量%~4質量%がさらに更に好ましい。リン脂質の含有量を0.1質量%以上とすることにより、乳化組成物の乳化安定性がより良好となる傾向がある。また、リン脂質の含有量を10質量%以下とすることにより、過剰なリン脂質が油性成分から離れて水中にリン脂質分散体を形成することなく、乳化組成物の乳化安定性が得られる点から好ましい。
【0046】
また、本発明の乳化組成物中の(B)リン脂質の含有量の(A)グリチルレチン酸誘導体の含有量に対する質量比は、0.1~1.5であることが好ましい。乳化組成物中の、ホスファチジルコリンの量の(A)グリチルレチン酸誘導体の含有量に対する質量比は、0.05~1であることが好ましく、0.01~0.75であることがより好ましい。
【0047】
(C)HLBが12以上の界面活性剤
HLBが12以上の界面活性剤は、乳化組成物中の油相/水相の界面張力を下げ、その結果、乳化組成物の粒子径を細かくするために使用される。HLB値の上限値は、特に限定されないが、一般的には、20以下であり、18以下が好ましい。
【0048】
HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性-疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0049】
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)
ここで、Mwは親水基の分子量、Moは疎水基の分子量である。
【0050】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0051】
HLBが12以上の界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の各界面活性剤を挙げることができ、特に限定されないが、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。 HLBが12以上の界面活性剤は、1種類でもよいし、または2種類以上を組み合わせてもよい。
【0052】
HLBが12以上の界面活性剤として、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、最も好ましくは、HLBが12以上の界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0053】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度が2以上(好ましくは6~15、より好ましくは8~10)のポリグリセリンと、炭素数8~18の脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸から選択される脂肪酸)とのエステルであることが好ましい。
【0054】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0055】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12~20のものがより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0056】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0057】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。またポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2~100が好ましく、4~50がより好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0058】
HLBが12以上の界面活性剤は、単独又は混合して用いることができる。
【0059】
本発明の乳化組成物におけるHLBが12以上の界面活性剤の含有量は、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、2質量%~15質量%が更に好ましい。HLBが12以上の界面活性剤量を0.5質量%以上含有することは、所定量のグリチルレチン酸誘導体の溶解性を向上させると共に、油相/水相間の界面張力を下げ易い点で好ましい。また、30質量%以下とすることは、界面活性剤を過剰量としない点で好ましい。
【0060】
(D)ジエステル化合物
(1)一般式(2)で表される化合物
本化合物は2価以上4価以下の多価アルコールの2個の水酸基が脂肪酸でエステル化された化合物を表す。
【0061】
上記、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコ-ル、ブチレングリコール、ペンチレングリコールなどの炭素数2~10のグリコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリグリコール類も用いることができる。また、グリセリン、ジグリセリンなどのグリセリン類も用いることができる。
【0062】
また、これらの多価アルコールとエステル化する脂肪酸としては、炭素数2~18の直鎖、分岐、あるいは二重結合を有する脂肪酸でも良く、具体的には、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。
【0063】
これらのジエステル化合物の例としては、脂肪族とグリコールのジエステル、脂肪酸グリセリド、グリセリンの2量体がジエステル化された化合物等が挙げられる。
【0064】
脂肪族とグリコールのジエステルの例としては、ジカプリン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジミリスチン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸ブチレングリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチレングリコール等が挙げられるが、乳化分散性、安定性の観点から、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチレングリコールが特に好ましい。
【0065】
脂肪酸グリセリドの例としては、ジカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸グリセリル、グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジパルミトレイン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、ジリノール酸グリセリル、ジリノレン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリルなどが挙げられるが、乳化組成物の安定性の観点から、ジオレイン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、又はジカプリン酸グリセリルがより好ましい。
【0066】
またグリセリンの2量体がジエステル化された化合物の例として、ジイソステアリン酸ポリグリセリン(2)、ジステアリン酸ポリグリセリン(2)、ジミリスチン酸ポリグリセリン(2)、ジカプリン酸ポリグリセリン(2)などが挙げられるが、溶解性、乳化安定性の観点から、ジステアリン酸ポリグリセリン(2)、ジミリスチン酸ポリグリセリン(2)が好ましい。
【0067】
(2)一般式(3)で表される化合物
この化合物は、有機二塩基酸と高級アルコールとのジエステル化合物を表す。
【0068】
ここで、有機二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、ダイマー酸、ナフタリンジカルボン酸、などが挙げられるが、安全性、入手容易性から、セバシン酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸が好ましい。
【0069】
この二塩基酸と高級アルコールのジエステル化合物としては、コハク酸ジエチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジイソブチル、ダイマー酸ジイソプロピルが好ましい。
【0070】
油剤である成分(D)及び(E)の合計含油量は、本発明の乳化組成物の濁度を低く抑え、且つ、乳化組成物を化粧料に適用した際に、化粧料使用感を向上させる観点から、乳化組成物の総量に対して、1質量%~35質量%が好ましい。
【0071】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(D)成分の量は、50質量%~400質量%である。(A)成分に対する(D)成分の量が50質量%未満であると、時間経過と共に溶解した成分が析出する事に起因する濁度上昇が起こり、(A)成分に対する(D)成分の量が400質量%を超えると、乳化直後から濁度が大きくなるためである。
【0072】
本発明の乳化組成物における成分(D)の含有量は、1質量%~20質量%が好ましく、2質量%~4質量%がより好ましい。
【0073】
(E)トコフェロール及びトコフェロールその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種
本発明の乳化組成物は、トコフェロール及びトコフェロールその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含有してもよい。
【0074】
グリチルレチン酸誘導体の含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下である場合、トコフェロール及びその誘導体を含有することが好ましい。
【0075】
トコフェロール及びその誘導体は、グリチルレチン酸誘導体の溶解性が極めて高い油剤である。
【0076】
本発明におけるトコフェロール及びその誘導体は、トコフェロール及び基本骨格をトコフェロールとした誘導体を指し、具体的には、トコフェロールの異性体であるα、β、γ、及びδトコフェロール、トコフェロールが有するOH基が脂肪酸で修飾された酢酸トコフェロール、基本骨格をトコールとするトコトリエノール等が挙げられる。
【0077】
トコフェロール及びその誘導体の由来は特に限定されず、具体的には、ひまわり、とうもろこし、オリーブ、菜種、大豆、落花生、アーモンドでもよい。
【0078】
本発明におけるトコフェロール及びその誘導体としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、又はトコトリエノールをより好ましく用いることができる。
【0079】
トコフェロール及びその誘導体は、単独でも2種以上を組合せてもよい。
【0080】
乳化組成物中のグリチルレチン酸誘導体の含有量が、1.0質量%以上5.0質量%以下である場合、成分(E)は、酢酸トコフェロール、トコフェロール及びトコトリエノールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0081】
本発明の乳化組成物が成分(E)を含有する場合、含有量は、0.5質量%~5質量%が好ましい。
【0082】
(F)併用可能なオイル類
本発明には(D)で示したジエステル化合物の他に、炭素数10~18の脂肪酸モノエステル類、N-アシルアミノ酸エステル類、トリ脂肪酸グリセリド類を含んでも良い。
【0083】
脂肪酸モノエステル類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、などが挙げられる。
【0084】
N-アシルアミノ酸エステル類としては、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジヘキシルデシル、ラウロイルグルタミン酸ジイソステアリル、ラウロイルサルコシンイソプロピルなどが挙げられる。
【0085】
トリ脂肪酸グリセリド類としては、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、リイソステアリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、又はトリトリリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0086】
(G)多価アルコール
本発明の乳化組成物は、透明性、経時安定性、及び防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
【0087】
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、且つ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。以上より、乳化組成物が多価アルコールを含有することは、乳化粒子径をより微細化でき、且つ、粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。また、多価アルコールの添加により、乳化組成物の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0088】
本発明における多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0089】
多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いることが好ましい。これにより、水性媒体と油性成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、且つ、安定な乳化組成物を形成することができる。その結果、本発明の乳化組成物を化粧料に適用した場合において、経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0090】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、乳化組成物の粒子径がより小さくなり、且つ、粒子径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0091】
多価アルコールの含有量は、乳化組成物が示す透明性、経時安定性、及び防腐性に加えて、乳化組成物の粘度の観点から、組成物の全量に対して10質量%~60質量%が好ましく、20質量%~55質量%がより好ましく、30質量%~50質量%が更に好ましい。
【0092】
多価アルコールの含有量が10質量%以上であると、油性成分の種類や含有量等によっても、十分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、乳化組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0093】
(H)水
本発明の乳化組成物は、好ましくは水を含有する。水の含油量は、防腐性の観点から組成物全量に対して20質量%~75質量%が好ましく、20質量~50質量%以下がより好ましい。
【0094】
(I)その他の添加成分
本発明の乳化組成物は、上記成分の他、食品、化粧品等の分野において通常用いられる添加成分を、その形態に応じて適宜含有してもよい。
【0095】
例えば、その他の添加成分としては、グルコース、ショ糖、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリン等の単糖類又は多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;カゼイン、アルブミン、メチル化コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、ゼラチン等の分子量5000超のタンパク質;グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、メチオニン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン等のアミノ酸及びそれらの誘導体;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体等の合成高分子;ヒドロキシエチルセルロース・メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、アスコルビン酸又はその誘導体(アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸リン酸エステル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、硫酸アスコルビル、硫酸アスコルビル2ナトリウム塩、及びアスコルビル-2-グルコシド等)、トコトリエノール及びその誘導体、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類、プテロスチルベン等を含むヒドロキシスチルベン、などを挙げることができる。これらの添加成分は、その機能に基づいて、例えば機能性成分、賦形剤、粘度調整剤、ラジカル捕捉剤などとして含まれてもよい。
【0096】
その他、本発明においては、例えば、種々の薬効成分、pH調整剤、pH緩衝剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、着色剤など、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
【0097】
本発明の乳化組成物は、好ましくはγ-オリザノールを含有しない。
【0098】
乳化組成物の製造方法
本発明の乳化組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法に従い製造することができる。例えば、a)水性媒体に、水溶性成分を溶解させ、レシチンを分散させて水相を得ること、b)油剤、油性成分、HLBが12以上の界面活性剤を混合又は溶解して、油相を得ること、c)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行い、乳化組成物を得ること、を含む製造方法が好ましい。
【0099】
乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9~50/50が好ましく、0.5/99.5~30/70がより好ましく、1/99~20/80が更に好ましい。油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないため乳化組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、界面活性剤濃度が薄くなることがなく、乳化組成物の経時安定性が保たれるため好ましい。
【0100】
乳化分散は、1ステップの乳化操作を行ってもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な乳化粒子を得る点から好ましい。具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー、超音波分散機等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることが出来る。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行っても良い。
【0101】
本発明の乳化組成物は、適宜pH調整剤を使用することができる。pH調整剤により調整された本発明の乳化組成物のpH値は、4~10の範囲であることが好ましい。
【0102】
pH調整剤は、乳化組成物を調製する前及び後のいずれに使用してもよい。pHの変動幅を小さくして、より緩和な条件でpHを調整することが可能である点から、pH調整剤は、乳化組成物の調製前に使用することが好ましい。その際には、pH調整剤は、乳化組成物を調製する前の水相組成物、及び油相組成物のいずれに添加してもよい。
【0103】
pH調整剤としては、無機酸、有機酸、無機塩基及びそれらの塩を用いてもよく、具体的には、クエン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸のような有機酸とその塩;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸とその塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基;リン酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのような無機水素塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
化粧料
本発明の乳化組成物は、化粧料用途などに適用することができる。
【0105】
本発明の化粧料は、例えば、本発明の乳化組成物及び必要に応じて添加成分を、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサーなどを用いて、混合等して得ることができる。
【0106】
上記した各成分以外に任意の他の成分を、必要に応じて含むことができる。
【0107】
化粧料は化合物(A)やトコフェロール類の安定性向上という観点から、抗酸化剤を含むことができる。抗酸化剤としては、アスコルビン酸化合物、ジブチルヒドロキシトルエン、カロテノイド類等が挙げられる。安定性を顕著に向上させるという点で、抗酸化剤としては、アスコルビン酸化合物より選択された少なくとも1種がより好ましい。
【0108】
アスコルビン酸化合物としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸硫酸マグネシウム、アスコルビン酸硫酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸パルミテートが挙げられる。
【0109】
化粧料は、他の機能性油性成分を含むことができる。機能性油性成分は各種生理活性が期待できる機能性油性成分として既知のものであってもよい。また、機能性油性成分は本発明の乳化時に一緒に添加されても良いが、別に乳化して化粧料製造時に混合されても良い。
【0110】
機能性油性成分の具体例としては、例えば、天然型セラミド類、糖修飾セラミド等のセラミド類;オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、ココナッツ油等の油脂類;コエンザイムQ10等のユビキノン類;EPA、DHA、リノレン酸等のω-3油脂類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;;ビタミンA類、ビタミンD類等の脂溶性ビタミン;などを挙げることができる。
【0111】
化粧料は、種々の生体機能の発揮が期待される天然物からの各種抽出物を含むことができる。このような各種抽出物としては、例えば、ニンジンエキス、センブリエキス、アロエエキス-1、アルニカエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、桑白皮エキスゴボウエキス、セイヨウキズタエキス、ニンニクエキス、松エキス、ローズマリーエキス、オノニスエキスローマカミツレエキス、アルテアエキス、オノニスエキス、セイヨウノコギリソウエキス、桐葉エキス、セロリエキス、タイムエキス-2、サンショウエキス、フキタンポポエキス、ホップエキス、チンピエキスメリッサエキス、セージエキス、ユーカリエキス、黄杞エキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、スギナエキス、サンショウエキス、シャクヤクエキス、ビワ葉エキス等が挙げられ。
【0112】
上記成分の他、化粧料、特に頭皮用の皮膚外用剤に通常用いられる添加成分を、本発明の皮膚外用剤に、その形態に応じて適宜含有させてもよい。
【0113】
その他の添加成分としては、例えば、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリン等の単糖類又は多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;チアミン等のビタミンB1化合物;リボフラビン等のビタミンB2化合物;ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のビタミンB3化合物;ナイアシン、パントテン酸、パントテニルエチルエーテル等のビタミンB5化合物、ピリドキシン等のビタミンB6化合物、ビオチン等のビタミンB7化合物、コバラミン等のビタミンB12化合物、葉酸等のビタミンB群;γ-オリザノール、オロチン酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ヨクイニンなどの水溶性ビタミン化合物;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;カゼイン、アルブミン、メチル化コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、ゼラチン等の分子量5000超のタンパク質;グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、メチオニン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン等のアミノ酸及びそれらの誘導体;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン/酸化プロピレンブロック共重合体等の合成高分子;ヒドロキシエチルセルロース/メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸化合物(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル等)、リグナン化合物、クルクミン化合物、クマリン化合物、プテロスチルベン等を含むヒドロキシスチルベンなどを挙げることができる。皮膚外用剤は、その機能に基づいて、例えば機能性成分、賦形剤、粘度調整剤、ラジカル捕捉剤等として、その他の添加成分を含んでもよい。
【0114】
その他、本発明においては、例えば、種々の薬効成分、pH調整剤、pH緩衝剤、紫外線吸収剤、香料、着色剤など、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
【0115】
化粧料としては、化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などの化粧料が挙げられる。本発明の乳化組成物は、透明性が要求される水性の化粧料に特に好適に適用される。
【0116】
化粧水、美容液については、一般的に透明性を有することが求められ、その経時変化後も透明で安定していることが要求される。
【0117】
本明細書において、「透明性」は濁度を指標として評価される。濁度は、波長650nmの光を用いて、分光光度計を用いて25℃にて測定した吸光度により規定される。
【0118】
本明細書において、「経時安定性」は、時間経過前後の濁度の変化率((時間経過後の濁度)/(時間経過前の濁度*100(%))を測定することにより評価することができる。実際には、時間経過前、時間経過後それぞれの乳化組成物を純水で100倍に希釈し、分光光度計を用いて波長650nmの光を用いて測定した吸光度(濁度)から求めることができる。濁度の値は、0.01~0.3であり、より好ましくは0.01~0.2である。
【実施例0119】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0120】
実施例1 乳化組成物の調製および評価
(本発明試料1)
1.乳化組成物の調製
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間分散して、水相組成物を得た。
【0121】
・SLP-PC70 *1 1.5g
・グリセリン 46.8g
・純水 33.7g
また、下記成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
【0122】
・グリチルレチン酸ステアリル 2.0g
・酢酸-DL-トコフェロール 2.0g
・NPDC *2 2.0g
・NIKKOL Decaglyn 1-ISV *3 2.0g
・1,3-ブタンジオール 10.0g
*1 辻製油株式会社 ホスファチジルコリンを70%含有するレシチン
*2 高級アルコール工業株式会社 成分:ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
*3 日光ケミカルズ株式会社 モノイソステアリン酸デカグリセリル
【0123】
水相組成物を攪拌した状態に維持しながら、油相組成物を加えた後、高速攪拌ホモジナイザーを用いて3分間分散することで予備乳化物を得た。
【0124】
続いて、得られた予備乳化物を約60℃まで冷却し、湿式微粒化装置 スターバーストHJP25001(株式会社スギノマシン)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
【0125】
その後、得られた乳化組成物を平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過し、80℃で30分加熱滅菌することで実施例1の乳化組成物を調製した。
(本発明試料2)
本発明試料1のNPDCをNDO*4に変えた以外は本発明試料1と同様に作製した。
(本発明試料3)
本発明試料1のNPDCをDADIP*5に変えた以外は本発明試料1と同様に作製した。
(本発明試料4)
本発明試料1のNPDCをDIOS*6に変えた以外は本発明試料1と同様に作製した。
(比較例試料1)
比較例1の乳化組成物は、実施例1のNPDCの代わりに、ココナードMT(花王株式会社、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル)を用いて調製した(表1)。
(比較例試料2)
本発明試料1のNPDCの量を0.8gとし、全量をグリセリン、水で100gに調整した。
(比較例試料3)
本発明試料1のNPDCの量を10.0gとし、全量をグリセリン、水で100gに調整した。
高級アルコール工業製KAK-NDO 成分:ジエチルヘキシルネオペンチルグリコール
高級アルコール工業製KAK-DADIP 成分:ダイマー酸ジイソプロピル
高級アルコール工業製KAK-DIOS 成分:コハク酸ジエチルヘキシル
【0126】
2.乳化組成物の評価
上記で得られた各グリチルレチン酸誘導体含有乳化組成物の、濁度、経時安定性を評価した。詳細は以下の通りである。
【0127】
2-1.濁度の評価
本発明1~4及び比較例1~3の各グリチルレチン酸誘導体含有乳化組成物 0.1gを、それぞれ、9.9gの純水に添加して、マグネッチックスターラーを用いて、10分間攪拌を行い、水稀釈液を得た。
【0128】
得られた各乳化組成物の水希釈液を用い、初期濁度の指標として650nmにおける吸光度を、分光光度計(V-630、株式会社日本分光製)を用いて、25℃にて測定し、下記基準で評価した。また、各乳化組成物の調製から1ヶ月経過後の濁度も測定した。
【0129】
評価基準
合格:0.05より大きく0.2以下(○)
不合格:0.2より大きい(×)
【0130】
2-2.経時安定性評価
経時安定性の評価(透明性の持続性)は、各グリチルレチン酸誘導体含有乳化組成物を25℃で1ヶ月経時させた後における吸光度変化を濁度変化と見なして測定し、調製直後の吸光度の変化率A(%)を、下記式に基づき求め、下記基準で評価した。
【0131】
変化率A(%)=25℃で1ヶ月間経時させた後の吸光度/調製直後の吸光度×100
変化率A(%)が100%に近い程、乳化組成物は経時安定性に優れることを示す。
【0132】
評価基準
合格: 150%未満(〇)
不合格:150%以上(×)
以上の結果を下記表1に示す。各成分の単位はgである。
【0133】
【表1】
【0134】
実施例2.化粧料の調製例
1.化粧料の調製
実施例1の乳化物を用いて表2の組成で化粧料1を作成した。各成分の単位はgである。
【0135】
各試薬の製造業者は以下の通りである。
非イオン水溶性ポリマー液 90SH15000 メトローズ(登録商標) ヒドロキシプロピルメチルセルロース 信越化学工業株式会社
Zemea Select Propanediol DuPont Tate & Lyle Bio Products
化粧品用濃グリセリン 花王株式会社
Hydrorite-5 green Symrise
ハイソルブ EPH 東邦化学株式会社
sensiva SC50 JP 成和化成株式会社
レシノール SH50 日光ケミカルズ株式会社
Neosolue-Aqulio 日本精化株式会社
エマノーンHC60 花王株式会社
1,3-ブチレングリコール 株式会社ダイセル
クエン酸 磐田工業株式会社
【0136】
実施例1におけるのと同じ条件で、化粧料の初期濁度及び25℃で1ヶ月経時させた後における濁度を吸光度で測定したところ、初期濁度の評価、経時安定性の判定はともに〇であった。
【0137】
【表2】