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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021940
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】列車監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240208BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20240208BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240208BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20240208BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20240208BHJP
   B61L 25/04 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N7/18 E
H04N5/232 941
H04N5/232
B61D19/02 Q
B61D19/02 Z
B61D37/00 G
B61L25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125158
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々 敦
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC13
5C054FE05
5C054FE26
5C054FE28
5C054FF02
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA30
5C122DA11
5C122DA14
5C122EA01
5C122EA67
5C122FA18
5C122FH11
5C122FH14
5C122FK23
5C122FK35
5C122HA86
5C122HB02
(57)【要約】
【課題】列車監視システムにおいて、異常事態の発生を迅速かつ確実に認識する。
【解決手段】速度信号は、速度が5km/h以上となるH、速度が5km/h未満となるLの2値として出力される。ドアの状態は、閉状態がL、開状態がHとなる2値として表される開閉信号として、列車側から制御部に出力される。このような速度信号、開閉信号を、列車状態信号として制御部が受信することによって、制御部は、速度状態が変化した時点、ドアの開閉状態が変化した時点を認識することができる。列車の停車時に乗降客がドアの近傍にいる可能性が高い期間を、検知対象物を特に適切に認識すべき期間と設定した場合、ドアが開状態となった時点(B)から、発車の時点(D)までを、このような期間とすることができる。この期間においては、フレームレートを高く、画質を高画質としており、この期間外においては、フレームレートを低く、画質を低画質としている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に設けられたドアの周囲を監視するカメラによる映像を用いて列車の安全管理を行う列車監視システムであって、
前記映像の中における検知対象物を認識する画像認識部と、
前記映像を表示させる表示部と、
前記画像認識部によって前記映像中に前記検知対象物が認識された場合に、前記表示部において、前記検知対象物が認識された旨の警報を表示させる制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記列車の速度、又は前記列車のドアの開閉状態を示す列車状態信号を受信し、当該列車状態信号に応じて、前記カメラにおける前記映像のフレームレート又は画質を制御することを特徴とする列車監視システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記列車の速度が低い場合、又は前記ドアが開である場合において、前記フレームレートを高くする、又は前記画質を高くし、
前記列車の速度が高い場合、又は前記ドアが閉である場合において、前記フレームレートを低くする、又は前記画質を低くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の列車監視システム。
【請求項3】
前記検知対象物の種類が複数設定され、
前記画像認識部は、認識された前記検知対象物の種類を認識し、
前記制御部は、認識された前記検知対象物の種類に応じて、異なる態様で前記警報を表示させることを特徴とする請求項2に記載の列車監視システム。
【請求項4】
前記検知対象物は、人間、車椅子、ベビーカー、白杖のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の列車監視システム。
【請求項5】
前記画像認識部は、前記検知対象物が認識された場合に、前記映像中における当該検知対象物の移動速度を推定し、
前記制御部は、前記移動速度が高い場合において、前記フレームレートを高くすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の列車監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の運行上の安全に関わる状況を監視する列車監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車の運行上の安全を確保するために、カメラを用いた監視システムが用いられている。このカメラとしては、例えば列車が停車するプラットフォームに固定されたカメラを用いる場合と、列車側に固定されたカメラを用いる場合があるが、どちらの場合も、カメラが主に監視すべき領域は、乗降客がいる確率が高いドアの周囲となり、この監視には死角がないような動作が要求される。
【0003】
特許文献1には、列車側に固定されたカメラを用いた列車監視システムが記載されている。ここでは、列車のドア周囲を撮像するカメラが用いられるが、その動作は、ドアの開閉動作に連動して制御される。これによって、監視が重要となる状況では確実に監視が行われると共に、監視が特に重要ではない状況では、必要最小限の動作のみが行われる。これによって、監視を効率的に行うことができると共に、例えばカメラによって得られた映像信号を記憶させる場合には、その記憶容量を小さく留めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-113602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような監視システムを用いた場合においては、得られた映像を乗務員がモニターで視認し、この映像内で発生した異常事態はこの乗務員によって認識された。このように認識すべき異常事態としては、例えば列車が発車しようとしている状況で乗降客が列車(ドア)の極近傍にいる状態等がある。一方、列車の運転においては、効率化のために運転のワンマン化が進んでおり、この場合にはこの作業は実際には一人の乗務員(運転手)によって行われた。
【0006】
このため、このような映像内における異常事態を自動的に認識できるシステムが望まれ、この場合には、近年進歩しているAI技術を用いた画像解析が有効である。これによって、例えば発車しようとしている列車のドアの近傍にいる乗降客等を自動的に認識することができる。しかしながら、この認識を迅速かつ確実に行うことが要求されるため、AI技術を用いた場合でも、このように自動的に認識を行う技術は実用化が困難であった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の列車監視システムは、列車に設けられたドアの周囲を監視するカメラによる映像を用いて列車の安全管理を行う列車監視システムであって、前記映像の中における検知対象物を認識する画像認識部と、前記映像を表示させる表示部と、前記画像認識部によって前記映像中に前記検知対象物が認識された場合に、前記表示部において、前記検知対象物が認識された旨の警報を表示させる制御部と、を具備し、前記制御部は、前記列車の速度、又は前記列車のドアの開閉状態を示す列車状態信号を受信し、当該列車状態信号に応じて、前記カメラにおける前記映像のフレームレート又は画質を制御する。
この際、前記制御部は、前記列車の速度が低い場合、又は前記ドアが開である場合において、前記フレームレートを高くする、又は前記画質を高くし、前記列車の速度が高い場合、又は前記ドアが閉である場合において、前記フレームレートを低くする、又は前記画質を低くしてもよい。
また、前記検知対象物の種類が複数設定され、前記画像認識部は、認識された前記検知対象物の種類を認識し、前記制御部は、認識された前記検知対象物の種類に応じて、異なる態様で前記警報を表示させてもよい。
また、前記検知対象物は、人間、車椅子、ベビーカー、白杖のいずれかであってもよい。
また、前記画像認識部は、前記検知対象物が認識された場合に、前記映像中における当該検知対象物の移動速度を推定し、前記制御部は、前記移動速度が高い場合において、前記フレームレートを高くしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、列車監視システムにおいて、異常事態の発生を迅速かつ確実に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る列車監視システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る列車監視システムが用いられた列車の構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る列車監視システムにおいて得られる映像の例である。
図4】本発明の実施の形態に係る列車監視システムにおいて得られる映像中における警報の表示の例である。
図5】本発明の実施の形態に係る列車監視システムにおける、イベント単位で検知対象物の検出を行う動作の例である。
図6】本発明の実施の形態に係る列車監視システムにおける、列車の走行状況、ドアの開閉状況の時間経過と、これに応じた映像のフレームレート、画質の変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る列車監視システム1の構成を簡略化して示す図である。ここでは使用されるカメラとしては、カメラ10A、10Bの2つのみが記載されているが、図2は、この列車監視システム1において用いられるカメラ10の列車T内の配置を示す。ここで、列車TはプラットホームPに停車しているものとする。この配置は、特許文献1に記載されたものと同様であり、列車における各車両(T1~T3)の進行方向の両側に設けられたドアDに対応して1組のカメラ10A、10Bが、ドアDを含む領域を進行方向に沿った両側(前側、後側)からそれぞれ撮像するように設けられる。このため、図1においては、カメラは2つのみが記載されているが、実際には図2に記載されたように、より多くのカメラが2つずつ組になってドアD毎に設けられている。また、図2では単純化して各車両には左右一組のドアDのみがあるものとされているが、実際には車両毎に複数組のドアDが進行方向に沿って設けられていてもよい。図2においては、列車Tに対して右側にプラットホームPがあるため、開閉されるのは右側のドアDのみであり、これに応じて、使用されるのも右側にあるカメラ10A、10Bのみである。
【0012】
図1に示されるように、この列車監視システム1においては、システム全体を制御する制御部20、各カメラによって得られた映像(映像信号)を記憶するハードディスクや不揮発性メモリ等である記憶部30、AI技術を用いて映像(画像)を解析して異常(検知対象物の有無)を認識する画像解析部40、映像を表示させる表示部50が設けられる。これらの各構成要素は、ネットワーク(LAN)を介してスイッチングハブ60に接続されることによって、各構成要素間が接続される。
【0013】
ここで、図2に示されるように、前記のようにカメラ10A、10B(10)は各車両において設けられ、表示部50は、列車Tの乗務員が視認できる位置として、先頭の車両T1の前側、逆向きの際の先頭の車両T3の後側にそれぞれ設けられ、これらにおいては、同一内容の映像が表示される。制御部20、記憶部30、画像解析部40はここでは記載されていないが、これらの車両Tにおける設置箇所は適宜設定される。スイッチングハブ60は、特許文献1に記載されたように、図1の構成が実現されるように、カメラ10に対応して、実際には各車両毎に搭載され、図1の構成が列車全体で実現されるように接続される。
【0014】
制御部20は、各カメラや表示部等を制御するコンピュータである。ここで各カメラで制御されるのは、映像信号のフレームレート(単位時間あたりのフレーム数)と、画質(有効画素数)である。フレームレートが高い、あるいは画質が高い(有効画素数が大きい)場合には、映像の解析を時間的あるいは空間的に高分解能で行うことができるために画像解析部40の動作を精密に行うことができる一方で、映像信号の容量(ファイルサイズ)が大きくなり、解析作業にも時間を要する。逆に、フレームレートが低い、あるいは画質が低い(有効画素数が小さい)場合には、映像の解析を時間的あるいは空間的に高分解能で行うことが困難である一方で、映像信号の容量(ファイルサイズ)は小さくなり、解析作業に要する時間は短くなる。
【0015】
また、制御部20は、この映像信号の解析を画像解析部40に行わせる、あるいはこの映像信号を記憶部30に記憶させる動作を行わせる。後述するように、前記のようなカメラの制御は、画像解析部40の解析結果に応じて行われる。また、制御部20には、列車T側から列車Tの状態を認識するための制御用の信号(列車状態信号)が入力する。このような列車状態信号としては、各ドアDの開閉の状態を認識するための開閉信号や、列車Tの速度(あるいは停止している旨)を示す速度信号等がある。後述するように、制御部20は、この列車状態信号に応じて、カメラ10の制御を行う。
【0016】
コンピュータである画像解析部40は、各カメラから得られた映像を解析し、映像中における検知対象物の有無を認識する。前記のように、カメラはドアDを含む領域を撮像し、検知対象物は、例えば、乗降客(人間)、ベビーカー、車椅子、視覚障害者用の白杖等、これらがドアDの近傍で認められた場合には、列車Tを発車させることが好ましくない物体である。画像解析部40は、AI技術を用いた画像解析によって、映像中におけるこれらの検知対象物の有無を判定することができる。また、列車Tの静止時においては、例えば乗降客が認められた場合に、その動きを認識することもできる。なお、制御部20と画像解析部40を単一のコンピュータで構成してもよい。
【0017】
また、制御部20は、前記のように画像解析部40で解析の対象となった映像を表示部50で表示させるが、この際に、上記のように検知対象物が認識された場合には、その旨が即時に乗務員に認識できるような表示を行うことによって、警報を発する。このような表示としては、後述するような映像の外枠の強調表示等がある。
【0018】
以下に、画像解析部40の動作について説明する。図3(a)は、列車Tがプラットホームで停車してドアDが開いた状態においてカメラ10Aによって得られたある時点における画像(映像における1フレーム分の画像)の一例である。ここで、この画像においては、左側にプラットホームPが、右側に開いた状態のドアPが認識されるが、検知対象物は存在しないものとしている。画像解析部40は、この画像をデフォールト状態の画像として記憶部30に予め記憶しておくことができ、得られた画像とこの画像との比較によって、検知対象物を認識することができる。
【0019】
図3(b)は、上記と同様の状態において、更に視野内に人間(乗降客H)が存在した場合の画像である。画像解析部40は、図3(b)の画像と上記のデフォールトの画像(図3(a))とを比較して、その相違部分を物体として認識し、更にこの物体の形態的特徴を認識し、この物体が人間であると認識された場合、これが検知対象物として特定された乗降客Hであることを認識することができる。
【0020】
制御部20は、このように映像中で検知対象物が認識された場合には、表示部50におけるこの映像の表示を、検知対象物が認識されなかった場合と区別できるように強調して行うことによって、警報とすることができる。例えば、図4(a)は、検知対象物が認識できなかった場合(図3(a)の場合)の表示の例であり、図4(b)は、検知対象物が認識された場合(図3(b)の場合)の表示の例である。この場合には、検知対象物が認識された場合(図4(b))には、映像の外枠F1(太い点線)が検知対象物が認識されなかった場合(図4(a))の外枠F0(細い黒実線)とは異なって表示される。検知対象物がある場合には、例えばこの外枠F1を赤線としてもよい。これによって、乗務員は、検知対象物が映像中に存在することを即時に認識することができる。
【0021】
図3、4の例では、検知対象物が乗降客Hとされたが、前記のように、検知対象物は、他にベビーカー等、複数の種類が設定可能である。このように設定された複数種類の検知対象物を認識するための情報を記憶部30に記憶させておけば、画像解析部40は、画像中におけるこれらの各検知対象物の有無を認識することができる。この場合には、例えば、乗降客Hが検知された場合には外枠F1を赤色、ベビーカーが検知された場合には外枠F1を青色にする等、表示を検知対象物の種類に応じて変えることができる。これによって、乗務員は、検知された検知対象物の種類も、即時に認識することができる。
【0022】
ただし、上記のように、検知対象物の有無をフレーム毎に認識し、検知結果に応じた表示(強調表示)をフレーム毎に行う場合には、ノイズ等による誤認識や、検知対象物の動作等に起因し、誤った認識がされ、警報が適切に行われない可能性が高い。このため、上記のような検知はフレーム毎に行うが、強調表示の有無は、一定期間の連続したフレーム毎の検知結果に応じて行わせることが好ましい。この場合には、例えば一定数の連続したフレーム中における、検知対象物が検知されたフレーム数の割合を算出し、この割合が閾値を超えた場合に発報をする、という方式が有効である。
【0023】
図5は、このような状況を模式的に示す図である。図5において、左側から順に連続した9つのフレーム(#1~#9)の画像が示されており、実際には#4~#7において検知対象物(乗降客H)が存在し、他のフレームの画像には検知対象物は存在しないものとする。
【0024】
ここで、#2では実際に検知対象物はないにもかかわらず検知対象物があると誤って認識され、#6では実際には検知対象物があるにもかかわらず検知対象物がないと誤って認識されたものとする。このため、前記のようなフレーム毎の判定を用いた場合には、#2では誤発報が発生し、#6では本来発報が行われるべきであるが発報が行われない。
【0025】
ここで、前記の発報をするための判断に用いられる連続するフレーム数を3とし、このうちの検知対象物が検知されたフレーム数が2以上である場合に発報をするという設定をすることができる。この場合には、制御部20は、前記の発報の判断を、連続する3つのフレーム(イベント)毎に行い、各イベント中で2つのフレームで検知対象物が検知された場合に、このイベントで検知対象物が検知されたと認識する。図5の上側においては、この基準によってイベント毎にこの判断を行った結果が記載されている。ここで、記載された1/3、2/3は、それぞれ3フレーム中1フレーム、3フレーム中2フレームで検知対象物が検知されたことを意味する。この場合には、前記のような誤検知されたフレームが存在するにもかかわらず、中央のイベントのみ検知、左右両側のイベントでは非検知という、より適正な判定が行われており、図4の表示をこの結果に基づいて行わせることができる。
【0026】
すなわち、このような基準を用いることによって、#2、#6の誤検知の影響を低減し、実際の#4~#7に対応した期間のイベントで、より適正に発報をさせることができる。特にフレームレートが高い場合には、検知対象物が存在するフレーム、検知対象物が存在しないフレームは時間的に連続して存在する蓋然性が高いため、こうしたイベント単位の判定は特に有効である。
【0027】
なお、実際の映像が全て記憶部30に記録された後に、事後にこの映像をより詳細に解析し、検知の適正性を評価することができる。この場合には、検知率を(検知成功フレーム数:図5の場合には3)/(検知対象フレーム数:図5の場合には4)、誤検知率を(誤検知フレーム数:図5の場合には2)/(全フレーム数:図5の場合には9)として、画像解析部40の動作の評価を学習に用い、画像解析部40の動作に反映させることができる。この場合のフレームを前記のイベントに置き換えて同様の評価を行い、上記のイベント単位で判断を行う動作に反映させることもできる。この際、1イベントのフレーム数(判定に用いる連続したフレーム数:上記の例では3)と、判定の閾値(このうちで発報をするために要する検知フレームの数:上記の例では2)の最適化も行うことができる。
【0028】
上記のように検知対象物を迅速かつ適正に認識するためには、カメラ10A、10Bから得られる映像のフレームレートは高いことが好ましい。しかしながら、フレームレートが高い場合には、記憶部30に記憶される映像ファイルの容量が大きくなるために、その記憶に時間を要する場合がある。このため、このフレームレートは、検知対象物が存在する可能性が高い、あるいは検知対象物を認識することが特に重要である期間内においてのみ高くし、この期間以外では低くすることが好ましい。画質についてもフレームレートと同様であり、検知対象物を認識することが特に重要である期間内においてのみ高く(有効画素数を多く)し、この期間以外では低く(有効画素数を少なく)することが好ましい。
【0029】
前記の通り、この列車監視システム1(カメラ10A、10B)は列車に搭載されている。この場合、特に列車が停車駅間で走行中である場合においては、検知対象物は映像中に存在する可能性は極めて低い、あるいはその検知は重要ではない。一方、列車が駅のプラットホームで停車中、あるいは更に停車時にドアが開いた状態においては、その後にドアを閉める動作や発車の際の安全のため、検知対象物を検知することが特に重要であり、かつ検知対象物が存在する可能性も高い。このため、列車が駅のプラットホームで停車中、あるいは停車時にドアが開いた状態においては、映像のフレームレートや画質を高くすることが好ましく、これ以外ではフレームレートや画質を低くすることが好ましい。
【0030】
図6は、列車が駅のプラットホームに侵入する前からプラットホームから発車して次の停車駅までの間を走行するまでの間における、このような制御部20の動作を示す図である。ここで、横軸が時間経過であり、最上段は列車の走行に関する状態、上から2段目は列車のドアの状態を示す。下の3つの項目(フレームレート、画質、発報の可否)は、制御部20が認識したこの動作に応じて定められるこれらの項目の設定である。ここで、発報の可否とは、図4の表示を表示部50で行わせるか否かの設定である。
【0031】
列車の走行に関する状態は、列車側が制御部20に出力する速度信号によって認識される。ここでは、速度信号は、速度が5km/h以上となるH、速度が5km/h未満となるLの2値として単純化して出力される。図6に示されるように、列車は、プラットホーム外からプラットホーム内に侵入して減速してから停車する。このため、速度信号は、停車時から発車時までの間のみLとなり、これ以外の期間はHとなる。なお、この場合には速度が5km未満の場合が停車として認識されるため、実際には完全停止(速度=0km/h)となる直前、及び発車してから短時間経過するまでの間は停車として認識される。
【0032】
ドアの状態は、閉状態がL、開状態がHとなる2値として表される開閉信号として、列車側から制御部20に出力される。図6に示されるように、ドアが開となるのは停車の一定時間後であり、ドアが閉となるのは発車の一定時間前である。
【0033】
このような速度信号、開閉信号を、図1における列車状態信号として制御部20が受信することによって、制御部20は、速度状態が変化した時点、ドアの開閉状態が変化した時点を認識することができる。図6においては、速度信号がHからLに変化した時点(A)を、列車が停車した時点として認識し、その後に速度信号がLからHに変化した時点(D)を、列車が発車した時点として認識することができる。同様に、開閉信号がLからHに変化した時点(B)を、ドアが閉状態から開状態になった時点として認識し、その後に開閉信号がHからLに変化した時点(C)を、ドアが開状態から閉状態になった時点として認識することができる。
【0034】
列車の停車時に乗降客がドアの近傍にいる可能性が高い期間を、検知対象物を特に適切に認識すべき期間と考えることができる。この場合、図6の例では、ドアが開状態となった時点(B)から、発車の時点(D)までを、このような期間とすることができる。この期間においては、フレームレートを高く(例えば8fps)、画質を高画質としており、この期間外においては、フレームレートを低く(例えば1fps)、画質を低画質としている。また、乗務員による誤認を抑制するためには、図4の表示を高フレームレート、高画質の場合においてのみ行わせることができる。
【0035】
図6の動作によって、検知対象物を認識する必要性が特に高い期間においてのみ、特にフレームレート、画質が高い映像が、解析に用いられる。この際、検知対象物が認識されたか否かの判定を、前記のように、フレーム単位又はイベント単位で行うことができる。
【0036】
図6の例では、このように検知対象物を認識する必要性が特に高い期間を、ドアが開状態となった時点(B)から発車の時点(D)までとしたが、この期間は、例えば停車の時点(A)から発車の時点(D)、ドアが開いている間の期間(BからCの期間)とすることもできる。こうした設定は、プラットホームの構成や、速度信号のH/Lの閾値となる速度(上記の場合には5km/h)の設定等に応じて、適宜行うことができる。また、全ての停車駅でこの設定を共通にする必要はなく、例えば通常の利用者の数を考慮し、停車駅に応じてこの設定を変えてもよい。
【0037】
また、図6においては、このようにフレームレート又は画質は、BからDの期間内では一定の状態において高い値で維持された。しかしながら、この期間内においても、更にフレームレートや画質を高める動作行うことも可能である。こうした動作は、特に認識された検知対象物が移動している場合に好ましい。
【0038】
この動作においては、前記と同様に、画像解析部40は、画像中における検知対象物の有無を認識する。画像解析部40は、その後のフレームの画像中においても検知対象物が認識された場合に、検知対象物の画像中の位置を、前のフレームと後のフレームの間で比較し、検知対象物の位置が変動していた場合には、検知対象物が移動中であると認識することができる。この際、例えば、列車が停車中で図3に示されたような映像が得られる場合には、カメラ10A、10BとドアDの位置関係が固定されていれば、画像中においてはドアDの位置は変化しないため、ドアDの位置を基準とした検知対象物の位置を認識することによって、検知対象物が移動しているか否か、あるいはその移動速度が大きいか否かの認識が容易となる。
【0039】
検知対象物が移動している、あるいは移動速度が大きな場合には、フレームレートを高くして、連続するフレームの間における時間差を小さくし、フレーム間における検知対象物の位置の変動を小さく抑えることによって、検知対象物の認識を特に高精度で確実に行うことができる。この際、画質についてもフレームレートと同様に高画質としてもよいが、この場合には単位時間内の解析の対象となるデータ量が大きくなるため、画質は変えずに、フレームレートのみを高くしてもよい。
【0040】
上記の動作によれば、監視用の映像中における検知対象物(乗降客H等)の存在をより確実に認識し、かつその旨を乗務員が迅速に認識することができる。この際、取り扱う映像のデータ容量を不必要に大きくすることがないため、映像の処理や記憶も容易となる。
【0041】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0042】
1 列車監視システム
10、10A、10B カメラ
20 制御部
30 記憶部
40 画像解析部
50 表示部
60 スイッチングハブ
D ドア
H 乗降客
P プラットホーム
T 列車
T1~T3 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6