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  • 特開-コンクリートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021943
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125163
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久▲徳▼ 貢大
(72)【発明者】
【氏名】小島 利広
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA23
4G056CB25
(57)【要約】
【課題】優れた凍結融解抵抗性を有するコンクリートを製造する。
【解決手段】SAPを用いてコンクリート中に空隙を形成することによって凍結融解抵抗性を向上させたコンクリートを製造するにあたり、水にSAPを十分な程度に分散させたSAP分散水を調製し、このSAP分散水を、フレッシュコンクリートの製造に必要な練混ぜ水の総量を満たすようにSAP分散水に対して追加される所定量の水および混和剤とともにミキサ12に投入し、さらにミキサ12に投入された骨材およびセメントと練り合わされてフレッシュコンクリートを製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAPが分散された所定量の水をSAP分散水として、このSAP分散水を、コンクリートの製造に必要な練混ぜ水の総量を満足するように当該SAP分散水に対して追加される所定量の水および混和剤とともにミキサに投入し、骨材およびセメントと練り合わせてフレッシュコンクリートを製造する
コンクリートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートの製造方法において、
前記SAP分散水を少なくとも18時間静置してから前記ミキサに投入する
コンクリートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリートの製造方法において、
前記SAP分散水の分散の程度を、所定の漏斗の流下時間により管理する
コンクリートの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のコンクリートの製造方法において、
前記漏斗の流下時間が、土木学会基準で定められているJA漏斗で10秒以上かつ20秒以下の範囲である
コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高吸水性樹脂を混和した耐凍害性に優れるコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高吸水性樹脂(以下、SAP : Super Absorbent Polymerという。)は、自身の質量の数十倍から数百倍の水を吸収して膨潤し、乾燥すると脱水されて収縮する性質を持っている。SAPをコンクリートに混和すると、練混ぜ時に吸水して膨潤し、硬化後には吸収した水を放出して体積を減じて空隙が残る。本発明者らは、SAPの混和がコンクリートの凍結融解抵抗性を向上させることに関する発明を出願し、既に特開2022-048692号公報にて公開されている。
【0003】
SAPが形成する総空隙量はその粒径と混和量で決定されるため、AE剤によるエントレインドエアと比べると気泡間隔が制御しやすく、空気泡と異なり消失しないため安定した空隙を形成する。
【0004】
SAPを採用したコンクリートの実用化に際し、コンクリート1m3あたり1kg未満といった比較的少量のSAPの添加で済むため、工場のミキサで製造するときに計量精度の確保と材料の分散性を確保する必要がある。
【0005】
SAPをフレッシュコンクリートに混入する方法と類似の方法は、中空微小球を事前にセメントと混合し、ミキサに投入する方法(特許文献1)、中空微小球をセメント等と同時にミキサに投入する方法、中空微小球を水溶性の袋体に入れてフレッシュコンクリートに混入する方法(特許文献2)、中空微小球を専用の装置を用いてフレッシュコンクリートに混入する方法(特許文献3)などが知られる。これらはいずれもコンクリートの耐凍害性向上を目的として中空微小球をフレッシュコンクリートに混入するもので、本願と同様に微小な物体をフレッシュコンクリートに均一に分散させることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-062205号公報(段落[0029])
【特許文献2】特開2017-159532号公報(段落[0004])
【特許文献3】特開2021-084342号公報(段落[0010])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SAPは粉末状で、中空微小球と同様の微細粒子であるが、水と混合する際に継子(ままこ)、ダマなどと呼ばれる凝集体が生じやすい。そのため、SAPをセメント、水、混和剤および骨材と一緒にミキサに投入する一般的なコンクリートの製造方法では、SAPの凝集体が発生してしまい、SAP粒子をコンクリート内で均一に分散させることは困難である。
中空微小球を用いる先行技術と同様に、SAP粉末を事前にセメントと混合し、ミキサに投入する方法によれば、セメント中のSAPの分散の程度の管理が困難であり、不十分な分散によりコンクリート中に空隙を均一に形成することが困難である。ブレンダーを用いてSAPをセメントと事前に混合する方法では大きなコストがかかることは必至である。
SAPをセメント等と同時にミキサに投入する方法によれば、計量装置やミキサの側壁へのSAPの付着によるSAPの計量精度のバラツキが生じやすく、分散の程度の管理がやはり困難である。
中空微小球を用いる先行技術と同様に、SAPを水溶性の袋体に入れてフレッシュコンクリートに混入する方法によれば、水溶性の袋体にコストがかかる、さらにはSAPの凝集体が発生することが予想され、分散の程度の管理がやはり困難である。
中空微小球を用いる先行技術と同様に、SAPを専用の装置を用いてフレッシュコンクリートに混入する方法でも、専用の装置の導入に大きなコストがかかる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、SAPの凝集体を軽減してコンクリート中に均一に分散された空隙を形成することができ、優れた凍結融解抵抗性を有するコンクリートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るコンクリートの製造方法は、SAPが分散された所定量の水をSAP分散水として、このSAP分散水を、コンクリートの製造に必要な練混ぜ水の総量を満足するように当該SAP分散水に対して追加される所定量の水および混和剤とともにミキサに投入し、骨材およびセメントと練り合わせてフレッシュコンクリートを製造する。
これにより、SAPの凝集体の発生を減少させることができ、フレッシュコンクリート中に均一にSAPを分散させることができるため、優れた凍結融解抵抗性を有するコンクリートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のコンクリートの製造方法が採用されるフレッシュコンクリートの製造プラントの構成を示す図である。
図2】静置時間に対するSAP分散水中の凝集体の残留状況およびJA漏斗の流下時間の試験結果を示す図である。
図3】SAP分散水における水に対するSAP粉体の質量比(SAP固形分濃度)とJA漏斗流下時間との関係を示すグラフである。
図4】AE剤を用いて製造したコンクリートと同程度の耐凍害性を有することを検証するため、AE剤配合、Non-AE 配合、SAP配合それぞれのコンクリートの相対動弾性係数の経時変化を計測した結果を示す表である。
図5図4の相対動弾性係数を基に算出した耐久性指数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るコンクリートの製造方法の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
SAPを用いてコンクリート中に空隙を形成することによって凍結融解抵抗性を向上させたコンクリートを製造するにあたり、SAPを十分な程度に分散させたSAP分散水を調製し、このSAP分散水を、フレッシュコンクリートの製造に必要な水の総量を満たすようにSAP分散水に対して追加される所定量の水および混和剤とともにミキサ12に投入し、さらにミキサ12に投入された骨材およびセメントと練り合わされてフレッシュコンクリートを製造する。
【0012】
図1は、本実施形態のコンクリートの製造方法が採用されるフレッシュコンクリートの製造プラントの構成を示す図である。
この製造プラントは、フレッシュコンクリートの材料を貯蔵する容器として、骨材貯蔵容器1、セメント貯蔵容器2、水貯蔵容器3、混和剤貯蔵容器4、SAP分散水貯蔵容器5などを備える。SAP分散水貯蔵容器5はSAP分散水を貯蔵するための容器であり、このSAP分散水貯蔵容器5には、SAP分散水調製容器6内でSAPと水とを混合し、必要に応じて攪拌、所定時間の静置などを経て必要な分散度が得られるように調整されたものをSAP分散水として貯蔵する。
【0013】
SAP分散水調製容器6内のSAP分散水は、SAP分散水攪拌容器7及び圧送ポンプ8を介してSAP分散水容器5に供給される。SAP分散水攪拌容器7は攪拌手段を内蔵し、SAP分散水調製容器6から吸い上げたSAP分散水を攪拌して必要な分散の度合を維持または高めるように構成されたものであってよい。
【0014】
SAP分散水貯蔵容器5内のSAP分散水は水用の計量ビン9に投入される。水用の計量ビン9にはSAP分散水に続いて、混和剤貯蔵容器4内の減水剤などの混和剤、水貯蔵容器3内の水が順次投入される。水用の計量ビン9には荷重計が設けられおり、SAP分散水、混和剤、追加分の水が投入される度に水用の計量ビン9の重量が計測されることによって、各々の投入量を管理することができるようになっている。
【0015】
例えば、水用の計量ビン9に、はじめに所定量のSAP分散水が投入される。一例として、122kgのSAP分散水が水用の計量ビン9に投入される。続いて、1kgの混和剤が水用の計量ビン9に投入され、さらに、追加分の52kgの水が水用の計量ビン9に投入される。すなわち総計で175kgのSAP分散水、混和剤、追加分の水が水用の計量ビン9に投入される。ここで、追加分の水は、フレッシュコンクリートの製造に必要な練混ぜ水の総量を満たすようにSAP分散水に対して追加される水である。
【0016】
このようにして水用の計量ビン9に投入されたSAP分散水と混和剤と追加分の水は、骨材用の計量ビン10にて計量された所定量の骨材、およびセメント用の計量ビン11にて計量された所定量のセメントとともにミキサ12に投入されて練り合わされ、フレッシュコンクリートとなってホッパ13を介して排出される。
【0017】
次に、SAP分散水の静置時間について説明する。
SAP分散水は、例えば、SAP分散水調製容器6またはSAP分散水貯蔵容器5内において一定時間以上静置することが十分なSAP分散性を得るうえで重要である。
【0018】
本発明者らは、実験により、5、10、18、24、30、48時間の静置後のSAP分散水中の凝集体の残留状況およびJA漏斗の流下時間を確認した。図2にその試験結果を示す。その結果、18時間以上静置すると目開きが5mmの網ふるいに残留する凝集体は確認できなくなり、JA漏斗からの流下時間も良好な範囲で安定することが分かった。
【0019】
JA漏斗の流下時間について説明を補足する。
JA漏斗は土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法」(JSCE-F 531-1999)に、その仕様が定められており、約1000mlサイズのものは上部孔内法径:100mm、下部孔内法径:8mmである。
【0020】
SAP分散水のJA漏斗の流下時間は、10秒以上かつ20秒以下の範囲とすることが望ましい。ここで、水のみの流下時間は約10秒であるため、SAP分散水の流下時間が10秒以下となることはあり得ない。したがって、10秒がSAP分散水のJA漏斗の流下時間の下限値となる。一方、図3はSAP分散水の流下時間(秒)とSAP分散水における水に対するSAP粉体の質量比(SAP固形分濃度)との関係を示す。このように、SAP分散水は、JA漏斗の流下時間が20秒を超えると急激にJA漏斗の流下時間が長くなる性質がある。したがって、20秒がSAP分散水の流下時間の上限値となる。
液体の流動性を評価するために各種の漏斗流下試験が知られており、他の漏斗を使用する場合には事前に適切な上限および下限値を定めるとよい。
【0021】
これまでに説明した方法により、SAP分散水を用いて製造したコンクリートが、従来工法であるAE剤を用いて製造したコンクリートと同程度の耐凍害性を有することを検証するため、図4に示す3種類の配合(AE剤配合、Non-AE 配合、SAP配合)のコンクリートの相対動弾性係数の経時変化を計測し、図5には相対動弾性係数を基に算出した耐久性指数を示す。図4において「AE」は従来工法であるAE剤を用いたコンクリート、「Non-AE」はAE剤およびSAPのいずれも用いないコンクリート、「SAP」はSAP分散水を用いたコンクリートを示す。この結果より、エントレインドエアを導入していない「Non-AE」の耐久性指数が極端に低いのと比べて「SAP」は「AE」と同等の高い耐久性指数を有していることがわかる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のコンクリートの製造方法によれば、SAPが分散された水をSAP分散水として、このSAP分散水を、コンクリートの製造に必要な練混ぜ水の総量を満足するようにSAP分散水に対して追加される所定量の水および混和剤とともにミキサ12に投入することによって、コンクリート中に空隙が均一に分散し、優れた凍結融解抵抗性を有するコンクリートを製造することができる。
【符号の説明】
【0023】
5 SAP分散水貯蔵容器
6 SAP分散水調製容器
9 水用の計量ビン
12 ミキサ
図1
図2
図3
図4
図5