(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021960
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
B66F 3/24 20060101AFI20240208BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B66F3/24 B
G01M15/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125190
(22)【出願日】2022-08-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】井川 翔太
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087BB01
2G087DD01
2G087EE11
(57)【要約】
【課題】ダイナモメータを移動させる移動装置の作業性を向上させる。
【解決手段】第1爪部材12は、先端がアリ溝7の内部にあるとき、台座8のダイナモメータ3へ向かう方向(前進方向)への移動を許容するともに、台座8のダイナモメータ3から離れる方向(後進方向)への移動を制限する。第2爪部材13は、先端がアリ溝7の内部にあるとき、台座8のダイナモメータ3へ向かう方向(前進方向)への移動を制限するとともに、台座8のダイナモメータ3から離れる方向(後進方向)への移動を許容する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線上のレールと、
対象物に連結され、上記対象物を上記レールに沿って往復動させることが可能な可動ユニットと、を備え、
上記レールの表面には、複数の凹部が当該レールの長手方向に沿って間隔を空けて並んで形成され、
上記可動ユニットは、上記レールの長手方向に沿ってスライド移動可能に上記レールに支持された台座と、上記レールの長手方向に沿って伸縮可能となるように上記台座に固定されるとともに、一端が上記対象物に連結された油圧シリンダと、平面視で上記レールの長手方向に対して直交し、上記台座に回転可能に支持された第1回転軸部材と、平面視で上記第1回転軸部材と平行で、上記第1回転軸部材よりも上記対象物側に位置して上記台座に回転可能に支持された第2回転軸部材と、上記レールの長手方向に沿って伸び、先端よりも上記対象物側に位置する基端が上記第1回転軸部材に固定された第1爪部材と、上記レールの長手方向に沿って伸び、先端よりも上記対象物から離れた基端が上記第2回転軸部材に固定された第2爪部材と、を有することを特徴とする移動装置。
【請求項2】
上記第1爪部材は、先端が上記複数の凹部のいずれかの内部にあるとき、上記台座が上記レール上を上記対象物側へスライド移動すると、上記レールの長手方向で当該凹部の上記対象物に近い側の開口縁に底面が乗り上げ、上記第1回転軸部材を中心に先端が上方へ向かうように回転し、当該凹部の上記対象物に近い側の側壁を乗り越えることで上記台座の上記対象物へ向かう方向への移動を許容し、上記台座が上記レール上を上記対象物から離れる側へスライド移動すると、上記レールの長手方向で当該凹部の上記対象物から遠い側の側壁に対して先端が突き当てられることで上記台座の上記対象物から離れる方向への移動を制限し、
上記第2爪部材は、先端が上記複数の凹部のいずれかの内部にあるとき、上記台座が上記レール上を上記対象物側へスライド移動すると、上記レールの長手方向で当該凹部の上記対象物に近い側の側壁に対して先端が突き当てられることで上記台座の上記対象物へ向かう方向への移動を制限し、上記台座が上記レール上を上記対象物から離れる側へスライド移動すると、上記レールの長手方向で当該凹部の上記対象物に遠い側の開口縁に底面が乗り上げ、上記第2回転軸部材を中心に先端が上方へ向かうように回転し、当該凹部の上記対象物に遠い側の側壁を乗り越えることで上記台座の上記対象物から離れる方向への移動を許容する、ことを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
上記複数の凹部は、上記レールの長手方向に対して直交する方向に延びる溝であり、上記レールの長手方向に沿った底面の幅が、上記レールの長手方向に沿った開口の幅よりも広いアリ溝となるよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項4】
上記第1爪部材の先端と上記第2爪部材の先端は、それぞれ鋭角に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項5】
上記第1爪部材を上記複数の凹部の上方に引き上げられた位置に固定する第1ロック機構と、
上記第2爪部材を上記複数の凹部の上方に引き上げられた位置に固定する第2ロック機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項6】
上記第1爪部材の回転を規制する第1ストッパと、
上記第2爪部材の回転を規制する第2ストッパと、を有し、
上記第1ストッパは、上記第1爪部材を上記複数の凹部の上方に引き上げる側への上記第1爪部材の最大回転角度を規制し、
上記第2ストッパは、上記第2爪部材を上記複数の凹部の上方に引き上げる側への上記第2爪部材の最大回転角度を規制する、ことを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項7】
上記第1爪部材の重心位置は、上記レールの長手方向で、上記第1回転軸部材の回転軸よりも上記第1爪部材の先端側に位置し、
上記第2爪部材の重心位置は、上記レールの長手方向で、上記第2回転軸部材の回転軸よりも上記第2爪部材の先端側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダを用いて対象物を進退移動させる移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1~4には、車両の試験に際に、シリンダを利用してダイナモメータをスライド移動させる移動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-258302号公報
【特許文献2】特開2004-45252号公報
【特許文献1】特開2010-169486号公報
【特許文献2】特許第6724551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら特許文献1~4に開示された移動装置は、シリンダのストローク範囲内でしかダイナモメータを移動させることができない。
【0005】
これら特許文献1~4に開示された移動装置は、シリンダのストローク範囲以上にダイナモメータを移動させるためには、例えば、その都度シリンダを取り外して新たな位置に取り付け直すなど、所定の取り外し作業と所定の取り付け作業が必要になり、作業性が悪化してしまう虞がある。
【0006】
つまり、車両の試験の際にダイナモメータを移動させる移動装置は、作業性を向上させる上で、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動装置は、直線上のレールと、対象物に連結され、上記対象物を上記レールに沿って往復動させることが可能な可動ユニットと、を備えている。上記レールの表面には、複数の凹部が当該レールの長手方向に沿って間隔を空けて並んで形成されている。上記可動ユニットは、上記レールの長手方向に沿ってスライド移動可能に上記レールに支持された台座と、上記レールの長手方向に沿って伸縮可能となるように上記台座に固定されるとともに、一端が上記対象物に連結された油圧シリンダと、平面視で上記レールの長手方向に対して直交し、上記台座に回転可能に支持された第1回転軸部材と、平面視で上記第1回転軸部材と平行で、上記第1回転軸部材よりも上記対象物側に位置して上記台座に回転可能に支持された第2回転軸部材と、上記レールの長手方向に沿って伸び、先端よりも上記対象物側に位置する基端が上記第1回転軸部材に固定された第1爪部材と、上記レールの長手方向に沿って伸び、先端よりも上記対象物から離れた基端が上記第2回転軸部材に固定された第2爪部材と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の移動装置は、対象物を油圧シリンダのストローク以上に対象物を連続して進退移動させることができ、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本発明に係る移動装置の要部であるラチェット機構の斜視図。
【
図4】本発明に係る移動装置の要部であるラチェット機構の斜視図。
【
図5】ラチェット機構の動作を説明する説明図であって、(a)は前進時、(b)は後進時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図4は、本発明に係る移動装置1を模式的に示した説明図である。
図1は、移動装置1を正面視した正面図である。
図2は、移動装置1の斜視図である。
図3、
図4は、移動装置1の要部であるラチェット機構2の斜視図である。
【0011】
移動装置1は、ラチェット機構2を備え、ダイナモメータ3に連結可能なものである。対象物としてのダイナモメータ3は、例えば車両のパワートレインや内燃機関単体あるいはトランスミッション等の供試体に接続され、供試体の性能評価や試験を行うものである。
【0012】
移動装置1は、ダイナモメータ3を供試体に接続する際や、供試体に接続されたダイナモメータ3を取り外す際に、ダイナモメータ3と供試体との距離を調節する。
【0013】
移動装置1は、
図1及び
図2に示すように、直線上の一本のレール5と、ダイナモメータ3に連結され、ダイナモメータ3をレール5の長手方向に沿って往復動させることが可能な可動ユニット6と、を備えている。レール5は、ラチェット機構2の構成要素の一つである。可動ユニット6は、ラチェット機構2の構成要素を含んでいる。
【0014】
レール5の表面(上面)5aには、
図3及び
図4に示すように、複数の凹部に相当する複数のアリ溝7がレール5の長手方向に沿って間隔を空けて直列に並んで形成されている。
【0015】
アリ溝7は、平面視で、レール5の長手方向に対して直交する方向に延びる溝であり、例えばレール5の短手方向に沿った全幅に亘って形成されている。アリ溝7は、レール5の長手方向に沿った底面の幅が、レール5の長手方向に沿った開口の幅よりも広くなるように形成されたものである。
【0016】
可動ユニット6は、
図1~
図4に示すように、台座8と、油圧シリンダ9と、第1回転軸部材10と、第2回転軸部材11と、第1爪部材12、第2爪部材13と、第1ロック機構14と、第2ロック機構15と、第1ストッパ16と、第2ストッパ17と、を有している。可動ユニット6は、ダイナモメータ3に比べて軽量となる。
【0017】
台座8は、
図1及び
図2に示すように、レール5の長手方向に沿ってスライド移動可能にレール5に支持されている。詳述すると、台座8は、
図2に示すように、底面にレール5と嵌合する凹溝が形成されている。
【0018】
油圧シリンダ9は、
図1及び
図2に示すように、レール5の長手方向に沿って伸縮可能となるように台座8に固定されるとともに、一端がダイナモメータ3に連結されている。油圧シリンダ9は、いわゆる複動形の油圧シリンダである。
【0019】
詳述すると、油圧シリンダ9は、円筒状のシリンダボディ21と、シリンダボディ21に進退移動可能(往復移動可能)に保持されたピストンロッド22と、を有し、ピストンロッド22の先端が連結部材23を介してダイナモメータ3に連結されている。ピストンロッド22は、基端側がシリンダボディ21に内部に収容される。油圧シリンダ9のストロークは、例えばシリンダボディ21からのピストンロッド22の最大突出量と最小突出量との差分として表すことが可能である。
【0020】
油圧シリンダ9のストロークは、レール5の長手方向に沿ったアリ溝7同士の間隔よりも長くなっている。つまり、レール5の長手方向に沿ったアリ溝7同士の間隔は、油圧シリンダ9のストロークよりも短くなるよう設定される。
【0021】
第1回転軸部材10は、
図1~
図4に示すように、円柱形状を呈し、両端が第1支持部材25を介して台座8に回転可能に支持されている。第1回転軸部材10は、レール5の上方に位置し、平面視でレール5の長手方向に対して直交している。
【0022】
第1回転軸部材10の一端には、第1回転軸部材10を回転させる治具を組付けることが可能な第1治具用部材26が取付られている。
【0023】
第2回転軸部材11は、
図1~
図4に示すように、円柱形状を呈し、両端が第2支持部材27を介して台座8に回転可能に支持されている。第2回転軸部材11は、レール5の上方に位置し、平面視でレール5の長手方向に対して直交している。第2回転軸部材11は、平面視で第1回転軸部材10と平行で、第1回転軸部材10よりもダイナモメータ3側に位置している。
【0024】
第2回転軸部材11の一端には、第2回転軸部材11を回転させる治具を組付けることが可能な第2治具用部材28が取付られている。
【0025】
第1爪部材12は、ラチェット機構2の構成要素であり、
図3及び
図4に示すように、レール5の長手方向に沿って伸び、基端が第1回転軸部材10に固定されている。
【0026】
第1爪部材12は、第1回転軸部材10の径方向に突出し、基端がレール5の表面5aよりも上方に位置し、基端が先端よりもダイナモメータ3側に位置するよう配置されている。つまり、第1爪部材12は、
図3及び
図4に示すように、第1回転軸部材10に固定された基端部12aが先端部12bよりもダイナモメータ3側に位置している。第1爪部材12の先端部12bは鋭角に形成されている。
【0027】
第1爪部材12は、重心位置が、レール5の長手方向で、第1回転軸部材10の回転軸よりも第1爪部材12の先端側に位置するよう形成されている。
【0028】
第2爪部材13は、ラチェット機構2の構成要素であり、
図3、
図4に示すように、レール5の長手方向に沿って伸び、基端が第2回転軸部材11に固定されている。
【0029】
第2爪部材13は、第2回転軸部材11の径方向に突出し、基端がレール5の表面5aよりも上方に位置し、先端が基端よりもダイナモメータ3側に位置するよう配置されている。つまり、第2爪部材13は、
図3及び
図4に示すように、先端部13bが第2回転軸部材11に固定された基端部13aよりもダイナモメータ3側に位置している。第2爪部材13の先端部13bは鋭角に形成されている。
【0030】
第2爪部材13は、重心位置が、レール5の長手方向で、第2回転軸部材11の回転軸よりも第2爪部材13の先端側に位置するよう形成されている。
【0031】
第1ロック機構14は、第1爪部材12をアリ溝7の上方に引き上げられた位置に固定するものであって、
図1及び
図2に示すように、第1回転軸部材10の端部に固定された第1ロック部材31と、台座8に取り付けられ、第1回転軸部材10の径方向に進退可能な略円柱形状の第1ピン部材32と、を有している。
【0032】
第1ロック部材31の外周面には、第1ピン部材32の先端が挿入可能な第1凹部31aが形成されている。第1ロック部材31は、第1爪部材12の先端部12bがアリ溝7に干渉しない位置まで上昇するように第1回転軸部材10を回転(
図1における反時計回りに回転)させた際に、第1凹部31aに第1ピン部材32の先端が挿入可能となるよう形成されている。つまり、第1ロック部材31の第1凹部31aは、第1爪部材12がアリ溝7に干渉しないように第1回転軸部材10を回転させた位置で、第1ロック機構14の第1ピン部材32の先端が挿入可能となるように形成されている。
【0033】
第1ピン部材32は、外周面に雄ねじが形成された円柱形状の部材であり、台座8の壁部に形成された貫通穴(図示せず)の内周面に形成された雌ねじ(図示せず)に組み付けられている。
【0034】
第1ピン部材32は、自身の進退を操作するレバー部32aを有している。レバー部32aは、第1ピン部材32の径方向に延びる突出片であり、例えば手指で摘まんで第1ピン部材32の周方向に回すことで、第1ピン部材32を回転させて進退させる。
【0035】
第1ロック機構14は、第1ピン部材32の先端が第1ロック部材31の第1凹部31aに挿入されると、第1ロック部材31の回転が制限され、第1回転軸部材10の回転角度を固定する。つまり、第1ロック機構14は、第1ピン部材32の先端が第1ロック部材31の第1凹部31aに挿入されると、第1爪部材12をアリ溝7の上方に引き上げられた位置に固定できる。
【0036】
第1ロック機構14を用いて第1爪部材12をアリ溝7の上方に引き上げられた位置に固定する際には、第1回転軸部材10の一端に取り付けられた第1治具用部材26に治具を組付けて第1回転軸部材10を所定角度回転させる。
【0037】
第2ロック機構15は、第2爪部材13をアリ溝7の上方に引き上げられた位置に固定するものであって、
図1及び
図2に示すように、第2回転軸部材11の端部に固定された第2ロック部材34と、台座8に取り付けられ、第2回転軸部材11の径方向に進退可能な第2ピン部材35と、を有している。
【0038】
第2ロック部材34の外周面には、第2ピン部材35の先端が挿入可能な第2凹部34aが形成されている。第2ロック部材34は、第2爪部材13の先端部13bがアリ溝7に干渉しない位置まで上昇するように第2回転軸部材11を回転(
図1における時計回りに回転)させた際に、第2凹部34aに第2ピン部材35の先端が挿入可能となるよう形成されている。つまり、第2ロック部材34の第2凹部34aは、第2爪部材13がアリ溝7に干渉しないように第2回転軸部材11を回転させた位置で、第2ロック機構15の第2ピン部材35の先端が挿入可能となるように形成されている。
【0039】
第2ピン部材35は、外周面に雄ねじが形成された円柱形状の部材であり、台座8の壁部に形成された貫通穴(図示せず)の内周面に形成された雌ねじ(図示せず)に組み付けられている。
【0040】
第2ピン部材35は、自身の進退を操作するレバー部35aを有している。レバー部35aは、第2ピン部材35の径方向に延びる突出片であり、例えば手指で摘まんで第2ピン部材35の周方向に回すことで、第2ピン部材35を回転させて進退させる。
【0041】
第2ロック機構15は、第2ピン部材35の先端が第2ロック部材34の第2凹部34aに挿入されると、第2ロック部材34の回転が制限され、第2回転軸部材11の回転角度を固定する。つまり、第2ロック機構15は、第2ピン部材35の先端が第2ロック部材34の第2凹部34aに挿入されると、第2爪部材13をアリ溝7の上方に引き上げられた位置に固定できる。
【0042】
第2ロック機構15を用いて第2爪部材13をアリ溝7の上方に引き上げられた位置に固定する際には、第2回転軸部材11の一端に取り付けられた第2治具用部材28に治具を組付けて第2回転軸部材11を所定角度回転させる。
【0043】
第1ストッパ16は、第1爪部材12をアリ溝7の上方に引き上げる側への第1回転軸部材10の最大回転角度を規制するものであって、
図1~
図3に示すように、台座8に取り付けられている。第1ストッパ16は、例えば、第1爪部材12の先端部12bがアリ溝7に干渉しない位置まで上昇するように第1回転軸部材10を回転(
図1における反時計回りに回転)させた際に、第1ロック部材31が突き当てられるように設定される。
【0044】
第2ストッパ17は、第2爪部材13をアリ溝7の上方に引き上げる側への第2回転軸部材11の最大回転角度を規制するものであって、
図1~
図3に示すように、台座8に取り付けられている。第2ストッパ17は、例えば、第2爪部材13の先端部13bがアリ溝7に干渉しない位置まで上昇するように第2回転軸部材11を回転(
図1における時計回りに回転)させた際に、第2ロック部材34が突き当てられるように設定される。
【0045】
なお、
図1~
図3中の符号41は、台座8に取り付けられて第1爪部材12の先端がアリ溝7内に留まる方向に第1ロック部材31を引っ張る第1スプリングである。
図1~
図3中の符号42は、台座8に取り付けられて第2爪部材13の先端がアリ溝7内に留まる方向に第2ロック部材34を引っ張る第2スプリングである。つまり、スプリング41、42は、爪部材12、13の先端がアリ溝7内に保持される方向に、ロック部材31、34を付勢する。
【0046】
上述した移動装置1は、第1爪部材12、第2爪部材13及びレール5によって構成されるラチェット機構2により、油圧シリンダ9のストローク以上に台座8を連続的に移動させることができ、作業性を向上させることができる。
【0047】
図5は、ラチェット機構2の動作を説明する説明図であり、(a)はダイナモメータ3の前進時、(b)はダイナモメータ3の後進時を示している。
【0048】
第1爪部材12は、
図5(a)に示すように、先端がアリ溝7の内部にあるとき、台座8がレール5上をダイナモメータ3側へスライド移動すると、レール5の長手方向でこのアリ溝7のダイナモメータ3に近い側の開口縁に底面12cが乗り上げ、第1回転軸部材10を中心に先端が上方へ向かうように回転する。つまり、第1爪部材12は、先端がアリ溝7の内部にあるとき、このアリ溝7のダイナモメータ3に近い側の側壁を乗り越えることが可能で、台座8のダイナモメータ3へ向かう方向(前進方向)への移動を許容する。
【0049】
また、第1爪部材12は、
図5(a)に示すように、先端がアリ溝7の内部にあるとき、台座8がレール5上をダイナモメータ3から離れる側へスライド移動すると、レール5の長手方向でこのアリ溝7のダイナモメータ3に遠い側の側壁に対して先端が突き当てられることで、台座8のダイナモメータ3から離れる方向(後進方向)への移動を制限する。
【0050】
第2爪部材13は、
図5(b)に示すように、先端がアリ溝7の内部にあるとき、台座8がレール5上をダイナモメータ3側へスライド移動すると、レール5の長手方向でこのアリ溝7のダイナモメータ3に近い側の側壁に対して先端が突き当てられることで、台座8のダイナモメータ3へ向かう方向(前進方向)への移動を制限する。
【0051】
また、第2爪部材13は、
図5(b)に示すように、先端がアリ溝7の内部にあるとき、台座8がレール5上をダイナモメータ3から離れる側へスライド移動すると、レール5の長手方向でこのアリ溝7のダイナモメータ3に近い側の開口縁に底面13cが乗り上げ、第2回転軸部材11を中心に先端が上方へ向かうように回転する。つまり、第2爪部材13は、先端がアリ溝7の内部にあるとき、このアリ溝7のダイナモメータ3に遠い側の側壁を乗り越えることが可能で、台座8のダイナモメータ3から離れる方向(後進方向)への移動を許容する。
【0052】
可動ユニット6を基準にダイナモメータ3を可動ユニット6から離れるように前方に押し出す際には(ダイナモメータ3を前進させる際には)、
図5の(a)に示すように、第1爪部材12の先端をアリ溝7の内部に進入させるとともに、第2爪部材13をアリ溝7と干渉しないようにアリ溝7の上方に引き上げた位置に固定する。第1爪部材12は、先端をアリ溝7の内部に進入させる場合、第1ロック機構14によりロックされない。第2爪部材13は、アリ溝7と干渉しないようにアリ溝7の上方に引き上げた位置に固定する場合、第2ロック機構15によりロックされる。
【0053】
第1爪部材12の先端をアリ溝7の内部に進入させた状態とは、換言すれば、第1爪部材12の先端部12bが台座8の下面から下方へ突出し、第1爪部材12が台座8内に収容されていない状態である。第2爪部材13がアリ溝7の上方に引き上げた位置にある状態とは、換言すれば、第2爪部材13が台座8内に格納(収容)された状態である。
【0054】
これにより、ラチェット機構2は、台座8のダイナモメータ3から離れる方向(後進方向)への移動を制限するとともに、台座8のダイナモメータ3へ向かう方向(前進方向)への移動を許容する。
【0055】
可動ユニット6は、第1爪部材12と第2爪部材13を
図5(a)の状態にして、油圧シリンダ9を伸長させてダイナモメータ3を台座8から遠ざかるように押し出すこと(前進させること)と、油圧シリンダ9を収縮させて台座8をダイナモメータ3に引き寄せること(前進させること)と、を繰り返すことで、油圧シリンダ9のストローク以上にダイナモメータ3を連続的に前進移動させることが可能となる。
【0056】
可動ユニット6は、第1爪部材12と第2爪部材13を
図5(a)の状態にして油圧シリンダ9を収縮させた状態から伸長させると、第1爪部材12がアリ溝7に突き当てられてレール5上に固定され、ダイナモメータ3を前方へ押し出すことができる。
【0057】
また、可動ユニット6は、ダイナモメータ3に比べて軽量なので、第1爪部材12と第2爪部材13を
図5(a)の状態にして油圧シリンダ9を伸長させた状態から収縮させるとダイナモメータ3側に引き寄せられ、第1爪部材12がダイナモメータ3側に隣接するアリ溝7の内部に案内される。
【0058】
可動ユニット6を基準にダイナモメータ3を可動ユニット6に近づけるように後方に引き寄せる際には(ダイナモメータ3を後進させる際には)、
図5の(b)に示すように、第2爪部材13の先端をアリ溝7の内部に進入させるとともに、第1爪部材12をアリ溝7と干渉しないようにアリ溝7の上方に引き上げた位置に固定する。第2爪部材13は、先端をアリ溝7の内部に進入させる場合、第2ロック機構15によりロックされない。第1爪部材12は、アリ溝7と干渉しないようにアリ溝7の上方に引き上げた位置に固定する場合、第1ロック機構14によりロックされる。
【0059】
第2爪部材13の先端をアリ溝7の内部に進入させた状態とは、換言すれば、第2爪部材13の先端部13bが台座8の下面から下方へ突出し、第2爪部材13が台座8内に収容されていない状態である。第1爪部材12がアリ溝7の上方に引き上げた位置にある状態とは、換言すれば、第1爪部材12が台座8内に格納(収容)された状態である。
【0060】
これにより、ラチェット機構2は、台座8のダイナモメータ3から離れる方向(後進方向)への移動を許容するとともに、台座8のダイナモメータ3へ向かう方向(前進方向)への移動を制限する。
【0061】
可動ユニット6は、第1爪部材12と第2爪部材13を
図5(b)の状態にして、油圧シリンダ9を伸長させて台座8をダイナモメータ3から遠ざかるように押し出すこと(後進させること)と、油圧シリンダ9を収縮させてダイナモメータ3を台座8に引き寄せること(後進させること)と、を繰り返すことで、油圧シリンダ9のストローク以上にダイナモメータ3を連続的に後進移動させることが可能となる。
【0062】
可動ユニット6は、第1爪部材12と第2爪部材13を
図5(b)の状態にして油圧シリンダ9を伸長させた状態から収縮させると、第2爪部材13がアリ溝7に突き当てられてレール5上に固定され、ダイナモメータ3を後方へ引き寄せることができる。
【0063】
また、可動ユニット6は、ダイナモメータ3に比べて軽量なので、第1爪部材12と第2爪部材13を
図5(b)の状態にして油圧シリンダ9を収縮させた状態から伸長させると、ダイナモメータ3から離れる方向へ移動し、第2爪部材13が反ダイナモメータ側に隣接するアリ溝7の内部に案内される。
【0064】
移動装置1は、レール5にアリ溝7が形成されたものであるため、アリ溝7から第1爪部材12及び第2爪部材13の先端が抜け出しにくくなり、ダイナモメータ3の進退を確実に実施することが可能となる。
【0065】
移動装置1は、第1爪部材12及び第2爪部材13の先端が鋭角に形成されたものであるため、アリ溝7から第1爪部材12及び第2爪部材13の先端が抜け出しにくくなり、ダイナモメータ3の進退を確実に実施することが可能となる。
【0066】
移動装置1は、第1ロック機構14及び第2ロック機構15を有しているので、第1爪部材12や第2爪部材13をアリ溝7に干渉しない位置に確実に固定することができる。
【0067】
移動装置1は、第1ストッパ16及び第2ストッパ17を有しているので、第1爪部材12及び第2爪部材13の最大回転角度を規制することでき、第1爪部材12及び第2爪部材13の他部材との無用の干渉を確実に防止することができる。
【0068】
移動装置1は、第1爪部材12の重心位置及び第2爪部材13の重心位置が先端側に位置するよう形成されているので、第1爪部材12及び第2爪部材13を自重により先端をアリ溝7内に進入させることが可能となる。
【0069】
そのため、第1爪部材12の先端や第2爪部材13の先端をアリ溝7内に引き入れる方向に付勢力を与える第1スプリング41や第2スプリング42等の部材を省略することが可能となり、部品定数やコストの削減を図ることができる。
【0070】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、レール5の表面5aには、アリ溝7に変えて、レール5の長手方向に沿った底面の幅が、レール5の長手方向に沿った開口の幅と同じとなるような溝を形成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…移動装置
2…ラチェット機構
3…ダイナモメータ
5…レール
6…可動ユニット
7…アリ溝
8…台座
9…油圧シリンダ
10…第1回転軸部材
11…第2回転軸部材
12…第1爪部材
13…第2爪部材
14…第1ロック機構
15…第2ロック機構
16…第1ストッパ
17…第2ストッパ
31…第1ロック部材
32…第1ピン部材
34…第2ロック部材
35…第2ピン部材