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特開2024-21963水素ガス送出装置及び水素ガス送出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021963
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】水素ガス送出装置及び水素ガス送出方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240208BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20240208BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M16/06 Z
A61M16/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125195
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】593225596
【氏名又は名称】株式会社フラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】松木 清悟
(57)【要約】
【課題】鼻腔カニューラ等の吸引器具を利用することなく、所定距離離れた利用者にも十分な量及び濃度の水素ガスを供給できると共に、温熱効果も得られる水素ガス送出装置及び水素ガス送出方法を提供する。
【解決手段】水素ガス送出装置は、水素ガス供給手段から供給された水素ガスを先端から軸方向に向けて放出する水素ガス放出ノズルと、水素ガス放出ノズルの周囲に設置され、水蒸気発生手段から供給された水蒸気を先端から軸方向に向けて噴出する複数の水蒸気噴出ノズルとを備えており、複数の水蒸気噴出ノズルから噴出された水蒸気流が水素ガス放出ノズルの先端部に当たらないように水素ガス放出ノズルと複数の水蒸気噴出ノズルとの間に間隙が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス供給手段から供給された水素ガスを先端から軸方向に向けて放出する水素ガス放出ノズルと、
前記水素ガス放出ノズルの周囲に設置され、水蒸気発生手段から供給された水蒸気を先端から前記軸方向に向けて噴出する複数の水蒸気噴出ノズルとを備えており、
前記複数の水蒸気噴出ノズルから噴出された水蒸気流が前記水素ガス放出ノズルの先端部に当たらないように前記水素ガス放出ノズルと前記複数の水蒸気噴出ノズルとの間に間隙が設けられていることを特徴とする水素ガス送出装置。
【請求項2】
前記複数の水蒸気噴出ノズルは、前記水素ガス放出ノズルの周囲の同心円上に均一間隔で配置されている少なくとも3つの水蒸気噴出ノズルであることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス送出装置。
【請求項3】
前記複数の水蒸気噴出ノズルの先端は、前記水素ガス放出ノズルの先端より後方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の水素ガス送出装置。
【請求項4】
前記水素ガス放出ノズル及び前記複数の水蒸気噴出ノズルが、複合ノズルとして一体的に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水素ガス送出装置。
【請求項5】
前記複合ノズルが、上下方向に角度変更可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の水素ガス送出装置。
【請求項6】
前記複数の水蒸気噴出ノズルから噴出される水蒸気の流速が、前記水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスの流速より高くなるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水素ガス送出装置。
【請求項7】
水素ガスを水素ガス放出ノズルから放出して軸方向の水素ガス流を形成し、
前記水素ガス流の周囲に前記軸方向の複数の水蒸気流を形成し、
前記複数の水蒸気流によって前記水素ガス流を前記軸方向に搬送する水素ガス送出方法であって、
前記複数の水蒸気流が前記水素ガス放出ノズルの先端部に接しないように形成されていることを特徴とする水素ガス送出方法。
【請求項8】
前記複数の水蒸気流の流速を前記水素ガス流の流速より高い流速とすることを特徴とする請求項7に記載の水素ガス送出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カニューラ等の吸引器具を使用することなく、十分な量及び濃度の水素ガスを送り込むことができると共に、温熱効果も得られる水素ガス送出装置及び水素ガス送出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、体内に取り込まれると還元力によって老化や病気のもととなる体内の活性酸素を除去し、疲労回復、若返り、美肌などの効果があると言われている。近年、水素が体内に起こる炎症や活性酸素を抑えることや、細胞のエネルギー代謝を促進することが発見され、様々な病気の予防や治療に活躍できると期待されている。また、水素に関する医学的な研究が進められており、注目が集まっている。
【0003】
従来、水素を人体内取り込む方法は、鼻腔カニューラ(特許文献1)又はガス吸引用マスク(特許文献2)等の水素ガス吸引器具を面部に装着して水素ガスを直接吸引する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の水素ガス吸引装置は、水素ガスを発生する容器と、接続チューブと、鼻腔カニューラとを備えている。発生した水素ガスは、接続チューブ内に流入し、第2の容器内に収容された多孔質材に形成された微細な貫通穴から細かい泡状となって第2の容器内に充填された水内に放出され、一部はこの水に溶解しながら上方に移動し、その後に中間チューブを介して鼻腔カニューラ内に流入し、使用者の鼻腔から体内に吸引される。
【0005】
また、特許文献2に記載の水素ガス吸入器は、本体部、操作部、誤動作防止装置及びキャップとで構成されている。水素ガス吸入器の使用時には、本体部に設置される管接続部に水素ガス吸入管が接続され、更に利用者が装着する吸入具(吸入マスク)へ続いている。水素ガス発生剤と反応液が混合された水素ガス吸入器の内部では、水素ガスが発生し、本体部の上部に貯留されながら、水素ガス吸入管を通して、吸入者が装着する吸入具(吸入マスク)に水素ガスが送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3184470号公報
【特許文献2】実用新案登録第3207282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の水素ガス吸引装置(水素ガス吸入器)は、鼻腔カニューラ又はガス吸引用マスクを利用者の面部に装着することが必要となり、医療行為であることから使用に制約が生じて手軽に利用することができなかった。また、鼻腔カニューラ又はガス吸引用マスク等の水素ガス吸引器具と水素発生装置(又は、水素貯蔵容器)との間には水素ガスを供給するチューブが連結されているため、利用者は自由に動くことができないという問題点もあった。さらに、水素ガス吸引器具は消耗品として定期的に購入する必要があるという問題点もあった。
【0008】
これら水素ガス吸引装置を使用することなく、水素ガスを空中に放出して利用者に供給しようとすると、水素ガスは空気よりはるかに軽いことから発散してしまい、十分な量及び濃度の水素ガスを利用者に供給することができなかった。
【0009】
本願発明者は、水素ガスを水蒸気流に乗せて搬送することを考え出し、実際に実験を行った(公知技術ではない)。図10は本願発明者が考え出し、実験を行った水蒸気流を利用した水素ガス送出装置の構成を説明する図である。
【0010】
同図に示すように、この水素ガス送出装置は、水素ガス放出ノズルを中央に配置してその周囲に水蒸気噴出ノズルを設け、水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスを水蒸気噴出ノズルからの水蒸気流に乗せて搬送するように構成している。
【0011】
しかしながら、この構成の水素ガス送出装置を実際に作製し、実験を行ったところ、水素ガス放出ノズルの外表面に結露が発生するという問題の生じることが分かった。
【0012】
本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、鼻腔カニューラ等の吸引器具を利用することなく十分な量及び濃度の水素ガスを利用者に供給できると共に、温熱効果も得られる水素ガス送出装置及び水素ガス送出方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、所定距離離れた利用者にも十分な量及び濃度の水素ガスを供給でき、かつ水素ガス放出ノズルの結露を防止することができる水素ガス送出装置及び水素ガス送出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、水素ガス送出装置は、水素ガス供給手段から供給された水素ガスを先端から軸方向に向けて放出する水素ガス放出ノズルと、水素ガス放出ノズルの周囲に設置され、水蒸気発生手段から供給された水蒸気を先端から軸方向に向けて噴出する複数の水蒸気噴出ノズルとを備えており、複数の水蒸気噴出ノズルから噴出された水蒸気流が水素ガス放出ノズルの先端部に当たらないように水素ガス放出ノズルと複数の水蒸気噴出ノズルとの間に間隙が設けられている。
【0015】
水素ガス放出ノズルから軸方向に向けて水素ガスが放出され、その周囲に設置された複数の水蒸気噴出ノズルから水蒸気が軸方向に向けて噴出される。このように、水素ガス放出ノズルから放出された水素ガス流がその周囲の水蒸気流に囲まれながら噴出方向に搬送される。水素ガスの搬送に水蒸気を用いることで、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。水素を混入したスチーム(水蒸気)による温熱効果も得られる。特に本発明によれば、複数の水蒸気噴出ノズルから噴出された水蒸気流が水素ガス放出ノズルの先端部に当たらないように水素ガス放出ノズルと複数の水蒸気噴出ノズルとの間に間隙が設けられているため、水素ガス放出ノズルの先端部の結露を防止することができる。
【0016】
複数の水蒸気噴出ノズルは、水素ガス放出ノズルの周囲の同心円上に均一間隔で配置されている少なくとも3つの水蒸気噴出ノズルであることが好ましい。これにより、所定距離離れた利用者にも十分な量及び濃度の水素ガスを供給できる。
【0017】
複数の水蒸気噴出ノズルの先端は、水素ガス放出ノズルの先端より後方に配置されていることも好ましい。
【0018】
水素ガス放出ノズル及び複数の水蒸気噴出ノズルが、複合ノズルとして一体的に構成されていることも好ましい。
【0019】
複合ノズルが、上下方向に角度変更可能に構成されていることも好ましい。
【0020】
複数の水蒸気噴出ノズルから噴出される水蒸気の流速が、水素ガス放出ノズルから放出される水素ガスの流速より高くなるように構成されていることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、水素ガス送出方法は、水素ガスを水素ガス放出ノズルから放出して軸方向の水素ガス流を形成し、水素ガス流の周囲に前記軸方向の複数の水蒸気流を形成し、複数の水蒸気流によって水素ガス流を軸方向に搬送する。ここで、複数の水蒸気流が水素ガス放出ノズルの先端部に接しないように形成されている。
【0022】
放出された水素ガス流がその周囲の水蒸気流に囲まれながら噴出方向に搬送される。水素ガスの搬送に水蒸気を用いることで、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。水素を混入したスチーム(水蒸気)による温熱効果も得られる。特に本発明によれば、複数の水蒸気噴出ノズルから噴出された水蒸気流が水素ガス放出ノズルの先端部に接しないため、水素ガス放出ノズルの先端部の結露を防止することができる。
【0023】
複数の水蒸気流の流速を水素ガス流の流速より高い流速とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水素ガス放出ノズルから放出された水素ガス流がその周囲の水蒸気流に囲まれながら噴出方向に搬送される。水素ガスの搬送に水蒸気を用いることで、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。水素を混入したスチーム(水蒸気)による温熱効果も得られる。特に本発明によれば、複数の水蒸気噴出ノズルから噴出された水蒸気流が水素ガス放出ノズルの先端部に接しないように水素ガス放出ノズルと複数の水蒸気噴出ノズルとの間に間隙が設けられているため、水素ガス放出ノズルの先端部の結露を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の水素ガス送出装置の一実施形態の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1の水素ガス送出装置の構成を概略的に示す上から見た図である。
図3図1の水素ガス送出装置の構成を概略的に示す(A)正面図、(B)側面図である。
図4図1の水素ガス送出装置の複合ノズルの構成例及び水素ガス送出状態を概略的に示す断面図である。
図5】水素スチームの効果を示す被験者aの毛細血管を撮像した結果である。
図6】水素スチームの効果を示す被験者bの毛細血管を撮像した結果である。
図7図1の水素ガス送出装置の使用形態の例(その1)を概略的に示す図である。
図8図1の水素ガス送出装置の使用形態の例(その2)を概略的に示す図である。
図9図1の水素ガス送出装置の使用形態の例(その3)を概略的に示す図である。
図10】本願発明者が考え出し、実験を行った水蒸気流を利用した水素ガス送出装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施形態における水素ガス送出装置100の外観構成を概略的に示しており、図2はこの水素ガス送出装置100を上から見た図であり、図3は水素ガス送出装置100の(A)正面図、(B)側面図である。図4は水素ガス送出装置100の複合ノズルの構成及び水素ガス送出状態を示している。
【0028】
図1から図4に示すように、本実施形態に係る水素ガス送出装置100は、水蒸気及び水素を噴出する複合ノズル10と、水素ガス供給手段20と、水蒸気を発生し噴出するための水蒸気発生手段30と、制御手段40と、貯水タンク50とを備えている。
【0029】
また、図1から図4に示すように、複合ノズル10は、水素ガス供給手段20から供給された水素ガスを先端から軸方向に向けて放出する水素ガス放出ノズル11と、水素ガス放出ノズル11の外側に同心円上に均一間隔で設置され、水蒸気発生手段30から供給された水蒸気を先端から軸方向に向けて噴出する複数の(本実施形態では3つの)水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cと、これら3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cの外側に同軸に配置された短円筒状の筒部(ガイド筒)13とを備えている。複数の水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cは、水素ガス放出ノズル11を取り囲むようにその周囲に間隙を置いて配置されている。即ち、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cの中心に水素ガス放出ノズル11が設けられ、かつ水素ガス放出ノズル11に対して所定間隔を離間して配置されている。水素ガス放出ノズル11と3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cが離れて配置されることにより、水蒸気流が水素ガス放出ノズル11の先端部に当たることはなく、その先端部に結露が発生することを防止できる。また、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cの先端は、水素ガス放出ノズル11の先端より後方に配置されている。筒部(ガイド筒)13を設けることにより、水蒸気流及び水素ガス流の直進性能を高めることができる。本実施形態において、水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cの軸は、水素ガス放出ノズル11の軸の同心円上配置されている。
【0030】
また、本実施形態において、水素ガス放出ノズル11及び3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cは一体化されて複合ノズル10を構成している。この複合ノズル10は、角度調整機構14により、上下方向に角度変更可能に構成されている。即ち、複合ノズル10の先端部は角度調整機構14の軸の回りを上下方向に所定角度範囲で回動可能であり、これによって使用時に複合ノズル10の向きを調整することができる。また、複合ノズル10は、水素ガス放出ノズル11の先端は、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cの先端より前方(ガス放出方向)に、突出量d=40mmで配置されている。これにより、水素ガス流の拡散を抑制することができる。
【0031】
なお、水素ガス放出ノズル11と3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cとの間の間隙は、水素ガス流と高速水蒸気流との間の緩衝エリア(クッションとなる空間)を構成している。即ち、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから水蒸気を高速に噴出する際に、水素ガス放出ノズル11と3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cとの間の空気が引っ張られて先端へ流れるように付勢されて、水素ガス流の流速より速くかつ高速水蒸気流の流速より遅い流速を有する緩衝エリアが、水素ガス流と高速水蒸気流との間に形成される。
【0032】
水素ガス供給手段20は、本実施形態では、例えば、水を電気分解することにより水素を生成するような水素ガス発生装置から構成される。電気分解による水素ガス発生装置は、高圧水素ガスボンベの代わりとして、より安全に使用でき、コストを低減することができる。電気分解による水素ガス発生装置を用いる場合は、必要な時に必要な量だけ水を電気分解し、純度99.999%の水素ガスを製造できる。なお、水素ガス供給手段20として、市販の小型水素ガスボンベ又は水素吸蔵合金キャニスタを用いても良い。
【0033】
水蒸気発生手段30は、例えば、ヒータと、ヒータ制御部とから構成可能である。貯水タンク50から供給された水をヒータにて蒸化すれば、水蒸気を形成することができる。水蒸気発生手段30から供給された水蒸気は、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから噴出されて水蒸気流となる。この水蒸気流は、中央部の水素ガス流を囲むようになっているため、水素ガス流を直線に近い流れで搬送することができ、また、水蒸気流の流速が速いため、水素ガス流の拡散による濃度低下を抑えることができる。
【0034】
制御手段40は、水素ガス供給手段20と水蒸気発生手段30とを制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータを用いている。このマイクロコンピュータは、制御プログラムに従って、水素ガス送出装置100の全体の動作を制御する。本実施形態において、制御手段40は、使用者が電源をオンにした場合、水素ガス放出ノズル11から水素ガスを放出すると共に、水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから水蒸気を噴き出すように、さらに、水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから噴出される水蒸気の流速が、水素ガス放出ノズル11から放出される水素ガスの流速より高くなるように、水素ガス供給手段20と水蒸気発生手段30との動作を制御するように構成されている。また、制御手段40は、水素ガス供給手段20の水素ガスの生成過程も制御するように構成されている。
【0035】
このような構成の水素ガス送出装置100の動作及び作用について、以下説明する。装置が作動すると、まず、複合ノズル10の中央の水素ガス放出ノズル11から水素ガスを放出されると共に、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから水蒸気が噴出される。これにより、図4に示すように、水素ガス流の外側に水素ガス流の流速より高い速度の3つの水蒸気流が形成され、これら3つの水蒸気流は軸方向に沿って直進する。これら3つの水蒸気流によって水素ガス放出ノズル11と3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cとの間の空気が付勢され、水素ガス流の流速より速くかつ高速水蒸気流の流速より遅い流速を有する緩衝エリアが、水素ガス流と高速水蒸気流との間に形成される。これらの3つの水蒸気流と緩衝エリアにより水素ガス流の拡散を抑えながら、所定距離まで十分な量及び濃度の水素ガスを送出することができる。このように水素ガスを水蒸気(スチーム)流にのせて搬送することができる。なお、本実施形態の水素ガス送出装置100において、水素スチーム到達目標は200mmである。
【0036】
本発明の水素ガス送出装置の水素ガス搬送効果を測定する検証実験を行った。検証に使用する水素ガス送出装置としては上述の実施形態の水素ガス送出装置100を用いた。水素濃度測定器として、水素ガス測定器UPX4型(株式会社ユーピー)を用いた。検証環境としては、気温:21℃、湿度:60%、無風であった。水素スチーム到達目標は200mmとした。水素ガスの流量は50mL/minであった。複合ノズル10の排出口より軸方向に200mm離れた位置に水素濃度測定器を設置した。この構成によって測定した水素濃度は、2.6%であった。これにより、水素ケアに適する水素濃度を達成することが確認できた。
【0037】
次に、本発明の水素ガス送出装置100の水素スチーム(水素を混入したスチーム)の効果の確認実験を行った。確認実験に使用する水素ガス送出装置としては上述の実施形態の水素ガス送出装置100を用いた。実験は被験者a及びbに対して、自然呼吸可能状態で、異なる温スチームを顔に浴びる方法を用いた。即ち、温スチームのみを顔に10分間浴びた場合と、水素スチーム(水素を混入した温スチーム)を顔に10分間浴びた場合とである。
【0038】
試験形態として、スチーマーは、スチーム出力が約8mL/分のものを用いた。スチーム吹出口から被験者口元の距離:約200mm、口元でのスチーム温度:約35~40℃であった。水素発生器は、水素排出口地点での水素濃度:99.99%、発生する水素量:50mL/分、水素エアー吹出口から被験者口元の距離:約200mm、吸引時間は10分であった。このような試験直後の血流の違いを観察した。
【0039】
観察方法は以下の通りとした。試験の前及び後に血流専用観察用カメラ(TOKU社製)で手指の爪の生え際の毛細血管を撮像し、血流の変化を見た。図5は被験者aの毛細血管を撮像した結果の一例を示しており、同図(A)は試験前の血流観察結果、(B)は温スチームのみを浴びた後の血流観察結果、(C)水素スチームを浴びた後の血流観察結果である。図5に示すように、(B)及び(C)の両試験とも血流に影響することが確認できたが、(C)の水素スチームのほうが血流の活性化ならびに血管の影が太く明快に変化していることが確認された。図6は被験者bの毛細血管を撮像した結果の一例を示しており、同図(A)は試験前の血流観察結果、(B)は温スチームのみを浴びた後の血流観察結果、(C)水素スチームを浴びた後の血流観察結果である。図6に示すように、(C)の水素スチーム吸引後のほうが血流の活性化だけでなく、視認できる血管の数が増加していることやより細い血管の血流が確認された。
【0040】
以上のように、スチームと水素とを同時に「吸入」又は「浴びる」ことにより水素+温熱効果の実現が可能となった。今回の血流検証は、手指の爪生え際の毛細血管の動画で撮像したが、頬や頭皮の血流にも同様の効果が確認された。通常の温スチームは毛穴を開き、血行を促進するが、水素スチームはより即効性のある血行促進が可能となることを確認した。
【0041】
図7から図9は、図1の水素ガス送出装置100の使用形態の例を示している。図7は、テーブル等に設置された水素ガス送出装置100に向かって座った状態で水素ガスを吸引する例を示している。図8は、テーブル等に設置された水素ガス送出装置100の近くに他の作業をしながら水素ガスを吸引する例を示している。図9は、就寝中にベッド付近設置された水素ガス送出装置100から放出された水素ガスを吸引する例を示している。図7から図9に示すように、本実施形態の水素ガス送出装置100によれば、従来のような装置と使用者をつなぐ水素供給用管がないため、使用者は自由に動くことが可能となり、気軽で日常的に使用することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の水素ガス送出装置100によれば、水素ガス放出ノズル11から放出された水素ガス流が、その周囲に設置された3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから噴出された水蒸気流に囲まれながら噴出方向に搬送される。水素ガスの搬送に水蒸気を用いることで、十分な量及び濃度の水素ガスを、鼻腔カニューラ等の吸引器具を用いることなく、所定距離離れた利用者に供給することができる。水素を混入した水蒸気による温熱効果も得られる。特に、3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cから噴出された水蒸気流が水素ガス放出ノズル11の先端部に当たらないように水素ガス放出ノズル11と3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cとの間に間隙が設けられているため、水素ガス放出ノズル11の先端部の結露を確実に防止することができる。
【0043】
なお、上述した実施形態においては、水素ガス送出装置100の複合ノズル10として、水素ガス放出ノズル11の周囲に3つの水蒸気噴出ノズル12a、12b及び12cを設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、水素ガス放出ノズル11の周囲に4つ以上の水蒸気噴出ノズルを設けるように構成しても良い。また、例えば、水素ガス放出ノズル11の周囲の同心円上に1対の円弧状の水蒸気噴出ノズルを設けても良い。
【0044】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、カニューラ等の吸引器具を使用せず、水素ガスを吸引し体内に取り込む目的に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
10 複合ノズル
11 水素ガス放出ノズル
12a、12b、12c 水蒸気噴出ノズル
13 筒部(ガイド筒)
14 角度調整機構
20 水素ガス供給手段
30 水蒸気発生手段
40 制御手段
50 貯水タンク
100 水素ガス送出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10