(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021965
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】レーザ加工ノズル
(51)【国際特許分類】
B23K 26/14 20140101AFI20240208BHJP
B23K 26/361 20140101ALI20240208BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20240208BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20240208BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240208BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240208BHJP
【FI】
B23K26/14
B23K26/361
B23K26/342
B23K26/34
B23K26/21 Z
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125197
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】510086327
【氏名又は名称】株式会社最新レーザ技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】718006420
【氏名又は名称】沓名 宗春
(72)【発明者】
【氏名】沓名 宗春
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD05
4E168BA35
4E168BA81
4E168DA28
4E168DA32
4E168DA40
4E168FA01
4E168FA02
4E168FA04
4E168FB03
4E168FB05
4E168JA02
4E168JA14
4E168JA15
4E168JA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】短時間で、部材エッジ部を滑らかに整形することまたは肉盛・補修する。
【解決手段】レーザ加工ノズル1~4はレーザ加工ヘッド15にネジで装着され、スペーサー4をノズル構成部品2とノズル構成部品3の間に装着しており、複数個のガス送給孔6を通して、対象物のエッジ部に渦巻状ガスを噴射できるエッジ部整形ノズルであって、前記レーザ加工ノズル1~4は、前記エッジ部に対して、エッジ部の整形方向に所定速度で移動しながら、レーザビームを前記エッジ部に同軸上に照射するすることにより、バリおよび母材エッジ部を溶融し、生じた溶融池表面を滑らかに整形することができる。用いるシールドガスの圧力は0.8MPa以下で、シールドガスを噴射点P1に照射できることを特徴とするレーザ加工ノズルである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを用いて対象物のエッジ部の整形加工、継手部のレーザ溶接加工、レーザ溝堀加工および部材表面の肉盛・補修などをするためのレーザ加工ノズルであって、
前記レーザ加工ノズルは、
前記レーザ加工部に対して、レーザビームをレーザ加工ノズルと同軸上に照射するできるレーザ加工ヘッドにネジで取り付けられるレーザ加工ノズルであって、前記レーザ加工ノズル内部に複数本のガス供給孔を持ち、レーザ加工ノズル先端部に2つの円錐体部を持ち、1つの円錐体部ともう一つの円錐体部の間に渦巻状または円錐状のガス流を引き起こすともえ模様のガス流路を持つ紙、樹脂、あるいは軟質金属など弾力性に富む材質から成る0.5mm~2mm厚のスペーサーを挟んで、前記レーザ加工ノズルの側面から0.8MPa以下のガス圧のシールドガスまたは肉盛金属粉体を含むキャリアガスをガス送給口およびガス送給孔を通してガス噴射点に向けて送給することにより、レーザビームにより生じた溶融池およびエッジ部を滑らかに整形することを特徴とするレーザ加工ノズル
【請求項2】
前記レーザ加工ノズルはレーザ加工ヘッドに装着され、前記レーザ加工ノズルから同軸上に噴射された前記シールドガスは、前記ガス照射点に向けて噴射され、前記対象物エッジ部のバリを溶融し、溶融池およびエッジ部を滑らかにすることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工ノズル。
【請求項3】
前記シールドガスは空気、酸素、窒素、CO2ガス、不活性ガス、またはこれらの混合ガスであり、前記ガスを前記エッジ部に噴射した結果、前記エッジ部は渦巻状または円錐状のガス流の墳力および表面張力により丸くなることを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザ加工ノズル。
【請求項4】
前記レーザ加工ノズルを肉盛、肉盛補修および3Dプリンティング(積層造形)に用いる場合は、前記ガスはキャリアガスと呼び、前記キャリアガスは窒素、炭酸ガス、不活性ガス、またはこれらの混合ガスであり、平均粒径が20μm~300μmの肉盛金属粉末を含んでおり、前記キャリヤガスを前記肉盛部または補修部に噴射することにより、レーザビームにより肉盛金属粉末が溶融して溶融池に入り、渦巻状または円錐状のガス流および表面張力により溶融池表面が滑らかで丸くなり、滑らかな肉盛層ができることを特徴とする、請求項1、2または3に記載のレーザ加工ノズル。
【請求項5】
前記レーザ加工ノズルから噴射されるガスのガス照射点はレーザビームの焦点よりもノズル側にあり、前記ガス照射点はノズル先端面より2mm~20mmの範囲にあることを特徴とする、請求項1、2、3または4に記載のレーザ加工ノズル。
【請求項6】
前記レーザ加工ノズルを構成するスペーサーは厚さ0.5mm~2mmの円盤状のもので、その内部に複数のガス流路を持つもので、そのガス流路の形状はともえ模様状および円錐状で、この形状により渦巻状または円錐状のガス流を生成できることを特徴とするスペーサーを持つ、請求項1、2,3,4または5に記載のレーザ加工ノズル。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5,および6に記載のレーザ加工ノズルを用いたバリ取り加工装置、レーザ溝堀加工装置、レーザドレッシング装置、レーザ溶接加工装置、レーザ肉盛装置、レーザ肉盛補修装置、およびレーザ積層造形装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工部品、成形部品、鋳造品などの金属部材や非金属部材のコーナー部のバリ取り加工、エッジ成形、溶接、切断、溝堀り加工、肉盛・補修などを行うときのレーザ加工ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
2つ以上の型枠を用いる樹脂成形や、金属の鋳造や切削加工等において、バリが生じることがある。また、加工部品のエッジ部が鋭く角ばったり、凹凸部がある場合があり、このような鋭く鋭角なエッジ部に手が触れた場合、怪我をする等の安全衛生上の問題がある。部品のエッジを滑らかにしたい問題、溶接ビードの表面を滑らかにしたい問題、部材の表面に溝を掘りたい問題、補修部品の欠陥部を肉盛・補修したいなどの問題を解決するために、従来は、カッター、ロータリバー、ブラシ、サンドペーパー等を用いてバリ取りやエッジ整形加工などのエッジ部の整形を行ったり、各種レーザ加工機で各種の加工光学系を用いてレーザ加工を行ってきた。
【0003】
しかしながら、従来のバリ取りやエッジ整形加工は人の手によるため時間がかかる上に、樹脂等の柔らかい素材に発生したバリに関してはバリ自体のコシが柔らかく刃物から逃げてしまい切除が難しいという問題があった。また、バリの除去中やエッジ整形加工中に切りくずが空中に舞う事による安全衛生上の問題があった。また肉盛、補修では肉盛金属の歩留が低いという問題があった。
【0004】
バリ取りに関しては、レーザを用いたバリ取り装置が提案されている(例えば、特許文献1~3)。これらのバリ取り装置では、バリにレーザビームを照射し、金属やその他バリ取り対象物の溶融温度をはるかに超えた温度にして気化やプラズマ化させて消滅させる、すなわちアブレーション(固体の気化、プラズマ化)によりバリを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-114458号公報
【特許文献2】特開昭64-18590号公報
【特許文献3】特開2018-158375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザアブレーションによりバリ取りをする方法では、バリ除去後のエッジ部端面が粗く、二次バリが発生してしまうという問題があった。また、エッジ部の整形は、主に機械切削加工により、平らで滑らかな面に仕上げているが、例えば曲面などの平面でない形状を持つエッジ部への仕上げは困難であった。さらに、バリ取りや面取り加工等のエッジ部の整形を人の手によらず短時間で精密に行いたいという要望がある。
【0007】
そこで、本発明では、集光性のよい熱源であるレーザを用いて、金属や非金属の樹脂、セラミックス、石材、ガラス等の材料から成る部材の鋭いエッジ部を、滑らかな曲面形状や平滑な面を含む任意の断面形状のエッジ部になるように、精密に、素早く整形することを目的とする。さらに、エッジ部に形成されたバリを容易に素早く取り、同時に滑らかな曲面のエッジ部を形成することを目的とする。また、レーザ溶接ビード表面を滑らかにすることを目的にしたり、欠陥のある部材の補修を肉盛補修する場合や3Dプリンティングを行う場合には渦巻流により、肉盛金属粉を肉盛部に集中させることにより、肉盛金属の歩留を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レーザビームを用いて金属や非金属部材のエッジ部のバリを取ってエッジ部整形を行う新提案のレーザ加工ノズルであり。このノズルは、
図1に示すように、4つの部品を組み合わされている。レーザビームの入り口の部品1はレーザヘッドにネジで取り付けられる。部品2はシールドガスまたは肉盛用キャリアガス(例えば、アルゴンガスと肉盛金属粉体の混合物)のガス送給口5を1つまたは複数個持ち、送給されたガスは部品2に設けられた複数本のガス送給孔6(孔径は約1mm~2mm)を通して先端部の円錐体面に配置されたスペーサーに送給され、部品3の先端部の円錐体との隙間を通してノズル先端型ガス集中点P1に向けて流れる。部品2は部品1とネジで結合されている。また、ノズルの最先端の部品3は部品2とネジで結合されている。部品4のスペーサーの形状は
図2に示すようにスペーサー内部にともえ模様または円と三角の模様のガス流路を形成することにより、ガスをエッジ部に渦巻状に吹付けることができる。なお、部品2の先端部は円錐体からなり、部品2の先端部と部品3の先端部にスペーサー4を挟んで使用することにより、シールドガスや肉盛用キャリアガスを渦巻状に部材表面のガス照射点P1に向けて流すことができる。そのガス圧は加工目的より変化するが、0.8MPa以下のガス圧で十分である。スペーサーは板厚0.5mm~2mmの弾性体からできている。その代表的な形状を
図3に示す。渦巻状でなく直流的に流すときは
図3の(a)および(b)の形状のスペーサーを用い、渦巻状の時は
図3の(c),(d),および(e)のスペーサーを用いる。スペーサーの材質はゴム、樹脂、紙、軟質の金属などの弾性に富む材質が利用できる。
【0009】
このレーザ加工ノズルを用いれば、
図3(a)に示すエッジ部のバリをレーザにより溶融させ(
図2(b)参照)、同時に低圧で渦巻状ガスをレーザと同軸上に流すと、エッジ部の溶融金属表面を滑らかにし、表面張力により丸みのあるビードに整形することができる。すなわち
図3(c)に示すように短時間でエッジ部のバリ取り・エッジ整形ができる。加工対象とする部材のエッジ部が2次元的、または3次元的に変化している場合でも、6軸ロボットなどにより効率的にエッジ部を倣うことにより、レーザ加工ノズルの先端をエッジに沿って移動でき整形ができる。
【0010】
肉盛補修の時は、このレーザ加工ノズルを用い、キャリアガスが噴射されると、渦巻状ガスの中にある肉盛金属粉体がレーザ照射で加熱・溶融され、溶融金属が効率的に部材表面に肉盛され、高能率な肉盛・補修が可能となる。特に3Dプリンターに用いる場合も同様な理由で、高能率な肉盛ができる。
【0011】
また、溝加工にこのレーザ加工ノズルを用いるときは、ワーク表面をガス
照射点P1の近傍にして、ガス圧を高めに調整することにより、溶融部をシ
ールドガスで吹飛ばして溝深さを深く調整でき、部材表面に微細な溝を加工
できる。
逆に、溶接にこのレーザ加工ノズルを用いるときは、ワーク表面をシールド
ガスの照射点P1から数mm離して、ガス圧を低くして溶接することにより,
滑らかなビード外観を持つレーザ溶接が容易にできるという特徴を持つ。
【0012】
前記シールドガスは空気、酸素、窒素、CO2ガス、不活性ガス、またはこれらの混合ガスであり、前記エッジ部に噴射した結果、前記エッジ部は表面張力により丸くなることが好ましい。また、肉盛用のキャリアガスには炭酸ガス、不活性ガスまたはこれらの混合ガスを用いることが望ましい。
前記キャリアガスには平均粒径20μm~200μmの各種の肉盛用合金粉末が含まれており、キャリアガスとともにレーザ加工ノズル先端より噴射される。キャリアガス内部の肉盛用合金粉末はレーザビームに加熱されて肉盛部では溶融・溶着して肉盛金属になる。
【0013】
前記レーザ加工ノズルから噴射されるガスの照射点P1はレーザビームの焦点P2よりもノズル側にあるのが望ましい。P1点はノズル先端面より2mm~20mmの範囲にあるのが望ましい。
【0014】
前記レーザ加工ノズルによれば、肉盛補修および3Dプリンティングの時に、流動状態であるエッジ溶融部に渦巻状ガスの噴力により溶融金属がビード中心部に集中しやすいという特徴もある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、材質、エッジ部の形状、バリの有無にかかわらず、短時間でエッジ部の整形が可能になる。また、エッジ部の整形後の端面が滑らかであり、角部、縁部となるエッジ部に滑らかな曲面が形成されるため、人体に優しい形状の製品を得ることができる。レーザビームを用いるので、加工速度が改善される。ロボットの利用により自動化が可能になる。また、波長の異なる各種のレーザ熱源を用いることにより、金属のみならず、非金属材料にも、高反射率の材料や高透過率の材料を高速加工ができるのみでなく、レーザビームのスポット径が数10μmと微細なため、エッジ部を後加工が不要なほど精密な曲面や複雑形状に加工することができる。このことはレーザ溶接や肉盛・補修、3Dプリンティングに用いたときにも同様の効果が得られ、従来にない高能率、高品質のレーザ加工ができる。また、レーザドレッシングにこのノズルを用いれば、溶接継手止端部をレーザビームで溶融して、滑らかにできるので、止端半径を増大でき、応力集中を緩和できるので、溶接継手の疲労強度の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるレーザ加工ノズル1を説明する側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態におけるスペーサー4を説明する平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態におけるバリ取り機構を説明する断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態におけるレーザ加工ヘッドに取り付けたレーザ加工ノズルを示す写真である。
【
図5】(a)は本発明の第1実施形態におけるバリ取り前のワークのエッジを示す写真である。(b) 同バリ取り後のエッジの外観を示す写真である。
【
図6】本発明の第1実施形態におけるレーザ加工ヘッドに取り付けられたレーザ加工ノズルの図である。
【
図7】は本発明の第2実施形態における肉盛の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~8を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。レーザ加工ノズルは
図1に示すように、4つの部品を組み合わされている。部品1はレーザ発振器によりレーザビームを出力するレーザ加工ヘッド15にネジで固定してある。シールドガスまたはキャリアガスをノズル内に送給するガス送給口5はレーザ加工ノズルの側面に配置されている。レーザ加工ノズル1~4は
図1に示す部品1と部品2および部品2と部品3はともにネジで固定されている。部品2はシールドガスまたは肉盛用キャリアガス(例えば、アルゴンガスと肉盛金属粉体の混合物)の円筒状のガス送給孔6を1つまたは複数個持ち、送給されたガスはこのガス送給孔6を通してノズル先端部の円錐体面に配置されたスペーサー4のガス流路に送給され、スペーサー4内部のともえ状のガス流路8を通して部品3の先端部の円錐体との隙間を通してノズル先端のガス照射点P1に向けて渦巻状または円錐状に噴射される。ワーク9の材料は限定されず、樹脂、金属、セラミックス、エラストマー、ガラス等、各種材料から成るワーク9に適用できる。
【0018】
第1実施形態においては、ワーク9は10mm厚さの軟鋼板とした。レーザ加工ノズル1~4は、バリがないワークにも適用可能であり、金属やガラスなどの鋭いエッジ部のエッジ整形装置としても利用できし、バリ取りと同時に、エッジ部を滑らかな曲面に整形できる特徴を持つ。前記レーザ加工ノズルの最先端の部品3は部品2とネジで結合されている。部品4のスペーサーの形状は
図2に示すようにスペーサー内部にいろいろな形状のガス流路を形成することにより、ガスをワークのエッジ部に渦巻状に吹付けることができる。そのガス圧は加工目的より変化するが、0.8MPa以下のガス圧で十分である。スペーサーは板厚0.5mm~2mmの弾力性が十分ある材質からできている。渦巻状でなく円錐状にガスを流すときは
図2(a)および(b)に示す形状のスペーサーを用い、渦巻状の時は
図2(c),(d),および(e)の形状のスペーサーを用いる。スペーサーの材質はゴム、樹脂、紙、軟質な金属などの弾力性が十分ある材質のものが利用できる。ガス送給孔6は複数の円筒状またはノズル先端に行くほど内径が小さくなるような円錐体であり、シールドガスやキャリアガスをスムーズにノズル先端部のスペーサーに送給できる孔である。
図3は、レーザバリ取りプロセスを示す。
図3(a)は加工前のワーク9を示す。エッジ部にバリ10がある。次に、
図3(b)はワーク9にレーザビーム11が照射され、バリ10を溶融して1つの溶融池12ができた状態を示す。
図3(c)は渦巻状シールドガス13により溶融池表面が滑らかになったエッジ14を示す。
【0019】
第1実施形態では、前記レーザ加工ノズルを用いて軟鋼板のエッジ部に発生しているバリ取り加工を行う場合を示す。
図4はレーザ加工ノズルにガス送給ノズルを取り付けた状況を示す写真を示す。
図5に示すようにレーザ加工ノズルの部品2の側面のガス送給金具16を通してシールドガスを送給し、8本のガス送給孔6を通してスペーサーのガス流路8にガスを流し渦巻状にして、ガス照射点P1に噴射している。
スペーサーの材質は厚紙で板厚は0.7mmである。その形状は
図2(e)に示す形状のものである。ガスの照射点P1はノズル先端より約2~20mm離れている。エッジ部に沿ってレーザ加工ヘッドを10~200mm/sの速度範囲で移動させて、バリ取りを行い、エッジ部を滑らかなエッジに加工できる。
【0020】
第1実施形態では、3kWシングルモードのファイバーレーザ装置を用いて行った形態を示す。円筒状にレーザ加工ヘッドにレーザ加工ノズル1~4を
図4に示すように取り付けて行った。レーザ出力を500W~1000W、焦点外し距離は0mm~+5mm、走行速度20mm/s~50mm/s, シールドガスを窒素として、軟鋼板のバリ取り加工を行った。
【0021】
レーザ照射時の走行速度はレーザ加工条件および対象物の材質などにより異なるが、10mm/s~300mm/sであることが好ましい。また、シールドガスの圧力は0.5MPa以下であることが好ましい。望ましくはレーザ加工ヘッドおよびガス送給ノズル両方を保持する治具を備えた多軸ロボットが、ロボットコントローラー、PLC、パソコン等の制御手段により、レーザヘッドおよびレーザ加工ノズルの角度、初期位置を決定し、エッジ部の線に沿ってレーザ加工ヘッドを移動させ、バリ取り加工できるのがよい。
【0022】
図6にレーザバリ取り加工前の軟鋼のエッジ部とレーザバリ取り後のエッジ部の写真を示す。
図6(a)は加工前のバリのあるエッジ部を示す。
図6(b)はバリ取り加工後のエッジ部を示す。明らかに、滑らかな丸みのあるエッジ部が得られた。
【0023】
第1実施形態では、従来技術であるアブレーションさせるよりはるかに低いエネルギー密度のレーザビーム11を与え、エッジ部のバリ10近傍の材料を溶融させ、溶融物は溶融池を形成し、渦巻状ガス流により溶融池表面をガス墳力と表面張力で、より丸く、滑らかにすることができる。レーザビームのエネルギー密度が閾値を超えれば、アブレーションが起きてしまうため、その閾値を超えないように、かつ、エッジ部のバリ10が十分溶融できるように、レーザの種類(波長)、レーザ出力、ビームスポット径およびレーザヘッド15の移動速度などのレーザ加工条件を決定する必要がある。例えば、樹脂のエッジ整形では、レーザ波長の長い炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)やツリウムレーザ(波長約2μm)を用いることが好ましい。レーザ出力は、100W~2000Wが好ましく、レーザ加工ヘッド15の移動速度は10~200mm/sが好ましい。ビームスポット径は加工法により異なるが、0.05~0.3mmの範囲のものが好ましい。
レーザ加工ヘッド15とエッジ部との距離はレーザの種類やレーザヘッドシステム(レンズの種類等)により適切に調整する必要がある。
【0024】
第2実施形態では、レーザ肉盛・補修および積層造形に前記レーザ加工ノズルを用いる場合を示す。
図7は前記レーザ加工ノズルを用いて、レーザ肉盛・補修および積層造形のプロセスを説明する図である。肉盛に用いるキャリアガスのアルゴン中には平均粒径約20~200μmの肉盛金属粉末が含まれており、ガス照射点P1でレーザビームと交差するところで、
キャリアガス中の肉盛金属粉末は溶融し、凝集して肉盛基板19上に落下して肉盛層18が形成される。このプロセスを2回、3回と繰り返すと、2層目、3層目と層数が増加し、肉盛・補修や積層造形ができる。レーザビームの焦点P2は加工条件により、肉盛基板表面より上にある場合と、下にある場合がある。ガス照射点P1近傍では、エネルギー密度が100万W/cm2以上のレーザビームを用いるので、キャリアガス中の肉盛金属粉末は瞬時に溶融するという特徴がある。
【実施例0025】
本発明による、コーナー部整形加工の実施例を示す。第1実施形態の実施例である。本実施例における各条件は以下のとおりである。
ワークの材質:炭素鋼(軟鋼)
バリの高さ:1.5mm以下
バリの長さ:0.5mm~5mm
レーザ種類:シングルモードファイバーレーザ(連続発振)
レーザ出力: 500W
レーザ加工ヘッドの移動速度:30mm/秒
焦点はずし距離:+2mm
ビームスポット径:約0.1mm
シールドガス種類:窒素ガス
シールドガス圧:0.1MPa
【0026】
ワーク9は略直方体であり、機械切断時に発生したバリで不連続に形成されていた。上記条件により、バリ取り加工した結果として得られたバリ取り後のエッジ部のレーザ顕微鏡による200倍画像を
図6(b)に示す。エッジ部は丸みのある滑らかなビードとなっている。