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  • 特開-パルスアーク溶接の磁気吹き対処方法 図1
  • 特開-パルスアーク溶接の磁気吹き対処方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021966
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】パルスアーク溶接の磁気吹き対処方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/08 20060101AFI20240208BHJP
   B23K 9/09 20060101ALI20240208BHJP
   B23K 9/173 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B23K9/08 D
B23K9/09
B23K9/173 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125199
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】梶原 凱
【テーマコード(参考)】
4E001
4E082
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB08
4E001CA00
4E001DE03
4E001DE04
4E001EA01
4E082AA01
4E082AB03
4E082CA01
4E082DA01
4E082EB11
4E082EE01
4E082EE03
4E082EE06
4E082EE07
4E082EF02
4E082EF07
4E082EF14
4E082HA04
4E082JA01
(57)【要約】
【課題】消耗電極パルスアーク溶接において、磁気吹きによるアークの変形を抑制すること。
【解決手段】溶接ワイヤを送給し、電極プラス極性EPでピーク電流Ip及びピーク電圧を出力するピーク期間Tpとベース電流Ib及びベース電圧を出力するベース期間Tbとを繰り返し、ベース電圧の上昇に基づいて磁気吹きの発生を判別したときは、溶接電源の出力を制御して磁気吹きに対処するパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法において、時刻t42に磁気吹きを判別Dabしたときは、電極プラス極性EPから電極マイナス極性ENへと出力を切り換え、時刻t42~t44の電極マイナス極性中は電極マイナス極性電流Inを通電する。時刻t44にベース電圧Vwの下降に基づいて磁気吹きの解消を判別したときは、電極プラス極性EPに戻す。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給し、電極プラス極性でピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返し、
前記ベース電圧の上昇に基づいて磁気吹きの発生を判別したときは、溶接電源の出力を制御して磁気吹きに対処するパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法において、
前記磁気吹きを判別したときは、前記電極プラス極性から電極マイナス極性へと出力を切り換え、前記電極マイナス極性中は電極マイナス極性電流を通電する、
ことを特徴とするパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法。
【請求項2】
前記ベース電圧の下降に基づいて磁気吹きの解消を判別したときは、前記電極プラス極性に戻す、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法。
【請求項3】
前記電極マイナス極性電流を、溶接ワイヤと母材との短絡が発生しない値に設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極パルスアーク溶接の磁気吹き対処方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消耗電極パルスアーク溶接では、溶接ワイヤを送給し、電極プラス極性でピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間と、ベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返して溶接が行われる。ピーク電流は500A程度の大電流値に設定され、溶接ワイヤを溶融して溶滴の形成及び移行が行われる。ベース電流は30A程度に設定され、溶接ワイヤはほとんど溶融しない。パルスアーク溶接では、1回のピーク電流の通電によって1つの溶滴を移行させる1パルス1溶滴移行の状態を維持することが、スパッタの発生の少ない高品質の溶接ビードを得るために重要である。
【0003】
鉄鋼等のパルスアーク溶接においては、母材を通電する溶接電流によってアーク発生部の周辺に磁界が形成されて、この磁界からアークは力を受けて変形する場合がよくある。このような状態を、一般的に磁気吹き又はアークブローと呼んでいる。磁気吹きの発生状態がひどくなると、アークは大きく変形してアーク長が非常に長くなり、アークを維持することができなくなり、アーク切れを発生することになる。アーク切れが発生すると、溶接品質は悪くなる。このために、パルスアーク溶接においては、磁気吹き対策は大きな課題である。
【0004】
特許文献1の発明では、ベース期間中にアークが発生しているときのベース電圧の上昇率が基準上昇率以上になったことを検出して磁気吹きが発生したと判別し、ベース電流を200A以上に急増する磁気吹き対処制御を行っている。磁気吹きは、電流値が小さいためにアークの硬直性が弱くなるベース期間中に発生する。磁気吹きによってアーク長が長くなると、アーク電圧(ベース電圧)が大きくなることを利用して、磁気吹きの発生を判別している。また、ベース電流を増加させると、アークの硬直性が強くなり、磁界から力を受けてもアークの変形を抑制することができる。この結果、アーク切れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-268081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁気吹きによるアークの変形が強い場合には、従来技術のようにベース電流を増加させてもアークの変形を抑制できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明では、磁気吹きによるアークの変形が強い場合でも、磁気吹きを解消させてアークの変形を抑制することができるパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接ワイヤを送給し、電極プラス極性でピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返し、
前記ベース電圧の上昇に基づいて磁気吹きの発生を判別したときは、溶接電源の出力を制御して磁気吹きに対処するパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法において、
前記磁気吹きを判別したときは、前記電極プラス極性から電極マイナス極性へと出力を切り換え、前記電極マイナス極性中は電極マイナス極性電流を通電する、
ことを特徴とするパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法である。
【0009】
請求項2の発明は、
前記ベース電圧の下降に基づいて磁気吹きの解消を判別したときは、前記電極プラス極性に戻す、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法である。
【0010】
請求項3の発明は、
前記電極マイナス極性電流を、溶接ワイヤと母材との短絡が発生しない値に設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁気吹きによるアークの変形が強い場合でも、磁気吹きを解消させてアークの変形を抑制することができるので、高品質な溶接が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法を実施するための溶接電源のブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法を示す図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0015】
電源主回路MCは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってインバータ制御等による出力制御を行い、後述する極性切換信号Drによって電極プラス極性EPと電極マイナス極性ENとを切り換えて溶接ワイヤ1と母材2との間に溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。この電源主回路MCは、図示は省略するが、商用電源を整流する1次整流器、整流された直流を平滑する平滑コンデンサ、平滑された直流を高周波交流に変換する電流誤差増幅信号Eiによって駆動されるインバータ回路、高周波交流を溶接に適した電圧値に降圧する高周波変圧器、降圧された高周波交流を直流に整流する2次整流器、整流された直流を平滑するリアクトル、平滑された直流を極性切換信号Drに基づいて極性を切り換える2次側インバータ回路を備えている。
【0016】
溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータ(図示は省略)に結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加し、溶接電流Iwが通電する。溶接ワイヤ1の送給を制御する回路については省略している。
【0017】
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwの絶対値を検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電圧平均化回路VAVは、上記の電圧検出信号Vdを平均化して、電圧平均信号Vavを出力する。電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。
【0018】
電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vrと上記の電圧平均信号Vavとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。V/FコンバータVFは、上記の電圧誤差増幅信号Evに応じた周波数を有するパルス周波数信号Tfを出力する。このパルス周波数信号Tfは、ピーク期間とベース期間とを1周期とする周波数を決定する信号である。
【0019】
ピーク期間タイマ回路TTPは、上記のパルス周波数信号Tfの周波数ごとに予め定めたピーク期間TpだけHighレベルとなるピーク期間信号Ttpを出力する。したがって、このピーク期間信号Ttpは、ピーク期間Tp中はHighレベルとなり、ベース期間中はLowレベルとなる信号である。
【0020】
アーク判別回路ADは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、この値に基づいてアーク発生状態であるかを判別してHighレベルとなるアーク判別信号Adを出力する。
【0021】
磁気吹き判別回路DABは、上記のピーク期間信号Ttp、上記のアーク判別信号Ad及び上記の電圧検出信号Vdを入力として、ピーク期間信号TtpがLowレベル(ベース期間Tb)であり、かつ、アーク判別信号AdがHighレベル(アーク発生状態)であるときの電圧検出信号Vd(ベース電圧)に基づいて以下の1)又は2)の方法で磁気吹きの発生を判別したときはHighレベルとなり、その後に磁気吹きの解消を判別したときはLowレベルに戻る磁気吹き判別信号Dabを出力する。
1)電圧検出信号Vdの上昇率が基準値以上になると磁気吹きが発生したと判別してHighレベルとなり、その後に、電圧検出信号Vdの下降率(絶対値)が基準値以下になると磁気吹きが解消したと判別してLowレベルとなる磁気吹き判別信号Dabを出力する。
2)電圧検出信号Vdの上昇率が基準値以上になると磁気吹きが発生したと判別してHighレベルとなり、その後に、ピーク期間信号TtpがHighレベルになると磁気吹きが解消したと判別してLowレベルとなる磁気吹き判別信号Dabを出力する。
【0022】
ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ピーク電流設定信号Iprは、溶接ワイヤの直径、材質、送給速度等に応じて、400~600A程度に設定される。
【0023】
ベース電流設定回路IBRは、予め定めたベース電流設定信号Ibrを出力する。ベース電流設定信号Ibrの設定範囲は、20~50A程度である。
【0024】
電極マイナス極性電流設定回路INRは、予め定めた電極マイナス極性電流設定信号Inrを出力する。電極マイナス極性電流設定信号Inrは、電極マイナス極性EN中に溶接ワイヤ1と母材2との短絡が発生しない値に設定される。例えば、40~70A程度に設定される。
【0025】
電流設定回路IRは、上記のピーク電流設定信号Ipr、上記のベース電流設定信号Ibr、上記の電極マイナス極性電流設定信号Inr、上記のピーク期間信号Ttp及び上記の磁気吹き判別信号Dabを入力として、以下の処理を行い、電流設定信号Irを出力する。
1)ピーク期間信号TtpがHighレベルであるときは、ピーク電流設定信号Iprを電流設定信号Irとして出力する。
2)ピーク期間信号TtpがLowレベルであり、かつ、磁気吹き判別信号DabがLowレベルであるときは、ベース電流設定信号Ibrを電流設定信号Irとして出力する。
3)ピーク期間信号TtpがLowレベルであり、かつ、磁気吹き判別信号DabがHighレベルであるときは、電極マイナス極性電流設定信号Inrを電流設定信号Irとして出力する。
【0026】
電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwの絶対値を検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Irと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
【0027】
極性切換回路DRは、上記の磁気吹き判別信号Dabを入力として、磁気吹き判別信号DabがLowレベルのときはLowレベル(電極プラス極性EP)となり、HighレベルのときはHighレベル(電極マイナス極性EN)となる極性切換信号Drを出力する。したがって、ピーク期間及び磁気吹きが発生していないベース期間中は電極プラス極性EPとなり、磁気吹きが発生しているときは電極マイナス極性ENとなる。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接の磁気吹き対処方法を示す図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は磁気吹き判別信号Dabの時間変化を示し、同図(D)は極性切換信号Drの時間変化を示す。以下、同図を参照して各信号の動作を説明する。
【0029】
同図は、2周期の波形を示している。第1周期は、磁気吹きが発生しなかった場合である。第2周期は、ベース期間Tb中に磁気吹きが発生した場合である。同図(A)に示す溶接電流Iw及び同図(B)に示す溶接電圧Vwは、0から上側の正の値が電極プラス極性EPを示し、下側の負の値が電極マイナス極性ENを示している。
【0030】
(1)第1周期の動作説明
時刻t1~t3の第1周期中は、磁気吹きが発生していないので、同図(C)に示すように、磁気吹き判別信号DabはLowレベルのままであり、同図(D)に示すように、極性切換信号DrはLowレベルとなり、溶接電源の出力は電極プラス極性EPとなっている。時刻t1~t2の予め定めたピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、電極プラス極性EPで予め定めたピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したピーク電圧が印加する。ピーク電流Ipは、図1のピーク電流設定信号Iprによって設定される。ピーク期間Tp中に、溶接ワイヤの先端が溶融されて、溶滴が形成され、ピーク期間Tpの終了後Ib初期のタイミングで溶滴は溶融池へと移行する(1パルス1溶滴移行状態)。ピーク期間Tp及びピーク電流Ipは、この1パルス1溶滴移行状態になるように設定される。
【0031】
時刻t2~t3の期間がベース期間Tbとなる。時刻t1~t3が1パルス周期となる。パルス周期(パルス周波数)は、溶接電圧Vwの平均値が電圧設定信号Vrの値と等しくなるようにフィードバック制御(周波数変調制御)される。これにより、アーク長の平均値が適正値に維持される。
【0032】
ベース期間Tb中は、磁気吹きが発生していない状態であるので、同図(A)に示すように、電極プラス極性EPで予め定めたベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、略一定値となるベース電圧Vbが印加する。ベース電流Ibは、図1のベース電流設定信号Ibrによって設定される。
【0033】
(2)第2周期の動作説明
時刻t3~t4のピーク期間Tpの動作は、時刻t1~t2と同様である。さらに、時刻t4~t41のベース期間の動作は、時刻t2~t3と同様である。
【0034】
時刻t41において、磁気吹きが発生したためにアークが変形してアーク長が通常状態よりも次第に長くなる。このために、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbは、時刻t41から上昇し、時刻t42において上昇率が基準値以上となったために、同図(C)に示すように、磁気吹き判別信号DabがHighレベルになる。これに応動して、同図(D)に示すように、極性切換信号DrがHighレベルに変化し、溶接電源の出力が電極プラス極性EPから電極マイナス極性ENに切り換わる。この結果、同図(A)に示すように、溶接電流Iwは、正の値のベース電流Ibから負の値の予め定めた電極マイナス極性電流Inに切り換わる。電極マイナス極性電流Inは、図1の電極マイナス極性電流設定信号Inrによって設定される。同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは、正の値のベース電圧値から負の値の電極マイナス極性電圧に切り換わる。溶接電圧Vwの絶対値は、時刻t42から少しの間上昇を続けた後に、時刻t43からは下降する。時刻t44において、下降率が基準値以下になったために、同図(C)に示すように、磁気吹きが解消したと判別して磁気吹き判別信号DabはLowレベルとなる。これに応動して、同図(D)に示すように、極性切換信号DrがLowレベルに変化するので、溶接電源の出力はt44からt45にかけて電極プラス極性EPに戻る。そして、時刻t45~t5の期間はベース期間となり、時刻t4~t41の動作となる。磁気吹きの解消の判別を、時刻t5の次のピーク期間が開始される時点としても良い。これは、大電流値のピーク電流が通電すると、アークの硬直性が強くなり、磁気吹きが解消されるからである。
【0035】
以下、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、磁気吹きを判別したときは、電極プラス極性から電極マイナス極性へと出力を切り換え、電極マイナス極性中は電極マイナス極性電流を通電する。磁気吹きが発生して磁界から力を受けてアークが変形している状態において、極性を切り換えて溶接電流の通電を逆方向にすると、アークに作用する力の方向も逆になる。このために、アークの変形がリセットされて、磁気吹きは解消されることになる。この結果、本実施の形態では、磁気吹きによるアークの変形が強い場合でも、磁気吹きを解消させてアークの変形を抑制することができる。
【0036】
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、ベース電圧の下降に基づいて磁気吹きの解消を判別したときは、電極プラス極性に戻す。このようにすれば、磁気吹きが解消されるまでの短期間のみ電極マイナス極性とすることができるので、ビード外観、溶け込み等への影響を少なくすることができる。
【0037】
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、電極マイナス極性電流を、溶接ワイヤと母材との短絡が発生しない値に設定する。このようにすれば、短絡の発生に起因する溶接状態の不安定状態を抑制することができる。電極マイナス極性電流は、大きすぎると溶滴を形成して溶接状態が不安定になるので、ベース電流よりも20~50A程度大きな値に設定される。すなわち、電極マイナス極性電流は、短絡が発生しない値以上であり、溶滴が形成されない値未満に設定されることが望ましい。
【符号の説明】
【0038】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
AD アーク判別回路
Ad アーク判別信号
DAB 磁気吹き判別回路
Dab 磁気吹き判別信号
DR 極性切換回路
Dr 極性切換信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
In 電極マイナス極性電流
INR 電極マイナス極性電流設定回路
Inr 電極マイナス極性電流設定信号
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IR 電流設定回路
Ir 電流設定信号
Iw 溶接電流
MC 電源主回路
Tb ベース期間
Tf パルス周波数信号
Tp ピーク期間
TTP ピーク期間タイマ回路
Ttp ピーク期間信号
VAV 電圧平均化回路
Vav 電圧平均信号
Vb ベース電圧
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
VF V/Fコンバータ
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
Vw 溶接電圧
図1
図2