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特開2024-21975ターボ圧縮機、及びこれを備えているターボ冷凍機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021975
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ターボ圧縮機、及びこれを備えているターボ冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/058 20060101AFI20240208BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F04D29/058
F04D29/58 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125214
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】末光 亮介
(72)【発明者】
【氏名】伊良 勇亮
(72)【発明者】
【氏名】大村 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 明正
(72)【発明者】
【氏名】霜出 政樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 剛洋
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰高
(72)【発明者】
【氏名】深堀 智司
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB60
3H130BA33A
3H130BA33E
3H130DB10X
3H130DF03Z
3H130DG09Z
3H130EA01A
3H130EB01A
3H130EC12A
(57)【要約】
【課題】コストが増大することを抑制しつつ、磁気軸受駆動基板を安定して冷却することが可能なターボ圧縮機、及びターボ冷凍機を提供する。
【解決手段】ターボ圧縮機は、羽根車と、羽根車を回転させる軸部と、軸部を回転駆動する電動モータと、電動モータを収容するケーシングと、軸部を支持する磁気軸受と、一面がケーシングの外面に取り付けられた伝熱プレートと、伝熱プレートの一面とは反対側の他面に面接触している磁気軸受駆動基板と、外部から冷媒が供給されることで、供給された冷媒の冷熱を前記伝熱プレートに伝える冷却部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車を回転させる軸部と、
前記軸部を回転駆動する電動モータと、
前記電動モータを収容するケーシングと、
前記軸部を支持する磁気軸受と、
一面が前記ケーシングの外面に取り付けられた伝熱プレートと、
前記伝熱プレートの前記一面とは反対側の他面に面接触している磁気軸受駆動基板と、
外部から冷媒が供給されることで、供給された前記冷媒の冷熱を前記伝熱プレートに伝える冷却部と、
を備えるターボ圧縮機。
【請求項2】
前記冷却部は、
前記ケーシングの外壁中に形成され、内部を前記冷媒が流通する流路部と、
前記流路部に接続され、前記伝熱プレートの前記一面から前記他面側に向かって凹むことで、前記ケーシングの外面と共に前記冷媒の流路を形成する溝部と、
を有する請求項1に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
前記溝部は、前記伝熱プレートの前記一面に沿って蛇行するように延びている請求項2に記載のターボ圧縮機。
【請求項4】
開口部が前記ケーシングの外面に対向した状態で前記磁気軸受駆動基板を収容するボックスを更に備え、
前記伝熱プレートは、前記ボックスの前記開口部に嵌ることで前記ボックス内を外部と気密に隔離された閉空間にし、
前記閉空間は、不活性ガスによって置換されている請求項1から3の何れか一項に記載のターボ圧縮機。
【請求項5】
前記軸部と前記磁気軸受との間のクリアランスの大きさを検出可能な変位センサと、
前記ボックスに収容され、前記変位センサによって検出された信号を処理する変位センサ用基板と、
を更に備える請求項4に記載のターボ圧縮機。
【請求項6】
前記伝熱プレートは、アルミニウムを含む金属材料によって形成されている請求項1から3の何れか一項に記載のターボ圧縮機。
【請求項7】
請求項1から3の何れか一項に記載のターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された前記冷媒を断熱膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁で断熱膨張された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記凝縮器で凝縮された前記冷媒を前記冷却部に導くことができる冷媒供給部と、
を備えるターボ冷凍機。
【請求項8】
前記冷媒供給部は、
前記冷媒を前記冷却部に導く導入ラインと、
前記導入ラインに設けられ、該導入ライン内を流れる前記冷媒を減圧することで、前記冷却部に向かう前記冷媒を気液二相状態にする調整弁と、
を有する請求項7に記載のターボ冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターボ圧縮機、及びこれを備えているターボ冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、軸部を支持する磁気軸受を駆動する磁気軸受駆動基板を備えたターボ圧縮機が開示されている。この磁気軸受駆動基板は、ターボ圧縮機のケーシングに取り付けられている。冷却用冷媒がケーシング内に導かれることによってケーシングが冷却された結果、磁気軸受駆動基板が冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-156220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のケーシングは、アルミ系合金等の金属製とされており、ケーシングが磁気軸受駆動基板を冷却するためのヒートシンクとして機能している。磁気軸受駆動基板を冷却させるために、ケーシングの全体をアルミ系合金等の金属で形成した場合、例えば鉄等の金属材料で形成した場合と比較してコストが増大する場合がある。また、ターボ圧縮機にかかる負荷に応じて、ケーシングの温度が変化するとともに磁気軸受駆動基板の発熱量が変化するため、安定して冷却することが難しい場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、コストの増大を抑制しつつ、磁気軸受駆動基板を安定して冷却することが可能なターボ圧縮機、及びターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るターボ圧縮機は、羽根車と、前記羽根車を回転させる軸部と、前記軸部を回転駆動する電動モータと、前記電動モータを収容するケーシングと、前記軸部を支持する磁気軸受と、一面が前記ケーシングの外面に取り付けられた伝熱プレートと、前記伝熱プレートの前記一面とは反対側の他面に面接触している磁気軸受駆動基板と、外部から冷媒が供給されることで、供給された前記冷媒の冷熱を前記伝熱プレートに伝える冷却部と、を備える。
【0007】
本開示に係るターボ冷凍機は、上記のターボ圧縮機と、前記ターボ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された前記冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で断熱膨張された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記凝縮器で凝縮された前記冷媒を前記冷却部に導くことができる冷媒供給部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コストの増大を抑制しつつ、磁気軸受駆動基板を安定して冷却することが可能なターボ圧縮機、及びターボ冷凍機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るターボ冷凍機の構成を説明するための系統図である。
図2図1におけるII-II線方向からターボ圧縮機を見た時のボックス内の構成、及び冷却部の構成を示した図である。
図3図2におけるIII-III線方向から伝熱プレートの一面を見た時の溝部の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示によるターボ圧縮機を備えたターボ冷凍機を実施するための形態を説明する。
【0011】
ターボ冷凍機は、工場や大型施設等の空調設備に設けられ、熱源機として稼動する装置である。なお、ターボ冷凍機が利用する冷媒には、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が比較的小さいHFO(ハイドロフルオレフィン)系や、HFC(ハイドロフルオロカーボン)系の冷媒が採用される。この冷媒の具体例としては、例えば、HFO-1233zd(E)、HFO-1234ze(E)、及びHFC-134a等が挙げられる。
【0012】
図1に示すように、本実施形態におけるターボ冷凍機100は、ターボ圧縮機1と、凝縮器2と、膨張弁3と、蒸発器4と、冷媒供給部5と、凝縮器ライン6と、接続ライン7と、蒸発器ライン8とを備えている。
【0013】
(ターボ圧縮機)
ターボ圧縮機1は、吸入した冷媒に羽根車の遠心力による運動エネルギーを付与することで、この冷媒を所定の高圧になるまで圧縮するとともに吐出する装置である。
【0014】
本実施形態におけるターボ圧縮機1は、ケーシング10と、軸部11と、電動モータ12と、羽根車13と、磁気軸受14と、変位センサ15と、ボックス16と、伝熱プレート17と、磁気軸受駆動基板18と、変位センサ用基板20と、冷却部19(図2参照)とを備えている。
【0015】
(ケーシング)
ケーシング10は、ターボ圧縮機1の外殻を成している。ケーシング10は、ターボ圧縮機1を構成する各種装置を収容する。ケーシング10は、例えば、一方向に延びた状態で両端が閉塞された筒状を成している。
【0016】
ケーシング10は、大気に露出された外面10aを有している。ケーシング10は、地面や架台等の床面に固定されている。本実施形態におけるケーシング10は、例えば、鉄等を含む金属材料によって形成されている。
【0017】
(軸部)
軸部11は、仮想軸線としての中心軸Oを中心に、この中心軸Oの延びる方向に延びる円筒状を成した回転軸である。以下、説明の便宜上、軸部11が中心とする中心軸Oの延びる方向を「軸線方向Da」と称する。この軸線方向Daは、ケーシング10が延びる方向である上記一方向に一致する。また、軸線方向Daの両側のうち、一方の側(図1中における右側)を単に「一方側Dar」と称し、その反対側(図1中における左側)を「他方側Dal」と称する。
【0018】
また、中心軸O(又は軸部11)に対する周方向を単に「周方向Dc」と称する。また、中心軸Oに対して垂直な方向を「径方向」と称する。軸部11は、ケーシング10に収容されている。本実施形態における軸部11は、例えば、鉄等を含む金属材料によって形成されている。
【0019】
(電動モータ)
電動モータ12は、電力が入力されることで発生する電磁力を利用して、軸部11を中心軸O回りに回転駆動する装置である。電動モータ12は、ケーシング10に収容されている。
電動モータ12は、モータロータ12aと、モータステータ12bとを有している。
【0020】
モータロータ12aは、この軸部11と共に中心軸O回りに回転可能であり、電動モータ12の回転子である。モータロータ12aは、円筒状を成した状態で、軸部11を外周側から覆うように軸部11に一体に取り付けられている。
【0021】
モータステータ12bは、駆動されることでモータロータ12aを回転させる。すなわち、モータステータ12bは、上記回転子(モータロータ12a)に対する固定子である。モータステータ12bは、円筒状を成した状態で、モータロータ12aを外周側から覆うようにケーシング10の内面に取り付けられている。モータステータ12bの内周面は、電動モータ12が駆動された際、径方向にクリアランスを介してモータロータ12aの外周面に対向している。
【0022】
モータステータ12bは、例えば、ケーシング10の外部に配置された可変速ドライブ(VFD:Variable Frequency Drive)等のインバータ装置(図示省略)と電気的に接続され、このインバータ装置によって駆動が制御されている。モータステータ12bが有するコイルにこのインバータ装置から三相交流の電圧が印加されることによって、モータロータ12aを中心軸O回りに回転させる電磁力が発生する。
【0023】
(羽根車)
羽根車13は、軸部11と共に回転することで、ターボ圧縮機1の外部から供給された気体状態の冷媒を圧縮するとともに、圧縮したこの冷媒を吐出する。羽根車13は、ケーシング10に収容されている。羽根車13は、電動モータ12よりも他方側Dalに配置されている。
【0024】
本実施形態における羽根車13は、軸線方向Daに互いに離間した状態で回転軸に取り付けられた二つのインペラ131,132と、これら二つのインペラ131,132同士を互いに接続する段間ライン133とを有している。
【0025】
以下、説明の便宜上、羽根車13が有する二つのインペラ131,132のうち、他方側Dalに配置されたインペラを「第一インペラ131」と称し、この第一インペラ131よりも一方側Darに配置されたインペラを「第二インペラ132」と称する。
【0026】
第一インペラ131は、ターボ圧縮機1の外部から供給された冷媒を所定の第一圧力値まで高める。
第一インペラ131は、軸部11に固定された際に軸部11の周方向Dcに配列された複数のブレード(翼)から成る第一ブレード群131aと、この第一ブレード群131aを軸部11の外周側から覆った状態で第一ブレード群131aと共に圧縮通路を内側に形成する第一インペラケーシング131bとを有している。第一インペラケーシング131bには、外部からの冷媒を圧縮通路へ導入するための第一冷媒導入口と、圧縮した冷媒を圧縮通路から外部へ吐出するための第一冷媒吐出口とが形成されている。
【0027】
第二インペラ132は、第一インペラ131によって圧縮された冷媒を、上記第一圧力値よりも高い所定の第二圧力値まで高める。
第二インペラ132は、軸部11に固定された際に軸部11の周方向Dcに配列された複数のブレード(翼)から成る第二ブレード群132aと、この第二ブレード群132aを軸部11の外周側から覆った状態で第二ブレード群132aと共に圧縮通路を内側に形成する第二インペラケーシング132bとを有している。第二インペラケーシング132bには、外部からの冷媒を圧縮通路へ導入するための第二冷媒導入口と、圧縮した冷媒を圧縮通路から外部へ吐出するための第二冷媒吐出口とが形成されている。
【0028】
第一インペラ131における第一冷媒吐出口と、第二インペラ132における第二冷媒導入口とは、段間ライン133によって冷媒が流通可能に接続されている。
【0029】
したがって、第一インペラ131における第一冷媒導入口を通じて外部から第一インペラ131の圧縮通路内に導入された冷媒は、この圧縮通路内で軸部11の回転に伴って中心軸O回りに回転する第一ブレード群131aによって圧縮された後、第一冷媒吐出口を通じて段間ライン133に流入する。段間ライン133に流入した冷媒は、第二インペラ132における第二冷媒導入口を通じて第二インペラ132の圧縮通路内に流入し、この圧縮通路内で第二ブレード群132aによって圧縮される。第二インペラ132の圧縮通路内で圧縮された冷媒は、第二インペラ132における第二冷媒吐出口を通じて外部に吐出される。
【0030】
つまり、これら第一インペラ131及び第二インペラ132を有する羽根車13によって、ターボ圧縮機1では二段の圧縮機構が構成されている。
【0031】
(磁気軸受)
磁気軸受14は、軸部11を磁気浮上させることによって、この軸部11を回転可能に支持するラジアル磁気軸受である。磁気軸受14は、ケーシング10に収容されている。
本実施形態における磁気軸受14は、軸線方向Daに互いに離間した状態で、電動モータ12を間に挟むように配置された第一磁気軸受14a及び第二磁気軸受14bによって構成されている。
【0032】
これら第一磁気軸受14a及び第二磁気軸受14bは、軸部11を中心軸Oの径方向(軸部11のラジアル方向)に支持している。第一磁気軸受14a及び第二磁気軸受14bは、軸部11を外周側から覆っている。
【0033】
第一磁気軸受14aは、例えば、電動モータ12と羽根車13の第二インペラ132との間に配置されている。第一磁気軸受14aは、内面が軸部11の外周面に中心軸Oの径方向にクリアランスを介した状態で対向している。
【0034】
第一磁気軸受14aは、ケーシング10の外部に配置された磁気軸受駆動基板18と電気的に接続されている。この第一磁気軸受14aが有するコイルに磁気軸受駆動基板18から三相交流の電圧が印加される(第一磁気軸受14aが駆動される)ことによって、軸部11を第一磁気軸受14aとは非接触の状態で磁気浮上させる電磁力が発生する。
【0035】
第二磁気軸受14bは、電動モータ12よりも一方側Darに配置されている。第二磁気軸受14bは、内面が軸部11の外周面に中心軸Oの径方向にクリアランスを介した状態で対向している。
【0036】
第二磁気軸受14bは、第一磁気軸受14aと同様に磁気軸受駆動基板18と電気的に接続されている。この第二磁気軸受14bが有するコイルに磁気軸受駆動基板18から三相交流の電圧が印加される(第二磁気軸受14bが駆動される)ことによって、軸部11を第二磁気軸受14bとは非接触の状態で磁気浮上させる電磁力が発生する。
【0037】
なお、詳細な図示は省略するが、例えば、第二磁気軸受14bよりも一方側Darには、軸部11からこの軸部11と一体に径方向に円盤状に広がるフランジ部が形成され、このフランジ部を軸線方向Daから挟んだ状態で支持するとともに、軸部11を軸線方向Da(軸部11のスラスト方向)に位置決めするスラスト磁気軸受が配置されてもよい。
【0038】
(変位センサ)
変位センサ15は、磁気軸受14が駆動された際、径方向における軸部11と磁気軸受14との間に形成されるクリアランスの大きさを検出する。変位センサ15は、ケーシング10に収容されている。
【0039】
本実施形態における変位センサ15は、軸線方向Daに互いに離間した状態で電動モータ12を間に挟むように配置された第一変位センサ15a及び第二変位センサ15bによって構成されている。これら第一変位センサ15a及び第二変位センサ15bは、ケーシング10の外部に配置された変位センサ用基板20に電気的に接続されている。
【0040】
第一変位センサ15aは、軸部11と第一磁気軸受14aとの間のクリアランスの大きさを検出する。第二変位センサ15bは、軸部11と第二磁気軸受14bとの間のクリアランスの大きさを検出する。これら第一変位センサ15a及び第二変位センサ15bは、検出したクリアランスの大きさを示す信号を変位センサ用基板20に送信する。
【0041】
(ボックス)
ボックス16は、磁気軸受14を駆動する上記磁気軸受駆動基板18と、変位センサ15から受信した検出結果を処理する上記変位センサ用基板20とを収容する箱(筐体)である。図1及び図2に示すように、本実施形態におけるボックス16は、ケーシング10の外面10aに取り付けられている。
【0042】
具体的には、図2に示すように、ボックス16は、ケーシング10の外面10aのうち、上下方向Dv及び軸線方向Daによって定義可能な仮想面に対して平行に広がる外面10aに取り付けられている。
【0043】
本明細書中における上下方向Dvは、鉛直方向に一致する。また、上下方向Dvの両側のうち、重力が働く側(図2中及び図3中における下側)を「下方側Dvd」と称し、その反対側(図2中及び図3中における上側)を「上方側Dvu」と称する。
【0044】
また、ボックス16は、一の面に矩形状の開口部16aが形成された直方体形状を成している。ボックス16は、この開口部16aがケーシング10の外面10aに対向した状態で、ボルト等の締結部材Bによってケーシング10の外面10aに固定されている。
【0045】
ボックス16は、この締結部材Bを取り外すことによって、ケーシング10から取り外すことができる。つまり、ボックス16は、ケーシング10に対して着脱可能に取り付けられている。本実施形態におけるボックス16は、例えば、アルミニウムを含む金属材料によって形成されている。
【0046】
(伝熱プレート)
伝熱プレート17は、ボックス16に収容された磁気軸受駆動基板18を冷却するための金属板である。伝熱プレート17は、矩形を成した平板状に形成されている。伝熱プレート17は、ボックス16の開口部16aに隙間無く嵌っている。伝熱プレート17は、ボックス16の開口部16aに嵌ることで、このボックス16内を外部と気密に隔離された閉空間にする。以下、説明の便宜上、閉空間とされたボックス16内の空間を「収容空間R」と称する。
【0047】
伝熱プレート17は、ケーシング10の外面10aに取り付けられた際、ケーシング10の外面10aに当接する一面17aと、この一面17aとは反対側を向く他面17bとを有している。
【0048】
伝熱プレート17の一面17aは、ケーシング10の外面10aに直接面接触した状態で、この外面10aに固定されている。伝熱プレート17の他面17bは、収容空間R側を向いている。本実施形態における伝熱プレート17は、例えば、アルミニウムを含む金属材料によって形成されている。
【0049】
(磁気軸受駆動基板)
磁気軸受駆動基板18は、磁気軸受14(第一磁気軸受14a及び第二磁気軸受14b)に駆動用の電力を入力するための磁気軸受コントローラ用基板(MBC:Magnetic Bearing Controller)である。磁気軸受駆動基板18は、ボックス16に収容されている。すなわち、磁気軸受駆動基板18は、収容空間R内に配置されている。磁気軸受駆動基板18は、平板状を成している。磁気軸受駆動基板18は、伝熱プレート17に取り付けられている。
【0050】
磁気軸受駆動基板18は、伝熱プレート17の他面17bに面接触する当接面18aと、この当接面18aとは反対側を向き、種々の回路素子が実装された実装面18bとを有している。
【0051】
なお、磁気軸受駆動基板18と磁気軸受14とを電気的に接続する配線は、ボックス16内の収容空間Rの気密性が確保されるように、磁気軸受駆動基板18からボックス16の外部に向かってボックス16の側壁を貫通するように延びている。この延びた先は、ケーシング10内に配置された第一磁気軸受14a及び第二磁気軸受14bのそれぞれに到っている。
【0052】
(変位センサ用基板)
変位センサ用基板20は、変位センサ15(第一変位センサ15a及び第二変位センサ15b)から送信された検出結果(クリアランスの大きさ)を示す信号を受信するとともに、この検出結果を処理するための回路基板である。
【0053】
変位センサ用基板20は、磁気軸受駆動基板18と共にボックス16に収容されている。すなわち、変位センサ用基板20は、収容空間R内に配置されている。変位センサ15は、例えば、ボックス16の内面16bに取り付けられ、この内面16bによって支持されている。本実施形態における変位センサ用基板20は、伝熱プレート17に接触していない。
【0054】
なお、変位センサ用基板20と変位センサ15とを電気的に接続する配線は、ボックス16内の収容空間Rの気密性が確保されるように、変位センサ用基板20からボックス16の外部に向かってボックス16の側壁を貫通するように延びている。この延びた先は、ケーシング10内に配置された第一変位センサ15a及び第二変位センサ15bのそれぞれに到っている。
【0055】
ここで、ボックス16内の収容空間Rは、不活性ガスによって置換されている。具体的には、例えば、ボックス16に設けられたガス置換装置(図示省略)が駆動されることで、収容空間R内の空気が窒素ガスに置き換わる。したがって、ボックス16に収容された磁気軸受駆動基板18及び変位センサ用基板20は、不活性ガス雰囲気下にある。
【0056】
本実施形態における不活性ガスには、例えば、窒素ガス(N)等を採用することができる。なお、ここでいう「不活性ガスによって置換」とは、実質的に収容空間R内の雰囲気が不活性ガスに置換されている状態を指すものであって、収容空間R内の雰囲気に僅かに空気が含まれることは許容される。
【0057】
(冷却部)
冷却部19は、外部から冷媒が供給されることで、供給された冷媒の冷熱を伝熱プレート17に伝える。
図2に示すように、本実施形態における冷却部19は、流路部190と、伝熱プレート17に形成された溝部193とを有している。
【0058】
流路部190は、ケーシング10の外壁中に形成されている。
流路部190は、ケーシング10の外部から導入された冷媒を流通させるとともに、この冷媒を上記溝部193へ導く第一流路部191と、溝部193から流れ出た冷媒を流通させるとともに、ケーシング10の外部へ導く第二流路部192とによって構成されている。
【0059】
これら第一流路部191及び第二流路部192は、ケーシング10の外壁中で延びており、ケーシング10の内部の空間とは連通していない。第一流路部191の一端は、伝熱プレート17の一面17aが当接するケーシング10の外面10aとは異なる外面10aに開口している。第一流路部191の他端は、溝部193に接続されている。
【0060】
第二流路部192の一端は、伝熱プレート17の一面17aが当接するケーシング10の外面10aとは異なる外面10aに開口している。第二流路部192の他端は、溝部193に接続されている。
【0061】
溝部193は、伝熱プレート17に形成されている凹所である。溝部193は、伝熱プレート17の一面17aから他面17bに向かって凹んでいる。溝部193は、一面17aから他面17bに向かって凹むことで、伝熱プレート17の一面17aが当接するケーシング10の外面10aと共に冷媒を流通させるための流路を形成する。図3に示すように、本実施形態における溝部193は、伝熱プレート17の一面17aに沿って蛇行するように延びている。
【0062】
具体的には、溝部193は、伝熱プレート17がケーシング10の外面10aに取り付けられた際に、軸線方向Daに延びる複数の延在溝193aと、上下方向Dvに延びる複数の接続溝193bとによって構成されている。これら延在溝193a及び接続溝193bが交互に繰り返されるように延在溝193aと接続溝193bとが互いに接続されることで、伝熱プレート17の一面17aに沿って蛇行する溝部193が構成されている。
【0063】
したがって、溝部193に流入した冷媒は、伝熱プレート17の一面17aに沿って蛇行しながら流れる。本実施形態では、四つの延在溝193aが、伝熱プレート17の一面17aに沿った状態で上下方向Dvに等間隔に並び、三つの接続溝193bが、上下方向Dvに隣り合う四つの延在溝193aの軸線方向Daにおける端部同士を上下方向Dvに互いに接続している。これら延在溝193aの幅寸法(上下方向Dvの寸法)と、接続溝193bの幅寸法(軸線方向Daの寸法)とは、互いに同一とされている。
【0064】
ここで、第一流路部191の上記他端は、最も下方側Dvdに配置された延在溝193aにおける接続溝193bが接続されていない側である他方側Dal(図3中における左側)の端部に接続されている。
【0065】
第二流路部192の上記他端は、最も上方側Dvuに配置された延在溝193aにおける接続溝193bが接続されていない側である一方側Dar(図3中における左側)の端部に接続されている。
【0066】
(凝縮器)
凝縮器2は、ターボ圧縮機1の羽根車13から吐出された気体状態の冷媒を受け入れるとともに、この冷媒を凝縮させる熱交換器である。図1に示すように、凝縮器2は、ターボ圧縮機1の外部に配置されている。
【0067】
ここで、凝縮器2とターボ圧縮機1とは、凝縮器ライン6によって接続されている。本実施形態における凝縮器ライン6は、内部を冷媒が流通する接続管である。具体的には、凝縮器ライン6の一端は、羽根車13における第二インペラ132の冷媒吐出口に接続されており、凝縮器ライン6の他端は、凝縮器2の冷媒導入口に接続されている。したがって、ターボ圧縮機1の羽根車13で圧縮された冷媒は、この凝縮器ライン6を通じて凝縮器2内部に導かれる。
【0068】
凝縮器2には、冷媒を冷却するための冷却水が流れる伝熱管21が挿通されている。この伝熱管21を流れる冷却水は、凝縮器2内で伝熱管21を介して冷媒と熱交換することで加熱される。加熱された冷却水は、凝縮器2の外部に向かって伝熱管21を流れ、ターボ冷凍機100の外部に設けられた冷却塔等(図示省略)に導入されて冷却される(排熱される)。凝縮器2の外部で冷却された冷却水は、再び伝熱管21内に流入するとともに、この伝熱管21を凝縮器2に向かって流れ、凝縮器2内で冷媒と再び熱交換する。
【0069】
凝縮器2内で熱交換することで冷却された冷媒は、凝縮し、液体状態になる。液体状態になった冷媒は、凝縮器2内に貯留される。なお、凝縮器2内に貯留された液体状態の冷媒の温度は、例えば、35℃から45℃までの範囲にある。
【0070】
凝縮器2内に貯留された液体状態の冷媒は、凝縮器2と蒸発器4とを互いに接続する接続ライン7を蒸発器4に向かって流れる。本実施形態における接続ライン7は、内部を冷媒が流通する接続管である。具体的には、接続ライン7の一端は、凝縮器2の冷媒導出口に接続されており、接続ライン7の他端は、蒸発器4の冷媒導入口に接続されている。
【0071】
(膨張弁)
膨張弁3は、接続ライン7を流れる凝縮器2からの液体状態の冷媒を断熱膨張させることで、接続ライン7を流れる冷媒の圧力及び温度を低下させる。膨張弁3は、接続ライン7に設けられている。したがって、膨張弁3によって断熱膨張された冷媒は、接続ライン7を通じて蒸発器4に導かれる。なお、膨張弁3から蒸発器4に向かって接続ライン7を流れる冷媒は、液体状態である。
【0072】
(蒸発器)
蒸発器4は、膨張弁3によって断熱膨張された液体状態の冷媒を受け入れて貯留するとともに、貯留したこの冷媒を蒸発させる熱交換器である。蒸発器4は、ターボ圧縮機1の外部に配置されている。
【0073】
ここで、蒸発器4とターボ圧縮機1とは、蒸発器ライン8によって接続されている。本実施形態における蒸発器ライン8は、内部を冷媒が流通する接続管である。具体的には、蒸発器ライン8の一端は、蒸発器4の冷媒導出口に接続されており、蒸発器ライン8の他端は、羽根車13における第一インペラ131の冷媒導入口に接続されている。したがって、蒸発器4内で蒸発して気体状態になった冷媒は、この蒸発器ライン8を通じてターボ圧縮機1に導かれる。
【0074】
蒸発器4には、冷媒を加熱するための熱媒が流れる伝熱管41が挿通されている。伝熱管41を流れる熱媒には、ターボ冷凍機100外部の装置から導かれる冷水等が挙げられる。この伝熱管41を流れる熱媒は、蒸発器4内で伝熱管41を介して冷媒と熱交換することで冷却される。冷却された熱媒は、蒸発器4の外部に向かって伝熱管41内を流れ、ターボ冷凍機100の外部に設けられた装置(図示省略)に導入されて加熱される(冷熱回収される)。蒸発器4の外部の装置で加熱された熱媒は、再び伝熱管41内に流入するとともに、この伝熱管41を蒸発器4に向かって流れ、蒸発器4内で冷媒と再び熱交換する。
【0075】
蒸発器4内で熱交換することで加熱された冷媒は、蒸発し、気体状態になる。気体状態になった冷媒は、蒸発器ライン8を通じてターボ圧縮機1に導かれる。なお、蒸発器4内に貯留された液体状態の冷媒の温度は、例えば、0℃から10℃までの範囲にある。
【0076】
(冷媒供給部)
冷媒供給部5は、凝縮器2内に貯留された液体状態の冷媒の一部を冷却用の熱媒として取り出すとともに、ターボ圧縮機1に供給する。
【0077】
本実施形態における冷媒供給部5は、第一導入ライン51と、第一調整弁52と、第一排出ライン53と、第二導入ライン54と、第二調整弁55と、第二排出ライン56とを有している。
【0078】
(第一導入ライン)
第一導入ライン51は、凝縮器2とターボ圧縮機1のケーシング10とを互いに接続する管である。具体的には、第一導入ライン51の一端は、凝縮器2の冷媒導出口に接続されており、第一導入ライン51の他端は、ケーシング10に形成された冷媒導入口に接続されている。したがって、凝縮器2内に貯留された液体状態の冷媒は、この第一導入ライン51を通じてケーシング10の内部に向かって流れる。
【0079】
(第一調整弁)
第一調整弁52は、第一導入ライン51を流れる凝縮器2からの液体状態の冷媒を減圧させることで、第一導入ライン51を流れる冷媒の圧力及び温度を低下させる。本実施形態における第一調整弁52は、圧力調整弁である。第一調整弁52は、第一導入ライン51に設けられている。
【0080】
第一調整弁52は、第一導入ライン51を流れる冷媒を減圧させることで、液体状態から気液二相状態に遷移(状態変化)させる。第一調整弁52を経ることで気液二相状態になった冷媒は、第一導入ライン51を通じてターボ圧縮機1のケーシング10の内部に導かれる。
【0081】
(第一排出ライン)
第一排出ライン53は、ターボ圧縮機1のケーシング10と蒸発器4とを互いに接続する管である。具体的には、第一排出ライン53の一端は、ケーシング10に形成された冷媒排出口に接続されており、第一排出ライン53の他端は、蒸発器4の冷媒導入口に接続されている。
【0082】
第一導入ライン51を通じてケーシング10の内部に導入された冷媒は、ケーシング10に収容された各種装置を冷却した後、この第一排出ライン53を通じて蒸発器4に導かれる。ケーシング10内に導かれた冷媒は、主として電動モータ12、磁気軸受14、及びケーシング10を冷却する。
【0083】
(第二導入ライン)
第二導入ライン54は、第一導入ライン51とターボ圧縮機1の冷却部19とを互いに接続する管である。具体的には、図1及び図2に示すように、第二導入ライン54の一端は、第一導入ライン51における第一調整弁52よりも凝縮器2側の部分に接続されている。第二導入ライン54の他端は、冷却部19における第一流路部191の上記一端に接続されている。凝縮器2内に貯留された液体状態の冷媒は、第一導入ライン51から分岐するように接続されたこの第二導入ライン54を通じて、第一流路部191に向かって流れる。
【0084】
(第二調整弁)
第二調整弁55は、第二導入ライン54を流れる液体状態の冷媒を減圧させることで、第二導入ライン54を流れる冷媒の圧力及び温度を低下させる。本実施形態における第二調整弁55は、圧力調整弁である。第二調整弁55は、第二導入ライン54に設けられている。
【0085】
第二調整弁55は、第二導入ライン54を流れる冷媒を減圧させることで、液体状態から気液二相状態に遷移(状態変化)させる。第二調整弁55を経ることで気液二相状態になった冷媒は、第二導入ライン54を通じて冷却部19の第一流路部191の内部に導かれる。
【0086】
(第二排出ライン)
第二排出ライン56は、冷却部19の第二流路部192と蒸発器4とを互いに接続する管である。具体的には、第二排出ライン56の一端は、第二流路部192の上記一端に接続されており、第二排出ライン56の他端は、蒸発器4の冷媒導入口に接続されている。
【0087】
第二導入ライン54を通じて第一流路部191の内部に導入された冷媒は、冷却部19における溝部193を流れることで伝熱プレート17に冷熱を伝えた後、第二流路部192に流入する。第二流路部192に流入した冷媒は、この第二排出ライン56を通じて蒸発器4に導かれる。
【0088】
(作用効果)
磁気軸受14が駆動されて軸部11が磁気浮上された際、磁気軸受駆動基板18には大電流が流れる。磁気軸受14が駆動された際、磁気軸受駆動基板18は、高発熱部品となる。
【0089】
上記構成によれば、磁気軸受駆動基板18が伝熱プレート17に面接触しているため、磁気軸受駆動基板18から発生した熱は、この伝熱プレート17に移動する。伝熱プレート17に移動した熱は、伝熱プレート17が取り付けられたケーシング10に移動する。したがって、例えば、磁気軸受駆動基板18とケーシング10との間に伝熱プレート17が介在しない場合と比較して、磁気軸受駆動基板18の熱をより移動させることができる。したがって、例えば、ケーシング10の全体をアルミニウム等の熱伝導率の比較的高い金属で形成することなく、磁気軸受駆動基板18で発生した熱をケーシング10に円滑に逃がすことができる。その結果、ターボ圧縮機1を製造する際に生じるコストが増大することを抑制することができる。
【0090】
さらに、冷却部19における溝部193が伝熱プレート17に形成されており、外部から供給された冷媒がこの溝部193内を流れることで、冷媒の冷熱が伝熱プレート17に伝わる。したがって、例えば、伝熱プレート17に溝部193が形成されていない場合と比較して、ターボ圧縮機1稼動中のケーシング10の温度や、ケーシング10の材質等によることなく磁気軸受駆動基板18をより安定して冷却することができる。
【0091】
また、上記構成によれば、流路部190をケーシング10に形成し、溝部193を伝熱プレート17に形成するといった簡易な方法で伝熱プレート17を冷却する冷却部19を構成することができる。したがって、例えば、伝熱プレート17を空冷可能な送風機等の装置を冷却部として採用した場合と比較して、ターボ圧縮機1の部品点数及びメンテナンス頻度が増加することを抑制することができる。
【0092】
また、上記構成によれば、冷却部19における溝部193が伝熱プレート17の一面17aに沿って蛇行するように延びているため、例えば、溝部193が蛇行せずに延びている場合と比較して、冷媒の冷熱をより効率的に伝熱プレート17へ伝えることができる。
【0093】
また、上記構成によれば、磁気軸受駆動基板18がボックス16に収容されており、ボックス16内の空間が外部と気密に隔離された状態で不活性ガスによって置換されている。このため、冷媒の冷熱によって磁気軸受駆動基板18が冷却された際、結露により磁気軸受駆動基板18中に水分が発生することを抑制することができる。したがって、冷媒の冷熱による磁気軸受駆動基板18の冷却に伴って、磁気軸受駆動基板18に損傷等の異常が発生することを抑制することができる。その結果、磁気軸受駆動基板18の長寿命化を図ることができる。また、磁気軸受駆動基板18がボックス16に収容されることで、磁気軸受駆動基板18が大気に露出することがないため、例えば、磁気軸受駆動基板18から発生する輻射熱や対流熱等の熱が他の機器類に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0094】
また、上記構成によれば、変位センサ15によって検出された信号を処理する変位センサ用基板20が磁気軸受駆動基板18と共にボックス16に収容されている。したがって、例えば、ボックス16をケーシング10から取り外すことで、これら変位センサ用基板20及び磁気軸受駆動基板18を同時にメンテナンスすることができる。また、変位センサ用基板20は、熱に対する耐性が磁気軸受駆動基板18と比較して低い場合がある。伝熱プレート17及び冷却部19によって磁気軸受駆動基板18が冷却された結果、変位センサ用基板20が磁気軸受駆動基板18から受ける輻射熱や対流熱等の熱影響が抑制される。その結果、変位センサ用基板20を設置するためのスペース(収容空間R)を磁気軸受駆動基板18と共用することができ、ターボ圧縮機1が大型化することを抑制することができる。
【0095】
また、上記構成によれば、伝熱プレート17がアルミニウムを含む金属材料によって形成されているため、伝熱プレート17を容易に加工することができると同時に、安価に製造することができる。また、伝熱プレート17がボックス16の開口部16aに嵌るため、磁気軸受駆動基板18で発生した熱をボックス16へ移動させることができる。
【0096】
また、上記構成によれば、ターボ冷凍機100の凝縮器2で凝縮された冷媒が冷媒供給部5によって冷却部19に導かれる。したがって、例えば、冷却用の冷媒を冷却部19に供給する装置をターボ冷凍機100に別途設ける必要がない。その結果、ターボ圧縮機1が大型化することを抑制することができる。
【0097】
また、上記構成によれば、冷媒供給部5の第二導入ライン54を流れる凝縮器2からの冷媒が、第二調整弁55によって減圧されることで気液二相状態になった後、冷却部19へ供給される。したがって、例えば、液体状態の冷媒を冷却部19に単に供給する場合と比較して、冷却部19に供給される冷媒の温度を低下させることができると同時に、凝縮器2から取り出す冷媒の量を抑えることができる。その結果、伝熱プレート17に冷熱をより伝えつつ、ターボ冷凍機100稼動時の動力と冷凍能力の比を示す成績係数(COP:Coefficient Of Performance)が低下することを抑制することができる。
【0098】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0099】
なお、上記実施形態では、第一導入ライン51に第一調整弁52が設けられ、第二導入ライン54に第二調整弁55が設けられる構成を説明したが、この構成に限定されることはない。例えば、第一調整弁52と第二調整弁55とは、一つの調整弁に共通化されてもよい。この場合、調整弁は、第一導入ライン51と第二導入ライン54との接続部分よりも凝縮器2側に設けられればよい。したがって、冷媒供給部5が第一調整弁52と第二調整弁55とを有する構成に替えて、冷媒供給部5が第一導入ライン51と第二導入ライン54との接続部分よりも凝縮器2側に設けられた調整弁を有している構成であってもよい。
【0100】
また、これら第一調整弁52と第二調整弁55とは、開度が互いに異なるように調整されてもよい。すなわち、第一導入ライン51を通じてケーシング10内に導入される冷媒の気相分及び液相分のそれぞれが占める割合と、第二導入ライン54を通じて冷却部19に導入される冷媒の気相分及び液相分のそれぞれが占める割合とは、互いに異なってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、冷却部19における溝部193は、一面17aに沿って蛇行するように延びている構成に限定されることはない。溝部193は、例えば、一面17aに沿って広がるように形成された一つの凹所(大穴)であってもよい。
また、冷却部19における溝部193は、伝熱プレート17に形成される構成に替えて、ケーシング10の外面10aから凹むようケーシング10に形成されてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、四つの延在溝193aが伝熱プレート17の一面17aに沿った状態で上下方向Dvに等間隔に並び、三つの接続溝193bが上下方向Dvに隣り合う四つの延在溝193aの軸線方向Daにおける端部同士を上下方向Dvに互いに接続している構成を説明したが、この構成に限定されることはない。例えば、延在溝193aの数が五つ以上であって、接続溝193bの数が四つ以上であってもよい。また、例えば、延在溝193aの数が三つ以下であって、接続溝193bの数が二つ以下であってもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、ボックス16内の収容空間Rの置換に利用される不活性ガスは、窒素ガスに限定されることはない。この不活性ガスは、例えば、アルゴンガス(Ar)やヘリウムガス(He)であってもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、ボックス16は、アルミニウムを含む金属材料によって形成されている構成に限定されることはない。ボックス16は、例えば、鉄等を含む金属材料や合成樹脂材料等によって形成されてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、伝熱プレート17の一面17aがケーシング10の外面10aに直接面接触している構成を説明したが、この構成に限定されることはない。伝熱プレート17の一面17aとケーシング10の外面10aをより密着させるために、伝熱プレート17の一面17aは、例えば、放熱グリース等を介して外面10aに密着した状態でこの外面10aに固定されてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第一インペラ131及び第二インペラ132を有する羽根車13によってターボ圧縮機1で二段の圧縮機構が構成されている旨を説明したが、この構成に限定されることはない。羽根車13が単一のインペラのみを有することで、ターボ圧縮機1で一段(単段)の圧縮機構が構成されてもよい。
【0107】
また、上記実施形態で説明した「平行」、「垂直」、及び「同一」とは、実質的に平行、垂直、及び同一である状態を指すものであって、製造上の僅かな誤差や、設計上の公差等は許容される。
【0108】
<付記>
実施形態に記載のターボ圧縮機、及びこれを備えているターボ冷凍機は、例えば以下のように把握される。
【0109】
(1)第1の態様に係るターボ圧縮機1は、羽根車13と、前記羽根車13を回転させる軸部11と、前記軸部11を回転駆動する電動モータ12と、前記電動モータ12を収容するケーシング10と、前記軸部11を支持する磁気軸受14と、一面17aが前記ケーシング10の外面10aに取り付けられた伝熱プレート17と、前記伝熱プレート17の前記一面17aとは反対側の他面17bに面接触している磁気軸受駆動基板18と、外部から冷媒が供給されることで、供給された前記冷媒の冷熱を前記伝熱プレート17に伝える冷却部19と、を備える。
【0110】
これにより、磁気軸受駆動基板18から発生した熱は、伝熱プレート17に移動し、伝熱プレート17に移動した熱は、ケーシング10に移動する。したがって、ケーシング10の全体を熱伝導率の高い金属等で形成することなく、磁気軸受駆動基板18で発生した熱をケーシング10に逃がすことができる。さらに、冷媒の冷熱が伝熱プレート17に伝わることで、ターボ圧縮機1稼動中のケーシング10の温度やケーシング10の材質等によることなく磁気軸受駆動基板18をより安定して冷却することができる。
【0111】
(2)第2の態様に係るターボ圧縮機1は、(1)のターボ圧縮機1であって、前記冷却部19は、前記ケーシング10の外壁中に形成され、内部を前記冷媒が流通する流路部190と、前記流路部190に接続され、前記伝熱プレート17の前記一面17aから前記他面17b側に向かって凹むことで、前記ケーシング10の外面10aと共に前記冷媒の流路を形成する溝部193と、を有してもよい。
【0112】
これにより、上記作用をより高精度に実現することができる。また、流路部190をケーシング10に形成し、溝部193を伝熱プレート17に形成するといった簡易な方法で伝熱プレート17を冷却する冷却部19を構成することができる。また、例えば、伝熱プレート17を空冷可能な送風機等の装置を冷却部として採用した場合と比較して、ターボ圧縮機1の部品点数及びメンテナンス頻度が増加することを抑制することができる。
【0113】
(3)第3の態様に係るターボ圧縮機1は、(2)のターボ圧縮機1であって、前記溝部193は、前記伝熱プレート17の前記一面17aに沿って蛇行するように延びていてもよい。
【0114】
これにより、溝部193が蛇行せずに延びている場合と比較して、冷媒の冷熱をより効率的に伝熱プレート17へ伝えることができる。
【0115】
(4)第4の態様に係るターボ圧縮機1は、(1)から(3)の何れかのターボ圧縮機1であって、開口部16aが前記ケーシング10の外面10aに対向した状態で前記磁気軸受駆動基板18を収容するボックス16を更に備え、前記伝熱プレート17は、前記ボックス16の前記開口部16aに嵌ることで前記ボックス16内を外部と気密に隔離された閉空間にし、前記閉空間は、不活性ガスによって置換されていてもよい。
【0116】
これにより、冷媒の冷熱によって磁気軸受駆動基板18が冷却された際、結露により磁気軸受駆動基板18中に水分が発生することを抑制することができる。また、磁気軸受駆動基板18がボックス16に収容されることで、磁気軸受駆動基板18が大気に露出することがないため、磁気軸受駆動基板18から発生する熱が他の機器類に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0117】
(5)第5の態様に係るターボ圧縮機1は、(4)のターボ圧縮機1であって、前記軸部11と前記磁気軸受14との間のクリアランスの大きさを検出可能な変位センサ15と、前記ボックス16に収容され、前記変位センサ15によって検出された信号を処理する変位センサ用基板20と、を更に備えてもよい。
【0118】
これにより、ボックス16をケーシング10から取り外すことで、これら変位センサ用基板20及び磁気軸受駆動基板18を同時にメンテナンスすることができる。また、伝熱プレート17及び冷却部19によって磁気軸受駆動基板18が冷却された結果、変位センサ用基板20が磁気軸受駆動基板18から受ける熱の影響が抑制されるため、変位センサ用基板20を設置するためのスペースを磁気軸受駆動基板18と共用することができる。
【0119】
(6)第6の態様に係るターボ圧縮機1は、(1)から(5)の何れかのターボ圧縮機1であって、前記伝熱プレート17は、アルミニウムを含む金属材料によって形成されていてもよい。
【0120】
これにより、伝熱プレート17を容易に加工することができると同時に、安価に製造することができる。
【0121】
(7)第7の態様に係るターボ冷凍機100は、(1)から(6)の何れかのターボ圧縮機1と、前記ターボ圧縮機1から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器2と、前記凝縮器2で凝縮された前記冷媒を断熱膨張させる膨張弁3と、前記膨張弁3で断熱膨張された前記冷媒を蒸発させる蒸発器4と、前記凝縮器2で凝縮された前記冷媒を前記冷却部19に導くことができる冷媒供給部5と、を備える。
【0122】
これにより、凝縮器2で凝縮された冷媒が冷媒供給部5によって冷却部19に導かれる。したがって、冷却用の冷媒を冷却部19に供給する装置をターボ冷凍機100に別途設ける必要がない。
【0123】
(8)第8の態様に係るターボ冷凍機100は、(7)のターボ冷凍機100であって、前記冷媒供給部5は、前記冷媒を前記冷却部19に導く導入ラインと、前記導入ラインに設けられ、該導入ライン内を流れる前記冷媒を減圧することで、前記冷却部19に向かう前記冷媒を気液二相状態にする調整弁と、を有してもよい。
【0124】
これにより、液体状態の冷媒を冷却部19に供給する場合と比較して、冷却部19に供給される冷媒の温度を低下させることができると同時に、凝縮器2から取り出す冷媒の量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0125】
1…ターボ圧縮機 2…凝縮器 3…膨張弁 4…蒸発器 5…冷媒供給部 6…凝縮器ライン 7…接続ライン 8…蒸発器ライン 10…ケーシング 10a…外面 11…軸部 12…電動モータ 12a…モータロータ 12b…モータステータ 13…羽根車 14…磁気軸受 14a…第一磁気軸受 14b…第二磁気軸受 15…変位センサ 15a…第一変位センサ 15b…第二変位センサ 16…ボックス 16a…開口部 16b…内面 17…伝熱プレート 17a…一面 17b…他面 18…磁気軸受駆動基板 18a…当接面 18b…実装面 19…冷却部 20…変位センサ用基板 21,41…伝熱管 51…第一導入ライン 52…第一調整弁 53…第一排出ライン 54…第二導入ライン 55…第二調整弁 56…第二排出ライン 100…ターボ冷凍機 131…第一インペラ 131a…第一ブレード群 131b…第一インペラケーシング 132…第二インペラ 132a…第二ブレード群 132b…第二インペラケーシング 133…段間ライン 190…流路部 191…第一流路部 192…第二流路部 193…溝部 193a…延在溝 193b…接続溝 B…締結部材 Da…軸線方向 Dal…他方側 Dar…一方側 Dc…周方向 Dv…上下方向 Dvd…下方側 Dvu…上方側 O…中心軸 R…収容空間
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車を回転させる軸部と、
前記軸部を回転駆動する電動モータと、
前記電動モータを収容するケーシングと、
前記軸部を支持する磁気軸受と、
一面が前記ケーシングの外面に取り付けられた伝熱プレートと、
前記伝熱プレートの前記一面とは反対側の他面に面接触している磁気軸受駆動基板と、
外部から冷媒が供給されることで、供給された前記冷媒の冷熱を前記伝熱プレートに伝える冷却部と、
を備え
前記冷却部は、
前記ケーシングの外壁中に形成され、内部を前記冷媒が流通する流路部と、
前記流路部に接続され、前記伝熱プレートの前記一面から前記他面側に向かって凹むことで、前記ケーシングの外面と共に前記冷媒の流路を形成する溝部と、
を有するターボ圧縮機。
【請求項2】
前記溝部は、前記伝熱プレートの前記一面に沿って蛇行するように延びている請求項に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
開口部が前記ケーシングの外面に対向した状態で前記磁気軸受駆動基板を収容するボックスを更に備え、
前記伝熱プレートは、前記ボックスの前記開口部に嵌ることで前記ボックス内を外部と気密に隔離された閉空間にし、
前記閉空間は、不活性ガスによって置換されている請求項1又は2に記載のターボ圧縮機。
【請求項4】
前記軸部と前記磁気軸受との間のクリアランスの大きさを検出可能な変位センサと、
前記ボックスに収容され、前記変位センサによって検出された信号を処理する変位センサ用基板と、
を更に備える請求項に記載のターボ圧縮機。
【請求項5】
前記伝熱プレートは、アルミニウムを含む金属材料によって形成されている請求項1又は2に記載のターボ圧縮機。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のターボ圧縮機と、
前記ターボ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された前記冷媒を断熱膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁で断熱膨張された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記凝縮器で凝縮された前記冷媒を前記冷却部に導くことができる冷媒供給部と、
を備えるターボ冷凍機。
【請求項7】
前記冷媒供給部は、
前記冷媒を前記冷却部に導く導入ラインと、
前記導入ラインに設けられ、該導入ライン内を流れる前記冷媒を減圧することで、前記冷却部に向かう前記冷媒を気液二相状態にする調整弁と、
を有する請求項に記載のターボ冷凍機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るターボ圧縮機は、羽根車と、前記羽根車を回転させる軸部と、前記軸部を回転駆動する電動モータと、前記電動モータを収容するケーシングと、前記軸部を支持する磁気軸受と、一面が前記ケーシングの外面に取り付けられた伝熱プレートと、前記伝熱プレートの前記一面とは反対側の他面に面接触している磁気軸受駆動基板と、外部から冷媒が供給されることで、供給された前記冷媒の冷熱を前記伝熱プレートに伝える冷却部と、を備え、前記冷却部は、前記ケーシングの外壁中に形成され、内部を前記冷媒が流通する流路部と、前記流路部に接続され、前記伝熱プレートの前記一面から前記他面側に向かって凹むことで、前記ケーシングの外面と共に前記冷媒の流路を形成する溝部と、を有する