(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021983
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電子機器、表示制御方法及び医療管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240208BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20240208BHJP
【FI】
G16H10/60
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125230
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】522313949
【氏名又は名称】泉田 博彬
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】泉田 博彬
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】医療事故(医療過誤)を未然に防止することに有用な電子機器、表示制御方法及び医療管理システムを提供する。
【解決手段】医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する表示制御部を有する、電子機器である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する表示制御部を有する、
電子機器。
【請求項2】
前記情報を読み取る読取部を有する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
表示制御部が、医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する、
表示制御方法。
【請求項4】
医療材料と、電子機器とを有し、
前記電子機器は、
前記医療材料に付されている情報を読み取る読取部と、
医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する表示制御部を有する、
医療管理システム。
【請求項5】
前記情報は、1次元又は2次元のバーコードである、
請求項4に記載の医療管理システム。
【請求項6】
前記医療材料は、少なくとも、医療器具、搬送用のベッド、手術室、処置室、検査伝票の何れかを含む、
請求項4または5に記載の医療管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療事故(医療過誤)を未然に防止することに有用な電子機器、表示制御方法及び医療管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院に対する評価項目として医療事故防止対策への取り組みが重要視されており、病院内でも医療事故防止体制への関心が高まっている。特に侵襲的な処置、すなわち、人体の一部を損傷して行われる処置(例えば、薬剤投与、点滴を始めとした手技、放射線療法、血管内治療や手術)に対する医療安全の確保は強く要請される。係る現状に鑑み、医療事故の防止を支援するための提案もなされている(例えば、特許文献1を参照のこと。)。
【0003】
多くの病院、特に医師や看護師(以下、医療従事者とも適宜、称する)、患者が多数となる大病院では、医療事故を防止するために、過去の有害事象(インシデント)の発生に対してその再発防止を主な目的とする活動(医療安全活動)が行われている。すなわち、過去のインシデントに関する情報を蓄積して分析することで、同じインシデントの発生を防止するためのルールを策定する。このルールを医師や看護師に遵守させることで、同じインシデントの発生を防止する取り組みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の医療安全活動では、以下に説明する問題があった。第1の問題点として、上述したルールを医療従事者に対して周知及び教育することが必要となる点が挙げられる。すなわち、就職や退職、他病院への派遣等によって医療従事者の入れ替わりが頻繁になり得る。また、病院の規模が大きくなるほどルールの数も膨大となる。したがって、入れ替わりが激しい医療従事者の全てにルールを徹底させる教育を行うことは困難である。また、自身の担当医療分野にせよ、数多くのルールを全て記憶することは現実的に困難である。
【0006】
第2の問題点として、ルールの教育を受ける医療従事者の理解に関する問題点が挙げられる。すなわち、ルールの教育を受ける医療従事者は、診療業務等の多忙な業務の中で時間を見つけてルールの教育を受けることになる。ルールを理解するために多くの時間を費やすことは現実的には困難であり、これによって、医療従事者のルールの理解が不十分となってしまう。
【0007】
第3の問題点として、ルールを実施する際の問題点が挙げられる。手術等の処置を実際に行うにあたって、医療従事者はルールを想起する必要がある。数多くのルールから今現在必要なルールをピンポイントで想起するのは困難である。また、電子機器を用いてルールを検索できるシステムであっても簡易に検索できなければ面倒になってしまい、ルールの実施が不十分となってしまう。特に緊急性を要する処置の場合は、多くの項目を入力して今現在必要とされるルールを検索する時間はない。また、特許文献1に記載に技術も、医師の指示情報の有無を契機とする技術であるので、医師でない看護師がルールを検索することができないという問題もある。また、採血やレントゲン撮影、手術等、処置が行われる場所は様々である。このため、手術室等の特定の場所でのみルールが確認できることは好ましくない。
【0008】
そこで本発明は、以上の問題点を解決する電子機器、表示制御方法及び医療管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する表示制御部を有する、
電子機器である。
【0010】
また、本発明は、
表示制御部が、医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する、
表示制御方法である。
【0011】
また、本発明は、
医療材料と、電子機器とを有し、
電子機器は、
医療材料に付されている情報を読み取る読取部と、
医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、表示中の患者の電子カルテに所定のチェックリストを展開する表示制御部を有する、
医療管理システムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る医療管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る医療管理用サーバーの構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る携帯型コンピューターの構成例を示すブロック図である。
【
図4】胸腔ドレナージの処置対象である患者を模式的に示した図である。
【
図5】患者の手首に巻き付けられるバンドの一例を示す図である。
【
図6】電子カルテの一例を説明するための図である。
【
図7】患者の処置に用いられる胸腔ドレナージ装置を説明するための図である。
【
図8】電子カルテに展開されたチェックリストの一例を示す図である。
【
図9】一実施形態で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】電子カルテに展開されたチェックリストの他の例を示す図である。
【
図11】電子カルテに展開されたチェックリストの他の例を示す図である。
【
図12】電子カルテに展開されたチェックリストの他の例を示す図である。
【
図13】電子カルテに展開されたチェックリストの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
<一実施形態>
<変形例>
【0014】
<一実施形態>
[システム構成例]
図1は、一実施形態に係る医療管理システム(医療管理システム1)の構成例を示す図である。医療管理システム1は、医療管理用サーバー10と、電子機器の一例である携帯型コンピューター20とがネットワークを介して接続された構成を有する。携帯型コンピューター20は、読取装置202(読取部の一例)を有している。なお、本実施形態では、携帯型コンピューター20が読取装置202を有する構成としているが、携帯型コンピューター20が読取装置202を有しない構成でもよい。例えば、読取装置202が携帯型コンピューター20とは別個の機器とされ、無線又は有線を介して携帯型コンピューター20と接続される機器であってもよい。
【0015】
医療管理用サーバー10は、例えば病院内に設置されるが、病院外(例えば、クラウド)に設置されたサーバーであってもよい。携帯型コンピューター20は、医療従事者によって使用されるコンピューターである。なお、
図1では、携帯型コンピューター20が1台のみ図示されているが、実際には、複数の携帯型コンピューター20が医療管理用サーバー10に接続される。複数の携帯型コンピューター20のそれぞれには端末ID(Identifier)が割り当てられており、端末IDによって個々の携帯型コンピューター20が識別可能とされている。いる。医療管理用サーバー10と携帯型コンピューター20とは例えば所定のネットワークを介した無線による接続が可能とされており、両者の間で、データやコマンドのやり取りが可能とされている。
【0016】
[医療管理用サーバーの構成例]
図2は、医療管理用サーバー10の内部構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、医療管理用サーバーは、バスBSにより相互接続されている制御部101、記憶部102、入力部103、通信部104及び出力部105を有している。
【0017】
制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等で構成されている。ROMには、CPUにより読み込まれ動作されるプログラム等が記憶されている。RAMは、CPUのワークメモリとして用いられる。CPUは、ROMに記憶されたプログラムにしたがい、様々な処理を実行してコマンドの発行を行うことによって医療管理用サーバー10全体の制御を行う。
【0018】
記憶部102は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等により構成された記憶媒体である。記憶部102には、制御部101によって実行されるプログラムが記憶されている。また、記憶部102には、患者IDに対応する電子カルテ情報が記憶されている。電子カルテ情報は、所定の電子カルテアプリケーションに対応した表示を行うための情報であり、例えば、患者氏名、生年月日、血液型、入院日、病名、医療行為の内容、患者の顔写真等を含む情報である。
【0019】
入力部103は、医療管理用サーバー10に対して各種情報を入力するための装置である。入力部103により情報が入力されると、制御部101は、その入力情報に対応した各種処理を行う。入力部103は、マウス及びキーボードの他、マイクロホン、各種センサ、タッチパネル、モニタと一体に構成されたタッチスクリーン、物理ボタン等でもよい。なお、医療管理用サーバー10への各種情報の入力は、通信部104を介して行われる構成であってもよい。
【0020】
通信部104は、所定の通信規格により携帯型コンピューター20やインターネットと通信する通信モジュールである。通信方法としては、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)、5G(Generation)、ブロードバンド、Bluetooth(登録商標)等が挙げられる。
【0021】
出力部105は、医療管理用サーバー10から各種情報を出力するための装置である。出力部105は、例えば、画像や映像を表示するディスプレイ(表示デバイス)、スピーカ等の音を出力する出力デバイスで構成されている。なお、医療管理用サーバー10からの各種情報の出力は、通信部104を介して行われる構成であってもよい。
【0022】
制御部101は、例えば、記憶部102に記憶されているプログラム(例えば、アプリケーション)を読み出し実行することで各種処理を行う。つまり、医療管理用サーバー10は、コンピューターとしての機能を有している。
【0023】
なお、プログラム(例えば、アプリケーション)及びデータは、記憶部102に記憶されていなくてもよい。例えば、医療管理用サーバー10が読み取り可能な記憶媒体に記憶されているプログラムやデータを読み出して使用するものでもよい。この記憶媒体としては、例えば、医療管理用サーバー10に対して着脱自在な光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ、HDDなどがあげられる。また、インターネット等のネットワークに接続された装置(例えば、クラウドストレージ)にプログラムやデータを記憶させておき、医療管理用サーバー10がそこからプログラムやデータを読み出して実行するようにしてもよい。また、プログラムは、例えば、既存のアプリケーションに、処理の一部または全てを追加するプラグインプログラムであってもよい。
【0024】
[携帯型コンピューターの構成例]
携帯型コンピューター20は、例えば、ノート型コンピューターと同様の外観構成例を有している。なお、携帯型コンピューター20は、ノート型コンピューターではなくスマートホンやタブレット型コンピューターであってもよい。
図3に示すように、携帯型コンピューター20は、例えば、制御部201、読取装置202、音声処理部203、無線通信部204、位置センサ部205、モーションセンサ206、ディスプレイ207、入力部208、バイブレータ209、及び、メモリ部210を有している。制御部201に対して、読取装置202、音声処理部203、無線通信部204、位置センサ部205、モーションセンサ206、ディスプレイ207、入力部208、バイブレータ209、及び、メモリ部210のそれぞれが接続されている。また、音声処理部203にはマイク215及びスピーカ216が接続されており、無線通信部204にはアンテナ217が接続されている。
【0025】
制御部201は、例えばCPUから構成されており、携帯型コンピューター20の各部を統括的に制御する。例えば、制御部201は、後述する医療材料に付されている情報が読み取られることに応じて、所定のチェックリストを表示中の患者の電子カルテに展開する表示制御部として機能する。
【0026】
読取装置202は、例えば、バーコードを読み取る装置である。バーコードは、2次元バーコードでもよいし、1次元バーコードであってもよい。バーコードは、患者手首や患者の名札等に描画される。また、読取装置202は、後述する医療材料に付された2次元バーコードを読み取り可能とされている。読取装置202は、読み取ったバーコードを制御部201に送る。なお、読取装置202は、携帯型コンピューター20が有する撮像ユニット(レンズや撮像素子を含むユニット)であってもよい。
【0027】
音声処理部203は、音声データに対する公知の信号処理を行う。例えば、音声処理部203は、無線通信部204による無線通信で接続された相手との通話の処理を行う。また、音声処理部203は、音声入力操作のための処理を行うこともできる。
【0028】
無線通信部204は、例えば、LTEや4G、5G等の通信規格に基づいて携帯型コンピューター20以外の外部装置(例えば、医療管理用サーバー10や病院外の装置)と通信を行う。無線通信部204は、通信規格に対応する変調/復調処理やエラー訂正処理等を行う。アンテナ217を介して上述した外部装置に対してデータが送信され、アンテナ217により外部装置からのデータが受信される。
【0029】
位置センサ部205は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)と称されるシステムを利用して、現在位置の測位を行う測位部である。位置センサ部205により得られる情報を活用して、携帯型コンピューター20の病院内での位置が識別可能となる。
【0030】
モーションセンサ206は、例えば、携帯型コンピューター20の動きを検出する。モーションセンサ206としては、加速度センサ、ジャイロセンサ、電子コンパス、気圧センサ等が使用される。なお、携帯型コンピューター20は、モーションセンサ206以外のセンサを内蔵してもよい。例えば、携帯型コンピューター20は、患者の血圧、脈拍、体温等の生体情報を検出するバイオセンサを有していてもよい。
【0031】
ディスプレイ207としては、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイが適用され得る。ディスプレイ207は、制御部201による制御に従って生成された画像データを表示する。なお、ディスプレイ207はタッチパネルとして構成されていても良い。ディスプレイ207には、例えば、医療管理用サーバー10から読み出された電子カルテ情報に基づく電子カルテや、電子カルテに展開されたチェックリスト(詳細は後述)が表示される。なお、本明細書でチェックリストとは、注意喚起を促したり、必要な確認事項を想起させる、文書形式や音声形式等の提示データを意味する。
【0032】
入力部208は、携帯型コンピューター20が有する、操作入力を受け付けるための構成を総称したものである。入力部208としては、マウス、キーボード、ボタン、ダイヤル等が挙げられる。なお、入力部208は、音声認識を行うための音声入力を受け付ける構成でも良い。また、上述したディスプレイ207がタッチパネルとして構成される場合には、ディスプレイ207も入力部208となり得る。
【0033】
バイブレータ209は、例えば、携帯型コンピューター20全体を振動させる部材である。バイブレータ209による振動で、電話の着信や電子メールの受信等が通知される。
【0034】
メモリ部210は、制御部201が実行するプログラムが格納されるROMや制御部201がプログラムを実行する際のワークメモリとして使用されるRAMやデータ記憶用の不揮発性メモリ等を総称したものである。
【0035】
上述した携帯型コンピューター20の構成例は一例に過ぎない。携帯型コンピューター20は、上述した以外の構成要素を備えていてもよいし、上述した構成要素の一部を備えていなくてもよい。
【0036】
[本実施形態で行われる処理]
次に、本実施形態で行われる処理の一例について説明する。本実施形態では、患者に対する処置の具体例として「胸腔ドレナージ」を例にして説明する。胸腔ドレナージとは、チューブ状の胸腔ドレーンを胸腔(胸郭と肺野の間にある空間)に挿入し、胸腔ドレーンを介して胸腔内の空気や液体を排出する処置である。胸腔ドレーンは、チェスト・ドレーン・バックと呼ばれる装置に接続されている。以下の説明では、胸腔ドレーン及びチェスト・ドレーン・バックを含む構成を胸腔ドレーン装置とも適宜、称する。胸腔ドレーンは、医療器具の一つであり、且つ、医療材料の一例である。本明細書において医療材料とは、医療行為の提供の際に用いられる物品を意味する。
【0037】
(処理の概要)
胸腔ドレナージは、手術室のような専用の処置室だけでなく、一般の病棟でも行われ得る。また、胸腔ドレナージは、特定の診療科の医師だけでなく、普遍的に多くの診療科医師によっても行われ得る。すなわち、胸腔ドレナージは、病院内での様々な場所で、且つ、知識や経験の異なる様々な医療従事者の関与によって行われ得る。胸腔ドレナージが行われる様々な場所で、且つ、胸腔ドレナージの施行に関わる医療従事者が、胸腔ドレナージを行うにあたっての注意事項であるチェックリストを、簡便に確認できることが望まれる。本実施形態によれば、胸腔ドレナージに関するチェックリストを医療従事者が簡便に確認できる。以下、具体的に説明する。
【0038】
図4は、病院内の患者PAを示す。本例では、患者PAは胸腔ドレナージの処置対象となる患者である。患者PAの手首にはバンド41が装着されている。
【0039】
図5は、バンド41の一例を示す図である。バンド41は、例えば、樹脂や紙により形成され、可撓性を有する部材である。バンド41の端部には、例えば2個の孔部41Aが形成されおり、バンド41の他端には12個の突起41Bが形成されている。バンド41を手首の周りに巻き付けるようにして折り曲げ、適宜な2個の突起41Bを孔部41Aに差し込むことで、バンド41が患者PAに取り付けられる。差し込む突起41Bの位置に応じて、バンド41の長さが調整可能とされる。
【0040】
また、バンド41には1次元のバーコード41Cが印刷されている。その他に、バンド41には、患者PAのID、患者PAの氏名、血液型、生年月日、年齢、性別が印刷されている。バーコード41Cは、患者PAのIDをコード化した情報である。
【0041】
例えば、バーコード41Cを携帯型コンピューター20の読取装置202で読み込むと、制御部201は、バーコード41Cに対応する患者IDを認識する。制御部201は、無線通信部204を制御することで、認識した患者IDを、自身の端末IDと共に医療管理用サーバー10に送信する。携帯型コンピューター20から送信された患者IDが医療管理用サーバー10の通信部104で受信され、バスBSを介して制御部101に供給される。制御部101は、記憶部102から患者IDに対応する電子カルテ情報を読み出す。
【0042】
制御部101は、通信部104を制御することで、読みだした電子カルテ情報を送信元のIDに対応する携帯型コンピューター20に送信する。医療管理用サーバー10から送信された電子カルテ情報が、携帯型コンピューター20の無線通信部204で受信され、制御部201に供給される。制御部201は、受信した電子カルテ情報を、携帯型コンピューター20にインストールされている電子カルテアプリケーションに従って表示させるための表示情報を生成する。制御部201は、生成した表示情報をディスプレイ207に表示させる制御を行う。
【0043】
図6は、ディスプレイ207に表示される患者PAの電子カルテの一例を示す。例えば、ディスプレイ207に表示される電子カルテの項目としては、携帯型コンピューター20の端末ID、操作者、患者ID、患者氏名、担当医師名、病名、診断履歴等が表示される。電子カルテは様々な表示項目を含む。例えば、所望の項目が選択されることでその項目に関する詳細な情報がディスプレイ207に表示される。
【0044】
図7は、患者PAに対して胸腔ドレナージを行う様子を模式的に示した図である。胸腔ドレーン装置51は、箱状のチェスト・ドレーン・バック51Aと、チェスト・ドレーン・バック51Aに接続される胸腔ドレーン51Bとを有する。胸腔ドレーン51Bの一端がチェスト・ドレーン・バック51Aに接続される。胸腔ドレーン51Bの他端が、患者PAの肺に挿入されることで、胸腔ドレナージが行われる。
【0045】
胸腔ドレーン装置51は、さらに、2次元バーコード51Cを有する。2次元バーコード51Cは、例えば、チェスト・ドレーン・バック51Aに描画されている。但し、これに限定されることはなく、2次元バーコード51Cは、胸腔ドレーン51Bに描画されていてもよい。2次元バーコード51Cには、胸腔ドレナージを行うにあたって確認すべき事項がリスト化されたチェックリストに関する情報が含まれる。
【0046】
胸腔ドレナージを行う医療従事者(医師でも看護師でもよい)は、読取装置202を使用して、2次元バーコード51Cを読み込む。制御部201は、読み込まれた2次元バーコード51Cに含まれるチェックリストに関する情報を認識し、認識したチェックリストに関する情報を、ディスプレイ207に表示中の患者PAの電子カルテにチェックリストとして展開する。ここで展開するとは、表示中の患者PAの電子カルテに所定のフォーマットのチェックリストが含まれるように、且つ、編集可能(入力可能)なように表示することを意味する。
【0047】
図8は、ディスプレイ207に表示中の電子カルテに展開されたチェックリスト(チェックリスト55)の一例を示す。例えば、ディスプレイ207に表示中の電子カルテの下側にチェックリスト55が表示される。もちろん、チェックリスト55の表示位置は、図示した例に限定されることはない。
【0048】
チェックリスト55には、胸腔ドレナージを行うにあたってチェックすべき複数のチェック項目が含まれる。チェック項目は、例えば「施行医師名」、「医師の免許の有無の確認」、「血液凝固能確認」を含む。医師の免許の有無の確認は、一定(例えば、5年以上)の経験を有する医師であるか否の確認であってもよい。胸腔ドレナージを行う医療従事者は、胸腔ドレナージを行う前に、医師名やチェック項目の確認結果を入力する。胸腔ドレナージを行う医療従事者は、例えば、入力部208を使用してチェック項目に対する入力を行う。なお、チェックリスト55は、胸腔ドレナージを行う前にチェックすべき事項だけでなく、処置後にチェックすべき事項を含んでいてもよい。
図8に示すチェックリスト55には、処置後にチェックすべき事項として「必ず施行後はレントゲン確認を」という文字列が含まれる。
【0049】
図9は、上述した処理の流れを示すフローチャートである。ステップST1では、患者PAに装着されているバンド41の1次元のバーコード41Cが読取装置202によって読み込まれる。読み込まれた1次元のバーコード41Cに対応する患者IDが医療管理用サーバー10に送信され、医療管理用サーバー10側で当該患者IDに対応する電子カルテ情報が読みだされる。読みだされた電子カルテ情報が、医療管理用サーバー10から携帯型コンピューター20に送信される。携帯型コンピューター20は、受信した電子カルテ情報を、所定の電子カルテアプリケーションに従った電子カルテとしてディスプレイ207に表示する。そして、処理がステップST2に進む。
【0050】
ステップST2では、チェスト・ドレーン・バック51Aに描画されている2次元バーコード51Cが読取装置202によって読み取られたか否かが判断される。係る判断は、例えば、携帯型コンピューター20の制御部201によって行われる。2次元バーコード51Cが読み取られていない場合には、ステップST2の判断処理が繰り返される。2次元バーコード51Cが読み取られた場合には、処理がステップST3に進む。
【0051】
ステップST3では、ディスプレイ207に表示中の電子カルテにチェックリストを展開する処理が行われる。すなわち、制御部201は、2次元バーコード51Cに含まれるチェックリストの情報を、ディスプレイ207に表示中の電子カルテに展開して表示する。そして、処理がステップST4に進む。
【0052】
ステップST4では、胸腔ドレナージの処置者によってチェックリストの項目に対する入力がなされる。チェックリストの制御部201は、チェックリストに対する入力情報(以下、チェックリスト入力情報とも適宜、称する)が含まれた患者PAの患者IDを、無線通信部204を介して医療管理用サーバー10に送信する。そして、処理がステップST5に進む。
【0053】
ステップST5では、携帯型コンピューター20から送信された患者ID及びチェックリスト入力情報が医療管理用サーバー10の通信部104により受信される。制御部101は、記憶部102に記憶されている患者IDに対応する電子カルテ情報を書き換える。具体的には、患者IDに対応する電子カルテ情報に携帯型コンピューター20から送信されたチェックリスト入力情報が反映されるように、電子カルテ情報を書き換える。これにより、患者PAの電子カルテ情報が更新される。
【0054】
患者PAの電子カルテ情報にチェックリスト入力情報が反映されることで、チェックリストの履歴を保存することができる。また、胸腔ドレナージの処置を行う際にチェックリストの確認がなされた否かを後日、検証できる。また、他の患者についても同様にしてチェックリスト入力情報が保存されることで、チェックリストの使用率や、チェックリストの使用目標に対する達成率を算出することも可能となる。
【0055】
[本実施形態により得られる効果]
本実施形態によれば、例えば、以下の効果が得られる。
処置を行うにあたっての特有の医療器具(例えば、胸腔ドレーン装置51)に描画された2次元バーコード51Cを読み込むだけで、当該医療器具を使用した処置を行うにあたってチェックすべき事項を容易に確認することができる。そして、チェックリストの内容を確認し、確認結果を入力することで、医療事故を未然に防ぐことができる。
2次元バーコード51Cが読み込まれることで得られるチェックリストをディスプレイ207に表示中の電子カルテに展開することで、チェックリストへの入力結果を電子カルテ情報と共に保存できるという効果が得られる。
経験年数の浅い医療従事者や病院内での勤務期間が短い医療従事者であっても、2次元バーコード51Cを読み込むだけでチェックリストの内容を確認することができる。また、医療従事者が、病院内で設定された数多くのルールを逐一覚える必要がなくなる。また、処置を行うにあたって2次元バーコード51Cを読み込むだけの簡単な操作でチェックリストの内容を確認することができる。
処置を行うにあたってのルール担当部署は、例えば、処置を行う際に医療従事者が少なくとも2次元バーコード51Cを読み込むことを徹底させればよく、ルールに関する研修内容を従来と比べて簡素化できる。また、ルールの研修を受ける側の医療従事者にとっても、研修に割かれる時間を少なくすることができる。
処置を行うにあたっての医療器具に2次元バーコード51Cが付されることで、場所、時間に限られることがなくチェックリストを読み出すことができ、当該チェックリストの内容を確認することができる。
【0056】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0057】
[変形例1]
上述した一実施形態では、医療材料の一例として医療器具を例にして説明したが、2次元バーコードが付される医療材料は医療器具に限定されることはなく、医療行為の提供の際に用いられる物品であれば何でもよい。例えば、医療材料は、搬送用ベッドであってもよく、搬送用ベッドの適宜な箇所(見易い箇所が好ましい)に2次元バーコードが描画されてもよい。
【0058】
そして、一実施形態と同様に、2次元バーコードが読取装置で読み取られることで、チェックリストが表示中の電子カルテに展開される。
図10は、搬送用ベッドに付された2次元バーコードが読み込まれることで、表示中の電子カルテに展開されるチェックリストの一例を示す。
図10に示すチェックリスト55は、チェック項目(A)、(B)を含み、また、それぞれのチェック項目に対する回答を含む。例えば、回答番号がクリック操作やタッチ操作によって選択されることで、チェックリスト55への入力がなされる。
【0059】
[変形例2]
医療材料は、固定された物品であってもよい。例えば、医療材料は、手術室や処置室であってもよく、手術室や処置室の壁等に2次元バーコードが描画されてもよい。
図11は、手術室や処置室に付された2次元バーコードが読み込まれることで、電子カルテに展開されるチェックリストの一例を示す。
図11に示すチェックリスト55は、チェック項目(A)~(D)を含み、それぞれのチェック項目に対する回答を含む。例えば、回答番号がクリック操作やタッチ操作によって選択されることで、チェックリスト55に対する入力がなされる。チェックリスト55におけるチェック項目が多い場合には、画面をスクロールすることで下側のチェック項目が確認できるようにしてもよい。
【0060】
[変形例3]
また、医療材料は、検査伝票であってもよい。例えば、検査伝票の用紙に2次元バーコードが描画されてもよい。
図12は、検査伝票に付された2次元バーコードが読み込まれることで、電子カルテに展開されるチェックリストの一例を示す。
図12に示すチェックリスト55は、チェック項目(A)~(C)を含み、それぞれのチェック項目に対する回答を含む。例えば、回答番号がクリック操作やタッチ操作によって選択されることで、チェックリストへの入力がなされる。
【0061】
[変形例4]
また、医療材料は、人工呼吸器であってもよい。例えば、人工呼吸器に2次元バーコードが描画されてもよい。
図13は、人工呼吸器に付された2次元バーコードが読み込まれることで、電子カルテに展開されるチェックリストの一例を示す。
図13に示すチェックリスト55は、チェック項目(A)~(E)を含み、それぞれのチェック項目に対する回答を含む。例えば、回答番号がクリック操作やタッチ操作によって選択されることで、チェックリスト55への入力がなされる。人工呼吸器が多く使用されるような大病院であっても、複雑な操作を行うことなく、人工呼吸器を使用するにあたってのチェックリストを確認することができる。
【0062】
[その他の変形例]
一実施形態では、医療材料に付されている情報の一例として2次元バーコードを説明したが、これに限定されることはない。1次元のバーコードでもよいし、RFID(Radio Frequency Identification)システムで用いられるRFタグであってもよい。
【0063】
2次元バーコードは、医療材料に描画以外の方法で付されていてもよい。例えば、医療材料がディスプレイを有する場合には、当該ディスプレイに2次元バーコードが表示されることで、医療材料に2次元バーコードが付されるようにしてもよい。また、2次元バーコードが印刷されたタグが医療材料に取り付けられることで、医療材料に2次元バーコードが付されるようにしてもよい。
【0064】
チェックリストの内容は、上述した一実施形態及び変形例における例に限定されることはない。例えば、チェックリストの内容として、薬剤や物品の適応外使用の制限が含まれてもよい。例えば、あるカテーテルの用途が健康保険の関係上、特定の疾患に限定される場合もあり得る。このような場合に、当該カテーテルに2次元バーコードを描画しておき、読取装置202で2次元バーコードの読み込んだ場合に展開されるチェックリストに、カテーテルの用途が特定の疾患であるか否かの確認項目が含まれるようにしてもよい。
【0065】
実施形態又は変形例で説明した処理の流れは、一部の処理の順序が入れ替わってもよいし、複数の処理が並列的に行われてもよい。また、上述した処理をどの装置や機能ブロックに分担させるかについては、適宜、変更可能である。
【0066】
上述した実施形態及び変形例の構成、方法、工程、形状、材料及び数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることや入れ替えることが可能である。また、本発明は、装置、方法、プログラム、システム等、任意の形態により実現することもできる。また、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1・・・医療管理システム
10・・・医療管理用サーバー
20・・・携帯型コンピューター
51・・・胸腔ドレナージ装置
51C・・・2次元バーコード
55・・・チェックリスト
201・・・制御部
202・・・読取装置