(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021990
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】部屋、及び浴槽
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20240208BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20240208BHJP
A47K 3/16 20060101ALI20240208BHJP
A47K 3/06 20060101ALI20240208BHJP
A47K 3/14 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E04H1/12 301
A47K4/00
A47K3/16
A47K3/06
A47K3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125243
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】西澤 研一
(72)【発明者】
【氏名】今村 竜太
(72)【発明者】
【氏名】安沢 智明
(72)【発明者】
【氏名】片桐 豪
【テーマコード(参考)】
2D132
2E025
【Fターム(参考)】
2D132CA00
2D132EA01
2D132GA00
2D132GA11
2E025BA01
2E025BC01
2E025BC02
(57)【要約】
【課題】浴槽浴を行うことができながら、浴槽を使用する目的以外の目的では空間効率よく利用できる部屋、及びこの部屋に好適な浴槽を提供する。
【解決手段】部屋1は、壁W1,W2,W3及び天井Cを備えている。部屋1は、壁W1,W2,W3及び天井Cの少なくとも一方に浴槽10を着脱自在である。部屋1は、浴槽10を取り付けて浴室として利用し、浴槽10を取り外して浴室以外に利用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁及び天井を備えており、
前記壁及び前記天井の少なくとも一方に浴槽を着脱自在であり、
前記浴槽を取り付けて浴室として利用し、
前記浴槽を取り外して浴室以外に利用する部屋。
【請求項2】
前記壁及び前記天井の少なくとも一方は、前記浴槽を取り付ける取付部材を有している請求項1に記載の部屋。
【請求項3】
前記取付部材は前記浴槽の一部を引っ掛けて取り付ける請求項2に記載の部屋。
【請求項4】
前記浴槽を取り外してシャワー室として利用する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の部屋。
【請求項5】
隣接する他の部屋との間に開閉自在の仕切部を備えており、
前記浴槽を取り外した際、前記仕切部を開放して他の部屋と共に一つの空間として利用する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の部屋。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の部屋に取り付けられる浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部屋、及び浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は浴室を開示している。この浴室には浴槽が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浴槽は、通常、浴室内において移動不能に配置される。このため、このような浴槽が配置される空間は、例えばシャワー浴等の浴槽を使用しない目的で利用しようとした場合、浴槽によって占有された領域の分内部の空間が狭くなってしまう。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、浴槽浴を行うことができながら、浴槽を使用する目的以外の目的で使用する際には空間効率よく利用できる部屋、及びこの部屋に好適な浴槽を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る部屋は、壁及び天井を備えており、前記壁及び前記天井の少なくとも一方に浴槽を着脱自在であり、前記浴槽を取り付けて浴室として利用し、前記浴槽を取り外して浴室以外に利用する。
【0007】
本開示の一実施形態に係る浴槽は、上記部屋に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る部屋を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り外した状態を示す。
【
図2】実施形態1に係る部屋を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図3】実施形態1に係る部屋及び洗面室を概略的に示す平面図である。
【
図4】実施形態1に係る部屋において、浴槽を取付部材に取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図6】実施形態1に係る浴槽を説明するための図である。
【
図7】実施形態1に係る部屋及び洗面室を概略的に示す平面図であり、仕切部を開放した状態を示す。
【
図8】実施形態2に係る部屋を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図9】実施形態2に係る部屋において、浴槽を水栓に取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図10】実施形態2に係る部屋において、浴槽を取付部材に取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図11】実施形態3に係る部屋を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図12】実施形態4に係る部屋を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図13】実施形態5に係る部屋を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図14】実施形態5に係る浴室において、浴槽を床に取り付けるための取付部材を示す斜視図である。
【
図15】他の実施形態に係る取付部材(その1)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図16】他の実施形態に係る取付部材(その2)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図18】他の実施形態に係る取付部材(その3)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図20】他の実施形態に係る取付部材(その4)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図22】他の実施形態に係る取付部材(その5)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図24】他の実施形態に係る取付部材(その6)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図26】他の実施形態に係る取付部材(その7)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図28】他の実施形態に係る取付部材(その8)を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。
【
図29】他の実施形態に係る浴槽側取付部(その1)を説明するための図であり、取付部材に取り付けられた状態を示す。
【
図31】他の実施形態に係る浴槽側取付部(その2)を説明するための図であり、取付部材に取り付けられた状態を示す。
【
図33】他の実施形態に係る浴槽側取付部(その3)を説明するための図であり、取付部材に取り付けられた状態を示す。
【
図35】他の実施形態に係る排水部(その1)を説明するための図である。
【
図36】他の実施形態に係る排水部(その2)を説明するための図である。
【
図37】他の実施形態に係る排水部(その3)を説明するための図である。
【
図38】他の実施形態に係る排水部(その4)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
本開示の部屋を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、部屋1として、シャワー室を例示する。
図1に示すように、部屋1は、通常はシャワー浴を行うための部屋である。
図2に示すように、部屋1は、浴槽10を設置することによって、浴槽浴を行う浴室として利用することができる。すなわち、部屋1は、浴槽10を取り付けて浴室として利用することができ、浴槽10を取り外すことによって浴室以外の用途であるシャワー室として利用できる。
【0010】
図1及び
図2に示すように、部屋1は、縦方向(上下方向)に長い直方体状をなしている。
図3に示すように、部屋1は、平面視における四方のうちの一方側において洗面室Bに隣接している。部屋1は、隣接する洗面室Bの空間に比べて小さな空間を形成している。具体的には、本実施形態に係る部屋1の具体的な大きさは、洗面室B側から見て、間口約1600mm、奥行き約1200mm、高さ約2200mmである。これに対し、洗面室Bは、その幅及び高さが部屋1の間口及び高さと同等の大きさで部屋1に連なる長さ約2000mmの空間を形成する。
【0011】
図1及び
図2に示すように、部屋1は、壁W1,W2,W3、天井C、及び床Fを備えている。部屋1は、平面視における洗面室Bに隣接する一方以外の三方において壁W1,W2,W3にそれぞれ囲まれている。部屋1は、上方及び下方において天井C及び床Fにそれぞれ封鎖されている。床Fの上面は、洗面室Bの床面と略面一に拡がっている。床Fの上面は、概ね平坦に形成されている。床Fには図示しない排水口に向かって湯水が流れるように僅かな水勾配が付けられている。壁W1,W2はそれぞれ洗面室Bの壁と略面一に繋がっている。
【0012】
図1から
図3に示すように、部屋1は仕切部Pを備えている。仕切部Pは、洗面室Bとの間を開閉自在に仕切る。仕切部Pは、部屋1の間口の略全体を開放することができる。仕切部Pを開放することによって、部屋1及び洗面室Bは、ひと繋がりとなった平面視長方形状の一つの空間を形成する。
【0013】
図1から
図3に示すように、部屋1はシャワー装置2を備えている。シャワー装置2は、壁W1,W2,W3のうち、壁W1に配置されている。シャワー装置2は、壁W1における壁W3寄りの位置に配置されている。シャワー装置2は、水栓3と、オーバーヘッドシャワー4と、ハンドシャワー5とを有している。水栓3は、壁W1の壁面に沿って水平方向に延びる長尺円筒状に形成されている。水栓3は、壁W1内の図示しない給水管及び給湯管に接続されている。水栓3は混合水栓である。水栓3は、水量の調整、湯と水を混合しての温度調整、吐止水等を行うことができる。本明細書では、部屋内に配置される水栓から供給される湯や水は、温度、混合割合等に関わらず湯水と表記する。
【0014】
図4に示すように、水栓3は吐水口3Aを形成している。吐水口3Aは、水栓3の軸方向に沿った長尺のスリット状に形成されている。吐水口3Aから吐出される吐水流は、横長な薄膜状をなす。水栓3は、部屋1に後述する浴槽10が取り付けられた状態において、吐水口3Aから浴槽10内に向けて湯水を吐出できる。水栓3は、吐水口3A、オーバーヘッドシャワー4、及びハンドシャワー5のいずれかを選択して湯水を吐出できる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、オーバーヘッドシャワー4は水栓3の上方に設けられている。オーバーヘッドシャワー4は、配管6を介して水栓3に接続されている。配管6は、水栓3から壁W1の壁面に沿って鉛直上方に延び、上端において部屋1内側に屈曲している。オーバーヘッドシャワー4は、この配管6の先端部に設けられている。ハンドシャワー5は、ホース7を介して水栓3に接続されている。ハンドシャワー5は、ホース7の長さの範囲で移動自在に使用できる。
【0016】
部屋1における壁W1,W2,W3には、後述する浴槽10が取り付けられる。本実施形態の場合、浴槽10は、三方の壁W1,W2,W3のうち、洗面室B側から見て左右に位置する一対の壁W1,W2に取り付けられる。浴槽10は、仕切部P(洗面室B)よりも壁W3に近い位置に配置される。
図3に示すように、浴槽10が一対の壁W1,W2に取り付けられた状態において、浴槽10から見た仕切部P側には、洗い場として利用可能なスペースが形成される。
【0017】
一対の壁W1,W2は、それぞれ取付部材20を有している。取付部材20は、浴槽10の一部を引っ掛けて取り付ける。本実施形態の場合、取付部材20は、上方に開口する側面視J字状のフック状をなしており、各壁W1,W2に固定されている。
図4に示すように、壁W1側の取付部材20は、水栓3の下方に2つ、水平方向に間隔を置いて配置されている。壁W2側の取付部材20は、壁W1側の取付部材20と同様の高さ、同様の間隔で2つ設けられている。すなわち、本実施形態の場合、取付部材20は、一対の壁W1,W2の一方につき2つ、合計4つ設けられている。浴槽10は、取付部材20におけるフック状の部分に相当する取付部21に取り付けられる。取付部21は、浴槽10における後述する浴槽側取付部10Aを着脱自在に取り付ける。
【0018】
浴槽10は、壁W1,W2,W3のうちの互いに対向する一対の壁W1,W2に対して着脱自在に取り付けられる。
図5に示すように、浴槽10は、浴槽側取付部10Aを有している。浴槽側取付部10Aは、壁W1,W2に備えられた取付部材20に対して着脱自在に取り付けられる。浴槽側取付部10Aは、本開示に係る浴槽の一部に相当し、取付部材20に引っ掛けられて取り付けられる。浴槽側取付部10Aは、浴槽10における上縁部に設けられている。すなわち、浴槽10は、上縁部において取付部材20に吊り下げられる形態である。浴槽10は、湯水を溜めるために変形する。浴槽10は、畳まれた状態、広がった状態等、形を自在に変えることができる。
【0019】
本実施形態の浴槽10は、シート部11と、ロープ12とを有して構成されている。シート部11は湯水を貯留する。シート部11はシート製である。シート部11は柔軟性を有している。シート部11は、柔軟な防水シートを裁断、接合等することによって、平面視長方形状をなす舟形状に形成されている。本実施形態のシート部11は、伸縮性には乏しく、湯水を溜めた状態において舟形の形状がある程度保持される。
【0020】
ロープ12は、シート部11における上縁部に沿って環状に設けられている。浴槽10の設置状態において、シート部11は、ロープ12に外縁部を吊り下げられる形態である。ロープ12は、浴槽側取付部10Aを構成する。ロープ12は、シート部11を補強する補強部としても機能する。これによって、シート部11は、外縁部が上縁部となり、中央部が下方に窪んだ舟形状をなす。湯水を貯留した状態において、シート部11の中央下面は、部屋1の床Fに接触する。これによって、浴槽10は、湯水を張った状態において、床Fにおいて大部分の荷重を支持させることができる。このため、浴槽10は、壁のみで支持されている場合と比較して、壁W1,W2における補強構造を簡素化できる。
【0021】
図6に示すように、ロープ12は、シート部11の上縁における折り返し部11Aに挿入されている。折り返し部11Aは、シート部11の外縁部を筒状に折り返して形成されている。折り返し部11Aは、シート部11の上縁部の全周に渡って形成されている。折り返し部11Aは、平面視長方形状をなす浴槽10の四隅において分断されている。ロープ12は、シート部11の四隅において外部に露出している。浴槽10は、このようにシート部11から露出したロープ12をフック状の取付部21に引っ掛けることによって、壁W1,W2に対して着脱自在に取り付けられる。折り返し部11Aは、折り返して2重構造とされていることから、シート部11の上縁部における補強部としても機能する。
【0022】
図5に示すように、本実施形態の浴槽10は排水部13を有している。排水部13は、防水性を有するスライド式ファスナーによって開閉自在な開口をシート部11の下部に設けて構成されている。これによって、浴槽10は、溜めた湯水を浴槽10の外部に容易に排出することができる。
【0023】
上記構成の部屋1の作用及び効果について説明する。部屋1は、通常の状態、すなわち浴槽10を取り付けていない状態(浴槽10を取り外した状態)では、
図1に示すように、床Fの全体を洗い場として利用してのシャワー浴を行うことができる。部屋1は、シャワー装置2におけるオーバーヘッドシャワー4、及びハンドシャワー5の少なくとも一方を用いてシャワー浴を行うことができる。部屋1は、間口1600mm、奥行き1200mm、という従来の一般的なシャワー室や、洗い場と比較して広い空間で、ゆったりと余裕をもってシャワー浴を楽しむことができる。浴槽10を取り外した状態でシャワー浴を行った場合、部屋1は、浴槽10に泡や湯水が付着することがない。このため、部屋1は、シャワー浴後の清掃が容易である。
【0024】
部屋1は、日常的に行われるシャワー浴のみならず、非日常の楽しみとして浴槽浴を行うことができる。部屋1において浴槽浴を行う際には、
図2に示すように、浴槽10を壁W1,W2に取り付ける。浴槽10は、壁W1,W2に対して着脱自在に取り付けられる。浴槽10は、畳まれた状態と広がった状態に形を変形自在なシート製である。このため、浴槽10は、設置及び収納を極めて容易に行うことができる。設置に際して、浴槽10は、四隅に露出したロープ12を浴槽側取付部10Aとして壁W1,W2の取付部21に取り付ける、という簡易な方法で設置することができる。
【0025】
浴槽10の設置状態において、浴槽10に湯水を溜めるには、シャワー装置2における水栓3を利用する。
図4に示すように、水栓3は、吐水口3Aから薄膜状の湯水を吐出することができる。浴槽10を用いた浴槽浴では、ユーザーは、吐水口3Aから吐出される薄膜状の湯水を浴槽10内の首筋や肩に浴びることができる。ユーザーは、吐水口3Aからの湯水を浴びながら、浴槽10に湯水を溜めることができる。浴槽10は、変形自在であることから、ユーザーの身体に合った形状になることができる。このため、浴槽10は、変形不能な浴槽と比較して、溜める湯水の量が少なくて済む。
【0026】
湯水を張った状態において、浴槽10の各部には、溜めた湯水の水圧による力が作用する。この水圧の作用によって、浴槽10の各部は変形し、シート部11、及びロープ12は張った状態になる。特に、浴槽10の上縁部を構成するロープ12は、手を置いても大きなブレが生じない程度にしっかりと張った状態になる。このため、浴槽10は、変形自在でありながら、湯水を溜めることによって変形が抑制され、ユーザーが浴槽10に出入りする際でも安定した形状を維持できる。
【0027】
浴槽10は、湯水を溜めた状態において、中央部の下面が床Fに接触する。このように浴槽10の下面が床Fに接触することによって、浴槽10に溜めた湯水の重さやユーザー自身の重さは、床Fで好適に支持される。これによって、取付部21に過剰な負荷がかかるのが抑制される。このため、部屋1は、例えば浴槽を壁や天井のみで支持する構造と比較して、取付部21が設けられた壁W1,W2側の補強構造を簡素化できる。
【0028】
浴槽浴が終了したら、浴槽10に溜めた湯水を排水部13から抜き、浴槽10を壁W1,W2から取り外す。具体的には、本実施形態の場合、排水部13におけるファスナーを開放して湯水を抜き、浴槽側取付部10Aであるロープ12を取付部21から取り外す。取り外した浴槽10は、洗浄、乾燥され、畳まれて収納される。浴槽10は、着脱自在であることから、従来の据え置き型の浴槽とは異なり、浴槽10の内外面全体を洗浄することができる。浴槽10は柔軟で変形自在なシート状材料製であることから、さながら洗濯物の感覚で、洗ったり、干したり、折り畳んだりすることができる。浴槽10を取り外した部屋1は、一面平坦な床Fが表れる。このため、部屋1は、床Fの掃除が容易であり、清潔さを維持し易い。浴槽10は、柔軟で変形自在であることから、例えば、床Fとの間に椅子やベンチ、クッション等を配置することによって、所望の姿勢で入浴することもできる。浴槽10は、床Fとの間にマッサージ機器やヒーターを配置してもよい。これらの機器は浴槽10の外側に配置されるため、防水性の必要がない。
【0029】
浴槽10は、柔軟なシート製であることから、FRP製等の従来の浴槽と比較して安価に製造することが容易である。このため、浴槽10は、ユーザー毎に専用のものを設けることも比較的容易である。この場合、浴槽10は、各ユーザーに応じて大きさ、デザイン等を自由に設定することができる。浴槽10は、FRP製等の従来の据え置き型の浴槽と比較して、輸送コストやリサイクル性等において有利である。このため、浴槽10は、環境負荷の低減を図ることができる。このような浴槽10は、1人のユーザーが複数所有することも比較的容易である。この場合、ユーザーは、洋服を選ぶように、気分や季節等に応じて複数の浴槽10から所望のものを選択して使用することができる。
【0030】
浴槽10は、着脱自在であることから、バリアフリー化にも寄与できる。例えば、取付部材20に取り付ける前の浴槽10を床Fに敷いておく。この状態でユーザーが浴槽10上に乗る。その後、浴槽10の浴槽側取付部10Aを取付部材20に取り付けて湯を張ることで、浴槽10の上端縁を跨ぐことなく入浴できる。このような入浴法によれば、浴槽10の上端縁を跨ぐことが困難なユーザーや、車椅子に乗ったユーザーも容易に浴槽浴を行うことができる。
【0031】
図7に示すように、部屋1は、仕切部Pを開放することによって、洗面室Bとひと繋がりとなった一つの空間を形成することができる。これによって形成される空間は、部屋1のみで形成される空間よりも大きな空間である。このように形成される空間は、例えばフィットネスルーム、ランドリールーム等、より広いスペースを必要とする用途で多目的に利用することができる。
【0032】
以上のように、実施形態1に係る部屋1は、壁W1,W2,W3及び天井Cを備えている。部屋1は、壁W1,W2,W3及び天井Cのうちの壁W1,W2に浴槽10を着脱自在である。部屋1は、浴槽10を取り付けて浴室として利用する。部屋1は、浴槽10を取り外して、浴室以外の用途であるシャワー室として使用する。
【0033】
部屋1は、シャワー浴を行う部屋でありながら、浴槽10を取り付けることによって浴槽浴を行う部屋である浴室として利用することができる。部屋1は、シャワー浴を行う場合には、浴槽10を取り外すことによって広い空間を形成することができる。すなわち、部屋1は、浴槽10が必要な場合にのみ浴槽10を取り付け、浴槽10が不要な目的で利用する場合には、浴槽10がない分、空間効率よく利用することができる。部屋1は防水パンを床に使用し防水処理された空間であることが望ましい。その場合、シャワー室のほか、防水空間であることを利用して観葉植物の手入れやホットヨガなど多目的に使用することができる。
【0034】
部屋1は、隣接する他の部屋としての洗面室Bとの間に、開閉自在の仕切部Pを備えている。部屋1は、仕切部Pを開放して洗面室Bと共に一つの空間として利用する。このように、部屋1は、部屋1のみの空間よりも大きな一つの空間を構成できる。このため、部屋1は、より広いスペースを必要とする更に異なる用途でも利用することができ、汎用性に優れる。
【0035】
実施形態1に係る浴槽10は、部屋1に好適に取り付けることができる。
【0036】
<実施形態2>
実施形態2に係る部屋について、図面を参照しつつ説明する。実施形態2に係る部屋201は、通常はシャワー浴を行うためのシャワー室である点は実施形態1と同様である。部屋201は、浴槽10を取り付けるための構成において、実施形態1の部屋1と相違する。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
実施形態2に係る部屋201は、
図8に示すように、取付部材としての水栓203と、取付部材220と、を有している。水栓203は、壁W1に取り付けられている。
図9に示すように、水栓203は、取付部221を有している点を除き、実施形態1の水栓3と同様の構成である。すなわち、水栓203は、水栓203の軸方向に沿った長尺スリット状の吐水口3Aを形成しており、横長な薄膜状の吐水流を吐出する。取付部221は、水栓203の長手方向の両端部に設けられている。取付部221は、円筒状をなす水栓203の周壁を溝状に縮径した形態である。水栓203における両端部の取付部221は、間に吐水口3Aを挟んだ形態である。
【0038】
取付部材220は、壁W2に取り付けられている。
図10に示すように、取付部材220は、水栓3を模した形状をなしている。詳細には、取付部材220は、壁W2の壁面に沿って水平方向に延びる長尺円筒状に形成されている。取付部材220における取付部221は、水栓203における取付部221と同様の構成である。すなわち、取付部材220における取付部221は、取付部材220の長手方向の両端部に設けられており、取付部材220の周壁を周方向に溝状に縮径した形態である。取付部材220は浴槽に入る際の手すりとして使用してもよい。
【0039】
上記構成の実施形態2に係る部屋201は、実施形態1と同様に、浴槽浴を行う場合等、必要な場合にのみ浴槽10を取り付け、浴槽10が不要な目的で利用する場合には、浴槽10がない分、空間効率よく利用することができる。部屋201は、壁W1側の取付部材として水栓203を設けたことによって、取付部材としてのみ機能する部材を低減できる。このため、部屋201は、全体としてすっきりとした意匠を実現できる。部屋201は、壁W2側の取付部材220を、水栓203を模した形状としたことによって、2つの取付部材の意匠が調和し、すっきりとした美観を実現できる。
【0040】
<実施形態3>
実施形態3に係る部屋301は、
図11に示すように、浴槽10が天井Cから吊り下げられている点において、上記各実施形態と相違する。以下の説明において、上記各実施形態と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
図11に示すように、部屋301は、壁W1側の取付部材として水栓203が設けられている点は実施形態2と同様である。部屋301は、もう一方の取付部材320が、壁W2でなく、天井Cに設けられている点で実施形態2とは異なる。すなわち、本実施形態において、浴槽10は、壁W1及び天井Cに着脱自在な形態である。
【0042】
取付部材320は、実施形態2の取付部材220と同様に、長尺円筒状に形成されている。取付部321は、取付部材320における長手方向の両端部に溝状に形成されている点も同様である。取付部材320は、天井Cから吊り下げられたロープ322の下端に接続されている。ロープ322の上端部は、天井や天井裏の図示しない補強用構造材や建築躯体等に接続され、浴槽10を吊り下げるのに十分な強度を確保している。
【0043】
上記構成の実施形態3に係る部屋301は、上記実施形態1と同様に、浴槽10が必要な場合にのみ浴槽10を取り付け、浴槽10が不要な目的で利用する場合には、浴槽10がない分、空間効率よく利用することができる。部屋301は、水栓203に取付部221を設けたことによってすっきりとした意匠を実現できる。部屋301は、天井Cに備えられた取付部材320に浴槽10が吊り下げられる。このため、部屋301は、浴槽10を設置して浴室として使用する際、吊り下げられた浴槽、という非日常感を演出できる。
【0044】
部屋301のように、浴槽10を壁と天井に取り付ける構成の場合、壁のみに取り付ける場合と比較して、浴槽の設置方向の自由度を向上させることができる。例えば、上記各実施形態のように、対向する一対の壁に対して浴槽を取り付ける場合、一対の壁は、適切な間隔で対向している必要がある。これに対し、壁と天井に取り付けられる浴槽の場合、壁同士の間隔に関わらず設置することができる。例えば、浴槽を壁と天井に取り付ける構成の場合、浴槽は、部屋301における壁W3のように、対向する壁のない壁に対しても取り付けることも可能である。
【0045】
<実施形態4>
実施形態4に係る部屋401は、
図12に示すように、浴槽10全体が1つの取付部材420によって天井Cから吊り下げられている点において実施形態3と相違し、他の点については実施形態3と同様である。取付部材420は、実施形態3の取付部材320よりも長い長尺円筒状に形成され、両端部に取付部421を設けている。本実施形態において、浴槽10は、4箇所の浴槽側取付部10Aの全てが取付部材420における両端部の取付部421のいずれかに取り付けられる。部屋401において、浴槽10は、湯水を張った状態においても床Fに接触しないように構成されている。取付部材420は、ロープ422によって天井Cに接続されている。ロープ422は、下端部において二股に分岐し、取付部材420の両端部に接続されている。これによって、取付部材420は、実施形態3の取付部材320と比較して、傾きに対する安定性が向上している。
【0046】
上記構成の実施形態4に係る部屋401は、上記実施形態1と同様に、浴槽10が必要な場合にのみ浴槽10を取り付け、浴槽10が不要な目的で利用する場合には、浴槽10がない分、空間効率よく利用することができる。部屋401は、1つの取付部材420のみで浴槽10を吊り下げて取り付けるので、すっきりとした意匠の部屋を実現できる。部屋401において、浴槽10は、湯水を張った状態においても床Fに接触しない。このため、部屋401における浴槽浴では、ユーザーは、浮遊しているような従来にない感覚の浴槽浴を行うことができる。
【0047】
<実施形態5>
実施形態5に係る部屋501は、
図13に示すように、浴槽10が床Fに配置される取付部材520に取り付けられる点において、上記各実施形態と相違する。以下の説明において、上記各実施形態と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
部屋501は、
図13に示すように、取付部材としての水栓203と、取付部材520と、を備えている。
図14に示すように、取付部材520は、実施形態2の取付部材220と同様に、長尺円筒状に形成されている。取付部材520は、取付部521を長手方向の両端部に溝状に形成されている点も取付部材220と同様である。取付部材520は、枠体522の上端部に取り付けられている。枠体522は、床F上に移動自在に設置される。
【0049】
上記構成の実施形態5に係る部屋501は、上記実施形態1と同様に、浴槽10が必要な場合にのみ浴槽10を取り付け、浴槽10が不要な目的で利用する場合には、浴槽10がない分、空間効率よく利用することができる。部屋501は、浴槽10を取り外した際、取付部521が設けられた取付部材520も所望の位置に移動させることができるので、浴槽10が不要な目的で利用する場合において一層空間効率よく利用することができる。
【0050】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。本開示において、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない範囲であればどのように組み合わされてもよい。
【0051】
本開示に係る部屋の構成、用途、大きさ、空間形状等は上記各実施形態に限定されない。部屋は、例えば、仕切部を壁とドアに変更し、洗面室と繋げて一つの空間として使用しない形態であってもよい。その場合に、洗面室側の壁に取付部材を配置してもよい。部屋は、浴槽浴やシャワー浴を行い得る機能、例えば防水機能、排水機能等を有していることが好ましい。部屋は、取付部材に対応する部屋の裏側(壁裏や天井裏)に補強用構造体を設けることが好ましい。
【0052】
本開示に係る水栓の構成、外形形状等は上記各実施形態に限定されない。水栓は、例えば、直線状、環状、シャワー状等、薄膜状以外の吐水形態で湯水を吐出するものであってもよい。水栓は、例えば、床に取り付けられるものであってもよいし、床及び壁の両方に取り付けられるものであってもよい。水栓が取付部を有する場合、取付部の構成は、上記各実施形態の構成に限定されない。水栓に設けられる取付部としては、例えば、水栓の外面の少なくとも一部に凹部、溝部等を形成する形態であってもよい。
【0053】
本開示に係る浴槽は、上記各実施形態に限らず、例えば、天井のみに取り付けられる形態であってもよい。浴槽は、その少なくとも一部が壁及び天井の少なくとも一方に着脱自在であればよい。
【0054】
本開示に係る浴槽の構成は、上記各実施形態に限定されない。浴槽は、上記各実施形態のように、シート部と、ロープ等の補強部と、を有して構成されていてもよいし、シート部のみを有して構成されていてもよい。本開示に係る浴槽において、湯水を溜めた状態で中央下面が床に接触することは必須ではない。浴槽は、湯水を溜めた状態において、中央下面に限らず、下面の少なくとも一部が床に接触していることが好ましい。浴槽は、変形自在であるものに限らず、例えばFRP製等の変形不能なものであってもよい。
【0055】
シート部を構成するシートとしては、例えば、樹脂フィルム等の防水材と、帆布等の強度を確保するための材料とを積層したものや、帆布等の材料に防水性の樹脂、ゴム等を含侵させたもの等が挙げられる。シート部の形状等は上記各実施形態に限定されない。シート部は、上述の柔軟性に優れ、且つ伸縮性に乏しいシート材からなるものに限らず、例えば、柔軟性及び伸縮性の両方に優れたシート材からなるものであってもよい。シート部は、伸縮性に乏しく、湯水を溜めた状態において形状がある程度保持されるものであることが好ましい。シート部は、例えば、伸長することによって湯水を溜め得る形状に変形するものであってもよい。シート部は防水性を有するものが望ましいが、これに限定されない。
【0056】
浴槽が補強部を有する場合、補強部の構成等は上記各実施形態に限定されない。補強部としては、上記各実施形態において例示したロープ等の柔軟性を有するものに限らず、例えば樹脂製や金属製の筒状体、棒状体、線状体、板材等、柔軟性に乏しく剛性に優れたものであってもよい。
【0057】
本開示に係る浴槽側取付部の構成は、上記各実施形態に限定されない。浴槽側取付部は、シート部の一部によって構成されていてもよいし、ロープ等のシート部とは別の部材によって構成されていてもよい。浴槽側取付部は、上記各実施形態において例示した環状、筒状の他、フック状、袋状等、種々の形態を採用できる。浴槽側取付部は、例えば、ロープ等の別部材を介して取付部材に取り付けられる形態であってもよい。浴槽側取付部の数は、上記各実施形態に限定されない。浴槽側取付部は、例えば3箇所以上設けられているとよい。この場合、浴槽を安定的に取り付けることができる。
【0058】
本開示に係る取付部の個数、構成等は、上記各実施形態に限定されない。取付部は、例えば、浴槽側取付部の個数よりも多く設けられていてもよい。この場合、浴槽を取り付ける際に、ユーザーの好み等に応じて複数の取付部の中からいくつかを選択して浴槽側取付部を取り付けることによって、浴槽の配置、形状等を選択的に変更することができる。取付部は、上記各実施形態において例示したフック状、溝状等に限らず、例えば、棒状、環状等、種々の形態を採用することができる。
【0059】
本開示に係る取付部材は、例えば
図15に示すような形態であってもよい。
図15において、取付部材620は、取付部621を有している。取付部621は、長尺円筒状をなす取付部材620の両端部の間に設けられている。取付部材620は、例えば
図15に示すように、長手方向の両端部に形成した溝状部分において、2つの環状のロープ622によって着脱自在に支持され得る。2つの環状のロープ622は、例えば、
図15に示すように、吊下部材623から吊り下げられ得る。吊下部材623は、天井Cから吊り下げられた棒状部の下端に円環を設けた吊り輪状に構成されている。吊下部材623の上端部は、天井や天井裏の図示しない補強用構造材や建築躯体等に接続される。吊下部材623は、天井に限らず、例えば壁に取り付けられていてもよい。
【0060】
上記構成の取付部材620に対し、浴槽は、
図15に示すような浴槽側取付部610Aを有して取付部621に取り付けられ得る。浴槽側取付部610Aは、浴槽610の長手方向の端部を折り返して筒状をなす形態である。浴槽側取付部610Aは、一端側から取付部材620を軸方向に貫通させることによって取付部621に取り付けられる。取付部材620は、浴槽610を補強する補強材としても機能する。
【0061】
本開示に係る取付部材は、例えば、
図16に示すような形態であってもよい。
図16において、取付部材720は取付部721を有している。取付部721は、上述の取付部621と同様に、長尺円筒状をなす取付部材720の両端部の間に設けられている。取付部材720は、例えば長手方向の両端部に形成した溝状部分において、対向する一対の壁に設けられた支持部722にそれぞれ支持される。支持部722は、
図17に示すように、上方に開口した直方体状の箱状をなすとともに、一面において取付部材720の端部が挿入される切欠き状の部分を形成している。取付部材720は、両端部が支持部722に支持された状態において、一対の壁の間に架け渡される。この状態において、取付部材720は、浴槽710の長手方向に沿って配置される形態である。
【0062】
上記構成の取付部材720に対し、浴槽710は、短手方向の端部、すなわち平面視における長辺において取付部721に取り付けられ得る。浴槽710は、浴槽側取付部710Aを有している。浴槽側取付部710Aは、浴槽710における短手方向の端部を筒状に折り返して形成されている。浴槽側取付部710Aは、一端から取付部材720を軸方向に貫通させることによって取付部721に取り付けられる。このような取付部材720は、浴槽710を補強する補強材としても機能する。
【0063】
本開示に係る取付部材は、例えば、
図18に示すような形態であってもよい。
図18において、取付部材820は取付部821を有している。取付部821は、円柱状をなす取付部材820の両端部の間に設けられている。取付部材820は、例えば長手方向の両端部において、レール部材822に支持され得る。レール部材822は、断面略U字状をなす溝形鋼状の部材である。レール部材822は、壁面に沿って上下方向に延びて設けられる。レール部材822は、上下方向に並んだ複数の孔822Aを形成している。孔822Aには取付部材820が選択的に挿入される。ユーザーは、浴槽810が所望の高さになるように、所望の高さの複数の孔822Aを選択して取付部材820を挿入する。
【0064】
取付部材820は、
図18及び
図19に示すように、両端部820Aにおいて、L字状に屈曲して形成され得る。孔822Aは、取付部材820を挿入可能な大きさで形成される。このような取付部材820及び孔822Aの組み合わせによって、取付部材820の孔822Aからの抜け止め機能を付与することができる。孔822Aは、例えば
図19に示すような長孔状に形成され得る。これによって、取付部材820は、抜去の際に孔822Aに対する軸周りの方向性の制約が生じるため、一層確実な抜け止め機能を付与できる。
【0065】
上記構成の取付部材820に対し、浴槽810は、
図18及び
図19に示す浴槽側取付部810Aにおいて取付部材820に取り付けられる。浴槽側取付部810Aは、浴槽810の四隅において筒状をなすように折り返して形成されている。浴槽810を取り付ける際には、所望の孔822Aに合わせた高さ位置においてレール部材822の溝内に配置し、この状態でレール部材822の側方から、孔822A、浴槽側取付部810A、孔822Aの順に、取付部材820を挿入する。
【0066】
レール部材としては、例えば、
図20及び
図21に示すような形態であることができる。
図20及び
図21に示すレール部材922は、レール部材822と同様に、上下方向に複数の孔922Aを形成している。複数の孔922Aは、略円形状の内周形状をなしている。複数の孔922Aは、上下方向において、スリット922Bによって連結されている。スリット922Bは、孔922Aの内径よりも小さな幅で形成されている。
【0067】
このようなレール部材922に対し、取付部材920は、
図21に示すように、円柱状をなし、レール部材922におけるいずれかの孔922Aに挿入される。取付部材920における取付部921は、両端部の間の部分に相当する。取付部材920は、孔922Aの内径と同等の外径を有し、孔922Aに挿入自在である。取付部材920の両端部920Aは、スリット922Bの幅と同等の大きさの2面幅で形成されている。これによって、取付部材920は、レール部材922から取り外すことなく、スリット922Bを介して、レール部材922を上下方向に移動して所望の孔922Aに取り付けることができる。このため、浴槽側取付部810Aは、取付部921に取り付けられた状態のまま、高さ位置を変更することができる。この場合、浴槽を所望の高さ位置に容易に変更できるのみならず、例えば、浴槽内の湯水を排水する際にも有効である。すなわち、上記構成によれば、浴槽側取付部810Aのうち1か所の高さを下げるだけで浴槽に排水部を設けることなく、浴槽内の湯水を容易に排水することができる。
【0068】
本開示に係る取付部材は、例えば、
図22及び
図23に示すような構成で設けられてもよい。
図22及び
図23に示す取付部1021は、取付部材としての第1棒状部材1020A及び第2棒状部材1020Bによって構成されている。第1棒状部材1020A及び第2棒状部材1020Bは、それぞれ壁面に平行且つ水平方向に延びる形態で、上下方向に並んで配置されている。第1棒状部材1020Aは、壁に対して固定的に取り付けられる。第2棒状部材1020Bは、第1棒状部材1020Aの上方において第1棒状部材1020Aに対して上下方向に平行移動自在に設けられる。
図22に示す浴槽1010は、浴槽側取付部1010Aにおいて取付部1021に取り付けられる。詳細には、浴槽側取付部1010Aは、S字状に巻き付けられるとともに2つの棒状部材1020A,1020Bに上下方向から挟み込まれることによって、取付部1021に取り付けられる。この場合、2つの棒状部材1020A,1020Bによって浴槽側取付部1010Aが挟み込まれる強さを向上させる方向に浴槽の重さが作用するため、一層強固な取り付けを実現できる。
図23に示すように、浴槽側取付部1010Aの端部には折り返し部1011Aが形成されている。浴槽側取付部1010Aにおいて、折り返し部1011Aは、取付部1021からの抜け止めとして機能する。
【0069】
本開示に係る取付部材は、例えば、
図24及び
図25に示すような形態であってもよい。
図24及び
図25において、取付部材1120は取付部1121を有している。取付部1121は、取付部材1120における環状をなす部分である。浴槽側取付部は、例えば
図25に示すような浴槽側取付部1110Aとしてもよい。浴槽側取付部1110Aは、浴槽1110の上端部の一部を外側方向に延伸させるとともに、延伸端において袋状に形成した形態である。浴槽側取付部1110Aには、
図25に示す球状体1110Bが挿入される。球状体1110Bは、取付部1121の最大内径よりも大きな外径を有し、且つある程度の剛性を有している。浴槽側取付部1110Aを取付部1121に取り付けるにあたっては、環状をなす取付部1121に対して浴槽側取付部1110Aを貫通させたのち、先端の袋状の部分に球状体1110Bを入れる。これによって、球状体1110Bが取付部1121に引っ掛かって抜け止めされ、浴槽側取付部1110Aが取付部1121に取り付けられた状態が維持される。
【0070】
上述のような環状をなす取付部に対しては、種々の形態の浴槽側取付部を取り付けることができる。例えば、
図26及び
図27に示す浴槽側取付部1210Aは、先端が袋状に形成されていない点を除き、上記浴槽側取付部1110Aと同様の構成である。浴槽側取付部1210Aは、環状をなす取付部1121を貫通したのち、先端部をリング1210Bに結び付けられる。リング1210Bは、球状体1110Bと同様に、取付部1121の最大内径よりも大きな外径を有し、且つある程度の剛性を有しているため、浴槽側取付部1210Aが取付部1121に取り付けられた状態を維持することができる。このような浴槽側取付部1210Aは、例えば取付部1121のような環状をなす取付部や、フック状をなす取付部等に対して単に結び付けるだけでも取り付け可能である。この場合、結び方を変えるだけで浴槽の形状を調整することが可能である。
【0071】
取付部材は、例えば、
図28に示すような形態であってもよい。
図28において、取付部材1320は、磁力によって壁の所望の位置に着脱自在に取り付けることができる構成である。取付部材1320は、略水平方向に延びる軸周りに回転自在に支持部材1322を連結している。支持部材1322は、上端部において取付部材1320に軸支されている。支持部材1322は、取付部材1320から下方に延びる棒状をなすとともに、下端部に設けられた床支持部1322Aにおいて床Fに接触する。支持部材1322は、取付部材1320の高さ位置に応じて取付部材1320に対する角度を変更した場合でも、床支持部1322Aを床Fに対して接触させた状態を維持できる。このような取付部材1320に対し、取付部は、
図28に示すような環状をなす形態に限らず、上述した種々の形態で設けることができる。
【0072】
床支持部1322Aは、例えば、床Fに対する滑り止め構造が設けられているとよい。滑り止め構造としては、例えば、床Fに吸着する吸盤を設けた構造や、ゴムやエラストマー等のシート材を床Fとの接触面に設けた構造等を採用し得る。滑り止め構造としては、例えば、
図28に示すように、床F上に板状の滑り止め部材F1を敷き、この滑り止め部材F1の端部に床支持部1322Aを接触させる構成であってもよい。この場合、滑り止め部材F1は、湯水を溜めた際に浴槽の中央下面が接触するようにしておくとよい。これによって、滑り止め部材F1自体の位置ずれを抑制でき、支持部材1322における床支持部1322Aと、これに連結された取付部材1320の位置ずれを効果的に防止できる。
【0073】
浴槽側取付部としては、例えば
図29及び
図30に示すような形態であってもよい。
図29及び
図30に示す浴槽側取付部1410Aは、シート部1411の一部によって構成された形態である。詳細には、浴槽側取付部1410Aは、浴槽1410におけるシート部1411の外縁部に孔を形成し、この孔の周縁部をハトメ1414によって補強している。シート部1411は、浴槽側取付部1410Aを設けた部分において折り返して重ねたことによって補強されている。このような浴槽側取付部1410Aは、
図29及び
図30に示すように、上記実施形態1と同様のフック状の取付部材20に取り付けられ得る。
【0074】
浴槽側取付部としては、例えば
図31及び
図32に示すような形態であってもよい。
図31及び
図32に示す浴槽側取付部1510Aは、浴槽1510におけるシート部1511の外縁部に取り付けられる浴槽側取付部材1514に設けられた形態である。浴槽側取付部材1514は、例えば樹脂等による一体成形品として形成され得る。浴槽側取付部材1514は、環状部1514Aと、保持部1514Bと、を有する。環状部1514Aは浴槽側取付部1510Aを構成する。環状部1514Aはリング状をなしており、フック状等の取付部材に取り付けられ得る。保持部1514Bは、環状部1514Aに連結され、シート部1511の外縁部を保持する。保持部1514Bは、複数の突起を形成した板状部材、及びこれらの複数の突起が嵌合する孔を形成した他の板状部材によって、シート部1511の外縁部を挟み込んで保持する。保持部1514Bにおける2つの板状部材は、例えば一端側において連結され、弾性変形することによってヒンジ状に開閉可能である。シート部1511における外縁部は、浴槽側取付部材1514を取り付ける部分において折り返して重ねたことによって補強されている。浴槽側取付部材1514は、例えば、環状部1514Aに代えて、フック状部等の他の形態の浴槽側取付部を構成するものを有していてもよい。
【0075】
浴槽側取付部としては、例えば
図33及び
図34に示すような形態であってもよい。
図33及び
図34に示す浴槽側取付部1610Aは、浴槽1610におけるシート部1611の外縁部に取り付けられる浴槽側取付部材1614に設けられた形態である。浴槽側取付部材1614は、
図33及び
図34に示すように、長尺棒状をなし、シート部1611の外縁部が巻き付けられることによってシート部1611に着脱不能に固定されている。浴槽側取付部材1614の両端部は、シート部1611の外縁から突出して露出している。浴槽側取付部1610Aは、浴槽側取付部材1614における両端部のシート部1611から露出した部分に設けられている。浴槽側取付部1610Aは、溝状をなしており、フック状、環状等の取付部材に取り付けられ得る。
【0076】
本開示に係る浴槽が排水部を有することは必須ではない。浴槽が排水部を有する場合、排水部の構成等は上記各実施形態に限定されない。排水部は、例えば、浮き輪等に用いられる樹脂製の栓、従来の浴槽に用いられるゴム栓、水筒に用いられる栓等の既知の種々の栓を有する排水部を採用することができる。
【0077】
排水部としては、例えば、
図35に示すような形態であってもよい。
図35に示す排水部1713は、浴槽1710に備えられている。浴槽1710は、上記各実施形態とは異なり、シート部1711のみで上縁部が構成されている。すなわち、浴槽1710は、シート部1711の上縁部に沿った環状のロープを備えない形態である。排水部1713は、上記各実施形態と同様の防水性を有するスライド式ファスナーを有して構成されている。排水部1713におけるファスナーは、シート部1711の上部に設けられている。排水部1713は、ファスナーを下方にスライドさせることによって、シート部1711の上縁部を分断して開放することができる。
【0078】
図35に示すように、排水部1713におけるファスナーの下端は、浴槽1710における想定水面高さよりも僅かに高い位置に設定されている。すなわち、排水部1713は、浴槽1710に通常の量の湯水を溜めた状態では水没することがない。このため、排水部1713は、ファスナーの防水性の高さに関わらず、湯水の漏出を回避できる。シート部1711は、ファスナーを開放すると、上縁部の外周長が大きくなって弛みが生じる。このため、浴槽1710は、排水部1713によって、ある程度の量の湯水を排出することができる。浴槽1710内に残った湯水は、浴槽1710を取り外して排出する。排水部1713を用いてある程度の量の湯水を排出した浴槽1710は、排出前よりも軽くなっているため、取り外しが容易である。上述のように、浴槽1710は、シート部1711の上縁部に沿った環状のロープを備えていない形態である。浴槽1710は、他の形態として、例えば、シート部1711の長辺のみに補強用、浴槽側取付部用等の目的でロープを配置し、ファスナーをロープの配置されていない短辺側の上部に設けることも可能である。
【0079】
排水部としては、例えば、
図36に示すような形態であってもよい。
図36に示す排水部1813は、シート部1811に一体に設けられている。排水部1813は、内面が粘着性の材質等で密着し、水が容易に管内から排出されない様閉塞する。浴槽1810内に湯水が溜められた場合には、水圧によって更に加圧され閉塞されることで湯水が排出されることを防止する。排水部1813は、水圧に逆らって開放させることによって、浴槽1810内の湯水を外部に排出することができる。
【0080】
排水部としては、例えば、
図37に示すような形態であってもよい。
図37に示す排水部1913は、シート部1911に一体に設けられている。排水部1913は、浴槽1910の外側に突出する管状に形成されている。管状をなす排水部1913は屈曲自在である。排水部1913は、その先端が浴槽1910内に湯水が溜められた場合の水面高さよりも上方に配置され得る長さで形成されている。排水部1913は、先端部を水面よりも上方に配置することによって湯水が排出されるのを防止でき、浴槽1910内に湯水が溜められた状態を維持できる。排水部1913は、先端部を水面よりも下方に配置することによって、浴槽1910内の湯水を容易に排出できる。
【0081】
排水部としては、例えば、
図38に示すような形態であってもよい。
図38に示す排水部2013は、浴槽2010に備えられている。排水部2013は、シート部2011の底部に形成した開口2013Aをフロート弁2013Bによって閉塞する形態である。フロート弁2013Bは、浴槽2010内に湯水が溜められた状態において、水圧によって開口2013Aを閉塞することができる。フロート弁2013Bは、壁面取付の操作レバー2013Cに対して玉鎖を介して連結されている。フロート弁2013Bは、操作レバー2013Cを操作することによって、開口2013Aを開放する。開口2013Aを開放した状態のフロート弁2013Bは、浮力によってその状態を維持する。フロート弁2013Bは、浴槽2010内の湯水が排出されると、再び開口2013Aを閉塞する。
【0082】
最後に、本開示の主な実施態様を以下に示す。
[1]
壁及び天井を備えており、
前記壁及び前記天井の少なくとも一方に浴槽を着脱自在であり、
前記浴槽を取り付けて浴室として利用し、
前記浴槽を取り外して浴室以外に利用する部屋。
[2]
前記壁及び前記天井の少なくとも一方は、前記浴槽を取り付ける取付部材を有している上記[1]に記載の部屋。
[3]
前記取付部材は前記浴槽の一部を引っ掛けて取り付ける上記[2]に記載の部屋。
[4]
前記浴槽を取り外してシャワー室として利用する上記[1]から[3]までのいずれかに記載の部屋。
[5]
隣接する他の部屋との間に開閉自在の仕切部を備えており、
前記浴槽を取り外した際、前記仕切部を開放して他の部屋と共に一つの空間として利用する上記[1]から[4]までのいずれかに記載の部屋。
[6]
上記[1]から[5]までのいずれかに記載の部屋に取り付けられる浴槽。
【符号の説明】
【0083】
1,201,301,401,501…部屋、10,610,710,810,1010,1110,1410,1710,1810,1910,2010…浴槽、20,220,320,420,520,620,720,820,920,1120,1320…取付部材、1020A,1020B…棒状部材(取付部材)、B…洗面室(隣接する他の部屋)、C…天井、P…仕切部、W1,W2,W3…壁