特開 2024-21992 浴室、及び浴槽

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024021992

(43)【公開日】2024-02-16

(54)【発明の名称】浴室、及び浴槽

(51)【国際特許分類】

   A47K 3/06 20060101AFI20240208BHJP

   A47K 4/00 20060101ALI20240208BHJP

【ＦＩ】

A47K3/06

A47K4/00

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022125245

(22)【出願日】2022-08-05

(71)【出願人】

【識別番号】504163612

【氏名又は名称】株式会社ＬＩＸＩＬ

(74)【代理人】

【識別番号】110000497

【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】長瀬 徳彦

(72)【発明者】

【氏名】西澤 研一

(72)【発明者】

【氏名】今村 竜太

(72)【発明者】

【氏名】安沢 智明

(72)【発明者】

【氏名】片桐 豪

【テーマコード（参考）】

2D132

【Ｆターム（参考）】

2D132CA00

2D132GA00

(57)【要約】

【課題】浴槽を使用する目的以外の目的で使用する際に空間効率よく利用できる浴室、及びこの浴室に好適な浴槽を提供する。
【解決手段】浴室１は天井Ｃを備えている。天井Ｃは浴槽１０を取り付ける。浴槽１０は、湯水を溜めるために変形する。浴槽１０は、畳まれた状態と広がった状態に形を変形自在であり、広がった状態において湯水を溜め得る。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

湯水を溜めるために変形する浴槽を取り付ける天井を備えている浴室。

【請求項2】

前記浴槽は、畳まれた状態と広がった状態に形を変形自在であり、広がった状態において湯水を溜める請求項１に記載の浴室。

【請求項3】

前記天井は、前記浴槽を着脱自在に取り付ける取付部材を有している請求項１及び請求項２のいずれか一項に記載の浴室。

【請求項4】

前記取付部材は、前記浴槽の上縁部の少なくとも一部を引っ掛けて取り付ける請求項３に記載の浴室。

【請求項5】

請求項１及び請求項２のいずれか一項に記載の浴室に取り付けられる浴槽。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、浴室、及び浴槽に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１は従来の浴室を開示している。この浴室には、変形性を有する浴槽本体が配置されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００７－２６０１８０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１において、浴槽本体は、床から延びる支持部材によって支持されている。このため、支持部材は、浴槽本体にかかっている入浴者と湯水の荷重を床から延びる支持部材のみで支えることになる。この場合、支持部材は、相応の強度を要求され、大型化が懸念される。支持部材が大型化すると、例えばシャワー浴等、浴槽を使用しない目的で浴室を利用しようとした場合、仮に浴槽本体を畳むなどしてコンパクトに変形させたとしても、床の支持部材が邪魔になってしまう。

【0005】

本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、浴槽を使用する目的以外の目的で使用する際に空間効率よく利用できる浴室、及びこの浴室に好適な浴槽を提供することを解決すべき課題とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る浴室は、湯水を溜めるために変形する浴槽を取り付ける天井を備えている。

【0007】

本開示の一実施形態に係る浴槽は、上記浴室に取り付けられる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】実施形態１に係る浴室を概略的に示す斜視図である。

【図2】実施形態１に係る浴室を概略的に示す斜視図であり、浴槽を取り外した状態を示す。

【図3】実施形態１に係る浴室及び洗面室を概略的に示す平面図である。

【図4】実施形態１に係る浴室において、浴槽を取付部材に取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。

【図5】実施形態１に係る浴室において、浴槽を水栓に取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。

【図6】実施形態１に係る浴槽を示す斜視図である。

【図7】実施形態１に係る浴槽を説明するための図である。

【図8】実施形態１に係る浴室及び洗面室を概略的に示す平面図であり、仕切部を開放した状態を示す。

【図9】実施形態２に係る浴室を概略的に示す斜視図である。

【図10】他の実施形態に係る取付部材（その１）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図11】他の実施形態に係る取付部材（その２）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図12】他の実施形態に係る取付部材（その３）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図13】図１２の構成を分解して示す図である。

【図14】他の実施形態に係る取付部材（その４）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図15】図１４の構成の側断面を示す図である。

【図16】他の実施形態に係る取付部材（その５）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図17】図１６の構成を分解して示す図である。

【図18】他の実施形態に係る取付部材（その６）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図19】図１８の構成を分解して示す図である。

【図20】他の実施形態に係る取付部材（その７）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図21】図２０の構成を分解して示す図である。

【図22】他の実施形態に係る取付部材（その８）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図23】他の実施形態に係る取付部材（その９）を説明するための図であり、浴槽を取り付けた状態を示す。

【図24】他の実施形態に係る浴槽側取付部（その１）を説明するための図であり、取付部材に取り付けられた状態を示す。

【図25】図２４の構成を分解して示す図である。

【図26】他の実施形態に係る浴槽側取付部（その２）を説明するための図であり、取付部材に取り付けられた状態を示す。

【図27】図２６の構成を分解して示す図である。

【図28】他の実施形態に係る浴槽側取付部（その３）を説明するための図であり、取付部材に取り付けられた状態を示す。

【図29】図２８の構成を分解して示す図である。

【図30】他の実施形態に係る排水部（その１）を説明するための図である。

【図31】他の実施形態に係る排水部（その２）を説明するための図である。

【図32】他の実施形態に係る排水部（その３）を説明するための図である。

【図33】他の実施形態に係る排水部（その４）を説明するための図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

＜実施形態１＞
本開示の浴室、及び浴槽を具体化した実施形態１について、図面を参照しつつ説明する。図１及び図２に示すように、浴室１は、縦方向（上下方向）に長い直方体状をなしている。図３に示すように、浴室１は、平面視における四方のうちの一方側において洗面室Ｂに隣接している。浴室１は、隣接する洗面室Ｂの空間に比べて小さな空間を形成している。具体的には、本実施形態に係る浴室１の具体的な大きさは、洗面室Ｂ側から見て、間口約１６００ｍｍ、奥行き約１２００ｍｍ、高さ約２２００ｍｍである。これに対し、洗面室Ｂは、その幅及び高さが浴室１の間口及び高さと同等の大きさで浴室１に連なる長さ約２０００ｍｍの空間を形成する。

【0010】

図１及び図２に示すように、浴室１は、壁Ｗ１，Ｗ２，Ｗ３、天井Ｃ、及び床Ｆを備えている。浴室１は、平面視における洗面室Ｂに隣接する一方以外の三方において壁Ｗ１，Ｗ２，Ｗ３にそれぞれ囲まれている。浴室１は、上方及び下方において天井Ｃ及び床Ｆにそれぞれ封鎖されている。床Ｆの上面は、洗面室Ｂの床面と略面一に拡がっている。床Ｆの上面は、概ね平坦に形成されている。床Ｆには図示しない排水口に向かって湯水が流れるように僅かな水勾配が付けられている。壁Ｗ１，Ｗ２はそれぞれ洗面室Ｂの壁と略面一に繋がっている。

【0011】

図１から図３に示すように、浴室１は仕切部Ｐを備えている。仕切部Ｐは、洗面室Ｂとの間を開閉自在に仕切る。仕切部Ｐは、浴室１の間口の略全体を開放することができる。仕切部Ｐを開放することによって、浴室１及び洗面室Ｂは、ひと繋がりとなった平面視長方形状の一つの空間を形成する。

【0012】

図１から図３に示すように、浴室１はシャワー装置２を備えている。シャワー装置２は、壁Ｗ１，Ｗ２，Ｗ３のうち、壁Ｗ１に配置されている。シャワー装置２は、壁Ｗ１における壁Ｗ３寄りの位置に配置されている。シャワー装置２は、水栓３と、オーバーヘッドシャワー４と、ハンドシャワー５とを有している。水栓３は、壁Ｗ１の壁面に沿って水平方向に延びる長尺円筒状に形成されている。水栓３は、壁Ｗ１内の図示しない給水管及び給湯管に接続されている。水栓３は混合水栓である。水栓３は、水量の調整、湯と水を混合しての温度調整、吐止水等を行うことができる。本明細書では、浴室内に配置される水栓から供給される湯や水は、温度、混合割合等に関わらず湯水と表記する。

【0013】

図４に示すように、水栓３は吐水口３Ａを形成している。吐水口３Ａは、水栓３の軸方向に沿った長尺のスリット状に形成されている。吐水口３Ａから吐出される吐水流は、横長な薄膜状をなす。水栓３は、浴室１に後述する浴槽１０が取り付けられた状態において、吐水口３Ａから浴槽１０内に向けて湯水を吐出できる。水栓３は、吐水口３Ａ、オーバーヘッドシャワー４、及びハンドシャワー５のいずれかを選択して湯水を吐出できる。

【0014】

図１及び図２に示すように、オーバーヘッドシャワー４は水栓３の上方に設けられている。オーバーヘッドシャワー４は、配管６を介して水栓３に接続されている。配管６は、水栓３から壁Ｗ１の壁面に沿って鉛直上方に延び、上端において浴室１内側に屈曲している。オーバーヘッドシャワー４は、この配管６の先端部に設けられている。ハンドシャワー５は、ホース７を介して水栓３に接続されている。ハンドシャワー５は、ホース７の長さの範囲で移動自在に使用できる。

【0015】

浴室１における天井Ｃには、後述する浴槽１０が取り付けられる。浴槽１０は、天井Ｃから吊り下げられる形態である。本実施形態の場合、浴槽１０は、天井Ｃと、壁Ｗ１と、に取り付けられる。図３に示すように、浴槽１０は、浴室１における洗面室Ｂ側から見た奥まった位置であって仕切部Ｐ（洗面室Ｂ）よりも壁Ｗ３に近い位置に配置される。浴槽１０が天井Ｃ及び壁Ｗ１に取り付けられた状態において、浴槽１０から見た仕切部Ｐ側には、洗い場として利用可能なスペースが形成される。

【0016】

天井Ｃは取付部材２０を有している。取付部材２０は、浴槽１０の一部を引っ掛けて取り付ける。本実施形態の場合、取付部材２０は、図５に示すように、長尺円筒状に形成されている。取付部２１は、取付部材２０における長手方向の両端部に溝状に形成されている。取付部２１は、浴槽１０における後述する浴槽側取付部１０Ａを着脱自在に取り付ける。取付部材２０は、天井Ｃから吊り下げられたロープ２２の下端に接続されている。ロープ２２の上端部は、天井や天井裏の図示しない補強用構造材や建築躯体等に接続され、浴槽１０を吊り下げるのに十分な強度を確保している。

【0017】

本実施形態の場合、水栓３は、壁Ｗにおいて、浴槽１０を取り付ける取付部材としても機能する。取付部材としての水栓３は、取付部材２０と同様に、浴槽１０の一部を引っ掛けて取り付ける。図４に示すように、水栓３は、取付部２１を有している。取付部２１は、水栓３の長手方向の両端部に設けられている。取付部２１は、円筒状をなす水栓３の周壁を溝状に縮径した形態である。水栓３における両端部の取付部２１は、間に吐水口３Ａを挟んだ形態である。

【0018】

上述のように、浴槽１０は、天井Ｃ及び壁Ｗ１に対して着脱自在に取り付けられる。すなわち、浴室１は、浴槽１０を使用しない目的で浴室１を使用する際には、浴槽１０を取り外して使用することが可能である。例えば、浴室１は、図２に示すように、浴槽１０を取り外すことによって、シャワー室として好適に利用できる。

【0019】

浴槽１０は、天井Ｃ及び壁Ｗ１対して着脱自在に取り付けられる。図６に示すように、浴槽１０は、浴槽側取付部１０Ａを有している。浴槽側取付部１０Ａは、天井Ｃに備えられた取付部材２０、及び壁Ｗ１に備えられた水栓３に対して着脱自在に取り付けられる。浴槽側取付部１０Ａは、浴槽１０における上縁部に設けられている。浴槽側取付部１０Ａは、本開示に係る浴槽の上縁部の少なくとも一部に相当し、取付部材２０に引っ掛けられて取り付けられる。すなわち、浴槽１０は、上縁部の少なくとも一部である浴槽側取付部１０Ａにおいて、取付部材２０、及び水栓３に吊り下げられる形態である。浴槽１０は、湯水を溜めるために変形する。浴槽１０は、畳まれた状態、広がった状態等、形を自在に変えることができる。浴槽１０は、広がった状態において湯水を溜める。

【0020】

図６に示すように、本実施形態の浴槽１０は、シート部１１と、ロープ１２とを有して構成されている。シート部１１は湯水を貯留する。シート部１１はシート製である。シート部１１は柔軟性を有している。シート部１１は、柔軟な防水シートを裁断、接合等することによって、平面視長方形状をなす舟形状に形成されている。本実施形態のシート部１１は、伸縮性には乏しく、湯水を溜めた状態において舟形の形状がある程度保持される。

【0021】

ロープ１２は、シート部１１における上縁部に沿って環状に設けられている。浴槽１０の設置状態において、シート部１１は、ロープ１２に外縁部を吊り下げられる形態である。ロープ１２は、浴槽側取付部１０Ａを構成する。ロープ１２は、シート部１１を補強する補強部としても機能する。これによって、シート部１１は、外縁部が上縁部となり、中央部が下方に窪んだ舟形状をなす。湯水を貯留した状態において、シート部１１の中央下面は、浴室１の床Ｆに接触する。これによって、浴槽１０は、湯水を張った状態において、床Ｆにおいて大部分の荷重を支持させることができる。このため、浴槽１０は、天井Ｃと壁Ｗのみで支持されている場合と比較して、天井Ｃ及び壁Ｗのそれぞれにおける補強構造を簡素化できる。

【0022】

図７に示すように、ロープ１２は、シート部１１の上縁における折り返し部１１Ａに挿入されている。折り返し部１１Ａは、シート部１１の外縁部を筒状に折り返して形成されている。折り返し部１１Ａは、シート部１１の上縁部の全周に渡って形成されている。折り返し部１１Ａは、平面視長方形状をなす浴槽１０の四隅において分断されている。ロープ１２は、シート部１１の四隅において外部に露出している。浴槽１０は、このようにシート部１１から露出したロープ１２を取付部２１に引っ掛けることによって、天井Ｃ及び壁Ｗ１に対して着脱自在に取り付けられる。折り返し部１１Ａは、折り返して２重構造とされていることから、シート部１１の上縁部における補強部としても機能する。

【0023】

図５に示すように、本実施形態の浴槽１０は排水部１３を有している。排水部１３は、防水性を有するスライド式ファスナーによって開閉自在な開口をシート部１１の下部に設けて構成されている。これによって、浴槽１０は、溜めた湯水を浴槽１０の外部に容易に排出することができる。

【0024】

上記構成の浴室１及び浴槽１０の作用及び効果について説明する。浴室１は、浴槽１０を取り付ける天井Ｃ及び壁Ｗ１を備えている。このため、浴室１は、浴槽１０にかかる荷重の少なくとも一部を天井によって支えることができる。浴室１において浴槽浴を行う際には、図１に示すように、浴槽１０を湯水を溜めるための状態に変形させる。具体的には、本実施形態の場合、浴槽１０は、畳まれた状態と広がった状態に形を自在に変えることができる。浴槽１０は、湯水を溜めるに際しては広がった状態にされる。浴槽１０は、湯水を溜めない状態では、湯水を溜めるための形状に変形させた状態よりもコンパクトな状態にしておくことができる。具体的には、浴槽１０は、湯水を溜めない状態では、畳まれた状態にしておくことができる。

【0025】

本実施形態において、浴槽１０は、天井Ｃ、及び壁Ｗ１に対して着脱自在に取り付けられる。このため、浴槽１０は、設置及び収納を極めて容易に行うことができる。設置に際して、浴槽１０は、四隅に露出したロープ１２を浴槽側取付部１０Ａとして、天井Ｃにおける取付部材２０、及び壁Ｗ１における水栓３の各取付部２１に取り付ける、という簡易な方法で設置することができる。浴槽１０は、浴槽側取付部１０Ａを取付部２１に適切に取り付けることによって、湯水を溜めるための広がった状態に好適に変形する。

【0026】

浴槽１０に湯水を溜めるには、シャワー装置２における水栓３を利用する。図４に示すように、水栓３は、吐水口３Ａから薄膜状の湯水を吐出することができる。浴槽１０を用いた浴槽浴では、ユーザーは、吐水口３Ａから吐出される薄膜状の湯水を浴槽１０内の首筋や肩に浴びることができる。ユーザーは、吐水口３Ａからの湯水を浴びながら、浴槽１０に湯水を溜めることができる。浴槽１０は、変形自在であることから、ユーザーの身体に合った形状になることができる。このため、浴槽１０は、変形不能な浴槽と比較して、溜める湯水の量が少なくて済む。

【0027】

湯水を張った状態において、浴槽１０の各部には、溜めた湯水の水圧による力が作用する。この水圧の作用によって、浴槽１０の各部は変形し、シート部１１、及びロープ１２は張った状態になる。特に、浴槽１０の上縁部を構成するロープ１２は、手を置いても大きなブレが生じない程度にしっかりと張った状態になる。このため、浴槽１０は、変形自在でありながら、湯水を溜めることによって変形が抑制され、ユーザーが浴槽１０に出入りする際でも安定した形状を維持できる。

【0028】

浴槽１０は、湯水を溜めた状態において、中央部の下面が床Ｆに接触する。このように浴槽１０の下面が床Ｆに接触することによって、浴槽１０に溜めた湯水の重さやユーザー自身の重さは、床Ｆで好適に支持される。これによって、取付部２１に過剰な負荷がかかるのが抑制される。このため、浴室１は、例えば浴槽を壁や天井のみで支持する構造と比較して、壁や天井の構造や取付部材の構造を強度的に簡素化できる。

【0029】

浴槽浴が終了したら、浴槽１０に溜めた湯水を排水部１３から抜く。具体的には、本実施形態の場合、排水部１３におけるファスナーを開放して湯水を抜く。上述のように、浴槽１０は、湯水を溜めるために変形する。したがって、浴槽１０は、湯水を溜めた状態から抜いた状態にすることで、湯水を溜めるための形状からそれ以外の形状に変形し得る。湯水を抜いた浴槽１０は、天井Ｃ及び壁Ｗ１取り外して畳んだ状態にできる。浴槽１０は、このように畳んだ状態にすることで、収納が容易である。浴槽１０の両側を天井Ｃ及び壁Ｗ１に取り付けており、床置きの取付部材を別で設けていないため、浴槽を収納するだけで浴室１を空間効率よく使用できる。

【0030】

浴槽１０を天井Ｃ及び壁Ｗ１から取り外す際、浴槽１０は、浴槽側取付部１０Ａであるロープ１２を取付部２１から取り外す、といった簡易な動作で取り外すことができる。取り外した浴槽１０は、洗浄、乾燥され、畳まれて収納される。浴槽１０は、着脱自在であることから、従来の据え置き型の浴槽とは異なり、浴槽１０の内外面全体を洗浄することができる。浴槽１０は柔軟で変形自在なシート状材料製であることから、さながら洗濯物の感覚で、洗ったり、干したり、折り畳んだりすることができる。浴槽１０を取り外した浴室１は、一面平坦な床Ｆが表れる。このため、浴室１は、床Ｆの掃除が容易であり、清潔さを維持し易い。浴槽１０は、柔軟で変形自在であることから、例えば、床Ｆとの間に椅子やベンチ、クッション等を配置することによって、所望の姿勢で入浴することもできる。浴槽１０は、床Ｆとの間にマッサージ機器やヒーターを配置してもよい。これらの機器は浴槽１０の外側に配置されるため、防水性の必要がない。

【0031】

湯水を抜いた状態の浴槽１０は、例えば、天井Ｃ及び壁Ｗ１の一方に纏めて掛けておいてもよい。浴室１は、浴槽１０を壁Ｗ１，Ｗ２から取り外した状態、及び浴槽１０を一方の壁Ｗ１，Ｗ２の一方に纏めて掛けた状態のいずれの状態においても、広がった状態の浴槽１０が設置されていない状態で床Ｆの全体が露出した比較的広い空間として利用できる。

【0032】

図２に示すように、浴室１は、浴槽１０を取り外した状態においては、例えばシャワー浴を行うのに好適である。浴室１は、浴槽１０を取り付けていない状態では、床Ｆの全体を洗い場として利用してのシャワー浴を行うことができる。浴室１は、シャワー装置２におけるオーバーヘッドシャワー４、及びハンドシャワー５の少なくとも一方を用いてシャワー浴を行うことができる。浴室１は、間口１６００ｍｍ、奥行き１２００ｍｍ、という従来の一般的なシャワー室や、洗い場と比較して広い空間で、ゆったりと余裕をもってシャワー浴を楽しむことができる。浴槽１０を取り外した状態でシャワー浴を行った場合、浴室１は、浴槽１０に泡や水が付着することがない。このため、浴室１は、シャワー浴後の清掃が容易である。

【0033】

浴槽１０は、着脱自在であることから、バリアフリー化にも寄与できる。例えば、取付部材２０及び水栓３に取り付ける前の浴槽１０を床Ｆに敷いておく。この状態でユーザーが浴槽１０上に乗る。その後、浴槽１０の浴槽側取付部１０Ａを取付部２１に取り付けて湯を張ることで、設置状態の浴槽１０の上端縁を跨ぐことなく入浴できる。このような入浴法によれば、浴槽１０の上端縁を跨ぐことが困難なユーザーや、車椅子に乗ったユーザーも容易に浴槽浴を行うことができる。

【0034】

図８に示すように、浴室１は、仕切部Ｐを開放することによって、洗面室Ｂとひと繋がりとなった一つの空間を形成することができる。これによって形成される空間は、浴室１のみで形成される空間よりも大きな空間である。このように形成される空間は、例えばフィットネスルーム、ランドリールーム等、より広いスペースを必要とする用途で多目的に利用することができる。

【0035】

浴槽１０は、柔軟なシート製であることから、ＦＲＰ製等の従来の浴槽と比較して安価に製造することが容易である。このため、浴槽１０は、ユーザー毎に専用のものを設けることも比較的容易である。この場合、浴槽１０は、各ユーザーに応じて大きさ、デザイン等を自由に設定することができる。浴槽１０は、ＦＲＰ製等の従来の据え置き型の浴槽と比較して、輸送コストやリサイクル性等において有利である。このため、浴槽１０は、環境負荷の低減を図ることができる。このような浴槽１０は、１人のユーザーが複数所有することも比較的容易である。この場合、ユーザーは、洋服を選ぶように、気分や季節等に応じて複数の浴槽１０から所望のものを選択して使用することができる。

【0036】

以上のように、実施形態１に係る浴室１は、天井Ｃを備えている。天井Ｃは浴槽１０を取り付ける。浴槽１０は、湯水を溜めるために変形する。

【0037】

浴室１は、浴槽１０が天井Ｃに取り付けられるので、例えば、従来のような床置きの浴槽を配置する場合と比較して、浴槽１０が邪魔になりにくい。浴槽１０は、使用時には湯水を溜めるために変形する。浴槽１０は、非使用時には、使用時の状態よりもコンパクトな状態に変形させることが可能である。このため、浴室１は、浴槽１０を使用する目的以外の目的で使用する際に空間効率よく利用できる。

【0038】

浴室１において、浴槽１０は、畳まれた状態と広がった状態に形を変形自在であり、広がった状態において湯水を溜める。すなわち、浴槽１０は、湯水を溜めない非使用時の状態として、畳んだ状態にすることが可能である。このため、浴室１は、浴槽１０の非使用時に畳んだ状態にしておくことによって、空間効率よく使用できる。

【0039】

浴室１において、天井Ｃは取付部材２０を有している。取付部材２０は、浴槽１０を着脱自在に取り付ける。このため、浴室１は、例えばシャワー浴を行う場合には、浴槽１０を取り外すことによって広い空間を形成することができる。すなわち、浴室１は、浴槽１０が必要な場合にのみ浴槽１０を取り付け、浴槽１０が不要な場合には浴槽１０を取り外すことができる。このため、浴室１は、浴槽１０を使用する目的以外の目的で利用する場合において浴槽１０を取り外すことによって、浴槽１０がない分、空間効率よく利用することができる。浴室１は防水パンを床に使用し防水処理された空間であることが望ましい。その場合、シャワー室のほか、防水空間であることを利用して観葉植物の手入れやホットヨガなど多目的に使用することができる。

【0040】

浴室１において、取付部材２０は、浴槽１０の上縁部の少なくとも一部としての浴槽側取付部１０Ａにおいて浴槽１０を吊り下げる。このため、浴室１は、変形する浴槽１０であっても安定的に天井Ｃに取り付けることができる。

【0041】

浴室１は、天井Ｃに備えられた取付部材２０に浴槽１０が吊り下げられる。このため、浴室１は、浴槽１０を設置して浴室として使用する際、吊り下げられた浴槽、という非日常感を演出できる。浴室１は、壁Ｗ１側の取付部材として水栓３を設けたことによって、取付部材としてのみ機能する部材を低減できる。このため、浴室１は、全体としてすっきりとした意匠を実現できる。

【0042】

実施形態１に係る浴槽１０は、浴室１に好適に取り付けることができる。

【0043】

実施形態１に係る浴室１は、壁Ｗ１を備えている。壁Ｗ１は、浴槽１０を取り付けるための取付部材としての水栓３を有している。このため、浴室１は、取付部材としてのみ機能する部材を低減でき、全体としてすっきりとした意匠を実現できる。浴室１は、壁Ｗ２側の取付部材２２０を、水栓２０３を模した形状としたことによって、２つの取付部材の意匠が調和し、すっきりとした美観を実現できる。

【0044】

＜実施形態２＞
実施形態２に係る浴室２０１は、図９に示すように、浴槽１０が天井Ｃのみに取り付けられている点において、実施形態１と相違する。浴室２０１は、浴槽１０全体が１つの取付部材２２０によって天井Ｃから吊り下げられている。取付部材２２０は、実施形態１の取付部材２０よりも長い長尺円筒状に形成され、両端部に取付部２１を設けている。本実施形態において、浴槽１０は、４箇所の浴槽側取付部１０Ａの全てが取付部材２２０における両端部の取付部２１のいずれかに取り付けられる。浴室２０１において、浴槽１０は、湯水を張った状態においても床Ｆに接触しないように構成されている。取付部材２２０は、ロープ２２２によって天井Ｃに接続されている。ロープ２２２は、下端部において二股に分岐し、取付部材２２０の両端部に接続されている。これによって、取付部材２２０は、実施形態１の取付部材２０と比較して、傾きに対する安定性が向上している。

【0045】

上記構成の実施形態２に係る浴室２０１は、上記実施形態１と同様に、浴槽を使用する目的以外の目的で使用する際に空間効率よく利用できる。浴室２０１は、１つの取付部材２２０のみで浴槽１０を吊り下げて取り付けるので、すっきりとした意匠の浴室を実現できる。浴室２０１において、浴槽１０は、湯水を張った状態においても床Ｆに接触しない。このため、浴室２０１における浴槽浴では、ユーザーは、浮遊しているような従来にない感覚の浴槽浴を行うことができる。

【0046】

＜他の実施形態＞
本開示は上記記述及び図面によって説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。本開示において、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない範囲であればどのように組み合わされてもよい。

【0047】

本開示に係る浴室の構成、大きさ、空間形状等は上記各実施形態に限定されない。浴室は、例えば、仕切部を壁とドアに変更し、洗面室と繋げて一つの空間として使用しない形態であってもよい。その場合に、洗面室側の壁に取付部材を配置してもよい。浴室は、浴槽浴やシャワー浴を行い得る機能、例えば防水機能、排水機能等を有していることが好ましい。浴室は、取付部材に対応する浴室の裏側（壁裏や天井裏）に補強用構造体を設けることが好ましい。

【0048】

本開示に係る水栓の構成、外形形状等は上記各実施形態に限定されない。水栓は、例えば、直線状、環状、シャワー状等、薄膜状以外の吐水形態で湯水を吐出するものであってもよい。水栓は、例えば、床に取り付けられるものであってもよいし、床及び壁の両方に取り付けられるものであってもよい。水栓が取付部を有する場合、取付部の構成は、上記各実施形態の構成に限定されない。水栓に設けられる取付部としては、例えば、水栓の外面の少なくとも一部に凹部、溝部等を形成する形態であってもよい。

【0049】

本開示に係る浴槽は、その少なくとも一部が天井に取り付けられていればよい。

【0050】

本開示に係る浴槽の構成は、上記各実施形態に限定されない。浴槽は、上記各実施形態のように、シート部と、ロープ等の補強部と、を有して構成されていてもよいし、シート部のみを有して構成されていてもよい。本開示に係る浴槽において、湯水を溜めた状態で中央下面が床に接触することは必須ではない。浴槽は、湯水を溜めた状態において、中央下面に限らず、下面の少なくとも一部が床に接触していることが好ましい。浴槽は、例えば、天井に着脱不能に取り付けられてもよい。

【0051】

シート部を構成するシートとしては、例えば、樹脂フィルム等の防水材と、帆布等の強度を確保するための材料とを積層したものや、帆布等の材料に防水性の樹脂、ゴム等を含侵させたもの等が挙げられる。シート部の形状等は上記各実施形態に限定されない。シート部は、上述の柔軟性に優れ、且つ伸縮性に乏しいシート材からなるものに限らず、例えば、柔軟性及び伸縮性の両方に優れたシート材からなるものであってもよい。シート部は、伸縮性に乏しく、湯水を溜めた状態において形状がある程度保持されるものであることが好ましい。シート部は、例えば、伸長することによって湯水を溜め得る形状に変形するものであってもよい。シート部は防水性を有するものが望ましいが、これに限定されない。

【0052】

浴槽が補強部を有する場合、補強部の構成等は上記各実施形態に限定されない。補強部としては、上記各実施形態において例示したロープ等の柔軟性を有するものに限らず、例えば樹脂製や金属製の筒状体、棒状体、線状体、板材等、柔軟性に乏しく剛性に優れたものであってもよい。

【0053】

本開示に係る浴槽側取付部の構成は、上記各実施形態に限定されない。浴槽側取付部は、シート部の一部によって構成されていてもよいし、ロープ等のシート部とは別の部材によって構成されていてもよい。浴槽側取付部は、上記各実施形態において例示した環状、筒状の他、フック状、袋状等、種々の形態を採用できる。浴槽側取付部は、例えば、ロープ等の別部材を介して取付部材に取り付けられる形態であってもよい。浴槽側取付部の数は、上記各実施形態に限定されない。浴槽側取付部は、例えば３箇所以上設けられているとよい。この場合、浴槽を安定的に取り付けることができる。

【0054】

本開示に係る取付部の個数、構成等は、上記各実施形態に限定されない。取付部は、例えば、浴槽側取付部の個数よりも多く設けられていてもよい。この場合、浴槽を取り付ける際に、ユーザーの好み等に応じて複数の取付部の中からいくつかを選択して浴槽側取付部を取り付けることによって、浴槽の配置、形状等を選択的に変更することができる。取付部は、上記各実施形態において例示した溝状に限らず、例えば、フック状、棒状、環状等、種々の形態を採用することができる。

【0055】

本開示に係る取付部材は、例えば図１０に示すような形態であってもよい。図１０において、取付部材３２０は、取付部３２１を有している。取付部３２１は、長尺円筒状をなす取付部材３２０の両端部の間に設けられている。取付部材３２０は、例えば図１０に示すように、長手方向の両端部に形成した溝状部分において、２つの環状のロープ３２２によって着脱自在に支持され得る。２つの環状のロープ３２２は、例えば、図１０に示すように、吊下部材３２３から吊り下げられ得る。吊下部材３２３は、天井Ｃから吊り下げられた棒状部の下端に円環を設けた吊り輪状に構成されている。吊下部材３２３の上端部は、天井や天井裏の図示しない補強用構造材や建築躯体等に接続される。

【0056】

上記構成の取付部材３２０に対し、浴槽は、図１０に示すような浴槽側取付部３１０Ａを有して取付部３２１に取り付けられ得る。浴槽側取付部３１０Ａは、浴槽３１０の長手方向の端部を折り返して筒状をなす形態である。浴槽側取付部３１０Ａは、一端側から取付部材３２０を軸方向に貫通させることによって取付部３２１に取り付けられる。取付部材３２０は、浴槽３１０を補強する補強材としても機能する。

【0057】

壁に取付部材が備えられる場合、取付部材は、例えば、図１１に示すような形態であってもよい。図１１において、取付部材４２０は取付部４２１を有している。取付部４２１は、上方に開口する側面視Ｊ字状のフック状をなす取付部材４２０におけるフック状の部分に相当する。取付部材４２０は、水平方向に間隔を置いて配置され、浴槽側取付部１０Ａを引っ掛けて取り付け得る。

【0058】

壁に取付部材が備えられる場合、取付部材は、例えば、図１２に示すような形態であってもよい。図１２において、取付部材５２０は取付部５２１を有している。取付部５２１は、円柱状をなす取付部材５２０の両端部の間に設けられている。取付部材５２０は、例えば長手方向の両端部において、レール部材５２２に支持され得る。レール部材５２２は、断面略Ｕ字状をなす溝形鋼状の部材である。レール部材５２２は、壁面に沿って上下方向に延びて設けられる。レール部材５２２は、上下方向に並んだ複数の孔５２２Ａを形成している。孔５２２Ａには取付部材５２０が選択的に挿入される。ユーザーは、浴槽５１０が所望の高さになるように、所望の高さの複数の孔５２２Ａを選択して取付部材５２０を挿入する。

【0059】

取付部材５２０は、図１２及び図１３に示すように、両端部５２０Ａにおいて、Ｌ字状に屈曲して形成され得る。孔５２２Ａは、取付部材５２０を挿入可能な大きさで形成される。このような取付部材５２０及び孔５２２Ａの組み合わせによって、取付部材５２０の孔５２２Ａからの抜け止め機能を付与することができる。孔５２２Ａは、例えば長孔状に形成され得る。これによって、取付部材５２０は、抜去の際に孔５２２Ａに対する軸周りの方向性の制約が生じるため、一層確実な抜け止め機能を付与できる。

【0060】

上記構成の取付部材５２０に対し、浴槽５１０は、図１２及び図１３に示す浴槽側取付部５１０Ａにおいて取付部材５２０に取り付けられる。浴槽側取付部５１０Ａは、浴槽５１０の四隅において筒状をなすように折り返して形成されている。浴槽５１０を取り付ける際には、所望の孔５２２Ａに合わせた高さ位置においてレール部材５２２の溝内に配置し、この状態でレール部材５２２の側方から、孔５２２Ａ、浴槽側取付部５１０Ａ、孔５２２Ａの順に、取付部材５２０を挿入する。

【0061】

レール部材としては、例えば、図１４及び図１５に示すような形態であることができる。図１４及び図１５に示すレール部材６２２は、レール部材５２２と同様に、上下方向に複数の孔６２２Ａを形成している。複数の孔６２２Ａは、略円形状の内周形状をなしている。複数の孔６２２Ａは、上下方向において、スリット６２２Ｂによって連結されている。スリット６２２Ｂは、孔６２２Ａの内径よりも小さな幅で形成されている。

【0062】

このようなレール部材６２２に対し、取付部材６２０は、図１５に示すように、円柱状をなし、レール部材６２２におけるいずれかの孔６２２Ａに挿入される。取付部材６２０における取付部６２１は、両端部の間の部分に相当する。取付部材６２０は、孔６２２Ａの内径と同等の外径を有し、孔６２２Ａに挿入自在である。取付部材６２０の両端部６２０Ａは、スリット６２２Ｂの幅と同等の大きさの２面幅で形成されている。これによって、取付部材６２０は、レール部材６２２から取り外すことなく、スリット６２２Ｂを介して、レール部材６２２を上下方向に移動して所望の孔６２２Ａに取り付けることができる。このため、浴槽側取付部５１０Ａは、取付部６２１に取り付けられた状態のまま、高さ位置を変更することができる。この場合、浴槽を所望の高さ位置に容易に変更できるのみならず、例えば、浴槽内の湯水を排水する際にも有効である。すなわち、上記構成によれば、浴槽側取付部５１０Ａのうち１か所の高さを下げるだけで浴槽に排水部を設けることなく、浴槽内の湯水を容易に排水することができる。

【0063】

壁に取付部材が備えられる場合、取付部材は、例えば、図１６及び図１７に示すような構成で設けられてもよい。図１６及び図１７に示す取付部７２１は、取付部材としての第１棒状部材７２０Ａ及び第２棒状部材７２０Ｂによって構成されている。第１棒状部材７２０Ａ及び第２棒状部材７２０Ｂは、それぞれ壁面に平行且つ水平方向に延びる形態で、上下方向に並んで配置されている。第１棒状部材７２０Ａは、壁に対して固定的に取り付けられる。第２棒状部材７２０Ｂは、第１棒状部材７２０Ａの上方において第１棒状部材７２０Ａに対して上下方向に平行移動自在に設けられる。図１６に示す浴槽７１０は、浴槽側取付部７１０Ａにおいて取付部７２１に取り付けられる。詳細には、浴槽側取付部７１０Ａは、Ｓ字状に巻き付けられるとともに２つの棒状部材７２０Ａ，７２０Ｂに上下方向から挟み込まれることによって、取付部７２１に取り付けられる。この場合、２つの棒状部材７２０Ａ，７２０Ｂによって浴槽側取付部７１０Ａが挟み込まれる強さを向上させる方向に浴槽の重さが作用するため、一層強固な取り付けを実現できる。図１７に示すように、浴槽側取付部７１０Ａの端部には折り返し部７１１Ａが形成されている。浴槽側取付部７１０Ａにおいて、折り返し部７１１Ａは、取付部７２１からの抜け止めとして機能する。

【0064】

壁に取付部材が備えられる場合、取付部材は、例えば、図１８及び図１９に示すような形態であってもよい。図１８及び図１９において、取付部材８２０は取付部８２１を有している。取付部８２１は、取付部材８２０における環状をなす部分である。浴槽側取付部は、例えば図１９に示すような浴槽側取付部８１０Ａとしてもよい。浴槽側取付部８１０Ａは、浴槽８１０の上端部の一部を外側方向に延伸させるとともに、延伸端において袋状に形成した形態である。浴槽側取付部８１０Ａには、図１９に示す球状体８１０Ｂが挿入される。球状体８１０Ｂは、取付部８２１の最大内径よりも大きな外径を有し、且つある程度の剛性を有している。浴槽側取付部８１０Ａを取付部８２１に取り付けるにあたっては、環状をなす取付部８２１に対して浴槽側取付部８１０Ａを貫通させたのち、先端の袋状の部分に球状体８１０Ｂを入れる。これによって、球状体８１０Ｂが取付部８２１に引っ掛かって抜け止めされ、浴槽側取付部８１０Ａが取付部８２１に取り付けられた状態が維持される。

【0065】

上述のような環状をなす取付部に対しては、種々の形態の浴槽側取付部を取り付けることができる。例えば、図２０及び図２１に示す浴槽側取付部９１０Ａは、先端が袋状に形成されていない点を除き、上記浴槽側取付部８１０Ａと同様の構成である。浴槽側取付部９１０Ａは、環状をなす取付部８２１を貫通したのち、先端部をリング９１０Ｂに結び付けられる。リング９１０Ｂは、球状体８１０Ｂと同様に、取付部８２１の最大内径よりも大きな外径を有し、且つある程度の剛性を有しているため、浴槽側取付部９１０Ａが取付部８２１に取り付けられた状態を維持することができる。このような浴槽側取付部９１０Ａは、例えば取付部８２１のような環状をなす取付部や、フック状をなす取付部等に対して単に結び付けるだけでも取り付け可能である。この場合、結び方を変えるだけで浴槽の形状を調整することが可能である。

【0066】

壁に取付部材が備えられる場合、取付部材は、例えば、図２２に示すような形態であってもよい。図２２において、取付部材１０２０は、磁力によって壁の所望の位置に着脱自在に取り付けることができる構成である。取付部材１０２０は、略水平方向に延びる軸周りに回転自在に支持部材１０２２を連結している。支持部材１０２２は、上端部において取付部材１０２０に軸支されている。支持部材１０２２は、取付部材１０２０から下方に延びる棒状をなすとともに、下端部に設けられた床支持部１０２２Ａにおいて床Ｆに接触する。支持部材１０２２は、取付部材１０２０の高さ位置に応じて取付部材１０２０に対する角度を変更した場合でも、床支持部１０２２Ａを床Ｆに対して接触させた状態を維持できる。このような取付部材１０２０に対し、取付部は、図２２に示すような環状をなす形態に限らず、上述した種々の形態で設けることができる。

【0067】

床支持部１０２２Ａは、例えば、床Ｆに対する滑り止め構造が設けられているとよい。滑り止め構造としては、例えば、床Ｆに吸着する吸盤を設けた構造や、ゴムやエラストマー等のシート材を床Ｆとの接触面に設けた構造等を採用し得る。滑り止め構造としては、例えば、図２２に示すように、床Ｆ上に板状の滑り止め部材Ｆ１を敷き、この滑り止め部材Ｆ１の端部に床支持部１０２２Ａを接触させる構成であってもよい。この場合、滑り止め部材Ｆ１は、湯水を溜めた際に浴槽の中央下面が接触するようにしておくとよい。これによって、滑り止め部材Ｆ１自体の位置ずれを抑制でき、支持部材１０２２における床支持部１０２２Ａと、これに連結された取付部材１０２０の位置ずれを効果的に防止できる。

【0068】

床に取付部材が備えられる場合、取付部材は、例えば、図２３に示すような形態であってもよい。図２３において、取付部材１１２０は、上記各実施形態と同様に、長尺円筒状に形成されている。取付部材１１２０は、取付部１１２１を長手方向の両端部に溝状に形成されている点も同様である。取付部材１１２０は、枠体１１２２の上端部に取り付けられている。枠体１１２２は、床Ｆ上に移動自在に設置されることが好ましい。

【0069】

浴槽側取付部としては、例えば図２４及び図２５に示すような形態であってもよい。図２４及び図２５に示す浴槽側取付部１２１０Ａは、シート部１２１１の一部によって構成された形態である。詳細には、浴槽側取付部１２１０Ａは、浴槽１２１０におけるシート部１２１１の外縁部に孔を形成し、この孔の周縁部をハトメ１２１４によって補強している。シート部１２１１は、浴槽側取付部１２１０Ａを設けた部分において折り返して重ねたことによって補強されている。このような浴槽側取付部１２１０Ａは、図２７及び図２８に示すように、フック状の取付部材４２０に好適に取り付けられる。

【0070】

浴槽側取付部としては、例えば図２６及び図２７に示すような形態であってもよい。図２６及び図２７に示す浴槽側取付部１３１０Ａは、浴槽１３１０におけるシート部１３１１の外縁部に取り付けられる浴槽側取付部材１３１４に設けられた形態である。浴槽側取付部材１３１４は、例えば樹脂等による一体成形品として形成され得る。浴槽側取付部材１３１４は、環状部１３１４Ａと、保持部１３１４Ｂと、を有する。環状部１３１４Ａは浴槽側取付部１３１０Ａを構成する。環状部１３１４Ａはリング状をなしており、取付部材４２０のようなフック状の取付部材に好適に取り付けられる。保持部１３１４Ｂは、環状部１３１４Ａに連結され、シート部１３１１の外縁部を保持する。保持部１３１４Ｂは、複数の突起を形成した板状部材、及びこれらの複数の突起が嵌合する孔を形成した他の板状部材によって、シート部１３１１の外縁部を挟み込んで保持する。保持部１３１４Ｂにおける２つの板状部材は、例えば一端側において連結され、弾性変形することによってヒンジ状に開閉可能である。シート部１３１１における外縁部は、浴槽側取付部材１３１４を取り付ける部分において折り返して重ねたことによって補強されている。浴槽側取付部材１３１４は、例えば、環状部１３１４Ａに代えて、フック状部等の他の形態の浴槽側取付部を構成するものを有していてもよい。

【0071】

浴槽側取付部としては、例えば図２８及び図２９に示すような形態であってもよい。図２８及び図２９に示す浴槽側取付部１４１０Ａは、浴槽１４１０におけるシート部１４１１の外縁部に取り付けられる浴槽側取付部材１４１４に設けられた形態である。浴槽側取付部材１４１４は、図２８及び図２９に示すように、長尺棒状をなし、シート部１４１１の外縁部が巻き付けられることによってシート部１４１１に着脱不能に固定されている。浴槽側取付部材１４１４の両端部は、シート部１４１１の外縁から突出して露出している。浴槽側取付部１４１０Ａは、浴槽側取付部材１４１４における両端部のシート部１４１１から露出した部分に設けられている。浴槽側取付部１４１０Ａは溝状をなしており、取付部材４２０のようなフック状、環状等の取付部材に取り付けられ得る。

【0072】

本開示に係る浴槽が排水部を有することは必須ではない。浴槽が排水部を有する場合、排水部の構成等は上記各実施形態に限定されない。排水部は、例えば、浮き輪等に用いられる樹脂製の栓、従来の浴槽に用いられるゴム栓、水筒に用いられる栓等の既知の種々の栓を有する排水部を採用することができる。

【0073】

排水部としては、例えば、図３０に示すような形態であってもよい。図３０に示す排水部１５１３は、浴槽１５１０に備えられている。浴槽１５１０は、上記各実施形態とは異なり、シート部１５１１のみで上縁部が構成されている。すなわち、浴槽１５１０は、シート部１５１１の上縁部に沿った環状のロープを備えない形態である。排水部１５１３は、上記各実施形態と同様の防水性を有するスライド式ファスナーを有して構成されている。排水部１５１３におけるファスナーは、シート部１５１１の上部に設けられている。排水部１５１３は、ファスナーを下方にスライドさせることによって、シート部１５１１の上縁部を分断して開放することができる。

【0074】

図３０に示すように、排水部１５１３におけるファスナーの下端は、浴槽１５１０における想定水面高さよりも僅かに高い位置に設定されている。すなわち、排水部１５１３は、浴槽１５１０に通常の量の湯水を溜めた状態では水没することがない。このため、排水部１５１３は、ファスナーの防水性の高さに関わらず、湯水の漏出を回避できる。シート部１５１１は、ファスナーを開放すると、上縁部の外周長が大きくなって弛みが生じる。このため、浴槽１５１０は、排水部１５１３によって、ある程度の量の湯水を排出することができる。浴槽１５１０内に残った湯水は、浴槽１５１０を取り外して排出する。排水部１５１３を用いてある程度の量の湯水を排出した浴槽１５１０は、排出前よりも軽くなっているため、取り外しが容易である。上述のように、浴槽１５１０は、シート部１５１１の上縁部に沿った環状のロープを備えていない形態である。浴槽１５１０は、他の形態として、例えば、シート部１５１１の長辺のみに補強用、浴槽側取付部用等の目的でロープを配置し、ファスナーをロープの配置されていない短辺側の上部に設けることも可能である。

【0075】

排水部としては、例えば、図３１に示すような形態であってもよい。図３１に示す排水部１６１３は、シート部１６１１に一体に設けられている。排水部１６１３は、内面が粘着性の材質等で密着し、水が容易に管内から排出されない様閉塞する。浴槽１６１０内に湯水が溜められた場合には、水圧によって更に加圧され閉塞されることで湯水が排出されることを防止する。排水部１６１３は、水圧に逆らって開放させることによって、浴槽１６１０内の湯水を外部に排出することができる。

【0076】

排水部としては、例えば、図３２に示すような形態であってもよい。図３２に示す排水部１７１３は、シート部１７１１に一体に設けられている。排水部１７１３は、浴槽１７１０の外側に突出する管状に形成されている。管状をなす排水部１７１３は屈曲自在である。排水部１７１３は、その先端が浴槽１７１０内に湯水が溜められた場合の水面高さよりも上方に配置され得る長さで形成されている。排水部１７１３は、先端部を水面よりも上方に配置することによって湯水が排出されるのを防止でき、浴槽１７１０内に湯水が溜められた状態を維持できる。排水部１７１３は、先端部を水面よりも下方に配置することによって、浴槽１７１０内の湯水を容易に排出できる。

【0077】

排水部としては、例えば、図３３に示すような形態であってもよい。図３３に示す排水部１８１３は、浴槽１８１０に備えられている。排水部１８１３は、シート部１８１１の底部に形成した開口１８１３Ａをフロート弁１８１３Ｂによって閉塞する形態である。フロート弁１８１３Ｂは、浴槽１８１０内に湯水が溜められた状態において、水圧によって開口１８１３Ａを閉塞することができる。フロート弁１８１３Ｂは、壁面取付の操作レバー１８１３Ｃに対して玉鎖を介して連結されている。フロート弁１８１３Ｂは、操作レバー１８１３Ｃを操作することによって、開口１８１３Ａを開放する。開口１８１３Ａを開放した状態のフロート弁１８１３Ｂは、浮力によってその状態を維持する。フロート弁１８１３Ｂは、浴槽１８１０内の湯水が排出されると、再び開口１８１３Ａを閉塞する。

【0078】

最後に、本開示の主な実施形態を以下に示す。
［１］
湯水を溜めるために変形する浴槽を取り付ける天井を備えている浴室。
［２］
前記浴槽は、畳まれた状態と広がった状態に形を変形自在であり、広がった状態において湯水を溜める上記［１］に記載の浴室。
［３］
前記天井は、前記浴槽を着脱自在に取り付ける取付部材を有している上記［１］及び［２］のいずれかに記載の浴室。
［４］
前記取付部材は、前記浴槽の上縁部の少なくとも一部を引っ掛けて取り付ける上記［３］に記載の浴室。
［５］
上記［１］から［４］までのいずれかに記載の浴室に取り付けられる浴槽。

【符号の説明】

【0079】

１，２０１…浴室、１０，３１０，５１０，７１０，８１０，１２１０，１３１０，１４１０，１５１０，１６１０，１７１０、１８１０…浴槽、２０，２２０，３２０，４２０，５２０，６２０，８２０，１０２０，１１２０…取付部材、Ｃ…天井

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】