(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021998
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ロールクラッシャ
(51)【国際特許分類】
B02C 4/40 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B02C4/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125252
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】泉 忠行
(72)【発明者】
【氏名】村井 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 謙
(72)【発明者】
【氏名】新崎 朝規
(72)【発明者】
【氏名】宮田 真吾
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063CC01
4D063CC09
4D063GB02
4D063GB07
4D063GC23
4D063GC29
4D063GD04
4D063GD12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一対のロールを交換することなく、その一対のロールに生じた偏摩耗を解消する。
【解決手段】第一ロール11の回転軸11aと第二ロール12の回転軸12aとが平行に並ぶ状態に、フレーム2で回転可能に支持され、第一駆動部13により回転する第一ロール11と、第二駆動部14により回転する第二ロール12の間で被処理物を破砕するロールクラッシャ1において、破砕時よりも低い回転数でかつ反対方向に、第一ロール11および第二ロール12を第一切削用駆動部17および第二切削用駆動部18により回転させ、第一ロール11の表面を削る刃34を備える第一切削部15と、第二ロール12の表面を削る刃34を備える第二切削部16とを、フレーム2上に設けた第一ガイドレール6と第二ガイドレール7上に、車輪31を介して走行可能とし、第一切削部15および第二切削部16に対して車輪31が上下方向にスライド可能に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が平行に並ぶ一対のロールと、前記一対のロールを回転させる駆動部とを備え、前記駆動部により回転する前記一対のロールの間で処理物を破砕するロールクラッシャにおいて、
前記駆動部により回転される前記一対のロールの回転数よりも低い回転数で前記ロールを回転させる切削用駆動部と、刃を備えた切削部とを有し、
前記切削用駆動部により前記ロールが回転する状態で、前記切削部の刃が前記ロールの表面を削るものであることを特徴とするロールクラッシャ。
【請求項2】
前記切削用駆動部および切削部が前記一対のロールのそれぞれに対して有し、前記切削部が前記一対のロールの回転軸の並ぶ方向の外方位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロールクラッシャ。
【請求項3】
それぞれの前記切削部が、前記一対のロールのうち近い側に位置するロールの表面を削る切削位置と、前記近い側に位置するロールから離れた非切削位置との間で移動可能となる切削部移動装置を有することを特徴とする請求項2に記載のロールクラッシャ。
【請求項4】
前記切削部移動装置は、前記一対のロールのそれぞれの回転軸を回転可能に支持するフレームに、前記一対のロールの回転軸の並ぶ方向に沿って延びるガイドレールと、前記切削部が前記ガイドレール上を転動する車輪とを有し、前記切削部が前記車輪を介して前記ガイドレール上を前記切削位置と非切削位置との間を走行することを特徴とする請求項3に記載のロールクラッシャ。
【請求項5】
前記車輪が前記切削部に対して上下方向にスライド可能に取り付けられ、前記車輪が上方にスライドしたとき、前記切削部が前記フレームに支持される状態となり、前記車輪が下方にスライドしたとき、前記切削部が前記ガイドレール上を走行可能な状態となることを特徴とする請求項4に記載のロールクラッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対のロール間で被処理物を破砕するロールクラッシャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸が平行に設置された一対のロールを備え、一対のロールを互いに反対方向に回転させて、一対のロールの間で被処理物を破砕するロールクラッシャが知られている。このロールクラッシャでは、被処理物の種類に応じて、一対のロールの間隔を任意に設定して、所望の大きさとなる処理物を得ることができる。
【0003】
このロールクラッシャでは、被処理物の長期間の処理によって一対のロールの表面に摩耗が生じる。さらに、例えば、コンクリート、自然石、鉱石などの比較的硬い被処理物を処理すると、一対のロールの表面の摩耗が早く進行する。このような一対のロール表面の摩耗は、回転軸の軸方向およびロールの周方向に均一に発生した場合では、一対のロールの間隔を調整することにより、所要の大きさの処理物を得ることができる。
【0004】
しかしながら、一対のロールの間において、被処理物が軸方向に偏った状態で処理されると、一対のロールの表面に回転軸の軸方向またはロールの周方向に不均一となる偏摩耗が生じる。偏摩耗が生じると、その部分のみ摩耗が促進されやすくなり、一対のロールの間隔がその部分のみ大きくなることから不均一となり、所望の大きさとなる処理物を得られなくなる。
【0005】
一対のロールに偏摩耗が生じた場合には、ロールの交換を行うことが一般的に行われている。そこで、ロールの交換作業を容易に行うことができるロールクラッシャが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のロールクラッシャでは、一対の破砕ローラ(ロール)は、それぞれ、駆動軸(回転軸)に固定されるタイヤホイールと、タイヤホイールの外周に嵌め込まれ、空気圧を調整可能な空気入りタイヤと、空気入りタイヤの外周に装着される被処理物よりも硬質な円筒体とを備えたものである。
【0006】
このようなロールを備える特許文献1に記載のロールクラッシャでは、ロールの交換の際、空気入りタイヤの空気圧を調整することで、ロールの円筒体を脱着させることができる。
【0007】
また、被処理物の物性により、処理物が一対のロールの表面に付着することがある。一対のロールの表面に処理物が付着した状態で被処理物の処理を行うと、一対のロール表面に上述の偏摩耗が生じる場合がある。
【0008】
処理物の付着によって、一対のロールに偏摩耗が生じた場合、破砕ロール(ロール)に対して掻取り機構としてのスクレーパを備え、破砕時、スクレーパにより一対のロール表面に付着した付着物を掻き取るロールクラッシャが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-297340公報
【特許文献2】特開昭53-34167公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、ロールクラッシャのロールは大型の部材であるので、特許文献1に記載のロールクラッシャの円筒体も大型の部材となる。このため、円筒体の交換作業は、空気入りタイヤの空気圧の調整および大型の部材となる円筒体の脱着に手間がかかり、煩雑なものとなる。
【0011】
また、特許文献2に記載のロールクラッシャでは、ロールを交換することなく、ロール表面の付着物をスクレーパで掻き取ることはできる。しかしながら、ロールの表面の付着物を掻き取るスクレーパでは、ロールに生じた偏摩耗を解消することは難しい。
【0012】
そこで、この発明の課題は、一対のロールを交換することなく、その一対のロールに生じた偏摩耗を解消することができるロールクラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明は、回転軸が平行に並ぶ一対のロールと、前記一対のロールを回転させる駆動部とを備え、前記駆動部により回転する前記一対のロールの間で処理物を破砕するロールクラッシャにおいて、前記駆動部により回転される前記一対のロールの回転数よりも低い回転数で前記ロールを回転させる切削用駆動部と、刃を備えた切削部とを有し、前記切削用駆動部により前記ロールが回転する状態で、前記切削部の刃が前記ロールの表面を削るものである構成を採用することができる。
【0014】
この構成によると、一対のロールの表面に偏摩耗が生じた際、切削用駆動部によりロールを回転させている状態で、切削部の刃によってロールの表面を削り、ロールを交換することなく、一対のロールの間隔を回転軸の軸方向で均一にすることができる。
【0015】
前記切削用駆動部および切削部が前記一対のロールのそれぞれに対して有し、前記切削部が前記一対のロールの回転軸の並ぶ方向の外方位置にそれぞれ設けられている構成を採用することができる。
【0016】
この構成によると、一方の切削部の刃で一対のロールのうちの一方のロールの表面を削り、他方の切削部の刃で、一対のロールのうちの他方のロールの表面を削ることができる。これにより、例えば、一対のロールのうち、いずれか一方のロールの表面に偏摩耗が生じた場合、当該ロールに近い側に設けられた切削部の刃でロールの表面を容易に削ることができる
【0017】
それぞれの前記切削部が、前記一対のロールのうち近い側に位置するロールの表面を削る切削位置と、前記近い側に位置するロールから離れた非切削位置との間で移動可能となる切削移動装置を有する構成を採用することができる。
【0018】
この構成では、前記切削移動装置により、二つの切削部は、ロールの表面を削る際、近い側に位置するロールの表面を切削する切削位置に移動させ、一対のロールの間で処理物を破砕する際、非切削位置に移動させることができる。
【0019】
前記切削部移動装置は、前記一対のロールのそれぞれの回転軸を回転可能に支持するフレームに、前記一対のロールの回転軸の並ぶ方向に沿って延びるガイドレールと、前記切削部が前記ガイドレール上を転動する車輪とを有し、前記切削部が前記車輪を介して前記ガイドレール上を前記切削位置と非切削位置との間を走行する構成を採用することができる。
【0020】
それぞれの切削部は、切削部移動装置の車輪によってガイドレール上を走行させることにより、前記切削位置と非切削位置との間を容易に移動させることができる。
【0021】
前記車輪が前記切削部に対して上下方向にスライド可能に取り付けられ、前記車輪が上方にスライドしたとき、前記切削部が前記フレームに支持される状態となり、前記車輪が下方にスライドしたとき、前記切削部が前記ガイドレール上を走行可能な状態となる構成を採用することができる。
【0022】
この構成では、前記切削位置に前記切削部を移動させたときに、切削部をフレームに支持される状態とし、切削部をフレームに固定する。一対のロールの表面を切削部の刃で削る際に、切削部に作用する反力を受けることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ロールの交換作業を行うことなく、ロールの表面を切削部の刃で切削することができ、ロールの偏摩耗を解消して、一対のロールの間隔を均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施形態のロールクラッシャを示す正面図
【
図3】同実施形態のロールクラッシャの一対のロールの表面を二つの切削部により削る状態を示す正面図
【
図4】同実施形態のロールクラッシャの一方のロールの表面を削る第一切削部を示す正面図
【
図5】(a)同実施形態のロールクラッシャの第一切削部が第一ガイドレール上を走行する状態を示す一部拡大側面図、(b)同実施形態のロールクラッシャの第一切削部がフレームに支持された状態を示す一部拡大側面図、(c)同実施形態のロールクラッシャの第一切削部がサイドフレームに固定された状態を示す一部拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態に係るロールクラッシャ1は、
図1、2に示すように、上方が開放する四角箱状の金属製のフレーム2と、フレーム2内に回転可能に支持される一対となる第一ロール11および第二ロール12と、第一ロール11を回転させる第一駆動部13と、第二ロール12を回転させる第二駆動部14とを備え、被処理物を第一ロール11と第二ロール12との間で破砕するものである。なお、明細書中において、長さ方向とは、フレーム2の長さ方向を意味し、幅方向とはフレーム2の幅方向を意味する。
【0026】
また、ロールクラッシャ1は、第一ロール11の表面を削る第一切削部15と、第二ロール12の表面を削る第二切削部16とを有する。さらに、第一ロール11を回転させる第一切削用駆動部17と、第二ロール12を回転させる第二切削用駆動部18とを有する。
【0027】
図1、2に示すように、フレーム2は、長さ方向に延びる一対の側面板3と、幅方向に延びる一対の端面板4を四角枠状に組み合わせ、一対の側面板3の上部に一対のサイドプレート5を固定したものである。フレーム2の下方は開放しており、破砕された被破砕物がコンベア(図示省略)により搬送される。一対のサイドプレート5上の長さ方向両側に、それぞれ第一ガイドレール6と第二ガイドレール7とが設けられている。第一ガイドレール6は、長さ方向に延びる一対のレール6a、6aから形成されており、それぞれのレール6aがサイドプレート5の幅方向両方向の外端部に設けられている。第二ガイドレール7は、長さ方向に延びる一対のレール7a、7aから形成されており、それぞれのレール7aがサイドプレート5の幅方向両方向の外端部に設けられている。
【0028】
第一ロール11および第二ロール12は、一体回転する回転軸11a、12bを有している。第一ロール11および第二ロール12の一部が、フレーム2から上方に突出した状態となっている。第一ロール11の回転軸11aと、第二ロール12の回転軸12aは、水平にかつ平行に並んでいる。回転軸11aと回転軸12aは、その並ぶ方向(長さ方向)に間隔をおいて配置されている。回転軸11aおよび回転軸12aは、フレーム2の一対の側面板3、3のそれぞれに固定された軸受11bおよび軸受12bにより回転可能に支持されている。
【0029】
回転軸11aの幅方向一方の端部が、フレーム2の側面板3から外部に突出している。回転軸11aの突出部には、プーリ19とスプロケット21が固定されている。回転軸12aの幅方向他方の端部が、フレーム2の側面板3から外部に突出している。回転軸12aの突出部には、プーリ20とスプロケット22が固定されている。
【0030】
図2に示すように、第一ロール11および第二ロール12は、被処理物を投入するホッパ9(
図1、2の二点鎖線参照)およびカバー8(
図2の一点鎖線参照)により覆われている。ホッパ9は第一ロール11の回転軸11aおよび第二ロール12の回転軸12a間の長さ方向の範囲内で設置されており、カバー8は、長さ方向において、少なくともホッパ9が第一ロール11及び第二ロール12によって覆われていない範囲で設置されている。ここで、カバー8は、ロール切削時において、取り外すことが可能な構造となっている。
【0031】
第一駆動部13、第一切削用駆動部17は、フレーム2に対して幅方向一方の外部に設けられている。第二駆動部14、第二切削用駆動部18は、フレーム2に対して幅方向他方の外部に設けられている。第一駆動部13は、駆動源としての電動モータおよびクラッチ(図示省略)を備え、電動モータの回転軸13aの駆動力をベルト13bおよびプーリ19を介して回転軸11aに伝達する。第二駆動部14は、駆動源としての電動モータおよびクラッチ(図示省略)を備え、電動モータの回転軸14aの駆動力をベルト14bおよびプーリ20を介して回転軸12aに伝達する。
【0032】
第一駆動部13および第二駆動部14により、第一ロール11および第二ロール12は、上方から見て内向きとなるように、相互に反対向きに(
図1の矢印a参照)に回転する。この回転により、ホッパ9から投入された被処理物を第一ロール11と第二ロール12の間で破砕する。破砕時では、第一ロール11および第二ロール12は、例えば、100~120rpmの範囲で回転する。
【0033】
第一切削用駆動部17は、電動モータ(図示省略)を備え、電動モータの回転軸17aの駆動力をチェーン17bおよびスプロケット21を介して回転軸11aに伝達する。第二切削用駆動部18は、電動モータ(図示省略)を備え、電動モータの回転軸18aの駆動力をチェーン18bおよびスプロケット22を介して回転軸12aに伝達する。
【0034】
第一切削用駆動部17および第二切削用駆動部18により、第一ロール11および第二ロールは、上方から見て外向きとなるように、相互に反対方向(
図3の矢印b参照)に回転する。この回転は、上述の破砕時での第一ロール11および第二ロール12の回転に対して、その回転方向が反対方向であって、かつその回転数が低い回転数、例えば、8~5rpmの範囲となる。
【0035】
図2に示すように、第一切削部15は、幅方向に延びる枠状体30と、枠状体30の幅方向両側に取り付けられる一対の車輪31と、枠状体30内で幅方向に移動するスライダ32と、スライダ32に対して上下方向に移動するホルダ33と、ホルダ33に保持される刃としてのバイト34とを有する。
【0036】
図4に示すように、枠状体30は、矩形の底面板30aと、底面板30aの幅方向両端部から立ち上がる一対の側面板30bと、一対の側面板30bの間に斜めに配置される背面板30cと、一対の側面板30bから幅方向外向きに突き出る突出板30dとを有する。一対の側面板30bの間に幅方向に延びる横ねじ軸35が回転可能に支持されている。背面板30cは、鉛直方向に対して鋭角(例えば、30度)に傾いて配置されている。背面板30cの長さ方向内側に横ねじ軸35が位置している。
【0037】
図5(a)に示すように、それぞれの車輪31は、これを回転可能に支持するシャフト36aを有する。シャフト36aが四角箱状のボックス体36に回転可能に支持されている。車輪31は、第一ガイドレール6のレール6a上に位置している。車輪31の外周の幅方向外縁部分には鍔部が形成され、レール6aからの脱輪を防止している。このような第一切削部15は、車輪31と第一ガイドレール6とを有する切削部移動装置を有するものとなる。
【0038】
図4に示すように、ボックス体36の長さ方向の両側にフランジ36bが形成されており、フランジ36bには上下方向の長孔36cが設けられている。ボックス体36のフランジ36bの長孔36cと枠状体30の側面板30bとを貫通するボルト37にナット(図示省略)でねじ結合する。これにより、ボックス体36を介して車輪31が枠状体30に上下方向に移動可能に取り付けられる。ボックス体36は、枠状体30の突出板30dにねじ込まれた位置決めボルト38の先端が突き当たる状態となっている。
【0039】
図5(a)に示すように、位置決めボルト38を突出板30dに対してねじ込むと、位置決めボルト38に押されたボックス体36が、枠状体30に対して相対的に下方に移動する。ボックス体36の下方への移動によって、サイドプレート5から枠状体30が離れ、第一切削部15が車輪31により第一ガイドレール6上を走行可能となる。
図5(b)に示すように、位置決めボルト38を突出板30dに対して抜き出る方向に回転させると、ボックス体36が枠状体30に対して相対的に上方に移動する。ボックス体36の上方への移動によって、枠状体30がサイドプレート5上に載り、枠状体30がサイドプレート5によって支持される状態となる。
【0040】
スライダ32は、直方体状部材であり、幅方向に沿って形成されためねじを有する。スライダ32のめねじが横ねじ軸35とねじ結合している。スライダ32の長さ方向外側を向く表面部が枠状体30の背面板30cに面接触する。また、スライダ32の長さ方向内側を向く表面部に軸受枠39が固定されている。軸受枠39は、帯状部材の両端を同方向に折り曲げて形成されたものであって、両端の折り曲げ部で縦ねじ軸40の両端部を回転可能に支持している。縦ねじ軸40は枠状体30の背面板30cと平行に、かつ横ねじ軸35に対して直角に支持されている。
【0041】
ホルダ33は、直方体状部材であり、縦ねじ軸40に平行に形成されためねじを有している。ホルダ33のめねじが縦ねじ軸40とねじ結合している。ホルダ33の長さ方向外側を向く表面部が軸受枠39の両端部を除く部分の表面部に面接触する。ホルダ33の長さ方向内側を向く表面部に刃としての角軸状のバイト34が着脱可能に取り付けられている。バイト34の下端部には第一ロール11の表面を削る刃先部が形成されている。
【0042】
さらに、第一ロール11に対するバイト34の刃先部接触位置を、第一ロール11の回転軸11aの回転中心に対して変更することができるように(第一ロール11に対するバイト34の刃先部接触位置からバイト34の傾き方向に沿って第一ロール11側に向かって仮想線を引き、回転軸11aの回転中心に対する当該仮想線の位置を変更することができるように)、
図5(c)に示すように、枠状体30とサイドプレート5との間にライナ41が着脱可能に設けられ、ボックス体36の下面部には長さ方向に延びる長孔36dが設けられている。また、
図2に示すように、サイドプレート5の第一ロール11の近傍に長さ方向に延びる長孔5aが設けられている。
【0043】
第二切削部16は、第一切削部15と同じ構成である。第二切削部16は、第二ガイドレール7上に配置される点、その配置される向きが反対向きである点が第一切削部15と異なるものである。このため、第二切削部16は、第一切削部15と同じ符号を付してその構造の説明を省略する。また、第二切削部16の刃であるバイト34は、第二ロール12の表面を削るものである。なお、刃としては、バイト34のみならず、第一ロール11の表面および第二ロール12の表面を研磨するものを含む。
【0044】
この発明に係る実施形態のロールクラッシャ1は以上のように構成される。この実施形態のロールクラッシャ1による被処理物の破砕は次のようにして行われる。
【0045】
まず、
図1に示すように、第一切削部15は、第一ガイドレール6上のフレーム2の長さ方向外側に位置しており、そのバイト34が第一ロール11の表面から離れた状態となっている。同様に、第二切削部16も、第二ガイドレール7上のフレーム2の長さ方向外側に位置しており、そのバイト34が第二ロール12の表面から離れた状態となっている。また、第一切削用駆動部17のチェーン17bはスプロケット21から外され、第二切削用駆動部18のチェーン18bもスプロケット22から外されている。
【0046】
そして、第一駆動部13により第一ロール11を回転させ、第二駆動部14により第二ロール12を回転させる。このとき、第一ロール11および第二ロール12は、それぞれ上方から見て内向き(
図1の矢印a参照)に、例えば、100~120rpmの範囲内の所要の回転数(この実施形態では、110rpm)となるように回転している。回転する第一ロール11と第二ロール12との間で、ホッパ9から投入された被処理物を破砕する。
【0047】
ロールクラッシャ1では、被処理物の長期間の処理によって、あるいは、例えば、コンクリート、自然石、鉱石などの比較的硬い被処理物の処理によって、第一ロール11および第二ロール12の表面に上述した偏摩耗が生じる場合がある。
【0048】
第一ロール11および第二ロール12の表面に上述した偏摩耗が生じたとき、ロールクラッシャ1は、以下のようにして上述の偏摩耗を解消する。
【0049】
すなわち、まず、電動モータへの通電を遮断して、第一駆動部13および第二駆動部14による第一ロール11および第二ロール12の回転を停止させる。続いて、第一切削用駆動部17のスプロケット21にチェーン17bを巻き掛け、第二切削用駆動部18のスプロケット22にチェーン18bを巻き掛ける。
【0050】
続いて、カバー8を取り除いた後に、第一切削部15を車輪31を介して第一ガイドレール6上を長さ方向内向きに走行させ、第一ロール11の表面に対して可能な限り接近する位置(切削位置)に移動させる。そして、
図5(b)に示すように、第一切削部15の位置決めボルト38を突出板30dに対して抜き出る方向に回転させ、ボックス体36を枠状体30に対して相対的に上方に移動させる。これにより、枠状体30をサイドプレート5に支持される状態とする。そして、第一切削部15と同様に、第二切削部16を、枠状体30がサイドプレート5に支持される状態にする。
【0051】
この状態において、第一ロール11に対するバイト34の刃先部接触位置を、第一ロール11の回転軸11aの回転中心に対して変更する必要があれば、
図5(c)に示すように、枠状体30とサイドプレート5との間にライナ41を設ける。続いて、必要であれば、第一切削部15および第二切削部16のボックス体36の長孔36dとサイドプレート5の長孔5aとの間にボルト42を挿通してナットで締結する。このとき、ボックス体36の長孔36dおよびサイドプレート5の長孔5aに対する、ボルト42の位置によって、第一ロール11に対するバイト34の刃先部接触位置を調整することができる。ここで、第一切削部15および第二切削部16の枠状体30のサイドプレート5に対する固定については、上述の手段に限らず、ボルトおよびナットの締結や万力の締め付けなどの公知に締結手段を用いることができる。
【0052】
その後、第一切削用駆動部17により第一ロール11を回転させ、第二切削用駆動部18により第二ロール12を回転させる。このとき、第一ロール11および第二ロール12の回転方向は、上述の破砕時と反対方向であって上から見て外向きとなる(
図3中の矢印b参照)。また、回転数は、上述の破砕時よりも低い回転数、例えば、8~5rpmの範囲内の所要の回転数(この実施形態では、6.75rpm)となる。
【0053】
次に、第一切削部15の横ねじ軸35を回転操作して、第一ロール11の表面に対して、削る必要のある幅方向の位置にスライダ32を移動する。そして、縦ねじ軸40を回転操作して、バイト34の刃先部を第一ロール11の表面に押し付け、第一ロール11の表面を削る作業を行う。この削り作業中、横ねじ軸35を回転操作して、第一ロール11の表面に対して、幅方向の所要の範囲内を削る。また、第二切削部16についても、第一切削部15と同様に、横ねじ軸35および縦ねじ軸40を回転操作して、第二ロール12の表面の削り作業を行う。
【0054】
第一切削部15の縦ねじ軸40を回転操作して、バイト34の刃先部を第一ロール11の表面から離して、削り作業を終了する。その後、第一切削部15は、枠状体30とサイドプレート5の固定を解除し、枠状体30の位置決めボルト38を締め付ける。これにより、
図5(a)に示すように、ボックス体36が枠状体30に対して相対的に下方に移動して、枠状体30がサイドプレート5から離れる。この状態で、第一切削部15を車輪31を介して第一ガイドレール6上を長さ方向外向きに走行させ、非切削位置に移動させる。第二切削部16も、第一切削部15と同様にして、削り作業を終了し、車輪31を介して第二ガイドレール7上を長さ方向外向きに走行させ、非切削位置に移動させる。
【0055】
以上のように、この実施形態のロールクラッシャ1は、第一ロール11および第二ロールを交換することなく、第一切削部15および第二切削部16により、第一ロール11および第二ロール12の表面を削ることができる。
【0056】
また、第一切削部15および第二切削部16は、車輪31を取り付けたボックス体36を枠状体30に対して上下方向にスライド可能に取り付けられている。このため、ボックス体36が枠状体30に対して相対的に上方にスライドしたとき、枠状体30がサイドプレート5に支持される状態(支持状態)となる。一方、ボックス体36が枠状体30に対して相対的に下方にスライドしたとき、第一切削部15および第二切削部16は車輪31を介して第一ガイドレール6および第二ガイドレール7の上を走行可能な状態(走行可能状態)となる。
【0057】
上述した削り作業の際、第一切削部15(第二切削部16)は、バイト34を介して、回転する第一ロール11(第二ロール12)から長さ方向外向きの反力が作用する。前記支持状態の第一切削部15(第二切削部16)は、枠状体30をサイドプレート5に固定することで、反力を受けることができる。なお、第一切削部15(第二切削部16)の重量が十分に大きい場合、前記支持状態において、枠状体30をサイドプレート5に固定せずに、枠状体30とサイドプレート5の間の摩擦抵抗力で前記反力を受けることができる。
【0058】
また、前記走行可能状態での第一切削部15(第二切削部16)は、車輪31を介して第一ガイドレール6(第二ガイドレール7)上を長さ方向に走行させることができ、上述の切削位置と非切削位置との間で容易に移動させることができる。
【0059】
この実施形態のロールクラッシャ1では、
図2に示すように、第一ロール11を回転させる第一切削用駆動部17と、第二ロール12を回転させる第二切削用駆動部18とを備えるものを例に挙げて説明したが、単一となる第一切削用駆動部17のみを備えるものとし、第一切削用駆動部17により第一ロール11および第二ロール12を回転させてもよい。
【0060】
また、この実施形態のロールクラッシャ1では、
図1に示すように、第一ロール11の表面を削る第一切削部15と、第二ロール12の表面を削る第二切削部16とを備えるものを例に挙げて説明したが、第一切削部15のみを備えるものとして、第一切削部15によって、第一ロール11の表面または第二ロール12の表面を削るようにしてもよい。この場合、第一切削部15を第一ガイドレール6上または第二ガイドレール7上に載せ替えればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ロールクラッシャ
2 フレーム
3 側面板
4 端面板
5 サイドプレート
5a 長孔
6 第一ガイドレール
7 第二ガイドレール
8 カバー
9 ホッパ
11 第一ロール
11a 回転軸
12 第二ロール
12a 回転軸
13 第一駆動部
14 第二駆動部
15 第一切削部
16 第二切削部
17 第一切削用駆動部
18 第二切削用駆動部
30 枠状体
31 車輪
32 スライダ
33 ホルダ
34 バイト(刃)
35 横ねじ軸
36 ボックス体
36d 長孔
37 ボルト
38 位置決めボルト
39 軸受枠
40 縦ねじ軸
41 ライナ
42 ボルト