(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000022
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/02 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01B21/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098530
(22)【出願日】2022-06-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 順吏
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA31
2F069GG01
2F069GG06
2F069GG07
2F069GG31
2F069GG72
2F069HH11
(57)【要約】
【課題】測定対象の測定箇所と測定データとを容易に対応づけられるようにする。
【解決手段】情報処理装置は、測定対象と接触式のセンサとを含む撮像画像を取得する画像取得部と、センサが測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する参照画像格納部と、取得された撮像画像と参照画像との一致を判定する判定部と、を備える。この情報処理装置は、一致が判定されたときにセンサにより測定された測定データを、一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する測定対象の測定箇所と対応づける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象と接触式のセンサとを含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記センサが前記測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する参照画像格納部と、
取得された撮像画像と前記参照画像との一致を判定する判定部と、を備え、
前記一致が判定されたときに前記センサにより測定された測定データを、前記一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する前記測定対象の測定箇所と対応づける、情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記撮像画像の一部である特定部分と、前記参照画像における対応部分との一致を判定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記測定対象の測定箇所として第1測定箇所および第2測定箇所が含まれ、
前記画像取得部は、前記撮像画像として、前記第1測定箇所の測定時になされた第1撮像による第1撮像画像と、前記第2測定箇所の測定時になされた第2撮像による第2撮像画像を取得し、
前記参照画像格納部は、前記参照画像として、前記第1撮像画像に対応する第1参照画像と、前記第2撮像画像に対応する第2参照画像を予め記憶し、
前記判定部は、各撮像画像と対応する参照画像との一致を判定する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記測定対象の測定箇所として第1測定箇所および第2測定箇所が含まれ、
前記第1測定箇所の測定と前記第2測定箇所の測定との時間差を予め記憶する時間差記憶部をさらに備え、
前記撮像画像と前記参照画像との一致に基づいて測定データが前記第1測定箇所と対応づけられた後、前記時間差が経過したときに前記センサにより測定された測定データを、前記第2測定箇所と対応づける、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記撮像画像が取得されてから設定時間内に前記撮像画像と前記参照画像との一致が判定されなかった場合に所定の報知処理を実行する報知部をさらに備える、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記参照画像格納部は、さらに前記センサが測定開始前の待機時に合わせて予め撮像された第2参照画像を予め記憶し、
前記判定部は、前記センサの待機時に取得された撮像画像と前記第2参照画像との一致を判定し、
前記撮像画像と前記第2参照画像との一致が判定されなかった場合に所定の報知処理を実行する報知部をさらに備える、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
測定対象を撮像する撮像部と、
前記測定対象を測定するための接触式のセンサと、
前記測定対象の測定データを処理する情報処理部と、
を備える測定装置であって、
前記情報処理部は、
前記測定対象と前記センサとを含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記センサが前記測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する参照画像格納部と、
取得された撮像画像と前記参照画像との一致を判定する判定部と、を含み、
前記一致が判定されたときに前記センサにより測定された測定データを、前記一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する前記測定対象の測定箇所と対応づける、測定装置。
【請求項8】
接触式のセンサが測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する工程と、
前記測定対象と前記センサとを含む撮像画像を取得する工程と、
取得された撮像画像と前記参照画像との一致を判定する工程と、を含み、
前記一致が判定されたときに前記センサにより測定された測定データを、前記一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する前記測定対象の測定箇所と対応づける、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式センサを用いた測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアゲージなどの接触式センサにより測定対象の寸法を測定する技術が知られている。リニアゲージの接触子を測定対象の表面に当接させることで、接触子と一体のスケールが変位する。このスケールの変位を内蔵の磁気センサにより検出することで、その表面の位置を検出でき、測定対象の寸法を算出できる(特許文献1)。
【0003】
このようなセンサからデータを取得する際、センサにより測定対象のどの部分を測定した情報なのかを特定する必要がある。そこで従来、センサ専用のアプリケーションを利用してその対応関係を取得したり、測定とデータの取り込みとのタイミングとを自動化するプログラムを別途作成するなどの方法がとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサ専用のアプリケーションを採用する場合、そのセンサを含む測定器以外の機器と連携させることは容易でない。また、自動化プログラムの作成は難易度が高く、測定工程などの環境が変わるたびにプログラムを更新する必要がある。いずれにしても汎用性の面で問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は情報処理装置である。この情報処理装置は、測定対象と接触式のセンサとを含む撮像画像を取得する画像取得部と、センサが測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する参照画像格納部と、取得された撮像画像と参照画像との一致を判定する判定部と、を備える。この情報処理装置は、一致が判定されたときにセンサにより測定された測定データを、一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する測定対象の測定箇所と対応づける。
【0007】
本発明のある態様は測定装置である。この測定装置は、測定対象を撮像する撮像部と、測定対象を測定するための接触式のセンサと、測定対象の測定データを処理する情報処理部と、を備える。この情報処理部は、測定対象とセンサとを含む撮像画像を取得する画像取得部と、センサが測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する参照画像格納部と、取得された撮像画像と参照画像との一致を判定する判定部と、を含む。この情報処理部は、一致が判定されたときにセンサにより測定された測定データを、一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する測定対象の測定箇所と対応づける。
【0008】
本発明のある態様は測定方法である。この測定方法は、接触式のセンサが測定対象に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する工程と、測定対象とセンサとを含む撮像画像を取得する工程と、取得された撮像画像と参照画像との一致を判定する工程と、を含む。一致が判定されたときにセンサにより測定された測定データを、一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する測定対象の測定箇所と対応づける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定対象とセンサとを含む撮像画像に基づき、測定対象の測定箇所と測定データとを容易に対応づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る測定システムを模式的に表す平面図である。
【
図2】測定装置の主要部の構成を模式的に表す斜視図である。
【
図6】情報処理装置による測定処理を表すフローチャートである。
【
図7】変形例1にかかる測定対象の測定方法を表す図である。
【
図8】変形例2にかかる測定対象の測定方法を表す図である。
【
図9】変形例3にかかる測定時の処理を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る測定システムを模式的に表す平面図である。
測定システム1は、所定の軌道に沿って順次搬送される測定対象Wの寸法を測定するシステムである。測定システム1は、測定対象Wを搬送する搬送装置2と、測定対象Wが予め定める測定領域Rに位置したときにその測定対象Wの寸法を測定する測定装置4と、搬送装置2および測定装置4を制御する制御装置6を備える。
【0012】
搬送装置2は、本実施形態ではベルトコンベアである。測定装置4は、測定対象Wを撮像する撮像部7と、測定対象Wの各表面の位置を検出するセンサ8と、撮像部7の撮像画像およびセンサ8の検出情報を処理して測定対象Wの寸法を算出する情報処理装置10を含む。センサ8は接触式センサであり、本実施形態ではリニアゲージである(詳細後述)。制御装置6は、搬送装置2を駆動制御する搬送制御部12と、センサ8を駆動制御するセンサ駆動部14を含む。
【0013】
図2は、測定装置4の主要部の構成を模式的に表す斜視図である。
搬送装置2の搬送経路に沿った所定位置に測定領域Rが設定されている。センサ8は、測定領域Rの上方で任意に移動可能に設けられている。すなわち、センサ8は、ベルトコンベアによる搬送方向(X方向)、搬送方向と垂直な奥行方向(Y方向)および上下方向(Z方向)に移動可能であり、センサ駆動部14がその移動を制御する。なお、
図2ではベルトコンベアが左方向に駆動される例が示されているが、右方向に駆動されてもよい。
【0014】
測定対象Wが測定領域Rに到達すると、センサ8が下降してその先端(つまり接触子)が測定対象Wの表面に当接する。この接触子が当接したときに出力されるセンサ信号に基づいて測定対象Wの面の位置が検出される。撮像部7はカメラであり、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)などのイメージセンサ(撮像素子)を備える。このカメラは約100万画素(1224×1024)の解像度を有し、1秒間に最大60枚の撮像画像を取得可能である。
【0015】
撮像部7は、測定対象Wとセンサ8とを含む画像を撮像する。情報処理装置10は、センサ8による測定時に撮像された撮像画像に基づき、測定対象Wの測定箇所を特定できる。すなわち、その測定箇所の位置(
図2の例では高さ)を算出できる。この測定方法の詳細については後述する。
【0016】
図3は、センサ8の構成を表す断面図である。
センサ8は、円筒状の本体20と、本体20に支持されるスピンドル22と、スピンドル22の先端に設けられた接触子24と、スピンドル22の後端部に設けられたスケール26と、スケール26の位置を検出する磁気センサ28を備える。本体20の先端側にはボールスプライン軸受構造30が設けられ、スピンドル22を本体20の軸線方向に摺動可能に支持している。
【0017】
本体20は、外筒32、シリンダハウジング34およびカバーケース36を軸線方向に組み付けて構成される。外筒32にボールスプライン軸受構造30が設けられている。ボールスプライン軸受構造30は、スピンドル22の外周面に設けられたスプライン溝33と、外筒32とスプライン溝33との間に配置される複数のボール35と、これらのボール35を回動自在に保持しながらスピンドル22の軸線方向に移動するリテーナ37を有する。
【0018】
外筒32の先端開口部には、円筒状のパッキン38が設けられている。スピンドル22は、パッキン38を貫通し、本体20から進出又は退避する方向へ駆動される。それにより、センサ8が軸線方向に伸縮するように構成される。
【0019】
シリンダハウジング34の内方には、スピンドル22を軸線方向に駆動するためのエアシリンダ機構40が設けられている。接触子24は本体20から露出し、スピンドル22が駆動されることで測定対象Wの面に着脱する。スケール26は、接触子24と連動して本体20の内部を軸線方向に変位する。スケール26には、位置検出用のパターン(着磁パターン)が形成されている。本体20の内部には、スケール26のパターンと対向するように磁気センサ28が設けられている。
【0020】
このような構成により、スピンドル22が変位したときに、磁気センサ28がスケール26のパターンを位置情報として読み取る。磁気センサ28は、フレキシブルプリント基板44およびコネクタ46を介して信号ケーブル48に接続されている。センサ8の検出信号は、信号ケーブル48を介して情報処理装置10へ出力される。本実施形態ではこのように磁気式のセンサを用いているが、光学式又は静電式のセンサを用いてもよい。
【0021】
図4は、情報処理装置10の機能ブロック図である。
情報処理装置10の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種補助プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0022】
なお、制御装置6(
図1参照)の各構成要素も、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアにより実現されてもよい。情報処理装置10は、本実施形態では制御装置6と別個の装置として構成されるが、制御装置6と一体の装置として構成されてもよい。
【0023】
情報処理装置10は、入出力インタフェース部110、データ処理部112およびデータ格納部114を含む。入出力インタフェース部110は、外部装置又は外部機器とのデータのやりとりを含む入出力インタフェースに関する処理を担当する。データ処理部112は、入出力インタフェース部110により取得されたデータおよびデータ格納部114に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部112は、入出力インタフェース部110およびデータ格納部114のインタフェースとしても機能する。データ格納部114は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0024】
入出力インタフェース部110は、入力部120および出力部122を含む。入力部120は、画像取得部124および測定データ取得部126を含む。画像取得部124は、撮像部7が撮像した撮像画像を取得する。測定データ取得部126は、センサ8により測定された測定データを取得する。出力部122は表示部128を含む。表示部128は、ユーザインタフェースとして各種画像を表示する。
【0025】
データ格納部114は、参照画像格納部140および測定データ格納部142を含む。参照画像格納部140は、センサ8の測定時、つまり接触子24が測定対象Wに接触しているときに合わせて予め撮像された参照画像を記憶する。この参照画像は、センサ8の測定時に取得された撮像画像であることと、測定箇所が測定対象Wのどの部分であるかを判定するための画像であり、測定対象Wに設定された測定箇所の数だけ存在する。測定箇所を示す測定IDに対応づけるように各参照画像が記憶される。測定データ格納部142は、測定がなされるごとにその測定データを測定IDに対応づけて記憶する。データ格納部114は、データ処理部112が演算処理を行う場合のワーキングエリアとして機能するメモリを含む。
【0026】
データ処理部112は、撮像処理部130、測定データ管理部132、判定部134、計時部136および報知部138を含む。撮像処理部130は、撮像部7を制御して測定対象Wとセンサ8とを含む画像を撮像させる。測定データ管理部132は、測定対象Wについて測定箇所を示す測定IDと参照画像とを対応づけて参照画像格納部140に登録する。また、測定データ管理部132は、測定データが取得されるごとにその測定データを測定IDに対応づけて測定データ格納部142に記憶させる。
【0027】
なお、測定対象Wは加工後の製品でもよいし、加工途中の半製品でもよい。測定対象Wが複数種ある場合には、その種別ごとに参照画像が登録される。測定対象Wにおいて測定箇所が複数ある場合には、その測定箇所ごとに参照画像が登録される。
【0028】
判定部134は、取得された撮像画像と前記参照画像との一致を判定する。具体的には、判定部134は、順次取得される撮像画像を参照画像格納部140に登録された複数の参照画像のそれぞれと照合し、その一致性(類似性)を判定する。撮像画像と参照画像との類似度が予め定める判定基準内にあれば両者が一致していると判定する。この一致性の判定は、画像のピクセル単位で行われてもよい。あるいは、各画像について輪郭や特徴的形状を抽出し、それらの一致性を判定してもよい。
【0029】
測定データ管理部132は、撮像画像と参照画像との一致が判定されたときにセンサ8により測定された測定データを、一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する測定対象Wの測定箇所と対応づける。すなわち、該当する測定箇所を示す測定IDと、その測定データとを対応づけて測定データ格納部142に記憶させる。それにより、センサ8による測定結果が保存される。判定部134は、画像の一致を判定するだけであり、その判定結果にセンサ8による測定結果(測定値)が含まれるわけではない。その画像の一致が判定されたときに、判定結果に基づく測定対象Wの測定箇所と、センサ8による測定結果とを対応づけることで、結果的に測定がなされたことになるのである。
【0030】
計時部136は、測定処理のための所定の時間を計時するタイマを駆動する。報知部138は、撮像画像が取得されてから設定時間内に撮像画像と参照画像との一致が判定されなかった場合に所定の報知処理を実行する。報知部138は、測定対象Wの加工精度が基準値を下回る等の加工不備やセンサ8の作動不良などを測定エラーとして表示部128に表示させる。報知部138は、測定エラーを音声などにより報知してもよい。
【0031】
次に、測定対象Wの測定方法について詳細に説明する。
図5は、撮像部7の撮像画像の例を示す。この例では測定対象Wが段差形状を有し、低位置にある第1面F1と、高位置にある第2面F2が測定箇所として設定されている。第1面F1が「第1測定箇所」に該当し、第2面F2が「第2測定箇所」に該当する。
図5(A)は第1面F1の測定時の撮像画像(第1撮像画像)を示し、
図5(B)は第2面F2の測定時の撮像画像(第2撮像画像)を示す。
【0032】
測定対象Wの測定にあたり、搬送制御部12による測定対象Wの搬送制御と、センサ駆動部14によるセンサ8の駆動制御とが連携する。センサ駆動部14(
図1参照)は、測定領域Rの上方にセンサ8を待機させる。搬送制御部12は、測定対象Wが測定領域Rの所定位置に到達すると、搬送装置2のベルトコンベアを一旦停止する。このとき、測定対象Wの第1面F1がセンサ8の直下に位置する。撮像部7は、このときその画角に測定対象Wとセンサ8とが含まれるようにワーキングディスタンスが予め設定されている。
【0033】
そして、センサ駆動部14がセンサ8を待機位置から下降させ、接触子24が第1面F1に当接したとき、つまりセンサ8の検出信号が出力されたときにその下降を停止させる。
図5(A)の例では、センサ8はほぼ最大に伸び切った状態を保持している。撮像部7は、少なくとも接触子24が第1面F1に当接する前後を含む設定時間において連続的な撮像(第1撮像による連写)を実行する。
【0034】
この設定時間は、測定対象Wの加工精度が許容範囲である場合に各測定箇所と接触子24とが接触するタイミングを予め実験や解析により取得し、そのタイミングに対して前後に所定の余裕をもたせたものとしてもよい。例えば参照画像の取得の際に必要十分と認められた時間を設定時間として設定してもよい。
【0035】
判定部134は、このとき取得される複数の撮像画像と、いずれかの参照画像との一致を判定する。第1面F1の加工精度が許容範囲にあるとき、その複数の撮像画像のいずれかと、第1面F1の測定に対応する参照画像(第1参照画像)とが一致することとなる。この一致が判定されたときの測定データが第1面F1の高さ位置を示すものとして記憶される。なお、第1面F1の高さ位置は、センサ8の三次元座標(Z座標)と、センサ8の磁気センサ28が検出するスケール26の変位量に基づいて算出できる。
【0036】
続いて、センサ駆動部14がセンサ8を待機位置へ上昇させる。搬送制御部12はベルトコンベアを所定量駆動する。このとき、測定対象Wの第2面F2がセンサ8の直下に位置する。そして、センサ駆動部14が再びセンサ8を下降させ、接触子24が第2面F2に当接した後にセンサ8の下降を停止させる。
【0037】
図5(B)の例では、第1面F1の測定時と同じ位置までセンサ8を下降させている。一方、第2面F2が第1面F1よりも高位置にあるため、センサ8が所定長さ縮んだ状態となっている。撮像部7は、少なくとも接触子24が第2面F2に当接する前後を含む設定時間において連続的な撮像(第2撮像による連写)を実行する。この設定時間はセンサ8が縮みうる時間を含むものとする。本実施形態ではこの設定時間を第1面F1の測定の場合と同様とするが、変形例においては異ならせてもよい。
【0038】
判定部134は、このとき取得される複数の撮像画像と、いずれかの参照画像との一致を判定する。第2面F2の加工精度が許容範囲にあるとき、その複数の撮像画像のいずれかと、第2面F2の測定に対応する参照画像(第2参照画像)とが一致することとなる。この一致が判定されたときの測定データが第2面F2の高さ位置を示すものとして記憶される。なお、第2面F2の高さ位置は、センサ8の三次元座標(Z座標)と、センサ8の磁気センサ28が検出するスケール26の変位量に基づいて算出できる。
【0039】
なお、変形例においては、第2面F2の測定時におけるセンサ8の下降位置を、第1面F1の測定時の場合と異ならせてもよい。測定対象Wの種別によっては、測定箇所の数が1つの場合、あるいは3つ以上の場合もあり得る。その測定箇所の数や位置に応じて参照画像が用意され、センサ8の駆動および撮像部7の撮像が制御される。
【0040】
図6は、情報処理装置10による測定処理を表すフローチャートである。
本処理は、測定対象Wが測定領域Rに到達し、搬送制御部12およびセンサ駆動部14が測定のための動作を開始したことを契機に実行される。
【0041】
計時部136が図示しないタイマをクリアして計時を開始する(S10)。画像取得部124は、撮像部7にて撮像された撮像画像を順次取得する。判定部134は、第1撮像画像が第1参照画像と一致したと判定すると(S12のY)、その一致に取得された測定データ(第1測定データ)を測定IDに対応づけて保存する(S14)。また、第2撮像画像が第2参照画像と一致したと判定すると(S16のY)、その一致に取得された測定データ(第2測定データ)を測定IDに対応づけて保存する(S18)。
【0042】
そして、予め設定したデータ取得時間が経過したとき(S20のY)、その測定対象Wについて各測定箇所の測定が完了していれば(S22のY)、次の測定対象Wの測定に移行するためにS10へ戻る。その測定対象Wについて各測定箇所の測定が完了していなければ(S22のN)、報知部138が測定エラーを報知する(S24)。すなわち、正常な測定がなされたかったか、又は測定対象Wの加工寸法が設計値から大きくずれていることを示すアラート画像を表示部128に表示させる。なお、「データ取得時間」については、測定対象Wの測定箇所の数に応じて必要十分な時間が予め設定される。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態では、接触式のセンサ8を測定対象Wに接触させて測定データを得るところ、センサ8と測定対象Wを含む撮像画像に基づいて測定箇所と測定データとを対応づけることができる。すなわち、測定箇所については撮像画像から特定し、測定結果はセンサ出力から得る。このため、測定箇所を容易に特定できるとともに、正確な測定データを得ることができる。撮像画像は測定箇所を特定できれば足りるため、撮像画像に基づいて計測する手法よりも画像解像度を低く抑えることができ、撮像部(カメラ)のコストを低減することもできる。
【0044】
撮像画像と参照画像との一致を判定すれば足りるため、専用のアプリケーションを必ずしも要しない。撮像画像と参照画像との一致をトリガとして測定データの取り込む手法を採用するため、測定環境が変わったとしても参照画像を更新すれば足り、プログラムそのものを更新する必要もない。このため、測定装置4としての汎用性が高い。
【0045】
[変形例]
図7は、変形例1にかかる測定対象Wの測定方法を表す図である。
本変形例では、撮像画像と参照画像との比較を画像の全体ではなく一部で行う。すなわち、撮像画像P1における測定箇所ごとに比較対象とする特定部分P2を設定する。ただし、センサ8と測定対象Wとの当接部が含まれるように特定部分P2を設定する。
【0046】
図7の例では、第1面F1の測定に関して特定部分P2が設定されている。判定部134は、撮像画像P1の特定部分P2と、参照画像における対応部分との一致を判定する。この一致が判定されたときの測定データが第1面F1の高さ位置を示すものとして記憶される。なお、第2面F2の測定についても同様である。
【0047】
このように撮像画像の一部を判定対象とすることで、判定処理時間を短縮できる。また、判定対象とする画像部分を小さくすることで、測定対象Wの背景の影響がなくなるため、判定精度を向上させることも可能となる。
【0048】
図8は、変形例2にかかる測定対象Wの測定方法を表す図である。
本変形例では、測定装置204が、センサ8(第1センサ)およびセンサ208(第2センサ)を備える。センサ8はZ方向に駆動され、測定対象Wの上面(第1測定箇所)の位置を測定する。センサ208はY方向に駆動され、測定対象Wの側面(第2測定箇所)の位置を測定する。
【0049】
図8の例では、センサ208による測定面が、撮像部7側からみて測定対象Wの背面となる。このため、測定時にセンサ208の接触子224が測定対象Wの背後に隠れ、撮像画像には接触子224と測定対象Wとの接触状態が表れない。そこで本変形例では、第1測定箇所の測定と第2測定箇所の測定との時間差を設定する。データ格納部114が時間差記憶部を含み、その時間差記憶部が時間差を予め記憶する。この「時間差」は、参照画像を取得する際に計測してもよい。
【0050】
すなわち、センサ8による測定がなされた所定時間後にセンサ208の測定がなされる。判定部134は、第1測定箇所の測定について撮像画像と参照画像との一致を判定する。測定データ管理部132は、撮像画像と参照画像との一致が判定されたときにセンサ8により測定された測定データを、一致が判定されたときに取得された撮像画像に対応する測定対象Wの測定箇所と対応づける。そして、測定データ管理部132は、その測定データが第1測定箇所と対応づけられた後、所定時間として上記時間差が経過したときにセンサ208により測定された測定データを、第2測定箇所と対応づける。
【0051】
このように、センサと測定対象との当接状態が撮像画像に表れる場合にその撮像画像と参照画像との一致に基づいて測定データ(第1測定データ)を取得してもよい。そして、センサと測定対象との当接状態が撮像画像に表れない場合には、第1測定データの取得からの上記時間差の経過に応じて測定データ(第2測定データ)を取得してもよい。
【0052】
図9は、変形例3にかかる測定時の処理を表す図である。
本変形例では、測定開始に先立ってセンサ8の故障有無を判定し、故障を判定したときにその旨を示すエラー報知を実行する。この判定処理をセンサ8の待機時に行う。
【0053】
ここでは故障の一例として、スピンドル22(
図3参照)の摺動部に異物が噛み込むなどして、センサ8が待機状態において縮んだ状態となる場合を想定する。このような場合、センサ8による正常な測定は期待できない。そこで本変形例では、このような故障の有無を撮像画像の一致性に基づいて判定する。
【0054】
参照画像格納部140は、センサ8が正常であるときに判定基準となる第2参照画像を予め記憶する。この第2参照画像は、測定開始前の待機時に合わせて予め撮像されたものであり、
図9(A)に示すように、センサ8が伸び切った状態となっている。
【0055】
判定部134は、センサ8の待機時に取得された撮像画像と第2参照画像との一致を判定する。報知部138は、撮像画像と第2参照画像との一致が判定されなかった場合に所定の報知処理を実行する。報知部138は、センサ8の故障を示すアラートを表示部128に表示させる。報知部138は、アラートを音声などにより報知してもよい。
【0056】
[その他の変形例]
上記実施形態では、接触式のセンサ8としてリニアゲージを例示したが、タッチプローブその他のセンサを採用してもよい。タッチプローブの場合には、接触子につながる部分を伸縮させる機能はない。
【0057】
上記実施形態では、搬送装置2としてベルトコンベアを例示したが、軌道上をレールに沿って移動する荷台等の移動体その他の搬送装置を採用してもよい。
【0058】
上記実施形態では述べなかったが、情報処理装置10は、センサ8の測定データに基づいて測定対象Wの寸法を算出してもよい。判定部134は、算出された寸法と設計寸法との誤差が予め定める判定基準値を超えた場合、測定対象Wを不良品と判定してもよい。そして、報知部138が不良品である旨を報知してもよい。
【0059】
上記実施形態では、単一のセンサ8により測定対象Wの測定を行う構成を示したが、複数のセンサにより測定対象の複数の測定箇所を測定してもよい。複数のセンサによる測定を順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。その場合、参照画像格納部は、複数のセンサによる測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する。判定部は、取得された撮像画像と参照画像との一致を判定する。
【0060】
上記実施形態では述べなかったが、センサが測定対象に形成された穴の寸法を測定してもよい。その場合、センサの接触子が穴に挿入されることで撮像画像に表れなくなる可能性がある。その場合でも、センサが穴の面に接触している測定時に合わせて予め撮像された参照画像を記憶する。判定部は、取得された撮像画像と参照画像との一致を判定する。この場合、撮像画像および参照画像のいずれにも接触子は表れないが、画像どうしの一致を判定することはできる。測定時に撮像した参照画像を予め記憶しておき、撮像画像をこれと比較する手法をとることで、センサと測定対象との当接状態が画像に表れるか否かは問題ではなくなる。
【0061】
上記実施形態では、「センサの測定時」をセンサ8と測定対象Wとの接触時としたが、上記実施形態のようにセンサ8が伸縮するタイプである場合、センサ8が測定対象Wに接触した瞬間としてもよいし、接触から所定時間(センサが縮む時間)後としてもよい。接触から所定時間後とする場合、撮像時は接触時としてもよい。
【0062】
上記実施形態および変形例では、測定対象の測定箇所として第1測定箇所および第2測定箇所を例示したが、さらに第3測定箇所があるなど、測定箇所が3つ以上あってもよいことは言うまでもない。測定箇所の数と同数の参照画像を用意するなど、測定箇所の数に応じた数の参照画像を予め記憶してもよい。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 測定システム、2 搬送装置、4 測定装置、6 制御装置、7 撮像部、8 センサ、10 情報処理装置、12 搬送制御部、14 センサ駆動部、20 本体、22 スピンドル、24 接触子、26 スケール、28 磁気センサ、30 ボールスプライン軸受構造、40 エアシリンダ機構、110 入出力インタフェース部、112 データ処理部、114 データ格納部、120 入力部、122 出力部、124 画像取得部、126 測定データ取得部、128 表示部、130 撮像処理部、132 測定データ管理部、134 判定部、136 計時部、138 報知部、140 参照画像格納部、142 測定データ格納部、204 測定装置、208 センサ、224 接触子、F1 第1面、F2 第2面、P1 撮像画像、P2 特定部分、R 測定領域、W 測定対象。