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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022009
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】複合電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240208BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240208BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240208BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/00 B
H01F27/00 S
H05K3/46 Q
H05K1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125277
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】露谷 和俊
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏之
(72)【発明者】
【氏名】古橋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 卓也
【テーマコード(参考)】
4E351
5E070
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351BB11
4E351BB13
4E351BB15
4E351BB33
4E351CC06
4E351DD04
4E351GG20
5E070AA05
5E070AB01
5E070CB12
5E070CB13
5E070DB08
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA38
5E316BB11
5E316CC01
5E316CC32
5E316DD23
5E316DD24
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE33
5E316GG17
5E316GG22
5E316HH24
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】電子部品が埋め込まれた絶縁層の表裏に配線構造体が設けられた構造を有する複合電子部品を薄型化する。
【解決手段】複合電子部品1は、電子部品2が埋め込まれた絶縁層12と、絶縁層12の表面12b側に位置する絶縁層11及びその両面に配置された導体層C0,C1を含む第1の配線構造体と、絶縁層12の表面12a側に位置し、絶縁層13,14及びその両面に配置された導体層C2~C4を含む第2の配線構造体とを備える。導体層C0は絶縁層11に埋め込まれ、導体層C4は絶縁層14の表面から突出している。このように、導体層C0が絶縁層11に埋め込まれていることから、全体を薄型化することができるとともに、表面の平滑性が高められる。また、導体層C4については絶縁層14の表面から突出していることから、その一部を外部端子として用いることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が埋め込まれた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の一方の表面側に位置し、少なくとも1層の第2の絶縁層及びその両面に配置された導体層を含む第1の配線構造体と、
前記第1の絶縁層の他方の表面側に位置し、少なくとも1層の第3の絶縁層及びその両面に配置された導体層を含む第2の配線構造体と、を備え、
前記第1の配線構造体に含まれる導体層のうち最表層に位置する第1の導体層は、最表層に位置する前記第2の絶縁層に埋め込まれ、
前記第2の配線構造体に含まれる導体層のうち最表層に位置する第2の導体層は、最表層に位置する前記第3の絶縁層の表面から突出している、複合電子部品。
【請求項2】
前記第1の配線構造体の表面を覆う第1のソルダーレジストと、
前記第2の配線構造体の表面を覆う第2のソルダーレジストと、をさらに備え、
前記第1の導体層は、露出することなく前記第1のソルダーレジストで覆われ、
前記第2の導体層の一部は、前記第2のソルダーレジストで覆われることなく露出している、請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項3】
前記第1の導体層の側面と前記第2の絶縁層の間には隙間が存在し、前記隙間に前記第1のソルダーレジストが充填されている、請求項2に記載の複合電子部品。
【請求項4】
前記第1の配線構造体の表面を覆う第1のソルダーレジストと、
前記第2の配線構造体の表面を覆う第2のソルダーレジストと、をさらに備え、
前記第1の導体層の一部は、前記第1のソルダーレジストで覆われることなく露出し、
前記第2の導体層の一部は、前記第2のソルダーレジストで覆われることなく露出している、請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項5】
前記第1の導体層の側面と前記第2の絶縁層の間には隙間が存在し、前記隙間に前記第1のソルダーレジストが充填されている、請求項4に記載の複合電子部品。
【請求項6】
前記第1のソルダーレジストを介して前記第1の導体層を覆う磁性樹脂層をさらに備える、請求項2に記載の複合電子部品。
【請求項7】
最表層に位置する前記第2の絶縁層は磁性材料を含む、請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項8】
前記第1の導体層の側面と前記第2の絶縁層の間には隙間が存在し、前記隙間に磁性材料が充填されている、請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項9】
前記第1の導体層は、第1のコイルパターンを含み、
前記第1の配線構造体は、平面視で前記第1のコイルパターンと重なる第2のコイルパターンを含む第3の導体層をさらに含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項10】
前記第2の配線構造体は、第3のコイルパターンを含む第4の導体層と、平面視で前記第3のコイルパターンと重なる第4のコイルパターンを含む第5の導体層とをさらに含み、
前記第3のコイルパターンは前記第1のコイルパターンに接続され、
前記第4のコイルパターンは前記第2のコイルパターンに接続される、請求項9に記載の複合電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複合電子部品に関し、特に、電子部品が埋め込まれた絶縁層と、絶縁層の表裏に設けられた配線構造体とを備える複合電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁層に電子部品を埋め込んだ構造を有するプリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-226013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品が埋め込まれた絶縁層の表裏にさらに配線構造体を設けることによって複合電子部品を構成する場合、絶縁層の層数が増加することから、よりいっそうの薄型化が求められる。
【0005】
本開示においては、電子部品が埋め込まれた絶縁層の表裏に配線構造体が設けられた構造を有する、薄型化可能な複合電子部品が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る複合電子部品は、電子部品が埋め込まれた第1の絶縁層と、第1の絶縁層の一方の表面側に位置し、少なくとも1層の第2の絶縁層及びその両面に配置された導体層を含む第1の配線構造体と、第1の絶縁層の他方の表面側に位置し、少なくとも1層の第3の絶縁層及びその両面に配置された導体層を含む第2の配線構造体とを備え、第1の配線構造体に含まれる導体層のうち最表層に位置する第1の導体層は、最表層に位置する第2の絶縁層に埋め込まれ、第2の配線構造体に含まれる導体層のうち最表層に位置する第2の導体層は、最表層に位置する第3の絶縁層の表面から突出している。
【0007】
本開示によれば、一方の最表層に位置する第1の導体層が第2の絶縁層に埋め込まれていることから、全体を薄型化することができるとともに、第1の配線構造体の表面の平滑性が高められる。また、他方の最表層に位置する第2の導体層については第3の絶縁層の表面から突出していることから、その一部を外部端子として用いることが可能となる。
【0008】
本開示の一側面に係る複合電子部品は、第1の配線構造体の表面を覆う第1のソルダーレジストと、第2の配線構造体の表面を覆う第2のソルダーレジストとをさらに備え、第1の導体層は露出することなく第1のソルダーレジストで覆われ、第2の導体層の一部は第2のソルダーレジストで覆われることなく露出していても構わない。これよれば、第1の配線構造体の表面の平滑性が高いことから、第1のソルダーレジストの膜厚を薄くすることが可能となる。
【0009】
本開示において、第1の導体層の側面と第2の絶縁層の間には隙間が存在し、隙間に第1のソルダーレジストが充填されていても構わない。これよれば、第1の導体層と第1のソルダーレジストの密着性が高められる。
【0010】
本開示の一側面に係る複合電子部品は、第1のソルダーレジストを介して第1の導体層を覆う磁性樹脂層をさらに備えていても構わない。また、最表層に位置する第2の絶縁層は、磁性材料を含んでいても構わない。さらに、第1の導体層の側面と第2の絶縁層の間には隙間が存在し、隙間に磁性材料が充填されていても構わない。これらよれば、第1の導体層に位置するコイルパターンなどの磁気回路の磁気特性を高めることが可能となる。
【0011】
本開示において、第1の導体層は第1のコイルパターンを含み、第1の配線構造体は、平面視で第1のコイルパターンと重なる第2のコイルパターンを含む第3の導体層をさらに含んでいても構わない。これよれば、第1及び第2のコイルパターンを磁気結合させることが可能となる。
【0012】
本開示において、第2の配線構造体は、第3のコイルパターンを含む第4の導体層と、平面視で第3のコイルパターンと重なる第4のコイルパターンを含む第5の導体層とをさらに含み、第3のコイルパターンは第1のコイルパターンに接続され、第4のコイルパターンは第2のコイルパターンに接続されていても構わない。これよれば、第3及び第4のコイルパターンを磁気結合させるとともに、第1及び第2のコイルパターンからなる回路と第3及び第4のコイルパターンからなる回路を直列に接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本開示に係る技術によれば、電子部品が埋め込まれた絶縁層の表裏に配線構造体が設けられた構造を有する、薄型化可能な複合電子部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示に係る技術の一実施形態による複合電子部品1の外観を示す略斜視図である。
図2図2(a)は図1に示すA-A線に沿った断面を一方向側から見た略断面図であり、図2(b)は図1に示すA-A線に沿った断面を逆方向側から見た略断面図である。
図3図3は、複合電子部品1の略分解斜視図である。
図4図4は、導体層C4に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
図5図5は、導体層C3に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
図6図6は、導体層C2に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
図7図7は、ESD保護部品2が埋め込まれた層の略平面図である。
図8図8は、導体層C1に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
図9図9は、導体層C0に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。
図10図10は、複合電子部品1の等価回路図である。
図11図11は、図2(a)に示す領域Bの模式的な拡大図である。
図12図12(a),(b)は、図11に示す領域Cの模式的な拡大図である。
図13図13は、図2(a)に示す領域Bの第1の変形例による模式的な拡大図である。
図14図14は、図2(a)に示す領域Bの第2の変形例による模式的な拡大図である。
図15図15は、図2(a)に示す領域Bの第3の変形例による模式的な拡大図である。
図16図16は、図2(a)に示す領域Bの第4の変形例による模式的な拡大図である。
図17図17は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図18図18は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図19図19は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図20図20は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図21図21は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図22図22は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図23図23は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図24図24は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図25図25は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図26図26は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図27図27は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図28図28は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図29図29は、複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
図30図30は、導体層C0の一部を露出させた例を示す模式的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による複合電子部品1の外観を示す略斜視図である。
【0017】
本実施形態による複合電子部品1は表面実装型のチップ部品であり、図1に示すように、素体10と、素体10の表面にアレイ状に配列された複数の外部端子とを備えている。複数の外部端子は、8つの信号端子20~27及び2つのグランド端子28,29からなる。
【0018】
図2(a)は図1に示すA-A線に沿った断面を一方向側から見た略断面図であり、図2(b)は図1に示すA-A線に沿った断面を逆方向側から見た略断面図である。
【0019】
図2(a)及び(b)に示すように、素体10は、樹脂などからなる絶縁層11~14がこの順に積層された構造を有している。このうち、絶縁層11は絶縁層12の一方の表面12b側に設けられ、絶縁層13,14は絶縁層12の他方の表面12a側に設けられている。絶縁層12の一方の表面12b側には導体層C1が形成される。導体層C1は絶縁層11によって覆われる。絶縁層11の表面には、導体層C0が形成される。導体層C0はソルダーレジスト31によって覆われる。絶縁層11及びその両面に配置された導体層C0,C1は、第1の配線構造体を構成する。導体層C0,C1は、それぞれ絶縁層11,12に埋め込まれている。これにより、導体層C0が絶縁層11の表面から突出するように設けられている場合と比べて、第1の配線構造体の最表面の平坦性が高められることから、ソルダーレジスト31の厚さを薄くしても、十分な絶縁特性を確保することが可能となる。図2(a)及び(b)に示す例では、第1の配線構造体に1層の絶縁層11が含まれているが、第1の配線構造体に含まれる絶縁層の層数については特に限定されない。
【0020】
絶縁層12の他方の表面12a側には導体層C2が形成される。導体層C2は絶縁層13によって覆われる。絶縁層13の表面には、導体層C3が形成される。導体層C3は絶縁層14によって覆われる。絶縁層14の表面には、導体層C4が形成される。導体層C4はソルダーレジスト32によって覆われる。絶縁層13,14及びこれらの両面に配置された導体層C2~C4は、第2の配線構造体を構成する。導体層C2,C3は、それぞれ絶縁層13,14に埋め込まれている。これに対し、導体層C4は、絶縁層14の表面から突出している。図2(a)及び(b)に示す例では、第2の配線構造体に2層の絶縁層13,14が含まれているが、第2の配線構造体に含まれる絶縁層の層数については特に限定されない。
【0021】
絶縁層11~14は、いずれも表裏に導体層が存在する層間膜であり、その意味においてソルダーレジスト31,32は絶縁層に該当しない。したがって、最表層に位置する絶縁層は、絶縁層11,14である。図2(a)及び(b)に示す例では、ソルダーレジスト31は、絶縁層11の最表層の全面を覆っている。これにより、図2(a)及び(b)に示す例では、導体層C0は、露出することなくソルダーレジスト31で覆われる。これに対し、ソルダーレジスト32には部分的に開口が設けられており、開口から露出する導体層C4の一部が外部端子として用いられる。
【0022】
絶縁層12にはESD保護部品2が埋め込まれている。ESD保護部品2は半導体基板によって構成されるため、絶縁層11~14とは熱膨張係数が大きく異なっている。しかしながら、本実施形態においては、ESD保護部品2が積層方向における略中央部に埋め込まれ、その両側に絶縁層11,13,14が設けられていることから、積層方向における対称性を厚みの調整により調整する自由度が高く、温度変化に起因する複合電子部品1全体の反りが発生しにくい。
【0023】
図3は、複合電子部品1の略分解斜視図である。
【0024】
図3に示すように、複合電子部品1にはコイルパターン41~48が埋め込まれている。このうち、コイルパターン41,42は導体層C3に配置され、コイルパターン43,44は導体層C2に配置され、コイルパターン45,46は導体層C1に配置され、コイルパターン47,48は導体層C0に配置される。コイルパターン41,43は絶縁層13を介して平面視で互いに重なっており、コイルパターン42,44は絶縁層13を介して平面視で互いに重なっている。また、コイルパターン45,47は絶縁層11を介して平面視で互いに重なっており、コイルパターン46,48は絶縁層11を介して平面視で互いに重なっている。
【0025】
図4図6図8及び図9は、それぞれ導体層C4、C3、C2、C1及びC0に設けられた導体パターンの形状を示す略平面図である。また、図7は、ESD保護部品2が埋め込まれた層の略平面図である。ここで、図4図9に示すA-A線は、図2(a)及び(b)に示す断面に対応している。
【0026】
図4に示すように、導体層C4には、導体パターン50~59及びグランドパターンGPが設けられている。導体パターン50~57のうちソルダーレジスト32から露出する部分は表面処理され、それぞれ信号端子20~27として用いられる。導体パターン58,59のうちソルダーレジスト32から露出する部分は表面処理され、それぞれグランド端子28,29として用いられる。また、導体パターン58,59は、グランドパターンGPを介して互いに接続されている。グランドパターンGPは直線的に延在する導体パターンであり、その幅は導体パターン58,59の幅よりも狭い。このように、グランドパターンGPと信号端子20~27及び導体パターン58,59は、互いに同じ導体層C4に配置されていることから、グランドパターンGPを設けるための専用の導体層を追加する必要はない。
【0027】
図5に示すように、導体層C3には、コイルパターン41,42と導体パターン60,61,63~66が設けられている。コイルパターン41の外周端は、ビア導体102を介して導体パターン52に接続されている。コイルパターン42の外周端は、ビア導体107を介して導体パターン57に接続されている。また、導体パターン60,61,63~66は、絶縁層14に設けられたビア導体100,101,103~106を介して、それぞれ導体パターン50,51,53~56に接続されている。コイルパターン41とコイルパターン42は、ギャップG1を介して隣り合っている。導体層C3においては、ギャップG1にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン41とコイルパターン42は、絶縁層14を介して直接隣り合っている。
【0028】
図6に示すように、導体層C2には、コイルパターン43,44と導体パターン70~76が設けられている。コイルパターン43の外周端は、ビア導体113を介して導体パターン63に接続されている。コイルパターン44の外周端は、ビア導体116を介して導体パターン66に接続されている。また、導体パターン70~74は、ビア導体110,111,114,115,118を介して、それぞれ導体パターン60,61,64,65,68に接続されている。導体パターン75,76は、ビア導体112,117を介して、それぞれコイルパターン41,42の内周端に接続されている。コイルパターン43とコイルパターン44は、ギャップG1を介して隣り合っている。導体層C2においては、ギャップG1にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン43とコイルパターン44は、絶縁層13を介して直接隣り合っている。
【0029】
コイルパターン41~44は、いずれも導体パターンが約4ターン巻回された構成を有している。そして、コイルパターン41とコイルパターン43は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。同様に、コイルパターン42とコイルパターン44は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。さらに、コイルパターン41とコイルパターン42のパターン形状は平面視で対称形であり、コイルパターン43とコイルパターン44のパターン形状は平面視で対称形である。
【0030】
図7に示すように、ESD保護部品2の表面には、端子電極80~87が設けられている。端子電極80~83は、絶縁層12に設けられたビア導体120~123を介して、それぞれ導体パターン70~73に接続される。また、端子電極84~87は、絶縁層12に設けられたビア導体124~127を介して、導体パターン74に共通に接続される。
【0031】
図8に示すように、導体層C1には、コイルパターン45,46と導体パターン91,93,94,97が設けられている。コイルパターン45の外周端は、ビア導体130を介して導体パターン70に接続される。コイルパターン46の外周端は、ビア導体135を介して導体パターン73に接続される。コイルパターン45の内周端は、ビア導体132を介して導体パターン75に接続される。コイルパターン46の内周端は、ビア導体136を介して導体パターン76に接続される。また、導体パターン91,94は、ビア導体131,134を介して、それぞれ導体パターン71,72に接続される。さらに、導体パターン93,97は、ビア導体133,137を介して、それぞれコイルパターン43,44の内周端に接続される。コイルパターン45とコイルパターン46は、ギャップG2を介して隣り合っている。導体層C1においては、ギャップG2にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン45とコイルパターン46は、絶縁層12を介して直接隣り合っている。
【0032】
図9に示すように、導体層C0には、コイルパターン47,48が設けられている。コイルパターン47の外周端及び内周端は、ビア導体141,143を介して、それぞれ導体パターン91,93に接続されている。コイルパターン48の外周端及び内周端は、ビア導体144,147を介して、それぞれ導体パターン94,97に接続されている。コイルパターン47とコイルパターン48は、ギャップG2を介して隣り合っている。導体層C0においては、ギャップG2にグランドパターンなどが設けられておらず、コイルパターン47とコイルパターン48は、絶縁層11を介して直接隣り合っている。
【0033】
コイルパターン45~48は、いずれも導体パターンが約5ターン巻回された構成を有している。そして、コイルパターン45とコイルパターン47は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。同様に、コイルパターン46とコイルパターン48は積層方向に重なり、そのパターン形状は外周端及び内周端の位置を除いてほぼ一致している。さらに、コイルパターン45とコイルパターン46のパターン形状は平面視で対称形であり、コイルパターン47とコイルパターン48のパターン形状は平面視で対称形である。
【0034】
図10は、本実施形態による複合電子部品1の等価回路図である。
【0035】
図10に示すように、本実施形態による複合電子部品1においては、信号端子20,22間にコイルパターン45,41が直列に接続され、信号端子21,23間にコイルパターン47,43が直列に接続され、信号端子24,26間にコイルパターン48,44が直列に接続され、信号端子25,27間にコイルパターン46,42が直列に接続される。そして、コイルパターン41,43が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF1が構成され、コイルパターン42,44が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF2が構成され、コイルパターン45,47が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF3が構成され、コイルパターン46,48が磁気結合することによってコモンモードフィルタCMF4が構成される。さらに、信号端子20,21,24,25とグランド端子28,29の間には、ESD保護部品2に集積された保護素子が挿入される。これにより、本実施形態による複合電子部品1は、ESD保護機能付きのコモンモードフィルタのアレイを構成する。グランド端子29は、グランドパターンGPを介してESD保護部品2に接続される。
【0036】
グランドパターンGPは、導体パターン58と導体パターン59を接続することによって、グランド端子28とグランド端子29を接続する役割を果たす。ここで、導体パターン59には対応するビア導体は設けられておらず、したがって、グランド端子29に与えられたグランド電位は、導体パターン59及びグランドパターンGPを介して、導体パターン58に供給される。つまり、グランド端子29は、いわゆるダミー端子として用いられる。このようなグランド端子29を設けているのは、本実施形態による複合電子部品1を回路基板に実装した際、実装強度を十分に確保するためである。また、平面視で導体パターン59と重なる位置にはビア導体が設けられていないことから、導体パターン59には剥離が生じやすいが、本実施形態においてはグランドパターンGPを介して導体パターン59が導体パターン58に繋がっていることから、導体パターン59の剥離も防止される。
【0037】
図11は、図2(a)に示す領域Bの模式的な拡大図である。また、図12(a)は、図11に示す領域Cの模式的な拡大図である。
【0038】
図11及び図12(a)に示すように、コイルパターン47などを含む導体層C0の側面と絶縁層11の間には隙間Sが存在しており、この隙間Sにソルダーレジスト31の一部が充填されている。導体層C0の側面とは、導体層C0の表面のうち積層方向と略平行な面を指す。これにより、導体層C0は、図11に示す上面において絶縁層11と接し、下面及び側面においてソルダーレジスト31と接することになる。このため、導体層C0とソルダーレジスト31の密着性が高められる。また、図11に示す領域Cの模式的な拡大図である図12(a)に示すように、導体層C0の最表面である下面151は、絶縁層11の最表面152に対してセットバックしていても構わない。これによれば、導体層C0を覆う部分においてソルダーレジスト31の厚みが若干増加することから、ソルダーレジスト31による導体層C0の絶縁性が高められる。
【0039】
このように、本実施形態による複合電子部品1は、一方の最表層側に位置する導体層C0が絶縁層11に埋め込まれていることから、全体の厚さを薄くすることができるとともに、一方の最表層の平滑性が高められることからソルダーレジスト31の厚さを薄くすることも可能となる。これにより、本実施形態によれば、薄型化された複合電子部品1を提供することができる。また、他方の最表層側に位置する導体層C4については絶縁層14の表面から突出していることから、ソルダーレジスト32に開口部を設けることにより、ソルダーレジスト32から露出する部分を外部端子として用いることが可能となる。
【0040】
しかも、複合電子部品1を回路基板に実装した場合に、回路基板との距離が近いコイルパターン41~44のターン数、配線長及びコイル径よりも、回路基板との距離が遠いコイルパターン45~48のターン数、配線長及びコイル径を大きくしていることから、よりインダクタンスの大きいコイルパターン45~48が回路基板の影響を受けにくくなる。
【0041】
また、ESD保護部品2が埋め込まれた絶縁層12の他方の表面12a側にコイルパターン41~44を配置し、一方の表面12b側にコイルパターン45~48を配置していることから、各コモンモードフィルタのインダクタンスを十分に高めることができるとともに、絶縁層11~14とESD保護部品2の熱膨張係数の差に起因する複合電子部品1の反りを低減することが可能となる。
【0042】
また、コイルパターン41~44とコイルパターン45~48が積層方向に十分に離れており、両者のパターン形状、具体的には径及びターン数が互いに異なっていることから、両者間に生じる磁気結合が抑えられる。このため、特性調整のために、例えばコイルパターン41~44のパターン形状を変更しても、コイルパターン45~48の特性がほとんど変化しないことから、設計変更が容易となる。しかも、同じ導体層に位置する2つのコイルパターンが平面視で対称形であることから、2つのコモンモードフィルタに特性差がほとんど生じないとともに、パターン設計も容易となる。
【0043】
図13は、図2(a)に示す領域Bの第1の変形例による模式的な拡大図である。図13に示す例では、ソルダーレジスト31の表面が磁性樹脂層15で覆われている。このように、ソルダーレジスト31を介して導体層C0を覆う磁性樹脂層15を設ければ、コイルパターン45~48の磁気特性を高めることが可能となる。しかも、磁性樹脂層15はソルダーレジスト31上に設けられていることから、磁性樹脂層15の材料として導電性材料を用いることも可能である。さらに、磁性樹脂層15にESD保護部品2と近い熱膨張係数を有する材料を使用することで、複合電子部品1の反りを低減することが可能である。
【0044】
図14は、図2(a)に示す領域Bの第2の変形例による模式的な拡大図である。図14に示す例では、絶縁層11に磁性材料が含まれており、これにより絶縁層11の透磁率が大幅に高められている。これよれば、コイルパターン45~48の磁気特性をより高めることが可能となる。
【0045】
図15は、図2(a)に示す領域Bの第3の変形例による模式的な拡大図である。図15に示す例では、ソルダーレジスト31に磁性材料が含まれており、これによりソルダーレジスト31の透磁率が大幅に高められている。これよれば、コイルパターン45~48の磁気特性をより高めることが可能となる。ソルダーレジスト31に添加する磁性フィラーとしては、隙間Sに入り込むことが可能な粒径サイズのフィラーが含まれていることが好ましい。これよれば、隙間Sに磁性材料を充填することが可能となる。
【0046】
図16は、図2(a)に示す領域Bの第4の変形例による模式的な拡大図である。図16に示す例では、ソルダーレジスト31に磁性材料が含まれているとともに、絶縁層11の表面にリセス部160が設けられている。これよれば、絶縁層11に設けられたリセス部160にも磁性材料を含むソルダーレジスト31が入り込むことから、コイルパターン45~48の磁気特性をより高めることが可能となる。リセス部160の深さについては、導体層C0の厚みよりも大きくても構わないし、導体層C0の厚みよりも小さくても構わないし、埋め込まれた電子部品へ到達しない程度に導体層C1まで到達しても構わない。リセス部160の形成方法としては、レーザー加工やブラスト加工が挙げられる。
【0047】
次に、本実施形態による複合電子部品1の製造方法について説明する。
【0048】
図17図29は、本実施形態による複合電子部品1の製造方法を説明するためのプロセス図である。
【0049】
まず、キャリア付き銅箔200を用意し、その表面にレジストパターン201を形成する(図17)。キャリア付き銅箔200は、2層の銅箔の間に剥離層が設けられた構造を有している。レジストパターン201は、導体層C0のネガパターンである。この状態で、電解メッキを行い、レジストパターン201を除去することによって導体層C0を形成する(図18)。次に、導体層C0が埋め込まれるよう、キャリア付き銅箔200の表面に絶縁層11を形成する(図19)。これにより、導体層C0に位置する導体パターンは、側面及び上面が絶縁層11によって覆われた状態となる。
【0050】
次に、ビア導体を形成すべき箇所にビア202を形成することによって導体層C0の一部を露出させた後、無電解メッキによって絶縁層11の表面にシード層203を形成する(図20)。次に、シード層203の表面にレジストパターン204を形成した後、電解メッキを行うことによって導体層C1を形成する(図21)。次に、レジストパターン204を除去した後(図22)、導体層C1が埋め込まれるよう、絶縁層11の表面に絶縁層12Aを形成し、その表面にESD保護部品2を搭載する(図23)。これにより、導体層C1に位置する導体パターンは、側面及び上面が絶縁層12Aによって覆われた状態となる。次に、ESD保護部品2が埋め込まれるよう、絶縁層12Aの表面に絶縁層12Bを形成する(図24)。これにより、ESD保護部品2は、絶縁層12A.12Bからなる絶縁層12に埋め込まれる。
【0051】
次に、図20図22を用いて説明したプロセスを繰り返すことにより、絶縁層12の表面に導体層C2を形成した後、導体層C2が埋め込まれるよう、絶縁層12の表面に絶縁層13を形成する(図25)。このプロセスを繰り返すことにより、絶縁層13の表面に導体層C3を形成した後、導体層C3が埋め込まれるよう、絶縁層13の表面に絶縁層14を形成する(図26)。次に、絶縁層14の表面に導体層C4を形成した後、キャリア付き銅箔200に設けられた剥離層を介して銅箔の1層を剥離し(図27)、キャリア付き銅箔200の残った銅箔をエッチングにより除去する(図28)。このエッチングにより、導体層C4の形成に用いたシード層も除去される。この時、エッチング時間などの条件を調整することにより、導体層C0の側面と絶縁層11の間に隙間Sを形成することが可能である。隙間Sは、図12(b)に示すように、ソルダーレジスト31の充填性向上のため、深さ方向に向かって狭くなるテーパー形状であってもよい。隙間Sは、導体層C0の側面の全面を露出させるものである必要はなく、図12(b)に示すように、導体層C0の側面の一部が絶縁層11と接したままであっても構わない。また、よりエッチング時間を長く設定すれば、図12(a),(b)に示したように、導体層C0の下面151を絶縁層11の最表面152に対して窪ませることも可能である。そして、絶縁層11,14の最表面にそれぞれソルダーレジスト31,32を形成した後(図29)、表面処理により信号端子21~27及びグランド端子28,29を形成すれば、本実施形態による複合電子部品1が完成する。
【0052】
このように、本実施形態による複合電子部品1の製造プロセスにおいては、ESD保護部品2が埋め込まれた絶縁層12を中心としてその表裏に配線構造体を積層するのではなく、導体層C0から導体層C4の順に積層していることから、一方の最表層側に位置する導体層C0が絶縁層11に埋め込まれた構造を得ることが可能となる。しかも、エッチング条件の調整によって、導体層C0の側面と絶縁層11の間に隙間Sを形成することも可能となる。
【0053】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0054】
例えば、上記実施形態では、絶縁層12にESD保護部品2を埋め込んでいるが、絶縁層12に埋め込む電子部品がこれに限定されるものではない。
【0055】
また、上記説明した図2(a)及び(b)に示す例では、導体層C0の全面がソルダーレジスト31で覆われているが、本開示に係る技術はこれに限定されない。例えば、図30に示すように、ソルダーレジスト31の一部に開口部31aを設けることによって、導体層C0の一部をソルダーレジスト31から露出させてもよい。導体層C0の一部がソルダーレジスト31から露出している場合であっても、導体層C0が絶縁層11に埋め込まれていることから、全体の厚さを薄くすることができるとともに、一方の最表層の平滑性が高められる。なお、ソルダーレジスト31の開口部31aから導体層C0の一部が露出している場合、係る露出部分と電気的に接続された外部端子や配線構造体などをさらに設けても構わないし、露出部分自体を端子電極として用いても構わない。この場合、複合電子部品1の厚み方向(積層方向)において、導体層C4により形成される外部端子と対向する側に、更に外部端子を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 複合電子部品
2 ESD保護部品(電子部品)
10 素体
11~14,12A,12B 絶縁層
15 磁性樹脂層
12a,12b 絶縁層の表面
20~27 信号端子
28,29 グランド端子
31,32 ソルダーレジスト
31a 開口部
41~48 コイルパターン
50~59 導体パターン
60,61,63~66,68 導体パターン
70~76 導体パターン
80~87 端子電極
91,93,94,97 導体パターン
100~107,110~118,120~127,130~137,141,143,144,147 ビア導体
151,152 最表面
160 リセス部
200 キャリア付き銅箔
201 レジストパターン
202 ビア
203 シード層
204 レジストパターン
C0~C4 導体層
CMF1~CMF4 コモンモードフィルタ
G1,G2 ギャップ
GP グランドパターン
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図30