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特開2024-22010ロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022010
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20240208BHJP
   C23F 1/32 20060101ALI20240208BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B29C59/04 C
C23F1/32
B29C33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125280
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】二上 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 晃
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 清朗
(72)【発明者】
【氏名】光島 郁夫
【テーマコード(参考)】
4F202
4F209
4K057
【Fターム(参考)】
4F202AF01
4F202AF07
4F202AG05
4F202CA19
4F202CB02
4F202CD18
4F202CD22
4F202CD23
4F202CD30
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG05
4F209AH73
4F209AJ02
4F209PA03
4F209PB02
4F209PC05
4F209PQ03
4K057WA11
4K057WB02
4K057WB03
4K057WB04
4K057WB05
4K057WC03
4K057WE21
4K057WG01
4K057WG02
4K057WG03
4K057WG06
4K057WN06
(57)【要約】
【課題】サブミクロンレベルの微細な寸法調整が可能であり、ロール金型製造における歩留の向上が図れるロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置の提供。
【解決手段】円筒状の金型母材の周面に切削加工によりパターンを形成する切削加工工程と、前記金型母材を薬液に浸漬し、前記パターン表面の少なくとも一部を除去する除去工程と、を含むロール金型の製造方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の金型母材の周面に切削加工によりパターンを形成する切削加工工程と、
前記金型母材を薬液に浸漬し、前記パターンの表面の少なくとも一部を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするロール金型の製造方法。
【請求項2】
前記薬液は、前記パターンの表面の金属を前記薬液に8時間浸漬前後の重量減少率が0.1%以上0.5%以下である、請求項1に記載のロール金型の製造方法。
【請求項3】
前記除去工程において、超音波処理を行う、請求項1から2のいずれかに記載のロール金型の製造方法。
【請求項4】
前記除去工程において、前記薬液の温度を調整する、請求項1から2のいずれかに記載のロール金型の製造方法。
【請求項5】
前記除去工程において、前記金型母材を回転させながら前記薬液に浸漬させる、請求項1から2のいずれかに記載のロール金型の製造方法。
【請求項6】
前記薬液が、25℃でのpHが8.5以上である、請求項1から2のいずれかに記載のロール金型の製造方法。
【請求項7】
前記薬液が、アミン化合物及び非イオン界面活性剤の少なくともいずれかと、有機溶剤とを含有する、請求項1から2のいずれかに記載のロール金型の製造方法。
【請求項8】
前記アミン化合物がトリエタノールアミンであり、
前記有機溶剤がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項7に記載のロール金型の製造方法。
【請求項9】
前記金型母材がめっき処理されている、請求項1から2のいずれかに記載のロール金型の製造方法。
【請求項10】
円筒状の金型母材の周面に切削加工によりパターンを形成する切削加工手段と、
前記金型母材を薬液に浸漬し、前記パターンの表面の少なくとも一部を除去する除去手段と、
を有することを特徴とするロール金型の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、有機ELパネル等の表示装置は、表面に微細な凹凸を有する光学シートが用いられている。このような光学シートとしては、例えば、外光又は周辺物の映り込みを防ぐための反射防止膜、入射する光を広い角度範囲に分配し、配光するための光拡散板、発光素子からの光の反射を防止して正面輝度を向上させるための調光シートなどが挙げられる。前記光学シートの製造方法としては、表面に微細な凹凸を有するロール金型をシート表面に転写させる方法が知られている。表面に微細な凹凸を有するロール金型は、例えば、図1A図1Gに示す工程フローにより製造される。
【0003】
図1A図1Gに示す工程フローにより、ロール金型母材の周面にエンボス状パターンを形成する場合、まず、図1Aに示すロール金型母材に、金属めっきを施す(図1B参照)。次に、図1Cに示すように金属めっきの表面を平坦化する。次に、図1Dに示すように切削工具を用いて周方向に溝加工1を行う。次に、図1Eに示すように長さ方向に溝加工2を行い、エンボス形状のパターンを形成する。その後、得られたロール金型の洗浄を行い(図1F参照)、検査を行うことにより(図1G参照)、周面にエンボス状パターンを有するロール金型が製造される。
【0004】
表面に微細な凹凸形状を有するロール金型の製造方法としては、例えば、ダイヤモンド工具を使用して、円筒状の金型母材への切削加工により所望の寸法のパターンを形成するロール金型の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、切削加工後に研磨を行うことにより所望の寸法のパターンを形成するロール金型の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-160898号公報
【特許文献2】特開2010-082943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、製品の高精度化及び高品質化などに伴って、より高精度なロール金型の品質とコストダウンの要求が強く望まれている。しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の技術では、ロール金型の周面全体に四角柱又は四角錘等の凹凸形状を均一に切削加工するには膨大な時間を要してしまう。また、所望の寸法が得られるようにパターン寸法を確認しつつ切削加工を行うが、加工場環境、加工装置精度、加工工具の摩耗などの複雑な要因によって、所望の寸法からサブミクロンレベルでズレが生じてしまうことがあり、ロール金型の再製作が必要になってしまう場合もある。
【0007】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、サブミクロンレベルの微細な寸法調整が可能であり、ロール金型製造における歩留の向上を図れるロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 円筒状の金型母材の周面に切削加工によりパターンを形成する切削加工工程と、
前記金型母材を薬液に浸漬し、前記パターンの表面の少なくとも一部を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とするロール金型の製造方法である。
<2> 前記薬液は、前記パターンの表面の金属を前記薬液に8時間浸漬前後の重量減少率が0.1%以上0.5%以下である、前記<1>に記載のロール金型の製造方法である。
<3> 前記除去工程において、超音波処理を行う、前記<1>から<2>のいずれかに記載のロール金型の製造方法である。
<4> 前記除去工程において、前記薬液の温度を調整する、前記<1>から<2>のいずれかに記載のロール金型の製造方法である。
<5> 前記除去工程において、前記金型母材を回転させながら前記薬液に浸漬させる、前記<1>から<2>のいずれかに記載のロール金型の製造方法である。
<6> 前記薬液が、25℃でのpHが8.5以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のロール金型の製造方法である。
<7> 前記薬液が、アミン化合物及び非イオン界面活性剤の少なくともいずれかと、有機溶剤とを含有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載のロール金型の製造方法である。
<8> 前記アミン化合物がトリエタノールアミンであり、
前記有機溶剤がN-メチル-2-ピロリドンである、前記<7>に記載のロール金型の製造方法である。
<9> 前記金型母材がめっき処理されている、前記<1>から<2>のいずれかに記載のロール金型の製造方法である。
<10> 円筒状の金型母材の周面に切削加工によりパターンを形成する切削加工手段と、
前記金型母材を薬液に浸漬し、前記パターンの表面の少なくとも一部を除去する除去手段と、
を有することを特徴とするロール金型の製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、サブミクロンレベルの微細な寸法調整が可能であり、ロール金型製造における歩留の向上を図れるロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、ロール金型の製造方法で用いるロール金型母材の一例を示す図である。
図1B図1Bは、ロール金型の製造方法の一例における金属めっき工程を示す図である。
図1C図1Cは、ロール金型の製造方法の一例における平坦化工程を示す図である。
図1D図1Dは、ロール金型の製造方法の一例における溝加工1を示す図である。
図1E図1Eは、ロール金型の製造方法の一例における溝加工2を示す図である。
図1F図1Fは、ロール金型の製造工程フローの一例における洗浄工程を示す図である。
図1G図1Gは、ロール金型の製造工程フローの一例における検査工程を示す図である。
図2図2は、薬液浸漬によるロール金型のパターンの寸法調整を示す模式図である。
図3図3は、本発明のロール金型の製造装置の除去手段の一例を示す側面図である。
図4図4は、図3のA-A線での断面図である。
図5図5は、パターンの寸法Aを示す図である。
図6図6は、実施例1の15時間浸漬前後のパターンの寸法Aの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ロール金型の製造方法及びロール金型の製造装置)
本発明のロール金型の製造方法は、切削加工工程と、除去工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明のロール金型の製造装置は、切削加工手段と、除去手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0012】
本発明のロール金型の製造方法は、本発明のロール金型の製造装置により好適に実施することができ、切削加工工程は切削加工手段により行うことができ、除去工程は除去手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0013】
前記ロール金型の製造方法及び前記ロール金型の製造装置によると、サブミクロンレベルの微細な寸法調整が可能であり、ロール金型製造における歩留の向上が図れる。また、本発明によると、切削加工により形成されたロール金型の周面全体の大面積のパターンを等量的に寸法調整することができ、高精度なパターンを効率よく形成することができる。
【0014】
<切削加工工程及び切削加工手段>
前記切削加工工程は、円筒状の金型母材の周面に切削加工によりパターンを形成する工程であり、切削加工手段により実施される。
【0015】
-金型母材-
前記金型母材の材質、形状、大きさなどについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金型母材の形状は円筒状のロール金型である。ロール金型は、Roll to Roll方式により、高い量産性で高品質の製品を製造することができる。
前記金型母材の材質としては、例えば、銅、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼などが挙げられる。前記金型母材は、例えば、ニッケルリン(Ni-P)めっき、銅(Cu)めっき等を施されていることが好ましい。
前記金型母材の大きさは、特に制限はなく、製造する製品の大きさに応じて適宜選択することができる。
【0016】
-切削加工-
切削加工としては、例えば、旋盤加工、ドリル穴開け加工、ライン加工、溝加工、フライス加工、エンドミル加工などが挙げられる。
前記切削加工は、ドリル、バイト、エンドミル等の各種切削工具を用いて行われる。
前記切削工具の材質としては、例えば、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(CBN)、セラミックス(例えば、アルミナ系、炭化チタン系、窒化ケイ素系等)、サーメット、超硬合金、高速度工具鋼(ハイス)、炭素工具鋼などが挙げられる。
【0017】
-パターン-
前記金型母材の周面に切削加工により形成されるパターンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、格子状パターン、ライン状パターン、エンボス状パターン、ランダムな形状パターンなどが挙げられる。
前記パターンを構成する凸部は、例えば、半円状、レンズ状、三角柱、三角錐、四角柱、四角錐、五角柱、五角錐、六角柱、六角錐、七角柱、七角錐、八角柱、八角錐、円柱、円錐などの形状を有することが好ましい。
前記凸部の最大幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
前記凸部の高さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
隣接する凸部の中心間の最短距離であるピッチは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
例えば、図2に示すパターンにおいて、Lは凸部の最大幅、Hは凸部の高さ、Pはピッチを表す。
【0018】
<除去工程及び除去手段>
前記除去工程は、前記金型母材を薬液に浸漬し、パターンの表面の少なくとも一部を除去する工程であり、除去手段により実施される。
【0019】
-薬液-
前記薬液は、アミン化合物及び非イオン界面活性剤の少なくともいずれかと、有機溶剤とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0020】
前記アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、円筒状の金型母材の周面のパターンの除去効率の点から、トリエタノールアミンが好ましい。
前記アミン化合物の含有量は、薬液の全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0021】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記非イオン界面活性剤の含有量は、薬液の全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0022】
前記有機溶剤としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、円筒状の金型母材の周面のパターンの除去効率の点から、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
前記有機溶剤の含有量は、薬液の全量に対して、90質量%以上99質量%以下であることが好ましく、95質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度調整剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、着色剤、保存剤、安定化剤などが挙げられる。
【0024】
前記薬液は、20℃でのpHが8.5以上であることが円筒状の金型母材の周面のパターンの除去効率の点から好ましく、8.5以上10以下であることがより好ましい。
前記薬液は、パターン表面の金属を前記薬液に8時間浸漬前後の重量減少率が0.1%以上0.5%以下であることが好ましい。8時間浸漬前後の重量減少率が0.1%以上0.5%以下であると、サブミクロンレベルの微細な寸法調整が可能である。
具体的には、表面にパターンを切削加工したロール金型母材を薬液に8時間浸漬し、8時間浸漬前後のロール金型母材の重量を測定し、下記数式(1)から重量減少率を算出することができる。
[(浸漬前のロール金型母材の重量-8時間浸漬前後のロール金型母材の重量)/浸漬前のロール金型母材の重量]×100・・・数式(1)
【0025】
前記除去工程において、超音波処理を行うことが円筒状の金型母材の周面のパターンの除去効率の点から好ましい。
前記除去工程において、前記薬液の温度を調整することが好ましく、40℃~80℃の温度範囲に調整することが円筒状の金型母材の周面のパターンの除去効率の点からより好ましい。
前記除去工程において、前記金型母材を回転させながら前記薬液に浸漬させることが、円筒状の金型母材の周面のパターンの除去効率の点から好ましい。
前記薬液に浸漬させる時間(浸漬時間)は、特に制限はなく、パターンの調整する寸法などに応じて適宜選択することができるが、例えば、5時間以上であることが好ましく、8時間以上であることがより好ましく、10時間以上であることが更に好ましく、15時間以上であることが特に好ましい。
【0026】
本発明においては、円筒状の金型母材を薬液に浸漬することによる材料除去特性を利用することで、サブミクロンレベルでのパターンの寸法調整を行うことが可能となる。薬液浸漬による円筒状の金型母材の周面のパターンの材料除去イメージを図2に示す。図2中、点線は薬液浸漬による材料除去面である。
【0027】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄手段、検査手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄工程、検査工程などが挙げられる。
【0028】
ここで、本発明のロール金型の製造方法に用いられる本発明のロール金型の製造装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0029】
<第1の実施形態>
図3は本発明のロール金型の製造装置の一例を示す側面図、図4図3のA-A線での断面図である。図3のロール金型の製造装置10は、周面にパターンを切削加工後のロール金型母材1、薬液を溜める浴槽2、薬液3、ロール金型母材を回転させる回転軸4、回転軸を回転駆動する駆動手段5を有している。
【0030】
金属ロール原盤の寸法調整は浴槽2の中に薬液3を入れ、その浴槽内に周面にパターンを切削加工後のロール金型母材1をセットし、回転軸4を駆動させてロール金型母材1を回転させながら均一に薬液3に浸漬させる。
浸漬時間の経過とともにロール金型母材のパターンが薬液の影響により非常に僅かにではあるが徐々に等量的に除去される。薬液への浸漬時間については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
この僅かな除去を利用することによってサブミクロンレベルの寸法調整が可能となる。また、例えば、薬液の温度又は超音波を併用することにより除去効率を調整することも可能である。
【実施例0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
図2に示すようなエンボス状パターン(凸部の最大幅:約25μm、凸部の高さ:約25μm、凸部間のピッチ:約40μm)を切削加工したロール金型母材を用いた。
ロール金型母材の長さ:約600mm、ロール径:約130mm、材質はステンレス鋼であり、銅めっき処理を行っている。
表1に示す特性の薬液(エスバック H-300T、佐々木化学薬品株式会社製)を調製し、図3に示すロール金型製造装置の浴槽2に入れ、薬液を60℃まで加熱し、切削加工後のロール金型母材1を浴槽2に投入した。その後、表2に示す条件で、切削加工後のロール金型母材1を回転させ、超音波発生装置(BRANSON社製、8500シリーズ)を用い超音波を付与しながら切削加工後のロール金型母材1を薬液に浸漬した。浸漬後はロール金型母材1に付着した薬液を除去するため、純水にてリンス洗浄を行った。以上により、ロール金型が製造された。
得られたロール金型について、以下のようにしてパターンの寸法A(図5参照)を測定した。また、薬液に浸漬前と15時間浸漬後のパターンの寸法Aの変化を図6に示した。
【0033】
<8時間浸漬前後の重量減少率>
エンボス状パターンを切削加工したロール金型母材を実施例1の薬液に実施例1の浸漬条件で8時間浸漬し、8時間浸漬前後のロール金型母材の重量を測定し、下記数式(1)から重量減少率を算出した。
[(浸漬前のロール金型母材の重量-8時間浸漬前後のロール金型母材の重量)/浸漬前のロール金型母材の重量]×100・・・数式(1)
【0034】
<パターンの寸法Aの測定>
図5に示すパターンの寸法Aは、ロール金型のパターンに樹脂を流し込み硬化させて、パターンが転写されたサンプルを作製し、得られたサンプルについて走査型電子顕微鏡(SEM;JSM-6510、日本電子株式会社製)を用い、800倍の倍率でパターンの寸法Aを120箇所測定し、平均値を求めた。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
図6の結果から、薬液に15時間浸漬することによりロール金型母材のパターンがごく僅か除去され、0.5μm程度パターンの寸法Aを小さく調整できることが確認できた。更に小さな寸法Aに調整したい場合には、浸漬時間の変更することなどにより調整することができる。
【0038】
(実施例2)
実施例1において、非イオン界面活性剤3質量%及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)97質量%を含有する薬液(エスバック H-300、佐々木化学薬品株式会社製)
を用いた以外は、実施例1と同様にして、パターンの微調整を行った。その結果、薬液に15時間浸漬することにより、0.1μm程度パターンの寸法Aを小さく調整することができた。
【0039】
(実施例3)
実施例1において、エンボス状パターン(凸部の最大幅:約19μm、凸部の高さ:約17μm、凸部間のピッチ:約30μm)を切削加工したロール金型母材を用い、実施例1の薬液で10.5時間、実施例2の薬液で12.5時間の合計23時間浸漬を行った以外は、実施例1と同様にして、パターンの微調整を行った。その結果、0.35μm程度パターンの寸法Aを小さく調整することができた。
【0040】
以上の結果から、本発明によると、サブミクロンレベルの微細な寸法調整が可能であり、その結果、ロール金型製造における歩留の向上が図れることがわかった。
【符号の説明】
【0041】
1 切削加工後のロール金型母材
2 浴槽
3 薬液
4 回転軸
5 駆動手段
6 切削加工後のパターン
7 除去工程後のパターン
10 ロール金型の製造装置

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4
図5
図6