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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022014
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20240208BHJP
   H03K 17/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125290
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩城 聡明
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 真義
(72)【発明者】
【氏名】上村 俊也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壽朗
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真央
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX34
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX13
5J055DX16
5J055DX42
5J055DX72
5J055DX82
5J055EY12
5J055EY21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐久品質を向上させる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、第1ソース11、第1ドレイン12及び第1ゲート13を有するノーマリーオントランジスタである第1トランジスタ10と、第1ドレイン12に電気的に接続された第2ソース21、第2ドレイン22及び第2ゲート23を有するノーマリーオフトランジスタである第2トランジスタ20と、を有する。第1ゲート13には、ターンオン時において、第2ゲート信号Sg2よりも後行してオンし、ターンオフ時において、第2ゲート信号Sg2よりも先行してオフする第1ゲート信号Sg1が入力され、第2ゲート23には、ターンオン時において、第1ゲート信号Sg1よりも先行してオンし、ターンオフ時において、第1ゲート信号Sg1よりも後行してオフする第2ゲート信号Sg2が入力される。第1ゲート信号と第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ソース、第1ドレイン、第1ゲートを有するノーマリーオントランジスタである第1トランジスタと、
前記第1ドレインに電気的に接続された第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを有するノーマリーオフトランジスタである第2トランジスタと、を有し、
前記第1ゲートには、ターンオン時において、第2ゲート信号よりも後行してオンし、ターンオフ時において、前記第2ゲート信号よりも先行してオフする第1ゲート信号が入力され、
前記第2ゲートには、前記ターンオン時において、前記第1ゲート信号よりも先行してオンし、前記ターンオフ時において、前記第1ゲート信号よりも後行してオフする前記第2ゲート信号が入力され、
前記第1ゲート信号と前記第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定される、半導体装置。
【請求項2】
第1ゲート制御手段は、第1ディレイ手段と直列に接続された入力側から出力側に向けて順方向特性を示す第1ダイオードと、入力側から出力側に向けて逆方向特性を示す第2ダイオードが並列に接続されて構成され、前記第1ゲート制御手段の出力側は前記第1ゲートと接続され、
第2ゲート制御手段は、第2ディレイ手段と直列に接続された入力側から出力側に向けて逆方向特性を示す第3ダイオードと、入力側から出力側に向けて順方向特性を示す第4ダイオードが並列に接続されて構成され、前記第2ゲート制御手段の出力側は前記第2ゲートと接続され、
駆動信号は、前記第1ゲート制御手段及び前記第2ゲート制御手段の入力側に入力され、前記第1ゲート信号及び前記第2ゲート信号は、共通の前記駆動信号から生成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記駆動信号は、レベルシフト回路を介して前記第1ゲート制御手段の入力側に入力される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタは、ゲート電荷量Qgを、Tc=25℃におけるドレイン電流(連続)の絶対最大定格Idで割ったとき、Qg/Id≧0.5nC/Aである、ノーマリーオン型パワーデバイスである、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1トランジスタは、PSJ GaNFETである、請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続してスイッチを構成した半導体装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この半導体装置は、第1のソース、第1のドレイン、第1のゲートを有するノーマリーオフトランジスタと、第1のドレインに電気的に接続された第2のソース、第2のドレイン、第2のゲートを有するノーマリーオントランジスタと、第1の端部と第2の端部を有し、第2の端部が第2のゲートに電気的に接続されたコンデンサと、第2の端部と第2のゲートとの間に電気的に接続された第1のアノードと、第2のソースに電気的に接続された第1のカソードを有する第1のダイオードと、第1の端部と、第1のゲートとの間に設けられた第1の抵抗と、第1の端部に電気的に接続された第2のアノードと、第1のゲートに電気的に接続された第2のカソードを有し、第1の抵抗と並列に設けられた第2のダイオードと、を備えて構成されている。
【0003】
この半導体装置は、半導体装置がオフ状態からオン状態に移行する際には、電流が第1の抵抗に並列に設けられた第2のダイオードを流れる。このため、ノーマリーオフトランジスタの第1のゲートの充電は、第1の抵抗の影響を受けない。したがって、第1のゲートが速やかに充電できる。よって、半導体装置がオフ状態からオン状態に移行する際に、ノーマリーオントランジスタよりもノーマリーオフトランジスタを先にオンさせることが可能となる。また、第1の抵抗を設けることにより、ノーマリーオフトランジスタのオフタイミングと、ノーマリーオントランジスタのオフタイミングを所望の時間だけ遅延させることができる。したがって、半導体装置がオン状態からオフ状態に移行する際に、ノーマリーオフトランジスタよりもノーマリーオントランジスタが先にオフする。したがって、ノーマリーオフトランジスタとノーマリーオントランジスタとの間の接続部に高電圧又は過電圧が生じることが抑制される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2017/010554公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された半導体装置は、トランジスタの入力容量C、抵抗Rによる時定数によりトリガ時点を遅延させる構成となっている。しかし、CR時定数を使って遅延を発生させているため、ターンオンとターンオフの順序を両立させるための時定数の調整が難しいという問題があった。また、コンデンサを使用しているためこれがスピードアップコンデンサとして機能してノーマリーオントランジスタのターンオンとターンオフが素早くスイッチングしてしまい、ターンオン時にターンオン、ターンオフの先後の条件が満足できなくなる場合があるという問題があった。さらに、ノーマリーオントランジスタのゲートへのチャージ量が大きい場合は、チャージがダイオードを介してカスコード接続の中点へ流出する。これにより、ノーマリーオントランジスタのゲートへのチャージが進まず、ターンオンできなくなる場合があるという問題があった。このため、安定したターンオン、ターンオフ動作が確保されず、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとのカスコード接続の中点電位における過電圧を十分に低減できない場合があり、製品の耐久品質を向上させることが難しいという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続した構成において、耐久品質を向上させることができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、第1ソース、第1ドレイン、第1ゲートを有するノーマリーオントランジスタである第1トランジスタと、前記第1ドレインに電気的に接続された第2ソース、第2ドレイン、第2ゲートを有するノーマリーオフトランジスタである第2トランジスタと、を有し、前記第1ゲートには、ターンオン時において、第2ゲート信号よりも後行してオンし、ターンオフ時において、前記第2ゲート信号よりも先行してオフする第1ゲート信号が入力され、前記第2ゲートには、前記ターンオン時において、前記第1ゲート信号よりも先行してオンし、前記ターンオフ時において、前記第1ゲート信号よりも後行してオフする前記第2ゲート信号が入力され、前記第1ゲート信号と前記第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定される、半導体装置を提供する。
[2]第1ゲート制御手段は、第1ディレイ手段と直列に接続された入力側から出力側に向けて順方向特性を示す第1ダイオードと、入力側から出力側に向けて逆方向特性を示す第2ダイオードが並列に接続されて構成され、前記第1ゲート制御手段の出力側は前記第1ゲートと接続され、第2ゲート制御手段は、第2ディレイ手段と直列に接続された入力側から出力側に向けて逆方向特性を示す第3ダイオードと、入力側から出力側に向けて順方向特性を示す第4ダイオードが並列に接続されて構成され、前記第2ゲート制御手段の出力側は前記第2ゲートと接続され、駆動信号は、前記第1ゲート制御手段及び前記第2ゲート制御手段の入力側に入力され、前記第1ゲート信号及び前記第2ゲート信号は、共通の前記駆動信号から生成される、ようにされていてもよい。
[3]また、前記駆動信号は、レベルシフト回路を介して前記第1ゲート制御手段の入力側に入力される、ようにされていてもよい。
[4]また、前記第1トランジスタは、ゲート電荷量Qgを、Tc=25℃におけるドレイン電流(連続)の絶対最大定格Idで割ったとき、Qg/Id≧0.5nC/Aである、ノーマリーオン型パワーデバイスであってもよい。
[5]また、前記第1トランジスタは、PSJ GaNFETであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続した構成において、耐久品質を向上させることができる半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の回路構成を示す回路図であり、図1(b)は、第1ゲート信号及び第2ゲート信号のタイミング関係を示すそれぞれの信号波形図である。
図2図2は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の回路構成を示す回路図である。
図3図3は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の回路構成を示す回路図である。
図4図4(a)は、実施例における回路構成図、図4(b)は、ターンオン時における各信号の実測された信号波形図、図4(c)は、ターンオフ時における各信号の実測された信号波形図である。
図5図5(a)は、比較例におけるターンオフ時の各信号の実測された波形図、図5(b)は、本実施の形態におけるターンオフ時の各信号の実測された波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔本発明の第1の実施の形態〕
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の回路構成を示す回路図である。本発明の実施の形態に係る半導体装置1は、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続した構成において、ターンオン時、ターンオフ時のそれぞれのトリガ信号となる第1のゲートと第2のゲートに入力されるゲート信号の遅延量を任意に設定できる手段を設けることにより、中点電位における過電圧を十分に低減して、製品の耐久品質を向上させるものである。本発明の実施の形態に係る半導体装置1は、例えば、1.2kV、3kV、10kVでの使用が可能な高耐圧パワーモジュールに適用できる。
【0011】
第1の実施の形態に係る半導体装置1は、第1ソース11、第1ドレイン12、第1ゲート13を有するノーマリーオントランジスタである第1トランジスタ10と、第1ドレイン12に電気的に接続された第2ソース21、第2ドレイン22、第2ゲート23を有するノーマリーオフトランジスタである第2トランジスタ20と、を有する。第1ゲート13には、ターンオン時において、第2ゲート信号Sg2よりも後行してオンし、ターンオフ時において、第2ゲート信号Sg2よりも先行してオフする第1ゲート信号Sg1が入力され、第2ゲート23には、ターンオン時において、第1ゲート信号Sg1よりも先行してオンし、ターンオフ時において、第1ゲート信号Sg1よりも後行してオフする第2ゲート信号Sg2が入力され、第1ゲート信号と第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定されるように構成されている。
【0012】
第1ゲート信号Sg1、第2ゲート信号Sg2は、第1ゲート信号と第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定される。一例として、パルスジェネレータを内蔵するゲートドライバIC等により、任意のタイミングでそれぞれのゲート信号を出力することができる。
【0013】
第1トランジスタ10は、ゲートにゲート電圧を印加しなくとも通電するノーマリーオントランジスタである。ノーマリーオントランジスタは、素子耐圧が高い。ノーマリーオントランジスタは、一例として、PSJ GaNFET(Polarization Super Junction GaN Field Effect Transistor)であり、1.2kV、3kV、10kV等の耐圧を有する。
【0014】
第2トランジスタ20は、ゲートにゲート電圧を印加しなければ通電しないノーマリーオフトランジスタである。ノーマリーオフトランジスタは、素子耐圧が低い。ノーマリーオフトランジスタは、一例として、Si半導体を使用したMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0015】
第1トランジスタ10は、第1ソース11、第1ドレイン12、第1ゲート13を有して構成されている。また、第2トランジスタ20は、第2ソース21、第2ドレイン22、第2ゲート23を有して構成されている。
【0016】
図1(a)に示すように、第1ソース11は、第2ドレイン22と接続されている。第1ドレイン12は、ドレイン端子120に接続されている。また、第1ゲート13は、ゲート端子131に接続されている。なお、接続とは電気的なオーミック接続を意味し、以下同様である。
【0017】
第2ソース21は、ソース端子110に接続されている。第2ドレイン22は、第1ソース11と接続されている。また、第2ゲート23は、ゲート端子132に接続されている。
【0018】
図1(b)は、第1ゲート信号及び第2ゲート信号のタイミング関係を示すそれぞれの信号波形図である。第1ゲート信号と第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定できる。第1ゲート信号Sg1は、電圧Vが、ゼロ0から時刻t11において所定の電圧まで立ち上がり、時刻t12においてゼロ0に立ち下がる。また、第2ゲート信号Sg2は、電圧Vが、ゼロ0から時刻t21において所定の電圧まで立ち上がり、時刻t22においてゼロ0に立ち下がる。なお、それぞれの所定の電圧は、第1トランジスタ10、第2トランジスタ20をそれぞれターンオンするための閾値以上の電圧である。
【0019】
ここで、第1ゲート信号Sg1の立ち上がり時刻t11は、第2ゲート信号Sg2の立ち上がり時刻t21よりもΔt1だけ遅延している。また、第2ゲート信号Sg2の立ち下がり時刻t22は、第1ゲート信号Sg1の立ち下がり時刻t12よりもΔt2だけ遅延している。
【0020】
第1ゲート信号Sg1は、ゲート端子131に入力されて第1トランジスタ10の第1ゲート13に印加される。一方、第2ゲート信号Sg2は、ゲート端子132に入力されて第2トランジスタ20の第2ゲート23に印加される。
【0021】
これにより、第1トランジスタ10は、ターンオン時において、第2トランジスタ20よりも後行してオンし、ターンオフ時において、第2トランジスタ20よりも先行してオフする。また、第2トランジスタ20は、ターンオン時において、第1トランジスタ10よりも先行してオンし、ターンオフ時において、第1トランジスタ10よりも後行してオフする。
【0022】
(半導体装置1の動作)
半導体装置1は、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続した構成において、ターンオン時、ターンオフ時のそれぞれのトリガ信号となる第1のゲートと第2のゲートに入力されるそれぞれのゲート信号の遅延量を任意に設定できる手段を設けて、ゲート別に駆動させる方式である。すなわち、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタの2つのFETを複合FETとしてスイッチング動作等させて、ノーマリーオフトランジスタとして機能させるものである。
【0023】
半導体装置1のターンオン時には、図1(b)に示す第2ゲート信号Sg2がゲート端子132に入力されて第2トランジスタ20の第2ゲート23に印加される。一方、第1ゲート信号Sg1は、所定の遅延量Δt1だけ遅延して、ゲート端子131に入力されて第1トランジスタ10の第1ゲート13に印加される。これにより、先に第2トランジスタ20がオンし、遅延して、第1トランジスタ10がオンすることで、半導体装置1がオン状態になる。
【0024】
上記示した半導体装置1のターンオン時には、先に第2トランジスタ20がオンするので、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、接地された状態となる。これにより、過渡時において中点電位Vmにおける電荷はすみやかに減少して、中点電位Vmにおける過電圧を十分に低減させることが可能となる。
【0025】
半導体装置1のターンオフ時には、図1(b)に示す第1ゲート信号Sg1がゲート端子131に入力されて第1トランジスタ10の第1ゲート13に印加される。一方、第2ゲート信号Sg2は、所定の遅延量Δt2だけ遅延して、ゲート端子132に入力されて第2トランジスタ20の第2ゲート23に印加される。これにより、先に第1トランジスタ10がオフし、遅延して、第2トランジスタ20がオフすることで、半導体装置1がオフ状態になる。
【0026】
上記示した半導体装置1のターンオフ時には、先に第1トランジスタ10がオフするが、第2トランジスタ20がまだオンしているので、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、接地された状態となっている。これにより、過渡時において中点電位Vmにおける電荷はすみやかに減少して、中点電位Vmにおける過電圧を十分に低減させることが可能となる。
【0027】
〔本発明の第2の実施の形態〕
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の回路構成を示す回路図である。第2の実施の形態に係る半導体装置2は、第1ゲート信号Sg1及び第2ゲート信号Sg2を、ディレイ手段を含むゲート制御手段を介して、それぞれ第1ゲート13、第2ゲート23に入力する構成としたものである。これにより、第1ゲート信号Sg1及び第2ゲート信号Sg2は、共通の駆動信号Sg0から生成されるので、1つの駆動信号Sg0により半導体装置2を駆動制御することが可能となる。
【0028】
第2の実施の形態に係る半導体装置2において、第1ゲート制御手段210は、第1ディレイ手段201と直列に接続された入力側から出力側に向けて順方向特性を示す第1ダイオード211と、入力側から出力側に向けて逆方向特性を示す第2ダイオード212が並列に接続されて構成され、第1ゲート制御手段210の出力側は第1ゲート13と接続される。また、第2ゲート制御手段220は、第2ディレイ手段202と直列に接続された入力側から出力側に向けて逆方向特性を示す第3ダイオード213と、入力側から出力側に向けて順方向特性を示す第4ダイオード214が並列に接続されて構成され、第2ゲート制御手段220の出力側は第2ゲート23と接続される。第1ディレイ手段201と第2ディレイ手段202は、第1の実施の形態と同様に、それぞれ独立して遅延量が設定できる構成とされている。駆動信号Sg0は第1ゲート制御手段210及び第2ゲート制御手段220の入力側端子230に入力され、第1ゲート信号Sg1及び第2ゲート信号Sg2は、共通の駆動信号Sg0から、それぞれ独立して遅延量が設定されて生成される、ように構成されている。
【0029】
第1ダイオード211、第2ダイオード212、第3ダイオード213、第4ダイオード214は、いずれも整流作用のあるダイオードであれば使用可能である。また、第1ディレイ手段201、第2ディレイ手段202は、種々の方式によるディレイ装置が使用できるが、それぞれ独立して遅延量を設定可能な遅延IC等を利用することができる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0030】
(半導体装置2の動作)
半導体装置2は、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続した構成において、共通の駆動信号Sg0からディレイラインを介して第1ゲート信号Sg1、第2ゲート信号Sg2を生成し、これによりノーマリーオントランジスタ、ノーマリーオフトランジスタをそれぞれ動作させる。すなわち、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタの2つのFETを複合FETとしてスイッチング動作等させて、ノーマリーオフトランジスタとして機能させるものである。
【0031】
半導体装置2のターンオン時には、入力側端子230に入力された駆動信号Sg0は、第1ゲート制御手段210の第1ディレイ手段201、第1ダイオード211を介して第1ゲート13に入力される。一方、第1ゲート制御手段210の第2ダイオード212は逆方向特性であるので機能しない。したがって、第1ゲート13に入力される第1ゲート信号Sg1は、第1ゲート信号Sg1の立ち上がりが駆動信号Sg0の立ち上がりから所定時間だけ遅延した信号として第1ゲート13に入力される。
【0032】
また、入力側端子230に入力された駆動信号Sg0は、第4ダイオード214を介して第2ゲート23に入力される。一方、第2ゲート制御手段220の第3ダイオード213は逆方向特性であるので機能しない。したがって、第2ゲート23に入力される第2ゲート信号Sg2は、第2ゲート信号Sg2の立ち上がりが駆動信号Sg0の立ち上がりと同じタイミングの遅延なしの信号として第2ゲート23に入力される。
【0033】
以上から、先に第2トランジスタ20がオンし、遅延して、第1トランジスタ10がオンすることで、半導体装置2がオン状態になる。半導体装置2のターンオン時には、先に第2トランジスタ20がオンするので、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、接地された状態となる。これにより、過渡時において中点電位Vmにおける電荷はすみやかに減少して、中点電位Vmにおける過電圧を十分に低減させることが可能となる。
【0034】
半導体装置2のターンオフ時には、第1トランジスタ10側のゲート端子131の方が第1ゲート制御手段210の入力側端子230よりも電位が高い。このため、第1ゲート制御手段210の第1ダイオード211は逆方向特性であるので機能しない。したがって、等価的に、第1ゲート13に入力される第1ゲート信号Sg1は、第1ゲート信号Sg1の立ち下がりが駆動信号Sg0の立ち下がりと同じタイミングの遅延なしの信号として第1ゲート13に入力されることになる。
【0035】
また、第2ゲート制御手段220の第4ダイオード214は逆方向特性であるので機能しない。したがって、等価的に、第2ゲート23に入力される第2ゲート信号Sg2は、第2ゲート信号Sg2の立ち下がりが駆動信号Sg0の立ち下がりから所定時間だけ遅延した信号として第2ゲート23に入力されることになる。
【0036】
上記示した半導体装置2のターンオフ時には、先に第1トランジスタ10がオフするが、第2トランジスタ20がまだオンしているので、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、接地された状態となっている。これにより、過渡時において中点電位Vmにおける電荷はすみやかに減少して、中点電位Vmにおける過電圧を十分に低減させることが可能となる。
【0037】
以上から、等価的に、共通の駆動信号Sg0から、第1の実施の形態に係る第1ゲート信号Sg1、第2ゲート信号Sg2によるトリガ信号が生成される。これにより第1トランジスタ10、第2トランジスタ20を駆動することができる。
【0038】
〔本発明の第3の実施の形態〕
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の回路構成を示す回路図である。第3の実施の形態に係る半導体装置3は、駆動信号が、レベルシフト回路を介して第1ゲート制御手段の入力側に入力される、ように構成したものである。これにより、第1トランジスタ10と第2トランジスタ20に対して異なるゲート電圧を印加することができる。
【0039】
図3に示すように、半導体装置3は、駆動信号Sg0が、レベルシフト回路300を介して第1ゲート制御手段210の入力側に入力される。一例として、レベルシフト回路300は、DC/DCコンバータ回路を使用することができる。その他の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【0040】
一例として、駆動信号Sg0が、+15Vから0(ゼロ)Vの電圧範囲で動作する場合に、レベルシフト回路300によるレベルシフト量を-12Vとすると、第1ゲート信号Sg1は、+3Vから-12V、第2ゲート信号Sg2は、+15Vから0(ゼロ)Vとなる。
【0041】
(実施例におけるターンオン波形、ターンオフ波形)
図4(a)は、実施例における回路構成図、図4(b)は、ターンオン時における各信号の実測された信号波形図、図4(c)は、ターンオフ時における各信号の実測された信号波形図である。
【0042】
図4(a)に示すように、半導体装置3を、500Vの電源電圧400に100Ωの負荷抵抗500を介して接続し、ローサイドスイッチとして動作させる。
【0043】
図4(b)に示すように、ターンオン時には、第2ゲート信号Sg2よりも第1ゲート信号Sg1は遅延した信号であり、遅延時間は、235nsであった。第2ゲート信号Sg2が第2ゲート23に入力されて、上記235ns後に、第1ゲート信号Sg1が第1ゲート13に入力されて、第1トランジスタ10がオンする。これにより、ドレイン電流Idが増加して、半導体装置3がオン状態になる。このターンオン時において、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、ほとんど変動なく、過渡時における過電圧は十分に抑えられている。
【0044】
図4(c)に示すように、ターンオフ時には、第1ゲート信号Sg1よりも第2ゲート信号Sg2は遅延した信号であり、遅延時間は、50nsであった。第1ゲート信号Sg1が第1ゲート13に入力されて、上記50ns後に、第2ゲート信号Sg2が第2ゲート23に入力されて、第2トランジスタ20がオフする。これにより、ドレイン電流Idが減少して、半導体装置3がオフ状態になる。このターンオフ時において、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、ほとんど変動なく、過渡時における過電圧は十分に抑えられている。
【0045】
図5(a)は、比較例におけるターンオフ時の各信号の実測された波形図、図5(b)は、本実施の形態におけるターンオフ時の各信号の実測された波形図である。
【0046】
比較例として、第1ゲート信号Sg1と第2ゲート信号Sg2が同じタイミングで第1トランジスタ10、第2トランジスタ20を駆動した場合を示す。図5(a)に示すように、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、過渡時において25~28Vまで跳ね上がっていることがわかる。
【0047】
次に、第2ゲート信号Sg2が第1ゲート信号Sg1よりも50nsだけ遅延して、第1トランジスタ10、第2トランジスタ20を駆動した場合を示す。図5(b)に示すように、第1ソース11と第2ドレイン22の接続点の中点電位Vmは、過渡時においても、定常的なオフ状態である5~8V程度に収まっていることがわかる。
【0048】
〔本発明の実施の形態の効果〕
発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、次のような効果を有する。
(1)第1ゲート信号と第2ゲート信号は、それぞれ独立して遅延量が設定できる構成とされている。従来技術のように、CR時定数等によらずに、それぞれ独立して遅延量が設定できるので、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタの2つのFETのターンオン時とターンオフ時のそれぞれのスイッチング動作のタイミングを独立して設定できる。これにより、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタの2つのFETを複合FETとしてスイッチング動作等させて、ノーマリーオフトランジスタとして機能させることが可能となる。また、第1ゲート信号と第2ゲート信号をそれぞれ独立して遅延量を設定できるので、中点電位Vmが最適になるように細かく設定できるので、複合FETとしてのスイッチング動作をより確実なものとすることが可能となる。
(2)過渡時において中点電位Vmにおける電荷はすみやかに減少して、中点電位Vmにおける過電圧を十分に低減させることが可能となる。これにより、ノーマリーオントランジスタとノーマリーオフトランジスタとをカスコード接続した構成において、耐久品質を向上させることができる半導体装置を提供することが可能となる。
(3)本実施の形態に係る半導体装置においては、主たるスイッチングを担うのは、ノーマリーオントランジスタであり、ノーマリーオフトランジスタのスイッチング速度に依らない。これにより、ノーマリーオントランジスタのスイッチング速度にのみ依存するので、スイッチング速度の改善が可能になる。
(4)本実施の形態に係る半導体装置によれば、回路サイズが小さい、回路の発熱が小さい、温度依存性が小さい等の効果が期待できる。
(5)ドライバ回路故障時に最も発生する可能性が高いことは、例えば、ゲート駆動用の15V電源が0V程度まで短絡することである。このとき、第2トランジスタ20の第2ゲート23への供給電圧と、第1トランジスタ10の第1ゲート13への供給電圧がいずれも0V程度まで下がり、第2トランジスタ20がオフ状態で固定される。第1トランジスタ10の第1ソース11の電位が持ち上がることにより、第1ゲート13と第1ソース11間の電圧Vgsが負となり、第1トランジスタ10もカスコード接続の原理によってオフ状態に入り、全体としてオフ状態になる。これにより、フェールセーフ機能が発揮される。
(6)本実施の形態に係るFETは、耐圧600V以上であって、ゲート電荷量Qgを、Tc=25℃におけるドレイン電流(連続)の絶対最大定格Idで割ったとき、Qg/Id≧0.5nC/Aであるノーマリーオン型パワーデバイスのカスコード接続に適用することができる。これは、Qg/Idが大きいほど、ノーマリーオントランジスタを完全オフ状態にするための時間を要するため、遅延によるVmが跳ね上がり対策の効果が大きいと考えられることによる。そして、PSJ GaNFETのQg/Idは、1.5nC/Aであるので、ノーマリーオントランジスタである第1トランジスタ10は、PSJ GaNFETに適用可能である。PSJ GaNFETは、1.2kV、3kV、10kV等の高耐圧を有するので、本実施の形態により高耐圧のノーマリーオフトランジスタとして機能させることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。本発明の実施の形態は、NチャネルFETをカスコード接続した例で説明したが、PチャネルFETをカスコード接続した場合にも適用可能である。
【0050】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0051】
1、2、3…半導体装置
10…第1トランジスタ、11…第1ソース、12…第1ドレイン、13…第1ゲート
20…第2トランジスタ、21…第2ソース、22…第2ドレイン、23…第2ゲート
110…ソース端子、120…ドレイン端子、131…ゲート端子、132…ゲート端子
201…第1ディレイ手段、202…第2ディレイ手段、210…第1ゲート制御手段、211…第1ダイオード、212…第2ダイオード、213…第3ダイオード、214…第4ダイオード、220…第2ゲート制御手段、230…入力側端子
300…レベルシフト回路、400…電源電圧、500…負荷抵抗
Sg0…駆動信号、Sg1…第1ゲート信号、Sg2…第2ゲート信号、Vm…中点電位
図1
図2
図3
図4
図5