(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022024
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G01V3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125305
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000155724
【氏名又は名称】株式会社雄島試作研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】野田 一房
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB15
2G105BB16
2G105CC03
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH05
(57)【要約】
【課題】対象物に対する影響がなく、また、製品の運用を図る上で制約が少ない物体検知装置を提供する。
【解決手段】第1物体22から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波Wtから生成された検出信号に基づいて第1物体22と信号検出部16との間に位置する第1物体22とは異なる材料からなる第2物体24(異物)の有無を識別するようにした。物体を検出する対象物(製品30)にX線などの電離放射線を照射しないため、対象物(製品30)に対する影響を考慮する必要がなく、また、黒体放射されるテラヘルツ波Wtはエネルギーが微弱であるため通信回線や周辺の電気製品にノイズによる障害を与えることがないので、物体検知装置10Bの運用を図る上で制約が少なく、利便性の向上を図る上で有利となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物体から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波を受信して検出信号を生成する信号検出部と、
前記検出信号に基づいて前記第1物体と前記信号検出部との間に位置する前記第1物体とは異なる材料からなる第2物体の有無を識別する物体識別部と、
を備えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記物体識別部が前記第2物体を識別したことを報知する報知部を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記第1物体は人体である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記信号検出部は、非金属製の製品を搬送する搬送路の上方または下方の一方に設けられ、
前記第1物体は、前記搬送路の上方または下方の他方に設けられ前記搬送路と交差する方向に延在するように収容された液体であり、
前記第2物体は、前記製品に混入された異物である、
ことを特徴とする請求項1記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記液体は、前記搬送路の上方または下方の他方に設けられ前記搬送路と交差する方向に延在し前記テラヘルツ波の透過を可能とした材料からなる管路内に収容されている、
ことを特徴とする請求項4記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記信号検出部と前記物体識別部は、前記テラヘルツ波を受信するための開口部を有する携帯型ケースに収容され、
前記第1物体は人体であり、
前記第2物体は前記人体が所持する物体である、
ことを特徴とする請求項1記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記携帯型ケースの内部で前記開口部に対向する箇所に、水平方向または鉛直方向の一方に延在する回転軸により回転され、前記開口部から前記携帯型ケースの内部に至った前記テラヘルツ波を反射させて前記信号検出部に導くポリゴンミラーが設けられ、
前記回転軸を回転させる回転駆動部と、
前記回転軸を水平方向または鉛直方向の他方に揺動させる揺動駆動部と、
を備えることを特徴とする請求項6記載の物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を対象物に照射し、対象物を透過した透過波あるいは対象物で反射された反射波を検出器によって受信して得られた検出信号に基づいて対象物の形状や異物の有無などを判別する非破壊検査装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、対象物がX線の影響を受けることが好ましくない場合にはこのような非破壊検査装置を用いることができないという制約がある。
また、X線に代えてレーダなどで使用される電磁波を対象物に照射する非破壊検査装置もあるが、このような電磁波を照射する装置は、通信回線や周辺の電気製品に対してノイズによる障害を与えるといった悪影響があることから、非破壊検査装置の運用を行なう上で制約がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、対象物に対する影響がなく、また、装置の運用を図る上で制約が少ない物体検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一実施の形態は、第1物体から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波を受信して検出信号を生成する信号検出部と、前記検出信号に基づいて前記第1物体と前記信号検出部との間に位置する前記第1物体とは異なる材料からなる第2物体の有無を識別する物体識別部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、第1物体から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波から生成された検出信号に基づいて第1物体と信号検出部との間に位置する第1物体とは異なる材料からなる第2物体の有無を識別するようにした。
物体を検出する対象物にX線などの電離放射線を照射しないため、対象物に対する影響を考慮する必要がなく、また、黒体放射されるテラヘルツ波はエネルギーが微弱であるため通信回線や周辺の電気製品にノイズによる障害を与えることがないので、物体検知装置の運用を図る上で制約が少なく、利便性の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態にかかる物体検知装置の構成を示す説明図である。
【
図2】第2の実施の形態にかかる物体検知装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の物体検知装置の実施の形態について説明する。
まず、本発明で用いるテラヘルツ波について説明する。
テラヘルツ波とは、遠赤外周波数領域またサブミリ波としても知られる電磁波であり、周波数帯域は100GHzから10THzであり、波長範囲は3mmから30μmである。
黒体から黒体放射によって広範囲の波長(周波数)にわたる電磁波が発せられる現象が知られているが、テラヘルツ波は、黒体から黒体放射で放射される電磁波に含まれることは無論のこと、人体や水などから黒体放射によって放射される電磁波にも含まれている。
テラヘルツ波は、衣服や紙、合成樹脂材料に対する透過性を有する一方、金属材料に対しては透過性を有しておらず反射される性質を備えている。
また、物体から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波は、そのエネルギーが極めて微弱であり、電気製品や通信回線に対してノイズによる障害を与えるおそれがなく、また、テラヘルツ波は、X線などの電離放射線と異なる非電離放射線であることから人体や生物に対する影響が無いことが知られている。
【0009】
第1の実施の形態の物体検知装置10Bは、搬送路を搬送される非金属製の製品に異物が混入しているか否かを判別するために用いられる。
本実施の形態では、非金属製の製品が、袋体に収容されたスナック菓子などの食品である場合について説明するが、製品はテラヘルツ波Wtが透過可能な非金属製のものであればよく、食品に限定されるものではない。
【0010】
図1に示すように、物体検知装置10Bは、信号検出部16と、放射部26と、物体識別部18と、報知部20とを含んで構成されている。
信号検出部16は、製品30を搬送する搬送路28の上方に設けられている。搬送路28は例えばベルトコンベアで構成されている。
信号検出部16は、テラヘルツ波Wtを受信して検出信号を生成する複数のディテクタが所定間隔をおいて直線状に並べられたディテクタアレイ16Bによって構成され、ディテクタアレイ16Bは細長状のケースに収容保持されている。
また、平面視したときに、ディテクタアレイ16Bは、搬送路28の搬送方向Fと交差する方向に延在して配置され、搬送方向Fから見てディテクタアレイ16Bは搬送路28の搬送方向Fと直交する幅方向の全域にわたって延在している。
【0011】
放射部26は、黒体放射によりテラヘルツ波Wを発生させる液体や固体からなる第1物体22で構成されている。
本実施の形態では、第1物体22として液体を用いる場合について説明する。
放射部26は、液体が収容されたテラヘルツ波Wtの透過が可能な材料で形成された管路2602と、管路2602内の液体を加温するヒータ2604とを備えている。
液体としては、水や油など従来公知の様々な液体が使用可能である。
管路2602は、搬送路28の下方に設けられており、搬送路28の搬送方向Fと交差する方向に延在して配置され、搬送方向Fから見て管路2602は搬送路28の搬送方向Fと直交する幅方向の全域にわたって延在している。また、管路2602はディテクタアレイ16Bと平行している。
したがって、第1物体22(液体)は搬送路28の下方に搬送路28と交差する方向に延在するように収容されている。
管路2602に収容された第1物体22(液体)は、ヒータ2604によって加温されることにより管路2602の長手方向の全長にわたって、すなわち、搬送路28の幅方向の全長にわたってテラヘルツ波Wtを黒体放射する。
なお、上記とは逆に、信号検出部16を搬送路28の下方に設けると共に、第1物体22(液体)を搬送路28の上方に配置してもよいことは無論である。
また、後述する第2の実施の形態(
図2)と同様に、ポリゴンミラーによって走査を行なう走査部14を設ければ、ディテクタアレイ16Bに代えて単一のディタクタ16Aを信号検出部16として用いることができる。
【0012】
物体識別部18は、検出信号に基づいて第1物体22(液体)と信号検出部16との間に位置する第1物体22とは異なる材料からなる異物、言い換えると、製品30に混入した異物である第2物体24の有無を識別するものである。ここで、第2物体24は、金属製品、液体、粉体、種々の固形物などである。
本実施の形態では、搬送路28に沿って搬送される製品30に対して第1物体22からテラヘルツ波Wtが放射されると共に、製品30を透過したテラヘルツ波Wtがディタクタアレイ16Bで構成された信号検出部16で検出される。
ここで、製品30はテラヘルツ波Wtを透過する一方、製品30に混入した金属製品、液体、粉体、種々の固形物である第2物体24(異物)は、テラヘルツ波Wtを透過しないか、あるいは、テラヘルツ波Wtの透過量が材質によって異なるので、物体識別部18は、検出信号に基づいて第2物体24の有無を識別することができる
また、製品30が搬送路28により搬送方向Fに向かって搬送されることにより信号検出部16によって製品30の搬送方向Fの全域にわたって検出信号が生成されるため、物体識別部18は製品30の搬送方向Fの全域および搬送方向Fと直交する幅方向の全域にわたって異物の有無を識別することができる。
【0013】
報知部20は、物体識別部18が第2物体24を識別したことを報知するものである。
報知部20は、例えば、ブザーやスピーカーを用いて警告音を鳴動させ、あるいは、警告メッセージを発声するものであってもよく、あるいは、警告灯を点灯、あるいは、点滅させるものであってもよく、あるいは、液晶ディスプレイなどの表示装置に第2物体24を識別した旨を文字情報で表示するものであってもよい。
【0014】
第1の実施の形態によれば、第1物体22から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波Wtから生成された検出信号に基づいて第1物体22と信号検出部16との間に位置する第1物体22とは異なる材料からなる第2物体24(異物)の有無を識別するようにした。
したがって、物体を検出する対象物(製品30)にX線などの電離放射線を照射しないため、対象物(製品30)に対する影響を考慮する必要がなく、また、黒体放射されるテラヘルツ波Wtはエネルギーが微弱であるため通信回線や周辺の電気製品にノイズによる障害を与えることがないので、物体検知装置10Bの運用を図る上で制約が少なく、利便性の向上を図る上で有利となる。
【0015】
また、第1の実施の形態によれば、報知部20によって物体識別部18が第2物体24(異物)を識別したことを報知するので、食品などの製品30に異物が混入したことを把握することにより異物が混入した製品30を確実に排除することができ、消費者に提供される製品30の安全性、信頼性、品質の向上を図る上で有利となる。
【0016】
また、第1の実施の形態によれば、テラヘルツ波Wtを黒体放射する第1物体22として取り扱いが簡単な液体を用いたので、物体検知装置10Bの構成の低コスト化、簡素化を図る上で有利となる。
なお、第1の実施の形態では、第1物体22としての液体を管路2602に収容した場合について説明したが、液体を上部が開放された容器に収容してもよいことは無論である。
【0017】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を簡略化し、異なる部分について重点的に説明する。
第2の実施の形態の物体検知装置は、第1物体としての人体などの熱放射物体が第1物体と異なる第2物体を所持しているか否かを判別するために用いられる。
第2物体としては、金属製品、液体、粉体、種々の固形物などがある。
金属製品としては、例えば、工具、刃物、銃器などが含まれる。
液体としては、例えば、毒劇物が含まれる。
粉体や固形物としては、例えば、火薬が含まれる。
【0018】
図2に示すように、第2の実施の形態の物体検知装置10Aは、携帯型ケース12と、走査部14と、信号検出部16と、物体識別部18と、報知部20とを含んで構成されている。
携帯型ケース12は、ケース本体1202と、ケース本体1202に設けられテラヘルツ波Wtを受信するための開口部1204とを備えている。
ケース本体1202は、走査部14と、信号検出部16と、物体識別部18と、報知部20とを収容保持している。
走査部14は、何れも図示しないポリゴンミラーと、回転駆動部と、揺動駆動部とを備え、2次元走査できる。
ポリゴンミラーは、水平方向に延在する回転軸により回転され、第1物体22としての人体から黒体放射され開口部1204から携帯型ケース12の内部に至ったテラヘルツ波Wtを反射させて信号検出部16に導くものである。
なお、ポリゴンミラーで反射されたテラヘルツ波Wtを効率よく信号検出部16に導くために、開口部とポリゴンミラーとの間、あるいは、ポリゴンミラーと信号検出部16との間にミラーやレンズなどの公知の光学部品を設けるなど任意である。
回転駆動部は、回転軸を回転させるものであり、電動モータによって構成されている。
揺動駆動部は、回転軸を水平方向に揺動させるものであり、例えば、回転駆動部を水平方向に揺動させる振動アクチュエータで構成されている。
なお、上記と逆に、ポリゴンミラーを鉛直方向に延在する回転軸により回転させ、揺動駆動部により回転軸を水平方向に揺動させてもよいことは無論である。
【0019】
信号検出部16は、人体などの熱放射物体である第1物体22から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波Wtを受信して検出信号を生成するものであり、第2の実施の形態では、信号検出部16はテラヘルツ波Wtを受信して検出信号を生成する単一のディテクタ(検出器)16Aによって構成されている。
物体識別部18は、検出信号に基づいて第1物体22(人体などの熱放射物体)と信号検出部16との間に位置する第1物体22とは異なる第2物体24の有無を識別するものである。
ここで、金属製品、液体、粉体、種々の固形物である第2物体24はテラヘルツ波Wtを透過しないか、あるいは、テラヘルツ波Wtの透過量が材質によって異なるので、物体識別部18は、検出信号に基づいて第2物体24の有無を識別することができる。
すなわち、物体識別部18は、第2物体24の有無を識別できればよいのであり、物体識別部18が検出信号に基づいて把握された第1物体22の形状と第2物体24の形状とに基づいて第2物体24の有無を識別するなど、物体識別部18による識別方法として従来公知の様々な画像解析の手法を用いることができる。
【0020】
報知部20は、物体識別部18が第2物体24を識別したことを報知するものであり、第1の実施の形態と同様に、ブザーやスピーカー、警告灯、表示装置を用いて報知するものである。
【0021】
第2の実施の形態によれば、第1物体22(人体などの熱放射物体)から黒体放射によって放射されるテラヘルツ波Wtから生成された検出信号に基づいて第1物体22と信号検出部16との間に位置する第1物体22とは異なる材料からなる第2物体24(金属製品、液体、粉体、種々の固形物)の有無を識別するようにした。
したがって、第1の実施の形態の場合と同様に、物体を検出する対象物(人体などの熱放射物体)にX線などの電離放射線を照射しないため、対象物(人体などの熱放射物体)に対する影響を考慮する必要がなく、また、黒体放射されるテラヘルツ波Wtはエネルギーが微弱であるため通信回線や周辺の電気製品にノイズによる障害を与えることがないので、物体検知装置10Aの運用を図る上で制約が少なく、利便性の向上を図る上で有利となる。
【0022】
また、第2の実施の形態によれば、報知部20によって物体識別部18が金属製品、液体、粉体、種々の固形物である第2物体24を識別したことを報知するので、例えば、空港やイベント会場などのように利用者による規制対象となる金属製品、液体、粉体、種々の固形物の持ち込みを阻止する必要がある場合に、金属製品の所持の有無を簡単に確実に把握することでき、利用者に対して適切な対応をとり、セキュリティの向上を図る上で有利となる。
【0023】
また、第2の実施の形態によれば、ポリゴンミラーを水平方向に延在する回転軸により回転させて、第1物体22から黒体放射されるテラヘルツ波Wtを反射させて信号検出部16に導くと共に、揺動駆動部によって、回転軸を水平方向に揺動させるようにした。
したがって、第1物体22から放射されるテラヘルツ波Wtを、上下方向の高さおよび水平方向の幅を有する矩形状の領域、言い換えると2次元領域にわたって捉えて確実に信号検出部16に導くことができるため、物体識別部18による第2物体24の識別を2次元の広がりをもった範囲にわたって確実に行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0024】
10A、10B 物体検知装置
12 携帯型ケース
1202 ケース本体
1204 開口部
14 走査部
16 信号検出部
16A ディテクタ
16B ディテクタアレイ
18 物体識別部
20 報知部
22 第1物体
24 第2物体
26 放射部
2602 管路
2604 ヒータ
28 搬送路
30 製品
Wt テラヘルツ波
F 搬送方向