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特開2024-22034プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法、決定部を備える装置及び決定ステップを含む情報処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022034
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法、決定部を備える装置及び決定ステップを含む情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240208BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240208BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240208BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240208BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240208BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240208BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240208BHJP
   G01N 21/45 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N21/17 A
G01N33/15 Z
G01N33/48 M
G01N33/50 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 B
G01N21/45 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125334
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康造
(72)【発明者】
【氏名】安彦 修
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA40
2G045CB01
2G045CB02
2G045FA19
2G045GB01
2G045JA01
2G045JA07
2G059AA05
2G059BB09
2G059BB14
2G059EE01
2G059EE04
2G059EE07
2G059EE09
2G059FF01
2G059JJ13
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA11
4B029FA15
4B029GA01
4B029GB06
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】観察対象物中の死細胞領域、特にプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を、非侵襲的に決定する方法を提供すること。
【解決手段】観察対象物の屈折率分布データを用いて、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法、装置及び情報処理プログラム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物の屈折率分布データを用いて、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法。
【請求項2】
プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量に基づいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、前記屈折率の空間変化量と閾値の大小関係に基づいて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プログラムされた細胞死がアポトーシスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記観察対象物が細胞塊である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記屈折率分布データが所定の方向における屈折率断層データである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データと、前記プログラムされた細胞死領域データに対応する参照観察対象物の屈折率分布データとを含む教師データを用いて学習した学習モデルに、観察対象物の屈折率分布データを入力することによって行われる、請求項1に記載の方法であって、前記学習モデルが利用する特徴量が、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量を含む、方法。
【請求項8】
前記プログラムされた細胞死がアポトーシスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記観察対象物が細胞塊である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記屈折率分布データが所定の方向における屈折率断層データである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
観察対象物の屈折率分布データを取得する工程と、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によってプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する工程と、を備える、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法。
【請求項12】
前記観察対象物が細胞塊であって、細胞塊に薬物を添加するステップと、細胞塊の屈折率分布データを取得するステップと、請求項1~4、6~8又は10のいずれか1項に記載の方法によってプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定するステップと、を含む、薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析する方法。
【請求項13】
前記細胞塊が正常細胞塊であって、前記薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響が、薬物の有する細胞毒性である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞塊ががん細胞塊であって、前記薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響が、薬物の有する抗がん活性である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
観察対象物の屈折率分布データを取得するデータ取得部と、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定部と、を備える、プログラムされた細胞死を起こした細胞領域の決定装置。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定ステップをコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項17】
観察対象物の屈折率分布データを取得するデータ取得ステップと、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法によって観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定ステップと、をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法、決定部を備える装置及び決定ステップを含む情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞死には、ネクローシスに代表される外的な要因によって偶発的に引き起こされる細胞死に加えて、アポトーシスに代表されるプログラムされた細胞死と呼ばれる細胞死が存在し、特定の条件下で高度に制御されたプロセスによって細胞が自壊することで、形態形成及び恒常性維持に必要不可欠な役割果たしている。プログラムされた細胞死は、典型的には、適切な形状の組織形成のために淘汰されるべき上皮細胞並びにバクテリア及びウイルス等の微生物に感染した細胞等において生じる。
【0003】
一般に、細胞を個別観察可能な条件下においては、外観から死細胞を判定することは比較的容易である。例えば、2次元培養された接着細胞は、細胞死を起こすと培養容器への接着性を失い、浮遊する。また、浮遊細胞は、細胞死を起こすと形態変化を起こすことが多い。したがって、これらの外観の変化により、死細胞を判定することができる。
【0004】
他方、細胞塊のような3次元的に細胞が密集した環境下においては、死細胞の浮遊又は形態変化が生じづらく、また生じた外観の変化を一細胞単位で詳細観察することは容易でない。細胞塊内部の細胞死の判定は、薬物の細胞死に対する影響の解析方法及び再生医療分野における細胞塊自体の評価方法などとしての応用が期待されており、特に細胞死領域の非侵襲的な決定方法の開発が望まれている。
【0005】
細胞死領域の非侵襲的な決定に関し、例えば特許文献1には、スフェロイドの3次元構造及び光照射した際のピクセル毎の平均輝度情報に基づいて、光照射位置からの距離が異なる複数のスフェロイド断面画像を、光照射位置から測定位置までの距離による信号強度減衰を考慮して補正することによって、スフェロイドの内部の細胞死状態を解析する細胞解析方法が開示されている。また特許文献2には、スフェロイドの領域の輪郭、光学濃度、円形度及び鮮明度の情報に基づいて、スフェロイドを撮像した画像からスフェロイドの崩壊度を評価するスフェロイドの評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6792616号公報
【特許文献2】特許第6122817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の細胞死領域の非侵襲的な決定方法は、一細胞単位の高い分解能で死細胞領域を決定することは困難であり、ましてや細胞が起こした細胞死についてその種類を判定することは非常に困難である。このような高分解能かつ細胞死の種類まで特定した細胞死領域の判定には通常蛍光染色が用いられるが、標識が必要となり、かつ透明化処理など煩雑な処理を施さない限り深部観察が困難である。
【0008】
したがって、本開示の目的は、観察対象物中の死細胞領域、特にプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を、非侵襲的に決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、観察対象物の屈折率分布データを用いると、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定可能であることを見出した。
【0010】
すなわち、本開示の一側面は、観察対象物の屈折率分布データを用いて、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法である。
【0011】
本開示の他の一側面は、観察対象物の屈折率分布データを取得する工程と、屈折率分布データを用いてプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する工程と、を備える、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法である。
【0012】
本開示の他の一側面は、細胞塊に薬物を添加するステップと、細胞塊の屈折率分布データを取得するステップと、屈折率分布データを用いてプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定するステップと、を含む、薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析する方法である。
【0013】
本開示の他の一側面は、観察対象物の屈折率分布データを取得するデータ取得部と、屈折率分布データを用いて観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定部と、を備える、プログラムされた細胞死を起こした細胞領域の決定装置である。
【0014】
本開示の他の一側面は、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定ステップをコンピュータに実行させる情報処理プログラムである。
【0015】
本開示の他の一側面は、観察対象物の屈折率分布データを取得するデータ取得ステップと、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定ステップと、をコンピュータに実行させる情報処理プログラムである。
【0016】
より詳細には、本開示は以下の[1]~[22]に関する。
[1]観察対象物の屈折率分布データを用いて、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法。
[2]プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量に基づいて行われる、[1]に記載の方法。
[3]プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、上記屈折率の空間変化量と閾値の大小関係に基づいて行われる、[2]に記載の方法。
[4]上記プログラムされた細胞死を起こした細胞が、アポトーシス、ネクロプトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死からなる群より選択される1以上の細胞死を起こした細胞を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]上記プログラムされた細胞死を起こした細胞が、アポトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死からなる群より選択される1以上の細胞死を起こした細胞を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[6]上記プログラムされた細胞死がアポトーシスである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[7]上記観察対象物が細胞塊である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]上記屈折率分布データが所定の方向における屈折率断層データである、[1]~[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データと、前記プログラムされた細胞死領域データに対応する参照観察対象物の屈折率分布データとを含む教師データを用いて学習した学習モデルに、観察対象物の屈折率分布データを入力することによって行われる、[1]に記載の方法。
[10]プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定が、参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データと、上記プログラムされた細胞死領域データに対応する参照観察対象物の屈折率分布データとを含む教師データを用いて学習した学習モデルに、観察対象物の屈折率分布データを入力することによって行われる、[1]に記載の方法であって、上記学習モデルが利用する特徴量が、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量を含む、方法。
[11]上記プログラムされた細胞死を起こした細胞が、アポトーシス、ネクロプトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死からなる群より選択される1以上の細胞死を起こした細胞を含む、[9]又は[10]に記載の方法。
[12]上記プログラムされた細胞死を起こした細胞が、アポトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死からなる群より選択される1以上の細胞死を起こした細胞を含む、[9]又は[10]に記載の方法。
[13]上記プログラムされた細胞死がアポトーシスである、[9]又は[10]に記載の方法。
[14]上記観察対象物が細胞塊である、[9]~[13]のいずれか1つに記載の方法。
[15]上記屈折率分布データが所定の方向における屈折率断層データである、[9]~[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16]観察対象物の屈折率分布データを取得する工程と、[1]~[15]のいずれか1つに記載の方法によってプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する工程と、を備える、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法。
[17]上記観察対象物が細胞塊であって、細胞塊に薬物を添加するステップと、細胞塊の屈折率分布データを取得するステップと、[1]~[6]、[8]~[13]又は[15]のいずれか1つに記載の方法によってプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定するステップと、を含む、薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析する方法。
[18]上記細胞塊が正常細胞塊であって、上記薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響が、薬物の有する細胞毒性である、[17]に記載の方法。
[19]上記細胞塊ががん細胞塊であって、上記薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響が、薬物の有する抗がん活性である、[17]に記載の方法。
[20]観察対象物の屈折率分布データを取得するデータ取得部と、[1]~[16]のいずれか1つに記載の方法によって観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定部と、を備える、プログラムされた細胞死を起こした細胞領域の決定装置。
[21][1]~[16]のいずれか1つに記載の方法によって観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定ステップをコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
[22]観察対象物の屈折率分布データを取得するデータ取得ステップと、[1]~[16]のいずれか1つに記載の方法によって観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する決定ステップと、をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、観察対象物中の死細胞領域のうち、特にプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を、非侵襲的に決定することができる方法、装置及び情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(以下、「図A01」ともいう。)は、観察装置1Aの構成を示す図である。
図2図2(以下、「図A02」ともいう。)は、観察装置1Bの構成を示す図である。
図3図3(以下、「図A03」ともいう。)は、観察装置1Cの構成を示す図である。
図4図4(以下、「図A04」ともいう。)は、屈折率分布測定方法Aのフローチャートである。
図5図5(以下、「図A05」ともいう。)(a),(b),(c)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。
図6図6(以下、「図A06」ともいう。)は、カーネル関数gを説明する図である。
図7図7(以下、「図A07」ともいう。)(a),(b)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。
図8図8(以下、「図A08」ともいう。)(a),(b),(c)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。
図9図9(以下、「図A09」ともいう。)は、屈折率分布測定方法A1における2次元位相画像生成ステップS4のフローチャートである。
図10図10(以下、「図A10」ともいう。)は、屈折率分布測定方法A2における2次元位相画像生成ステップS4のフローチャートである。
図11図11(以下、「図A11」ともいう。)は、カーネル関数を説明する図である。
図12図12(以下、「図A12」ともいう。)は、屈折率分布測定方法A3における2次元位相画像生成ステップS4のフローチャートである。
図13図13(以下、「図B01」ともいう。)は、観察装置1Dの構成を示す図である。
図14図14(以下、「図B02」ともいう。)は、観察装置1Eの構成を示す図である。
図15図15(以下、「図B03」ともいう。)は、観察装置1Fの構成を示す図である。
図16図16(以下、「図B04」ともいう。)は、屈折率分布測定方法Bのフローチャートである。
図17図17(以下、「図B05」ともいう。)は、第2複素振幅画像生成ステップS63及び2次元位相画像生成ステップS65の各処理の順序及び画像を説明する図である。
図18図18(以下、「図B06」ともいう。)は、第2複素振幅画像生成ステップS63、位相共役演算ステップS64及び2次元位相画像生成ステップS65の各処理の順序及び画像を説明する図である。
図19図19(以下、「図B07」ともいう。)は、第2複素振幅画像生成ステップS63、位相共役演算ステップS64及び2次元位相画像生成ステップS65の各処理の順序及び画像を説明する図である。
図20図20(以下、「図B08」ともいう。)は、第2複素振幅画像生成ステップS63、位相共役演算ステップS64及び2次元位相画像生成ステップS65の各処理の順序及び画像を説明する図である。
図21図21(以下、「図B09」ともいう。)は、3次元位相画像生成ステップS66及び屈折率分布算出ステップS67の各処理の順序及び画像を説明する図である。
図22図22(以下、「図B10」ともいう。)は、位相共役演算の概要について説明する図であり、撮像部により干渉強度画像を撮像するときの入力光及び出力光を示す図である。
図23図23(以下、「図B11」ともいう。)は、位相共役演算の概要について説明する図であり、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の入力光及び出力光を示す図である。
図24図24(以下、「図B12」ともいう。)は、位相共役演算ステップS64における画像分割、位相共役演算及び画像結合を説明する図である。
図25図25(以下、「図C01」ともいう。)は、観察装置1Gの構成を示す図である。
図26図26(以下、「図C02」ともいう。)は、観察装置1Hの構成を示す図である。
図27図27(以下、「図C03」ともいう。)は、観察装置1Iの構成を示す図である。
図28図28(以下、「図C04」ともいう。)は、屈折率分布測定方法Cのフローチャートである。
図29図29(以下、「図C05」ともいう。)は、屈折率分布測定方法Cのフローチャートである。
図30図30(以下、「図C06」ともいう。)は、観察対象物を含む領域と第1~第Jのブロックとの関係を説明する図である。
図31図31(以下、「図C07」ともいう。)は、第1~第Jのブロックにおける処理の手順を説明する図である。
図32図32(以下、「図C08」ともいう。)は、BPMの処理内容を説明する図である。
図33図33(以下、「図C09」ともいう。)は、第3複素振幅画像生成ステップS77のフローチャートである。
図34図34(以下、「図C10」ともいう。)は、観察装置1Jの構成を示す図である。
図35図35は、本開示の一実施形態に係る閾値法を用いたプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法の典型的なフローを示す図である。
図36図36は、本開示の一実施形態に係る閾値法を用いたプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法が、さらに生細胞領域であると決定された領域の細胞ごとの区分化を行うステップと、生細胞単位での屈折率の空間変化量を計算するステップと、計算結果に基づいて生細胞領域及びプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を補正するステップと、を含む場合の、典型的な決定のフローを示す図である。
図37図37は、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法が機械学習法である場合の、プログラムされた細胞死領域データが参照観察対象物の蛍光データから作成される場合の学習ステップにおけるモデルの典型的な学習フローを示す図である。
図38図38は、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法が機械学習法である場合の、プログラムされた細胞死領域データが参照観察対象物の蛍光データから作成される場合の推論ステップにおける典型的な推論フローを示す図である。
図39図39は、本開示の一側面に係る、薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析する方法について、細胞塊に異なる濃度の薬物を添加し、同じ時間培養した後のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域から評価する一例を示した図である。
図40図40は、本開示の一側面に係る、薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析する方法について、細胞塊を一定濃度の薬物の存在下で培養した場合の、時間依存的なプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の推移から評価する一例を示した図である。
図41図41は、実施例1において、スタウロスポリンを添加したA549細胞塊のうち、観察対象物として用いた6つの細胞塊について、添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の直径との関係をプロットした図である。
図42図42は、実施例1において、スタウロスポリンを添加したA549細胞塊のうち、観察対象物として用いた6つの細胞塊について、添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の体積との関係をプロットした図である。
図43図43は、実施例1において、スタウロスポリンを終濃度0,200及び1000nMとなるように添加したA549細胞塊の屈折率分布データから抽出した代表的な屈折率断層データを示す図である。
図44図44は、実施例2において用いた、閾値法によるプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定フローを示した図である。
図45図45は、実施例2において、スタウロスポリンを終濃度0,200及び1000nMとなるように添加したA549細胞塊について、閾値法を用いてプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定した場合の、ある断層面におけるプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域(死細胞領域)及び非分断領域(生細胞領域)を示した図である。
図46図46は、実施例2において、A549細胞塊に対して添加したスタウロスポリンの濃度(指数表示)と閾値法により決定された非分断領域(生細胞領域)の割合との関係をプロットした図である。
図47図47は、実施例3において、スタウロスポリンを添加したHepG2細胞塊のうち、観察対象物として用いた6つの細胞塊について、添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の直径との関係をプロットした図である。
図48図48は、実施例3において、スタウロスポリンを添加したHepG2細胞塊のうち、観察対象物として用いた6つの細胞塊について、添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の体積との関係をプロットした図である。
図49図49は、実施例3において、HepG2細胞塊に対して添加したスタウロスポリンの濃度(指数表示)と閾値法により決定された非分断領域(生細胞領域)の割合との関係をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。実際の形態は、これらの例示に限定されるものではない。
【0020】
プログラムされた細胞死とは、広義の概念として、細胞死を(I)偶発的な細胞死(Accidental cell death、ACD)及び(II)プログラムされた細胞死(Programmed cell death、PCD)あるいは制御された細胞死(Regulated cell death、RCD)の2群に大別した場合に、後者に属する細胞死のことである。プログラムされた細胞死としては、例えば、アポトーシス、ネクロプトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死などが知られている。
【0021】
アポトーシスは、生理的条件下で細胞自らが積極的に引き起こす細胞死であり、厳密に制御されたプログラムされた細胞死の態様である。I型細胞死とも呼ばれ、多細胞生物の形態形成及び恒常性維持において必要不可欠な役割を果たしている。アポトーシスを起こした細胞は、細胞核の染色体凝集、細胞核の断片化、細胞膜のブレッビング及び細胞質の凝縮等の形態により特徴づけられる。アポトーシスは、抗悪性腫瘍薬(以下では、抗がん剤とも記載する。)のがん細胞殺傷メカニズムの1つである。すなわち、ある種の抗がん剤は、がん細胞特異的な反応又は環境を利用して、がん細胞選択的なアポトーシスを誘導する。一方で、任意の薬効を有する薬物がアポトーシスを誘導する作用を有することは副作用の原因となる可能性があり、特に神経細胞のアポトーシスを誘導する場合には神経毒性の原因となりうる。また、酸化ストレスにさらされた細胞においては、低酸素誘導因子(HIF1α)の分解が抑制され、アポトーシスが誘導されることが知られている。
【0022】
ネクロプトーシスは、ネクローシス(壊死)と類似した形態を示すプログラムされた細胞死であり、例えば、アポトーシスが阻害された場合に活性化される細胞の自己破壊のプロセスである。ネクロプトーシスを起こした細胞は、ネクローシスを起こした細胞同様、細胞の膨張及び細胞膜の崩壊等の形態により特徴づけられる一方で、アポトーシスのような顕著な染色体凝縮は見られない。
【0023】
フェロトーシスは、鉄イオン依存性のプログラムされた細胞死であり、高濃度の遊離鉄(II)イオン存在下においてグルタチオンによる抗酸化機構が崩壊し、過酸化脂質が異常蓄積することによって引き起こされる細胞死である。フェロトーシスを起こした細胞は、ミトコンドリアの縮小、ミトコンドリアのクリステの減少及びミトコンドリアの膜密度の増加等の形態により特徴づけられる。
【0024】
パイロトーシスは、細菌やウイルス等に感染した細胞が自発的に引き起こすことで知られるプログラムされた細胞死である。パイロトーシスにおいてはインフラマソームの活性化が生じ、最終的には細胞膜に生じた小孔から水が流入することにより細胞が破裂して細胞死が誘導される。パイロトーシスを起こした細胞は、膨張を伴わない細胞膜の崩壊等の形態により特徴づけられる一方で、アポトーシスのような顕著な染色体凝縮は見られない。
【0025】
パータナトスは、酸化ストレスにより生じたDNA損傷及び虎斑融解(クロマトライシス)により誘起される、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)依存性のプログラムされた細胞死である。同じく酸化ストレスにより誘起されるアポトーシスと異なり、パータナトスにおいてはDNAの断片化は見られない。パータナトスを起こした細胞は、クロマチンの凝縮及び細胞膜のインテグリティの消失等の形態により特徴づけられる。
【0026】
エントーシスは、1つの細胞が他の細胞の細胞死を誘導する、いわば細胞の共食いとも言うべきプログラムされた細胞死の態様である。一般にエントーシスは上皮組織のがん細胞において生じ、例えば異常増殖状態、飢餓状態及び着状態等において見られる。エントーシスを起こした細胞は、細胞の中に細胞が存在する形態(Cell-in-cell Structure)により特徴づけられる。
【0027】
ネトーシスは、損傷状態又は感染状態に置かれた細胞が、NETと呼ばれるDNAとタンパク質のネット様の複合体の放出を伴って自壊するプログラムされた細胞死の態様であり、典型的には好中球において見られる。放出されたNETは、バクテリアやウイルス等を捕捉してこれらの貪食を促進する作用を有する。NETは核内に存在するクロマチン及びDNAを構成要素として含むため、ネトーシスを起こした細胞は、細胞膜の崩壊及び核膜の崩壊等の形態によって特徴づけられる。
【0028】
オートファジー細胞死は、オートファジーの異常活性化に由来するプログラムされた細胞死の態様である。オートファジーの異常活性化に由来する細胞死には、例えば鉄イオン結合性タンパク質の異常分解による鉄イオン(II)濃度上昇を伴ったフェロトーシスや、アポトーシス制御関連タンパク質の異常分解によるアポトーシスも存在するが、狭義の意味でのオートファジー細胞死は、オートファジーの異常活性化によって生じる栄養欠乏、又は異常なタンパク分解によって生じたペプチド断片によるNa/K-ATPアーゼ阻害による細胞死である。オートファジー細胞死を起こした細胞は、小胞体構造の断片化若しくは消失、核周囲の局所的な膨張及びオートファジーの基質と細胞間の強固な接着に特徴づけられる。
【0029】
本開示の一実施形態において、プログラムされた細胞死を起こした細胞は、アポトーシス、ネクロプトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死からなる群より選択される1以上の細胞死を起こした細胞であり、他の一実施形態において、プログラムされた細胞死を起こした細胞は、アポトーシス、フェロトーシス、パイロトーシス、パータナトス、エントーシス、ネトーシス及びオートファジー細胞死からなる群より選択される1以上の細胞死を起こした細胞である。一実施形態において、プログラムされた細胞死は、アポトーシスである。
【0030】
本開示の一実施形態に係る観察対象物は、細胞を主成分として構成される物体であるが、細胞の他にも組織試料に含有されることがあるコンポーネント、例えば細胞外マトリックス及び中性脂肪など、を含んでいてもよい。本開示の一実施形態に係る観察対象物は、再現性の高さ及び試料調製の容易性を両立する観点から、細胞の培養体であってもよく、さらに生理的環境に近い環境も並立する観点から、細胞塊であってもよい。観察対象物が細胞塊である場合には、外観を指標としては評価することができない細胞塊内部のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定することが可能である。すなわち、一実施形態に係る観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域は、細胞塊内部のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域であってもよい。細胞塊内部とは、細胞塊を形成する細胞のうち、細胞塊の表面に露出していない細胞を意味する。観察対象物が細胞の培養体である場合、培養体は1種の細胞からなってもよく、2種以上の細胞を含んでもよい。観察対象物が細胞塊である場合、その最大径は100~200μmであってもよい。
【0031】
屈折率分布データとは、観察対象物を含む空間中のボクセル毎の屈折率の3次元分布を示すデータ又は観察対象物を含む空間の所定の方向における断層面内のピクセル毎の屈折率の2次元分布を示すデータである。また、屈折率断層データとは、屈折率分布データのうち、観察対象物を含む空間の所定の方向における断層面内のピクセル毎の屈折率の2次元分布を示すデータである。
【0032】
本開示の一実施形態に係る屈折率分布データを取得する方法(以下、「屈折率分布測定方法」ともいう。)は特に限定されないが、方法について以下に詳述する。観察対象物の屈折率分布を非染色・非侵襲で測定する方法として、光回折トモグラフィ(Optical Diffraction Tomography、ODT)が知られている。ODTは、定量位相イメージング(Quantitative Phase Imaging、QPI)を3次元イメージング可能な技術に発展させたものであり、観察対象物の3次元屈折率トモグラフィを実現することができる。
【0033】
以下に説明する屈折率分布測定方法A~Cが用いられる。屈折率分布測定方法Aには屈折率分布測定方法A1~A3の態様がある。屈折率分布測定方法A1~A3を総称して屈折率分布測定方法Aという。これらの屈折率分布測定方法A~Cは、観察対象物が多重散乱体である場合であっても、多重散乱光の影響が低減された3次元屈折率トモグラフィを実現することができる。
【0034】
なお、他の染色・非侵襲のイメージング技術として、光コヒーレンス・トモグラフィ(Optical Coherence Tomography、OCT)も知られている。しかし、OCTの分解能は10μm程度であるのに対して、ODT及び屈折率分布測定方法A~Cの分解能は1μm程度である。また、OCTは、屈折率分布を求めるものではなく、イメージングにより得られた信号の生物学的な解釈が難しい。これらの点で、ODT及び屈折率分布測定方法A~Cは、OCTより優位である。
【0035】
先ず、屈折率分布測定方法A(A1~A3)について説明する。図A01図A03は、屈折率分布測定方法Aによる屈折率分布を測定する際に用いることができる観察装置1A~1Cの各構成を示す図である。
【0036】
図A01は、観察装置1Aの構成を示す図である。この観察装置1Aは、光源11、レンズ12、レンズ21、ミラー22、レンズ23、コンデンサレンズ24、対物レンズ25、ビームスプリッタ41、レンズ42、撮像部43及び解析部50などを備える。
【0037】
光源11は、空間的・時間的にコヒーレントな光を出力するものであり、レーザ光源であってもよい。レンズ12は、光源11と光学的に接続されており、光源11から出力された光を光ファイバ14の光入射端13に集光して、その光を光入射端13に入射させる。光ファイバ14は、レンズ12により光入射端13に入射された光をファイバカプラ15へ導光する。ファイバカプラ15は、光ファイバ14と光ファイバ16,17との間で光を結合するものであり、光ファイバ14により導光されて到達した光を2分岐して、一方の分岐光を光ファイバ16により導光させ、他方の分岐光を光ファイバ17によりさせる。光ファイバ16により導光された光は光出射端18から発散光として出射される。光ファイバ17により導光された光は光出射端19から発散光として出射される。
【0038】
レンズ21は、光出射端18と光学的に接続されており、光出射端18から発散光として出力された光をコリメートする。ミラー22は、レンズ21と光学的に接続されており、レンズ21から到達した光をレンズ23へ反射させる。ミラー22の反射面の方位は可変である。レンズ23は、ミラー22と光学的に接続されている。コンデンサレンズ24は、レンズ23と光学的に接続されている。レンズ23及びコンデンサレンズ24は、4f光学系を構成してもよい。レンズ23及びコンデンサレンズ24は、ミラー22の反射面の方位に応じた光照射方向から観察対象物Sに対して光を照射する。対物レンズ25は、コンデンサレンズ24と光学的に接続されている。対物レンズ25とコンデンサレンズ24との間に観察対象物Sが配置される。対物レンズ25は、コンデンサレンズ24から出力されて観察対象物Sを経た光(物体光)を入力し、その光をビームスプリッタ41へ出力する。
【0039】
ビームスプリッタ41は、対物レンズ25と光学的に接続され、また、光出射端19とも光学的に接続されている。ビームスプリッタ41は、対物レンズ25から出力されて到達した光(物体光)と、光出射端19から出力されて到達した光(参照光)とを合波して、両光をレンズ42へ出力する。レンズ42は、ビームスプリッタ41と光学的に接続されており、ビームスプリッタ41から到達した物体光及び参照光それぞれをコリメートして撮像部43へ出力する。撮像部43は、レンズ42と光学的に接続されており、レンズ42から到達した物体光と参照光との干渉による干渉縞像(干渉強度画像)を撮像する。撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は傾斜している。ビームスプリッタ41により物体光と参照光とが合波される位置は、結像レンズより後段であってもよいが、収差の影響を考慮すると、図に示されるように対物レンズ25とレンズ42との間であるのが望ましい。
【0040】
解析部50は、撮像部43と電気的に接続されており、撮像部43により撮像された干渉強度画像を入力する。解析部50は、その入力した干渉強度画像を処理することにより、観察対象物Sの3次元屈折率分布を算出する。解析部50は、コンピュータであってよい。解析部50は、干渉強度画像取得部51、第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55、屈折率分布算出部56、表示部57及び記憶部58を備える。
【0041】
干渉強度画像取得部51は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。また、干渉強度画像取得部51は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。干渉強度画像取得部51は、CPUを含み、ミラー22の反射面の方位を変化させる為の制御信号を出力する出力ポートを有し、また、撮像部43から干渉強度画像を入力する入力ポートを有する。対物レンズ25を光軸方向に移動させる必要はない。基準位置は、撮像部43の撮像面に対して共役関係にある像面位置である。
【0042】
第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55及び屈折率分布算出部56は、干渉強度画像に基づいて処理を行うものであり、CPU、GPU、DSP又はFPGA等の処理装置を含む。表示部57は、処理すべき画像、処理途中の画像及び処理後の画像などを表示するものであり、例えば液晶ディスプレイを含む。記憶部58は、各種の画像のデータを記憶するものであり、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、RAM及びROM等を含む。第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55、屈折率分布算出部56及び記憶部58は、クラウドコンピューティングによって構成されてもよい。
【0043】
記憶部58は、干渉強度画像取得部51、第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55及び屈折率分布算出部56に各処理を実行させるためのプログラムをも記憶する。このプログラムは、観察装置1Aの製造時又は出荷時に記憶部58に記憶されていてもよいし、出荷後に通信回線を経由して取得されたものが記憶部58に記憶されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体2に記録されていたものが記憶部58に記憶されてもよい。記録媒体2は、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROM、USBメモリなど任意である。
【0044】
干渉強度画像取得部51、第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55及び屈折率分布算出部56それぞれの処理の詳細については後述する。
【0045】
図A02は、観察装置1Bの構成を示す図である。この図A02に示される観察装置1Bは、図A01に示された観察装置1Aの構成に加えて、レンズ31、ミラー32、駆動部33及びレンズ34などを備える。
【0046】
レンズ31は、光出射端19と光学的に接続されており、光出射端19から発散光として出力された光(参照光)をコリメートする。ミラー32は、レンズ31と光学的に接続されており、レンズ31から到達した光をレンズ34へ反射させる。レンズ34は、ミラー32と光学的に接続されており、ミラー32から到達した光をビームスプリッタ41へ出力する。レンズ34から出力された光は、ビームスプリッタ41の手前で一旦集光された後、発散光としてビームスプリッタ41に入力される。ビームスプリッタ41は、対物レンズ25から出力されて到達した光(物体光)と、レンズ34から出力されて到達した光(参照光)とを合波して、両光を同軸にしてレンズ42へ出力する。撮像部43は、レンズ42から到達した物体光と参照光との干渉による干渉縞像(干渉強度画像)を撮像する。撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は平行である。
【0047】
駆動部33は、ミラー32の反射面に垂直な方向にミラー32を移動させる。駆動部33は例えばピエゾアクチュエータである。このミラー32の移動により、ファイバカプラ15における光分岐からビームスプリッタ41における合波に至るまでの物体光及び参照光それぞれの光路長の差(位相差)を変化させる。この光路長差が異なると、撮像部43により撮像される干渉強度画像も異なる。
【0048】
観察装置は、図A01及び図A02の構成例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。観察装置1A及び観察装置1Bの構成では観察対象物Sを透過した物体光を観察したが、以下に説明する観察装置1Cの構成のように観察対象物Sで反射された物体光を観察してもよい。
【0049】
図A03は、観察装置1Cの構成を示す図である。観察装置1Cは、光源11、レンズ12、レンズ21、ミラー22、レンズ23、対物レンズ25、ビームスプリッタ41、レンズ42、撮像部43及び解析部50などを備える。以下では、観察装置1A(図A01)と相違する点について主に説明する。
【0050】
レンズ21は、光ファイバ16の光出射端18と光学的に接続されており、光出射端18から発散光として出力された光をコリメートする。ミラー22は、レンズ21と光学的に接続されており、レンズ21から到達した光をレンズ23へ反射させる。ミラー22の反射面の方位は可変である。レンズ23は、ミラー22と光学的に接続されている。対物レンズ25は、レンズ23と光学的に接続されている。レンズ23と対物レンズ25との間にビームスプリッタ41が配置されている。レンズ23及び対物レンズ25は、4f光学系を構成してもよい。レンズ23及び対物レンズ25は、ミラー22の反射面の方位に応じた光照射方向から観察対象物Sに対して光を照射する。対物レンズ25は、観察対象物Sで反射された光(物体光)を入力し、その光をビームスプリッタ41へ出力する。
【0051】
ビームスプリッタ41は、対物レンズ25と光学的に接続され、また、光ファイバ17の光出射端19とも光学的に接続されている。ビームスプリッタ41は、対物レンズ25から出力されて到達した光(物体光)と、光出射端19から出力されて到達した光(参照光)とを合波して、両光をレンズ42へ出力する。レンズ42は、ビームスプリッタ41と光学的に接続されており、ビームスプリッタ41から到達した物体光及び参照光それぞれをコリメートして撮像部43へ出力する。撮像部43は、レンズ42と光学的に接続されており、レンズ42から到達した物体光と参照光との干渉による干渉縞像(干渉強度画像)を撮像する。撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は傾斜している。ビームスプリッタ41により物体光と参照光とが合波される位置は、結像レンズより後段であってもよいが、収差の影響を考慮すると、図に示されるように対物レンズ25とレンズ42との間であるのが望ましい。
【0052】
観察装置1C(図A03)の構成において、観察装置1B(図A02)と同様に参照光の光路長を変化させる機構(図A02中のレンズ31、ミラー32、駆動部33及びレンズ34)を設けて、ファイバカプラ15における光分岐からビームスプリッタ41における合波に至るまでの物体光及び参照光それぞれの光路長の差(位相差)を変化させてもよい。この場合、撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は平行であってよい。
【0053】
図A04は、屈折率分布測定方法Aのフローチャートである。この屈折率分布測定方法Aは、観察装置1A~1Cの何れを用いた場合においても可能なものである。この屈折率分布測定方法Aは、干渉強度画像取得ステップS1、第1複素振幅画像生成ステップS2、第2複素振幅画像生成ステップS3、2次元位相画像生成ステップS4、3次元位相画像生成ステップS5及び屈折率分布算出ステップS6を備える。
【0054】
干渉強度画像取得ステップS1の処理は干渉強度画像取得部51により行われる。第1複素振幅画像生成ステップS2の処理は第1複素振幅画像生成部52により行われる。第2複素振幅画像生成ステップS3の処理は第2複素振幅画像生成部53により行われる。2次元位相画像生成ステップS4の処理は2次元位相画像生成部54により行われる。3次元位相画像生成ステップS5の処理は3次元位相画像生成部55により行われる。屈折率分布算出ステップS6の処理は屈折率分布算出部56により行われる。
【0055】
干渉強度画像取得ステップS1において、干渉強度画像取得部51は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。そして、干渉強度画像取得部51は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。
【0056】
図A01図A03それぞれにおいて説明の便宜のためにxyz直交座標系が示されている。z軸は対物レンズ25の光軸に対し平行である。基準位置は、撮像部43の撮像面に対して共役関係にある像面位置である。この位置をz=0とする。観察対象物Sへの光照射方向は、その照射光の波数ベクトル(k,k,k)のうちのk及びkにより表すことができる。
【0057】
図A05(a)~(c)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。この図では、横軸をkとし縦軸をkとしたk平面において各々の丸印の位置が光照射方向を表している。光照射方向の走査は、図A05(a)に示されるようにk平面において矩形格子状に配置されるようなものであってもよいし、図A05(b)に示されるようにk平面において同心の複数の円それぞれの周上に配置されるようなものであってもよいし、また、図A05(c)に示されるようにk平面において螺旋状に配置されるようなものであってもよい。何れの場合にも、コンデンサレンズ24の開口数(NA:Numerical Aperture)の許す限りで光照射方向の走査が可能である。ラスタスキャン及びランダムスキャンの何れであってもよい。ラスタスキャンの場合には、戻りスキャンが有ってもよいし無くてもよい。
【0058】
第1複素振幅画像生成ステップS2において、第1複素振幅画像生成部52は、複数の光照射方向それぞれについて、干渉強度画像取得部51により取得された基準位置の干渉強度画像に基づいて、基準位置の複素振幅画像を生成する。観察装置1A(図A01)及び観察装置1C(図A03)の場合には、第1複素振幅画像生成部52は、フーリエ縞解析法により、1枚の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。観察装置1B(図A02)の場合には、第1複素振幅画像生成部52は、位相シフト法により、物体光と参照光との間の光路長差(位相差)が互いに異なる3枚以上の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。
【0059】
第2複素振幅画像生成ステップS3において、第2複素振幅画像生成部53は、複数の光照射方向それぞれについて、第1複素振幅画像生成部52により生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置それぞれの複素振幅画像を生成する。基準位置の複素振幅画像u(x,y,0)の2次元フーリエ変換をU(k,k,0)とすると、z=dの位置の複素振幅画像u(x,y,d)、及び、この複素振幅画像u(x,y,d)の2次元フーリエ変換U(k,k,d)は、下記式で表される。iは虚数単位であり、kは観察対象物中における光の波数である。
【0060】
【数1】
【0061】
【数2】
【0062】
2次元位相画像生成ステップS4において、2次元位相画像生成部54は、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成部53により生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する。ここで生成される2次元位相画像は、フォーカスを合わせたz方向位置を中心とする位相画像に相当する。2次元位相画像生成ステップS4の詳細については後述する。
【0063】
なお、第2複素振幅画像生成ステップS3において複数の光照射方向それぞれについて複数の位置それぞれの複素振幅画像を全て生成した後に、2次元位相画像生成ステップS4以降の処理を行ってもよい。また、第2複素振幅画像生成ステップS3において複数の光照射方向それぞれについて或る1つのz方向位置の複素振幅画像を生成し、該位置の2次元位相画像を2次元位相画像生成ステップS4において生成する処理を単位として、z方向位置を走査しながら当該単位処理を繰り返し行ってもよい。後者の場合には、記憶部58が記憶しておくべき画像データの容量を小さくすることができる。
【0064】
3次元位相画像生成ステップS5において、3次元位相画像生成部55は、2次元位相画像生成部54により生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する。ここで生成される3次元位相画像は、2次元位相画像中での位置x,y及び該2次元位相画像の位置zを変数とする画像である。
【0065】
屈折率分布算出ステップS6において、屈折率分布算出部56は、3次元位相画像生成部55により生成された3次元位相画像に基づいて、デコンボリューションにより観察対象物の3次元屈折率分布を求める。観察対象物の屈折率分布をn(x,y,z)とし、電気感受率分布をf(x,y,z)とし、背景の媒質の屈折率をnとすると、両者の間には下記(3)式の関係がある。3次元位相画像生成部55により生成された3次元位相画像Φ(x,y,z)は、下記(4)式のとおり、カーネル関数g(x,y,z)と電気感受率分布f(x,y,z)とのコンボリューションで表される。したがって、観察対象物の3次元屈折率分布n(x,y,z)は、3次元位相画像Φ(x,y,z)に基づいてデコンボリューションにより求めることができる。
【0066】
【数3】
【0067】
【数4】

なお、カーネル関数gは、波動方程式の解に対応するグリーン関数に基づくものである。図A06は、カーネル関数gを説明する図である。この図において、カーネル関数gの値が最も大きい中心位置が原点であり、縦方向がz軸であり、横方向がz軸に垂直な方向である。
【0068】
また、第1複素振幅画像生成ステップS2、第2複素振幅画像生成ステップS3、2次元位相画像生成ステップS4、3次元位相画像生成ステップS5及び屈折率分布算出ステップS6の各処理は、所定の数の光照射方向それぞれの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得される度に行われてもよいし(図A07)、1つの光照射方向の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得される度に行われてもよい(図A08)。
【0069】
図A07及び図A08は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。これらの図では、横軸をkとし縦軸をkとしたk平面において各々の丸印の位置が光照射方向を表している。これらの図に示される光照射方向の走査の例では、光照射方向を順次変更していき、第(N+n)の干渉強度画像取得時の光照射方向を第nの干渉強度画像取得時の光照射方向と一致させている。nは正の整数であり、Nは2以上の整数である。
【0070】
図A07に示される例では、第1~第Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第1~第Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(図A07(a))。次に、第(N+1)~第2Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第(N+1)~第2Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(図A07(b))。次に、第(2N+1)~第3Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第(2N+1)~第3Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる。以降も同様である。
【0071】
図A08に示される例では、第1~第Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第1~第Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(図A08(a))。次に、第(N+1)の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、この第(N+1)の干渉強度画像を含む直近のN枚の干渉強度画像(第2~第(N+1)の干渉強度画像)に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(図A08(b))。次に、第(N+2)の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、この第(N+2)の干渉強度画像を含む直近のN枚の干渉強度画像(第3~第(N+2)の干渉強度画像)に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(図A08(c))。以降も同様にして、第(N+n)の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、この第(N+n)の干渉強度画像を含む直近のN枚の干渉強度画像(第(1+n)~第(N+n)の干渉強度画像)に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる。
【0072】
図A07に示された例と比較すると、図A08に示された例では、1つの光照射方向の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得される度に、その干渉強度画像を含む直近の複数の干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われるので、ステップS2~S6の各処理により単位時間当たりに得られる各画像の数が多い。
【0073】
次に、屈折率分布測定方法Aにおける2次元位相画像生成ステップS4の詳細について説明する。2次元位相画像生成ステップS4において、2次元位相画像生成部54は、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成部53により生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する。2次元位相画像生成ステップS4は、屈折率分布測定方法A1~A3の何れであるかによって異なる。
【0074】
図A09は、屈折率分布測定方法A1における2次元位相画像生成ステップS4のフローチャートである。屈折率分布測定方法A1における2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS11において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、ステップS12において、この複素振幅総和画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0075】
ステップS11の処理は、CASS(Collective Accumulation of Single Scattering)(Sungsam Kang, et al, “Imaging deep within a scattering medium using collective accumulation of single-scattered waves,” NATURE PHOTONICS, Vol.9, pp.253-258 (2015).)技術によるものである。或る光照射方向に沿って対象物に照射されて該対象物を経た光のうち、対象物と一回のみ相互作用した単一散乱光の空間周波数分布は光照射方向に応じてシフトしているのに対して、対象物と複数回相互作用した多重散乱光の空間周波数分布は光照射方向によってランダムに変化する。CASS技術は、このような単一散乱光及び多重散乱光それぞれの空間周波数分布の光照射方向依存性の相違を利用する。
【0076】
すなわち、ステップS11では、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正する(つまり、空間周波数領域において複素振幅画像の空間周波数分布を光照射方向に応じて平行移動する)ことにより、複素振幅画像のうちの単一散乱光成分の空間周波数分布を光照射方向に依存しない形状及び配置とし、その一方で、複素振幅画像のうちの多重散乱光成分の空間周波数分布をランダムな形状及び配置とする。そして、ステップS11では、これら補正後の複数の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成する(つまり、合成開口処理をする)ことにより、複素振幅画像のうちの単一散乱光成分をコヒーレントに足し合わせ、その一方で、複素振幅画像のうちの多重散乱光成分を互いに相殺させる。
【0077】
したがって、ステップS11で生成される複素振幅総和画像は、多重散乱光の影響が低減されたものとなる。そして、最終的に屈折率分布算出ステップS6で得られる3次元屈折率分布も、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制され、単一散乱-多重散乱比(Single-scattering to Multi-scattering Ratio、SMR)が改善されたものとなる。
【0078】
図A10は、屈折率分布測定方法A2における2次元位相画像生成ステップS4のフローチャートである。屈折率分布測定方法A2における2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS21において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS22において、複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS23において、位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0079】
z=dの位置の複素振幅画像をu(x,y,d)とすると、ステップS21で生成される複素微分干渉画像q(x,y,d)は下記(5)式で表される。δx及びδyのうち少なくとも一方は非0である。δx≠0,δy=0であれば、x方向をシアー方向とする複素微分干渉画像qが得られる。δx=0,δy≠0であれば、y方向をシアー方向とする複素微分干渉画像qが得られる。δx≠0,δy≠0であれば、x方向及びy方向の何れとも異なる方向をシアー方向とする複素微分干渉画像qが得られる。なお、複素微分干渉画像q(x,y,d)は、複素振幅画像u(x,y,d)を下記(6)式のように変換した後に(5)式で求めてもよい。
【0080】
【数5】
【0081】
【数6】

複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像qの総和をqsum(x,y,d)とすると、ステップS22で生成される位相微分画像φ(x,y,z)は、qsum(x,y,d)の位相として下記(7)式で表される。ステップS23では、この位相微分画像φ(x,y,z)を積分又はデコンボリューションすることにより、2次元位相画像を生成することができる。
【0082】
【数7】

なお、ステップS21において、複素振幅画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複素微分干渉画像を生成してもよい。この場合、2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS21において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS22において、複数のシアー方向それぞれについて、複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS23において、複数のシアー方向それぞれの位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0083】
ステップS22で複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて生成される位相微分画像は、多重散乱光の影響が低減されたものとなる。そして、最終的に屈折率分布算出ステップS6で得られる3次元屈折率分布も、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制されたものとなる。また、ステップS21において複素振幅画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複素微分干渉画像を生成する場合には、ステップS23で得られる2次元位相画像にライン状のノイズが現れるのを抑制することができる。
【0084】
ここでは、ステップS23において位相微分画像を積分又はデコンボリューションすることにより2次元位相画像を生成する場合を説明した。しかし、位相微分画像を2次元位相画像として扱うこともできる。この場合、ステップS23を行うことなく、屈折率分布算出ステップS67のデコンボリューションにおいて、ステップS23のデコンボリューションで用いたカーネルを含むカーネル(図A11)を用いることにより、ステップS22で生成された位相微分画像(2次元位相画像)から観察対象物の3次元屈折率分布を求めることができる。図A11に示されるカーネルは、図A06に示したカーネルとステップS23のデコンボリューションで用いるカーネルとを畳み込み積分することにより得られる。
【0085】
図A12は、屈折率分布測定方法A3における2次元位相画像生成ステップS4のフローチャートである。屈折率分布測定方法A3における2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS31において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分し、複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、ステップS32において、複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS33において、複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS34において、位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0086】
屈折率分布測定方法A3のステップS31の処理は、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分した上で、複数のバッチそれぞれについて屈折率分布測定方法A1のステップS11の処理を行うことに相当する。屈折率分布測定方法A3のステップS32,S33の処理は、複数のバッチそれぞれについて屈折率分布測定方法A2のステップS21,S22の処理を行うことに相当する。屈折率分布測定方法A3のステップS34の処理は、屈折率分布測定方法A2のステップS23の処理を行うことに相当する。
【0087】
なお、ステップS32において、複素振幅画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複素微分干渉画像を生成してもよい。この場合、2次元位相画像生成ステップS4は、ステップS32において、複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS33において、複数のシアー方向それぞれについて、複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS34において、複数のシアー方向それぞれの位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0088】
屈折率分布測定方法A3におけるスペックルの抑制は、屈折率分布測定方法A1及び屈折率分布測定方法A2と同程度である。屈折率分布測定方法A3におけるSMRの改善は、屈折率分布測定方法A1と屈折率分布測定方法A2との中間の程度である。
【0089】
ここでも、ステップS34において位相微分画像を積分又はデコンボリューションすることにより2次元位相画像を生成する場合を説明した。しかし、位相微分画像を2次元位相画像として扱うこともできる。この場合、ステップS34を行うことなく、屈折率分布算出ステップS6のデコンボリューションにおいて、ステップS34のデコンボリューションで用いたカーネルを含むカーネルを用いることにより、ステップS33で生成された位相微分画像(2次元位相画像)から観察対象物の3次元屈折率分布を求めることができる。
【0090】
次に、屈折率分布測定方法Bについて説明する。図B01図B03は、屈折率分布測定方法Bによる屈折率分布を測定する際に用いることができる観察装置1D~1Fの各構成を示す図である。図B01に示される観察装置1Dは、図A01に示された観察装置1Aの構成と比較すると、光源11から撮像部43に到るまでの光学系については共通であるが、解析部50に替えて解析部60を備える点で相違する。図B02に示される観察装置1Eは、図A02に示された観察装置1Bの構成と比較すると、光源11から撮像部43に到るまでの光学系については共通であるが、解析部50に替えて解析部60を備える点で相違する。図B03に示される観察装置1Fは、図A03に示された観察装置1Cの構成と比較すると、光源11から撮像部43に到るまでの光学系については共通であるが、解析部50に替えて解析部60を備える点で相違する。
【0091】
解析部60は、撮像部43と電気的に接続されており、撮像部43により撮像された干渉強度画像を入力する。解析部60は、その入力した干渉強度画像を処理することにより、観察対象物Sの3次元屈折率分布を算出する。解析部60は、コンピュータであってよい。解析部60は、干渉強度画像取得部61、第1複素振幅画像生成部62、第2複素振幅画像生成部63、位相共役演算部64、2次元位相画像生成部65、3次元位相画像生成部66、屈折率分布算出部67、表示部68及び記憶部69を備える。
【0092】
干渉強度画像取得部61は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。また、干渉強度画像取得部61は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。干渉強度画像取得部61は、CPUを含み、ミラー22の反射面の方位を変化させる為の制御信号を出力する出力ポートを有し、また、撮像部43から干渉強度画像を入力する入力ポートを有する。対物レンズ25を光軸方向に移動させる必要はない。基準位置は、撮像部43の撮像面に対して共役関係にある像面位置である。
【0093】
第1複素振幅画像生成部62、第2複素振幅画像生成部63、位相共役演算部64、2次元位相画像生成部65、3次元位相画像生成部66及び屈折率分布算出部67は、干渉強度画像に基づいて処理を行うものであり、CPU、GPU、DSP又はFPGA等の処理装置を含む。表示部68は、処理すべき画像、処理途中の画像及び処理後の画像などを表示するものであり、例えば液晶ディスプレイを含む。記憶部69は、各種の画像のデータを記憶するものであり、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、RAM及びROM等を含む。第1複素振幅画像生成部62、第2複素振幅画像生成部63、位相共役演算部64、2次元位相画像生成部65、3次元位相画像生成部66、屈折率分布算出部67及び記憶部69は、クラウドコンピューティングによって構成されてもよい。
【0094】
記憶部69は、干渉強度画像取得部61、第1複素振幅画像生成部62、第2複素振幅画像生成部63、位相共役演算部64、2次元位相画像生成部65、3次元位相画像生成部66及び屈折率分布算出部67に各処理を実行させるためのプログラムをも記憶する。このプログラムは、観察装置1D~1Fの製造時又は出荷時に記憶部69に記憶されていてもよいし、出荷後に通信回線を経由して取得されたものが記憶部69に記憶されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体2に記録されていたものが記憶部69に記憶されてもよい。記録媒体2は、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROM、USBメモリなど任意である。
【0095】
干渉強度画像取得部61、第1複素振幅画像生成部62、第2複素振幅画像生成部63、位相共役演算部64、2次元位相画像生成部65、3次元位相画像生成部66及び屈折率分布算出部67それぞれの処理の詳細については後述する。
【0096】
図B04は、屈折率分布測定方法Bのフローチャートである。この屈折率分布測定方法Bは、観察装置1D~1Fの何れを用いた場合においても可能なものである。この屈折率分布測定方法Bは、干渉強度画像取得ステップS61、第1複素振幅画像生成ステップS62、第2複素振幅画像生成ステップS63、位相共役演算ステップS64、2次元位相画像生成ステップS65、3次元位相画像生成ステップS66及び屈折率分布算出ステップS67を備える。
【0097】
干渉強度画像取得ステップS61の処理は干渉強度画像取得部61により行われる。第1複素振幅画像生成ステップS62の処理は第1複素振幅画像生成部62により行われる。第2複素振幅画像生成ステップS63の処理は第2複素振幅画像生成部63により行われる。位相共役演算ステップS64の処理は位相共役演算部64により行われる。2次元位相画像生成ステップS65の処理は2次元位相画像生成部65により行われる。3次元位相画像生成ステップS66の処理は3次元位相画像生成部66により行われる。屈折率分布算出ステップS67の処理は屈折率分布算出部67により行われる。
【0098】
干渉強度画像取得ステップS61において、干渉強度画像取得部61は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。そして、干渉強度画像取得部61は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。
【0099】
第1複素振幅画像生成ステップS62において、第1複素振幅画像生成部62は、複数の光照射方向それぞれについて、干渉強度画像取得部61により取得された基準位置の干渉強度画像に基づいて、基準位置の複素振幅画像を生成する。観察装置1D(図B01)及び観察装置1F(図B03)の場合には、第1複素振幅画像生成部62は、フーリエ縞解析法により、1枚の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。観察装置1E(図B02)の場合には、第1複素振幅画像生成部62は、位相シフト法により、物体光と参照光との間の光路長差(位相差)が互いに異なる3枚以上の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。
【0100】
第2複素振幅画像生成ステップS63において、第2複素振幅画像生成部63は、複数の光照射方向それぞれについて、第1複素振幅画像生成部62により生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置それぞれの複素振幅画像を生成する。
【0101】
屈折率分布測定方法Bにおける干渉強度画像取得ステップS61、第1複素振幅画像生成ステップS62及び第2複素振幅画像生成ステップS63は、それぞれ、屈折率分布測定方法Aにおける干渉強度画像取得ステップS1、第1複素振幅画像生成ステップS2及び第2複素振幅画像生成ステップS3と同様の処理を行う。
【0102】
位相共役演算ステップS64は、第2複素振幅画像生成ステップS63の処理の後に行われる。位相共役演算ステップS64は、第2複素振幅画像生成ステップS63の処理の前に行われてもよい(後述)。また、第2複素振幅画像生成ステップS63が基準位置の複素振幅画像から複数段階を経て或るz位置の複素振幅画像を生成する場合には、その複数段階のうちの或る段階と次の段階との間において位相共役演算ステップS64が行われてもよい(後述)。位相共役演算ステップS64において、位相共役演算部64は、複数の照射方向それぞれの複素振幅画像に対して位相共役演算を行って、観察対象物に対する光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複数の照射方向それぞれの複素振幅画像を生成する。
【0103】
なお、位相共役演算は、位相共役法(phase conjugate method)に基づく複素振幅画像に対する演算であり、対象物における光照射と光出力との関係を表すトランスミッション行列を計算し、その逆行列計算と座標変換と含む演算である。位相共役法は、位相共役(phase conjugation)、時間反転法(time reversal method)、時間反転(time reversal)、デジタル位相共役(digital phase conjugation)、デジタル位相共役法(digital phase conjugate method)等と呼ばれる場合もある。詳細については後述する。
【0104】
2次元位相画像生成ステップS65において、2次元位相画像生成部65は、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成部63又は位相共役演算部64により生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する。ここで生成される2次元位相画像は、フォーカスを合わせたz方向位置を中心とする位相画像に相当する。
【0105】
2次元位相画像生成ステップS65において、位相共役演算ステップS64の処理を行う前の複素振幅画像に基づいて生成される位相画像を第1位相画像とし、位相共役演算ステップS64の処理を行って求められた複素振幅画像に基づいて生成される位相画像を第2位相画像としたとき、複数の位置のうち、撮像部に対し相対的に近い位置については主として第1位相画像に基づいて2次元位相画像を生成し、撮像部に対し相対的に遠い位置については主として第2位相画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0106】
なお、第2複素振幅画像生成ステップS63において複数の光照射方向それぞれについて複数の位置それぞれの複素振幅画像を全て生成した後に、位相共役演算ステップS64以降の処理を行ってもよい。また、第2複素振幅画像生成ステップS63において複数の光照射方向それぞれについて或る1つのz方向位置の複素振幅画像を生成し、該位置の2次元位相画像を2次元位相画像生成ステップS65において生成する処理を単位として、z方向位置を走査しながら当該単位処理を繰り返し行ってもよい。後者の場合には、記憶部69が記憶しておくべき画像データの容量を小さくすることができる。
【0107】
3次元位相画像生成ステップS66において、3次元位相画像生成部66は、2次元位相画像生成部65により生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する。ここで生成される3次元位相画像は、2次元位相画像中での位置x,y及び該2次元位相画像の位置zを変数とする画像である。
【0108】
屈折率分布算出ステップS67において、屈折率分布算出部67は、3次元位相画像生成部66により生成された3次元位相画像に基づいて、デコンボリューションにより観察対象物の3次元屈折率分布を求める。
【0109】
屈折率分布測定方法Bにおける2次元位相画像生成ステップS65、3次元位相画像生成ステップS66及び屈折率分布算出ステップS67は、それぞれ、屈折率分布測定方法Aにおける2次元位相画像生成ステップS4、3次元位相画像生成ステップS5及び屈折率分布算出ステップS6と同様の処理を行う。
【0110】
図B05は、第2複素振幅画像生成ステップS63及び2次元位相画像生成ステップS65の各処理の順序及び画像を説明する図である。この図は、位相共役演算ステップS64の処理を行わない態様を示す。この態様では、第2複素振幅画像生成ステップS63において、複数の光照射方向それぞれについて、上記(1)式及び(2)式の自由伝搬の式により、第1複素振幅画像生成ステップS62で生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置(この図ではz=z,z,z)それぞれの複素振幅画像が生成される。そして、2次元位相画像生成ステップS65において、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成ステップS63で生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて、複素微分干渉画像が生成され、さらに位相微分画像が生成される。
【0111】
図B06図B08は、第2複素振幅画像生成ステップS63、位相共役演算ステップS64及び2次元位相画像生成ステップS65の各処理の順序及び画像を説明する図である。これらの図は、第2複素振幅画像生成ステップS63の処理の前、途中又は後で位相共役演算ステップS64の処理を行う態様を示す。
【0112】
図B06に示される第1態様は、図B04のフローチャートに対応するものである。この第1態様では、位相共役演算ステップS64は、第2複素振幅画像生成ステップS63の処理の後に行われる。第2複素振幅画像生成ステップS63において、複数の光照射方向それぞれについて、上記(1)式及び(2)式の自由伝搬の式により、第1複素振幅画像生成ステップS62で生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置(この図ではz=z,z,z)それぞれの複素振幅画像が生成される。
【0113】
第1態様では、続いて、位相共役演算ステップS64において、複数の位置それぞれについて、複数の照射方向それぞれの複素振幅画像に対して位相共役演算が行われて、観察対象物に対する光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複数の照射方向それぞれの複素振幅画像が生成される。そして、2次元位相画像生成ステップS65において、複数の位置それぞれについて、位相共役演算ステップS64で生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて、複素微分干渉画像が生成され、さらに位相微分画像が生成される。
【0114】
図B07に示される第2態様では、位相共役演算ステップS64は、第2複素振幅画像生成ステップS63の処理の前に行われる。位相共役演算ステップS64において、複数の光照射方向それぞれについて、第1複素振幅画像生成ステップS62で生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に対して位相共役演算が行われて、観察対象物に対する光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複数の照射方向それぞれの複素振幅画像が生成される。
【0115】
第2態様では、続いて、第2複素振幅画像生成ステップS63において、複数の光照射方向それぞれについて、上記(1)式及び(2)式の自由伝搬の式により、位相共役演算ステップS64で生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置(この図ではz=z,z,z)それぞれの複素振幅画像が生成される。そして、2次元位相画像生成ステップS65において、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成ステップS63で生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて、複素微分干渉画像が生成され、さらに位相微分画像が生成される。
【0116】
図B08に示される第3態様では、第2複素振幅画像生成ステップS63が基準位置の複素振幅画像から2つの段階を経て複数の位置それぞれの複素振幅画像を生成する場合に、その2つの段階のうちの第1段階と第2段階との間において位相共役演算ステップS64が行われる。
【0117】
第3態様では、第2複素振幅画像生成ステップS63の第1段階において、複数の光照射方向それぞれについて、上記(1)式及び(2)式の自由伝搬の式により、第1複素振幅画像生成ステップS62で生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置(この図ではz=z,z,z)それぞれの複素振幅画像が生成される。続いて、位相共役演算ステップS64において、複数の照射方向それぞれの複素振幅画像に対して位相共役演算が行われて、観察対象物に対する光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複数の照射方向それぞれの複素振幅画像が生成される。
【0118】
第3態様では、更に続いて、第2複素振幅画像生成ステップS63の第2段階において、複数の光照射方向それぞれについて、上記(1)式及び(2)式の自由伝搬の式により、位相共役演算ステップS64で生成されたz方向位置(z=z,z,z)の複素振幅画像に基づいて、z方向位置(z=z,z,z)それぞれの複素振幅画像が生成される。そして、2次元位相画像生成ステップS65において、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成ステップS63で生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて、複素微分干渉画像が生成され、さらに位相微分画像が生成される。
【0119】
これらの第1態様、第2態様及び第3態様の間では、位相共役演算ステップS64における複素振幅画像に対する位相共役演算の回数が異なる。位相共役演算ステップS64の全体の処理時間は、第1態様より第3態様の方が短く、第2態様では更に短い。
【0120】
図B09は、3次元位相画像生成ステップS66及び屈折率分布算出ステップS67の各処理の順序及び画像を説明する図である。3次元位相画像生成ステップS66において、2次元位相画像生成ステップS65で生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて3次元位相画像が生成される。このとき、撮像部に対し相対的に近い位置については、位相共役演算ステップS64の処理を行う前の複素振幅画像に基づいて生成された2次元位相画像(図B05の態様で生成された2次元位相画像)が主として採用される。一方、撮像部に対し相対的に遠い位置については、位相共役演算ステップS64の処理を行った後の複素振幅画像に基づいて生成された2次元位相画像(図B06図B08の何れかの態様で生成された2次元位相画像)が主として採用される。続いて、屈折率分布算出ステップS67において、3次元位相画像生成ステップS66で生成された3次元位相画像に基づいて、デコンボリューションにより観察対象物の3次元屈折率分布が求められる。なお、3次元屈折率分布を構成する各屈折率分布データ(例えば、図B09において、3次元屈折率分布を構成する2次元の屈折率分布データ)は、屈折率断層データとなりえる。
【0121】
z方向の各位置の2次元位相画像の生成は、次のような3つの態様がある。位相共役演算ステップS64の処理を行う前の複素振幅画像に基づいて生成される位相画像(図B05の態様で生成される位相画像)を第1位相画像φとする。位相共役演算ステップS64の処理を行った後の複素振幅画像に基づいて生成される位相画像(図B06図B08の何れかの態様で生成される位相画像)を第2位相画像φとする。光伝搬経路に沿った撮像部からの距離を表す変数zに対する微係数が0以下である重み関数αを用いる。重み関数の値は0以上1以下である。
【0122】
第1態様では、重み関数αは、zが閾値zth以下である範囲において正値(例えば1)であり、それ以外の範囲において値が0であるとする。すなわち、2次元位相画像は下記(8)式で表される。
【0123】
【数8】

第2態様では、重み関数αは、z方向の少なくとも一部範囲において連続的に値が変化するものとする。すなわち、2次元位相画像は下記(9)式で表される。
【0124】
【数9】

第3態様では、重み関数αは、光軸(z方向)に直交する面における位置(x,y)に応じた値を有するものとする。すなわち、2次元位相画像は下記(10)式で表される。
【0125】
【数10】
【0126】
次に、図B10及び図B11を用いて、位相共役演算ステップS64による位相共役演算の内容について説明する。
【0127】
図B10は、撮像部により干渉強度画像を撮像するときの入力光Uin(kin)及び出力光uout(rout)を示す図である。Uin(kin)は、観察対象物へ照射される光の波数kinの複素振幅を表す。uout(rout)は、観察対象物から出力される光の位置routの複素振幅を表す。Uin(kin)とuout(rout)との間の関係は、下記(11)式で表される。列ベクトルUinの第n要素Uin(kin )は、波数kin の平面波の複素振幅を表す。列ベクトルuoutの第n要素uout(rout )は、位置rout で観測される光の複素振幅を表す。N行N列の行列T(rout,kin)は、Uin(kin)とuout(rout)との間の線形な関係を表すものであって、トランスミッション行列と呼ばれる。このようなトランスミッション行列により、観察対象物における光の散乱過程を表すことができる。行列T(rout,kin)の第n1行第n2列の要素Tn1,n2は、波数kin n2で振幅1の平面波が入力されたときに位置rout n1で観測される光の複素振幅を表す。
【0128】
【数11】

図B11は、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の入力光Uout(kout)及び出力光uin(rin)を示す図である。この場合、Uout(kout)は、観察対象物へ照射される光の波数koutの複素振幅を表す。uin(rin)は、観察対象物から出力される光の位置rinの複素振幅を表す。Uout(kout)とuin(rin)との間の関係は、下記(12)式で表される。列ベクトルUoutの第n要素Uout(kout )は、波数kout の平面波の複素振幅を表す。列ベクトルuinの第n要素uin(rin )は、位置rin で観測される光の複素振幅を表す。N行N列の行列S(rin,kout)は、Uout(kout)とuin(rin)との間の線形な関係を表すものであって、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合のトランスミッション行列である。
【0129】
【数12】

in(kin)は、下記(13)式のようにuin(rin)のフーリエ変換で表される。Uout(kout)は、下記(14)式のようにuout(rout)のフーリエ変換で表される。(11)式~(14)式を用いると、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合のトランスミッション行列S(rin,kout)は、逆フーリエ変換を表す行列とトランスミッション行列T(rout,kin)を用いて下記(15)式で表される。
【0130】
【数13】
【0131】
【数14】
【0132】
【数15】
【0133】
位相共役演算ステップS64では、まず、複素振幅画像に基づいて、撮像部により干渉強度画像を撮像したときのトランスミッション行列T(rout,kin)を求める。次に、このトランスミッション行列T(rout,kin)及び上記(15)式に基づいて、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合のトランスミッション行列S(rin,kout)を求める。そして、このトランスミッション行列S(rin,kout)に基づいて、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複素振幅画像を求める。
【0134】
複数の光照射方向それぞれについて撮像部により干渉強度画像を撮像するときの第nの光照射方向の入力光のベクトルUin (kin)は、下記(16)式で表され、第n要素の値のみが1であって、他の要素の値が0である。この入力光Uin (kin)に対して、出力光uout (rout)は、下記(17)式で表される。この(17)式は、第nの光照射方向の際に得られた複素振幅に対応する。
【0135】
【数16】
【0136】
【数17】

この(16)式及び上記(11)式から、下記(18)式が得られる。そして、複数の光照射方向それぞれについて同様に求めると、下記(19)式が得られる。このようにして、トランスミッション行列T(rout,kin)を求めることができる。さらに、この(19)式及び上記(15)式から、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合のトランスミッション行列S(rin,kout)を求めることができる。
【0137】
【数18】
【0138】
【数19】

光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複数の光照射方向のうちの第nの光照射方向の入力光Uout (kout)は、下記(20)式で表され、第n要素の値のみが1であって、他の要素の値が0である。この式から、この入力光Uout (kout)に対する出力光uin (rin)は、下記(21)式で表される。この(21)式は、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複素振幅を表す。このようにして、光照射及び撮像の関係を逆転させた場合の複素振幅画像を求めることができる。
【0139】
【数20】
【0140】
【数21】
【0141】
光照射及び撮像の関係を逆転させた場合のトランスミッション行列S(rin,kout)を求める際に、上記(15)式に示されるとおり、トランスミッション行列T(rout,kin)の逆行列を計算する必要がある。したがって、トランスミッション行列Tは、行要素の数と列要素の数とが互いに等しい正方行列であることが必要である。すなわち、干渉強度画像取得ステップS61の際の観察対象物に対する光照射側波数空間における行列の次元(matrix dimension)と、複素振幅画像の画素数とは、互いに等しいことが必要である。
【0142】
両者を互いに等しくするには、干渉強度画像取得ステップS61の際の観察対象物に対する光照射側波数空間における行列の次元を画素数に一致させるか、撮像部により得られた画像のうち一部範囲の画像のみを爾後の処理に用いるかすればよい。しかし、一般には、撮像部により得られる画像の画素数は例えば1024×1024であることから、観察対象物に対する光照射側波数空間における行列の次元を画素数と同じにすることは容易ない。また、撮像部により得られた画像のうち一部範囲の画像のみを爾後の処理に用いることは、解像度の低下につながる。
【0143】
そこで、図B12に示されるように、位相共役演算ステップS64において、観察対象物に対する光照射側波数空間における行列の次元と同じ画素数を各々有する複数の部分画像に複素振幅画像を分割し、これら複数の部分画像それぞれに対して位相共役演算を行い、その後に複数の部分画像を結合するのがよい。このとき、複数の部分画像のうち何れか2以上の部分画像が共通の領域を有していてもよい。
【0144】
次に、屈折率分布測定方法Cについて説明する。図C01図C03は、屈折率分布測定方法Cによる屈折率分布を測定する際に用いることができる観察装置1G~1Iの各構成を示す図である。図C01に示される観察装置1Gは、図A01に示された観察装置1Aの構成と比較すると、光源11から撮像部43に到るまでの光学系については共通であるが、解析部50に替えて解析部70を備える点で相違する。図C02に示される観察装置1Hは、図A02に示された観察装置1Bの構成と比較すると、光源11から撮像部43に到るまでの光学系については共通であるが、解析部50に替えて解析部70を備える点で相違する。図C03に示される観察装置1Iは、図A03に示された観察装置1Cの構成と比較すると、光源11から撮像部43に到るまでの光学系については共通であるが、解析部50に替えて解析部70を備える点で相違する。
【0145】
解析部70は、撮像部43と電気的に接続されており、撮像部43により撮像された干渉強度画像を入力する。解析部70は、その入力した干渉強度画像を処理することにより、観察対象物Sの3次元屈折率分布を算出する。解析部70は、コンピュータであってよい。解析部70は、干渉強度画像取得部71、第1複素振幅画像生成部72、第2複素振幅画像生成部73、2次元位相画像生成部74、3次元位相画像生成部75、屈折率分布算出部76、第3複素振幅画像生成部77、表示部78及び記憶部79を備える。
【0146】
干渉強度画像取得部71は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。また、干渉強度画像取得部71は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。干渉強度画像取得部71は、CPUを含み、ミラー22の反射面の方位を変化させる為の制御信号を出力する出力ポートを有し、また、撮像部43から干渉強度画像を入力する入力ポートを有する。対物レンズ25を光軸方向に移動させる必要はない。基準位置は、撮像部43の撮像面に対して共役関係にある像面位置である。
【0147】
第1複素振幅画像生成部72、第2複素振幅画像生成部73、2次元位相画像生成部74、3次元位相画像生成部75、屈折率分布算出部76及び第3複素振幅画像生成部77は、干渉強度画像に基づいて処理を行うものであり、CPU、GPU、DSP又はFPGA等の処理装置を含む。表示部78は、処理すべき画像、処理途中の画像及び処理後の画像などを表示するものであり、例えば液晶ディスプレイを含む。記憶部79は、各種の画像のデータを記憶するものであり、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、RAM及びROM等を含む。第1複素振幅画像生成部72、第2複素振幅画像生成部73、2次元位相画像生成部74、3次元位相画像生成部75、屈折率分布算出部76、第3複素振幅画像生成部77及び記憶部79は、クラウドコンピューティングによって構成されてもよい。
【0148】
記憶部79は、干渉強度画像取得部71、第1複素振幅画像生成部72、第2複素振幅画像生成部73、2次元位相画像生成部74、3次元位相画像生成部75、屈折率分布算出部76及び第3複素振幅画像生成部77に各処理を実行させるためのプログラムをも記憶する。このプログラムは、観察装置1G~1Iの製造時又は出荷時に記憶部79に記憶されていてもよいし、出荷後に通信回線を経由して取得されたものが記憶部79に記憶されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体2に記録されていたものが記憶部79に記憶されてもよい。記録媒体2は、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROM、USBメモリなど任意である。
【0149】
干渉強度画像取得部71、第1複素振幅画像生成部72、第2複素振幅画像生成部73、2次元位相画像生成部74、3次元位相画像生成部75及び屈折率分布算出部76及び第3複素振幅画像生成部77それぞれの処理の詳細については後述する。
【0150】
図C04及び図C05は、屈折率分布測定方法Cのフローチャートである。図C05は、図C04のフローチャートの一部を示す。この屈折率分布測定方法Cは、観察装置1G~1Iの何れを用いた場合においても可能なものである。この屈折率分布測定方法Cは、干渉強度画像取得ステップS71、第1複素振幅画像生成ステップS72、第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75、屈折率分布算出ステップS76及び第3複素振幅画像生成ステップS77を備える。
【0151】
干渉強度画像取得ステップS71の処理は干渉強度画像取得部71により行われる。第1複素振幅画像生成ステップS72の処理は第1複素振幅画像生成部72により行われる。第2複素振幅画像生成ステップS73の処理は第2複素振幅画像生成部73により行われる。2次元位相画像生成ステップS74の処理は2次元位相画像生成部74により行われる。3次元位相画像生成ステップS75の処理は3次元位相画像生成部75により行われる。屈折率分布算出ステップS76の処理は屈折率分布算出部76により行われる。第3複素振幅画像生成ステップS77の処理は第3複素振幅画像生成部77により行われる。
【0152】
干渉強度画像取得ステップS71において、干渉強度画像取得部71は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。そして、干渉強度画像取得部71は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。
【0153】
第1複素振幅画像生成ステップS72において、第1複素振幅画像生成部72は、複数の光照射方向それぞれについて、干渉強度画像取得部71により取得された干渉強度画像に基づいて、複素振幅画像を生成する。観察装置1G(図C01)及び観察装置1I(図C03)の場合には、第1複素振幅画像生成部72は、フーリエ縞解析法により、1枚の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。観察装置1H(図C02)の場合には、第1複素振幅画像生成部72は、位相シフト法により、物体光と参照光との間の光路長差(位相差)が互いに異なる3枚以上の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。第1複素振幅画像生成ステップS72において生成される複素振幅画像は、干渉強度画像と同じ基準位置のものであってもよいし、基準位置の複素振幅画像に基づいて生成された他の位置のものであってもよい。
【0154】
第2複素振幅画像生成ステップS73において、第2複素振幅画像生成部73は、複数の光照射方向それぞれについて、光伝搬経路に沿った撮像部43からの距離に関し第1位置の複素振幅画像に基づいて、第1位置から第2位置までの間の複数のz方向位置それぞれの複素振幅画像を生成する。
【0155】
2次元位相画像生成ステップS74において、2次元位相画像生成部74は、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成部73により生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する。ここで生成される2次元位相画像は、フォーカスを合わせたz方向位置を中心とする位相画像に相当する。
【0156】
3次元位相画像生成ステップS75において、3次元位相画像生成部75は、2次元位相画像生成部74により生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて、第1位置から第2位置までの間の3次元位相画像を生成する。ここで生成される3次元位相画像は、2次元位相画像中での位置x,y及び該2次元位相画像の位置zを変数とする画像である。
【0157】
屈折率分布算出ステップS76において、屈折率分布算出部76は、3次元位相画像生成部75により生成された3次元位相画像に基づいて、デコンボリューションにより、第1位置から第2位置までの間の観察対象物の3次元屈折率分布を求める。
【0158】
屈折率分布測定方法Cにおける干渉強度画像取得ステップS71、第1複素振幅画像生成ステップS72、第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75及び屈折率分布算出ステップS76は、それぞれ、屈折率分布測定方法Aにおける干渉強度画像取得ステップS1、第1複素振幅画像生成ステップS2、第2複素振幅画像生成ステップS3、2次元位相画像生成ステップS4、3次元位相画像生成ステップS5及び屈折率分布算出ステップS6と略同様の処理を行う。
【0159】
第3複素振幅画像生成ステップS77において、第3複素振幅画像生成部77は、複数の光照射方向それぞれについて、第2複素振幅画像生成ステップS73で用いた第1位置の複素振幅画像、及び、屈折率分布算出ステップS76で算出した第1位置から第2位置までの間の観察対象物の3次元屈折率分布に基づいて、第2位置の複素振幅画像を生成する。
【0160】
第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75及び屈折率分布算出ステップS76を含むステップS83では、光伝搬経路に沿った撮像部43からの距離に関し第1位置の複素振幅画像に基づいて、第1位置から第2位置までの間の観察対象物の3次元屈折率分布を求める。ステップS83及び第3複素振幅画像生成ステップS77の各処理は繰り返し行われる。このことについて、図C04図C07を用いて説明する。
【0161】
図C06は、観察対象物を含む領域と第1~第Jのブロックとの関係を説明する図である。この図に示されるように、光伝搬経路(z方向)に沿った撮像部からの距離に基づいて観察対象物を含む領域を順に第1~第Jのブロックに区分する。この図では、J=3としている。第1~第Jのブロックのうちの第jブロックは、z=zj-1からz=zまでの領域である。各第jブロックにおいて、撮像部に対し最も近いz=zj-1の位置(近端)を第1位置とし、撮像部に対し最も遠いz=zの位置(遠端)を第2位置とする。
【0162】
図C07は、第1~第Jのブロックにおける処理の手順を説明する図である。この図に示されるように、各第jブロックについて、ステップS83で、第1位置の複素振幅画像に基づいて、第1位置から第2位置までの間の複数のz方向位置それぞれの複素振幅画像及び2次元位相画像を生成し、第1位置から第2位置までの間の3次元位相画像を生成し更に3次元屈折率分布を求める。各第jブロックについて、第3複素振幅画像生成ステップS77で、第1位置の複素振幅画像、及び、ステップS83で算出した3次元屈折率分布に基づいて、第2位置の複素振幅画像を生成する。
【0163】
第3複素振幅画像生成ステップS77で生成された第(j+1)ブロックの第2位置の複素振幅画像は、次の第jブロックの第1位置の複素振幅画像として用いられて、第jブロックについてステップS83及び第3複素振幅画像生成ステップS77の各処理が行われる。第1~第Jのブロックそれぞれについて3次元屈折率分布が得られたら、これらを結合することで観察対象物の全体の3次元屈折率分布が得られる。なお、第1~第Jのブロックそれぞれの3次元屈折率分布(例えば、図C07の第1ブロックの屈折率分布、第2ブロックの屈折率分布及び第3ブロックの屈折率分布)は、屈折率断層データとなりえる。
【0164】
図C04及び図C05に示されるように、第1複素振幅画像生成ステップS72の後のステップS81においてj=0とされ、続くステップS82においてjの値が1増されてj=1とされて、第1ブロックについてステップS83及び第3複素振幅画像生成ステップS77の各処理が行われる。すなわち、撮像部に対し最も近い第1ブロックについては、第1複素振幅画像生成ステップS72で生成した複素振幅画像に基づいて、撮像部に対し最も近いz=zの位置(近端)を第1位置とし、撮像部に対し最も遠いz=zの位置(遠端)を第2位置として、ステップS83(第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75、屈折率分布算出ステップS76)及び第3複素振幅画像生成ステップS77それぞれの処理が順に行われる。その後、ステップS82に戻る。
【0165】
第jブロック(ここでは、jは2以上J未満)については、第3複素振幅画像生成ステップS77で第(j-1)ブロックについて生成した複素振幅画像に基づいて、撮像部に対し最も近いz=zj-1の位置(近端)を第1位置とし、撮像部に対し最も遠いz=zの位置(遠端)を第2位置として、ステップS83(第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75、屈折率分布算出ステップS76)及び第3複素振幅画像生成ステップS77それぞれの処理が順に行われる。その後、ステップS82に戻る。
【0166】
撮像部に対し最も遠い最終段ブロックである第Jブロックについては、第3複素振幅画像生成ステップS77で第(J-1)ブロックについて生成した複素振幅画像に基づいて、撮像部に対し最も近いz=zJ-1の位置(近端)を第1位置とし、撮像部に対し最も遠いz=zの位置(遠端)を第2位置として、ステップS83(第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75、屈折率分布算出ステップS76)の処理が行われる。
【0167】
第Jブロックについては、ステップS83の後のステップS84において、最終段ブロックであると判断されて、第3複素振幅画像生成ステップS77に進むことなく終了すればよい。なお、第Jブロックについては、3次元位相画像生成ステップS75の後において、最終段ブロックであると判断されて、屈折率分布算出ステップS76に進むことなく終了してもよく、この場合には、観察対象物の全体の3次元位相画像が得られる。
【0168】
なお、光伝搬経路(z方向)に沿った撮像部からの距離に基づいて観察対象物を含む領域を順に2個のブロックに区分してもよく、その場合には、上述した第1ブロックについての処理及び最終段の第Jブロックについての処理を行えばよい。また、観察対象物を含む領域を複数のブロックに区分しなくてもよく、その場合には、ステップS83(第2複素振幅画像生成ステップS73、2次元位相画像生成ステップS74、3次元位相画像生成ステップS75、屈折率分布算出ステップS76)及び第3複素振幅画像生成ステップS77それぞれの処理を順に1回のみ行ってもよい。
【0169】
次に、第3複素振幅画像生成ステップS77の詳細について説明する。観察対象物に光を照射して干渉強度画像を取得する際に、各第jブロックにおいて、第2位置(z=z)の光波面は、第jブロックの内部を伝搬して第1位置(z=zj-1)に到達し更に撮像部まで伝搬する。そこで、第3複素振幅画像生成ステップS77において、第jブロックの屈折率分布を考慮した数値計算により、第1位置(z=zj-1)の光波面を第jブロックの内部を逆伝搬させることで、第2位置(z=z)の光波面を求める。すなわち、第3複素振幅画像生成ステップS77において、複数の光照射方向それぞれについて、第jブロックの第1位置(z=zj-1)の複素振幅画像及び第jブロックの屈折率分布に基づいて、第jブロックの第2位置(z=z)の複素振幅画像を生成する。この処理に際して、媒質の屈折率分布を考慮して光波面の伝搬を数値計算する手法が用いられる。このような不均一媒質伝搬の数値計算手法として、BPM(Beam Propagation Method)及びSSNP(Split-Step Non-Paraxial)等が知られている。以下では、第3複素振幅画像生成ステップS77においてBPMを用いた処理について説明する。
【0170】
図C08は、BPMの処理内容を説明する図である。この図は、任意の第jブロックを示している。この図に示されるように、光伝搬経路(z方向)に沿った撮像部からの距離に基づいて第jブロックをM個(この図では7個)のスライス(第1~第Mのスライス)に区分する。各スライスの厚みは波長程度である。
【0171】
各スライスの厚みは一定であってもよい。ここでは、各スライスの厚みを一定値のΔzとする。第jブロックの第1~第Mのスライスのうちの第mスライスは、位置(zj-1+(m-1)Δz)から位置(zj-1+mΔz)までである。第jブロックの第1位置(z=zj-1)から第2位置(z=z)へ向かって順に、第1~第Mのスライスにおいて順次に、屈折率分布に応じた位相変化を与えて光波面をΔzだけ逆伝搬させる。
【0172】
なお、第3複素振幅画像生成ステップS77の処理における各スライスの厚みΔzは、第2複素振幅画像生成ステップS73の処理で第1位置から第2位置までの間の複数のz方向位置それぞれの複素振幅画像を生成する際の位置間隔と、異なっていてもよいし、一致していてもよい。
【0173】
位置zにある厚みΔzのスライスを逆伝搬する際に光波面に与えられる位相変化o(x,y,z)は、下記(22)式で表される。この(22)式中のkは真空中での光の波数である。δn(x,y,z)は、位置zにおける観察対象物の屈折率分布n(x,y,z)と背景(媒質)の屈折率nとの差分であり、下記(23)式で表される。また、cosθは下記(24)式で表される。
【0174】
【数22】
【0175】
【数23】
【0176】
【数24】
【0177】
第mスライスの位置(z=zj-1+(m-1)Δz)における光の複素振幅をu(x,y,z)とすると、第mスライスの内部を光が逆伝搬した後の位置(z+Δz)における光の複素振幅u(x,y,z+Δz)は、下記(25)式で表される。この(25)式中のP(k,k;Δz)は、下記(26)式で表される。(25)式は、光の複素振幅u(x,y,z)と位相変化o(x,y,z)との積をフーリエ変換し、このフーリエ変換の結果とP(k,k;Δz)との積を逆フーリエ変換することで、厚みΔzのスライスを伝搬した後の位置(z+Δz)における光の複素振幅u(x,y,z+Δz)を求めることを表している。PΔzは、Δzの光伝搬の演算を行う関数である。
【0178】
【数25】
【0179】
【数26】
【0180】
第jブロックの各スライスにおける光波面の伝搬は、下記(27)式~(29)式で表される。すなわち、第jブロックの第1位置(z=zj-1)における光の複素振幅をu(x,y,zj-1)とすると、第jブロックの第1スライスを伝搬した後の光の複素振幅u(x,y,zj-1+Δz)は、下記(27)式で表される。第jブロックの第(m-1)スライスを伝搬した後の光の複素振幅をu(x,y,zj-1+(m-1)Δz)とすると、第jブロックの第mスライスを伝搬した後の光の複素振幅u(x,y,zj-1+mΔz)は、下記(28)式で表される。第jブロックの第(M-1)スライスを伝搬した後の光の複素振幅をu(x,y,zj-1+(M-1)Δz)とすると、第jブロックの第Mスライスを伝搬した後の第2位置(z=z)における光の複素振幅u(x,y,z)は、下記(29)式で表される。
【0181】
【数27】
【0182】
【数28】
【0183】
【数29】

このようにして、第3複素振幅画像生成ステップS77において、第jブロックの屈折率分布を考慮した数値計算により、第1位置(z=zj-1)の光波面を第jブロックの内部をスライス毎に順次に逆伝搬させることで、第2位置(z=z)の光波面を求めることができる。
【0184】
図C09は、第3複素振幅画像生成ステップS77のフローチャートである。ステップS41において、位置zを、第jブロックの第1位置(z=zj-1)に初期化する。ステップS42において、位置zにおける光の複素振幅u(x,y,z)と位相変化o(x,y,z)との相互作用を求める。ステップS43において、その相互作用後の光の波面を距離Δzだけ伝搬させて、位置z+Δzにおける光の複素振幅u(x,y,z+Δz)を求める。ステップS44において、Δzを加算したzを新たなzとする。ステップS44において、位置zが第jブロックの第2位置(z=z)に未だ到達していないと判断されれば、ステップS42に戻って、ステップS42~S44を繰り返す。ステップS44において、位置zが第jブロックの第2位置(z=z)に到達したと判断されれば、第3複素振幅画像生成ステップS77の処理を終了する。終了時に取得された光の複素振幅が第jブロックの第2位置(z=z)における複素振幅となる。
【0185】
以上に説明した屈折率分布測定方法A~Cの何れも、観察対象物が多重散乱体である場合であっても、多重散乱光の影響が低減された3次元屈折率トモグラフィを実現することができる。屈折率分布測定方法A~Cの何れも、観察対象物としての3次元培養体の屈折率分布を測定するのによい。
【0186】
なお、自己干渉を用いる観察装置及び屈折率分布測定方法でもよい。例えば、図C10に示される観察装置1Jは、光源11、レンズ12、レンズ21、ミラー22、レンズ23、コンデンサレンズ24、対物レンズ25、ミラー44、レンズ42、撮像部43及び解析部70などを備える。これまでに説明した観察装置の構成と比較すると、観察装置1Jでは、光源11から出力された光は、光ファイバ14により導光された後、2分岐されることなく光出射端18から出射される点で相違する。また、観察装置1Jは、ビームスプリッタ41に替えてミラー44が設けられている点で相違する。観察装置1Jは、干渉光学系を備えていない。撮像部43は、複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物Sに照射されて観察対象物Sを経た光の自己干渉による基準位置の干渉強度画像を撮像することができる。解析部70は、このような自己干渉による干渉強度画像を用いて、これまでに説明したと同様の画像処理を行うことができる。
【0187】
また、第1位置から第2位置までの間の観察対象物Sの3次元屈折率分布は、3次元位相画像に基づく屈折率分布でなくてもよく、屈折率分布を取得できる屈折率分布取得装置を別途用いて取得してもよい。この場合、観察装置は、(1) 複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて観察対象物を経た光の基準位置の干渉強度画像を撮像した撮像部から、複数の光照射方向それぞれの基準位置の干渉強度画像を取得する干渉強度画像取得部と、(2) 複数の光照射方向それぞれについて、干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成部と、(3) 光伝搬経路に沿った撮像部からの距離に関し第1位置から第2位置までの間の、観察対象物の3次元屈折率分布を取得する屈折率分布取得部と、(4) 複数の光照射方向それぞれについて、第1位置の複素振幅画像及び3次元屈折率分布に基づいて第2位置の複素振幅画像を生成する第2複素振幅画像生成部(観察装置1A~1Dの第3複素振幅画像生成部に相当)と、を備えればよい。
【0188】
また、この場合、屈折率分布測定方法は、(1) 複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて観察対象物を経た光の基準位置の干渉強度画像を撮像した撮像部から、複数の光照射方向それぞれの基準位置の干渉強度画像を取得する干渉強度画像取得ステップと、(2) 複数の光照射方向それぞれについて、干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成ステップと、(3) 光伝搬経路に沿った撮像部からの距離に関し第1位置から第2位置までの間の、観察対象物の3次元屈折率分布を取得する屈折率分布取得ステップと、(4) 複数の光照射方向それぞれについて、第1位置の複素振幅画像及び3次元屈折率分布に基づいて第2位置の複素振幅画像を生成する第2複素振幅画像生成ステップと、を備えればよい。
【0189】
本開示の一側面は、観察対象物の屈折率分布データを用いて、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法である。
【0190】
本開示の一実施形態において、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定は、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量に基づいて行われる。空間変化量とは、ピクセル又はボクセル毎に定められる、空間に対する屈折率の変化の度合いに関するパラメータであり、例えば微分法、差分法(一次元の微分法)又はブロブ検出法等により得ることができる。
【0191】
屈折率の空間変化量を微分法で算出する場合、例えば、ガウシアン関数の4階微分をカーネルとする畳み込みを屈折率分布画像に対して行い、その畳み込み後の画像に対し絶対値を取った後に、ピクセルまたはボクセルごとに閾値処理を行い、空間に対する屈折率の変化度合いが大きい部分を抽出する。
【0192】
屈折率の空間変化量を差分法で算出する場合、各方向隣接するピクセル又はボクセルの画素値の差分を取り、その差分に関して、各方向成分の2乗和を取った後に、ピクセルまたはボクセルごとに閾値処理を行い、空間に対する屈折率の変化度合いが大きい部分を抽出する。
【0193】
屈折率の空間変化量をブロブ検出法で算出する場合、ブロブ検出でよく用いられるガウシアン差分(Difference of Gaussians)処理を行い、その処理後の画像の絶対値に対してピクセル又はボクセルごとに閾値処理を行い、空間に対する屈折率の変化度合いが大きい部分を抽出する。
【0194】
本開示の一実施形態において、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定は、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量と閾値の大小関係に基づいて行われる。すなわち、屈折率の空間変化量が閾値より大きい領域が、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域であると決定される。本実施形態によるプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定方法を「閾値法」と呼ぶ。閾値法を用いたプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定の典型的なフローを、図35に示す。閾値法は未処理の屈折率分布データについて行ってもよく、屈折率の空間変化量を強調する画像処理を行った処理済みデータについて行ってもよい。
【0195】
上記閾値は、観察対象物の種類及び状態並びに観察対象物に含まれる細胞の種類及び含有量などに応じて定めることができ、例えば既知の情報を用いてもよく、細胞の形態からプログラムされた細胞死を起こした細胞と判断することができる細胞の領域がプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域と決定されるように定めてもよく、クラスタリング等の教師無し機械学習によって算出してもよい。また、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定を行う観察対象物(サンプル)とは別の観察対象物(リファレンス)の屈折率分布データにおいて、プログラムされた細胞死を起こした細胞と判断することができる細胞の領域がプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域と決定されるように定めることもできる。この場合において、サンプルが細胞塊であるときは、リファレンスはサンプルを形成する細胞と同じ細胞種の細胞の培養体であることが好ましく、同じ細胞種の細胞からなる細胞塊であることがよい。また、リファレンスはプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を明確に決定できる観察対象物であることがよく、好適な例として、少なくともプログラムされた細胞死を起こした細胞が蛍光標識された観察対象物を挙げることができ、一例として、少なくともプログラムされた細胞死を起こした細胞及び生細胞が蛍光標識された観察対象物を挙げることができる。
【0196】
プログラムされた細胞死を起こした細胞を蛍光標識する方法は特に限定されず、プログラムされた細胞死がアポトーシスの場合、例えば、TUNELアッセイキット、発蛍光性カスパーゼ3基質又は蛍光標識アネキシンV(蛍光標識アネキシンA5)等を用いることができ、プログラムされた細胞死がネクロプトーシスの場合、例えばSMART(Shin Murai et.al.NATURE COMMUNICATIONS 9,4457(2018))等を用いることができ、プログラムされた細胞死がフェロトーシスの場合、例えばRhoNox-1(T.Hirayama et.al.Chemical Science 4,1250-1256(2013))等の遊離型鉄(II)イオン検出プローブ等を用いることができ、プログラムされた細胞死がパイロトーシスの場合、例えば発蛍光性カスパーゼ1基質等を用いることができる。
【0197】
生細胞を蛍光標識する方法は特に限定されず、例えばカルセイン-AM等を用いることができる。
【0198】
本開示の一実施形態に係る閾値法を用いたプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法は、さらに生細胞領域であると決定された領域の細胞ごとの区分化を行うステップと、生細胞単位での屈折率の空間変化量を計算するステップと、計算結果に基づいて生細胞領域及びプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を補正するステップと、を含んでもよく、これらのステップは複数回反復されてもよい。これらのステップを含む場合の典型的な決定のフローを、図36に示す。生細胞領域の細胞ごとの区分化は、例えば、Watershedアルゴリズム又はGraph cutsアルゴリズム等のルールベース画像解析方法、又は蛍光染色等で得られる生細胞画像を教師データとした機械学習によって行うことができる。生細胞単位での屈折率の空間変化量の計算は、例えば微分法、差分法(一次元の微分法)又はブロブ検出法等により行うことができる。生細胞領域及びプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の補正は、例えば、ランダムフォレスト等の決定木アルゴリズムや、クラスタリング等の教師無し機械学習法あるいはベイズ推定によって行うことができる。
【0199】
本開示の一実施形態において、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定は、参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データと、上記プログラムされた細胞死領域データに対応する参照観察対象物の屈折率分布データとを含む教師データを用いて学習した学習モデルに、観察対象物の屈折率分布データを入力することによって行われ、上記学習モデルが利用する特徴量は、屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量を含む。参照観察対象物とは、観察対象物と同様の方法により調製又は取得された、細胞を主成分として構成される物体である。本実施形態によるプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定方法を「機械学習法」と呼ぶ。
【0200】
機械学習法によるプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定方法は、少なくとも学習ステップと推論ステップを含む。
【0201】
学習ステップにおいては、参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データと、上記プログラムされた細胞死領域データに対応する参照観察対象物の屈折率分布データとを含む教師データを用いて、機械学習によって特徴量から生細胞領域及びプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を推論するようにモデルを学習させる。参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データとは、参照観察対象物を含む空間中の、プログラムされた細胞死を起こした細胞が占めるボクセル又はピクセルの空間分布を示すデータである。プログラムされた細胞死領域データは、参照観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を明らかにすることができる任意の参照観察対象物のデータから作成することができるが、一実施形態において、上記参照観察対象物のデータは、参照観察対象物の蛍光データ、すなわち参照観察対象物を含む空間中のボクセル又はピクセルの蛍光強度の空間分布を示すデータである。
【0202】
プログラムされた細胞死領域データが参照観察対象物の蛍光データから作成される場合の学習ステップにおけるモデルの典型的な学習フローを図37に示す。学習ステップの第1段階においては、少なくともプログラムされた細胞死を起こした細胞が蛍光標識された参照観察対象物の屈折率分布データ及び蛍光データを取得する。参照観察対象物は更に、生細胞が蛍光染色されていてもよい。プログラムされた細胞死を起こした細胞及び生細胞の蛍光標識は、例えば閾値法で挙げた方法と同様の方法により行うことができる。
【0203】
学習ステップの第2段階においては、屈折率分布データから、特徴量を抽出する。上記特徴量は、屈折率の空間分布に関連する特徴量であって、ベクトルであってもスカラーであってもよいが、少なくとも屈折率分布データに含まれるピクセル又はボクセルにおける屈折率の空間変化量を含む。
【0204】
学習ステップの第3段階においては、蛍光データから、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を抽出し、プログラムされた細胞死領域データを作成する。プログラムされた細胞死領域データの作成においては、例えば、プログラムされた細胞死を起こした細胞を標識した色素の励起波長及び蛍光波長に対応する蛍光データに基づいて、蛍光標識された細胞の領域がプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域であると決定することができる。さらに生細胞領域を決定する場合には、例えば、生細胞を標識した色素の励起波長及び蛍光波長に対応する蛍光データに基づいて、蛍光標識された細胞の領域が生細胞領域であると決定することができる。また、例えば、全ての細胞を標識した色素の励起波長及び蛍光波長に対応する蛍光データに基づいて、蛍光標識された細胞の領域のうち、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域であると決定された領域以外の領域を生細胞領域であると決定することもできる。
【0205】
学習ステップの第4段階においては、参照観察対象物のプログラムされた細胞死領域データと、上記プログラムされた細胞死領域データに対応する参照観察対象物の屈折率分布データとを含む教師データを用いて、機械学習によって、第2段階において抽出した特徴量を入力として第3段階において決定したプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域及び生細胞領域が推論されるように、モデルを学習させる。蛍光データと屈折率分布データの同視野撮影等の検証を経たプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域及び生細胞領域のデータを教師データとすることで、判定精度の向上が期待できる。
【0206】
推論ステップの典型的な推論フローを図38に示す。推論ステップの第1段階においては、観察対象物の屈折率分布データを取得する。続く第2段階においては、屈折率分布データから、学習ステップの第2段階において抽出したのと同じ特徴量を抽出する。続く第3段階においては、学習ステップで学習させたモデルを用いて、観察対象物のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域及び生細胞領域を推論する。
【0207】
本開示の他の一側面は、観察対象物の屈折率分布データを取得する工程と、観察対象物の屈折率分布データを用いて、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する工程と、を備える、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定する方法である。屈折率分布データを取得する方法は、特に限定されず、また、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定は、閾値法によってもよく、機械学習法によってもよい。
【0208】
本開示の一側面は、細胞塊に薬物を添加するステップと、細胞塊の屈折率分布データを取得するステップと、細胞塊の屈折率分布データを用いて、細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定するステップと、を含む、薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析する方法である。薬物を添加する方法及び屈折率分布データを取得する方法は、特に限定されず、また、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定は、閾値法によってもよく、機械学習法によってもよい。薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響の解析は、例えば図39に示したように、同一のタイムポイントにおける濃度依存的なプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の大きさを指標にしてもよく、図40に示したように、細胞塊を一定濃度の薬物存在下で培養した場合の時間依存的なプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の拡大を指標にしてもよい。
【0209】
本開示の一実施形態は、正常細胞塊に薬物を添加するステップと、正常細胞塊の屈折率分布データを取得するステップと、正常細胞塊の屈折率分布データを用いて、正常細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定するステップと、を含む、薬物の有する細胞毒性を解析する方法である。正常細胞塊とは、細胞塊に含まれる細胞が正常細胞である、細胞塊である。本実施形態においては、正常細胞塊に添加した際に正常細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の拡大を誘起する薬物が、細胞毒性を有する可能性がある薬物と判断される。
【0210】
本実施形態において細胞毒性を有する可能性がある薬物であると判断されうる既知の薬物、すなわち正常細胞に添加した際に正常細胞のプログラムされた細胞死を誘起することが知られる薬物としては、例えば、スタウロスポリン及びアクチノマイシンD等の小分子、TRAIL(TNF-related Apoptosis Inducing Ligand)等のペプチド並びにFASリガンド等のタンパク質を挙げることができる。
【0211】
本開示の一実施形態は、がん細胞塊に薬物を添加するステップと、がん細胞塊の屈折率分布データを取得するステップと、がん細胞塊の屈折率分布データを用いて、がん細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定するステップと、を含む、薬物の有する抗がん活性を解析する方法である。がん細胞塊とは、がん細胞を含む細胞塊である。一実施形態において、がん細胞塊は、細胞塊に含まれる細胞ががん細胞である、細胞塊である。本実施形態においては、がん細胞塊に添加した際にがん細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の拡大を誘起する薬物が、抗がん活性を有する可能性がある薬物と判断される。さらに、正常細胞塊に添加した際のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の拡大の程度と比較して、がん細胞塊に添加した際のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の拡大の程度が相対的に大きい薬物が、抗がん活性を有する可能性が高い薬物と判断される。
【0212】
本実施形態において抗がん活性を有する可能性がある薬物であると判断されうる既知の薬物、すなわちがん細胞に添加した際にがん細胞のプログラムされた細胞死を誘起することが知られる薬物としては、例えば、ドキソルビシン等のアントラサイクリン系抗がん剤、シスプラチン等の白金製剤系抗がん剤及びボルテゾミブ等のプロテアソーム阻害薬を挙げることができる。
【0213】
以下、実施例等により、本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【実施例0214】
[実施例1:スタウロスポリンを添加したA549細胞塊の調製及び屈折率分布データの取得]
A549細胞により形成した細胞塊に対して、アポトーシスを誘導する薬物であるスタウロスポリン(以下、STSとも表記する。)を添加して、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を含むA549細胞塊を調製した。また、得られた細胞塊の屈折率分布データを取得した。
【0215】
ヒト肺がん由来細胞株であるA549細胞をEZSPHERE6ウェルプレート(AGCテクノグラス社製)に1ウェル当たり1.50x10細胞の密度で播種し、10%ウシ胎児血清及びMEM Non-Essential Amino Acids Solution(100×)(Gibco社製)の終濃度1×を含むMEM培地中、5% CO2、37℃、100%湿度の条件下で3日間培養して、細胞塊を形成した。そこに、スタウロスポリン(富士フイルム和光純薬社製)のDMSO溶液を終濃度が0,10,20,50,100,200,300,500,700,1000,2000又は5000nMとなるように添加し、さらに1日培養した。なお、STSの終濃度が0nMの条件では、STSの溶媒として使用したDMSO(シグマアルドリッチ社製)の終濃度0.5%溶液を添加した。
【0216】
得られた細胞塊について、観察装置1A及び屈折率分布測定方法Cに示したODTを用いて屈折率分布データを取得した。倍率60倍の対物レンズを用いた。添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の直径との関係を図41に、添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の体積との関係を図42に、スタウロスポリン濃度0,200及び1000nMにおいて得られた屈折率分布データから抽出した代表的な屈折率断層データを図43に、それぞれ示す。
【0217】
図41及び図42によれば、観察対象物とした細胞塊の相当径及び体積はスタウロスポリン濃度に依存せず、スタウロスポリン濃度に依存した顕著な細胞塊の外形の変化は生じなかった。これに対し、屈折率分布データに着目すると、図43によれば、スタウロスポリン1000nM添加群において、アポトーシスの形態的な特徴である核の分断が見られる細胞が細胞塊の表面及び内部に見られ、かつそのような細胞においては屈折率の空間変化量が大きかった。
【0218】
[実施例2:スタウロスポリンを添加したA549細胞塊のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定]
プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を含むA549細胞塊の屈折率分布データを用いて、閾値法より、A549細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定することができるか検討した。
【0219】
実施例1で取得した屈折率分布データについて、図44に示したフローにより解析した。まず、細胞塊の屈折率分布データからのうち、屈折率が1.34以上の領域に細胞塊が存在するとして、判定領域(細胞塊領域)を決定した。続いて、閾値法に用いる屈折率の空間変化量の閾値について、2x10-4に設定した。続いて、屈折率分布データについて、ガウシアンフィルタによるガウシアンノイズの除去処理、4階微分処理及び画像の畳み込み処理を行い、屈折率分布データに含まれるボクセル毎の屈折率の空間変化量を算出した。最後に、得られた屈折率の空間変化量と閾値である2x10-4とを比較して、屈折率の空間変化量が閾値より大きい領域をプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域(死細胞領域)であると決定し、小さい領域を非分断領域(生細胞領域)であると決定した。スタウロスポリン濃度0,200及び1000nMにおける代表的な屈折率断層データと、同じ断層面における死細胞領域及び生細胞領域と判定された領域の画像を図45に、添加したスタウロスポリンの濃度(指数表示)と閾値法により決定された非分断領域(生細胞領域)の割合との関係を図46に、それぞれ示す。
【0220】
図45によれば、閾値法を用いることで、アポトーシスの形態的な特徴である核の分断が見られる細胞の領域の多くがプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域であると決定され、核の分断が見られない細胞の領域の多くが非分断領域であると決定された。図46によれば、スタウロスポリン濃度依存的に非分断領域であると決定された領域の割合は減少し、かつこれらの相関関係は生物学分野で一般的なヒル関数でカーブフィッティングすることができ、50%阻害濃度(IC50)を算出できることが確認された(IC50=158nM)。以上から、スタウロスポリンを添加したA549細胞塊について、屈折率の空間変化量を指標に、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定すること、及び薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析することができた。
【0221】
[実施例3:スタウロスポリンを添加したHepG2細胞塊の調製、屈折率分布データの取得及びプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定]
HepG2細胞により形成した細胞塊に対して、アポトーシスを誘導する薬物であるスタウロスポリンを添加して、プログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を含むHepG2細胞塊を調製した。また、得られた細胞塊の屈折率分布データを取得した。さらに、閾値法より、HepG2細胞塊中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定することができるか検討した。
【0222】
細胞種として、A549細胞の代わりにヒト肝がん由来の細胞株であるHepG2細胞を用いたこと、細胞を1ウェル当たり1.00x10細胞の密度で播種したこと、培地として10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いたこと以外は、実施例1及び2と同様の工程により、細胞塊の調製、屈折率分布データの取得及びプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域の決定を行った。添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の直径との関係を図47に、添加したスタウロスポリンの濃度と観察対象物とした細胞塊の体積との関係を図48に、添加したスタウロスポリンの濃度(指数表示)と閾値法により決定された非分断領域(生細胞領域)の割合との関係を図49に、それぞれ示す。
【0223】
A549細胞塊同様、HepG2細胞塊においても、外形の顕著な変化が生じていない細胞塊について、閾値法を用いて、屈折率の空間変化量を指標に、観察対象物中のプログラムされた細胞死を起こした細胞の領域を決定すること、及び薬物が細胞塊に含まれる細胞のプログラムされた細胞死に与える影響を解析することができた(IC50=233nM)。
【符号の説明】
【0224】
1A~1J…観察装置、2…記録媒体、11…光源、12…レンズ、13…光入射端、14…光ファイバ、15…ファイバカプラ、16,17…光ファイバ、18,19…光出射端、21…レンズ、22…ミラー、23…レンズ、24…コンデンサレンズ、25…対物レンズ、31…レンズ、32…ミラー、33…駆動部、34…レンズ、41…ビームスプリッタ、42…レンズ、43…撮像部、44…ミラー,50…解析部、51…干渉強度画像取得部、52…第1複素振幅画像生成部、53…第2複素振幅画像生成部、54…2次元位相画像生成部、55…3次元位相画像生成部、56…屈折率分布算出部、57…表示部、58…記憶部、60…解析部、61…干渉強度画像取得部、62…第1複素振幅画像生成部、63…第2複素振幅画像生成部、64…位相共役演算部、65…2次元位相画像生成部、66…3次元位相画像生成部、67…屈折率分布算出部、68…表示部、69…記憶部、70…解析部、71…干渉強度画像取得部、72…第1複素振幅画像生成部、73…第2複素振幅画像生成部、74…2次元位相画像生成部、75…3次元位相画像生成部、76…屈折率分布算出部、77…第3複素振幅画像生成部、78…表示部、79…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図39
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図44
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図49