(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022037
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】作業管理方法、作業管理システムおよび作業管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240208BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125338
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 直也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】管理単位期間を跨いで作業が行われた作業領域を分断せずに管理する。
【解決手段】作業管理方法は、駆動期間(WP14)に圃場(9)内を移動しつつ作業を行った作業装置(2)の位置を表す測位情報と、作業装置がこれらの位置にいたときの測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得すること(S01)と、所定の管理単位期間(MP1、MP2)ごとに、圃場のうち、作業装置が作業を行った作業領域(WA13、WA21)を、稼働情報に基づいて特定すること(S02)と、駆動期間が、第1管理単位期間(MP1)と第2管理単位期間(MP2)とを区切る所定の基準時刻(T1)を跨ぐとき、第1管理単位期間の間に作業を行った第1作業領域(WA13)と、第2管理単位期間の間に作業を行った第2作業領域(WA21)とを結合した結合作業領域(WA14)を、第1管理単位期間に対応付けて管理すること(S04)を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に圃場内を移動しつつ作業を行った作業装置の複数の位置を表す測位情報と、前記作業装置が前記複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得することと、
所定の管理単位期間ごとに、前記圃場のうち、前記作業装置が前記作業を行った作業領域を、前記稼働情報に基づいて特定することと、
前記駆動期間が、第1管理単位期間と、前記第1管理単位期間の次の第2管理単位期間とを区切る所定の基準時刻を跨ぐか否かを判定することと、
前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐとき、前記駆動期間のうち前記第1管理単位期間に含まれる第1駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第1作業領域と、前記駆動期間のうち前記第2管理単位期間に含まれる第2駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第2作業領域とを結合した結合作業領域を、前記第1管理単位期間に対応付けて管理することと
を含む
作業管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の作業管理方法において、
前記判定することは、
前記複数の測位時刻のうち、前記第1管理単位期間に含まれる最後の測位時刻から、前記第2管理単位期間に含まれる最初の測位時刻までの時間が所定の閾値以下であるときに、前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐと判定すること
を含む
作業管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の作業管理方法において、
前記複数の測位時刻の間隔は、所定のサンプリング周期であり、
前記閾値は、前記サンプリング周期の2倍である
作業管理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の作業管理方法において、
前記管理することは、
前記作業領域と、前記作業領域で前記作業装置が行った前記作業の種別とを関連づけて管理すること
を含む
作業管理方法。
【請求項5】
キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に圃場内を移動しつつ作業を行った作業装置の複数の位置を表す測位情報と、前記作業装置が前記複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得する取得部と、
所定の管理単位期間ごとに、前記圃場のうち、前記作業装置が前記作業を行った作業領域を、前記稼働情報に基づいて特定する特定部と、
前記駆動期間が、第1管理単位期間と、前記第1管理単位期間の次の第2管理単位期間とを区切る所定の基準時刻を跨ぐか否かを判定する判定部と、
前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐとき、前記駆動期間のうち前記第1管理単位期間に含まれる第1駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第1作業領域と、前記駆動期間のうち前記第2管理単位期間に含まれる第2駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第2作業領域とを結合した結合作業領域を、前記第1管理単位期間に対応付けて管理する管理部と
を備える
作業管理システム。
【請求項6】
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現させるための作業管理プログラムであって、
前記処理は、
キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に圃場内を移動しつつ作業を行った作業装置の複数の位置を表す測位情報と、前記作業装置が前記複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得することと、
所定の管理単位期間ごとに、前記圃場のうち、前記作業装置が前記作業を行った作業領域を、前記稼働情報に基づいて特定することと、
前記駆動期間が、第1管理単位期間と、前記第1管理単位期間の次の第2管理単位期間とを区切る所定の基準時刻を跨ぐか否かを判定することと、
前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐとき、前記駆動期間のうち前記第1管理単位期間に含まれる第1駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第1作業領域と、前記駆動期間のうち前記第2管理単位期間に含まれる第2駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第2作業領域とを結合した結合作業領域を、前記第1管理単位期間に対応付けて管理することと
を含む
作業管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業管理方法、作業管理システムおよび作業管理プログラムに関し、例えば、圃場における農作業などの作業の管理に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許5972819号)には、作業管理支援装置および作業管理システムが開示されている。特許文献1の作業管理支援装置は、圃場で農作業者が行う作業を管理するために、作業者の位置を検出し、作業者が使用する作業機が稼働した時刻および稼働状態を取得し、これらの情報を自動的に遠隔のサーバに記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、前提として作業の記録を日付単位で行う。しかし、例えば、作物の収穫作業において、気象状況や、収穫に用いる農機のシェアリングの都合などにより、収穫作業が夜間に及び、さらに午前零時を跨ぐ場合もあり得る。このような場合において、特許文献1では、作業を管理する単位期間が午前零時から深夜24時までの1日間であるので、午前零時を境に管理上の作業日時が分断され、また管理上の作業領域も分断される。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、管理単位期間を跨いで作業が行われた作業領域を分断せずに管理することのできる作業管理方法、作業管理システムおよび作業管理プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0007】
一実施の形態によれば、作業管理方法は、キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間(WP14)に圃場(9)内を移動しつつ作業を行った作業装置(2)の複数の位置を表す測位情報と、作業装置(2)が複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得すること(S01)を含む。作業管理方法は、さらに、所定の管理単位期間(MP1、MP2)ごとに、圃場(9)のうち、作業装置(2)が作業を行った作業領域(WA13、WA21)を、稼働情報に基づいて特定すること(S02)と、駆動期間(WP14)が、第1管理単位期間(MP1)と、第1管理単位期間(MP1)の次の第2管理単位期間(MP2)とを区切る所定の基準時刻(T1)を跨ぐか否かを判定すること(S03)とを含む。作業管理方法は、さらに、駆動期間(WP14)が基準時刻(T1)を跨ぐとき、駆動期間(WP14)のうち第1管理単位期間(MP1)に含まれる第1駆動期間(WP13)の間に作業装置(2)が作業を行った第1作業領域(WA13)と、駆動期間(WP14)のうち第2管理単位期間(MP2)に含まれる第2駆動期間(WP21)の間に作業装置(2)が作業を行った第2作業領域(WA21)とを結合した結合作業領域(WA14)を、第1管理単位期間(MP1)に対応付けて管理すること(S04)を含む。
【0008】
一実施の形態によれば、作業管理システム(1)は、取得部(521)と、特定部(522)と、判定部(523)と、管理部(524)とを備える。取得部(521)は、キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間(WP14)に圃場(9)内を移動しつつ作業を行った作業装置(2)の複数の位置を表す測位情報と、作業装置(2)が複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得する。特定部(522)は、所定の管理単位期間(MP1、MP2)ごとに、圃場(9)のうち、作業装置(2)が作業を行った作業領域(WA13、WA21)を、稼働情報に基づいて特定する。判定部(523)は、駆動期間(WP14)が、第1管理単位期間(MP1)と、第1管理単位期間(MP1)の次の第2管理単位期間(MP2)とを区切る所定の基準時刻(T1)を跨ぐか否かを判定する。管理部(524)は、駆動期間(WP14)が基準時刻(T1)を跨ぐとき、駆動期間(WP14)のうち第1管理単位期間(MP1)に含まれる第1駆動期間(WA13)の間に作業装置(2)が作業を行った第1作業領域(WA13)と、駆動期間(WP14)のうち第2管理単位期間(MP2)に含まれる第2駆動期間(WA21)の間に作業装置(2)が作業を行った第2作業領域(WA21)とを結合した結合作業領域(WA14)を、第1管理単位期間(MP1)に対応付けて管理する。
【0009】
一実施の形態によれば、作業管理プログラムは、演算装置(52)に実行させることによって所定の処理を実現させるためのものである。この処理は、キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間(WP14)に圃場(9)内を移動しつつ作業を行った作業装置(2)の複数の位置を表す測位情報と、作業装置(2)が複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得すること(S01)を含む。この処理は、さらに、所定の管理単位期間(MP1、MP2)ごとに、圃場(9)のうち、作業装置(2)が作業を行った作業領域(WA13、WA21)を、稼働情報に基づいて特定すること(S02)と、駆動期間(WP14)が、第1管理単位期間(MP1)と、第1管理単位期間(MP1)の次の第2管理単位期間(MP2)とを区切る所定の基準時刻(T1)を跨ぐか否かを判定すること(S03)とを含む。この処理は、さらに、駆動期間(WP14)が基準時刻(T1)を跨ぐとき、駆動期間(WP14)のうち第1管理単位期間(MP1)に含まれる第1駆動期間(WP13)の間に作業装置(2)が作業を行った第1作業領域(WA13)と、駆動期間(WP14)のうち第2管理単位期間(MP2)に含まれる第2駆動期間(WP21)の間に作業装置(2)が作業を行った第2作業領域(WA21)とを結合した結合作業領域(WA14)を、第1管理単位期間(MP1)に対応付けて管理すること(S04)を含む。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、管理単位期間を跨いで作業が行われた作業領域を分断せずに管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施の形態による作業管理システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による作業管理装置の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による作業方法の処理の一構成例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、一実施の形態による結合前の作業期間の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による結合前の作業領域の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による結合後の作業期間の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施の形態による結合後の作業領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
作業装置が圃場で移動しつつ行う農作業などの作業を自動的に管理するために、作業中の複数の時刻のそれぞれにおける作業装置の位置を測定した測位情報を記録する技術がある。測位情報を、例えば一日などの管理単位期間ごとにまとめて処理することで、圃場のうち、前日に作業を行った作業領域を自動的に特定する、などの管理を効率的に行うことができる。しかし、このような技術では、2つの管理単位期間を跨いで行った作業については、実際には一度の作業で作業を行った1つの作業領域が、データ上では2つの作業領域に分断されてしまう場合がある。本開示では、2つの管理単位期間を跨いで行った作業についても、2つに分断された作業領域を、実際の状況に即するように1つに結合する処理を自動的に行う。
【0013】
添付図面を参照して、本開示による作業管理方法、作業管理システムおよび作業管理プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0014】
図1に示すように、一実施の形態による作業管理システム1は、作業装置2に搭載された搭載端末3と、作業管理装置5とを備える。作業管理システム1は、さらに、外部端末6を含んでもよい。一例として、外部端末6は、スマートフォンやタブレット端末などを含んでもよい。
【0015】
作業装置2は、圃場9で地上を移動しながら農作業を行うトラクターやコンバインなどの作業車両を含む。作業装置2は、さらに、圃場9の上方を飛行しながら農作業を行うドローンなどを含んでもよい。
【0016】
搭載端末3と、作業管理装置5と、外部端末6とは、ネットワーク4を介した無線通信および/または有線通信によって各種情報の送受信を行う。一例として、搭載端末3は、作業装置2が圃場9内で移動しながら作業したときに通過した複数の地点の位置をGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などで測定した位置情報を含む稼働情報を、ネットワーク4を介して、作業管理装置5へ送信する。作業管理装置5は、受信した稼働情報に基づいて、作業装置2が作業を行った作業領域に係る作業情報を管理する。外部端末6は、作業管理装置5が管理する作業情報を、ネットワーク4を介して受信して出力してもよい。
【0017】
図2に示すように、一実施の形態による作業管理装置5は、いわゆるコンピュータとして構成されてもよい。
図2の例において、作業管理装置5は、バス51と、演算装置52と、記憶装置53と、通信装置54と、入出力装置55とを備える。バス51は、演算装置52、記憶装置53、通信装置54および入出力装置55を、互いに通信可能に接続するように構成されている。
【0018】
演算装置52は、取得部521と、特定部522と、判定部523と、管理部524とを備える。記憶装置53は、作業管理プログラム記憶部531と、データベース532とを備える。作業管理プログラム記憶部531は、作業管理プログラムを記憶する。データベース532は、稼働情報と、作業情報とを記憶する。
【0019】
演算装置52は、作業管理プログラムを読み出して実行することによって、取得部521、特定部522、判定部523および管理部524のそれぞれの機能を実現する。取得部521、特定部522、判定部523および管理部524のそれぞれは、演算装置52および記憶装置53が協働して実現する処理を実行する仮想的な機能ブロックである。取得部521は、搭載端末3から送信された稼働情報を取得する。特定部522は、管理単位期間ごとに、圃場9のうち、作業装置2が作業を行った作業領域を特定する。判定部523は、駆動期間が、基準時刻によって区切られた2つの連続する管理単位期間を跨いでいるか否かを判定する。管理部524は、作業領域を管理単位期間に対応付けて管理する。これらの機能ブロックのより具体的な処理については、後述する。
【0020】
作業管理プログラムは、外部の記録媒体530から読み出されて作業管理プログラム記憶部531に格納されてもよい。記録媒体530は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0021】
通信装置54は、ネットワーク4を介する無線通信および/または有線通信により、搭載端末3および/または外部端末6を含む外部の装置との通信を行う。
【0022】
入出力装置55は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置55は、画像を出力する表示装置、入力を受け付けるキーボードおよび/またはマウスなどを含む。
【0023】
図3のフローチャートを参照して、一実施の形態による作業管理方法の処理の一例について説明する。作業管理方法の処理は、作業管理装置5が起動するときに開始してもよい。このとき、作業管理装置5の演算装置52が作業管理プログラムを実行することによって、作業管理方法の処理が実現される。
【0024】
図3のフローチャートが開始すると、ステップS01が実行される。ステップS01において、作業管理装置5の取得部521が、搭載端末3が送信した稼働情報を取得する。
【0025】
より詳細には、まず、作業装置2に搭載された搭載端末3が、稼働情報を生成して作業管理装置5へ送信する。稼働情報とは、作業装置2の位置を複数の時刻において測定した測位情報と、位置の測定を行った測定時刻を表す時刻情報と、作業装置2の稼働状況を表す状況情報とを、搭載端末3が対応付けて生成したものである。作業装置2の位置の測定は、所定のサンプリング周期ごとに定期的に行われてもよい。状況情報は、作業装置2がキーオン状態であるか、あるいはキーオフ状態であるかを表す。測定時刻は、作業装置2がキーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に含まれる複数の時刻を含んでもよい。
【0026】
取得部521は、通信装置54を制御して稼働情報を受信し、取得した稼働情報をデータベース532に格納する。
【0027】
ステップS01の後、
図3のステップS02が実行される。ステップS02において、作業管理装置5の特定部522が、管理単位期間ごとに作業領域を特定する。ここで、作業領域とは、圃場9のうち、作業装置2が駆動期間中に作業を行った領域である。
【0028】
より詳細には、特定部522が、稼働情報に含まれる複数の測位点に基づいて作業領域を算出する。一例として、これら複数の測位点の凸包または凹包を算出して作業領域としてもよい。
【0029】
ここで、特定部522は、作業領域の特定を、管理単位期間ごとにバッチ処理などを実行することによって行う。一例として、ある管理単位期間の間に行われた作業の作業領域を特定する処理は、この管理単位期間が終わる基準時刻から所定の時間が経過した後に開始されてもよい。このとき、駆動期間の全体が管理単位期間に含まれていれば、作業領域は、駆動期間中に測位した測位点をすべて含むように、正しく特定される。反対に、駆動期間が、2つの連続する管理単位期間を区切る基準時刻を跨いでいれば、この駆動期間に作業装置2が作業した作業領域のうち、基準時刻の直前の第1管理単位期間に位置を測定した一部の測位点だけを含む第1部分だけが作業領域として特定される。また、駆動期間に作業装置2が作業した作業領域のうち、残りの部分は、基準時刻の直後の第2管理単位期間に位置を測定した残りの測位点だけを含む第2部分だけが作業領域として特定される。
【0030】
図4の例では、第1管理単位期間MP1に含まれる駆動期間WP11、WP12、WP13において作業装置2が作業を行っている。また、続く第2管理単位期間MP2に含まれる駆動期間WP21、WP22、WP23においても作業装置2が作業を行っている。
図4の例では、第1管理単位期間MP1に含まれる駆動期間WP11、WP12、WP13を比較的疎なハッチングで示しており、第2管理単位期間MP2に含まれる駆動期間WP21、WP22、WP23を比較的密なハッチングで示している。ここで、第1管理単位期間MP1における最後の駆動期間WP13と、第2管理単位期間MP2における最初の駆動期間WP21とは、実際には同一の駆動期間が、管理データ上において、基準時刻T1を境に2つに分断されたものである。
【0031】
図5の例では、圃場9のうち、作業装置2が駆動期間WP13の間に作業を行った作業領域WA13と、作業装置2が駆動期間WP21の間に作業を行った作業領域WA21とが、個別に算出されている。作業領域WA13は、稼働情報に含まれる複数の測位点P1、P2のうち、駆動期間WP13の間に測位を行った測位点P1の凸包として算出されている。同様に、作業領域WA21は、稼働情報に含まれる複数の測位点P1、P2のうち、駆動期間WP21の間に測位を行った測位点P2の凸包として算出されている。このように、実際には1つである駆動期間が基準時刻T1を跨いだために管理データ上で2つに分断されると、実際には1つである作業領域も管理データ上で2つに分断される。なお、作業領域WA13、WA21を、測位点P1、P2の凸包として算出するとき、作業装置2が実際に作業した領域に近づけるために、測位点P1、P2の凸包を、その全周にわたって、外側に向かって所定の拡大幅だけ拡大してもよい。拡大幅は、作業装置2の作業幅と、作業装置2の測位を行う測位装置の作業装置2における位置とに基づいて決定してもよい。作業幅の一例として、作業装置2が、トラクタと、トラクタがけん引する作業機とを備える場合は、作業機が圃場9に対して作業を行う範囲の、トラクタの進行方向に直交する方向における長さを、作業幅とする。作業幅の別の一例として、作業装置2が田植え機であればその植付幅を作業幅とし、作業装置2がコンバインであればその収穫幅を作業幅とする。また、拡大幅の一例として、測位装置が、作業装置2の、作業幅の方向に対して中央に配置されている場合は、作業幅の半分を拡大幅としてもよい。拡大幅の別の一例として、測位装置が、作業装置2の、作業幅の方向に対して中央からオフセットされて配置されている場合は、拡大幅を同様に作業幅の方向にオフセットしてもよい。
【0032】
本開示では、続くステップS03、S04において、2つの部分に分断された作業領域WA13、WA21を1つの作業領域に結合する処理を行う。
【0033】
ステップS02の後、
図3のステップS03が実行される。ステップS03において、作業管理装置5の判定部523が、駆動期間WP13、WP21が基準時刻T1を跨ぐか否かを判定する。
【0034】
より詳細には、判定部523は、稼働情報に含まれる複数の測位点P1、P2のうち、基準時刻T1の直前の第1管理単位期間MP1に含まれる最後の測位時刻に測位された第1測位点P1と、基準時刻T1の直後の第2管理単位期間MP2に含まれる最初の測位時刻に測位された第2測位点P2とが、以下の2つの条件を満たすとき、第1測位点P1の測位時刻を含む駆動期間WP13と、第2測位点P2の測位時刻を含む駆動期間WP21とが、基準時刻T1を跨ぐ1つの駆動期間であると判定する。
【0035】
第1の条件とは、第1測位点P1と第2測位点P2とが両方とも、作業装置2がキーオン状態であったときに測位したものであることである。ただし、駆動期間において作業装置2はキーオン状態であるので、駆動期間に含まれる測位時刻は第1の条件を満たす。第2の条件とは、第1測位点P1の測位時刻と、第2測位点P2の測位時刻との間の時間が所定の閾値以下であることである。この閾値は、一例としてサンプリング周期の2倍である。この場合、基準時刻T1の付近における測位の失敗が1回だけ許容される。
【0036】
判定部523が、駆動期間WP13、WP21が基準時刻T1を跨ぐと判定しなかった場合(No)、
図3のフローチャートの処理は終了する。反対に、判定部523が、駆動期間WP13、WP21が基準時刻T1を跨ぐと判定した場合(Yes)、処理は
図3のステップS04へ進む。
【0037】
ステップS04において、作業管理装置5の管理部524が、基準時刻T1を跨ぐ駆動期間WP13、WP21に作業した作業領域WA13、WA21を結合して管理する。
【0038】
より詳細には、管理部524は、ステップS03において、基準時刻T1を跨ぐ1つの駆動期間であると判定された2つの駆動期間WP13、WP21を結合して1つの駆動期間とし、結合後の駆動期間を基準時刻T1の直前の管理単位期間に対応付けて管理する。
【0039】
同様に、結合前の2つの駆動期間WP13、WP21にそれぞれ対応する2つの作業領域WA13、WA21を結合して1つの作業領域とし、結合後の作業領域を基準時刻T1の直前の管理単位期間に対応付けて管理する。ここで、結合後の作業領域は、結合前の作業領域WA13、WA21に含まれる測位点P1、P2の集合の凸包または凹包として算出してもよい。
【0040】
図6の例では、
図4の例において基準時刻T1で分断されていた駆動期間WP13および駆動期間WP21が結合されて、駆動期間WP14に置き換えられている。管理部524は、結合後の駆動期間WP14を第1管理単位期間MP1に対応付けた管理データを、データベース532に格納する。
【0041】
図7の例では、
図5の例において2つに分断されていた作業領域WA13および作業領域WA21が結合されて、作業領域WA14に置き換えられている。
図7の例では、結合後の作業領域WA14は、結合前の作業領域WA13に含まれる測位点P1と、結合前の作業領域WA21に含まれる測位点P2との集合の凸包である。管理部524は、結合後の作業領域WA14を第1管理単位期間MP1に対応付けた管理データを、データベース532に格納する。
【0042】
なお、結合後の駆動期間WP14と、結合後の作業領域WA14とを表す管理データは、外部端末6を用いて参照されてもよい。このとき、使用者は、所望のタイミングで外部端末6を操作し、ネットワーク4を介してデータベース532にアクセスし、所望の管理データを指定して要求する。管理部524は、この要求に応じて指定された管理データをデータベース532から読み出して外部端末6へ送信する。外部端末6は、受信した管理データを画面に表示するなどして出力する。使用者は、結合後の駆動期間WP14および/または結合後の作業領域WA14を外部端末6に表示させることによって、基準時刻T1を跨いで行った作業を含めて、実際に行った作業を精度よく把握することができる。
【0043】
図3のステップS04が終了すると、
図3のフローチャートの処理も終了する。
【0044】
以上に説明したように、一実施の形態によれば、管理単位期間MP1、MP2を跨いで作業が行われた作業領域WA14を分断せずに管理することができる。
【0045】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0046】
(付記)
各実施の形態で記載した作業管理方法、作業管理システムおよび作業管理プログラムは、以下のように言うことができる。
【0047】
第1の態様に係る作業管理方法は、
キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に圃場内を移動しつつ作業を行った作業装置の複数の位置を表す測位情報と、前記作業装置が前記複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得することと、
所定の管理単位期間ごとに、前記圃場のうち、前記作業装置が前記作業を行った作業領域を、前記稼働情報に基づいて特定することと、
前記駆動期間が、第1管理単位期間と、前記第1管理単位期間の次の第2管理単位期間とを区切る所定の基準時刻を跨ぐか否かを判定することと、
前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐとき、前記駆動期間のうち前記第1管理単位期間に含まれる第1駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第1作業領域と、前記駆動期間のうち前記第2管理単位期間に含まれる第2駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第2作業領域とを結合した結合作業領域を、前記第1管理単位期間に対応付けて管理することと
を含む。
【0048】
第2の態様に係る作業管理方法は、
第1の態様に係る作業管理方法であって、
前記判定することは、
前記複数の測位時刻のうち、前記第1管理単位期間に含まれる最後の測位時刻から、前記第2管理単位期間に含まれる最初の測位時刻までの時間が所定の閾値以下であるときに、前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐと判定すること
を含む。
【0049】
第3の態様に係る作業管理方法は、
第2の態様に係る作業管理方法であって、
前記複数の測位時刻の間隔は、所定のサンプリング周期であり、
前記閾値は、前記サンプリング周期の2倍である。
【0050】
第4の態様に係る作業管理方法は、
第1~3のいずれかの態様に係る作業管理方法であって、
前記管理することは、
前記作業領域と、前記作業領域で前記作業装置が行った前記作業の種別とを関連づけて管理すること
を含む。
【0051】
第5の態様に係る作業管理システムは、
キーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に圃場内を移動しつつ作業を行った作業装置の複数の位置を表す測位情報と、前記作業装置が前記複数の位置にそれぞれいたときの複数の測位時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得する取得部と、
所定の管理単位期間ごとに、前記圃場のうち、前記作業装置が前記作業を行った作業領域を、前記稼働情報に基づいて特定する特定部と、
前記駆動期間が、第1管理単位期間と、前記第1管理単位期間の次の第2管理単位期間とを区切る所定の基準時刻を跨ぐか否かを判定する判定部と、
前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐとき、前記駆動期間のうち前記第1管理単位期間に含まれる第1駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第1作業領域と、前記駆動期間のうち前記第2管理単位期間に含まれる第2駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第2作業領域とを結合した結合作業領域を、前記第1管理単位期間に対応付けて管理する管理部と
を備える。
【0052】
第6の態様に係る作業管理プログラムは、
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現させるための作業管理プログラムであって、
前記処理は、
圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の位置を、前記作業装置がキーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に含まれる複数の時刻において測定した測位情報と、前記位置の測定を行った測定時刻を表す時刻情報とを対応付けた稼働情報を取得することと、
所定の管理単位期間ごとに、前記圃場のうち、前記作業装置が前記作業を行った作業領域を、前記稼働情報に基づいて特定することと、
前記駆動期間が、第1管理単位期間と、前記第1管理単位期間の次の第2管理単位期間とを区切る所定の基準時刻を跨ぐか否かを判定することと、
前記駆動期間が前記基準時刻を跨ぐとき、前記駆動期間のうち前記第1管理単位期間に含まれる第1駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第1作業領域と、前記駆動期間のうち前記第2管理単位期間に含まれる第2駆動期間の間に前記作業装置が前記作業を行った第2作業領域とを結合した結合作業領域を、前記第1管理単位期間に対応付けて管理することと
を含む。
【符号の説明】
【0053】
1 作業管理システム
2 作業装置
3 搭載端末
4 ネットワーク
5 作業管理装置
51 バス
52 演算装置
521 取得部
522 特定部
523 判定部
524 管理部
53 記憶装置
530 記録媒体
531 作業管理プログラム記憶部
532 データベース
54 通信装置
55 入出力装置
6 外部端末
9 圃場
MP1 管理単位期間(第1管理単位期間)
MP2 管理単位期間(第2管理単位期間)
P1、P2 測位点
T1 基準時刻
WA13、WA21 作業領域(結合前の作業領域)
WA14 作業領域(結合後の作業領域)
WP11、WP12、WP13、WP14、WP21、WP22、WP23 駆動期間