(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022038
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ガラス母材の加熱装置及びガラス母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
C03B37/012 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125339
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】申 浩男
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021BA01
(57)【要約】
【課題】炉心管の劣化を低減する、ガラス母材の加熱装置及びガラス母材の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス母材の加熱装置は、長手方向において両端が開口した円筒形状を有し、内部にガラス母材を収容し、加熱するよう構成された炉心管と、前記炉心管の前記両端それぞれに設けられたシールリングと、前記炉心管内へ不活性ガスを供給するように構成されたガス供給口と、を備え、前記シールリングの内径が、前記炉心管の内径よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向において両端が開口した円筒形状を有し、内部にガラス母材を収容し、加熱するよう構成された炉心管と、
前記炉心管の前記両端それぞれに設けられたシールリングと、
前記炉心管内へ不活性ガスを供給するように構成されたガス供給口と、を備え、
前記シールリングの内径が、前記炉心管の内径よりも小さい、ガラス母材の加熱装置。
【請求項2】
前記炉心管の中心軸は水平方向と平行であり、
前記シールリングは、前記炉心管の前記中心軸に対して、回転可能に設けられている、請求項1に記載のガラス母材の加熱装置。
【請求項3】
前記シールリングは、前記両端に対し脱着可能に設けられている、請求項1に記載のガラス母材の加熱装置。
【請求項4】
前記シールリングを挟んで、前記炉心管の前記両端それぞれに設けられ、前記ガラス母材の外径に応じて開閉するよう構成されたシャッターを備える、請求項1に記載のガラス母材の加熱装置。
【請求項5】
前記シャッターは、前記炉心管の一端に設けられた第一シャッターと、前記炉心管の他端に設けられた第二シャッターと、を有し、
前記ガス供給口は、前記炉心管の前記一端に設けられた第一ガス供給口と、前記炉心管の前記他端に設けられた第二ガス供給口と、を有し、
前記第一シャッターが開いているときの前記第二ガス供給口からのガス量は、前記第一シャッターが閉じているときの前記第二ガス供給口からのガス量と比較して多く、
前記第二シャッターが開いているときの前記第一ガス供給口からのガス量は、前記第二シャッターが閉じているときの前記第一ガス供給口からのガス量と比較して多い、請求項4に記載のガラス母材の加熱装置。
【請求項6】
両端にテーパー部を有するガラス母材の製造方法であって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記加熱装置の前記炉心管へ、前記ガラス母材を収容する収容工程と、
収容された前記ガラス母材を加熱する加熱工程と、を備え、
前記ガラス母材の長手方向において、各前記テーパー部の長さは、前記シールリングの長さよりも短い、ガラス母材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス母材の加熱装置及びガラス母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のようなガラス母材の加熱装置が知られている。特許文献1は、直径の大きなガラス母材でも適切に加熱するため、ガラス母材を相対的に炉心管内へ移動させ、炉心管内でガラス母材を加熱する加熱装置において、炉心管に印加する電圧を導く関係式を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス母材が炉心管に対して相対的に移動する際、炉心管の両端に設けられたシャッターがガラス母材の移動に応じて開閉する。シャッターが開くと、炉心管内に外部から空気が侵入し、炉心管内のカーボンが酸素と接触して、炉心管が劣化することがある。
【0005】
本開示は、炉心管の劣化を低減する、ガラス母材の加熱装置及びガラス母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ガラス母材の加熱装置は、
長手方向において両端が開口した円筒形状を有し、内部にガラス母材を収容し、加熱するよう構成された炉心管と、
前記炉心管の前記両端それぞれに設けられたシールリングと、
前記炉心管内へ不活性ガスを供給するように構成されたガス供給口と、を備え、
前記シールリングの内径が、前記炉心管の内径よりも小さい。
【0007】
ガラス母材の製造方法は、
両端にテーパー部を有するガラス母材の製造方法であって、
前記加熱装置の前記炉心管へ、前記ガラス母材を収容する収容工程と、
収容された前記ガラス母材を加熱する加熱工程と、を備え、
前記ガラス母材の長手方向において、各前記テーパー部の長さは、前記シールリングの長さよりも短い。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、炉心管の劣化を低減する、ガラス母材の加熱装置及びガラス母材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るガラス母材の加熱装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るガラス母材の製造方法のうち、収容工程を示す概要図である。
【
図3】
図3は、収容工程において、ガラス母材が加熱装置の端部を通過する状態を示す概要図である。
【
図4】
図4は、ガラス母材の製造方法のうち、加熱工程を示す概要図である。
【
図5】
図5は、ガラス母材の製造方法のうち、取出工程を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の一形態の説明)
まず本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係るガラス母材の加熱装置は、
(1)長手方向において両端が開口した円筒形状を有し、内部にガラス母材を収容し、加熱するよう構成された炉心管と、
前記炉心管の前記両端それぞれに設けられたシールリングと、
前記炉心管内へ不活性ガスを供給するように構成されたガス供給口と、を備え、
前記シールリングの内径が、前記炉心管の内径よりも小さい。
【0011】
本開示のガラス母材の加熱装置は、シールリングが炉心管の両端それぞれに設けられ、シールリングの内径が炉心管の内径よりも小さいため、炉心管の両端から炉心管内へ空気が侵入してしまうことを抑制することができる。したがって炉心管の劣化を抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記炉心管の中心軸は水平方向と平行であり、前記シールリングは、前記炉心管の前記中心軸に対して、回転可能に設けられていてもよい。
ガラス母材を加熱する炉心管の内部においては、温度の高いガスが炉心管の上部に溜まりやすく、逆に温度の低いガスが炉心管の下部に溜まりやすい。これに伴い、シールリングの炉心管の上部に近い部分では、シールリングの炉心管の下部に近い部分と比較して、劣化が進みやすい。本開示のシールリングは炉心管の中心軸に対して回転可能に設けられているため、シールリングの一部の劣化が進んでしまったとしても、シールリングの他の部分で代用することができる。したがって一つのシールリング全体を有効に使用して、その使用期間を延ばすことができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、前記シールリングは、前記両端に対し脱着可能に設けられていてもよい。
本開示によれば、シールリングが両端に対して脱着可能に設けられているため、シールリングが劣化した場合でも、シールリングの交換作業が容易となる。また、ガラス母材の外径に応じてシールリングを容易に交換することができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記シールリングを挟んで、前記炉心管の前記両端それぞれに設けられ、前記ガラス母材の外径に応じて開閉するよう構成されたシャッターを備えてもよい。
本開示によれは、シールリングを挟んで、炉心管の両端それぞれに設けられ、ガラス母材の外径に応じて開閉するよう構成されたシャッターを備えるため、外部から炉心管の内部への空気の侵入をより抑制することができる。したがって炉心管の劣化を抑制することができる。
【0015】
(5)上記(4)において、前記シャッターは、前記炉心管の一端に設けられた第一シャッターと、前記炉心管の他端に設けられた第二シャッターと、を有し、
前記ガス供給口は、前記炉心管の前記一端に設けられた第一ガス供給口と、前記炉心管の前記他端に設けられた第二ガス供給口と、を有し、
前記第一シャッターが開いているときの前記第二ガス供給口からのガス量は、前記第一シャッターが閉じているときの前記第二ガス供給口からのガス量と比較して多く、
前記第二シャッターが開いているときの前記第一ガス供給口からのガス量は、前記第二シャッターが閉じているときの前記第一ガス供給口からのガス量と比較して多くてもよい。
一方のシャッターが開いていると、当該シャッターが設けられた一端から炉心管内への空気が侵入しやすくなる。本開示によれば、第一シャッターが開いているときの第二ガス供給口からのガス量は、第一シャッターが閉じているときのガス量と比較して多く、第二シャッターが開いているときの第一ガス供給口からのガス量は、第二シャッターが閉じているときのガス量と比較して多いため、空気の侵入をより抑制することができる。したがって炉心管の劣化を抑制することができる。
【0016】
(6)両端にテーパー部を有するガラス母材を製造する、ガラス母材の製造方法であって、
上記(1)から(5)のいずれかに記載の前記加熱装置の前記炉心管へ、前記ガラス母材を収容する収容工程と、
収容された前記ガラス母材を加熱する加熱工程と、を備え、
前記ガラス母材の長手方向において、各前記テーパー部の長さは、前記シールリングの長さよりも短い、ガラス母材の製造方法。
【0017】
ガラス母材の長手方向において、各テーパー部の長さはシールリングの長さよりも長いと、炉心管の端部とガラス母材の間の空隙が大きく、炉心管へ空気が侵入しやすい。本開示の製造方法によれば、ガラス母材の長手方向において、各テーパー部の長さはシールリングの長さよりも短いため、このような空隙が小さく、炉心管への空気の侵入を抑制することができる。したがって炉心管の劣化を抑制することができる。
【0018】
(本開示の一形態の詳細)
本開示の一形態に係るガラス母材の加熱装置及びガラス母材の製造方法の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
(ガラス母材の加熱装置)
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るガラス母材の加熱装置について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るガラス母材の加熱装置1を示す概略構成図である。加熱装置1は、ガラス母材Gを加熱するよう構成されている。
図1に示すように、加熱装置1は、炉心管10と、発熱体20と、シールリング30と、ガス供給口40と、シャッター50と、を備える。
【0020】
ガラス母材Gは、円筒形状を有するガラスパイプG1と、円筒形状を有し、ガラスパイプG1の両端に接続されたダミーパイプG2とを、有している。ガラスパイプG1とダミーパイプG2は、例えば石英ガラスであり、一体的に形成されている。ガラスパイプG1の軸心とダミーパイプG2の軸心は一致している。ガラスパイプG1の両端には、ガラスパイプG1からダミーパイプG2に向かって外径が徐々に小さくなる、テーパー部G3が形成されている。ガラスパイプG1の外径は例えば70~150mmである。ダミーパイプG2の外径は例えば30~100mmである。ガラス母材Gの長手方向において、テーパー部G3の長さLT、すなわちガラスパイプG1の外径が縮径する端部G4からダミーパイプG2へ到達する位置までの長さLTは例えば25~150mmである。このテーパー部G3の長さLTは、ガラス母材Gの長手方向において、シールリング30の長さLSよりも短い。
【0021】
炉心管10は、長手方向において、両端が開口した円筒形状を有している。炉心管10は、高温耐熱性に優れた部材として、例えばカーボン材で形成されている。炉心管10の中心軸AXは水平方向と平行である。本実施形態において、一方の端部を第一端部11(
図1において左側の端部)、他方の端部を第二端部12(
図1において右側の端部)とする。以降、二つの端部11、12の両方を示す場合は、両端と記載する。炉心管の内径DTは例えば80~200mmである。ガラス母材Gは、第一端部11及び第二端部12の何れか一方から炉心管10へ挿入され、他方から取り出される。
【0022】
炉心管10は、その内部にガラス母材Gを収容し、加熱するよう構成されている。本実施形態の加熱装置1は誘導加熱炉であり、炉心管10は炉心管10の外周部13に設けられた発熱体20によって加熱される。より詳細には、炉心管10の長手方向において、円筒の中央付近に炉心管10を囲うように誘導コイル21が巻回されている。この誘導コイル21の内側であって、炉心管10の外周部13に導電性の発熱体20が取り付けられている。誘導コイル21により発熱体20が発熱することで、炉心管10が加熱される。
【0023】
シールリング30は、円筒形状を有しており、炉心管10の両端それぞれに設けられている。シールリング30は例えばカーボンで形成されている。シールリング30の中心軸と、炉心管10の中心軸AXは一致している。シールリング30は、炉心管10の両端それぞれに対して脱着可能に設けられている。本実施形態のシールリング30は、炉心管10の第一端部11に設けられる第一シールリング31と、炉心管10の第二端部12に設けられる第二シールリング32と、を有する。以降、二つのシールリング31、32を区別しない場合は、各々をシールリング30と記載する。
【0024】
シールリング30の内径DSは、炉心管の内径DTよりも小さく、ガラス母材GのガラスパイプG1の外径よりも大きい。シールリング30の内径DSは、例えば75~180mmである。また長手方向において、シールリング30の長さLSは、例えば30~200mmである。
【0025】
ガス供給口40は、炉心管10の両端にそれぞれ設けられ、炉心管10の内部へ不活性ガスを供給するよう構成されている。不活性ガスは、例えば窒素ガスである。本実施形態のガス供給口40は、炉心管10の第一端部11に設けられた第一ガス供給口41と、炉心管10の第二端部12に設けられた第二ガス供給口42と、を有する。第一ガス供給口41は、第一シールリング31よりも炉心管10の中央に近い位置に、二つ設けられている。第二ガス供給口42は、第二シールリング32よりも炉心管10の中央に近い位置に、二つ設けられている。より詳細には、各第一ガス供給口41は、第一シールリング31と発熱体20の間に設けられている。各第二ガス供給口42は、第二シールリング32と発熱体20の間に設けられている。
【0026】
シャッター50は、円環形状を有しており、炉心管10の両端それぞれに設けられている。シャッター50は、炉心管10の第一端部11に設けられた第一シャッター51と、炉心管10の第二端部12に設けられた第二シャッター52と、を有する。以降、第一シャッター51と第二シャッター52を区別しない場合は、各々をシャッター50と記載する。
【0027】
シャッター50は、ガラス母材Gの外径に応じて開閉するよう構成されている。ガラス母材Gの中心軸AXに垂直な断面において、シャッター50は二つのアーチ部を有する。ガラス母材Gが炉心管10内で加熱されているとき、シャッター50は閉じられ、二つのアーチ部は互いに接触して一つの円環形状を形成する。一方、シャッター50が開いているとき、二つのアーチ部は離隔しており、このときガラス母材Gが炉心管10へ挿入され、あるいは炉心管10から取り出される。閉じている状態のシャッター50の内径は、ガラスパイプG1の外径よりも小さく、ダミーパイプG2の外径よりも大きく、例えば35~120mmである。
【0028】
(ガラス母材の製造方法)
次に、
図2から
図5を参照して、加熱装置1を用いた、ガラス母材Gの製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、加熱装置1の炉心管10へ、ガラス母材Gを収容する収容工程と、収容されたガラス母材Gを加熱する加熱工程と、加熱されたガラス母材Gを炉心管10から取り出す取出工程と、を備える。
【0029】
図2は、製造方法のうち収容工程を示す概要図である。
図2に示すように収容工程は、ガラス母材Gの軸方向の位置を固定させた状態で、加熱装置1をガラス母材Gに対して相対的に移動させることで、ガラス母材Gを加熱装置1の炉心管10へ挿入し、収容する。本実施形態の製造方法では、ガラス母材Gは、炉心管10の第一端部11から挿入される。このとき、第一シャッター51の二つのアーチ部はガラスパイプG1が通過できるよう互いに離隔している。さらに第一シールリング31の内径DSはガラスパイプG1の外径よりも大きい。このためガラス母材Gは第一端部11から炉心管10の内部へ挿入され得る。
【0030】
図3は、収容工程において、ガラス母材Gのテーパー部G3が第一シャッター51及び第一シールリング31を通過する状態を示す概要図である。
図3に示すように、第一シャッター51は、テーパー部G3が第一シャッター51を通過するとき、テーパー部G3の外径に応じて、二つのアーチ部が徐々に閉じるよう構成されている。こうすることで、テーパー部G3と第一シャッター51の空隙をより狭めることができる。
【0031】
さらに、ガラス母材Gの長手方向において、テーパー部G3の長さLTは第一シールリング31の長さLSよりも短い。このため、テーパー部G3が第一シールリング31を通過しているときは、常に端部G4と第一シールリング31の間の空隙が少なく、炉心管10への空気の侵入を抑制することができる。
【0032】
第一シャッター51が開いているときの第二ガス供給口42からのガス量は、第一シャッター51が閉じているときの第二ガス供給口42からのガス量と比較して多くなるよう、第二ガス供給口42から不活性ガスが供給される。第一シャッター51が開いていると、外部から第一シャッター51の開口を通って空気が炉心管10の内部へ侵入してしまうが、本実施形態では第二ガス供給口42から不活性ガスが多く供給されるため、このような空気の侵入を防ぐことができる。第一シャッター51が開いているときの第二ガス供給口42からのガス量は、例えば60L/分である。第一シャッター51が閉じているときの第二ガス供給口42からのガス量は、例えば30L/分である。テーパー部G3が第一シャッター51を通過し終えると、第一シャッター51の二つのアーチ部は互いに接触して、第一シャッター51は閉じる。
【0033】
図4は、製造方法のうち加熱工程を示す概要図である。
図4に示すように加熱工程では、第一シャッター51及び第二シャッター52はともに閉じている。この状態で、誘導コイル21に高周波電流が流れると、誘導コイル21の近傍に高周波磁束が発生する。この高周波磁束に反応して、発熱体20に誘導電圧が生じ、誘導電流が流れることでジュール熱が発生する。このような電磁誘導作用によって、発熱体20が加熱され、炉心管10も加熱される。炉心管10の内部は例えば2000℃まで昇温する。こうして炉心管10に収容されたガラス母材Gは加熱され、ガラス母材Gに加工が施される。加工の例として、例えば、ガラスパイプG1の内部にガラスロッドを挿入し、ガラスパイプG1とガラスロッドを加熱して一体化させる処理がある。
【0034】
図5は、製造方法のうち取出工程を示す概要図である。
図5に示すように取出工程は、加熱したガラス母材Gの軸方向の位置を固定させた状態で、加熱装置1を加熱したガラス母材Gに対して相対的に移動させることで、加熱したガラス母材Gを炉心管10から取り出す。本実施形態の製造方法では、ガラス母材Gは、炉心管10の第二端部12から取り出される。このとき、第二シャッター52の二つのアーチ部はテーパー部G3の外径に応じて徐々に開き、最終的にガラスパイプG1が通過するよう構成されている。また第二シールリング32の内径DSはガラスパイプG1の外径よりも大きい。このためガラス母材Gは第二端部12から取り出され得る。
【0035】
ガラス母材Gの長手方向において、テーパー部G3の長さLTは第二シールリング32の長さLSよりも短いため、炉心管10への空気の侵入を抑制することができる。また、第二シャッター52が開いているときの第一ガス供給口41からのガス量は、第二シャッター52が閉じているときの第一ガス供給口41からのガス量と比較して多くなるよう、第一ガス供給口41から不活性ガスが供給される。このため、炉心管10への空気の侵入をより抑制することができる。第二シャッター52が開いているときの第一ガス供給口41からのガス量は、例えば60L/分である。第二シャッター52が閉じているときの第一ガス供給口41からのガス量は、例えば30L/分である。
【0036】
以上説明したように、炉心管10は、炉心管10の内部へ空気が侵入すると、炉心管10の内部が酸化して劣化してしまうことがある。しかしながら本実施形態の加熱装置1では、シールリング30が炉心管10の両端それぞれに設けられ、シールリング30の内径DSが炉心管10の内径DTよりも小さい。このため、炉心管10の内部へ空気が侵入してしまうことを抑制することができる。その結果、炉心管10の劣化を防ぎ、炉心管10の使用期間を延ばすことができる。
【0037】
炉心管10の内部では、温度の高いガスが炉心管10の上部に溜まりやすく、温度の低いガスは炉心管10の下部に溜まりやすい。これに伴い、シールリング30の炉心管10の上部に近い部分では、シールリング30の炉心管10の下部に近い部分と比較して、劣化が進みやすい。本実施形態のシールリング30は炉心管10の中心軸AXに対して回転可能に設けられている。たとえシールリング30の上部が劣化してしまったとしても、シールリング30を中心軸AXに対して回転させることで、シールリング30の下部で上部を代用することができる。したがって一つのシールリング30全体を有効に使用して、その使用期間を延ばすことができる。
【0038】
シールリング30は炉心管10の両端それぞれに対して脱着可能に設けられている。このためシールリング30が劣化しても、シールリング30の交換作業が容易となる。また、ガラスパイプG1の外径に応じてシールリング30を容易に付け替えることができる。
【0039】
本実施形態のシャッター50は、シールリング30を挟んで、炉心管10の両端それぞれに設けられ、ガラスパイプG1及びテーパー部G3の外径に応じて開閉するよう構成されている。このため、炉心管10の内部への空気の侵入をより抑制することができ、炉心管10の劣化をより抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、第一シャッター51が開いているときの第二ガス供給口42からのガス量は、第一シャッター51が閉じているときのガス量と比較して多い。また、第二シャッター52が開いているときの第一ガス供給口41からのガス量は、第二シャッター52が閉じているときのガス量と比較して多い。このため、炉心管10への空気の侵入をより抑制することができ、炉心管10の劣化を抑制することができる。
【0041】
本実施形態では、ガラス母材Gの長手方向において、テーパー部G3の長さLTはシールリング30の長さLSよりも短い。このため、テーパー部G3がシールリング30を通過しているときは、常に端部G4とシールリング30の間の空隙が少なく、炉心管10への空気の侵入を抑制することができる。したがって炉心管10の劣化をより抑制することができる。
【0042】
なお本実施形態の炉心管10は誘導加熱炉であり、発熱体20が設けられているが、加熱方法は誘導式に限定されない。炉心管10を加熱するヒーターが炉心管10に直接的あるいは間接的に取り付けられてもよい。この場合、発熱体20を設ける必要は無い。
【0043】
本実施形態の製造方法では、ガラス母材Gの軸方向の位置が固定され、加熱装置1がガラス母材Gに対して相対的に移動したが、製造方法はこれに限らない。加熱装置1が固定され、ガラス母材Gが加熱装置1に対して相対的に移動してもよい。
【0044】
本実施形態の製造方法では、ガラス母材Gは第一端部11から炉心管10へ挿入され、第二端部12から取り出されたが、製造方法はこれに限らない。ガラス母材Gは第二端部12から炉心管10へ挿入され、第一端部11から取り出されてもよい。
【0045】
本実施形態のシールリング30の形状は円筒形状であるが、多角柱でもよい。また、シールリング30は、ガラス母材Gの中心軸AXに垂直な断面において、二つのアーチ部を有し、ガラス母材Gがシールリング30の内部を通過する際に開閉するよう構成されてもよい。シールリング30の各アーチ部は、シャッター50の各アーチ部と連動してもよいし、独立して開閉してもよい。
【0046】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:加熱装置
10:炉心管
11:第一端部
12:第二端部
13:外周部
20:発熱体
21:誘導コイル
30:シールリング
31:第一シールリング
32:第二シールリング
40:ガス供給口
41:第一ガス供給口
42:第二ガス供給口
50:シャッター
51:第一シャッター
52:第二シャッター
G:ガラス母材
G1:ガラスパイプ
G2:ダミーパイプ
G3:テーパー部
G4:端部
AX:中心軸
DS:シールリングの内径
DT:炉心管の内径
LS:シールリングの長さ
LT:テーパー部の長さ