(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022040
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B23P19/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125341
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩田 耕一郎
(57)【要約】
【課題】本発明は、変位センサを用いずにねじ浮き判定可能なねじ締め装置なねじ締め装置を提供する。
【解決手段】
ねじSの頭部を吸引保持可能な締結工具37を回転駆動させる回転駆動源33を有し、前記締結工具37を前記回転駆動源33に対して軸線方向に相対的に移動可能に構成されているドライバユニット30と、前記締結工具37の内圧を測定する圧力センサ51と、前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構20と、前記ドライバユニット30および前記位置制御機構20の駆動を制御する制御部40とを備え、前記制御部40は、前記締結工具37の内圧の変化およびドライバユニット30の位置に基づいてねじが着座しているか否かを判定することを特徴とするねじ締め装置10による。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじの頭部を吸引保持可能な締結工具を回転駆動させる回転駆動源を有し、前記締結工具を前記回転駆動源に対して軸線方向に相対的に移動可能に構成されているドライバユニットと、
前記締結工具の内圧を測定する圧力センサと、
前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構と、
前記ドライバユニットおよび前記位置制御機構の駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記締結工具の内圧の変化およびドライバユニットの位置に基づいてねじが着座しているか否かを判定することを特徴とするねじ締め装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ドライバユニットが所定の負圧解除位置に達した際に前記締結工具内部の負圧が解除されているか否かによってねじが着座しているか否かを判定していることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記締結工具の内圧が変化した際に前記ドライバユニットが負圧解除位置に達しているか否かによってねじが着座しているか否かを判定していることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
【請求項4】
前記締結工具がねじの頭部と嵌合可能なボックスビットであることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のねじ締め装置。
【請求項5】
前記締結工具がねじの頭部に形成された駆動穴と嵌合可能なドライバビットおよび当該ドライバビットを回転自在かつ軸方向相対移動可能に内包するとともに、ねじの頭部を吸引保持するスクリューガイドとからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のねじ締め装置。
【請求項6】
前記スクリューガイドが回転自在に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじをワークに締め付けるねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじをワークに締め付けるねじ締め装置として、特許文献1に開示するものが知られている。このねじ締め装置は、ねじと嵌合するドライバビットと、このドライバビットを内包するスクリューガイドと、スクリューガイドとドライバビットとの相対位置を検出可能な変位センサを備えている。このように変位センサを備えたねじ締めは、ねじ締結完了時、ワーク表面に当接させたスクリューガイドとねじの頭部と嵌合するドライバビットとの相対位置からワーク表面に対するねじの頭部の相対位置を算出可能となる。このようにワーク表面を基準としたねじの頭部の位置を算出することにより、締結時に付加されるねじ締め推力やドライバユニットの自重に起因したワークの撓みによる締結位置の変動に影響されることなくねじがワークに着座しているか否かを判定可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のねじ締め装置は、上述のようにスクリューガイドとドライバビットとの相対位置を検出可能な変位センサが必要であり、変位センサの分装置が高額になる等の問題があった。また、上述のねじ浮き判定は、スクリューガイドを用いないねじ締め装置には適用できず、例えば、ボックスビットでねじを締付けるねじ締め装置には、ねじ浮き判定できないという問題等もあった。
【0005】
そのため、本発明は、スクリューガイドとドライバビットとの相対位置を検出する変位センサを用いずにねじ浮き判定可能なねじ締め装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明は、ねじの頭部を吸引保持可能な締結工具を回転駆動させる回転駆動源を有し、前記締結工具を前記回転駆動源に対して軸線方向に相対的に移動可能に構成されているドライバユニットと、前記締結工具の内圧を測定する圧力センサと、前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構と、前記ドライバユニットおよび前記位置制御機構の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記締結工具の内圧の変化およびドライバユニットの位置に基づいてねじが着座しているか否かを判定することを特徴とする。なお、前記制御部は、前記ドライバユニットが所定の負圧解除位置に達した際に前記締結工具内部の負圧が解除されているか否かによってねじが着座しているか否かを判定している、あるいは前記締結工具の内圧が変化した際に前記ドライバユニットが負圧解除位置に達しているか否かによってねじが着座しているか否かを判定することがしていることが好ましい。また、前記締結工具がねじの頭部と嵌合可能なボックスビットであることが好ましい。さらに、前記締結工具がねじの頭部に形成された駆動穴と嵌合可能なドライバビットおよび当該ドライバビットを回転自在かつ軸方向相対移動可能に内包するとともに、ねじの頭部を吸引保持するスクリューガイドとからなることが好ましい。しかも、前記スクリューガイドが回転自在に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、前記締結工具の内圧の変化と、ドライバユニットの位置を基にねじ浮きを判定するため、スクリューガイドとドライバビットとの相対位置を検出する変位センサが不要となる。このため、装置が安価になるとともに変位センサを保持する部品等が必要無くねじ締め装置を軽量化できる等の利点がある。また、負圧発生手段でねじを吸着保持するねじ締め装置であれば、ボックスビットでねじを締付けるものであってもねじ浮き判定可能であるという利点もある。なお、ドライバユニットが負圧解除位置に達した際の締結工具の内圧からねじ浮き判定を行う場合、所定の負圧解除位置まで即座に移動させることができ、サイクルタイムが向上する等の利点も有する。一方、締結工具内部の圧力が変化した際のドライバユニットの位置からねじ浮き判定を行う場合、圧力変化した際の位置からねじ浮きしている寸法を算出可能等の利点も有する。さらに、前記締結工具がねじの頭部と嵌合可能なボックスビットである場合、ねじの頭部がボックスビットの通気穴を密閉でき、締結工具内部の負圧に維持できる。一方、ねじの頭部と当接可能なスクリューガイドが有している場合も同様にねじの頭部がスクリューガイドの下端開口部を密閉できるため、締結工具内部の負圧に維持できる。このようにねじによって締結工具が密閉されていることで、締結工具とねじとが離れた際の気圧変化が大きくなり、気圧圧力センサがねじと締結工具との離脱を検出し易くなる等の利点を有する。さらにスクリューガイドが回転可能であれば、ねじとスクリューガイドとが破損し難い等の利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るねじ締め装置の構造を示す側面図である。
【
図2】本発明に係るねじ締め装置のドライバユニットの構造を示す要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図3】本発明に係るねじ締め装置のねじ締め完了状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図で、(A)はねじ浮きが発生していない状態での要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(B)はねじ浮きが発生している状態での要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図4】
図3の状態から次の状態に移行した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図で、(A)はねじ浮きが発生していない状態での要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(B)はねじ浮きが発生している状態での要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図5】
図4の状態から次の状態に移行した状態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図で、(A)はねじ浮きが発生していない状態での要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(B)はねじ浮きが発生している状態での要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図6】本発明に係るねじ締め装置の第二の実施形態の動作を示す要部拡大一部切欠き断面側面図で、(A)はねじ浮きが発生していない状態での要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(B)はねじ浮きが発生している状態での要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図7】本発明にかかるねじ締め装置のねじ締め完了後の動作を示すフローチャートで有り、(a)は第一の実施形態でのフローチャートであり、(b)は第二の実施形態でのフローチャートである。
【
図8】本発明に係るねじ締め装置の第三の実施形態を示す要部拡大一部切欠き断面側面図で、(a)は待機状態での要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(b)はねじ締め完了状態の要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【
図9】本発明に係るねじ締め装置の第三の実施形態の動作を示す要部拡大一部切欠き断面側面図で、(A)はねじ浮きが発生していない状態での要部拡大一部切欠き断面側面図であり、(B)はねじ浮きが発生している状態での要部拡大一部切欠き断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1において10は、ワークWに締結部品の一例であるねじSを締結するねじ締め装置である。このねじ締め装置10は、位置制御機構の一例である多関節ロボット20と、この多関節ロボット20に支持されるドライバユニット30と、これら多関節ロボット20およびドライバユニット30の駆動を制御する制御部40とを有している。なお、ねじSは、六角柱形状の頭部と、頭部と一体に形成されたおねじ部とを有している。
【0010】
前記多関節ロボット20は、複数個の腕部21と、これら腕部21を接続する複数個の関節部22とを備えている。この関節部22には、当該関節部22を中心に腕部21を揺動させる腕部揺動駆動源(図示せず)および当該関節部22を中心に腕部21を回転させる腕部回転駆動源(図示せず)が設けられており、これら駆動源は、前記制御部40により制御されている。このため、多関節ロボット20が駆動すると、その先端に装着された前記ドライバユニット30の位置および向きを任意に移動させることが可能となる。
【0011】
前記ドライバユニット30は、
図2に示すように前記多関節ロボット20の先端に連結される連結プレート31を有しており、この連結プレート31には、中空筒状のハウジング32が固定されている。このハウジング32上には、回転駆動源の一例であるACサーボモータ33(以下、締結モータ33という)がその出力軸331をハウジング32内に挿入するよう固定されている。この締結モータ33の出力軸331には、一体に回転可能な軸継手34が連結されており、この軸継手34の下端には、挿入孔341が形成されている。この挿入孔341には、軸方向に延びる長孔342が交差しており、この長孔342には、これに沿って昇降自在に構成された連結ピン343が挿通されている。この連結ピン343には、前記軸継手34と一体に回転可能なビット軸35が吊下されているとともに、前記挿入孔341の底面とビット軸35との間にビット軸35を常時下方に付勢するクッションばね36が配置されている。このクッションばね36は、前記連結ピン343が長孔342の下端に常時当接するように付勢している一方、ビット軸35に上方向の押圧力が付加されることで撓み、ビット軸35および連結ピン343を前記軸継手34および締結モータ33に対して上昇させるように構成されている。
【0012】
また、前記ビット軸35の先端には、締結工具37の一例であるボックスビット371が装着されており、これらビット軸35およびボックスビット371には、軸方向に通気孔351が貫通している。ボックスビット371の下端には、通気孔351に連続して、ねじSの頭部と嵌合可能に構成された六角柱形状の嵌合部372が形成されている。この嵌合部372は、ねじSの頭部より若干大きく構成されており、ねじSの頭部がその内部で所定の角度回動可能に構成されている。
【0013】
さらに、前記ハウジング32には、外部のコンプレッサー等の負圧発生手段50に連続する吸気ホースとのホース継手321が装着されているとともに、前記ビット軸35には、前記ハウジング32内に収容される部分に通気孔351と交差する連通孔352が径方向に貫通形成されている。この連通孔352により、ハウジング32と通気孔351とが連通する。このため、負圧発生手段50が駆動すると前記ハウジング32に連通するビット軸35およびボックスビット371の内部が負圧となり、ボックスビット371の嵌合部372から吸気される。なお、前記負圧発生手段50は、気圧を測定する圧力センサ51を備えており、当該圧力センサ51により、前記ハウジング32や、ビット軸35およびボックスビット371の内圧を測定可能に構成されている。また、前記ハウジング32内には、前記ホース継手321およびビット軸35の連通孔352以外から空気が出入りしないよう各種部品の間にパッキン等のシール材が配置されており、これらシール材によってハウジング32の気密性が保持されている。
【0014】
前記制御部40には、前記多関節ロボット20やドライバユニット30の締結モータ33等の各種駆動源および、所定の供給位置までねじSを供給する供給装置(図示せず)や前記負圧発生手段50等の外部装置も接続されており、これら外部装置の駆動も制御可能に構成されている。また、制御部40は、前記多関節ロボット20からの信号を基にドライバユニット30の位置を算出可能に構成されている。
【0015】
また、制御部40は、ねじSの締結完了後に原点へ復帰する際、
図7の(a)に示すように、
S01:復帰信号の入力を待つ。
S02:多関節ロボット20に上昇指令を出力する。(もし締結過程で負圧発生手段50に駆動停止指令が出力されていた場合、負圧発生手段50に駆動指令を出力する。)
S03:多関節ロボット20の出力値からドライバユニット30の位置を確認する。
S04:ドライバユニット30が所定の負圧解除位置に到達しているか否かを確認し、到達していない場合はS03に戻る。
S05:圧力センサ51の出力値から内圧を確認する。
S06:負圧が解除されている場合、S8に進む。
S07:ねじ浮き検出信号を出力する。
S08:負圧発生手段50に駆動停止指令を出力する。
S09:多関節ロボット20の出力値からドライバユニット30の位置を確認する。
S10:ドライバユニット30が原点に到達しているか否かを確認し、到達していない場合はS09に戻る。
S11:多関節ロボット20に駆動停止指令を出力する。
S12:エンド。
と処理するように構成されている。
【0016】
次に上述のように構成されたねじ締め装置10の作用を説明する。
起動信号が入力されると、制御部40は、外部の供給装置を駆動させて所定の供給位置までねじSを供給するとともに、前記多関節ロボット20を駆動させて、ドライバユニット30を前記供給位置の上方に移動させる。ドライバユニット30が供給位置の上方に達すると、制御部40は、前記締結モータ33を駆動してビット軸35およびボックスビット371を低速で回転させるとともに前記ボックスビット371がねじSに当接するまでドライバユニット30を下降させる。これにより、ボックスビット371の下端がねじSと嵌合する。制御部40は、前記ビット軸35の回転開始と同時に前記負圧発生手段50を駆動させてボックスビット371の下端から吸気する。これにより、ボックスビット371は、その嵌合部372に嵌合したねじSを吸着保持する。
【0017】
上述のようにボックスビット371がねじSを吸着保持すると、当該ねじSの頭部上面によって前記通気孔351の下端が塞がれる。これにより、前記圧力センサ51は、通気孔351およびハウジング32内部が負圧になったことを検出して制御部40に負圧を検出したことを出力する。当該圧力センサ51からの信号を受けると、制御部40は、前記締結モータ33を停止させるとともに前記多関節ロボット20を駆動させてドライバユニット30をワークW上に移動させる。ドライバユニット30がワークWの上方の待機位置に達すると制御部40は、前記締結モータ33および多関節ロボット20を駆動させて、ビット軸35を高速かつ低トルクで回転させるとともにドライバユニット30を予め設定された締結位置まで下降させる。これにより、ねじSがワークWに当接する。この時、前記クッションばね36が撓み、当接による衝撃を吸収するため、ねじSおよびワークWの破損が防止される。その後、ねじSは、ボックスビット371の回転に従ってワークWに締結される。ねじSがワークWに着座して回転が停止すると、制御部40は、ビット軸35を低速かつ高トルクで再度回転させて適正な締付けトルクでねじSを本締めする。なお、このねじ締め動作中、ボックスビット371の嵌合部372と通気孔351との境界が前記ねじSの頭部により密閉されているため、前記圧力センサ51は強い負圧を検出している。
【0018】
上述のように締結モータ33が所定の適正トルクを出力すると、制御部40は、前記多関節ロボット20を駆動させてドライバユニット30を予め設定される負圧解除位置に向かい上昇させる。これにより、ドライバユニット30の締結モータ33およびハウジング32等が上昇する。この時、前記前記ボックスビット371は、前記連結ピン343が長孔342の下端に当接するまで上昇できないため、ねじSと嵌合した状態を維持することとなる。このため、嵌合部372と通気孔351との境界は、前記ねじSの頭部に密閉されたままとなり、ボックスビット371の内部の負圧が維持される。この時、前記ねじ締め過程において、
図3の(A)に示すようにねじSがワークWに正常に締結されている場合、ドライバユニット30が予め設定された負圧解除位置に達する直前に
図4の(A)に示すように前記連結ピン343が前記長孔342の下端に当接する。このため、負圧解除位置にドライバユニット30が到達すると、
図5の(A)に示すようにねじSの上面と嵌合部372の底面との間に空気が通過可能な隙間Gが発生して、ビット軸35およびボックスビット371内部の負圧が解除される。制御部40は、ドライバユニット30が負圧解除位置に到達した際にビット軸35およびボックスビット371内部の負圧が解除されていれば、ねじ浮きが発生していないと判断する。その後、前記負圧発生手段50を停止させるとともに多関節ロボット20を再駆動させて、ドライバユニット30を当初待機位置まで復帰させる。
【0019】
一方、前記ねじ締め過程において、
図3の(B)に示すようにねじ浮きが発生している場合、ボックスビット371がねじSとワークWとの隙間Fの分、上方に位置するため、ドライバユニット30が前記負圧解除位置に到達しても
図4の(B)に示すように前記連結ピン343が前記長孔342の下端と当接しない。このため、負圧解除位置にドライバユニット30が到達しても、
図5の(B)に示すようにねじSの上面が嵌合部372の底面と当接したままで、ビット軸35およびボックスビット371内部の負圧が維持される。制御部40は、ドライバユニット30が負圧解除位置に到達した際に、ビット軸35およびボックスビット371内部の負圧が解除されていなければ、ねじ浮きが発生したと判断する。その後、前記負圧発生手段50を停止させるとともに多関節ロボット20を再駆動させて、ドライバユニット30を当初待機位置まで復帰させる。このように、制御部40は、負圧解除位置での前記圧力センサ51からの信号を基にねじ浮きが発生しているか否かを検出可能となる。ドライバユニット30の復帰後、万一ねじ浮きが発生していれば、制御部40は、作業者等がねじ浮きの発生を知覚できるよう外部の表示装置(図示せず)等に発信する。
【0020】
上述のようにねじ締め装置10は、締結完了後にドライバユニット30を当初待機位置まで復帰させる途中でねじ浮き検出を行う構成であり、ねじ浮き検出時、
図5の(A)に示すようにクッションばね36の撓み量が0になるため、ボックスビット371の位置を正確に検出することが可能となる。これにより、従来の締結完了と同時にねじ浮き検出を行うねじ締め装置10とは異なり、ボックスビット371でねじSを締付けるねじ締め装置10においてもねじ浮き検出が可能となる。また、ドライバユニット30の復帰途中にねじ浮き検出を行うため、ねじ締め推力やドライバユニット30の自重等がワークWに付加されない。結果、ねじ浮き検出時にワークWが反ったり、撓んだりしないため、締結位置が把握可能となる。このように、ボックスビット371の位置およびワークWの締結位置を把握できるため、従来のねじ締め装置10のようにスクリューガイドとドライバビットとの相対位置を検出する変位センサを有さなくてもねじ浮き検出が可能となる。また、変位センサが不要となるため、装置が安価になるとともに変位センサを保持する部品等が必要無くねじ締め装置10の軽量化が可能となる。
【0021】
以下、第二の実施形態を説明する。
この第二の実施形態の基本構成は、上記ねじ締め装置10と同一であるが、ねじSの締結完了後に原点へ復帰する際、前記制御部40が
図7の(B)に示すように、
L01:復帰信号の入力を待つ。
L02:多関節ロボット20に上昇指令を出力する。(もし締結過程で負圧発生手段50に駆動停止指令が出力されていた場合、負圧発生手段50に駆動指令を出力する。)
L03:圧力センサ51の出力値から内圧を確認する。
L04:負圧が解除されている場合、L03に戻る。
L05:負圧発生手段50に駆動停止指令を出力するとともに、多関節ロボット20の出力値からドライバユニット30の位置を確認する。
L06:ドライバユニット30の位置が所定の負圧解除位置であるか確認し、負圧解除位置である場合はL08に進む。
L07:ねじ浮き検出信号を出力する。
L08:多関節ロボット20の出力値からドライバユニット30の位置を確認する。
L09:ドライバユニット30が原点に到達しているか否かを確認し、到達していない場合はL08に戻る。
L10:多関節ロボット20に駆動停止指令を出力する。
L11:エンド。
と処理するように構成されている。
【0022】
上述のように構成された第二の実施形態もねじSの締結完了後、制御後が、前記多関節ロボット20を駆動させてドライバユニット30を上昇させる。この上昇時、前記圧力センサ51が負圧の変化を検出すると制御部40は、多関節ロボット20の信号からドライバユニット30の位置を算出する。なお、
図3の(A)に示すようにねじSが正常に締結されている場合、圧力センサ51が負圧の変化を検出した時、ドライバユニット30は、
図6の(A)に示すように前記負圧解除位置とほぼ同じ位置に到達している。一方、
図3の(B)に示すようにねじ浮きが発生している場合、圧力センサ51が負圧の変化を検出した時、ドライバユニット30は、
図6の(B)に示すように前記負圧解除位置よりも上方に位置している。そして、このねじ浮きの有無によるドライバユニット30の変位Tは、ねじSとワークWとの隙間Fと同寸であるため、負圧に変化が生じた際のドライバユニット30の位置からねじSとワークWとの隙間Fを概算できる。その後、制御部40は、前記負圧発生手段50を停止させるとともに多関節ロボット20を再駆動させて、ドライバユニット30を当初待機位置まで復帰させる。
【0023】
以下、第三の実施形態を説明する。
この第三の実施形態は、頭部に駆動部が形成されたねじS′をワークWに締結するものであり、多関節ロボット20および制御部40は、前記ねじ締め装置10と同様に構成されている。このため、ドライバユニット30′についてのみ説明する。この第三の実施形態のドライバユニット30′は、
図8の(A)に示すように前記締結工具37が前記軸継手34に対して軸方向に相対移動可能なドライバビット373と、このドライバビット373を回転可能に内包するスクリューガイド374からなる。このスクリューガイド374は、前記ハウジング32の下端に軸方向摺動可能に取付けられており、ハウジング32を介して負圧発生手段50と連続するように構成されている。このため、前記負圧発生手段50が駆動すると、スクリューガイド374の内部が負圧となり、その下端開口部から吸気される。また、前記スクリューガイド374の下端開口部は、ねじS′の頭部上面と接触可能に構成されており、負圧発生手段50の駆動時、ねじS′を吸着保持可能に構成されている。さらに、前記ドライバユニット30′およびスクリューガイド374は、それぞれクッションばね36および付勢ばね361によって常時下方に付勢されており、それぞれ、クッションばね36および付勢ばね361の伸縮に従い、ハウジング32および締付モータ33に対して軸方向相対移動可能に構成されている。
【0024】
なお、第三の実施形態の制御部40は、ねじ締め時、
図8の(B)に示すようにドライバユニット30′を前記クッションばね36および付勢ばね361がそれぞれ撓み代を残すように設定された所定の締結位置まで下降させるように設定されている。また、前記クッションばね36は、ドライバユニット30′が前記締結位置まで下降し、付勢ばねが所定の寸法撓んだ時、前記締結モータ33が所定の締付けトルクを発揮しても前記ドライバビット373がねじS′の駆動穴からカムアウトしないために必要となる適正推力以上のばね荷重を発揮するように強度設定されている。
【0025】
上記第三の実施形態も
図8の(B)に示すようにねじS′の締結終了後、前記多関節ロボット20を駆動させてドライバユニット30′を当初待機位置に向かい上昇させる。この上昇時、制御部40は、
図7の(A)あるいは図(B)に示すように圧力センサ51から発信されるスクリューガイド374内部の負圧変化および多関節ロボット20から発信されるドライバユニット30′の位置を基にねじ浮き判定を行っている。このねじ浮き判定時、ねじS′が正常に締結されている場合、前記ねじ締め装置10と同様、
図9の(A)に示す予め設定された負圧解除位置でねじS′とスクリューガイド374とが外れて負圧が解除される。
【0026】
一方、ねじ浮きが発生している場合、
図9の(B)に示すように負圧解除位置より所定の寸法上方で負圧が解除される。この時、前記ねじ締め装置10と同様にねじ浮きの有無による負圧解除時のドライバユニット30′の変位Tは、ねじSとワークWとの隙間Fと同寸となる。このように圧力センサ51から発信されるスクリューガイド374内部の負圧変化および多関節ロボット20から発信されるドライバユニット30′の位置からねじ浮き判定を行うため、スクリューガイド374およびドライバビット373を用いたねじ締め装置10であっても問題なくねじ浮き判定可能となる。
【0027】
また、上記第三の実施形態は、上述のようにスクリューガイド374が回転可能に構成されているため、締結モータ33の駆動を受けてドライバビット373および当該ドライバビット373と嵌合するねじS′が回転する際、スクリューガイド374もねじS′との間に発生する摩擦により回転する。結果、ねじS′の頭部とスクリューガイド374が擦れて、接触部分が破損することを防止できる。また、ねじS′が擦れることでスクリューガイド374が振動して、ねじS′との間に通気可能な隙間Gを形成することが防止される。このようにスクリューガイド374がねじS′と一体に回転するため、負圧が維持され易くなり、検査精度が向上する等の利点がある。
【0028】
なお、本発明に係るねじ締め装置10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、多関節ロボット20は、位置制御機構の一例であり、ドライバユニット30を軸方向にのみ可動させる一軸の位置制御機構や、複数の方向に移動させることが可能な多軸の位置制御機構等、その他の位置制御機構であっても何ら問題ない。また、前記ボックスビット371およびドライバビット373は、締結するねじSに合わせて適宜交換されることが好ましく、ヘックスローブ形状や矩形等、他の形状であっても何ら問題ない。さらに、上記ねじ締め装置10は、供給装置に供給されたねじを所定の供給位置まで取りに行く構成であったが、これに限定されず、例えば、本出願人により開示された特願2018-079554号公報に詳述されているように締結工具37の軸線上に供給装置から圧送されたねじSを一旦保持可能なチャックユニットを備えるねじ締め装置であっても良い。
【0029】
また、負圧発生手段50は、ねじ締め過程においてねじSがワークWと螺合し始めた段階で停止していても良い。このように、ねじ締め完了時、負圧発生手段50が駆動していない場合、
図7のS2およびL2に示すようにねじ浮き検査過程で負圧発生手段50を再駆動させても良い。このようにねじ締め過程の途中で負圧発生手段50を停止させて、ねじ浮き検査時に負圧発生手段50を再駆動させることにより、負圧発生手段50の駆動時間が短縮されて、省エネ効果がある。また、ねじ浮き検査時に負圧発生手段50が稼働し、締結工具37の内部の負圧状態が維持されて高精度な検査が可能であるという利点がある。一方、負圧発生手段50を停止させたままでねじ浮き検査を行っても良い。このように負圧発生手段50が再駆動しなくてもねじSの頭部で締結工具37の下端開口部が封鎖されているため、ほとんど空気が入らない。よって、密閉状態はある程度維持され、問題なく検査可能である。また、ねじSと締付工具とが離れた瞬間、ねじSの締結箇所周辺の埃等を吸い込み難くなるため、メンテナンス頻度を減らせるという利点がある。
【符号の説明】
【0030】
10 … ねじ締め装置
20 … 多関節ロボット
21 … 腕部
22 … 関節部
30 … ドライバユニット
31 … 連結プレート
32 … ハウジング
321 … ホース継手
33 … 締結モータ
331 … 出力軸
34 … 軸継手
341 … 挿入孔
342 … 長孔
343 … 連結ピン
35 … ビット軸
351 … 通気孔
352 … 連通孔
36 … クッションばね
361 … 付勢ばね
37 … 締結工具
371 … ボックスビット
372 … 嵌合部
373 … ドライバビット
374 … スクリューガイド
40 … 制御部
50 … 負圧発生手段
51 … 圧力センサ
S … ねじ
W … ワーク