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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022041
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】表示装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240208BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20240208BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240208BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240208BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G09F9/33
G09F9/30 320
H01L33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125342
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
【テーマコード(参考)】
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA43
5C094AA44
5C094BA03
5C094BA23
5C094CA19
5C094DA15
5C094DB01
5C094EA04
5C094EC03
5C094GB10
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD16
5F142CD25
5F142CD44
5F142FA32
5F142FA34
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435EE12
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】LEDが配置された表示装置とその製造方法を提供すること。
【解決手段】この製造方法は、基材上に形成された少なくとも一つの無機発光ダイオードを第1のキャリア基板上に転置すること、弾性変形するように構成される複数のスペーサを、複数の副画素を含む画素が配置された基板上に配置すること、第1のキャリア基板上の少なくとも一つの無機発光ダイオードを基板上に転置することを含む。この製造方法は、複数のスペーサを除去することをさらに含んでもよい。
【選択図】図7C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された少なくとも一つの無機発光ダイオードを第1のキャリア基板上に転置すること、
弾性変形するように構成される複数のスペーサを、複数の副画素を含む画素が配置された基板上に配置すること、
前記第1のキャリア基板上の前記少なくとも一つの無機発光ダイオードを前記基板上に転置することを含む、表示装置の製造方法。
【請求項2】
基材上に形成された少なくとも一つの無機発光ダイオードを第1のキャリア基板上に転置すること、
前記第1のキャリア基板上の前記少なくとも一つの無機発光ダイオードを第2のキャリア基板上に転置すること、
弾性変形するように構成される複数のスペーサを、複数の副画素を含む画素が配置された基板上に配置すること、
前記第2のキャリア基板上の前記少なくとも一つの無機発光ダイオードを前記基板上に転置することを含む、表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1のキャリア基板上の前記少なくとも一つの無機発光ダイオードの前記基板上への転置は、
前記画素と前記少なくとも一つの無機発光ダイオードが前記第1のキャリア基板と前記基板の間に挟まれ、前記複数のスペーサの少なくとも一つが変形し、かつ、前記少なくとも一つの無機発光ダイオードが前記複数の副画素の一つに電気的に接続されるように、前記第1のキャリア基板と前記基板を互いに押し付けること、および
前記第1のキャリア基板を除去して前記少なくとも一つの無機発光ダイオードを前記基板上に残存させることによって行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2のキャリア基板上の前記少なくとも一つの無機発光ダイオードの前記基板上への転置は、
前記画素と前記少なくとも一つの無機発光ダイオードが前記第2のキャリア基板と前記基板の間に挟まれ、前記複数のスペーサの少なくとも一つが変形し、かつ、前記少なくとも一つの無機発光ダイオードが前記複数の副画素の一つに電気的に接続されるように、前記第2のキャリア基板と前記基板を互いに押し付けること、および
前記第2のキャリア基板を除去して前記少なくとも一つの無機発光ダイオードを前記基板上に残存させることを含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数のスペーサを除去することをさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記複数のスペーサの前記配置は、前記複数のスペーサを前記基板上に散布することで行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記複数のスペーサは、フォトリソグラフィまたは転写法によって形成される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記複数のスペーサは、それぞれ球形状を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記複数のスペーサは、それぞれ柱状形状を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの無機発光ダイオードは、前記基板上に区画される表示領域内に配置される複数の無機発光ダイオードを含み、
前記複数のスペーサは、前記表示領域外に配置される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記複数のスペーサは、一定のピッチで配置される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項12】
前記複数のスペーサの少なくとも一つは、前記画素内に配置される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの無機発光ダイオードは複数の無機発光ダイオードを含み、
前記複数の無機発光ダイオードの少なくとも一つは、前記複数の無機発光ダイオードの他の少なくとも一つと高さが異なる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項14】
複数の副画素を含む画素が配置された基板、および
前記基板上に配置され、かつ、弾性変形するように構成される複数のスペーサを備え、
前記複数の副画素の各々は、
画素電極、
前記画素電極の端部を覆う保護絶縁膜、および
前記画素電極上に位置し、前記画素電極に電気的に接続される無機発光ダイオードを有する表示装置。
【請求項15】
前記複数のスペーサは、それぞれ球形状を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項16】
前記複数のスペーサは、それぞれ柱状形状を有する、請求項14に記載の表示装置。
【請求項17】
前記少なくとも一つの無機発光ダイオードは、前記基板上に区画される表示領域内に配置される複数の無機発光ダイオードを含み、
前記複数のスペーサは、前記表示領域外に配置される、請求項14に記載の表示装置。
【請求項18】
前記複数のスペーサは、一定のピッチで配置される、請求項14に記載の表示装置。
【請求項19】
前記複数のスペーサの少なくとも一つは、前記画素内に配置される、請求項14に記載の表示装置。
【請求項20】
前記少なくとも一つの無機発光ダイオードは複数の無機発光ダイオードを含み、
前記複数の無機発光ダイオードの少なくとも一つは、前記複数の無機発光ダイオードの他の少なくとも一つと高さが異なる、請求項14に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、表示装置とその製造方法に関する。例えば、本発明の実施形態の一つは、無機発光ダイオードを発光素子として用いる表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マトリクス状に配列された画素内に無機発光ダイオード(LED)を配置した表示装置の開発が進められている。LEDは、ガリウムやインジウム、ヒ素、亜鉛、セレンなどの第12、13、15族元素などを含む無機化合物を発光体として用いるため、有機発光ダイオード(有機電界発光素子)と比較すると高い信頼性を示し、また、高輝度で高効率な発光が可能である。このような理由から、LEDを有する表示装置(LEDディスプレイ)は高輝度で高コントラストな画像を提供可能な高信頼性ディスプレイとして期待されている(特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-163945号公報
【特許文献2】特開2021-5632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、新しい構造を有する表示装置とその製造方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、LEDが配置された表示装置とその製造方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、LEDが配置された表示装置を低コストで製造する方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、表示装置の製造方法である。この製造方法は、基材上に形成された少なくとも一つの無機発光ダイオードを第1のキャリア基板上に転置すること、弾性変形するように構成される複数のスペーサを、複数の副画素を含む画素が配置された基板上に配置すること、第1のキャリア基板上の少なくとも一つの無機発光ダイオードを基板上に転置することを含む。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、表示装置の製造方法である。この製造方法は、基材上に形成された少なくとも一つの無機発光ダイオードを第1のキャリア基板上に転置すること、第1のキャリア基板上の少なくとも一つの無機発光ダイオードを第2のキャリア基板上に転置すること、弾性変形するように構成される複数のスペーサを、複数の副画素を含む画素が配置された基板上に配置すること、第2のキャリア基板上の少なくとも一つの無機発光ダイオードを基板上に転置することを含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、表示装置である。この表示装置は、複数の副画素を含む画素が配置された基板、および基板上に配置され、弾性変形するように構成される複数のスペーサを備える。複数の副画素の各々は、画素電極、画素電極の端部を覆う保護絶縁膜、および画素電極上に位置し、画素電極に電気的に接続される無機発光ダイオードを有する。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、表示装置である。この表示装置は、複数の副画素を含む画素が配置された基板を備える。複数の副画素の各々は、画素電極、画素電極の端部を覆う保護絶縁膜、および画素電極上に位置し、画素電極に電気的に接続される無機発光ダイオードを有する。保護絶縁膜は、上面に凹部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る表示装置の模式的上面図。
図2A】本発明の実施形態に係る表示装置の画素の模式的上面図。
図2B】本発明の実施形態に係る表示装置の画素の模式的上面図。
図2C】本発明の実施形態に係る表示装置の画素の模式的上面図。
図3A】本発明の実施形態に係る表示装置の副画素の模式的端面図。
図3B】本発明の実施形態に係る表示装置の副画素の模式的端面図。
図4A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図4B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図4C】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図5A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図5B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図6A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図6B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図7A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図7B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図7C】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図8】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的上面図。
図9A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法で使用されるスペーサの模式的斜視図。
図9B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法で使用されるスペーサの模式的斜視図。
図9C】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法で使用されるスペーサの模式的斜視図。
図10A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的上面図。
図10B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的上面図。
図11】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的上面図。
図12A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図12B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図12C】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図13A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図13B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図14A】本発明の実施形態に係る表示装置の画素の一部の模式的端面図。
図14B】本発明の実施形態に係る表示装置の画素の一部の模式的上面図。
図15A】従来の表示装置の作製方法を示す模式的端面図。
図15B】従来の表示装置の作製方法を示す模式的端面図。
図15C】従来の表示装置の作製方法を示す模式的端面図。
図16A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図16B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図16C】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図17A】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図17B】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図17C】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
図18】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を示す模式的端面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。同一、あるいは類似する複数の構造を総じて表す際にはこの符号が用いられ、これらを個々に表す際には符号の後にハイフンと自然数が加えられる。また、一つの構造の一部を示す際には、符号の後に小文字のアルファベットを付すことがある。
【0012】
本明細書および請求項において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出する」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。また、この表現で表される態様は、ある構造体が他の構造体と接していない態様も含む。
【0014】
以下、本発明の実施形態の一つである表示装置とその製造方法について説明する。この表示装置はLEDディスプレイであり、以下に説明するように、各画素に複数のLEDが搭載される。
【0015】
1.表示装置の全体構造
図1に表示装置100の模式的上面図を示す。表示装置100は基板102を備え、基板102上にはパターニングされた種々の絶縁物、導電体、半導体の薄膜が積層され、これにより、複数の画素104、駆動回路(走査線駆動回路106、信号線駆動回路108)、これらを電気的に接続する種々の配線(図示しない)などが形成される。複数の画素104はマトリクス状に配置される。全ての画素104を囲む単一の領域が表示領域であり、表示領域の外側は周辺領域または額縁領域と呼ばれる。駆動回路からは複数の配線が基板102の一辺へ延伸し、基板102の端部で露出して複数の端子(図示しない)を形成する。複数の端子はフレキシブル回路(FPC)基板などのコネクタ110と電気的に接続され、これにより、図示しない外部回路からコネクタ110を介して電源や種々の信号が駆動回路に供給される。なお、信号線駆動回路108に替わり、あるいは信号線駆動回路108とともに、半導体基板上に形成された集積回路を備える駆動IC112を基板102またはコネクタ110上に搭載してもよい。
【0016】
複数の画素104はそれぞれ走査線駆動回路106と信号線駆動回路108に接続される。走査線駆動回路106と信号線駆動回路108は、外部回路から供給された信号に基づいて映像を表示するための信号(映像信号、ゲート信号、初期化信号など)を生成し、電源と共に複数の画素104へ供給する。これにより、複数の画素104が制御され、表示領域上に映像を表示することができる。
【0017】
2.画素の構造
一つの画素104の模式的上面図を図2Aに示す。図2Aに示すように、各画素104は複数の副画素103を有する。典型的には、三原色である赤色、緑色、青色をそれぞれ与える三つの副画素103によって各画素104が構成される。各副画素103にはLED120が配置される。例えば、三つの副画素103にそれぞれ赤色発光、緑色発光、および青色発光のLED120-1、120-2、120-3を配置することができる。本明細書では、副画素103とは、一つのLED120を含み、色情報を与える最小単位である。画素104とは、異なる発光色を示す副画素103をすべて含み、かつ、最少の副画素103を囲む四角形の領域を示す。
【0018】
各画素104内における副画素103の配置は任意であり、例えば図2A図2Cに示すように、一つの行に複数のLED120を設け、他の行に一つのLED120を配置してもよい。あるいは、一つの行に全てのLED120を配置してもよい(図2B)。各画素104に設けられる複数のLED120大きさ(面積)や高さも任意に設定すればよい。すなわち、各画素104において、全てのLED120は同一の大きさと高さを有してもよく、あるいは少なくとも一つのLED120が他の少なくとも一つのLEDと大きさまたは高さが異なってもよい。LED120の面積は、例えば1.0×10μm以上1.0×10μm以下、2.0×10μm以上5.0×10μm以下、あるいは1.0×10μm以上2.5×10μm以下から選択すればよい。一例として大きさが15μm×30μm程度の所謂マイクロLEDを用いることができる。
【0019】
各副画素103には、駆動回路から供給される信号によって動作してLED120を制御するための画素回路が設けられる。画素回路の構成は任意に決定すればよく、一つまたは複数のトランジスタと一つまたは複数の容量素子などを適宜組み合わせて画素回路が形成される。
【0020】
副画素103の一例を図3Aの模式的端面図に示す。図3Aでは、一つのトランジスタ140だけが示されているが、上述したように、各画素回路は複数のトランジスタを含んでもよく、さらに一つまたは複数の容量素子を含んでもよい。トランジスタ140を含む画素回路は、基板102上に直接または任意の構成であるアンダーコート114を介して設けられる。図3Aに示すトランジスタ140は、第1のゲート電極142、第1のゲート電極142上の第1のゲート絶縁膜144、第1のゲート絶縁膜144上の半導体膜146、半導体膜146上の第2のゲート絶縁膜148、第2のゲート絶縁膜148上の第2のゲート電極150、第2のゲート電極150や第2のゲート絶縁膜148を覆う層間膜152、第2のゲート絶縁膜148と層間膜152に設けられる開口を介して半導体膜146と電気的に接続する第1の端子154と第2の端子156などによって構成される。トランジスタ140は半導体膜146を挟む二つのゲート電極を有するが、トランジスタ140の構成も任意に決定すればよく、例えばボトムゲート型トランジスタまたはトップゲート型トランジスタでもよい。
【0021】
副画素103は、第1の端子154と第2の端子156上の平坦化膜158、平坦化膜158に設けられる開口を介して第2の端子156と電気的に接続される画素電極160、平坦化膜158上に設けられ、一定電位が供給される共通電極162、画素電極160と共通電極162の端部を覆う保護絶縁膜164をさらに有してもよい。
【0022】
これらの構成は公知の材料と成膜方法を適宜適用して形成することができる。例えば、基板102としては、ガラス基板、石英基板、ステンレスやアルミニウムなどの金属を含む基板、またはポリイミドやポリカーボネート、ポリエステルなどの高分子材料を含む基板などを使用することができる。基板102は可撓性を有してもよい。アンダーコート114、第1のゲート絶縁膜144、第2のゲート絶縁膜148、層間膜152、保護絶縁膜164などは、それぞれ化学気相堆積(CVD)法やスパッタリング法などを用い、酸化ケイ素や窒化ケイ素などのケイ素含有無機化合物を含む一つまたは複数の層で構成すればよい。あるいは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機化合物を含む一つまたは複数の層でこれらの膜を形成してもよい。第1のゲート電極142、第2のゲート電極150、第1の端子154、第2の端子156、画素電極160、共通電極162は、CVD法やスパッタリング法などを用い、タンタルやモリブデン、タングステン、クロム、ハフニウム、チタン、アルミニウム、銅などの金属を含むように構成すればよい。平坦化膜158は、例えばポリイミドやポリアミド、ポリシロキサン、アクリル樹脂などの高分子材料を用いて形成すればよい。層間膜152も高分子材料を用いて形成してもよい。半導体膜146もCVD法またはスパッタリング法を適用して形成される。半導体膜146は、シリコンまたは酸化亜鉛、インジウム-ガリウム酸化物、インジウム-ガリウム-酸化物などの酸化物半導体を含むように構成される。なお、基板102から保護絶縁膜164までを含む構成は、アレイ基板、バックプレーン基板(図中、BPと示す)などとも呼ばれる。以下の説明では、基板102から保護絶縁膜164までを含む構成をバックプレーン基板と呼ぶ。
【0023】
バックプレーン基板上には、LED120が設けられる。LED120は、例えばp型クラッド層126、活性層(発光層)128、およびn型クラッド層130を含む積層体を含むことができ、p型クラッド層126とn型クラッド層130にはそれぞれ陽極122と陰極124が電気的に接続される。共通電極162と画素電極160上には、導電性を有する接着剤としてバンプ166が形成され、バンプ166を介してLED120の陽極122と陰極124がそれぞれ共通電極162と画素電極160に電気的に接続される。バンプ166は、例えば銀やスズなどの金属を含む合金である。図示しないが、LED120は、n型クラッド層130の上(p型クラッド層126とは反対側の面)にバッファ層を備えてもよい。
【0024】
p型クラッド層126、活性層128、およびn型クラッド層130は、それぞれ無機半導体を含む一つまたは複数の機能層で構成される。無機半導体としては、例えば、第13族元素と第15族元素を含む化合物が挙げられる。より具体的には、アルミニウム、ガリウム、および/またはインジウム、ならびに窒素、リン、および/またはヒ素を含む化合物半導体が挙げられる。典型的には、ガリウム系材料が挙げられる。例えば、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)などの窒化ガリウム系材料、リン化ガリウム(GaP)、アルミニウムインジウムガリウムリン(AlGaInP)などのリン化ガリウム系材料が例示される。各機能層にはドーパントがさらに含まれてもよい。ドーパントとしては、ケイ素やゲルマニウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、ベリリウムなどの元素が挙げられる。これらの元素を添加することで、各機能層の価電子制御が可能となり、真性(i型)を維持するだけでなく、バンドギャップの制御、p型またはn型の導電性の付与などが可能となる。活性層128は、単層構造でもよく、あるいは量子井戸構造を有してもよい。量子井戸構造とは、バンドギャップが異なり、1から5nm程度の厚さを有する複数の薄膜を交互に積層した構造であり、例えばInGaNとGaNの交互積層体、GaInAsPとInPの交互積層体、AlInAsとInGaAsの交互積層体などが例示される。
【0025】
図3Aに示すLED120は、一方の側に陽極122と陰極124が設けられるが、LED120は必ずしもこのような構造を有する必要は無い。例えば、図3Bに示すように、p型クラッド層126、活性層128、n型クラッド層130が陽極122と陰極124によって挟持された構造を有するLED120を用いてもよい。この場合、図示しない配線によって陽極122に一定電位が供給される。
【0026】
3.表示装置の製造方法
表示装置100は、バックプレーン基板上にLED120を配置し、LED120を画素電極160と共通電極162に電気的に接続することで製造される。以下、具体的な説明を図4Aから図13Bを用いて説明する。これらの図では、LED120やバックプレーン基板の詳細な構成は図示されないことがある。なお、画素回路が設けられた基板102を含むバックプレーン基板は、公知の材料や方法を適用して形成することができるので、説明は省略する。
【0027】
(1)LEDの作製
LED120は公知の方法によって作製することができるので詳細な説明は割愛するが、例えば図4Aに示すように、単結晶シリコン基板、サファイア基板などの基材170上に化合物半導体の膜をエピタキシャル成長させてn型クラッド層130、活性層128、p型クラッド層126を形成する。その後、n型クラッド層130とp型クラッド層126上にそれぞれ陰極124と陽極122を形成することで、一つの基材170上に複数のLED120を形成することができる。
【0028】
(2)LEDのキャリア基板への転置
ア 一回目の転置
LED120の作製後、基材170上のLED120をバックプレーン基板に転置する。具体的には、まず、基材170上に第1のキャリア基板172を貼り合わせる(図4B)。第1のキャリア基板172は、ダイシングフィルムまたはダイシングシートとも呼ばれ、ベース層176と粘着層174を含むことができる。ベース層176は、石英基板やガラス基板、あるいはステンレス基板などの金属基板に例示される可撓性の低い基板でもよく、あるいはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、ポリノルボルネンを基本骨格に含むシクロオレフィンポリマー、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体などを含む可撓性を有する基板(フィルム)でもよい。一方、粘着層174は、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアクリロニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどを含むことができる。より具体的には、粘着層174は、スチレン・ブタジエンゴム、イソブチエン・イソプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムのほか、シリコーンゴムや天然ゴムを含むことができる。粘着層174は、水溶性の接着剤でもよい。
【0029】
その後、基材170を透過し、n型クラッド層130に吸収される波長を有する光を基材170側から照射する(図4B)。例えば、200nmから370nmの範囲から選択される波長を有するレーザを照射する。レーザとしては、パルス発振の高密度KrFエキシマレーザ、NdイオンなどがドープされたYAGレーザなどを利用することができる。n型クラッド層130が光を吸収して発熱すると一部が分解して気化し、その結果、n型クラッド層130と基材170間の接着力が低下する。このため、LED120を第1のキャリア基板172上に残存させたまま基材170を除去することができる(図4C)。
【0030】
基材170から第1のキャリア基板172上にLED120を転置すると、基材170上のLED120の配置がそのまま第1のキャリア基板172上で再現される。この配置は、バックプレーン基板上におけるLED120の配置とは異なる場合がある。より具体的には、バックプレーン基板上において隣接するLED120間の距離(あるいは、LED120のピッチ)が基材170上におけるそれと異なる場合がある。このため、バックプレーン基板上で要求されるLED120の配置に適合するように、第1のキャリア基板172を適宜引き伸ばし、隣接するLED120間の距離を調節してもよい。
【0031】
イ 二回目の転置
LED120の陽極122と陰極124が同じ側に設けられる場合(図3A参照。)、LED120を基材170から第1のキャリア基板172に転置すると、陽極122と陰極124が第1のキャリア基板172側に位置する。このため、第1のキャリア基板172上に転置されたLED120を直接バックプレーン基板へ転置すると、LED120をバックプレーン基板と電気的に接続することができない。
【0032】
そこで、この場合には二回目の転置を行う。具体的には、図5Aに示すように、ベース層180と粘着層182を備える第2のキャリア基板178を、粘着層182とLED120が第1のキャリア基板172と第2のキャリア基板178で挟持されるように第1のキャリア基板172に貼り合わせる。その後、第2のキャリア基板178上にLED120を残存させるように第1のキャリア基板172を除去することで、第2のキャリア基板178上にLED120を転置する(図5B)。
【0033】
ベース層180は、第1のキャリア基板172のベース層176で使用可能な材料を含むことができる。粘着層182も第1のキャリア基板172の粘着層174で使用可能な材料を含んでもよいが、LED120を選択的に第2のキャリア基板178上に残存させるため、粘着層182は、粘着層174よりもより強固にLED120と接着するようにその材料を選択することが好ましい。あるいは、第1のキャリア基板172または第2のキャリア基板178側から光(例えば、400nm以上3000nmの範囲に波長を有する光またはレーザ)を照射して陽極122と陰極124を加熱し、これらに接する粘着層174の一部を分解することで、粘着層174の接着力を低減させてもよい。あるいは、粘着層174に水溶性の接着剤を用い、水を用いてその接着力を低減させることで、転置を行ってもよい。なお、LED120間の距離の調節は、第2のキャリア基板178を延伸することで行ってもよい。
【0034】
通常、一つの基材170には同一構造の複数のLED120が形成される。すなわち、一つの基材170には同色の発光を与えるLED120が形成される。したがって、赤色、緑色、青色の発光色のLED120-1から120-3が形成された三つの基材170からそれぞれ三つの第1のキャリア基板172にLED120を転写する(図6A)。その後、三つの第1のキャリア基板172上のLED120を一つの第2のキャリア基板178に転置し、赤色、緑色、青色の発光色のLED120-1から120-3を第2のキャリア基板178上に転置してもよい(図6B)。
【0035】
(3)スペーサの配置
引き続き、画素電極160と共通電極162上にバンプ166を形成する。バンプ166は、画素電極160と共通電極162の保護絶縁膜164から露出した部分に形成される。その後、第2のキャリア基板178上に転置されたLED120をバックプレーン基板上に転置する。この時、LED120の転置をより確実に行うため、バックプレーン基板上に複数のスペーサ184を配置する(図7A)。すなわち、保護絶縁膜164(図3A参照。)上に、保護絶縁膜164と接する複数のスペーサ184を配置する。スペーサ184は弾性変形可能なように構成される。したがって、スペーサ184は、例えばスチレン・ブタジエンゴム、イソブチエン・イソプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、天然ゴムなどの弾性体を含む。
【0036】
スペーサ184は、LED120からの発光をできるだけ反射しないよう、可視光を透過する、または吸収するように構成すればよい。後者の場合には、上述した材料を含むスペーサ184の表面を黒色の樹脂あるいはクロムなどの反射率の低い金属膜でコーティングすればよい。
【0037】
スペーサ184の好ましい形状の一つは、球形状である。この場合、スペーサ184の形状は、平均円形度が80以上になるように調整してもよい。球形状を有するようにスペーサ184を形成することで、スペーサ184は、その回転に依存せず、バックプレーン基板上でほぼ同一の高さを有することができる。ここで、円形度とは、スペーサ184を顕微鏡観察して得られる画像を解析し、複数のスペーサ184について円形度を求め、それを平均した値である。円形度としては、例えば顕微鏡像中の各スペーサ184の投影面の周囲長で投影面の面積と等しい面積の円の周囲長を除した値を用いることができる。スペーサ184の直径は、転置するLED120の高さとバンプ166の高さの総和より大きく、その差は0.5μm以上5μm以下が好ましい。具体的には、スペーサ184の直径は3μm以上20μm以下の範囲で調整すればよい。
【0038】
球状のスペーサ184は、粉体状のスペーサ184を直接散布してもよく、あるいは水、またはエタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などの液体中にスペーサ184が分散した分散液をバックプレーン基板に滴下、散布、または塗布してもよい。スペーサ184は、図8に模式的に示すように、バックプレーン基板上にランダムに配置してもよい。また、表示領域または画素104内に一部が存在するように散布してもよい。なお、スペーサ184は、画素電極160や共通電極162と重ならないように配置される。スペーサ184が画素電極160や共通電極162と重なった場合には、例えばバックプレーン基板に振動を与えてスペーサ184を画素電極160や共通電極162から離れた位置に移動させればよい。
【0039】
スペーサ184の他の好ましい形状は、柱状形状である。例えば図9Aから図9Cに示すように、スペーサ184は円柱形状や多角柱形状を有してもよく、また、基板102に近づくにつれて断面積(基板102の平行な面における面積)が大きくなるように構成してもよい。図示しないが、スペーサ184は楕円柱状の形状を有してもよい。柱状形状のスペーサ184は、その高さがLED120の高さとバンプ166の高さの総和より大きく、その差が0.5μm以上5μm以下となるように形成することが好ましい。具体的には、スペーサ184の高さは、3μm以上20μm以下の範囲で調整すればよい。
【0040】
柱状形状のスペーサ184を設ける場合、スペーサ184の好ましい作製方法の一つがフォトリソグラフィである。これは、柱状形状のスペーサ184は、球状のスペーサ184と異なり、バックプレーン基板(あるいは、保護絶縁膜164)上で延伸する角度に依存して高さが異なるためであり、フォトリソグラフィを用いてスペーサ184を形成することにより、高さが一定のスペーサ184を形成することができるためである。具体的には、フォトレジストを保護絶縁膜164に形成し、その後、フォトマスクを介した露光、現像を行うことで柱状形状のスペーサ184を形成することができる。このため、フォトレジストを適宜設計することで、スペーサ184を精度よく保護絶縁膜164に配置・固定することができる。また、一定のピッチでスペーサ184を配置することができる。例えば図10Aに示すように、全ての画素104を囲むようにスペーサ184を表示領域の外側に選択的に設けてもよい。あるいは、各画素104を囲むように複数のスペーサ184を配置してもよい(図10B)。あるいは、図11に示すように、各画素104に一つまたは複数のスペーサ184を選択的に配置してもよい。
【0041】
柱状形状のスペーサ184の好ましい作製方法の他の一つとして、転写法も挙げられる。この方法では、まず、ベース層192、光熱変換層190、および転写層188が積層されたスペーサ転写基板186をバックプレーン基板上に配置する(図12A)。ベース層192は、例えばガラスや石英などを含む。光熱変換層190は、光が照射されると熱を発生する層であり、例えばカーボンブラックがポリエステルやポリカーボネートなどの高分子材料中に分散した膜を使用することができる。転写層188は、上述したスペーサ184に含まれる材料で構成される。その後、スペーサ184を形成する領域に光、例えば、YAGレーザ、Ndレーザ、COレーザなどのレーザを照射する(図12B)。これにより、レーザが照射された領域において光熱変換層190が選択的に加熱される。この熱によって転写層188が溶融してバックプレーン基板上に転写され、スペーサ184を与えることができる。転写法を利用することにより、一定のピッチでスペーサ184を配置することも可能である。
【0042】
(4)LEDのバックプレーン基板への転置
スペーサ184を配置した後、バックプレーン基板と第2のキャリア基板178を貼り合わせる(図7B図7C)。具体的には、基板102上に設けられる画素および第2のキャリア基板178上のLED120が基板102と第2のキャリア基板178の間に挟まれるよう、基板102と第2のキャリア基板178を互いに押し付ける。この時、基板102と第2のキャリア基板178は、図示しない一対ステージに挟まれて圧力が印加されるので、基板102および/または第2のキャリア基板178のベース層180が可撓性を有する場合には、十分な剛性を有する補助基板(図示しない)をそれぞれ基板102の下および/または第2のキャリア基板178上に配置し、その後、貼り合わせを行ってもよい。貼り合わせの際、LED120の陽極122と陰極124がそれぞれ共通電極162と画素電極160に電気的に接続されるように、バックプレーン基板と第2のキャリア基板178のアライメントが行われる。
【0043】
さらに、貼り合わせにおいては、弾性変形可能なスペーサ184が変形するよう、基板102と第2のキャリア基板178に対して圧力が加えられる(図7C)。したがって、例えば球状のスペーサ184を用いた場合、貼り合わせ時にはスペーサ184は楕円球の形状へ変形する。また、バンプ166を介して陽極122と陰極124がそれぞれ共通電極162と画素電極160と確実に電気的に接続されるよう、第2のキャリア基板178側から光(例えば、400nm以上3000nmの範囲に波長を有する光またはレーザ)を照射して陽極122と陰極124を加熱し、この熱によってバンプ166の一部または全体を溶融してもよい。バンプ166が再度凝固することで、陽極122と共通電極162、および陰極124と画素電極160が強固に固定される。
【0044】
その後、第2のキャリア基板178を除去し、LED120を選択的にバックプレーン基板上に残存させることで、表示装置100を製造することができる(図13A)。なお、スペーサ184はバックプレーン基板上に残存させてもよい。この場合、表示装置100は、保護絶縁膜164上に保護絶縁膜164と接するスペーサ184を備える。
【0045】
球状のスペーサ184をバックプレーン基板上に散布して配置する場合には、水またはアルコール系の有機溶媒などを用いる洗浄工程によってスペーサ184を除去してもよい(図13B)。この場合には、貼り合わせ時にスペーサ184に印加された圧力により、保護絶縁膜164が変形することがある。したがって、図3の点線円で囲まれた領域の模式的端面図(図14A)、および対応する模式的上面図(図14B)に示すように、保護絶縁膜164はスペーサ184に起因する凹部164aを有してもよい。凹部164aの平面形状は、例えば円である。
【0046】
LED120の転置では、陽極122と共通電極162、および陰極124と画素電極160を確実に電気的に接続する必要がある。しかしながら、バックプレーン基板に含まれる基板102の厚さには面内でばらつきが存在することがあり、また、バンプ166を一定の高さで形成することも必ずしも容易ではない。さらに、粘着層182の厚さの面内ばらつきや、粘着層182へのLED120の沈み込み量も一定ではない。また、一回目の転置および/または二回目の転置でLED120が傾くこともある。さらに、上述したように、第2のキャリア基板178上に発光色の異なるLED120を配置する場合、LED120の高さは発光色によって異なることがある(図6B参照。)。また、貼り合わせ時に圧力を掛けるためのステージも必ずしも高い平坦性を持たない場合もあり、さらに一対のステージを完全に平行な状態で第2のキャリア基板178とバックプレーン基板に圧力を掛けることも容易ではない。
【0047】
このため、例えば図15Aに示すようにLED120の高さが異なる場合、貼り合わせ時に一部のLED120がバンプ166と接触できず、画素電極160や共通電極162と電気的に接続できない場合がある(図15B)。逆に、一部のLED120と画素電極160または共通電極162との距離が小さくなり過ぎることがあり、その結果、導電性のバンプ166が陽極122と陰極124の間に流れ、陽極122と陰極124を短絡させることがある(図15C)。
【0048】
上述したような不具合を回避するためには、貼り合わせ時に十分な圧力を加えつつ、バックプレーン基板と第2のキャリア基板178間の距離を適切に維持する必要がある。本発明の実施形態の一つに係る表示装置の製造方法では、上述したように、貼り合わせ時に弾性変形可能なスペーサ184がバックプレーン基板と第2のキャリア基板178の間に設けられる。このため、全てのLED120が確実に画素電極160と共通電極162に電気的に接続するために大きな圧力でバックプレーン基板と第2のキャリア基板178を互いに押し付けても、バックプレーン基板と第2のキャリア基板178間の距離を適切に維持することができる。大きな圧力を利用することができるため、基板102、第1のキャリア基板172、および/または第2のキャリア基板178が撓んでいても、撓みを矯正することができる。また、ステージの平行度や平坦性が低くても、低い平行度や平坦性を吸収しつつ貼り合わせが可能である。さらに、大面積の第1のキャリア基板172または第2のキャリア基板178を用いても、これらの基板の全体に亘って大きな圧力を掛けることができるため、一度の転置で大量のLED120を転置することが可能となる。上述した特徴は製造歩留りの向上と製造コストの低下に寄与するため、本発明の実施形態を適用することで、低コストでLEDディスプレイを提供することが可能となる。
【0049】
4.表示装置の製造方法の変形例
(1)変形例1
上述したように、LED120の高さ(厚さ)は発光色によって異なることがある(図6B参照。)。このため、表示装置100に高さの異なる複数のLED120を実装する場合には、転置工程においてLED120の高さに応じて異なる大きさのスペーサ184を使用すればよい。
【0050】
具体的には、LED120-1、LED120-2、LED120-3の順で高さが増大する場合、図16A図16Bに示すように、スペーサ184-1が配置されたバックプレーン基板と高さが最小のLED120-1が転置された第2のキャリア基板178-1を準備し、LED120-1とスペーサ184-1が第2のキャリア基板178-1とバックプレーン基板に挟まれるように互いに貼り合わせる。貼り合わせ時に第2のキャリア基板178-1とバックプレーン基板に印加される圧力によってスペーサ184-1が変形するため、第2のキャリア基板178-1とバックプレーン基板の距離を適切に維持しつつ、大きな圧力を印加することができる。その結果、LED120-1を確実に画素電極160と共通電極162に固定することができる。その後、LED120-1をバックプレーン基板上に残存させつつ第2のキャリア基板178-1とスペーサ184-1を除去する。
【0051】
次に、LED120-2が転置された第2のキャリア基板178-2をバックプレーン基板に貼り合わせる(図16C図17A)。この時、スペーサ184-1よりも大きいスペーサ184-2が用いられる。LED120-1はLED120-2よりも高さが小さいので、貼り合わせ時に圧力を印加しても、第2のキャリア基板178-2とLED120-1が互いに干渉することなく、スペーサ184-2が変形する。このため、LED120-2が確実に画素電極160と共通電極162に固定される。
【0052】
引き続き、同様に、LED120-3が転置された第2のキャリア基板178-3をバックプレーン基板に貼り合わせる(図17B図17C)。この時、スペーサ184-2よりも大きいスペーサ184-3が用いられるので、第2のキャリア基板178-2とLED120-1、LED102-2が互いに干渉することなく、貼り合わせ時の圧力によってスペーサ184-3が変形する。このため、LED120-3が確実に画素電極160と共通電極162に固定される。その後、スペーサ184-3と第2のキャリア基板178-3が除去される(図18)。
【0053】
このように、高さの小さいLED順に転置工程を複数回行い、かつ、転置工程が進む度にスペーサ184を大きくすることで、異なる高さを有する複数のLED120を一つのバックプレーン基板上に配置することができる。スペーサ184の好ましい大きさは、上述したとおりである。したがって、この工程により、高さが異なる4種類以上のLED120をバックプレーン基板に配置することも可能である。
【0054】
(2)変形例2
上述したように、LED120は、陰極124と陽極122がp型クラッド層126、活性層128、およびn型クラッド層130を挟む構造を有してもよい(図3B参照。)。この場合、一回目の転置後でも一方の電極が第1のキャリア基板172とは反対側に位置するので、二回目の転置を行わなくてもよい。したがって、第1のキャリア基板172上に転置されたLED120を、第2のキャリア基板178を介することなくバックプレーン基板上に転置すればよい。詳細な説明は割愛するが、上述した製造方法と同様に、バックプレーン基板上に複数のスペーサ184を配置し、その上にLED120が転置された第1のキャリア基板172を貼り合わせる。貼り合わせは、画素104とLED120がバックプレーン基板と第1のキャリア基板172に挟まれ、複数のスペーサ184が変形し、かつ、LED120の陰極124と陽極122がそれぞれ画素電極160の共通電極162と電気的に接続されるように行われる。その後、第1のキャリア基板172と基板102に圧力が加えられ、これらが互いに押し付けられる。第1のキャリア基板172のベース層176に十分な剛性が無い場合には、図示しない補助基板を第1のキャリア基板172上に設ければよい。これ以降の工程は上記製造方法と同様であるため、説明は省略する。
【0055】
本変形例でも、複数のスペーサ184が配置された後にLED120の転置が行われるため、バックプレーン基板と第1のキャリア基板172の間の距離を適切に維持しつつ、第1のキャリア基板172と基板102の間に十分に大きな圧力を印加することができる。このため、上述した製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0056】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0057】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0058】
100:表示装置、102:基板、103:副画素、104:画素、106:走査線駆動回路、108:信号線駆動回路、110:コネクタ、112:駆動IC、114:アンダーコート、122:陽極、124:陰極、126:p型クラッド層、128:活性層、130:n型クラッド層、140:トランジスタ、142:第1のゲート電極、144:第1のゲート絶縁膜、146:半導体膜、148:第2のゲート絶縁膜、150:第2のゲート電極、152:層間膜、154:第1の端子、156:第2の端子、158:平坦化膜、160:画素電極、162:共通電極、164:保護絶縁膜、164a:凹部、166:バンプ、170:基材、172:第1のキャリア基板、174:粘着層、176:ベース層、178:第2のキャリア基板、178-1:第2のキャリア基板、178-2:第2のキャリア基板、178-3:第2のキャリア基板、180:ベース層、182:粘着層、184:スペーサ、184-1:スペーサ、184-2:スペーサ、184-3:スペーサ、186:スペーサ転写基板、188:転写層、190:光熱変換層、192:ベース層
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18