(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022042
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】燃料電池用の加湿装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240208BHJP
B01D 63/14 20060101ALI20240208BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20240208BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/14
B01D63/00 510
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125343
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】国分 泰志
(72)【発明者】
【氏名】地野 好征
【テーマコード(参考)】
4D006
5H127
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA72
4D006JA04A
4D006JA22A
4D006JA22C
4D006JA25A
4D006JB06
4D006JB07
4D006KA01
4D006KB14
4D006MA03
4D006PB17
4D006PB65
4D006PC80
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】流体経路を簡素化することができる燃料電池用の加湿装置を提供する。
【解決手段】燃料電池用の加湿装置1は、矩形状の膜状部材4が山折り部41と谷折り部42とを交互に有して屈曲されることで直方体状に形成された加湿部本体2を備える。膜状部材4は、水分が通過可能な加湿膜4Aと、加湿膜4Aの両面に積層されるとともにそれぞれ流体が通過可能な2つのスペーサ層4B,4Cと、を有する。加湿部本体2には、膜状部材4のうち山折り部41と谷折り部42との並設方向に沿った端縁部43A,43Bに、封止部5が設けられている。封止部5は、2つのスペーサ層4B,4Cのうちいずれか一方を封止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の膜状部材が山折り部と谷折り部とを交互に有して屈曲されることで直方体状に形成された加湿部本体を備え、
前記膜状部材は、水分が通過可能な加湿膜と、該加湿膜の両面に積層されるとともにそれぞれ流体が通過可能な2つのスペーサ層と、を有し、
前記加湿部本体には、前記膜状部材のうち前記山折り部と前記谷折り部との並設方向に沿った端縁部に、前記2つのスペーサ層のうちいずれか一方を封止する封止部が設けられていることを特徴とする、燃料電池用の加湿装置。
【請求項2】
前記封止部が、接着剤により構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用の加湿装置。
【請求項3】
前記2つのスペーサ層において、前記封止部が設けられた前記スペーサ層は、湿潤流体が通過する湿潤層であり、他方の前記スペーサ層は、前記湿潤流体よりも水分が少ない乾燥流体が通過する乾燥層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池用の加湿装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記加湿部本体を収容するケースを備え、
前記ケースには、前記加湿部本体のうち前記封止部が設けられる面を開放するとともに、前記山折り部又は前記谷折り部の頂点部を含む面の少なくとも2箇所を開放するように、複数の開口部が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池用の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の加湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両等に搭載される燃料電池において、供給される空気等の流体に適切な量の水分(水蒸気を含む。以下においても、流体に含まれる「水分」は、水蒸気を含むものとする)を含ませるために加湿装置を用いることが知られている。このような加湿装置として、プリーツ形状の水蒸気透過膜を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2に記載された加湿装置では、水蒸気透過膜の両面に流体供給路が形成されており、これら2つの供給路を通過する流体同士の間で水分が移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-317456号公報
【特許文献2】特開2007-285600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載されたようにプリーツ形状の水蒸気透過膜を備えた加湿装置では、流体は、プリーツの複数の稜線が並ぶ方向に沿って進行し、水蒸気透過膜に導入され、稜線に沿った方向に進行して水蒸気透過膜から導出され、再び稜線が並ぶ方向に沿って逆方向に進行する。即ち、流体が各々の流体供給路を通過するためには、90°の方向転換を2回含むUターンが必要となる。このように、流体が通過する経路が複雑であると圧力損失が上昇し、特に乾燥流体を送り込むためのブロアーの性能を向上させる必要があり、流体経路の簡素化が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、流体経路を簡素化することができる燃料電池用の加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池用の加湿装置は、矩形状の膜状部材が山折り部と谷折り部とを交互に有して屈曲されることで直方体状に形成された加湿部本体を備え、前記膜状部材は、水分が通過可能な加湿膜と、該加湿膜の両面に積層されるとともにそれぞれ流体が通過可能な2つのスペーサ層と、を有し、前記加湿部本体には、前記膜状部材のうち前記山折り部と前記谷折り部との並設方向に沿った端縁部に、前記2つのスペーサ層のうちいずれか一方を封止する封止部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、封止部が設けられたスペーサ層では、流体は、直方体状の加湿部本体のうち山折り部または谷折り部の頂点部を含む面に導入され、山折り部又は谷折り部において流れの向きを変え、導入時と同じ面から導出される。一方、封止部が設けられないスペーサ層では、流体は、直方体状の加湿部本体のうち封止部が設けられた一対の面(即ち一対の端縁部のそれぞれを含む面)の一方から流体が供給され、直線状に進行した後、一対の面の他方から導出される。即ち、両面のスペーサ層はそれぞれ流体経路を形成しており、一方の流体経路において流体が方向転換する必要がなく、流体経路を簡素化することができる。
【0008】
前記封止部が、接着剤により構成されていてもよい。この態様によれば、膜状部材によって直方体状の加湿部本体を形成する際に、封止部によって直方体形状を保ちやすくすることができる。また、封止部が、流体を封止する機能と、形状を維持する機能と、の両方を有し、加湿装置の構成を簡素化することができる。
【0009】
前記2つのスペーサ層において、前記封止部が設けられた前記スペーサ層は、湿潤流体が通過する湿潤層であり、他方の前記スペーサ層は、前記湿潤流体よりも水分が少ない乾燥流体が通過する乾燥層であってもよい。この態様によれば、湿潤流体が湿潤層を通過する際に、乾燥流体が乾燥層を通過する際よりも、圧力損失が大きくなる。即ち、湿潤流体を湿潤層に比較的長時間留めることができ、湿潤流体から乾燥流体に水分を移動させやすくすることができる。
【0010】
少なくとも1つの前記加湿部本体を収容するケースを備え、前記ケースには、前記加湿部本体のうち前記一対の端縁を含む面を開放するとともに、前記山折り部又は前記谷折り部の頂点部を含む面の少なくとも2箇所を開放するように、複数の開口部が形成されていてもよい。この態様によれば、ケースによって加湿部本体を保持して変形を抑制しつつ、各々のスペーサ層によって形成される流体経路に流体を導入及び導出させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るの燃料電池用の加湿装置によれば、加湿膜の2つのスペーサ層のうちいずれか一方を封止する封止部が設けられていることで、流体経路を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る加湿装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る加湿装置の加湿部本体を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る加湿装置の加湿部本体の膜状部材を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る加湿装置を組み立てる様子を示す斜視図である。
【
図6】本発明の変形例1に係る加湿装置を示す斜視図である。
【
図7】本発明の変形例2に係る加湿装置を示す斜視図である。
【
図8】本発明の変形例3に係る加湿装置を示す斜視図である。
【
図9】本発明の変形例4に係る加湿装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る燃料電池用の加湿装置1は、矩形状の膜状部材4が山折り部41と谷折り部42とを交互に有して屈曲されることで直方体状に形成された加湿部本体2を備える。膜状部材4は、水分が通過可能な加湿膜4Aと、加湿膜4Aの両面に積層されるとともにそれぞれ流体が通過可能な2つのスペーサ層4B,4Cと、を有る。加湿部本体2には、膜状部材4のうち山折り部41と谷折り部42との並設方向に沿った端縁部43A,43Bに、封止部5が設けられている。封止部5は、2つのスペーサ層4B,4Cのうちいずれか一方を封止する。
【0014】
加湿装置1は、例えば車載された燃料電池において水を電気分解するFCスタックに対して送り込まれる空気を加湿するものであって、本実施形態では、
図1に示すように、1つの加湿部本体2と、1つの加湿部本体2を収容するケース3と、を備える。
図1は、本発明の実施形態に係る加湿装置1を示す斜視図である。エアクリーナによって不純物やゴミ等が除去された空気が、エアコンプレッサによってFCスタックに送り込まれ、水分を含んだ空気がFCスタックから排出される。加湿装置1は、FCスタックから排出される空気を湿潤流体とし、FCスタックに送り込む空気を乾燥流体(湿潤流体よりも水分が少ない流体)として、湿潤流体から乾燥流体に水分を移動させるものである。
【0015】
図2は、加湿装置1の加湿部本体2を示す斜視図であり、
図3は
図2の拡大図である。加湿部本体2は、
図2,3に示すように、矩形状の膜状部材4が複数の山折り部41と谷折り部42とを有し、これらが交互に配置されることで直方体状に形成されている。以下では、山折り部41と谷折り部42との並設方向をX方向とし、屈曲前の膜状部材4の幅方向に対応する方向をY方向とし、X方向およびY方向の両方に直交する方向をZ方向とする。
【0016】
図4は、膜状部材4を示す断面図である。膜状部材4は、
図4に示すように、水分が通過可能な加湿膜4Aと、加湿膜4Aの両面に積層された2つのスペーサ層4B,4Cと、を有する。スペーサ層4Bは湿潤流体が通過する湿潤層であり、膜状部材4においてスペーサ層4Bが設けられた側を一面側とする。スペーサ層4Cは乾燥流体が通過する乾燥層であり、膜状部材4においてスペーサ層4Cが設けられた側を他面側とする。
【0017】
加湿膜4Aは、水分を含む流体から実質的に水分のみを選択的に透過させる性質を有する膜によって形成される。加湿膜4Aは、例えばポリテトラフルオロエチレン等の水蒸気透過性材料により形成された膜を積層させたり、水蒸気透過性材料を含浸させた膜を用いたりすることによって形成される。加湿膜4Aの厚さは、例えば10~500μm程度であることが好ましい。
【0018】
スペーサ層4B,4Cは、例えば織布や不織布、樹脂製ネット、金属製ネット等の流体(特に気体)の透過性に優れたシート材によって構成され、山折り部41及び谷折り部42を含むプリーツ形状を維持するための補強材としても機能する。スペーサ層4B,4Cの厚さは、例えば100~2000μm程度であることが好ましく、スペーサ層4B,4Cの気孔率は、例えば50~95%であることが好ましい。尚、スペーサ層4Bとスペーサ層4Cとは、同一の材料によって構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。
【0019】
山折り部41は、膜状部材4の一面側に凸となるように180°折り返された部分であり、谷折り部42は、膜状部材4の他面側に凸となるように180°折り返された部分である。膜状部材4の一面側(即ちスペーサ層4B)において、谷折り部42をX方向から挟んで対向する面44,45同士が平行となり(即ちいずれもYZ平面に沿って延び)、且つ、互いに接触する。膜状部材4の他面側(即ちスペーサ層4C)において、山折り部41をX方向から挟んで対向する面46,47同士が平行となり(即ちいずれもYZ平面に沿って延び)、且つ、互いに接触する。プリーツピッチ(隣り合う山折り部41の頂点部同士の間隔、又は、隣り合う谷折り部42の頂点部同士の間隔)は、例えば0.5~5mm程度であることが好ましく、プリーツ高さ(直方体状の加湿部本体2のZ方向寸法)は、10~100mm程度であることが好ましい。
【0020】
山折り部41及び谷折り部42の頂点部は曲面状に形成され、この曲率半径は、後述するような加工時に用いるブレードの先端形状によって決まる。また、プリーツ状に折られた膜状部材4に対してX方向の力を加えるとともにこの力の大きさを制御することにより、この曲率半径を決定してもよい。
【0021】
直方体状の加湿部本体2は、XY平面に沿った一対の面21A,21Bと、YZ平面に沿った一対の面22A,22Bと、ZX平面に沿った一対の面23A,23Bと、を有する。面21Aは、山折り部41の頂点部を含み且つスペーサ層4Bによって形成され、面21Bは、谷折り部42の頂点部を含み且つスペーサ層4Cによって形成されている。一対の面22A,22Bは、スペーサ層4Bによって形成されている。一対の面23A,23Bは、膜状部材4のうちX方向に沿った端縁部43A,43Bを含んで形成されている。
【0022】
一対の面23A,23Bに対して、即ち一対の端縁部43A,43Bに対して、湿潤層であるスペーサ層4Bを封止する封止部5が設けられている。封止部5は、例えばオレフィン系の接着剤によって構成されており、
図4に示すように、メッシュ状のスペーサ層4Bにおいて隙間を埋めるように浸透することにより、流体の通過を規制する。
【0023】
封止部5は、端縁部43A,43Bにおいて、スペーサ層4BをY方向外側から覆うように設けられていてもよいし、スペーサ層4Bの一部をY方向外側に露出させるように、端縁よりも若干内側に配置されていてもよい。即ち、一対の端縁部43A,43Bに対して封止部5が設けられるとは、端縁に沿って封止部5が設けられる構成だけでなく、端縁よりも若干内側に封止部5が設けられる構成も含むものである。
【0024】
封止部5は、膜状部材4の一面側に設けられたスペーサ層4Bのうち、谷折り部42を挟んで対向する面44,45同士を、封止部5が設けられた領域において接着する。このとき、例えば山折り部41及び谷折り部42を有する膜状部材4に対してX方向の力が加えられることにより、各々の面44,45に設けられて封止部5を構成する接着剤同士が圧着されればよい。
【0025】
ケース3は、例えば樹脂によって形成され、ケース本体3Aと、枠部3Bと、を有して全体として四角筒状に形成される。即ち、ケース3は、Y方向の両側に開口部31,32を有する。枠部3Bは、四角形枠状に形成されて開口部31を有し、ケース本体3Aに対して着脱可能に設けられている。
【0026】
開口部31,32は、封止部5が設けられた一対の面23A,23Bが配置される部分であり、面23A,23Bを開放する。開口部31,32は、その内寸(X方向寸法及びZ方向寸法)が加湿部本体2の外寸(X方向寸法及びZ方向寸法)よりも小さく、加湿部本体2の通過が規制され、ケース3から加湿部本体2が脱落してしまうことが抑制されている。
【0027】
ケース3は、XY平面に沿った一対の板部33,34を有する。板部33は、山折り部41の頂点部によって且つスペーサ層4Bによって形成された面21Aを覆い、板部34は、谷折り部42の頂点部によって且つスペーサ層4Cによって形成された面21Bを覆う。
【0028】
板部33には、一対の開口部331,332が形成されており、開口部331,332はそれぞれ面21Aの一部を開放する。一対の開口部331,332は、それぞれY方向の両端部に形成されており、即ち互いに間隔を開けて配置されている。また、開口部332はケース本体3Aに形成されており、開口部331は、ケース本体3Aに形成された凹部と枠部3Bとによって形成される。一方の開口部331が流体の導入口となっており、他方の開口部332が流体の導出口となっている。これに対し、板部34には開口部は形成されておらず、面21Bは閉塞される。
【0029】
ケース3は、YZ平面に沿った面にも開口部35~38を有しており、スペーサ層4Bによって形成された面22A,22Bが開放されるようになっている。尚、このような開口部35~38が形成されず、YZ平面に沿った面22A,22Bが閉塞される構成としてもよい。
【0030】
ここで、加湿装置1の製造方法の一例について、
図5も参照しつつ説明する。
図5は、加湿装置1を組み立てる様子を示す斜視図である。まず、平坦な膜状部材4に対してプレヒートすることでスペーサ層4B,4Cに柔軟性を与える。そして、スペーサ層4B側に対し、塗布機を用いて端縁部43A,43Bに沿って接着剤を設ける。このとき、スペーサ層4C側においては、山折り部41を形成した際に対向する面46,47に相当する部分を超音波溶着によって予め固定し、山折り部41及び谷折り部42の形成時におけるずれを抑制する。尚、面46,47は、超音波溶着によって部分的に固定されればよく、例えば、数か所が点状に固定されてもよいし、これらの面46,47のうち端縁に沿った部分が線状又は点状に固定されてもよい。
【0031】
次に、レシプロや歯車等の折り機を用いて山折り部41及び谷折り部42を形成し、即ちプリーツ加工を施す。このプリーツ加工時に、塗布された接着剤を圧着させて封止部5を形成する。所定の折り回数だけ加工した後、膜状部材4を切断する。
【0032】
尚、上記の各工程を実施する順序は、上記に限定されず、山折り部41及び谷折り部42が形成可能であり封止部5を設けることができれば、他の順序であってもよい。また、スペーサ層4C側の固定には、接着剤やシール材を用いてもよい。また、スペーサ層4C側においては、対向する面46,47が複数対形成されるが、これらのうち一部の対が固定されなくてもよい。
【0033】
次に、
図5に示すように、ケース本体3Aに対し、開口部32とは反対側(即ち枠部3Bが設けられる側)から加湿部本体2をY方向に沿って移動させて挿入する。加湿部本体2の挿入が完了したら、ケース本体3Aに対して枠部3Bを組み付ける。
【0034】
上記のように製造された加湿装置1は、燃料電池に設けられる際、開口部331,332に湿潤流体の流路部が接続されるとともに、開口部31,32に乾燥流体の流路部が接続される。
【0035】
以下、加湿装置1における流体の主たる流れについて説明する。ここで、Y方向において開口部331側および面23A側を入口側とし、開口部332側および面23B側を出口側とする。まず、開口部331から導入された湿潤流体は、面21Aからスペーサ層4Bに導入され、Z方向に沿って面21Bに向かって進行する。この湿潤流体は、谷折り部42において加湿膜4Aに到達し、Z方向への移動が規制され、流れの向きが変わりY方向に沿って移動しようとする。このとき、封止部5が設けられていることで、Y方向入口側への移動が規制されており、湿潤流体は出口側に向かって進行する。
【0036】
Y方向出口側に向かって進行する湿潤流体は、出口側の封止部5に到達すると、それ以上出口側に向かうことが規制され、流れの向きが変わりZ方向に沿って且つ面21Aに向かって進行する。面21Aに到達した湿潤流体は、開口部332から導出される。このように、湿潤流体は、Z方向に進行した後に90°方向転換してY方向に進行し、さらに90°方向転換してZ方向に進行することにより、Uターンするような流れとなっている。
【0037】
開口部31から導入された乾燥流体は、面23Aからスペーサ層4Cに導入され、Y方向に沿って面23Bに向かって進行する。このとき、面21Bが板部34によって塞がれていることで、面21Bから乾燥流体が流出しないようになっている。面23Bに到達した乾燥流体は、開口部32から導出される。このように、乾燥流体は、Y方向に沿って直線的に進行する流れとなっている。
【0038】
上記のように湿潤流体がスペーサ層4Bを通過し、乾燥流体がスペーサ層4Cを通過することにより、スペーサ層4B,4Cの間に設けられた加湿膜4Aにおいて、湿潤流体から乾燥流体に水分が移動する。
【0039】
このように、本発明の実施形態に係る加湿装置1によれば、封止部5が設けられないスペーサ層4Cによって形成される流体経路において、乾燥流体が方向転換する必要がなく、流体経路を簡素化することができる。
【0040】
また、封止部5が接着剤により構成されていることで、膜状部材4によって直方体状の加湿部本体2を形成する際に、封止部5によって直方体形状を保ちやすくすることができる。また、封止部5が、流体を封止する機能と、形状を維持する機能と、の両方を有し、加湿装置1の構成を簡素化することができる。
【0041】
また、封止部5が湿潤層としてのスペーサ層4Bを封止することで、湿潤流体がスペーサ層4Bを通過する際に、乾燥流体が乾燥層としてのスペーサ層4Cを通過する際よりも、圧力損失が大きくなる。即ち、湿潤流体をスペーサ層4Bに比較的長時間留めることができ、湿潤流体から乾燥流体に水分を移動させやすくすることができる。
【0042】
また、加湿装置1が、開口部31,32,331,332を有するケース3を備えることで、ケース3によって加湿部本体2を保持して変形を抑制しつつ、各々のスペーサ層4B,4Cによって形成される流体経路に流体を導入及び導出させることができるとともに、意図しない領域から流体が流出することを抑制することができる。
【0043】
また、ケース3が直方体状となっていることで、加湿装置1の全体をカセット状とすることができ、カセットを挿入する等によって燃料電池に対して配置することができ、加湿装置1の設置が容易となる。また、後述するように複数の加湿装置1を組み合わせる際に、複数の加湿装置1をX方向、Y方向及びZ方向のいずれにも並べて配置しやすく、配置を容易とするとともに自由度を向上させることができる。
【0044】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施形態では、1つの加湿装置1が単独で使用されるものとしたが、
図6~8に示す変形例1~3のように、複数の加湿装置1が組み合わされて使用されてもよい。
【0045】
図6に示す変形例1では、2つの加湿装置1がX方向に並べられている。2つの加湿装置1は、いずれも、湿潤流体が開口部331から導入されるとともに開口部332から導出され、乾燥流体が開口部31から導入されるとともに開口部32から導出される。これにより、導入及び導出可能な湿潤流体及び乾燥流体の量が、前記実施形態の2倍となっている。
【0046】
図7に示す変形例2では、2つの加湿装置1がY方向に並べられている。2つの加湿装置1は、いずれも、湿潤流体が開口部331から導入されるとともに開口部332から導出される。一方の加湿装置1の開口部32と他方の加湿装置1の開口部31とが接続されている。これにより、一方の加湿装置1において開口部31から導入されて開口部32から導出された乾燥流体は、他方の加湿装置1の開口部31から導入されて開口部32から導出される。従って、乾燥流体がスペーサ層4C内を進行する距離が、前記実施形態の2倍となっており、乾燥流体に水分を移動させやすくなっている。
【0047】
図8に示す変形例3では、2つの加湿装置1がZ方向に並べられている。このとき、2つの加湿装置1は、板部34同士が向かい合う配置となっている。即ち、
図8における上側に配置された加湿装置1では、開口部331,332が上側を向き、下側に配置された加湿装置1では、開口部331,332が下側を向いている。2つの加湿装置1は、いずれも、湿潤流体が開口部331から導入されるとともに開口部332から導出され、乾燥流体が開口部31から導入されるとともに開口部32から導出される。これにより、導入及び導出可能な湿潤流体及び乾燥流体の量が、前記実施形態の2倍となっている。
【0048】
また、上記の本発明の実施形態では、1つのケース3に1つの加湿部本体2が収容されるものとしたが、1つのケースに複数の加湿部本体が収容されてもよく、例えば
図9に示す変形例4の加湿装置1Bのように、1つのケース30に2つの加湿部本体2が収容されてもよい。変形例4では、2つの加湿部本体2がZ方向に並ぶとともに、面21B同士が向かい合う配置となっている。即ち、2つの加湿部本体2の加湿膜4A同士によってZ方向から挟み込まれた領域において、スペーサ層4Cによって乾燥流体の流体経路が形成されている。また、ケース30には、Y方向の両側に開口部310,320が形成され、Z方向の両側に、開口部331,332が形成されている。
【0049】
変形例4では、変形例3と同様に、2つの加湿部本体2に対し、湿潤流体が開口部331から導入されるとともに開口部332から導出され、乾燥流体が開口部310から導入されるとともに開口部320から導出される。これにより、導入及び導出可能な湿潤流体及び乾燥流体の量が、前記実施形態の2倍となっている。
【0050】
また、上記のような変形例1~4のような構成は、適宜に組み合わされていてもよい。即ち、複数の加湿装置を、X方向、Y方向及びZ方向のうち2又は3方向に並べてもよいし、1つのケースに複数の加湿部本体が収容された加湿装置を、各方向に複数並べてもよい。
【0051】
また、上記の本発明の実施形態では、封止部5が接着剤により構成されているものとしたが、封止部が接着する機能を有しておらず、封止部以外に、各スペーサ層4B,4Cのうち対向する面同士を接着する部材を設けてもよい。このような封止部の材料としては、加硫ゴムやシリコーン系、ポリウレタン系等の柔軟性のある材料、柔軟性のあるゴム状のパッキン部材等が例示され、FCスタックに有害な揮発性ガスを発生しないものが好ましい。柔軟性のあるゴム状のパッキン部材を用いる場合、膜状部材4が圧縮されることにより、前記実施形態同様に、スペーサ部材の繊維の周囲にパッキン部材が回りこんで封止が可能である。また、例えばケースのみによってプリーツ状の加湿部本体の形状を維持可能な場合には、山折り部又は谷折り部を挟んで対向する面同士が接着されていなくてもよい。
【0052】
また、上記の本発明の実施形態では、封止部5が湿潤層としてのスペーサ層4Bを封止するものとしたが、乾燥層を封止するように封止部を設けてもよい。即ち、湿潤流体が直線的に進行する流れとなり、乾燥流体がUターンするような流れとなっていてもよい。
【0053】
また、上記の本発明の実施形態では、ケース3が板部33に2つの開口部331,332を有し、山折り部41の頂点部によって形成された面21Aの2箇所が開放されているものとしたが、この面は、3箇所以上が開放されていてもよい。即ち、流体が導入又は導出される部分が2箇所以上形成されていてもよい。
【0054】
また、上記の本発明の実施形態では、加湿装置1が複数の開口部を有するケース3を備えるものとしたが、加湿装置は、ケースに代えて加湿部本体2を保持する部材を備えていてもよいし、ケースを備えずに直接的に燃料電池に設けられていてもよい。例えば、各スペーサ層に対し、流体の出入口とならない領域に、流体の通過を規制する部材やコーティング等を設けることにより、流体が所定の位置において導入及び導出されるようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る燃料電池用の加湿装置に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0056】
1,1B…加湿装置、2…加湿部本体、21A,21B,23A,23B…面、3…ケース、31,32,331,332…開口部、4…膜状部材、41…山折り部、42…谷折り部、43A,43B…端縁部、44,45…対向する面、4A…加湿膜、4B…スペーサ層(湿潤層)、4C…スペーサ層(乾燥層)、5…封止部