(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022055
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ユニット式フラップゲート
(51)【国際特許分類】
E02B 7/44 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E02B7/44
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125374
(22)【出願日】2022-08-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】508305258
【氏名又は名称】日新興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504118852
【氏名又は名称】株式会社中央コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 幸美
(72)【発明者】
【氏名】牧田 健作
(72)【発明者】
【氏名】新銀 武
(72)【発明者】
【氏名】千葉 慎二
(57)【要約】
【課題】既存の門柱、ゲート等の撤去を要することなく、また、翼壁の改築もなく軽微な改築で経済的に設置できるばかりでなく、筐体内部の部分的な修復作業を要することなく簡便に施工することができ労力を削減できるユニット式フラップゲートを提供する。
【解決手段】既設樋門20の既設樋門函体18川裏側流入口19Bに、調整区間30を介して支持函体18Jを増設し、この支持函体18J内にはユニット式フラップゲートUGが取り付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設樋門の川表側流出口又は川裏側流入口の少なくとも一方に、支持函体を増設し、当該支持函体内にフラップゲートを内蔵したことを特徴とするユニット式フラップゲート。
【請求項2】
支持函体がコンクリート製のボックスカルバートであり、当該ボックスカルバート内に支持筐体を設け、さらに当該支持筐体にヒンジ式フラップゲートを設けたことを特徴とする請求項1記載のユニット式フラップゲート。
【請求項3】
フラップゲートの扉体は、ステンレス製材料を主とし、アルミニウム製材料等の異種金属を併用してハイブリッドに構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のユニット式フラップゲート。
【請求項4】
支持函体が、コンクリート二次製品の函体、又は現場打設コンクリート製函体、鋼製函体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のユニット式フラップゲート。
【請求項5】
支持函体の頂版に点検孔を開口すると共に、扉体を任意に巻き上げ可能な巻き上げ用ワイヤを挿入可能にしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のユニット式フラップゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川堤防の工作物である既設樋門樋管の両端、すなわち、堤内側又は堤外側に接続又は当接して設置するための支持函体に内蔵されたユニット式フラップゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
樋門、樋管は河川海岸堤防の工作物として築造されている。これらは、主として堤内側の河川または水路から排水を目的とする構造物である。なかでも河川本流側の既設樋門樋管の流出口には、扉体となるゲートが門柱等に嵌め込まれていて、洪水時に河川が氾濫して水位が上昇した場合、一般的には、水防団員や近隣住民等の操作員が門柱上部の操作台に就き、人手で開閉機を操作してゲートを閉止して逆流水を堰き止め堤内側の安全が守れるように配備されている。
【0003】
しかしながら、近年、人口減少及び高齢化が進むなか、操作員の高齢化も進んでいて危険を孕むうえに、前記堰き止め作業を行う後継人員も自ずと不足が懸念されている。
【0004】
そこで、2011年12月に水防法が改正され、人命の尊重及び安全性を考慮して、人手に頼らない動力により自動的に駆動するゲート又は無動力で自動的に駆動するフラップゲート等が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、樋門の河川側出口に、開閉自在の扉体が河川側からの流水に対し止水可能になるように、上部ヒンジ機構により懸垂された状態で設置され、樋門側からの流水に対して扉体が河川方向に回転動作して樋門を開放するフラップゲートにおいて、扉体の重心位置と扉体を懸垂する吊芯が、浮力構造物の浮力中心を通る鉛直線より下流に配することにより、上流側低水位あるいは大容量の排水時において円滑な排水を行い、また、河川側水位と樋管側水位が同程度となった状態では逆流の発生を防止するフラップゲートが開示されている。
【0006】
他にも、樋門等の構造物における開口部に対し、その扉体の開閉バランスを調整するバランスウエイトを主ウエイトと補助ウエイトとにより構成し、扉体が全閉状態から所定の傾斜角度まで開放される範囲では、主ウエイトと補助ウエイトとが一体的に回動するもの(特許文献2参照。)。
【0007】
用水路の排水口に内外水方向に揺動自在に支持され、排水隙間を隔てて排水口を内水方向に閉じる下揺動位置と、排水口を外水方向に開く上揺動位置とに揺動自在な扉体を備え、用水路に設けられた支持桁に内水側第1連結軸で揺動自在に連結され、内水側第1連結軸よりも外水側の上端部にバランスウエイトが取付けられた内水側リンクと、内水側リンクの下端部に、内水側の上端部が内水側第2連結軸で揺動自在に連結された扉体と、扉体の外水側の下部に設けられたフロートとを備え、外水の内水側への漏水が極めて少なく、かつ騒音も発生し難く、水流も乱さないフラップゲート(特許文献3参照。)等がある。
【0008】
また、低コストで設置できる川裏用簡易ゲートとして、一対の逆L形状の柱材の各々の頂部を連結する頂板、及びこの柱材と頂板によって形成されるフレームと、このフレームに垂直方向に延びるように配置された複数の扉体とから構成され、最下段の扉体の外枠が門形で、かつ、最下段扉体の本体が、川表側の方に徐々に折れ曲がった複数の部分によって形成され、本体の下端が、本体の閉鎖時に川裏側ゲートの底面に接触するようになっており、外枠の川表側には、本体の閉鎖時に本体に合致するように形作られた受け部が設置され、本体の下端に泥等が溜まるのを回避でき、良好な止水状態を得ようとするものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-96122号公報
【特許文献2】特許第5503074号公報
【特許文献3】特開2015-105566号公報
【特許文献4】特開2022-53779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、門柱不要の電動力ゲート又は無動力フラップゲートを既設樋門に取り付ける際には、既存の門柱及びゲートの撤去、さらに取り付け部分や翼壁の改築を要する。さらには、継手機能の改変という課題があった。
そこで、本発明者らは、特願2021-070970号をもって、既設樋門の河川本流側の流出口から河川支流側流入口の中間に嵌装可能に形成された支持筐体(ソケット)と、当該支持筐体内に、占有高を有して軸承されると共に、前記流出口を開閉するフラップを有するヒンジ式ゲートで、河川本流側からの逆流水により押圧された際、閉鎖したフラップにより水流を堰き止めることができ、既存の門柱、ゲート等の撤去を要することなく、また、翼壁の改築もなく軽微な改築で経済的に設置できるばかりでなく、継手部を改変することなく設置できるユニット式フラップゲートを先に提案している。
【0011】
上記発明によれば、既存の門柱及びゲートの撤去、さらに取り付け部分や翼壁の改築を要するという課題は解消できるものの、樋門内に嵌挿固定するために函体内部を部分的に斫り修復作業を要するものであり、既存構造物に現場加工を施さなければならないという課題が残る。函体内部の部分的な修復作業を要することなく簡便に施工することができ労力を削減できる支持函体に内蔵されたユニット式フラップゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明のユニット式フラップゲートは、既設樋門の川表側流出口又は川裏側流入口の少なくとも一方に、支持函体を増設し、当該支持函体内にフラップゲートを内蔵したことを第1の特徴とする。また、支持函体がコンクリート製のボックスカルバートであり、当該ボックスカルバート内に支持筐体を設け、さらに当該支持筐体にヒンジ式フラップゲートを設けたことを第2の特徴とする。さらに、フラップゲートの扉体は、ステンレス製材料とアルミニウム製材料の異種金属を併用してハイブリッドに構成したことを第3の特徴とする。さらにまた、支持函体が、コンクリート二次製品の函体、又は現場打設コンクリート製函体、鋼製函体であることを第4の特徴とする。加えて、支持函体の頂版に点検孔を開口すると共に、扉体を任意に巻き上げ可能な巻き上げ用ワイヤを挿入可能にしていることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)既設樋門の川裏側流入口又は川表側排出口の少なくとも一方に、支持函体を増設し、当該支持函体内にはフラップゲートを内蔵するので、簡便に施工することができ労力を削減できる。
(2)施工現場におけるゲート組立作業を省力化できる。
(3)ステンレス製材料とアルミニウム製材料の異種金属を併用してハイブリッドに構成することで、軽量化を図ることができる。
(4)支持函体の頂版に点検孔を設けたので、ゲートの作動不具合状態の視認が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るユニット式フラップゲートの一実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るユニット式フラップゲートを堤防の既設樋門に設置した状態を模式的に示す一部切欠き斜視図。
【
図3】
図1のユニット式フラップゲートを模式的に示す側面断面図。
【
図4】本発明に係るユニット式フラップゲートの支持函体内に支持筐体を内設した一実施例を示す(a)は側面断面図、(b)は(a)のA―A線断面とB―B線断面を中心線で分けて示す併合図である。
【
図5】フラップゲートの組立て構造を示す(a)は軸受けと支軸の平面図、(b)は第2のウエイトの平面図、(c)は浮体を内蔵したフラップ下部の平面図である。
【
図6】水密ゴム環を示す(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は要部拡大断面図である。
【
図7】水密ゴム環を示す(a)は要部拡大平面図、(b)は(a)の側面断面図、(c)は要部斜視図である。
【
図8】フラップの主構を示す(a)は側面図、(b)は側面断面図である。
【
図10】支軸と軸受けの筐体壁への取り付け方法における要部拡大平面図である。
【
図11】(a)は支持筐体の一実施例を示す斜視図、(b)は支持筐体の他の実施例を示す正面断面図である。
【
図12】低水位時又は渇水時におけるゲートの作動状態を示す説明図である。
【
図13】支川側水位が支川護岸ブロックを越えて支持函体に流入する時のゲートの作動状態を示す説明図である。
【
図14】平常時水位の場合と河川本流側から流水が進入して逆流した場合のゲートの動作を示す説明図である。
【
図15】ゲートが完全に閉扉し、河川支流側水位がさらに上昇した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例0016】
[ユニット式フラップゲートの設置概要]
図1乃至
図4に示すように、支持函体18J内の底辺戸当り面2bから支軸12aまでの占有高Hdを有して軸承されると共に、フラップ1を有する扉体(ヒンジ式フラップ)3からなるにユニット式フラップゲートUGを、既設樋門20の川裏側面RSに周知の技術手法により接合又は当接するが、現場状況に応じて調整区間30を設けてもよい。そして、支持函体18J周りの護岸・水路等を施工する。
【0017】
すなわち、
図2に示すように、既設樋管18の流入口19Bに、調整区間30を介してユニット式フラップゲートUGが内蔵された支持函体18Jを増設する。
【0018】
尚、既設樋門の川表面側RMにユニット式フラップゲートUGを設置する際には、門柱型スライド式門扉の場合も設置可能であるが、支持函体18Jの一部分が本川の河川に臨む断面に凹凸の障害を生じさせる等の可能性があるので、河川管理者等と十分なる協議が必要である。
【0019】
ここでは、本発明の最良の形態を示す実施例として、既設樋門の川裏側RSに本発明に係るユニット式フラップゲートUGを内蔵した支持函体を接合又は当接した場合を説明する。
【0020】
支持函体18Jはコンクリート製のボックスカルバートであり、このボックスカルバート18J内に扉体3と、戸当り金物(ソケット)2は、支持函体18Jの内面の所定位置に固定されていて、水密ゴム環16先端が当接する上下辺2bは2a面より突出されていて、戸当り金物(ソケット)2の両側面2a及びその他の上下2a面は支持函体18Jの内面と同一面である。
【0021】
尚、既存の門柱22や既存ゲート21は、ユニット式フラップゲートUGの設置作業に支障を来たさなければ撤去する必要はない、また、新設樋門、さらに開水路などにも設置が可能であるが、ここでは既設樋門20が構築された樋門函体18に増設する場合における実施例で説明する。
【0022】
図2に示すように、堤防25の堤内側の水を排水するために、堤防25に埋設された既設樋門20の函体18内部を通水して河川本流側RMに排出される。豪雨洪水時には、既設樋門20の樋門函体18内を略満水状態の水位で流出する場合もある。しかしながら、堤内側の河川又は水路以上に河川本流側の河川洪水の水位が上回り、既設樋門20内を逆流して堤内側の河川又は排水路を遡上して、曳いては、堤内側の地内が浸水されることなるので、逆流を防止するために既設樋門20の川表側RMに組み込まれたスライド式扉体21を操作員が手動により巻上機を使用して閉扉するのが一般的である。
【0023】
さらに、逆流による遡上を遮断するためのスライド式扉体21に何らかの不具合が発生してスライド式扉体21の閉扉ができない場合などに、揺動自由なフラップゲート1が内設されたプレキャストコンクリート製函体18Jを既設樋門20の堤内側に接合又は当接していれば、人力(動力を含む)による閉扉操作を行うことなく、流水圧が作用して扉体3が閉扉し水密ゴム環16が戸当たり2に当接して水を堰き止める。
【0024】
後述するように、支持函体18Jは、プレキャストコンクリート製函体、鋼製函体、さらに、現場でコンクリートを打設して構築された函体に支持筐体2を組み込むことが可能であるが、本実施例では便宜上、
図1乃至
図4に示すように、プレキャストコンクリート製函体18Jに内設されたフラップゲートUGで説明する。
【0025】
図11に示すように、(a)はコンクリート製函体18J内に嵌め込む支持筐体(戸当り)2であり、コンクリ-ト製支持函体18Jを製作する段階において、予め型枠内に嵌め込むことになっている。頂版及び底版2bについては支持函体18Jから突出しているが、側壁面2aは支持函体測面と合致している。(b)は、鋼製函体であり、鋼製函体周面を周知技術により一定の間隔で補剛リブ2cが接合されていて、さらには、補剛リブ2cの両側面を補剛板2dで接合して補強されている。この時には、筐体内面の一部の周面が戸当り面となり、鋼板頂版及び底版部の2bは2a面より突出していて、扉体3下部の水密ゴム環16の円弧軌道が考慮されている。
【0026】
フラップゲートUGの構成は、概ね、支持部と扉本体部の2つの部分で構成されていて、支持部は占有高Hdを有した軸承板13を支持函体18Jの内面側壁の戸当り金物2a側近傍の本川本流側寄りに、アンカー孔26を設け、予めアンカーボルト27で締結固定されていて、支軸12aはフラップ1が懸垂され垂下可能な態様に支持板12bに嵌装されて固定されており、さらに、フラップ1の川裏(堤内側の支川又は水路)側RS近傍に、支持筐体2aの内空面下方部の壁面にフラップ1を当接させて受け止める係止体17がボルト等で締結固定されている。
【0027】
[フラップゲートの構造]
支軸12aの中央部分には、扉体3を懸垂するための複数の支持板12bが嵌装固定されていて、
図10に示すように、支軸12aの両端には、フラップ1が回動可能な揺動状態を保持するための自動調心ころベアリング12cと逸脱防止リング12eとが各々環状のゴムパッキング(図示せず)を挟持して嵌装され軸受け12を構成している。軸受け12の外側には軸受蓋12dが両端に嵌装されていて、支軸12aと軸受蓋12dの間隙には防水材12fが挟持されている。さらに、軸受蓋12dと軸受け12の接合面にもゴムパッキングが嵌装されていて、複数本のボルトL2等で逸脱防止リング12eと軸受蓋12dとゴムパッキングの順で貫通して軸受け12に締結固定されている。
【0028】
このように、支軸12aの両端には、自動調心ころベアリング12cが内蔵された軸受け12が嵌装されていて、占有高Hdに位置決めされた軸承板13と軸受け12が当接される面にゴムパッキングを挟み、逸脱防止リング12e、軸受蓋、ゴムパッキング、軸受け、ゴムパッキングの順で貫通して複数のボルトL1等で軸承板13に締結固定されている。
【0029】
フラップ1は略く字状を成している屈曲した構造体であり、河川本流側RMに面するスキンプレート4面には、懸垂可能な支持板12bがボルトで締結固定されていて、その下方部分にはフラップ1の均衡を保つためのウエイト6及び7が接合されている。扉体1の主構である縦桁と横桁の空間部分には、浮上がり作用を発揮させるためのフロート材14が内装されていて、主構背面側は保護プレート15で覆われている。
【0030】
図6及び
図7に示すように、フラップ1の扉体3背面側周囲には水密ゴム環16が押プレート16aを介してボルト等で締結固定されていて、水密ゴム環16は扉体3背面に当接される固定辺と、流水圧を受ける自由辺を有しており、水密ゴム環16の断面形状は河川本流側向きに逆く字状を成しており、流水圧を受ける自由辺はその圧力に応じて拡径しながら、戸当り面2bにその先端部分が当接又は離反する動作を行い、遮水及び通水を繰り返すようにされている。
【0031】
図3に示すように、フラップ1の維持点検等に際しては、点検用開口18aの蓋18cを開蓋し後に昇降手段を用いて支持函体18J内に侵入し、予め支持函体18J上部の点検用開口18aの近傍に取り付けられた周知の巻上機28に装着されたワイヤ29を点検開口18aまたは、ワイヤ挿入管(貫通孔)18bに通してフラップ1の下端部に接合された係止金物にワイヤ先端を締結して巻上機28で巻き上げて開扉し、フラップゲート1に引っかかった障害物などの除去を行う。そうすることにより、既設函体18に流出口19Aからの狭い区間を通ることもなく、流入口19B付近に取り付けてある濾過スクリ-ン(図示せず)を取り除くことなく点検が可能である。
【0032】
また、フラップゲートUGの部品交換時には、支軸12a、バランスウエイトBW等のパーツ毎に分離して函体外に搬出して交換を行うが、この際は、流出口19A、又は、流入口19B付近の濾過スクリーン(図示せず)を取外して行う。
【0033】
フラップゲート1を構成する材質については、扉体3の主構は重量軽減を図るため、アルミニウム製材料を採用している。その他の部品は、フロート材、水密ゴム環を除いて全てステンレス製材料を採用して異種金属のハイブリッド構成としているが、全てステンレス製材料とすることでも勿論よい。また、さらなる重量軽減を図るために、スキンプレートやフロート材の保護プレートに炭素繊維シートを採用することも可能である。
【0034】
[ユニット式フラップゲートの構成]
本実施例に係るユニット式フラップゲートUGの支持筐体である戸当り金物2は、奥行き長さの異なる戸当り2bを上下辺端に一体に形成した一部が略台形箱状で、その左右両面に張り出した一対の戸当り側板2aを有している。また、本実施例に係るバランスウエイトBWは、少なくとも第1のウエイト6と第2のウエイト7とからなり、第2のウエイト7は、第1のウエイト6を吊持連結している。そして夫々のウエイトには重量調整が可能なように、ウエイトの両端に嵌装可能な調整用ウエイト8又は11を備えている。
【0035】
このように、フラップ1は支持筐体2内の上部に設けた支軸12aを中心に傾動可能に取り付けられている。つまり、フラップ1に取り付けたフロート材14の浮力及び縦桁3aと横桁3b、水密ゴム環16の重量と均衡可能な重量と位置決め機能を備えた複数のウエイト6及び7を擁するバランスウエイトBWが取り付けられている。第2のウエイト7は、第1のウエイト6を常に垂下状態になるように、フラップ1の表面に貼着されたスキンプレート4上に固定された逆L字形の保持アーム10でもって保持する。尚、図中、9は塵芥や漂流物からウエイトを保護する防塵カバーも取り付け可能である。
【0036】
また、戸当り側板2aの上部には、フラップ1を支持する占有高を有した軸承板13が取付けられていて、戸当り金物2の側板2a下部には、閉じたフラップ1を受け止めるフラップ係止体17が取付けられている。これにより、軸受け12に嵌入された支軸12aでフラップ1が吊持され、河川本流側RMから流出口19Aに逆流入してフラップ1が水圧に押されてフラップ係止体17で受け止められて逆流水を堰き止める。さらに、フラップ1に取付けられた水密ゴム環16は、逆流水で押圧されているゴム辺の先端が、箱部分を形成している上下左右4辺の戸当り2a及び2bに当接され水密性を保っている。後述するが、水密ゴム環16の四隅の形状が矩形状に設計されている場合には、支持筐体2の箱部分の角も水密ゴム環16の角に応じた矩形状とする。
【0037】
[フラップの取付構造]
フラップ1の扉体3は側面視で略逆く字状を成している屈曲した構造体であり、その構成は、
図5乃至
図8に示すように、縦桁(主構)3aと、横桁3bとから成り、その前面(河川本流側RM)にはスキンプレート4が貼設されていて、さらに、スキンプレート4上方に支軸シャフト12aが嵌入される軸受け12と、第1のウエイト6と第2のウエイト7を保持する保持アーム10が接合されており、複数枚の調整用ウエイト11が接続可能である。第1のウエイト6と第2のウエイト7は保持アーム10により第1のウエイト6を常に垂下状態になるとともに重量の調整をするように吊持し、第1のウエイト7にも複数枚の調整用ウエイト8が接続可能にされている。
尚、本実例では、ウエイトの断面は円形としてるが、一部を切り欠いた円形又は多角形として重量の調整をするものでもよい。
【0038】
また、フラップ1には、浮体であるフロート材14が組み込まれていて、支軸12aを中心にバランスウエイトBWの重量と扉体3(フロート材14、水密ゴム環16を含む)の自重で均衡可能に配置されていて、バランスウエイトBWは支軸12aの左側上部に位置し、支軸12aを中心に右側には略逆く字状の扉体3が支持板12bで固定されている。
【0039】
図8及び
図9に示すように、扉体3の縦桁3a及び横桁3bの間にはフロート材14が組込まれており、その背面はフロート保護カバー15で覆われている。フロート材14の形状及び体積は任意であり、支持函体18Jの内寸の状況に応じて変えることが可能であり、任意に浮力調整を行うことができるようにされている。さらに、経年劣化によるフロート材14の交換取付けを簡便にできるようにされているが、所要の浮力を要する場合は、スキンプレート4側や扉体3の背面側に設けてもよい。
【0040】
扉体3の背面(川裏側RS)には、水密ゴム環16が貼設され、
図6に示すように、押えプレート16aを介してボルトで締結されていて、水密ゴム環16が戸当り2bに当接される辺の角度は、河川本流側RM方向に拡径されていて、水圧によりフラップ1がフラップ係止体17で受け止められ、拡径された辺も押圧されて戸当り金物2に当接されて水密性が保たれる。すなわち、水密ゴム環16は、フラップ1の外周に倣って矩形環状に形成されると共に、側断面視で、既設樋門20の河川本流側RMの流出口19Aに向かって拡径するように鈍角に屈曲して一体的に形成され、且つ、戸当り金物(ソケット)2の内壁面に当接する自由辺を有する構成とされている。
【0041】
尚、
図7に示すように、水密ゴム環16の四隅は隣り合う辺が円弧状に角を滑らかにした形であるが、角形状を成してもよい。また、水密ゴム環16の直線部分と四隅の角部分では水圧で押圧された際の撓み量が夫々に異なるために、CRゴムの硬さ45~65の範囲で、且つ、その四隅の角部分の厚みs1~s2を変化させ撓み量を調整することで、水圧で押圧された水密ゴム環16が戸当り2にCRゴムが密着し水密性が保たれている。
【0042】
ユニット式フラップゲートUGの各部材の材質については、鋼製部分については、ステンレス製材料、アルミニウム製材料、水密ゴム環16はCRゴム、フロート材14は発泡性スチロールが好ましいが、フロート保護カバー15及びフロート材14についてはこの限りではない。
【0043】
[流水位の状況に応じたフラップゲートの動作説明]
以下、
図12乃至
図15に基づいて、本実施例フラップゲートの動作を説明する。
【0044】
図12に、低水位で流水している状態または渇水状態の動作を示す。
扉体3は、支軸12aに懸垂状態で垂下されていて、扉体3の下部に張設された自由辺の水密ゴム環16端とプレキャストコンクリート筐体18Jの底版(河床)RB面には間隙があり、また、扉体側周面に張設された自由辺の水密ゴム端も戸当り金物2bに当接することなく間隙が設けられているので、その間隙を通水して川裏側から川表側へと流れる。すなわち、水密ゴム環16の自由辺に水圧による押圧力が加わっていないからである。さらに、渇水状態において、扉体3は、支軸12aに懸垂状態で垂下されていて揺動自由な状態になっている。
【0045】
図13は、支川水路が護岸ブロックBTを越えて函体内空に流水し充満した時の動作を示す。
既設樋門函体18内に流水が充満した状態で、尚且つ、支持函体18J内部の流水位も既設樋門函体18の内空高さを越えて支持函体18Jの頂版に到達するような水位状態では、扉体3の浮力で、略水平状態を維持して流水に漂う。その際、既設樋門函体18の内空高より支持筐体18Jの内空高さの方が高く、この高さの差の範囲内に扉体3が収まり、既設樋門函体内高さを侵すことはない。さらに、支持筐体18J内部の水位が更に上昇し、扉体3が浮上しようとしても、ウエイト7が頂版に当接して係止する。
【0046】
図14には、平常時水位の場合と河川本流側から流水が進入して逆流した場合のゲートの動作を示す。河川支流側の水位SFが平水位で流れている場合、フラップ1は、水流圧及びフロート材14の働きで、図中矢視(ア)の方向へ漂っている。また、本流側水位が支流側水位よりも高く逆流し、フラップ1の重心と浮心のバランスが変異した場合、フラップ1は、図中矢視(イ)の方向へ自動的に押圧されて係止体17に当接される。なお、河川本流側RMの水深Wh1を考慮して、フラップ1の重心と浮心の関係について解析した結果と、実物大のフラップゲートUGを製作して既設函体18を想定した水槽内実験結果とでは略一致していて、既設函体19Bの高さの5割程度で係止体17に当接されたことが確認された。
【0047】
図15は、河川本流側(川表側)の水位が流出口19Aを越えて堤防法面に到達した場合の扉体3が係止体17に当接した状況であるが、河川本流側の水位が上昇し流水が既設樋門函体18内を遡上し、垂下状態にあるフラップゲ-トUGが流水圧に押されながら係止体17に当接される。更には、逆流水位の上昇に伴い、扉体3の背面に張接された水密ゴム環16の自由辺にも水位の上昇に伴い水圧が加わり下方から順に下部の戸当り面2b、筐体側板2a、上部の戸当り面2bに当接されていく。初期の水位上昇の際には水圧が水密ゴム環16の強度よりも低いために戸当り面2と水密ゴム環16の隙間から河川支流側(川裏側)へと漏水するが、水位が上昇すると共に前述したように水密ゴム環16の自由辺先端部分が順次当接されて、河川本流側(川表側)の逆流水を堰き止める。なお、水密ゴム環16の自由辺先端の機能については、これもまた、製作したフラップゲートUGを用いて水槽内実験により完全に止水されたことが確認された。
【0048】
その後に、河川本流側(川表側)の水深Wh1が下がり、河川支流側の水深Wh2も下がり始めると、扉体3に加わった水圧が減少し水密ゴム環16に作用していた水圧も除去開放されながら、扉体3の自重と、バランスウエイトBWとフロート材14の浮力とのバランスにより[
図12]の状態に回帰する。
上記目的を達成するために、本発明のユニット式フラップゲートは、既設樋門の川表側流出口又は川裏側流入口の少なくとも一方に、支持函体を増設し、当該支持函体内にフラップゲートを内蔵したユニット式フラップゲートにおいて、前記支持函体がコンクリート製のボックスカルバートであり、当該ボックスカルバート内に戸当りとなる支持筐体を設け、さらに当該支持筐体に、前記支持函体内の底辺戸当り面から占有高を有して懸垂されると共に、揺動自在に軸承されたフラップを備えた扉体を設けたことを第1の特徴とする。また、支持函体が、コンクリート二次製品の函体、又は現場打設コンクリート製函体、鋼製函体であることを第2の特徴とする。さらに、支持函体の頂版に点検孔を開口すると共に、扉体を任意に巻き上げ可能な巻き上げ用ワイヤを挿入可能にしていることを第3の特徴とする。さらにまた、フラップゲートの扉体は、ステンレス製材料を主とし、アルミニウム製材料等の異種金属を併用してハイブリッドに構成されていることを第4の特徴とする。加えて、フラップが、自動調心ころベアリングが内蔵された軸受けにより揺動自在に軸承されていることを第5の特徴とする。