(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022056
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】LED電球
(51)【国際特許分類】
F21K 9/237 20160101AFI20240208BHJP
F21K 9/00 20160101ALI20240208BHJP
F21K 9/238 20160101ALI20240208BHJP
F21K 9/232 20160101ALI20240208BHJP
F21S 9/02 20060101ALI20240208BHJP
F21V 29/508 20150101ALI20240208BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20240208BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240208BHJP
【FI】
F21K9/237
F21K9/00 100
F21K9/238
F21K9/232
F21S9/02
F21V29/508
F21V29/83
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125378
(22)【出願日】2022-08-05
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522314315
【氏名又は名称】日本防災スキーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 央
(72)【発明者】
【氏名】元澤 和希
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、LED発光素子の発熱を効果的に外部へ放熱できるようにして、内蔵した蓄電池の熱による劣化を抑制できる。
【解決手段】基部(30)の内部に収納された蓄電池(40)を備える蓄電池内蔵型のLED電球(1)であって、基部(30)の筒状のケーシング(35)の周壁(35A)にはケーシング(35)の軸方向に沿って延びる長尺形状のスリット(36)が放射状に複数設けられており、スリット(36)は、ケーシング(35)の周壁(35A)を内側へ凹ませてなる凹部(37)における周方向の一方の側壁のみに形成した開口部(36a又は36b)を有し、当該開口部(36a又は36b)は、周方向の一方を向いて開口している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に実装された複数のLED発光素子を備えるLED基板と、
前記LED基板の表面側を覆う透光性のカバー部材と、
一端が前記LED基板の裏面側を覆うように設けられた筒状のケーシングを有する中空状の基部と、
前記基部の内部に収納された蓄電池と、
前記ケーシングの他端に連接された口金と、を備える蓄電池内蔵型のLED電球であって、
前記筒状のケーシングの周壁には前記ケーシングにおける前記一端から前記他端に向かう軸方向に沿って延びる長尺形状のスリットが放射状に複数設けられており、
前記スリットは、前記ケーシングの前記周壁を内側へ凹ませてなる凹部における前記周方向の一方の側壁のみに形成した開口部を有し、当該開口部は、前記周方向の一方を向いて開口している
ことを特徴とするLED電球。
【請求項2】
前記ケーシングの前記周壁は、前記軸方向に直交する断面が円形の壁部であり、
前記ケーシング内の前記蓄電池は、前記軸方向を長手方向とする円柱形状であり、
複数の前記スリットは、前記蓄電池の外周を囲む位置の前記周壁に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED電球。
【請求項3】
前記ケーシングの前記周壁は、前記他端側から前記一端側に向かうに連れてその径寸法が次第に大きくなる形状であり、
前記凹部は、前記他端側から前記一端側に向かうに連れてその深さが次第に深くなる形状であり、
前記スリットの前記開口部は、前記他端側から前記一端側に向かうに連れてその幅寸法が次第に大きくなる形状である
ことを特徴とする請求項1に記載のLED電球。
【請求項4】
前記蓄電池はリチウムイオン二次電池である
ことを特徴とする請求項1に記載のLED電球。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED発光素子を備えるLED電球に関し、詳細にはリチウムイオン電池などの蓄電池を内蔵したLED電球に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED発光素子を備えるLED電球(電球型LED照明)が普及している。LED電球は、従来の白熱電球や蛍光灯内蔵型電球と比較して消費電力が大幅に少なく耐用年数が長い。また、このようなLED電球には、例えば特許文献1に示すように、リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池)などの蓄電池(バッテリー)を内蔵し、停電時やソケットから取り外した際に蓄電池に蓄えられた電力でLED電球を発光させるようにして、非常灯や懐中電灯としての機能を備えたものがある。すなわち、特許文献1に示すLED電球は、LED駆動電源に接続された非常灯制御モジュールを備えており、主電源が接続された状態では、主電源からの電力供給でLED駆動電源がLEDを点灯させると共にバッテリーを充電する。そして、停電時などの非常時に主電源が切断されると、LED駆動電源はバッテリーによる電力供給に切り換えられてLEDを点灯させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案登録第205535164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LED電球に内蔵する蓄電池として、特にリチウムイオン電池を用いた場合、リチウムイオン電池は熱による劣化が生じ易いという特性がある。その一方で、LED電球では、特にLED発光素子の発熱が著しいため、LED発光素子から発熱した熱が蓄電池に伝わり、蓄電池の温度が上昇してその劣化が進んでしまうおそれがある。そのため、蓄電池を内蔵したLED電球では、LED発光素子の発熱を効果的に外部へ放熱できる構造を採用することで、蓄電池の熱による劣化を抑制できるようにすることが必要である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、LED発光素子の発熱を効果的に外部へ放熱できるようにして、内蔵した蓄電池の熱による劣化を抑制できるLED電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るLED電球は、表面(10a)に実装された複数のLED発光素子(12)を備えるLED基板(10)と、前記LED基板(10)の表面(10a)側を覆う透光性のカバー部材(25)と、一端(35b)が前記LED基板(10)の裏面(10b)側を覆うように設けられた筒状のケーシング(35)を有する中空状の基部(30)と、前記基部(30)の内部に収納された蓄電池(40)と、前記ケーシング(35)の他端(35a)に連接された口金(50)と、を備える蓄電池内蔵型のLED電球(1)であって、前記筒状のケーシング(35)の周壁(35A)には前記ケーシング(35)における前記一端(35b)から前記他端(35a)に向かう軸方向に沿って延びる長尺形状のスリット(36)が放射状に複数設けられており、前記スリット(36)は、前記ケーシング(35)の前記周壁(35A)を内側へ凹ませてなる凹部(37)における前記周方向の一方の側壁のみに形成した貫通孔からなる開口部(36a又は36b)を有し、当該開口部(36a又は36b)は、前記周方向の一方を向いて開口していることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかるLED電球によれば、蓄電池を収容した基部を覆うケーシングに当該ケーシングの軸方向に沿って延びる長尺形状に形成された貫通孔からなる開口部を有する複数のスリットを設けたことで、当該スリットの開口部を介して基部の内部と外部との通気が確保される。したがって、LED発光素子からの発熱が蓄電池に伝わる前に当該熱を含む気体をスリットから基部の外部へ放出させることができるので、LED発光素子の発熱による蓄電池の劣化を防止できる。特に本発明では、スリットの開口部は、ケーシングの周壁を内側へ凹ませてなる凹部における周方向の一方の側壁のみに形成した開口部であって、当該開口部は、周方向の一方を向いて開口していることで、LED発光素子が発光している際、LED発光素子からの発熱で、放射状に設けた複数のスリットの開口部それぞれから熱を含む気体が基部の外部へ放出され、基部内に周方向の一方に向かって旋回する気体の流れ(旋回気流)が形成されるようになる。このような旋回気流の形成によって、LED発光素子からの発熱をより効果的に基部の外部へ放出させることができるので、LED発光素子からの発熱が蓄電池に伝わることをより効果的に抑制でき、蓄電池が高温の環境に晒されることを回避して熱による劣化を防止できる。
【0008】
また、本発明のLED電球では、前記ケーシング(35)の前記周壁(35A)は、前記軸方向に直交する断面が円形の壁部であり、前記ケーシング(35)内の前記蓄電池(40)は、前記軸方向を長手方向とする円柱形状であり、複数の前記スリット(36)は、前記蓄電池(40)の外周を囲む位置の前記周壁(35A)に形成されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、円柱形状の蓄電池の外周を囲む位置に複数のスリットが形成されていることで、蓄電池の周囲に周方向の一方に向かって旋回する気体の流れ(旋回気流)が形成されるので、当該旋回気流によって、蓄電池の周囲の気体を効果的に基部の外部へ排出させることができる。したがって、LED発光素子からの熱を含む気体が蓄電池に達する前に当該旋回気流に乗って外部へ放出されるようになるので、LED発光素子からの発熱が蓄電池に伝わることを更に確実に抑制でき、蓄電池の熱による劣化を防止できる。
【0010】
また、本発明のLED電球では、前記ケーシング(35)の前記周壁(35A)は、前記他端(35a)側から前記一端(35b)側に向かうに連れてその径寸法が次第に大きくなる形状であり、前記凹部(37)は、前記他端(35a)側から前記一端(35b)側に向かうに連れてその深さが次第に深くなる形状であり、前記スリット(36)の開口部(36a)は、前記他端(35a)側から前記一端(35b)側に向かうに連れてその幅寸法が次第に大きくなる形状であってもよい。
【0011】
この構成によれば、スリットの開口部がケーシングの口金側である他端側からLED基板側である一端側に向かうに連れてその幅寸法が次第に大きくなる形状であることで、LED発光素子が実装されたLED基板に近い側の幅寸法がより大きな寸法となっている。これにより、LED発光素子からの熱を含む気体をスリットの開口部から基部の外部へより効果的に放出させることができるので、LED発光素子からの発熱が蓄電池に伝わることをより効果的に抑制できる。
【0012】
また、本発明のLED電球では、前記蓄電池(40)はリチウムイオン二次電池であってよい。
【0013】
一般にリチウムイオン二次電池は所定温度以上の高温環境下に置かれると劣化が進む性質があるところ、本発明のLED電球では、上記構成のスリットを設けたことで、LED発光素子からの発熱が蓄電池に伝わることを効果的に抑制でき、蓄電池が高温の環境に晒されることを回避して熱による劣化を防止できる。
【0014】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるLED電球によれば、簡単な構成で、LED発光素子の発熱を効果的に外部へ放熱できるようにして、内蔵した蓄電池の熱による劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るLED電球の外観構成を示す図である。
【
図5】LED電球の電気回路の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】LED電球の作用を説明するための図で、基部内の気体の流れを示す図である。
【
図7】LED電球の作用を説明するための図で、基部内の気体の流れを示す図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係るLED電球を示す図である。
【
図9】LED電球の作用を説明するための図で、基部内の気体の流れを示す図である。
【
図10】LED電球の作用を説明するための図で、基部内の気体の流れを示す図である。
【
図14】LED電球の内部構造を省略した断面を示す図で、
図11のD-D矢視に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態にかかるLED電球の外観構成を示す図である。また、
図2は、
図1のA-A矢視断面を示す図、
図3は、
図1のB-B矢視断面を示す図、
図4は
図2のC部分の拡大図である。これらの図に示すように、本実施形態のLED電球1は、複数(多数)のLED発光素子12が表面10aに実装されてなるLED基板10と、LED基板10の表面10a側を覆う透光性のカバー部材(グローブ)25を有する発光部20と、一端(後述する下端35b)がLED基板10の裏面10b側を覆うように設けられた筒状のケーシング35を有する中空状の基部30と、基部30の内部に収納されたリチウムイオン二次電池からなる蓄電池(バッテリー)40と、ケーシング35の他端(後述する上端35a)に連接された口金50と、を備える蓄電池内蔵型のLED電球である。
【0018】
なお、
図1では、LED電球1をその発光部20側が下側となり口金50側が上側となるような向きで図示している。また、ケーシング35におけるLED基板10側の端部を下端(本発明の一端)35bとし、口金50側の端部を上端(本発明の他端)35aとし、下端35bと上端35aの一方から他方に向かう方向(
図1及び
図3の上下方向)をLED電球1の軸方向Lとしている。
【0019】
カバー部材25は、半透明の合成樹脂材で略半球形状(ドーム形状)に形成されており、LED基板10に実装された複数(多数)のLED発光素子12を覆っている。カバー部材25によってLED電球1の発光部20が構成されている。LED発光素子12が発光するとその光がカバー部材25を介して外部に拡散されることで発光部20の全体が均一に発光するようになっている。
【0020】
LED基板10の裏面10b側には、発光部20と基部30との間を仕切る仕切壁27が設けられている。仕切壁27は、発光部20と基部30の間を仕切る板状の部分であって、その面には複数の開口部27aが設けられていて、当該開口部27aを介して発光部20の内部と基部30の内部が連通している。
【0021】
基部30は、略筒状のケーシング35によって画成された中空部である。ケーシング35の周壁35Aは、軸方向に直交する断面が円形の壁部である。また、ケーシング35の周壁35Aは、ケーシング35の上端35a側から下端35b側に向かうに連れてその径寸法が次第に大きくなる形状である。ケーシング35は合成樹脂製の成型品とすることができるほか、比較的に熱伝導率の高いアルミニウムなど金属製の薄板材などで構成してもよい。
【0022】
また、基部30内のケーシング35の下端35bの近傍の位置(仕切壁27の真上の位置)には、後述する停電検知回路120などを構成するための電子部品65が実装された回路基板60が設置されている。なお、各図では、回路基板60とLED基板10及び蓄電池40を繋いでいる配線類やコネクタ等は図示を省略している。
【0023】
基部30内に設置した蓄電池40は、軸方向を長手方向とする円柱形状であり、その軸心が平面視で基部30内の中央(中心)に位置するように設置されている。蓄電池40は、軸方向Lの一端である下端40bが回路基板60の近傍(真上位置)に配置され、軸方向Lの他端である上端40aが口金50の近傍に配置されていることで、基部30内で軸方向Lの略全体に渡って配置されている。
【0024】
そして、本実施形態のLED電球1では、筒状のケーシング35の周壁35Aには、ケーシング35における下端35bから上端35aに向かう方向である軸方向Lに沿って延びる長尺形状の貫通孔である開口部36aを有するスリット36が放射状に複数設けられている。図示するものでは、周壁35Aの周方向に沿って等間隔に8個のスリット36が設けられている。
図2に示すように、スリット36は、ケーシング35の周壁35Aを内側へ凹ませてなる凹部37における周方向の一方(
図2に示す反時計周り側を向く方)の側壁のみに形成した開口部36aを有しており、当該開口部36aは、周方向の一方(反時計周り側を向く方)を向いて開口している。すなわち、凹部37における他方(
図2に示す時計周り側を向く方)の側壁37aは塞がれており開口していない。
【0025】
ここで、本実施形態のLED電球1における電気回路の構成を説明する。
図5は、LED電球の電気回路の概略構成を示すブロック図である。本実施形態のLED電球1は、口金50を建物内などの電球ソケット(図示せず)に装着して商用電源(交流電源)の供給を受けることで、通常のLED電球や蛍光灯内蔵型電球と同様に照明具として用いることができる。その際、電球ソケットから交流電源が供給されている状態では、交流電源より口金50を介して供給される電力をAC/DCコンバーター100により直流電力に変換し、DC/DC定電流供給モジュール130を介してLED発光素子12に供給して発光させると共に、蓄電池40を充電することができる。その一方で、停電発生時など交流電源が遮断されたときには、停電検知回路120で交流電源が遮断されたことを検知し、充電されている蓄電池40から直流電力をLED発光素子12に供給して発光させることができる。これにより、LED電球1を停電時の非常灯として機能させることが可能である。
【0026】
LED電球1の口金50を電源ソケットから取り外し、その状態で口金50の端子を短絡させることでも、停電検知回路120にて交流電源が遮断されたことを検知させることができるので、LED電球1を発光させることができる。これにより、LED電球1を携帯型の照明具としても利用することができる。なお、図示は省略するが、口金50の端子を短絡させるためのスイッチを内蔵した専用ソケットを口金50に取り付ければ、スイッチのオンオフで点灯・消灯を切り替えることができるようになり、LED電球1をバッテリー内蔵型の携帯型LEDランプ等として用いることができる。
【0027】
本実施形態のLED電球1は、表面10aに実装された複数のLED発光素子12を備えるLED基板10と、LED基板10の表面10a側を覆う透光性のカバー部材25と、一端がLED基板10の裏面10b側を覆うように設けられた筒状のケーシング35を有する中空状の基部30と、基部30の内部に収納された蓄電池40と、ケーシング35の上端(他端)35aに連接された口金50とを備える蓄電池内蔵型のLED電球である。そして、筒状のケーシング35の周壁35Aにはケーシング35の軸方向に沿って延びる長尺形状のスリット36が放射状に複数設けられており、このスリット36は、ケーシング35の周壁35Aを内側へ凹ませてなる凹部37における周方向の一方の側壁37aのみに形成した貫通孔からなる開口部36aを有し、当該開口部36aは、周方向の一方を向いて開口している。
【0028】
本実施形態のLED電球1によれば、蓄電池40を収容した基部30を覆うケーシング35に当該ケーシング35の軸方向に沿って延びる長尺形状に形成された貫通孔からなる開口部36aを有する複数のスリット36を設けたことで、当該スリット36を介して基部30の内部と外部の通気が確保される。したがって、LED発光素子12からの発熱が蓄電池40に伝わる前に当該熱を含む気体をスリット36から基部30の外部へ放出させることができるので、LED発光素子12の発熱による蓄電池40の劣化を防止できる。
【0029】
特に、本実施形態のLED電球1では、スリット36の開口部36aは、ケーシング35の周壁35Aを内側へ凹ませてなる凹部37における周方向の一方の側壁37aのみに形成した開口部36aであって、当該開口部36aは、周方向の一方を向いて開口している。これにより、LED発光素子12が発光している際、LED発光素子12からの発熱で、放射状に設けた複数のスリット36の開口部36aそれぞれから熱を含む気体が基部30の外部へ放出されることで、基部30内に周方向の一方に向かって旋回する気体の流れ(旋回気流)が形成されるようになる。
【0030】
図面を参照して上記の点をより詳細に説明する。
図6及び
図7は、LED電球の作用を説明するための図で、基部30内の気体の流れを示す図である。なお、LED電球1は、室内の天井などの高い位置に設置した電球ソケットに取り付けられて下方を照らすように設置する場合が多い。そのため、照明としての使用時にはこれらの図に示すように発光部20を下にして口金50を上に向けた状態で使用する場合が多い。そして、基板10に実装されたLED発光素子12が発光している際、基部30のケーシング35内には、これらLED発光素子12からの発熱で温められた気体によって上昇気流が生じる。この温められた気体を含む上昇気流は、
図6に矢印X1で示すように、ケーシング35の放射状に設けた複数のスリット36の開口部36aそれぞれから基部30の外部へ放出される。これにより、
図6の矢印Y1及び
図7の矢印Z1に示すように、基部30内における蓄電池40の周囲に周方向の一方に向かって旋回する気体の流れ(旋回気流)が形成される。当該旋回気流の形成によって、LED発光素子12からの発熱をより効果的に基部30の外部へ放出させることができるので、LED発光素子12からの発熱が蓄電池40に伝わることをより効果的に抑制でき、蓄電池40が高温の環境に晒されることを回避して熱による劣化を防止できる。
【0031】
また、本実施形態のLED電球1では、ケーシング35の周壁35Aは、軸方向に直交する断面が円形の壁部であり、ケーシング35内の蓄電池40は、軸方向を長手方向とする円柱形状であり、複数のスリット36は、蓄電池40の外周を囲む位置の周壁35Aに形成されている。
【0032】
この構成によれば、円柱形状の蓄電池40の外周を囲む位置に複数のスリット36が形成されていることで、蓄電池40の周囲に周方向の一方に向かって円形に旋回する気体の流れ(円形旋回気流)が形成されるので、当該円形旋回気流によって、蓄電池40の周囲の気体を更に効果的に基部30の外部へ排出させることができる。したがって、LED発光素子12からの熱を含む気体が蓄電池40に達する前に当該円形旋回気流に乗って外部へ放出されるようになるので、LED発光素子12からの発熱が蓄電池40に伝わることをより効果的に抑制できる。
【0033】
また、本実施形態のLED電球1では、ケーシング35の周壁35Aは、上端(他端)35a側から下端(一端)35b側に向かうに連れてその径寸法が次第に大きくなる形状であり、凹部37は、上端(他端)35a側から下端(一端)35b側に向かうに連れてその深さが次第に深くなる形状であり、スリット36の開口部36aは、上端(他端)35a側から下端(一端)35b側に向かうに連れてその幅寸法が次第に大きくなる形状である。
【0034】
この構成によれば、スリット36は、ケーシング35の口金50側である上端(他端)35a側からLED基板10側である下端(一端)35b側に向かうに連れてその幅寸法が次第に大きくなる形状であることで、LED発光素子12が実装されたLED基板10に近い側の幅寸法がより大きな寸法となっている。これにより、LED発光素子12からの熱を含む気体をより早い段階で(蓄電池40に達する前に)スリットから基部30の外部へより効果的に放出できるので、LED発光素子12からの発熱が蓄電池40に伝わることをより効果的に抑制できる。
【0035】
また、本実施形態のLED電球1では、蓄電池40はリチウムイオン二次電池であるが、一般にリチウムイオン二次電池は所定温度以上の高温環境下に置かれると劣化が進む特性があるところ、上記構成のスリット36を設けたことでLED発光素子12からの発熱が蓄電池40に伝わることを効果的に抑制でき、蓄電池40が高温の環境に晒されることを回避して熱による劣化を防止できる。特に、リチウムイオン電池は一般にその許容温度は約45℃~50℃程度であり、LED発光素子12による発熱が顕著な場合には、LED発光素子12やその周辺の温度が当該許容温度付近まで上昇するおそれがあるところ、本実施形態のLED電球1では、基部30のケーシング35に、上記のような効果的な放熱を実現可能なスリット36及び開口部36aを備えたことで、基部30内の温度上昇を効果的に抑制できる。したがって、リチウムイオン電池からなる蓄電池40の劣化を回避して、非常灯としてのLED電球1の耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
なお、本実施形態のLED電球1は、停電時に非常灯として自動的に点灯させることができるので、宅内の避難経路となり得る場所など非常時に照明が必要な箇所のLED電球として日常的に使用することで、万一の災害発生時に有用なLED電球となる。
【0037】
なお、
図11乃至
図14は、第一実施形態のLED電球1を示す図(意匠図)であり、
図11は、正面図、
図12は、平面図、
図13は、底面図、
図14は、LED電球1の内部構造を省略した断面を示す図で、
図11のD-D矢視に対応する断面図である。LED電球1の右側面図及び左側面図と背面図はいずれも
図11の正面図と対称に表われる。
【0038】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態の説明及び対応する図面においては、第一実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第一実施形態と同じである。
【0039】
図8は、本発明の第二実施形態に係るLED電球を示す図で、
図1のA-Aに対応する位置の矢視断面を示す図である。第一実施形態のLED電球1では、ケーシング35に設けたスリット36は、凹部37における周方向の一方(
図2に示す反時計周り側を向く方)の側壁のみに形成した開口部36aを有し、当該開口部36aは、当該一方(反時計周り側を向く方)を向いて開口していたのに対して、本実施形態のLED電球1-2では、ケーシング35に設けたスリット36-2は、凹部37-2における周方向の他方(
図7に示す時計周り側を向く方)の側壁のみに形成した開口部36bを有し、当該開口部36bは、当該他方(時計周り側を向く方)を向いて開口している。そして、凹部37における一方(
図7に示す反時計周り側を向く方)の側壁37bは塞がれており開口していない。
【0040】
すなわち、本実施形態のLED電球1-2では、ケーシング35に設けたスリット36-2の開口部36bが第一実施形態のLED電球1のスリット36の開口部36aとは周方向の反対側を向いて開口している点で第一実施形態のLED電球1と異なっている。
【0041】
図9及び
図10は、第二実施形態のLED電球の作用を説明するための図で、基部内の気体の流れを示す図である。本実施形態のLED電球1-2においても、基板10に実装されたLED発光素子12が発光している際、基部30のケーシング35内には、これらLED発光素子12からの発熱で温められた気体によって上昇気流が生じる。この温められた気体を含む上昇気流は、
図9に矢印X2で示すように、ケーシング35の放射状に設けた複数のスリット36-2の開口部36bそれぞれから基部30の外部へ放出される。これにより、
図9の矢印Y2及び
図10の矢印Z2に示すように、基部30内における蓄電池40の周囲に周方向の一方に向かって旋回する気体の流れ(旋回気流)が形成される。なお、本実施形態のLED電球1-2では、ケーシング(周壁)の周方向における開口部36bの開口している向きが第一実施形態のLED電球1の開口部36aとは逆向きであるため、矢印X2に示す気流の向き、及び矢印Y2及びZ2に示す旋回気流の向きも逆向きとなっているが、それ以外の点は、第一実施形態のLED電球1の作用と同じである。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1-2 LED電球
10 LED基板
10a 表面
10b 裏面
12 LED発光素子
20 発光部
25 カバー部材(グローブ)
27 仕切壁
27a 開口部
30 基部
35 ケーシング
35A 周壁
35a 上端(他端)
35b 下端(一端)
36,36-2 スリット
36a 開口部
36b 開口部
37 凹部
37a 側壁
37b 側壁
40 蓄電池(リチウムイオン二次電池)
40a 上端
40b 下端
50 口金
60 回路基板
65 電子部品
100 AC/DCコンバーター
120 停電検知回路部
130 定電流供給モジュール
L 軸方向