(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002206
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】物質分離装置、分析装置及び分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/537 20060101AFI20231228BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20231228BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N33/537
G01N33/536 D
G01N21/64 F
G01N21/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101265
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】今井 阿由子
(72)【発明者】
【氏名】住吉 研
(72)【発明者】
【氏名】重村 幸治
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA01
2G043HA02
2G043HA05
2G043HA07
2G043LA03
2G043NA01
(57)【要約】
【課題】分子量の大きな測定対象物を正確に定量測定することができる物質分離装置、分析装置及び分析方法を提供する。
【解決手段】物質分離装置1は、溶液が収容される内部が、透析膜4によって第1室2aと第2室2bとに仕切られている反応容器2を備える。検体Sが第1室2aに収容され、検体Sに含まれ透析膜4の分画分子量よりも分子量が大きい測定対象物Tと特異的に結合する結合能を有し、色素修飾分子Mが第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に収容される。色素修飾分子Mは、透析膜4の分画分子量よりも分子量が小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液が収容される内部が、透析膜によって第1室と第2室とに仕切られている反応容器を備え、
検体が前記第1室に収容され、
前記検体に含まれ前記透析膜の分画分子量よりも分子量が大きい測定対象物と特異的に結合する結合能を有する色素修飾分子が、前記第1室及び前記第2室の少なくとも一方に収容され、
前記色素修飾分子は、前記透析膜の分画分子量よりも分子量が小さい、
物質分離装置。
【請求項2】
前記反応容器は、それぞれ内部が透析膜によって第1室と第2室とに仕切られている、第1反応容器および第2反応容器を含み、
前記第1反応容器及び前記第2反応容器に、互いに種類が異なる検体が収容されるとともに種類が同一の色素修飾分子が収容されるか、
前記第1反応容器及び前記第2反応容器に、種類が同一の検体が収容されるとともに互いに種類が異なる色素修飾分子が収容される、
請求項1に記載の物質分離装置。
【請求項3】
請求項1に記載の物質分離装置と、
前記物質分離装置の反応容器の第1室及び第2室の少なくとも一方に、色素を発光させる励起光を照射するとともに、前記励起光が照射された部分の発光強度か、前記発光強度及び偏光度かのいずれかを検出する検出光学系と、
を備える分析装置。
【請求項4】
前記検出光学系は、発光強度及び偏光度を検出する、
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の物質分離装置と、
第1色素を発光させる第1励起光を前記物質分離装置の第1反応容器に照射する第1光源部と、
第2色素を発光させる第2励起光を前記物質分離装置の第2反応容器に照射する第2光源部と、
前記第1反応容器での発光強度か、発光強度及び偏光度かのいずれかと、前記第2反応容器での発光強度か、発光強度及び偏光度かのいずれかと、を個別に検出する検出部と、
を備え、
前記第1反応容器に収容された色素修飾分子は、前記第1色素で修飾され、
前記第2反応容器に収容された色素修飾分子は、前記第2色素で修飾されている、
分析装置。
【請求項6】
請求項2に記載の物質分離装置と、
色素を発光させる励起光を前記物質分離装置の第1反応容器及び第2反応容器に照射する光源部と、
前記第1反応容器での発光強度か、発光強度及び偏光度かのいずれかを検出する第1検出部と、
前記第2反応容器での発光強度か、発光強度及び偏光度かのいずれかを検出する第2検出部と、
を備える分析装置。
【請求項7】
溶液が収容され透析膜を介して仕切られた反応容器の第1室及び第2室のうち、前記第1室に検体を収容し、
前記第1室及び前記第2室の少なくとも一方に、前記検体に含まれ前記透析膜の分画分子量よりも分子量が大きい測定対象物と特異的に結合する結合能を有し、前記透析膜の分画分子量よりも分子量が小さい色素修飾分子を収容する、
分析方法。
【請求項8】
前記第1室及び前記第2室の少なくとも一方に色素を発光させる励起光を照射するとともに、前記第1室及び前記第2室のうち、前記励起光が照射された部分の発光強度か、発光強度及び偏光度かのいずれかを検出する、
請求項7に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物質分離装置、分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイは、抗体-抗原反応を利用した分析法である(非特許文献1、2参照)。イムノアッセイによれば、測定対象物と特異的に結合する抗体を利用し、抗原を感度良く検出することができる。なかでも、抗体と結合した標識抗原(bound,B)と遊離の標識抗原(free,F)との分離(B/F分離)を行う不均一法は、高感度測定法として知られている。しかし、B/F分離を行うには、別途機器が必要となり、測定システムが煩雑となるため、B/F分離を必要としない方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
B/F分離では、抗体の固定化を行ったのち洗浄を行う固相法が用いられるのが一般的である。しかし、固相法には、以下の様な課題がある。
(1)固定化のための試薬、表面処理等が必要となる。
(2)抗体固定を高密度に行い、後の非特異結合と区別できるようにする必要がある。
(3)抗体固定の作業に時間がかかる。
(4)一方、対象表面により抗体固定状態にばらつきが起こり得る。
(5)測定に多数の手順を必要とするため、簡易分析には不向きである。
【0005】
一方、洗浄を必要としないB/F分離手段として透析が古くから知られている。しかしながら、透析によるB/F分離法では、抗原(測定対象物)の分子サイズが、抗体と比較して十分に小さくある必要がある。従って、この方法は、分子量の大きなタンパク質などを正確に測定するには不向きであり、測定可能な測定対象物が限定される。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、分子量の大きな測定対象物を正確に定量測定することができる物質分離装置、分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る物質分離装置は、
溶液が収容される内部が、透析膜によって第1室と第2室とに仕切られている反応容器を備え、
検体が前記第1室に収容され、
前記検体に含まれ前記透析膜の分画分子量よりも分子量が大きい測定対象物と特異的に結合する結合能を有する色素修飾分子が、前記第1室及び前記第2室の少なくとも一方に収容され、
前記色素修飾分子は、前記透析膜の分画分子量よりも分子量が小さい。
【0008】
本開示の第2の観点に係る分析装置は、
第1の観点に係る物質分離装置と、
前記物質分離装置の反応容器の第1室及び第2室の少なくとも一方に、色素を発光させる励起光を照射するとともに、前記励起光が照射された部分の発光強度か、前記発光強度及び偏光度かのいずれかを検出する検出光学系と、
を備える。
【0009】
本開示の第3の観点に係る分析方法は、
溶液が収容され透析膜を介して仕切られた反応容器の第1室及び第2室のうち、前記第1室に検体を収容し、
前記第1室及び前記第2室の少なくとも一方に、前記検体に含まれ前記透析膜の分画分子量よりも分子量が大きい測定対象物と特異的に結合する結合能を有し、前記透析膜の分画分子量よりも分子量が小さい色素修飾分子を収容する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、分子量の大きな測定対象物を正確に定量測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は、本開示の実施の形態1に係る物質分離装置の反応容器の構成を示す斜視図である。(B)は、(A)の反応容器に収容される物質を示す模式図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る分析処理を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る物質分離装置の反応容器の変形例を示す斜視図である。
【
図4】本開示の実施の形態2に係る分析装置の構成を示す模式図である。
【
図5】本開示の実施の形態2に係る分析処理を示すフローチャートである。
【
図6】(A)及び(B)は、本開示の実施の形態3に係る物質分離装置の第1反応容器と第2反応容器とに投入される検体及び分子の例を示す模式図である。
【
図7】本開示の実施の形態4に係る分析装置の構成を示す模式図である。
【
図8】本開示の実施の形態5に係る分析装置の構成を示す模式図である。
【
図9】本開示の実施の形態6に係る分析装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本開示は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。なお、下記の実施の形態において、“有する”、“含む”又は“含有する”といった表現は、“からなる”又は“から構成される”という意味も包含する。
【0013】
(実施の形態1)
図1(A)に示すように、本実施の形態に係る物質分離装置1は、反応容器2を備える。溶液Lが収容される反応容器2の内部は、仕切壁3で2つの部屋に仕切られている。一方の部屋を第1室2aとし、もう一方の部屋を第2室2bとする。
【0014】
仕切壁3の少なくとも一部には、透析膜4が設けられている。透析膜4を介して、第1室2aと第2室2bとの間で溶液Lが通過可能である。透析膜4としては、溶液Lに耐性のあるもの、後述するように、測定対象物T及び色素修飾分子Mの分子量との関係で所定の分画分子量(Molecular Weight Cut Off;MWCO)を有するものが用いられる。
【0015】
図1(B)に示すように、測定対象である検体Sは、第1室2aに収容される。検体Sには測定対象物Tが含まれている。一方、色素修飾分子Mは第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に収容される。色素修飾分子Mは、色素としての蛍光色素Fで修飾(標識)されている。色素修飾分子Mは、測定対象物Tと特異的に結合する結合能を有する。
【0016】
測定対象物Tの分子量は、透析膜4の分画分子量(MWCO)より大きい。したがって、測定対象物Tは、第1室2aに収容されたままとなり、第2室2bに移動しない。一方、色素修飾分子Mは、透析膜4のMWCOよりも分子量が小さい。したがって、色素修飾分子Mは、測定対象物Tと結合しなければ、透析膜4を介して第1室2aと第2室2bとの間を移動可能である。第1室2aに移動した色素修飾分子Mは、測定対象物Tと結合する。
【0017】
測定対象物Tの濃度が高い場合、第1室2aでは、多くの色素修飾分子Mが測定対象物Tと結びつく。測定対象物Tの濃度が高ければ高いほど、測定対象物Tと結合する色素修飾分子Mの数が多くなり、色素修飾分子Mの濃度が低くなる。一方、測定対象物Tの濃度が低い場合、第1室2aにおいて測定対象物Tと結びつく色素修飾分子M(結合型)の数が少ないため、測定対象物Tと結合していない色素修飾分子M(遊離型)の数が多くなる。
【0018】
このように、結合型の色素修飾分子Mの数と、遊離型の色素修飾分子Mの数とは、測定対象物Tの濃度によって変化する。一方、第1室2a又は第2室2bに蛍光色素Fを発光させる励起光を照射した場合の蛍光色素Fの発光強度P1等は、第1室2aにおける測定対象物Tの濃度に応じて変化する。したがって、発光強度P1等を検出すれば、測定対象物Tの濃度を推定することができる。
【0019】
なお、測定対象物Tと色素修飾分子Mとの結合物(複合体)は、透析膜4を介して第2室2bに移動することができず、第1室2aに留まる一方、遊離型の濃度は一定時間経過後の平衡状態では、第1室2aと第2室2bとで同じとなるため、
図1(B)に示すように、第1室2aには、結合型と遊離型が共存した状態となる。発光強度P1に基づく測定対象物Tの濃度推定は、この点を留意して行う必要がある。
【0020】
[測定対象物、色素修飾分子及び透析膜]
測定対象物Tとして、例えば、タンパク質などの大分子を選択することができる。例えば、オボアルブミン、βラクトグロブリンがある。測定対象物Tをオボアルブミン(分子量43kDa)とする場合、色素修飾分子Mとして例えばVHH(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain antibody)抗体(分子量15kDa)を選択することができる。この場合、透析膜4のMWCOは例えば20kDaとすることができる。測定対象物Tをβラクトグロブリン(分子量18.3kDa)とする場合、色素修飾分子Mとしてアプタマー(例えば、分子量8kDa)を選択することができる。この場合、透析膜4のMWCOは例えば10kDaとすることができる。また、色素修飾分子MとしてFab抗体を用いるようにしてもよい。このように、透析膜4のMWCOは、測定対象物T及び色素修飾分子Mに基づいて決定される。
【0021】
[蛍光色素]
蛍光色素Fとは、励起光により励起されて蛍光を発光する色素である。蛍光色素Fにはそれぞれ独自の蛍光寿命が存在する。本開示では、修飾される色素修飾分子Mの分子量などに応じて、蛍光寿命が1~10ナノ秒の蛍光色素、蛍光寿命が10ナノ秒超から200ナノ秒の蛍光色素F、蛍光寿命が200ナノ秒超から3,000ナノ秒の蛍光色素Fを適宜選択して、使用することができる。例えば、蛍光寿命が1~10ナノ秒の蛍光色素Fとしては、インドレニン、クロロトリアジニルアミノフルオレセイン、4’-アミノメチルフルオレセイン、5-アミノメチルフルオレセイン、6-アミノメチルフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5および6-アミノフルオレセイン、チオウレアフルオレセイン、メトキシトリアジニルアミノフルオレセインなどのフルオレセイン化合物、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン6GPなどのローダミン誘導体;登録商標又は商品名としてAlexa Fluor 488などのAlexa Fluorシリーズ、BODIPYシリーズ、DYシリーズ、ATTOシリーズ、Dy Lightシリーズ、Oysterシリーズ、HiLyte Fluorシリーズ、Pacific Blue、Marina Blue、Acridine、Edans、Coumarin、DANSYL、FAN、Oregon Green、Rhodamine Green-X、NBD-X、TET、JOE、Yakima Yellow、VIC、HEX、R6G、Cy3、TAMRA、Rhodamine Red-X、Redmond Red、ROX、Cal Red、Texas Red、LC Red 640、Cy5、Cy5.5、LC Red 705がある。また、蛍光寿命が10ナノ秒超から200ナノ秒の蛍光色素Fとしては、ジアルキルアミノナフタレンスルホニルなどのナフタレン誘導体、N-(1-ピレニル)マレイミド、アミノピレン、ピレンブタン酸、アルキニルピレンなどのピレン誘導体がある。更に、蛍光寿命が200ナノ秒超から3,000ナノ秒の蛍光色素Fとしては、白金、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ユーロピウムなどの金属錯体がある。
【0022】
分子Mを蛍光色素Fで修飾(標識)するには、例えば蛍光色素Fと分子Mとを、直接共有結合させるか、オリゴエチレングリコール及びアルキル鎖等のリンカーを介して結合させればよい。蛍光色素Fは、分子のカルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール及びフェニル基等に結合し得る官能基を有する。蛍光色素F及び分子Mのそれぞれの官能基を、公知の条件下で反応させることで、分子Mを蛍光色素Fで標識することができる。なお、1分子を修飾する蛍光色素Fの分子の個数は、任意に選択することができる。好ましくは1分子に対して1分子以上であり、2~5分子であってもよい。
【0023】
次に、本実施の形態に係る物質分離装置1を用いた分析方法、すなわち分析処理について説明する。なお、前提として、測定対象物Tの分子量より小さく、色素修飾分子Mの分子量より大きいMWCOを有する透析膜4が仕切壁3に設置され、反応容器2に溶液Lが収容されているものとする。
【0024】
分析処理において、
図2に示すように、まず、第1室2aに検体Sを収容する(ステップS1)。続いて、第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に、色素修飾分子Mを収容する(ステップS2)。その後、一定時間経過するまで待つ(ステップS3;No)。一定時間経過後(ステップS3;Yes)、物質分離装置1による分析方法を終了する。
【0025】
一定時間経過後、反応容器2内では、測定対象物Tと結合した色素修飾分子M(結合型)が、第1室2aに留まり、第2室2b内に移動しない。したがって、例えば、第1室2a又は第2室2bにある溶液Lを測定セルに移し替え、測定セルに蛍光色素Fを発光させる励起光を照射し、測定セルの蛍光の発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出すれば、後述するように、測定対象物Tの濃度を測定することが可能となる。
【0026】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る物質分離装置1によれば、測定対象物Tの分子量より小さく、測定対象物Tに特異的に結合する色素修飾分子Mの分子量より大きい分画分子量(MWCO)を有する透析膜4を用いて、測定対象物Tと色素修飾分子Mとが結合する結合型を第1室2a内に保持することができるので、第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方の蛍光色素Fの発光強度P1及び偏光度P2を検出すれば、分子量の大きな測定対象物Tを正確に定量測定することができる。
【0027】
本実施の形態に係る分析装置5を用いることにより、例えば測定対象物Tを抗原とし、色素修飾分子Mを抗体とした場合のイムノアッセイにおけるB/F分離が可能となる。これにより、抗体固相化作業が不要となる。
【0028】
反応容器2自体を、測定セルとすることができる。このようにすれば、反応容器2から測定セルへ溶液Lを移す手順が不要になるうえ、検体Sが汚染されるのを防ぐことができる。この場合、反応容器2の素材は、励起光及び蛍光を透過する素材を選ぶ必要がある。
【0029】
測定セルとなる反応容器2は、
図3に示す構成とすることができる。
図3に示す反応容器2は、直方体状の第1室2a内に管状の第2室2bが挿入される構成を有している。第2室2bの壁には、チューブ状の透析膜4(透析チューブ)が形成されている。測定対象物Tは、第1室2a内に投入され、色素修飾分子Mは、第2室2bに投入される。色素修飾分子Mは、透析膜4(透析チューブ)を通過して第1室2aに進入し、測定対象物Tと結合する。この反応容器2も、励起光及び蛍光を透過する素材で構成することができる。
【0030】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態1に係る反応容器2を測定セルとして備える分析装置5について説明する。
図4に示すように、本実施の形態に係る分析装置5は、上記実施の形態1に係る反応容器2と、検出光学系10と、を備える。反応容器2としては、
図1(A)に示す構成のものを用いてもよいし、
図3に示す構成のものと用いてもよい。
【0031】
検出光学系10は、物質分離装置1の反応容器2の第1室2aに蛍光色素F(
図1(B)参照)を発光させる励起光ILを照射するとともに、第1室2aの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出する。
【0032】
検出光学系10は、光源部11と、光ファイバ12と、レンズ50と、光ファイバ12の励起光ILの出射端の光軸方向に対して斜め(以下、単に「斜め」とする)に配置した反射鏡13と、光ファイバ14と、検出部15と、を備える。
【0033】
光源部11は、光源20と、励起フィルタ21と、結合レンズ22と、を備える。光源20は、励起光ILを出射する。励起光ILは、励起光ILの波長を調整する励起フィルタ21、結合レンズ22を経て光ファイバ12に入射する。
【0034】
光ファイバ12は、レンズ50を介して励起光ILを反応容器2の第1室2aに送る。励起光ILはレンズ50によって液中で集光され、この集光点近くの第1室2a内の蛍光色素Fにより蛍光ELが生じる。反射鏡13は斜めに配置され、反応容器2を透過した励起光ILを拡散反射する。蛍光色素Fの発光による蛍光ELは、光ファイバ14に入射する。光ファイバ14は、第1室2aで発生した蛍光ELを検出部15に送る。
【0035】
検出部15は、結合レンズ25と、蛍光フィルタ26と、液晶素子27と、撮像部28と、を備える。結合レンズ25は、光ファイバ14から出射した光を、蛍光フィルタ26に送る。蛍光フィルタ26は、蛍光色素Fの発光によって発生する蛍光ELの波長帯にある光を通し、他の波長の光を遮断する。液晶素子27は、透過する蛍光ELの偏光方向を調整する。撮像部28は、液晶素子27を通過した蛍光ELを示す画像を撮像する。この画像に基づいて、蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出することができる。
【0036】
上述の構成を有する検出光学系10により、反応容器2の第1室2aにおける蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかが検出される。
【0037】
[蛍光の発光強度]
蛍光ELの発光強度P1を検出する場合、液晶素子27は、入射した蛍光ELのすべての偏光成分が透過するように調整される。これにより、撮像部28に蛍光ELのすべての光束を受光させて発光強度P1を検出することができる。蛍光ELの発光強度P1と色素修飾分子Mの濃度との関係を示す検量線が予め作成されており、分析装置5は、検量線に基づいて、発光強度P1に対応する色素修飾分子Mの濃度を測定する。なお、検量線は、濃度が既知である測定対象物Tと、色素修飾分子Mとの組み合わせについて、それらの濃度を変更しつつ、第1室2a又は第2室2bでの蛍光ELの発光強度P1を検出することにより作成される。
【0038】
[蛍光の偏光度]
蛍光ELの偏光度P2を検出する場合、光源部11から出射される励起光ILは直線偏光となる。受光した蛍光ELのうち、励起光ILと平行な偏光度をI1とし、励起光ILと垂直な偏光度をI2とする。検出光学系10は、検出部15の液晶素子27を制御して、この2つの蛍光偏光強度I1,I2を検出し、以下の式を用いて、偏光度P2を算出する。
P2=(I1-I2)/(I1+I2)
偏光度P2は、励起されてから蛍光ELを発するまでの間に色素修飾分子Mが回転する度合いを示す。分子量が小さい分子は溶液中でブラウン運動により激しく回転するため偏光度P2が低く、分子量が大きい分子はブラウン運動が弱いため偏光度P2が上昇する。したがって、測定対象物Tの濃度が高ければ偏光度P2は大きくなり、濃度が低ければ偏光度P2は小さくなる。偏光度P2と測定対象物Tの濃度との関係を示す検量線が予め求められている。分析装置5は、この検量線に基づいて、偏光度P2に対応する測定対象物Tの濃度を測定する。なお、この検量線についても、濃度が既知である測定対象物T及び色素修飾分子Mの組み合わせについて、それらの濃度を変更しつつ、第1室2a又は第2室2bでの蛍光ELの偏光度P2を検出することにより作成される。
【0039】
ところで、透析膜4のMWCOは、測定対象物Tの分子量より小さいが、MWCOは統計的な数値であり、透析膜4の孔の大きさにばらつきがある。このため、少量の測定対象物Tが透析膜4を通過して第2室2bに移動することがある。この場合、分析装置5により、例えば、蛍光ELの発光強度P1と偏光度P2とを両方測定してもよい。例えば、第2室2bにおける蛍光ELの発光強度P1は、測定対象物Tと結合する色素修飾分子M(結合型)と、測定対象物Tと結合していない色素修飾分子M(遊離型)との両方を反映したものとなる。さらに、第2室2bにおける蛍光ELの偏光度P2は、結合型の濃度と遊離型の濃度との割合を反映したものとなる。したがって、発光強度P1に基づいて色素修飾分子M全体の濃度を推定し、偏光度P2に基づいて結合型と遊離型との割合を推定することにより、色素修飾分子Mと結合する測定対象物Tの濃度をより高精度に測定することが可能となる。なお、結合型と遊離型との割合を推定するには、投入される色素修飾分子Mの投入量を把握しておく必要がある。
【0040】
なお、分析装置5では、励起光ILを第2室2bに照射し、第2室2bにおける蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出し、測定対象物Tの濃度を測定するようにしてもよい。第1室2aの検出結果と第2室2bの検出結果との両方に基づいて、測定対象物Tの濃度を推定することも可能である。また、第1室2aと第2室2bとは透析膜4で隔離されているが、これに加えて第1室2aと第2室2bとの間に遮光層を配置してもよい。これにより、第1室2aから得られる光学信号と第2室2bの光学信号とを独立なものとできるため、より高精度に各室の蛍光信号をモニターすることが可能となる。
【0041】
次に、分析装置5を用いた分析方法、すなわち分析処理について説明する。
【0042】
図5に示すように、本実施の形態に係る分析処理は、上述の分析処理(
図2参照)と同じステップS1~S3を含んでいる。一定時間経過後(ステップS3;Yes)、反応容器2の第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に蛍光色素Fを発光させる励起光ILを照射するとともに、第1室2a及び第2室2bのうち、励起光ILが照射された部分の蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出する(ステップS4)。その後、各種検量線に基づいて、この検出結果から測定対象物Tの濃度が求められる。ステップS4終了後、分析装置5は、分析処理を終了する。
【0043】
本実施の形態によれば、反応容器2を測定セルとして用いることにより、溶液を移し替える必要がなくなるうえ、サンプルの汚染を防ぐことができる。
【0044】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る物質分離装置1は、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、反応容器2は、第1反応容器2Aと、第2反応容器2Bとを備える。この場合、例えば
図6(A)に示す場合、第1反応容器2Aの第1室2aに検体S1を投入し、第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に測定対象物T1と結合する色素修飾分子M1を投入することができる。さらに、第2反応容器2Bの第1室2aには検体S2を投入し、第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に、色素修飾分子M1を投入することができる。投入して一定時間経過後、第1反応容器2Aの第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に蛍光色素Fを発光させる励起光ILを照射するとともに、第1室2a及び第2室2bのうち、励起光ILが照射された部分の蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2のいずれかを検出し、第2反応容器2Bの第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に蛍光色素Fを発光させる励起光ILを照射するとともに、第1室2a及び第2室2bのうち、励起光ILが照射された部分の蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2を検出すれば、種類が異なる検体S1,S2の測定対象物Tの濃度を一度に測定することができる。これにより、検体S1と検体S2との間で、測定対象物Tの濃度を比較することができる。
【0045】
また、例えば
図6(B)に示す場合、第1反応容器2Aの第1室2aに検体S1を投入し、第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に測定対象物T1と結合する色素修飾分子M1を投入し、第2反応容器2Bの第1室2aに検体S1を投入し、第1室2a及び第2室2bの少なくとも一方に測定対象物T2と結合する色素修飾分子M2を投入することができる。投入して一定時間経過後、
図6(A)の場合と同様に励起光ILを照射することにより、第1反応容器2Aの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2を検出し、第2反応容器2Bの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出すれば、検体S1における種類が異なる測定対象物T1,T2の濃度を一度に測定することができる。これにより、種類が同一の検体S1における測定対象物T1,T2の濃度を比較することができる。
【0046】
このように、複数の反応容器2A,2Bを用意することにより、測定対象物T及び色素修飾分子Mの種類が異なる組み合わせでの測定対象物Tの濃度測定を同時に行うことが可能となる。
【0047】
(実施の形態4)
本実施の形態に係る分析装置5は、
図7に示すように、第1反応容器2Aでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかと、第2反応容器2Bでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを一括で検出可能な検出光学系10を備える。検出光学系10は、第1光源部11Aと、第2光源部11Bと、光ファイバ12Aと、光ファイバ12Bと、2つのレンズ50と、を備える。
【0048】
第1光源部11A及び第2光源部11Bの内部構成は、
図4の光源部11の構成と同じである。第1光源部11Aは、第1蛍光色素F1を発光させる第1励起光IL1を出射する。第2光源部11Bは、第1励起光IL1とは波長が異なり第2蛍光色素F2を発光させる第2励起光IL2を出射する。光ファイバ12Aは、第1光源部11Aから出射された第1励起光IL1を、レンズ50を介して第1反応容器2Aの第1室2aに送る。光ファイバ12Bは、第2光源部11Bから出射された第2励起光IL2を、レンズ50を介して第2反応容器2Bの第1室2aに送る。
【0049】
第1反応容器2Aの第1室2aに収容された色素修飾分子Mは、第1励起光IL1が照射されると発光する第1蛍光色素F1で修飾されている。したがって、第1反応容器2Aの第1室2aにおけるレンズ50による第1励起光IL1の集光位置近くで測定対象物Tと結合する色素修飾分子Mが蛍光EL1を発光する。また、第2反応容器2Bの第1室2aに収容された色素修飾分子Mは、第2励起光IL2が照射されると発光する第2蛍光色素F2で修飾されている。したがって、第2反応容器2Bの第1室2aにおけるレンズ50による第2励起光IL2の集光位置近くで測定対象物Tと結合する色素修飾分子Mが蛍光EL2を発光する。
【0050】
検出光学系10は、斜めに配置した反射鏡13Aと、同様に斜めに配置した反射鏡13Bと、光ファイバ14Aと、光ファイバ14Bと、検出部15と、制御部16と、を備える。反射鏡13Aは、第1反応容器2Aを透過する第1励起光IL1を拡散反射する。同様に、反射鏡13Bは、第2反応容器2Bを透過する第2励起光IL2を拡散反射する。一方、第1反応容器2Aの第1室2aにおける色素修飾分子Mからの蛍光EL1はレンズ50により光ファイバ14Aへ集光され、光ファイバ14Aは第1反応容器2Aの第1室2aで発生した蛍光EL1を含む光を検出部15に送る。同様に、第2反応容器2Bの第1室2aにおける色素修飾分子Mからの蛍光EL2はレンズ50により光ファイバ14Bへ集光され、光ファイバ14Bは、第2反応容器2Bの第1室2aで発生した蛍光EL2を含む光を検出部15に送る。
【0051】
検出部15は、第1反応容器2Aの第1室2aでの蛍光EL1の発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかと、第2反応容器2Bの第1室2aでの蛍光EL2の発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを個別に検出する。制御部16は、第1サンプリング時間では、第1光源部11Aから第1励起光IL1を出射させるとともに第2光源部11Bからの第2励起光IL2の出射を停止するように制御する。また、制御部16は、第2サンプリング時間では、第2光源部11Bから第2励起光IL2を出射させるともに第1光源部11Aからの第1励起光IL1の出射を停止するように制御する。制御部16は、第1サンプリング時間と第2サンプリング時間とが繰り返されるように、第1光源部11A、第2光源部11B及び検出部15を制御する。これにより、検出部15では、第1サンプリング時間では、第1反応容器2Aの第1室2aでの蛍光EL1の発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかが取得され、第2サンプリング時間では、第2反応容器2Bの第1室2aでの蛍光EL2の発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかが取得される。
【0052】
なお、検出部15は、蛍光EL1と蛍光EL2とを分離するダイクロイックミラーと、蛍光EL1の強度を検出する画像センサと、蛍光EL2の強度を検出する画像センサと、を備えるようにしてもよい。このようにすれば、ダイクロイックミラーで、蛍光EL1と蛍光EL2とを分離し、それぞれの画像センサで、第1反応容器2Aの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかと、第2反応容器2Bの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかと、を個別に検出することができる。
【0053】
上記実施の形態3と同様に、発光強度P1及び偏光度P2が検出されるのは、第1反応容器2A及び第2反応容器2Bの第2室2bであってもよいし、第1室2a及び第2室2bの両方であってもよい。また、第1室2aと第2室2bとは透析膜4で隔離されているが、これに加えて遮光層を第1室2aと第2室2bとの間に配置してもよい。これにより、第1室2aからの光学信号と第2室2bからの光学信号とを独立したものとできるので、より高精度に各室の蛍光信号をモニターすることが可能となる。
【0054】
第1反応容器2A及び第2反応容器2Bに収容される測定対象物T及び色素修飾分子Mの組み合わせは、
図6(A)に示すように、測定対象物T1及び色素修飾分子M1の組み合わせとすることができる。また、これらの組み合わせは、
図6(B)に示すように、測定対象物T1,T2及び色素修飾分子M1、M2の組み合わせとすることもできる。
【0055】
本実施の形態に係る分析装置5では、第1反応容器2Aと第2反応容器2Bとで、検出部15が共通化されている。これにより、分析装置5の小型化、製造コストの低減を実現することができる。
【0056】
(実施の形態5)
本実施の形態に係る分析装置5は、
図8に示すように、反応容器2として、第1反応容器2Aと、第2反応容器2Bとを備える。分析装置5は、第1反応容器2Aでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかと、第2反応容器2Bでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを個別に検出する検出光学系10を備える。
【0057】
検出光学系10は、光源部11、光ファイバ12A,12B、反射鏡13A,13B、光ファイバ14A,14B、第1検出部15A,第2検出部15B及びレンズ50を備える。
【0058】
光源部11は、光ファイバ12Aを介して励起光ILを、レンズ50を介して第1反応容器2Aの第1室2aに照射する一方、光ファイバ12Bを介して励起光ILを、レンズ50を介して第2反応容器2Bの第1室2aに照射する。励起光ILは、その集光位置近くで第1反応容器2A及び第2反応容器2Bの第1室2a内の色素修飾分子Mを発光させる。第1反応容器2Aの第1室2aを通過した励起光ILは、反射鏡13Aで斜め方向に拡散反射し、第2反応容器2Bの第1室2aを通過した励起光ILは、反射鏡13Bで斜め方向に拡散反射する。
【0059】
反射鏡13Aで反射した励起光IL及び第1反応容器2Aで発生した蛍光ELは、レンズ50及び光ファイバ14Aを介して、第1検出部15Aに送られる。反射鏡13Bで反射した励起光IL及び第2反応容器2Bで発生した蛍光ELは、レンズ50及び光ファイバ14Bを介して、第2検出部15Bに送られる。第1検出部15A及び第2検出部15Bの構成は、
図4に示す検出部15の構成と同じである。第1検出部15Aは、第1反応容器2Aでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出する。第2検出部15Bは、第2反応容器2Bでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出する。
【0060】
なお、第1反応容器2A及び第2反応容器2Bに収容される測定対象物T及び色素修飾分子Mの組み合わせは、
図6(A)に示すように、測定対象物T1及び色素修飾分子M1の組み合わせとすることができる。また、これらの組み合わせは、
図6(B)に示すように、測定対象物T1,T2及び色素修飾分子M1,M2の組み合わせとすることもできる。
【0061】
本実施の形態に係る分析装置5では、第1反応容器2Aと第2反応容器2Bとで、光源部11が共通化されている。励起光ILが照射されるのは、第2室2bであってもよいし、第1室2a及び第2室2bの両方であってもよい。
【0062】
(実施の形態6)
本実施の形態に係る分析装置5は、検出光学系10の構成が上記実施の形態4、5と異なる。
図9に示すように、検出光学系10は、光源部11と、光ファイバ束17と、溶液プローブ18と、検出部15と、を備える。
【0063】
光源部11は、励起光ILを出射する。光ファイバ束17は、複数の光ファイバ17a~17gが束ねられて構成されている。このうち、中央の光ファイバ17aの一端は、光源部11に接続されており、外周の光ファイバ17b~17gの一端は、検出部15に接続されている。一方、光ファイバ17a~17gの他端は、溶液プローブ18に接続されている。なお、光ファイバ17aについては、一方端が2股となっており、光源部11と検出部15との両方に接続されたものを用いるようにしてもよい。
【0064】
溶液プローブ18は、コリメータレンズ30と、サンプル開放部31と、斜めに配置した反射鏡32と、を備える。コリメータレンズ30は、光ファイバ17aから出射された励起光ILを集光させつつ、サンプル開放部31に入射する。サンプル開放部31は、外部から測定対象物T及び色素修飾分子Mが進入可能に構成されている。サンプル開放部31に進入した測定対象物T及び色素修飾分子Mは、集光された励起光ILによって発光し、蛍光ELを発生させる。反射鏡32は、励起光ILを拡散反射する。なお、溶液プローブ18を遮光筒で覆ってもよい。遮光筒は、内側を黒塗しており、外部からの迷光が溶液プローブ18へ入射することを防ぐ。この遮光筒で溶液プローブ18を覆うことにより、他の部屋の状態に影響されることなく、高精度に蛍光信号をモニターすることが可能となる。
【0065】
コリメータレンズ30を介して光ファイバ17b~17gに入射した蛍光ELは、検出部15に送られる。検出部15は、第1反応容器2Aでの蛍光ELの発光強度P1か、発光強度P1及び偏光度P2かのいずれかを検出する。
【0066】
このように、光ファイバ束17と、コリメータレンズ30、反射鏡32等が一体化した溶液プローブ18とを備える検出光学系10を用いることにより簡単に検出を行うことができるようになるため、検出作業の効率化及び検出時間の短縮が可能となる。
【0067】
なお、光ファイバ束17は、7本の光ファイバ17a~17gを束ねたものであったが、束ねられる光ファイバの数は、何本であってもよい。また、励起光ILを複数本の光ファイバで送るようにしてもよい。
【0068】
上記実施の形態では、反応容器2として第1反応容器2A,第2反応容器2Bを備えるものとしている。しかしながら、反応容器2は、3つ以上あってもよい。このようにすれば、3つ以上の検体に含まれる種類が同一の測定対象物Tの検出、検体Sに含まれる3種類以上の測定対象物Tの検出が可能となる。
【0069】
なお、上記実施の形態では、分子Mを蛍光色素Fで修飾したが、これには限られない。例えば、分子Mをリン光色素で修飾するようにしてもよい。検出光学系で検出可能であれば、他の色素を用いるようにしてもよい。
【0070】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0071】
1 物質分離装置、2 反応容器、2A 第1反応容器、2B 第2反応容器、2a 第1室、2b 第2室、3 仕切壁、4 透析膜、5 分析装置、10 検出光学系、11 光源部、11A 第1光源部、11B 第2光源部、12,12A,12B 光ファイバ、13,13A,13B 反射鏡、14,14A,14B 光ファイバ、15 検出部、15A 第1検出部、15B 第2検出部、16 制御部、17 光ファイバ束、17a~17g 光ファイバ、18 溶液プローブ、20 光源、21 励起フィルタ、22 結合レンズ、25 結合レンズ、26 蛍光フィルタ、27 液晶素子、28 撮像部、30 コリメータレンズ、31 サンプル開放部、32 反射鏡、50 レンズ、EL 蛍光、F,F1,F2 蛍光色素、IL 励起光、IL1 第1励起光、IL2 第2励起光、L 溶液、M,M1,M2 色素修飾分子、S,S1,S2 検体、T,T1,T2 測定対象物