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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022084
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240208BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B62D25/20 J
B62D21/15 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125424
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真康
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮永 啓世
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康哲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB07
3D203BB24
3D203BB76
3D203CA26
3D203CA43
3D203CA45
3D203DA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両後方からの衝撃荷重の入力時に、リヤパネルの局所的な破断を抑制して、リヤパネルとリヤフロアパネルによって衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収することができる車体後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部構造は、リヤフロアパネル11、リヤパネル14、リヤバンパビーム15と複数のフロア補強部40を備える。リヤパネル14はリヤフロアパネル11の後部に起立して配置される。リヤバンパビーム15はリヤパネル14の後部の車幅方向中央領域に車幅方向に沿って延在し、リヤフロアパネル11とリヤパネル14よりも車幅方向の長さが短い。フロア補強部40は夫々が車両前後方向に略沿って延び、リヤフロアパネル11の車幅方向に離間した複数個所を補強する。フロア補強部40の後端部はリヤバンパビーム15の車幅方向の外側端部よりも車幅方向内側に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に配置されるリヤフロアパネルと、
前記リヤフロアパネルの後部に起立して配置されるリヤパネルと、
前記リヤパネルの後部の車幅方向中央領域に車幅方向に沿って延在し、前記リヤフロアパネルと前記リヤパネルよりも車幅方向の長さが短いリヤバンパビームと、
夫々が車両前後方向に略沿って延び、前記リヤフロアパネルの車幅方向に離間した複数個所を補強する複数のフロア補強部と、を備え、
前記フロア補強部の後端部は、前記リヤバンパビームの車幅方向の外側端部よりも車幅方向内側に配置されていることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
複数の前記フロア補強部のうちの、最も車幅方向外側に配置される外側フロア補強部は、後端部から車両前方側に向かって車幅方向外側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記リヤフロアパネルの少なくとも後部領域は、上部パネルと下部パネルを有する二重パネル構造体によって構成され、
前記外側フロア補強部は、前記二重パネル構造体の断面内に結合される断面補強部材によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
車両前後方向に略沿って延びる左右一対のリヤサイドフレームと、
左右一対の前記リヤサイドフレームの後部間を連結するリヤクロスメンバと、をさらに備え、
前記リヤクロスメンバの断面内には、当該リヤクロスメンバの断面を補強するメンバ断面補強部材が結合され、
前記メンバ断面補強部材は、前記二重パネル構造体の前記断面補強部材と直線状に並ぶように、前記断面補強部材の前端部と前記リヤサイドフレームと間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
車両前後方向に沿って延びる左右一対のリヤサイドフレームをさらに備え、
前記外側フロア補強部の前端部は、前記リヤサイドフレームに突き当てられていることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体後部は、車両前後方向に略沿って延びる一対のリヤサイドフレームが車体の側部に配置され、左右のリヤサイドフレームにリヤフロアパネルが架設されている。そして、リヤフロアパネルの後部にはリヤパネルが上方に起立するように配置され、リヤパネルの後部には車幅方向に沿って延在するリヤバンパビームが配置されている。
【0003】
リヤバンパビームは、通常、リヤフロアパネルやリヤパネルよりも車幅方向外側に長く延在している。しかし、近年、車両デザインの関係等により、リヤバンパビームの車幅方向の延出長さがリヤフロアパネルやリヤパネルよりも短い車体後部の構造が採用されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-43911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の車体後部は、車両後方から衝撃荷重が入力されたときに、リヤサイドフレームやリヤフロアパネルを圧壊変形されることにより、衝撃荷重のエネルギーを充分に吸収できることが望まれている。
このため、リヤフロアパネルの車幅方向に離間した複数個所をバルクヘッド(断面補強部材)や補強ビード等のフロア補強部によって適度に補強し、衝撃荷重の入力時におけるエネルギー吸収性能を高めることが検討されている。
【0006】
しかし、上記従来の車体後部構造では、バルクヘッドや補強ビード等のフロア補強部がリヤバンパビームよりも車幅方向外側に配置されていると、車両後部に対する衝撃荷重の入力位置によってはリヤパネルが早期に破断することが懸念される。即ち、車両後部のリヤバンパビームよりも車幅方向外側位置に衝撃荷重が入力されると、衝撃荷重がフロア補強部の後端部との間でリヤパネルに局所的な揃断荷重を付与し、この揃断荷重がリヤパネルを破断させる可能性がある。そして、衝撃荷重の入力時にリヤパネルが早期に破断すると、リヤフロアパネルの広い範囲での圧壊変形(エネルギー吸収)が阻害されてしまう。
【0007】
そこで本発明は、車両後方からの衝撃荷重の入力時に、リヤパネルの局所的な破断を抑制して、リヤパネルとリヤフロアパネルによって衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収することができる車体後部構造を提供しようとするものである。そして、延いては、車両の衝突安全性を高め、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車体後部構造は、車両後部に配置されるリヤフロアパネル(例えば、実施形態のリヤフロアパネル11)と、前記リヤフロアパネルの後部に起立して配置されるリヤパネル(例えば、実施形態のリヤパネル14)と、前記リヤパネルの後部の車幅方向中央領域に車幅方向に沿って延在し、前記リヤフロアパネルと前記リヤパネルよりも車幅方向の長さが短いリヤバンパビーム(例えば、実施形態のリヤバンパビーム15)と、夫々が車両前後方向に略沿って延び、前記リヤフロアパネルの車幅方向に離間した複数個所を補強する複数のフロア補強部(例えば、実施形態のバルクヘッド40,42、補強ビード45)と、を備え、前記フロア補強部の後端部は、前記リヤバンパビームの車幅方向の外側端部よりも車幅方向内側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成において、車両後方からリヤバンパビームに衝撃荷重が入力されると、その衝撃荷重はリヤパネルを介してリヤフロアパネルとフロア補強部とに入力される。このとき、リヤバンパビームからリヤパネルに入力された衝撃荷重は、リヤパネルを変形させ、かつ、リヤフロアパネルとフロア補強部を圧壊させつつエネルギーを吸収される。
また、車両後方からリヤバンパビームよりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されると、その衝撃荷重は、リヤパネルを変形させ、かつ、リヤフロアパネルの車幅方向の外側領域を圧壊させつつエネルギーを吸収される。このとき、リヤパネルの衝撃荷重の入力部は、車両前後方向に略沿って延びるフロア補強部の後端部に対して車幅方向外側に離間しているため、リヤパネルには局所的に大きな揃断応力が作用しにくい。このため、リヤパネルは、局所的に破断することなく広い範囲で変形し、リヤフロアパネルの広範囲がスムーズに圧壊するように衝撃荷重をリヤフロアパネルに伝達するようになる。
【0010】
複数の前記フロア補強部のうちの、最も車幅方向外側に配置される外側フロア補強部(例えば、実施形態のバルクヘッド40,42)は、後端部から車両前方側に向かって車幅方向外側に傾斜するようにしても良い。
【0011】
この場合、車両後方からリヤバンパビームよりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されると、リヤパネルの変形とともにリヤフロアパネルが圧壊する。このとき、入力された衝撃荷重は、外側フロア補強部の傾斜に沿って車幅方向外側に向かうようになる。これにより、衝撃荷重による車両のダメージがより少なくなる。
【0012】
前記リヤフロアパネルの少なくとも後部領域は、上部パネル(例えば、実施形態の上部パネル13)と下部パネル(例えば、実施形態の下部パネル16)を有する二重パネル構造体(例えば、実施形態の二重パネル構造体18)によって構成され、前記外側フロア補強部は、前記二重パネル構造体の断面内に結合される断面補強部材(例えば、実施形態のバルクヘッド40)によって構成されるようにしても良い。
【0013】
この場合、車両後方からリヤバンパビームよりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されると、リヤパネルの変形とともに二重パネル構造体が圧壊し、入力された衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収する。このとき、二重パネル構造体の上部パネルと下部パネルが外側フロア補強部によって結合されているため、二重パネル構造体は、局部的な折れを抑制された状態で後部側からスムーズ圧壊変形するようになる。したがって、本構成を採用した場合には、衝撃荷重の入力時に衝撃荷重のエネルギーを良好に吸収することができる。
【0014】
車両前後方向に略沿って延びる左右一対のリヤサイドフレームと、左右一対の前記リヤサイドフレームの後部間を連結するリヤクロスメンバ(例えば、実施形態のリヤクロスメンバ25)と、をさらに備え、前記リヤクロスメンバの断面内には、当該リヤクロスメンバの断面を補強するメンバ断面補強部材(例えば、実施形態のバルクヘッド42)が結合され、前記メンバ断面補強部材は、前記二重パネル構造体の前記断面補強部材と直線状に並ぶように、前記断面補強部材の前端部と前記リヤサイドフレームと間に配置されるようにしても良い。
【0015】
この場合、リヤパネルを通して断面補強部材(外側フロア補強部)に入力された衝撃荷重は、リヤクロスメンバ内のメンバ断面補強部材を介してリヤサイドフレームによって受け止められる。
車両後方からリヤバンパビームに衝撃荷重が入力されたときには、二重パネル構造体と断面補強部材(外側フロア補強部)がある程度圧壊した後、リヤサイドフレームが圧壊して衝撃荷重のエネルギーが充分に吸収される。
また、車両後方からリヤバンパビームよりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されたときには、前端部側がリヤクロスメンバを介してリヤサイドフレームに剛的に支持されている断面補強部材(外側フロア補強部)の傾斜により、衝撃荷重が車幅方向外側に確実に向くようになる。したがって、本構成を採用した場合には、衝撃荷重による車両のダメージはより抑制される。
【0016】
車両前後方向に沿って延びる左右一対のリヤサイドフレーム(例えば、実施形態のリヤサイドフレーム10)をさらに備え、前記外側フロア補強部の前端部は、前記リヤサイドフレームに突き当てるようにしても良い。
【0017】
この場合、リヤパネルを通して断面補強部材(外側フロア補強部)に入力された衝撃荷重は剛性の高いリヤサイドフレームによって受け止められる。
車両後方からリヤバンパビームに衝撃荷重が入力されたときには、二重パネル構造体と断面補強部材(外側フロア補強部)がある程度圧壊した後、リヤサイドフレームが圧壊して衝撃荷重のエネルギーが充分に吸収される。
また、車両後方からリヤバンパビームよりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されたときには、前端部側がリヤサイドフレームに剛的に支持されている断面補強部材(外側フロア補強部)の傾斜により、衝撃荷重が車幅方向外側に確実に向くようになる。したがって、本構成を採用した場合には、衝撃荷重による車両のダメージはより抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る車体後部構造は、車両前後方向に略沿って延びるフロア補強部の後端部が、リヤバンパビームの車幅方向の外側端よりも車幅方向内側に配置されている。このため、リヤバンパビームよりも車幅方向外側領域に衝撃荷重が入力されたときには、リヤパネルの衝撃荷重の入力部とフロア補強部の後端部との間に局所的な応力が作用しにくくなる。したがって、本発明の一態様に係る車体後部構造を採用した場合には、リヤパネルの局所的な破断を抑制して、リヤパネルとリヤフロアパネルによって衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態の車体後部を前部上方側から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の車体後部を前部下方側から見た斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態の車体後部の平面図である。
図4図4は、図3のIV矢視図である。
図5図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態の車体後部の平面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態の車体後部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方を指す矢印LHが記されている。また、各実施形態では、共通部分に同一符号を付すものとする。
【0021】
図1は、本実施形態の車両1の車体後部を上方側から見た斜視図であり、図2は、車両1の車体後部を下方側から見た斜視図である。図3は、車両1の車体後部の平面図である。また、図4は、図3のIV矢視図であり、図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
車両1の後部領域の左右両側には、車両前後方向に略沿って延びる一対のリヤサイドフレーム10が配置されている。左右の各リヤサイドフレーム10の前端部は、車室の側部下方に配置される左右の対応するサイドシル30に結合されている。左右のリヤサイドフレーム10は、前端部領域(サイドシル30との連結部よりも後方位置)がフロントクロスメンバ20(図2図5参照)によって相互に連結されるとともに、後端部同士がリヤクロスメンバ25(図3図5参照)によって連結されている。左右のリヤサイドフレーム10とフロントクロスメンバ20には、リヤフロアパネル11の前部領域が結合されている。リヤフロアパネル11の前方側には、図示しないフロントフロアパネルが連結されている。
【0022】
リヤフロアパネル11の前端部には、車幅方向に沿って延びる梁部12(図1参照)が一体に形成されている。梁部12の上部には、図示しない後席シートが支持されるようになっている。梁部12は、リヤフロアパネル11の後述する上部パネル13の前端部が断面コ字状に曲げられて形成されている。リヤフロアパネル11の後端部には、車体後部のリヤパネル14が結合されている。リヤパネル14は、リヤフロアパネル11の後端部から上方に起立する金属パネルであり、その後面側には車幅方向に略沿って延びるリヤバンパビーム15が結合されている。
【0023】
リヤバンパビーム15は、リヤパネル14の後部の車幅方向中央領域に配置され、リヤフロアパネル11やリヤパネル14よりも車幅方向の長さが短くなっている。リヤバンパビーム15の後方側は、図示しない車体のバンパフェイスによって覆われる。
【0024】
リヤフロアパネル11は、前端部に上記の梁部12が形成された上部パネル13と、上部パネル13の後部領域の下方に配置される下部パネル16と、を備えている。下部パネル16は、上方に起立する前壁と左右の側壁を有し、前壁と左右の側壁が上部パネル13の後部領域に接合されている。上部パネル13と下部パネル16は、例えば、アルミニウム合金等から成る金属プレートによって形成されている。上部パネル13と下部パネル16は、リヤフロアパネル11の後部領域において、二重パネル構造体18を構成している。二重パネル構造体18の車幅方向に沿う断面は、横長の略矩形状に形成されている。
二重パネル構造体18の前縁部は、左右のリヤサイドフレーム10の後端部を連結するリヤクロスメンバ25に接合されている。
【0025】
上部パネル13は、図3に示すように、車幅方向の幅の狭い狭幅部13aと、狭幅部13aの前方側に連設され狭幅部13aよりも車幅方向の幅の広い前側拡幅部13bと、狭幅部13aの後方側に連設され狭幅部13aよりも車幅方向の幅の広い後側拡幅部13cと、を有する。前側拡幅部13bと後側拡幅部13cの各側縁部は、狭幅部13aの側縁部よりも車幅方向外側に張り出している。狭幅部13aの側方は後輪の配置スペースとされている。下部パネル16は、後側拡幅部13cの下面と狭幅部13aの下面とに跨って接合されている。
【0026】
ここで、左右の各リヤサイドフレーム10は、車体側部の左右の対応するサイドシル30の後端部から車体後方側に向かって延びているが、その後端部は車体の後端部まで達していない。具体的には、左右のリヤサイドフレーム10は、リヤフロアパネル11の二重パネル構造体18の前部領域までで終わっている。換言すれば、リヤフロアパネル11の後部領域(二重パネル構造体18)は、左右のリヤサイドフレーム10よりも車両後方側に延びている。
【0027】
また、二重パネル構造体18を構成する下部パネル16と上部パネル13の後端部には、両者間の隙間を閉塞するようにリヤパネル14が結合されている。二重パネル構造体18は、リヤパネル14によって後方を閉塞されてボックス構造を構成している。リヤバンパビーム15は、リヤパネル14を挟んで二重パネル構造体18の上部パネル13と下部パネル16の後端部に結合されている。
【0028】
リヤフロアパネル11の後部の二重パネル構造体18の内部には、断面補強部材である一対のバルクヘッド40が車幅方向に離間して配置されている。各バルクヘッド40は、前後方向に長尺に形成され、上下に一体に形成された各フランジ部が上部パネル13の下面と下部パネル16の上面に接合されている。各バルクヘッド40は、図1図3に示すように、後端部40eがリヤバンパビーム15の車幅方向の外側端部15eよりも車幅方向内側に配置されている。また、各バルクヘッド40は、後端部40eから車両前方側に向かって車幅方向外側に傾斜し、その状態で上部パネル13と下部パネル16に結合されている。
なお、本実施形態では、バルクヘッド40が最も車幅方向外側に配置される外側フロア補強部を構成している。
【0029】
また、リヤクロスメンバ25の断面内には、バルクヘッド42が配置されている。バルクヘッド42は、リヤクロスメンバ25の断面内において、当該リヤクロスメンバ25に接合されている。本実施形態では、バルクヘッド42は、リヤクロスメンバ25の断面を補強するメンバ断面補強部材を構成している。
バルクヘッド42は、二重パネル構造体18に結合されるバルクヘッド40と直線状に並ぶように、バルクヘッド40の前端部と左右の対応するリヤサイドフレーム10の後端部との間に配置されている。このため、車両後方からリヤバンパビーム15を介して二重パネル構造体18のバルクヘッド40に荷重が入力されると、その荷重はリヤクロスメンバ25内のバルクヘッド42を介して左右の対応するリヤサイドフレーム10の後端部に伝達される。
【0030】
また、リヤフロアパネル11の上部パネル13の車幅方向の中央領域には、車体前後方向に沿って延びる複数(四つ)の補強ビード45が形成されている。各補強ビード45の後端部45eは、上部パネル13の後端部に達する位置まで延びている。各補強ビード45の後端部45eは、リヤバンパビーム15の車幅方向の外側端部15eよりも車幅方向内側で、かつ、バルクヘッド40よりも車幅方向内側となる位置に配置されている。
【0031】
図6は、図3と同様の車体後部の平面図である。
図3は、車両後方の対象物50からリヤバンパビーム15に衝撃荷重が入力されるときの状態を示し、図6は、車両後方の対象物50からリヤバンパビーム15よりも車幅方向外側位置に衝撃荷重が入力される状態を示している。
図3に示すように、車両後方の対象物50からリヤバンパビーム15に衝撃荷重が入力されると、その衝撃荷重はリヤパネル14を介してリヤフロアパネル11とバルクヘッド40,42に入力される。このとき、リヤバンパビーム15からリヤパネル14に入力された衝撃荷重は、リヤパネル14を変形させ、かつ、リヤフロアパネル11とバルクヘッド40,42を圧壊させつつエネルギーを吸収される。
【0032】
また、図6に示すように、車両後方の対象物50からリヤバンパビーム15よりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されると、その衝撃荷重は、リヤパネル14を変形させ、かつ、リヤフロアパネル11の後部(二重パネル構造体18)の車幅方向外側領域を圧壊させつつエネルギーを吸収される。このとき、リヤパネル14の衝撃荷重の入力部は、外側フロア補強部であるバルクヘッド40の後端部40eに対して車幅方向外側に離間した位置となる。このため、リヤパネル14には、局所的に大きな揃断応力が生じにくい。したがって、リヤパネル14は、局所的に破断することなく広い範囲で変形し、リヤフロアパネル11の広範囲がスムーズに圧壊するように衝撃荷重をリヤフロアパネル11に伝達するようになる。
【0033】
以上のように、本実施形態の車体後部構造は、車両前後方向に略沿って延びるバルクヘッド40や補強ビード45(フロア補強部)の後端部40e,45eが、リヤバンパビーム15の車幅方向の外側端部15eよりも車幅方向内側に配置されている。このため、図6に示すように、リヤバンパビーム15よりも車幅方向外側領域に後方の対象物50から衝撃荷重が入力されたときには、リヤパネル14の衝撃荷重の入力部とバルクヘッド40や補強ビード45の後端部40e,45eとの間に局所的な応力が作用しにくくなる。したがって、本実施形態の車体後部構造を採用した場合には、リヤパネル14の局所的な破断を抑制して、リヤパネル14とリヤフロアパネル11によって衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収することができる。
よって、本実施形態の車体後部構造を採用することにより、車両1の衝突安全性を高め、持続可能な輸送システムの発展に寄与することが可能になる。
【0034】
また、本実施形態の車体後部構造は、最も車幅方向外側に配置されるフロア補強部であるバルクヘッド40,42が後端部40eから車両前方側に向かって車幅方向外側に傾斜している。このため、車両後方の対象物50からリヤバンパビーム15よりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されると、リヤパネル14の変形とともにリヤフロアパネル11の後部が圧壊する。このとき、入力された衝撃荷重は、バルクヘッド40,42(外側フロア補強部)の傾斜に沿って車幅方向外側に向かうようになる。
したがって、本構成を採用した場合には、入力される衝撃荷重がバルクヘッド40の傾斜部によっていなされ、衝撃荷重による車両1のダメージがより少なくなる。
【0035】
また、本実施形態の車体後部構造は、リヤフロアパネル11の後部領域が上部パネル13と下部パネル16を有する二重パネル構造体18によって構成され、二重パネル構造体18の断面内に、外側フロア補強部であるバルクヘッド40(断面補強部材)が結合されている。このため、車両後方の対象物50からリヤバンパビーム15よりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されると、リヤパネル14の変形とともに二重パネル構造体18が圧壊し、入力された衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収する。このとき、二重パネル構造体18の上部パネル13と下部パネル16がバルクヘッド40によって結合されていることから、二重パネル構造体は、局部的な折れ変形を抑制された状態で後部側からスムーズ圧壊変形するようになる。したがって、本構成を採用した場合には、衝撃荷重の入力時に衝撃荷重のエネルギーを良好に吸収することができる。
【0036】
さらに、本実施形態の車体後部構造は、左右のリヤサイドフレーム10の後部間を連結するリヤクロスメンバ25の断面内にバルクヘッド42(メンバ断面補強部材)が結合され、そのバルクヘッド42が、二重パネル構造体の内部のバルクヘッド40と直線状に並ぶように、バルクヘッド40の前端部とリヤサイドフレーム10の間に配置されている。このため、リヤパネル14を通してバルクヘッド40に入力された衝撃荷重を、リヤクロスメンバ25内のバルクヘッド42を介して剛性の高いリヤサイドフレーム10によって受け止めることができる。
また、車両後方からリヤバンパビーム15に衝撃荷重が入力されたときには、二重パネル構造体18とバルクヘッド40,42がある程度圧壊した後、リヤサイドフレーム10が圧壊して衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収することができる。
また、車両後方からリヤバンパビーム15よりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されたときには、前端部側がリヤクロスメンバ25を介してリヤサイドフレーム10に剛的に支持されているバルクヘッド40,42の傾斜により、衝撃荷重が車幅方向外側に確実に向くようになる。したがって、本構成を採用した場合には、衝撃荷重による車両1のダメージはより抑制される。
【0037】
<他の実施形態>
図7は、他の実施形態の車体後部の平面図である。
本実施形態の車両101の車体後部構造は、基本的な構成は上記の実施形態とほぼ同様であるが、リヤフロアパネル11の後部の二重パネル構造体18の内部の補強構造が上記の実施形態と若干異なっている。
【0038】
即ち、上記の実施形態では、リヤクロスメンバ25の内部にもバルクヘッド42が配置されていたが、本実施形態の車体後部構造では、二重パネル構造体18の内部にのみ一対のバルクヘッド140が配置されている。各バルクヘッド140の後端部140eは、リヤバンパビーム15の車幅方向の外側端部15eよりも車幅方向内側に配置されている。そして、各バルクヘッド140は、後端部140eから前方に向かって車幅方向外側に傾斜し、前端部が左右の対応するリヤサイドフレーム10の後端部に突き当てられている。
【0039】
本実施形態の車体後部構造は、基本的な構成は上記の実施形態と同様であるため、上記の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができる。
【0040】
本実施形態の車体後部構造は、二重パネル構造体18の内部に配置されるバルクヘッド140の前端部が左右の対応するリヤサイドフレーム10の後端部に突き当てられているため、リヤパネル14を通してバルクヘッド140に入力された衝撃荷重を剛性の高いリヤサイドフレーム10によって効率良く受け止めることができる。
また、車両後方からリヤバンパビーム15に衝撃荷重が入力されたときには、二重パネル構造体18とバルクヘッド140がある程度圧壊した後、リヤサイドフレーム10を圧壊して衝撃荷重のエネルギーが効率良く吸収することができる。
さらに、車両後方からリヤバンパビーム15よりも車幅方向外側に衝撃荷重が入力されたときには、前端部側がリヤサイドフレーム10に剛的に支持されているバルクヘッド140の傾斜によって衝撃荷重を効率良くいなすことができる。したがって、本構成を採用した場合には、衝撃荷重による車両101のダメージをより抑制することができる。
特に、本実施形態の車体後部構造は、上記の実施形態と異なり、二重パネル構造体18の内部のバルクヘッド40とリヤクロスメンバ25内のバルクヘッド42の位置や向きを整合させる必要がない。このため、上記の実施形態に比較して、部品点数を削減することができるうえ、組付けの容易化を図ることができる。
【0041】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、リヤフロアパネルの後部領域のみが二重パネル構造体によって構成されているが、リヤフロアパネルは前部領域も含む全域を二重パネル構造体によって構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
10…リヤサイドフレーム
11…リヤフロアパネル
13…上部パネル
14…リヤパネル
15…リヤバンパビーム
16…下部パネル
18…二重パネル構造体
25…リヤクロスメンバ
40,140…バルクヘッド(フロア補強部、外側フロア補強部、断面補強部)
42…バルクヘッド(フロア補強部、外側フロア補強部、メンバ断面補強部)
45…補強ビード(フロア補強部)
図1
図2
図3
図4
図5
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図7