(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022091
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】分岐サドル継手
(51)【国際特許分類】
F16L 41/06 20060101AFI20240208BHJP
F16L 47/02 20060101ALI20240208BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240208BHJP
F16L 47/30 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16L41/06
F16L47/02
F16L55/00 S
F16L47/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125439
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】大石 麗輝
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019AA04
3H019CB02
3H019FA07
3H019FA14
3H019GA01
(57)【要約】
【課題】パッキンの有無によらず、分岐孔を閉栓時の止水性を向上させた分岐サドル継手を提供する。
【解決手段】分岐孔11が設けられたサドル部10と、分岐孔11の周縁部から立ち上がり、内周に雌ネジ21と、雌ネジ21の下方に配置され下方に向かうに従い縮径する第1縮径面23が設けられた分岐管部20と、外周面に雌ネジ21と螺合する雄ネジが設けられ、雄ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径する第1縮径面23に当接する第2縮径面が設けられたシールプラグ40と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管の側面に配置されるサドル部と、
前記サドル部から上方に突出した分岐管部と、
前記分岐管部内に配置されたシールプラグと、を備える分岐サドル継手であって、
前記分岐管部の内周面には、雌ネジと、前記雌ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径する第1縮径面と、が設けられ、
前記シールプラグの外周面には、前記雌ネジに螺合する雄ネジと、前記雄ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径し前記第1縮径面に当接する第2縮径面と、が設けられている分岐サドル継手。
【請求項2】
前記分岐管部のショア硬度が、40HS以上であり、
前記シールプラグのショア硬度が、40HS以上であることを特徴とする
請求項1に記載の分岐サドル継手。
【請求項3】
前記シールプラグのショア硬度が、前記分岐管部のショア硬度以上であることを特徴とする
請求項1または2に記載の分岐サドル継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐サドル継手に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐サドル継手においては、分岐管部の本管側開口部(分岐孔)を閉栓するためにプラグを差し込むことが可能となっている。この時、プラグが分岐管部に密に装着されることで、分岐孔の止水性を確保することが求められる。特許文献1には、プラグの下端にパッキンを設けることで、分岐管部とプラグの密着を確保し、分岐孔の止水性を確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、閉栓時にプラグを分岐管部下方に差し込む際に、プラグの下端に装着されたパッキンがずれてねじ切れることで、止水性が確保できず漏水するおそれがあるという課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、パッキンの有無によらず、分岐孔を閉栓時の止水性を向上させた分岐サドル継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分岐サドル継手は、本管の側面に配置されるサドル部と、前記サドル部から上方に突出した分岐管部と、前記分岐管部内に配置されたシールプラグと、を備える分岐サドル継手であって、前記分岐管部の内周面には、雌ネジと、前記雌ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径する第1縮径面と、が設けられ、前記シールプラグの外周面には、前記雌ネジに螺合する雄ネジと、前記雄ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径し前記第1縮径面に当接する第2縮径面と、が設けられている。
【0007】
この発明によれば、分岐管部の内周面には、雌ネジと、雌ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径する第1縮径面を備え、シールプラグの外周面には、雌ネジに螺合する雄ネジと、雄ネジの下方に配置され下方に向かうに従い縮径し第1縮径面に当接する第2縮径面を備える。これにより、シールプラグをねじ込んで分岐管部最奥に差し込むと、第1縮径面と第2縮径面が接触し、第1縮径面と第2縮径面との間で高い止水性を確保することができる。
【0008】
また、前記分岐管部のショア硬度が40HS以上であり、前記シールプラグのショア硬度が40HS以上であってもよい。
【0009】
この発明によれば、分岐管部のショア硬度が40HS以上であり、シールプラグのショア硬度が40HS以上である。これにより、配管と分岐管部の接合部に水圧による負荷がかかったとしても、分岐管部及びシールプラグが変形せず、分岐管部とシールプラグのネジ部の螺合、及び第1縮径面と第2縮径面の接触を保持することができる。よって、高い止水性を確保することができる。
【0010】
また、前記シールプラグのショア硬度が、前記分岐管部のショア硬度以上であってもよい。
【0011】
この発明によれば、シールプラグのショア硬度が、分岐管部のショア硬度以上である。これにより、シールプラグを分岐管部の最奥まで差し込んだ場合に、分岐管部内周がシールプラグによって押し広げられ、シールプラグと分岐管部内周の密着をさらに高めることができる。よって、高水圧下であっても第1縮径面と第2縮径面の接触を保持することができ、さらに高い止水性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パッキンの有無によらず、高い止水性を確保することが可能な分岐サドルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】シールプラグが分岐管部の上端にある状態の分岐サドル継手を破断した正面図である。
【
図3】シールプラグが分岐管部の下端にある状態の分岐サドル継手を破断した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る分岐サドル継手100を説明する。
図1に示すように、分岐サドル継手100は、不図示の本管の外周面に配置される。分岐サドル継手100は、サドル部10と、分岐管部20と、分岐管接続部30と、シールプラグ40と、キャップ50と、を備える。
【0015】
サドル部10は、本管に接する部位である。サドル部10の本管に接する面は、本管の外周面に沿う形状を有する。サドル部10の本管に接する面は、例えば、本管の外周面の曲率と等しい曲率の曲面を有する。サドル部10には、分岐孔11が形成される。
【0016】
分岐管部20は、分岐孔11の周縁部から立ち上がる部位である。具体的には、分岐管部20は、本管の径方向外側に立ち上がる。分岐管部20は、管状の部材である。分岐管部20の上端は開口部を有する。分岐管部20の内周面には、雌ネジ21と、雌ネジ21の下方に配置され、下方に向かうに従い縮径する第1縮径面23が設けられている。本実施形態における第1縮径面23は、テーパー形状である。分岐管部20の硬度は、ショア硬度で40HS以上である。
分岐管部20の内側には、後述するシールプラグ40が設けられている。
【0017】
ショア硬度の硬度は、JIS K6253に記載の方法で測定する。例えば、分岐サドル継手100における測定対象となる部位から試験片を作成し、デュロメータータイプDを用いて、試験片を等間隔に5か所測定し、その中央値をショア硬度とすることができる。
【0018】
キャップ50は、分岐管部20の上端に設けられている。キャップ50は、開口部を覆う。分岐管部20の上端外周には、雄ネジ22が設けられている。キャップ50の内周面には、雄ネジ22と螺合する雌ネジ52が形成されている。雄ネジ52の上端には、キャップ50と分岐管部20の隙間を埋めるためのゴムパッキン51が設けられている。
【0019】
分岐管接続部30は、分岐管部20における雄ネジ22の下方に位置している。分岐管接続部30は、分岐管部20の側方に突き出す部位である。分岐管接続部30は、雄ネジ52よりも下方で、かつ、第1縮径面43よりも上方に位置している。分岐管接続部30は、管状である。分岐管接続部30内は、分岐管部20内に連通可能である。分岐管接続部30には、不図示の分岐配管が接続可能である。これにより、本管が分岐配管に分岐される。
【0020】
シールプラグ40は、分岐管部20の内側に栓として設けられるものである。
図2に示すように、シールプラグ40は、外周面に雄ネジ41が設けられている。雄ネジ41の下方には、下方に向かうに従い縮径し、分岐管部20の第1縮径面23に当接する第2縮径面43が設けられている。本実施形態における第2縮径面43は、テーパー形状である。シールプラグ40のショア硬度は、40HS以上であって、分岐管部20の硬度以上である。
【0021】
シールプラグ40の外周には、分岐管部20の内周面に密に接する1つのOリング42が設けられている。図示の例では、Oリング42は、第2縮径面43の上端に設けられている。第2縮径面43の上端には、周溝43aが設けられている。Oリング42は、周溝43a内に収容されている。
シールプラグ40の頂面には、工具を差し込む凹部40aが設けられている。
【0022】
上述の雌ネジ21を備えた分岐管部20及び雄ネジ41を備えたシールプラグ40は、次のようにして組付けられる。すなわち、分岐管部20の雌ネジ21と、シールプラグ40の雄ネジ41とを螺合させる。このとき、凹部30aに工具を差し込んだ状態で工具を回転させることで、シールプラグ30を分岐管部20に対して回転させてもよい。これにより、
図1に示すように、分岐管部20の上端の開口部を、シールプラグ40によって閉鎖することができる。
【0023】
また、分岐管部20の雌ネジ21とシールプラグ40の雄ネジ41の螺合を進めることで、
図3に示すように、分岐管部20の内周面とシールプラグ40のOリング42が接触した状態で、シールプラグ40を分岐管部20の下端まで押し下げることができる。この時、分岐管部20の第1縮径面23と、シールプラグ40の第2縮径面43が接触する。
【0024】
分岐管部20の第1縮径面23と、シールプラグ40の第2縮径面43が接触したとき、作業者がさらに分岐管部20の雌ネジ21とシールプラグ40の雄ネジ41の螺合を進める方向に回転させると、分岐管部20の下方の第1縮径面23と、シールプラグ40の下方の第2縮径面43を密に接触させることができる。また、本実施形態において、シールプラグ40の硬度は、分岐管部20の硬度以上であるため、分岐管部20の第1縮径面23がシールプラグ40によって押し広げられ、シールプラグ40と分岐管部20内周を、さらに密に接触させることができる。
これにより、
図4に示すように、分岐孔11をシールプラグ40によって閉栓することができ、本管から分岐管部20(分岐配管)への液体の流入を遮断することができる。
【0025】
このようにシールプラグ40によって閉栓した後、分岐管部20の雌ネジ21とシールプラグ40の雄ネジ41の螺合を緩める方向に回転させ、シールプラグ40を分岐管部20の上方に移動させることで、本管から分岐管部20への液体の流入の遮断を解除することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る分岐サドル継手100によれば、分岐管部20の内周面には、雌ネジ21と、雌ネジ21の下方に配置され下方に向かうに従い縮径する第1縮径面23を備え、シールプラグ40の外周面には、雌ネジ21に螺合する雄ネジ41と、雄ネジ41の下方に配置され下方に向かうに従い縮径し第1縮径面23に当接する第2縮径面43を備える。これにより、閉栓時にシールプラグ40を分岐管部20最奥に差し込むと、第1縮径面23と第2縮径面43が接触し、第1縮径面23と第2縮径面43との間で高い止水性を確保することができる。
【0027】
また、シールプラグ40に装着される少なくとも一つのOリング42を有している。これにより、第1縮径面23と第2縮径面43の接触による止水のほか、Oリング42を介して分岐管部20の内周にシールプラグ40を接することによる止水が可能となる。よって、高い止水性を確保することができる。
【0028】
また、分岐管部20のショア硬度が40HS以上であり、シールプラグ40のショア硬度が40HS以上である。これにより、本管と分岐管部20の接合部に水圧による負荷がかかったとしても、分岐管部20及びシールプラグ40が変形せず、分岐管部20とシールプラグ40のネジ部の螺合、及び第1縮径面23と第2縮径面43の密な接触を保持することができる。よって、高い止水性を確保することができる。
【0029】
また、シールプラグ40のショア硬度が、分岐管部20のショア硬度以上である。これにより、シールプラグ40を分岐管部20の最奥まで差し込んだ場合に、分岐管部20の内周がシールプラグ40によって押し広げられ、シールプラグ40と分岐管部20の内周の密着をさらに高めることができる。よって、高水圧下であっても第1縮径面23と第2縮径面43の密な接触を保持することができ、さらに高い止水性を確保することができる。
【実施例0030】
続いて、本発明に係る分岐サドル継手の実施例について説明する。なお、本発明に係る分岐サドル継手の構成及び作用効果は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例における分岐サドル継手100は、次のような手順で作成した。
分岐管部20は、縮径面を有する金型を用いて、射出成型機及びNC旋盤機により成形し、切削加工により内周に雌ネジ21を形成することによって作成した。
シールプラグ40は、縮径面を有する金型を用いて、射出成型機及びNC旋盤機により成形し、切削加工により外周に雄ネジ41を形成することによって作成した。
実施例における分岐サドル継手100は、分岐管部20およびシールプラグ40の材質やショア硬度を変化させ、6種類準備した(後述する表1参照)。
【0032】
比較例における分岐サドル継手は、分岐管部20及びシールプラグ40の射出成形において、縮径面を有しない金型を用いたことを除き、実施例と同様の手順を用いて作成した。
比較例における分岐サドル継手は、分岐管部20およびシールプラグ40の材質やショア硬度を変化させ、3種類準備した(後述する表2参照)。
【0033】
このようにして作成した分岐サドル継手100を本管に設置し、各実施例に係るシールプラグ40を分岐管部20の下端までねじ込み、分岐孔11を閉栓した。この時の各実施例に係る分岐サドル100の性能を、止水性及びネジ潰れの観点から評価した。
(止水性の評価)
〇:最大使用圧力1.0MPaで1時間以上漏水がない。
△:最大使用圧力1.0MPaで涙漏れが発生したものの、想定される通常の使用においての漏水は発生しない。
×:水圧をかけた際に漏水が発生するために圧力が上昇しない。
(ネジ潰れの評価)
〇:シールプラグ40を分岐管部20にねじ込む作業を複数回繰り返してもネジ部の損傷がない。
×:ネジ部が破損もしくは損傷する。
(分岐サドル継手100の総合的な性能評価)
〇:止水性及びネジ潰れの2点の評価において、どちらも〇である。
△:〇もしくは△が1つである。
×:止水性及びネジ潰れの2点の評価において、どちらも×である。
【0034】
分岐サドル継手100における分岐管部20及びシールプラグ40を、ショア硬度の異なる素材(硬質塩化ビニル、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、シリコンゴムのいずれか)を用いて作成した際の、実施例の評価結果を表1に、比較例の評価結果を表2にまとめた。
【0035】
【0036】
【0037】
表1に示すように、実施例1~6はいずれも最大使用圧力1.0MPaまで圧力が上昇し、総合判定が〇もしくは△であった。実施例1~5は、分岐管部20及びシールプラグ40のショア硬度が、いずれも40HS以上であり、止水性能が特に良好であった。すなわち、分岐管部20及びシールプラグ40が下端に互いに当接する縮径面を有し、分岐管部20及びシールプラグ40のショア硬度を適切に制御した場合、より高い止水性が得られることが示された。
一方、分岐管部20及びシールプラグ40が縮径面を有しない比較例1~3においては、分岐管部20及びシールプラグ40のショア硬度に関わらず、漏水及びネジ潰れが発生した。
【0038】
以上のとおり、分岐サドル継手100において、分岐管部20が下端に第1縮径面23を有し、シールプラグ40が下端に第1縮径面23に当接する第2縮径面43を有することで、閉栓時に高い止水性を確保できることが示された。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
例えば、分岐管部20の硬度は40HS以上に限定されず、シールプラグ40の硬度は40HS以上に限定されない。また、シールプラグ40の硬度は分岐管部20の硬度以上に限定されない。
シールプラグ40が有するOリング42の数は2以上であってもよく、有していなくてもよい。Oリング42が第2縮径面43に設けられていなくてもよい。Oリング42が第2縮径面43よりも上方に配置されていてもよい。
第2縮径面43の形状は、下方に向かうに従い縮径していればよく、具体的には、シールプラグ40を側方から見たときに、下方に向けて凸となる放物線状に形成されてもよい。
キャップ50がなくてもよい。
【0041】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。