(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022092
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240208BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20240208BHJP
F25B 41/37 20210101ALI20240208BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F25B1/00 331E
F25B1/00 396B
F25B39/04 C
F25B39/04 S
F25B41/37
F25B49/02 510C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125441
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊野 真二
(57)【要約】
【課題】非共沸混合冷媒を利用する冷凍装置において、蒸発器を所望の低温まで確実に冷却する。
【解決手段】凝縮器19は、上流側の第1凝縮部43と下流側の第2凝縮部44とで構成されて、両凝縮部43・44の間から第2流路22が分岐している。第1凝縮部43で冷却された気液混相の非共沸混合冷媒のうち、気相の第1流体部分が第2凝縮部44へ向かい、液相の第2流体部分が第2流路22へ向かうように構成されている。第2流路22には、第2流体部分を減圧する減圧部48と、減圧後の第2流体部分を気化させる吸熱部49とが設けられている。第1流路21の第2凝縮部44と膨張弁20との間に、吸熱部49と対になり熱交換器56を構成する放熱部55が設けられており、熱交換器56において、第2凝縮部44で冷却された第1流体部分が、第2流体部分と熱交換してさらに冷却される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共沸混合冷媒が封入された冷凍装置であって、
少なくとも圧縮機(18)と凝縮器(19)と膨張弁(20)と蒸発器(11)を冷媒配管でループ状に接続してなる第1流路(21)と、第1流路(21)から分岐して膨張弁(20)と蒸発器(11)を迂回する第2流路(22)とを備えており、
凝縮器(19)が、上流側の第1凝縮部(43)と下流側の第2凝縮部(44)とで構成されて、両凝縮部(43・44)の間から第2流路(22)が分岐しており、
第1凝縮部(43)で冷却された気液混相の非共沸混合冷媒のうち、気相の第1流体部分が第2凝縮部(44)へ向かい、液相の第2流体部分が第2流路(22)へ向かうように構成されており、
第2流路(22)には、第2流体部分を減圧する減圧部(48)と、減圧後の第2流体部分を気化させる吸熱部(49)とが設けられており、
第1流路(21)の第2凝縮部(44)と膨張弁(20)との間に、吸熱部(49)と対になり熱交換器(56)を構成する放熱部(55)が設けられており、
熱交換器(56)において、第2凝縮部(44)で冷却された第1流体部分が、第2流体部分と熱交換してさらに冷却されることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
凝縮器(19)が、筒状の入口ヘッダ(25)および出口ヘッダ(26)と、ヘッダ(25・26)どうしを繋ぐ多数本のチューブ(27)と、隣接するチューブ(27)の間に配置される放熱用のフィン(28)とを備えるマイクロチャンネル熱交換器で構成されており、
各ヘッダ(25・26)が、仕切り(33・37)によって上流部(34・38)と下流部(35・39)に区分されており、
入口ヘッダ(25)の上流部(34)に、圧縮機(18)の吐出管に接続される始端口(36)が設けられており、
出口ヘッダ(26)の上流部(38)に、第1流路(21)から第2流路(22)への分岐点となる中間口(40)が設けられており、
出口ヘッダ(26)の下流部(39)に、熱交換器(56)の放熱部(55)へと繋がる終端口(41)が設けられており、
第1凝縮部(43)が、入口ヘッダ(25)の上流部(34)から出口ヘッダ(26)の上流部(38)へ冷媒を導く一群のチューブ(27)で構成されており、
第2凝縮部(44)が、出口ヘッダ(26)の上流部(38)から入口ヘッダ(25)の下流部(35)へ冷媒を導く一群のチューブ(27)と、該下流部(35)から出口ヘッダ(26)の下流部(39)へ冷媒を導く一群のチューブ(27)とで構成されている請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
中間口(40)は出口ヘッダ(26)の仕切り(37)の上面に臨んでおり、
出口ヘッダ(26)の仕切り(37)からその上方に位置するチューブ(27)までの上下方向距離が、該仕切り(37)から中間口(40)までの上下方向距離よりも大きい請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
凝縮器(19)の1個所に、チューブ(27)の隣接間隔が他よりも大きいギャップ部(60)が設けられており、
ギャップ部(60)の側方に出口ヘッダ(26)の仕切り(37)が配置されている請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項5】
ギャップ部(60)の通風抵抗を高める抵抗部材(61)が配置されている請求項4に記載の冷凍装置。
【請求項6】
抵抗部材(61)が、チューブ(27)と平行なプレート(62)と、フィン(28)と同形でプレート(62)を上下から挟むスペーサー(63)とを含む請求項5に記載の冷凍装置。
【請求項7】
出口ヘッダ(26)の仕切り(37)の上面が中間口(40)へ向かって下り傾斜している請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項8】
第2流路(22)を開閉する電磁弁(47)を備えており、
第2流路(22)に対するガス状冷媒の流入が検知された場合に、電磁弁(47)が開状態から閉状態に切り換わる請求項1から7のいずれかひとつに記載の冷凍装置。
【請求項9】
第1流路(21)における凝縮器(19)の出口側に第1温度センサ(51)が設けられており、
第2流路(22)における減圧部(48)の出口側に第2温度センサ(52)が設けられており、
第2温度センサ(52)で計測される第2流体部分の温度が、第1温度センサ(51)で計測される第1流体部分の温度よりも所定温度以上高くなると、第2流路(22)にガス状冷媒が流入しているとみなして電磁弁(47)が閉状態に切り換わる請求項8に記載の冷凍装置。
【請求項10】
第2流路(22)の減圧部(48)がキャピラリチューブで構成されており、
第2凝縮部(44)から熱交換器(56)の放熱部(55)へ向かう第1流体部分が、減圧部(48)を流れる第2流体部分と熱交換して冷却される請求項1から7のいずれかひとつに記載の冷凍装置。
【請求項11】
第2凝縮部(44)から熱交換器(56)の放熱部(55)へ向かう第1流体部分が、蒸発器(11)から圧縮機(18)へ向かう第1流体部分と熱交換して冷却される請求項1から7のいずれかひとつに記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非共沸混合冷媒を利用する冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸点が異なる2種以上の冷媒の混合物すなわち非共沸混合冷媒を利用する冷凍装置は、相対的に高沸点の冷媒で低沸点の冷媒を冷却(凝縮)し、低温となった後者冷媒を蒸発器に送出して、被冷却対象を低温まで冷却するものである。この冷凍装置は、搭載される圧縮機が通常1台であることから、2台の圧縮機を搭載する二元冷凍装置などに比べて、小型かつ安価に製造することができる。
【0003】
このような非共沸混合冷媒(以下、単に混合冷媒と記す。)を利用する冷凍装置は、例えば特許文献1に開示されており公知である。特許文献1の冷凍装置は、冷凍サイクルを構成する圧縮機、第1凝縮器、第2凝縮器、第1膨張弁および蒸発器に加えて、混合冷媒を気相と液相に分離する気液分離器を備える。気液分離器は、第1凝縮器と第2凝縮器の間に配置されており、第1凝縮器から気液混相の混合冷媒を受け入れる流入ポートと、この混合冷媒のうち気相の第1流体部分を第2凝縮器へ向けて吐出する気体流出ポートと、液相の第2流体部分を吐出する液体流出ポートとを備える。第1流体部分の主成分は相対的に低沸点の第1冷媒であり、第2流体部分の主成分は相対的に高沸点の第2冷媒である。液体流出ポートから吐出された第2流体部分は、第2膨張弁で減圧されたのち第2凝縮器へ至り、そこを流れる第1流体部分を冷却する。第2流体部分により冷却されて凝縮した第1流体部分は、第1膨張弁で減圧されたのち蒸発器へ至り、被冷却対象を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の冷凍装置において、気液分離器から吐出された気相の第1流体部分は、第2凝縮器と第1膨張弁を経由して蒸発器へ至っており、第1流体部分を熱交換により冷却する機会が第2凝縮器のみに限られてしまっている。そのため、例えば外気温度が極めて高い環境下では、第1凝縮器における混合冷媒の空冷が不十分となり、第1流体部分が比較的高温のまま第2凝縮器に至り、結果として第1流体部分ひいては蒸発器を所望の低温まで冷却することができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、非共沸混合冷媒を利用する冷凍装置において、蒸発器を所望の低温まで確実に冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非共沸混合冷媒が封入された冷凍装置を対象とする。冷凍装置は、少なくとも圧縮機18と凝縮器19と膨張弁20と蒸発器11を冷媒配管でループ状に接続してなる第1流路21と、第1流路21から分岐して膨張弁20と蒸発器11を迂回する第2流路22とを備える。凝縮器19は、上流側の第1凝縮部43と下流側の第2凝縮部44とで構成されて、両凝縮部43・44の間から第2流路22が分岐している。第1凝縮部43で冷却された気液混相の非共沸混合冷媒のうち、気相の第1流体部分が第2凝縮部44へ向かい、液相の第2流体部分が第2流路22へ向かうように構成されている。第2流路22には、第2流体部分を減圧する減圧部48と、減圧後の第2流体部分を気化させる吸熱部49とが設けられている。第1流路21の第2凝縮部44と膨張弁20との間に、吸熱部49と対になり熱交換器56を構成する放熱部55が設けられており、熱交換器56において、第2凝縮部44で冷却された第1流体部分が、第2流体部分と熱交換してさらに冷却されることを特徴とする。
【0008】
凝縮器19が、筒状の入口ヘッダ25および出口ヘッダ26と、ヘッダ25・26どうしを繋ぐ多数本のチューブ27と、隣接するチューブ27の間に配置される放熱用のフィン28とを備えるマイクロチャンネル熱交換器で構成されており、各ヘッダ25・26が、仕切り33・37によって上流部34・38と下流部35・39に区分されており、入口ヘッダ25の上流部34に、圧縮機18の吐出管に接続される始端口36が設けられており、出口ヘッダ26の上流部38に、第1流路21から第2流路22への分岐点となる中間口40が設けられており、出口ヘッダ26の下流部39に、熱交換器56の放熱部55へと繋がる終端口41が設けられており、第1凝縮部43が、入口ヘッダ25の上流部34から出口ヘッダ26の上流部38へ冷媒を導く一群のチューブ27で構成されており、第2凝縮部44が、出口ヘッダ26の上流部38から入口ヘッダ25の下流部35へ冷媒を導く一群のチューブ27と、該下流部35から出口ヘッダ26の下流部39へ冷媒を導く一群のチューブ27とで構成されている形態を採ることができる。
【0009】
中間口40は出口ヘッダ26の仕切り37の上面に臨んでおり、出口ヘッダ26の仕切り37からその上方に位置するチューブ27までの上下方向距離が、該仕切り37から中間口40までの上下方向距離よりも大きい形態を採ることができる。
【0010】
凝縮器19の1個所に、チューブ27の隣接間隔が他よりも大きいギャップ部60を設け、ギャップ部60の側方に出口ヘッダ26の仕切り37を配置することができる。
【0011】
ギャップ部60の通風抵抗を高める抵抗部材61を配置することができる。
【0012】
抵抗部材61が、チューブ27と平行なプレート62と、フィン28と同形でプレート62を上下から挟むスペーサー63とを含む形態を採ることができる。
【0013】
仕切り37の上面が中間口40へ向かって下り傾斜している形態を採ることができる。
【0014】
第2流路22を開閉する電磁弁47を備えており、第2流路22に対するガス状冷媒の流入が検知された場合に、電磁弁47が開状態から閉状態に切り換わる形態を採ることができる。
【0015】
第1流路21における凝縮器19の出口側に第1温度センサ51が設けられており、第2流路22における減圧部48の出口側に第2温度センサ52が設けられており、第2温度センサ52で計測される第2流体部分の温度が、第1温度センサ51で計測される第1流体部分の温度よりも所定温度以上高くなると、第2流路22にガス状冷媒が流入しているとみなして電磁弁47が閉状態に切り換わる形態を採ることができる。
【0016】
第2流路22の減圧部48がキャピラリチューブで構成されており、第2凝縮部44から熱交換器56の放熱部55へ向かう第1流体部分が、減圧部48を流れる第2流体部分と熱交換して冷却される形態を採ることができる。
【0017】
第2凝縮部44から熱交換器56の放熱部55へ向かう第1流体部分が、蒸発器11から圧縮機18へ向かう第1流体部分と熱交換して冷却される形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る冷却装置では、凝縮器19を上流側の第1凝縮部43と下流側の第2凝縮部44とで構成し、第1凝縮部43を通過して冷却された気液混相の非共沸混合冷媒のうち、気相の第1流体部分が第2凝縮部44へ向かい、液相の第2流体部分が、両凝縮部43・44の間から分岐する第2流路22へ向かうようにした。ここで、第1流体部分の主成分は、非共沸混合冷媒を構成する相対的に低沸点の冷媒であり、第2流体部分の主成分は相対的に高沸点の冷媒である。
【0019】
そのうえで本発明では、第2流路22に減圧部48と吸熱部49を設けるとともに、第1流路21の第2凝縮部44と膨張弁20との間に放熱部55を設けた。そして、放熱部55と吸熱部49で構成される熱交換器56において、第2凝縮部44で冷却された第1流体部分が、第2流体部分と熱交換してさらに冷却されるようにした。このように、第2流体部分から分離した第1流体部分を複数個所で冷却すると、第1流体部分ひいては蒸発器11を所望の低温まで確実に冷却することができる。
【0020】
本発明に係る凝縮器19は、入口ヘッダ25と出口ヘッダ26を多数本のチューブ27で繋いだマイクロチャンネル熱交換器で構成することができる。具体的には、各ヘッダ25・26を仕切り33・37によって上流部34・38と下流部35・39に区分し、入口ヘッダ25の上流部34に始端口36を設け、出口ヘッダ26の上流部38に第2流路22への分岐点となる中間口40を設け、出口ヘッダ26の下流部39に終端口41を設ける。そして第1凝縮部43を、入口ヘッダ25の上流部34から出口ヘッダ26の上流部38へ冷媒を導く一群のチューブ27で構成し、第2凝縮部44を、出口ヘッダ26の上流部38から入口ヘッダ25の下流部35へ冷媒を導く一群のチューブ27と、該下流部35から出口ヘッダ26の下流部39へ冷媒を導く一群のチューブ27とで構成することができる。このように、1個の凝縮器19に第1凝縮部43と第2凝縮部44を設けると、各凝縮部43・44を個別の凝縮器で構成し、その間に気液分離器を配置する場合に比べて、冷凍装置の小型化と製造コストの削減を図ることができる。冷凍装置を構成する部材を削減することは、その製造時の溶接個所を減らして、冷媒漏れのリスクを低減することにも寄与する。
【0021】
出口ヘッダ26の仕切り37からその上方に位置するチューブ27までの上下方向距離を、該仕切り37から中間口40までの上下方向距離よりも大きくすると、換言すれば、該仕切り37の上面からチューブ27を中間口40よりも遠ざけると、第1凝縮部43を通過して該仕切り37の上面に滴下した第2流体部分を、中間口40すなわち第2流路22の側へ優先的に向かわせて、第2流体部分がチューブ27(第2凝縮部44)の側へ流出することを抑制することができる。このように、第2凝縮部44へ向かう気相の第1流体部分に対する液相の第2流体部分の混入を抑制すると、第2凝縮部44で第1流体部分を効率良く冷却することができ、また、蒸発器11の入口から出口に向かって冷媒温度が上昇する現象いわゆる温度グライドを低減することができる。
【0022】
チューブ27の隣接間隔が他よりも大きいギャップ部60を設け、その側方に出口ヘッダ26の仕切り37を配置すると、該仕切り37の上方に位置するチューブ27を、該仕切り37の上面からさらに遠ざけることができ、これにより、液相の第2流体部分がチューブ27(第2凝縮部44)の側へ流出することをより抑えることができる。
【0023】
仮にギャップ部60が空洞であると、凝縮器19を流れる熱交換風がギャップ部60に集中し、その反作用でギャップ部60の上下のチューブ群を流れる熱交換風が不足し、各チューブ27を流れる冷媒が十分に冷却されないおそれがある。そこで本発明では、ギャップ部60の通風抵抗を高める抵抗部材61を配置した。これにより、熱交換風を上下のチューブ群へ向かわせて、各チューブ27を流れる冷媒を的確に冷却することができる。
【0024】
抵抗部材61が、チューブ27と平行なプレート62と、フィン28と同形でプレート62を上下から挟むスペーサー63とを含むものであると、この抵抗部材61でギャップ部60の上側のチューブ群を支持することができる。また、抵抗部材61自身はギャップ部60の下側のチューブ群で支持されるようにして、凝縮器19の全体の強度を高めることができる。
【0025】
仕切り37の上面を中間口40へ向かって下り傾斜させると、該仕切り37の上面に滴下した第2流体部分をより確実に中間口40すなわち第2流路22の側へ向かわせて、第2流体部分がチューブ27(第2凝縮部44)の側へ流出することをより抑えることができる。
【0026】
第2流路22に対するガス状冷媒の流入が検知された場合に、同流路22を開閉する電磁弁47を開状態から閉状態に切り換えると、ガス状冷媒が減圧部48を流れ続けることによるその故障や不具合を防止することができる。
【0027】
減圧部48の出口側における第2流体部分の温度が、凝縮器19の出口側における第1流体部分の温度よりも所定温度以上高くなると、第2流路22にガス状冷媒が流入しているとみなすことができる。これによれば、各流体部分の温度を計測する温度センサ51・52を設けるだけで、ガス状冷媒の流入を低コストで検知することができる。
【0028】
第2流路22の減圧部48をキャピラリチューブで構成し、第2凝縮部44から熱交換器56の放熱部55へ向かう第1流体部分が、減圧部48を流れる第2流体部分と熱交換して冷却されるようにすると、第1流体部分が冷却される機会をさらに増やして、第1流体部分ひいては蒸発器11を所望の低温までより確実に冷却することができる。
【0029】
第2凝縮部44から熱交換器56の放熱部55へ向かう第1流体部分が、蒸発器11から圧縮機18へ向かう第1流体部分と熱交換して冷却されるようにすると、第1流体部分が減圧前に冷却される機会をさらに増やして、第1流体部分ひいては蒸発器11を所望の低温までより確実に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る冷凍装置の回路図である。
【
図2】同冷凍装置が搭載された急速冷凍庫の正面図である。
【
図3】同急速冷凍庫で冷却される蓄冷材とコンテナの斜視図である。
【
図4】同冷凍装置を構成する凝縮器の構成図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る冷凍装置を構成する凝縮器の構成図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る冷凍装置を構成する凝縮器の構成図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る冷凍装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態) 本発明に係る冷凍装置を蓄冷材用の急速冷凍庫に適用した第1実施形態を
図1ないし
図5に示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図2および
図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において急速冷凍庫1は、前面が開口する断熱箱体からなる庫本体2と、該開口を開閉する扉3とを備える。庫本体2と扉3で囲まれる庫内4は、垂直な隔壁5で左側の収容室6と右側の冷却室7とに区分されている。収容室6には、多数の通気孔を有する棚板8が上下多段状に設置されており、各棚板8には蓄冷材Mを収容するコンテナC(
図3参照)が載置される。コンテナCの壁面にも多数の通気孔が形成されている。
【0032】
冷却室7の上下中央には、冷凍装置10を構成する蒸発器11が設けられており、その上下それぞれに庫内ファン12が設けられている。隔壁5において、各庫内ファン12に正対する部分には一群の吹出孔13が形成されており、蒸発器11に正対する部分には一群の吸込孔14が形成されている。庫内ファン12が駆動することにより、蒸発器11で冷却された庫内空気が吹出孔13から収容室6へ吹き出され、同空気は棚板8上のコンテナCを冷却したのち吸込孔14から冷却室7へ吸い込まれる。
【0033】
庫本体2の上側に画成された機械室17には、蒸発器11と共に冷凍装置10を構成する圧縮機18と凝縮器19などが収容されている。
図1において冷凍装置10は、圧縮機18と凝縮器19と膨張弁20と蒸発器11などを冷媒配管でループ状に接続してなる第1流路21と、凝縮器19の中途部で第1流路21から分岐して蒸発器11と圧縮機18の間で第1流路21に合流する第2流路22とを備える。この冷凍装置10には、沸点が異なる2種の冷媒を混合してなる非共沸混合冷媒(以下、単に混合冷媒と記す。)が封入されている。
【0034】
図4に示すように凝縮器19は、マイクロチャンネル熱交換器で構成されており、上下に伸びる中空状の入口ヘッダ25および出口ヘッダ26と、ヘッダ25・26どうしを繋いで水平に伸びる多数本の扁平なチューブ27と、上下に隣接するチューブ27・27の間にそれぞれ配置される放熱用のフィン28とを備える。各チューブ27の内部には、表面張力の影響が現れる数ミリ径以下の多数本のチャンネル29が形成されている(
図5参照)。各フィン28は、波状に湾曲してその上下のチューブ27に当接しており、凝縮器ファン30(
図1参照)は、チューブ27とフィン28で囲まれる細長い空間と平行な(
図4で紙面に直交する方向の)熱交換風を凝縮器19へ送給する。
【0035】
入口ヘッダ25は、凝縮器19の上下中央よりも上方に配置された仕切り33によって、上側の上流部34と下側の下流部35とに区分されており、このうち上流部34に、圧縮機18の吐出管に接続される始端口36が設けられている。出口ヘッダ26は、凝縮器19の上下中央よりも下方に配置された仕切り37によって、上側の上流部38と下側の下流部39とに区分されている。出口ヘッダ26の上流部38には、第1流路21から第2流路22への分岐点を構成する中間口40が設けられており、同下流部39には、後述する熱交換器56を介して膨張弁20へと繋がる終端口41が設けられている。
【0036】
圧縮機18から吐出されたガス状の混合冷媒は、始端口36を介して入口ヘッダ25の上流部34に流れ込み、そこから出口ヘッダ26の上流部38へ向かってチューブ27を流れる。入口ヘッダ25と出口ヘッダ26の上流部34・38どうしを繋ぎ、混合冷媒を流す一群のチューブ27が、本発明の第1凝縮部43を構成する。第1凝縮部43を流れる間に混合冷媒は空冷され、その一部が凝縮する。つまり混合冷媒は、気液混相の状態で出口ヘッダ26の上流部38へ流れ込む。当該上流部38における混合冷媒の気相部分を以下では第1流体部分と呼称し、同液相部分を第2流体部分と呼称する。混合冷媒を構成する低沸点冷媒と高沸点冷媒のうち、前者は第1流体部分の主成分となり、後者は第2流体部分の主成分となる。
【0037】
出口ヘッダ26の上流部38に至った混合冷媒のうち第1流体部分(気相)は、該上流部38の下半部へ移動し、そこから入口ヘッダ25の下流部35へ向かってチューブ27を流れる。入口ヘッダ25の下流部35に至った第1流体部分は、該下流部35の下半部へ移動し、そこから出口ヘッダ26の下流部39へ向かってチューブ27を流れて、最終的に該下流部39に設けられた終端口41に至る。つまり第1流体部分は、出口ヘッダ26の上流部38で第2流体部分と分離した後、二本のチューブ27を流れて空冷される。出口ヘッダ26の上流部38から入口ヘッダ25の下流部35へ第1流体部分を導く一群のチューブ27と、該下流部35から出口ヘッダ26の下流部39へ第1流体部分を導く一群のチューブ27とが、本発明の第2凝縮部44を構成する。
【0038】
一方、混合冷媒のうち第2流体部分(液相)は、出口ヘッダ26の上流部38を仕切り37の上面へ向かって滴下する。当該上面に臨む出口ヘッダ26の壁面に中間口40が形成されており、この中間口40から第2流体部分が第2流路22へと流出するように構成されている。
図4に拡大して示すように、中間口40の下縁の上下位置は仕切り37の上面と略等しい。仕切り37の上下位置は、上下に隣接するチューブ27の間で、かつ、その中間よりも下方とされている。このように、仕切り37を下側のチューブ27に寄せて配置して、仕切り37からその上方に位置するチューブ27までの上下方向距離を、該仕切り37から中間口40までの上下方向距離よりも大きくすると、換言すれば、該仕切り37の上面からチューブ27を中間口40よりも遠ざけると、第1凝縮部43を通過して該仕切り37の上面に滴下した第2流体部分を、中間口40すなわち第2流路22の側へ優先的に向かわせて、第2流体部分がチューブ27(第2凝縮部44)の側へ流出することを抑制することができる。
【0039】
図1に示すように第2流路22には、同流路22を開閉する電磁弁47と、キャピラリチューブで構成される減圧部48と、減圧後の第2流体部分を気化させる吸熱部49とが、上流側から記載順に配置されている。吸熱部49で気化した第2流体部分は、蒸発器11の下流側で第1流路21に流入し、アキュムレータ50を経て圧縮機18へ戻る。
【0040】
電磁弁47は通常は開状態に保持される。ただし、冷凍装置10の過負荷時などには、第1凝縮部43(凝縮器19)で放熱不足が生じて冷媒が十分に凝縮せず、結果として第2流路22にガス状冷媒が流入することがあり、このような場合には減圧部48を保護すべく電磁弁47が閉状態に切り換わる。この制御を可能とするため、第1流路21における凝縮器19の出口側に第1温度センサ51が設けられており、第2流路22における減圧部48の出口側に第2温度センサ52が設けられている。第2温度センサ52で計測される第2流体部分の温度T2が、第1温度センサ51で計測される第1流体部分の温度T1よりも所定温度α以上高くなると(T2≧T1+α)、第2流路22をガス状冷媒が流れているとみなして電磁弁47が閉状態に切り換わる。電磁弁47を閉じてから所定時間(例えば10分間)が経過すると、電磁弁47は再び開放される。
【0041】
一方、凝縮器19の終端口41から流れ出た第1流体部分は、ドライヤ53を経てまずは第2流路22の減圧部48の近傍を通過し、該減圧部48を流れる第2流体部分と熱交換して冷却される。つまり減圧部48は、その近傍を通る第1流路21の冷媒配管と共に補助熱交換器57を構成する。補助熱交換器57を通過した第1流体部分は自己熱交換器54に至る。この自己熱交換器54では、高圧(膨張弁20の上流側)と低圧(蒸発器11の下流側)の第1流体部分どうしの熱交換が行われる。詳しくは、補助熱交換器57から流れ込む高圧の第1流体部分が、蒸発器11からアキュムレータ50へ向かう低圧の第1流体部分により冷却される。
【0042】
補助熱交換器57と自己熱交換器54を通過した高圧の第1流体部分は放熱部55に至る。この放熱部55は、第2流路22の吸熱部49と対になり熱交換器56を構成する。吸熱部49には、減圧部48で減圧された第2流体部分が流れており、この第2流体部分が気化するときに放熱部55から熱を奪うことで、第1流体部分は効果的に冷却される。
【0043】
以上のように、凝縮器19の第1凝縮部43を経て第2流体部分と分離した第1流体部分は、第2凝縮部44と補助熱交換器57と自己熱交換器54と熱交換器56(放熱部55)を順に通過し、これらを流れる間に十分に冷却されて凝縮する。凝縮した第1流体部分は、膨張弁20で減圧されたのち蒸発器11へ至り、急速冷凍庫の庫内4の空気を的確に冷却する。高沸点冷媒を主成分とする第2流体部分を第2流路22へと分岐させ、低沸点冷媒を主成分とする第1流体部分のみを蒸発器11へ導くと、蒸発器11の入口から出口に向かって冷媒温度が上昇する現象いわゆる温度グライドを低減することができる。
【0044】
凝縮器19を、入口ヘッダ25と出口ヘッダ26を多数本のチューブ27で繋いだマイクロチャンネル熱交換器で構成し、1個の凝縮器19に第1凝縮部43と第2凝縮部44を設けると、各凝縮部43・44を個別の凝縮器で構成し、その間に気液分離器を配置する場合に比べて、冷凍装置10の小型化と製造コストの削減を図ることができる。冷凍装置10を構成する部材を削減することは、その製造時の溶接個所を減らして、冷媒漏れのリスクを低減することにも寄与する。
【0045】
出口ヘッダ26の仕切り37の上面からチューブ27を中間口40よりも遠ざけると、第1凝縮部43を通過して該仕切り37の上面に滴下した第2流体部分を、中間口40すなわち第2流路22の側へ優先的に向かわせることができる。このように、第2凝縮部44へ向かう気相の第1流体部分に対する液相の第2流体部分の混入を抑制すると、第2凝縮部44で第1流体部分を効率良く冷却することができ、また、蒸発器11における温度グライドを低減することができる。
【0046】
(第2実施形態) 本発明の第2実施形態に係る冷凍装置の凝縮器19を
図6に示す。この凝縮器19は、チューブ27の隣接間隔が他よりも大きいギャップ部60を備える点で第1実施形態と相違する。ギャップ部60の上下寸法は、ギャップ部60を除くチューブ27の隣接ピッチの約3倍に設定されており、このギャップ部60の下端部の側方に出口ヘッダ26の仕切り37と中間口40とが配置されている。またギャップ部60には、その通風抵抗を高める抵抗部材61が配置されている。具体的には、抵抗部材61は、チューブ27と平行な2枚の金属製のプレート62と、これらプレート62を上下から挟む3枚のスペーサー63とで構成される。プレート62はチューブ27と同等の上下厚みを有し、スペーサー63はフィン28と同一の素材で同一の形状に形成されている。プレート62は熱伝導率の高いアルミニウムで形成されており、スペーサー63と共に放熱作用を発揮する。他は第1実施形態と同様であるため、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。第3実施形態以降においても同様とする。
【0047】
チューブ27の隣接間隔が他よりも大きいギャップ部60を設け、その側方に出口ヘッダ26の仕切り37を配置すると、該仕切り37の上方に位置するチューブ27を、該仕切り37の上面からさらに遠ざけることができ、これにより、液相の第2流体部分がチューブ27(第2凝縮部44)の側へ流出することをより抑えることができる。
【0048】
ギャップ部60の通風抵抗を高める抵抗部材61を配置すると、凝縮器19を流れる熱交換風がギャップ部60に集中するのを避けて、これを上下のチューブ群へ向かわせて、各チューブ27を流れる冷媒を的確に冷却することができる。また抵抗部材61が、チューブ27と平行なプレート62と、フィン28と同形でプレート62を上下から挟むスペーサー63とを含むものであると、この抵抗部材61でギャップ部60の上側のチューブ群を支持することができる。また、抵抗部材61自身はギャップ部60の下側のチューブ群で支持されるようにして、凝縮器19の全体の強度を高めることができる。
【0049】
(第3実施形態) 本発明の第3実施形態に係る冷凍装置の凝縮器19を
図7に示す。この凝縮器19は、その全体が入口ヘッダ25から出口ヘッダ26へ向かって緩やかに下り傾斜している点で第1実施形態と相違する。出口ヘッダ26の仕切り37の上面も、中間口40へ向かって下り傾斜しており、これによれば、該仕切り37の上面に滴下した第2流体部分をより確実に中間口40すなわち第2流路22の側へ向かわせて、第2流体部分がチューブ27(第2凝縮部44)の側へ流出することをより抑えることができる。
【0050】
(第4実施形態) 本発明に係る冷凍装置の第4実施形態を
図8に示す。本実施形態では第1凝縮部43と第2凝縮部44がそれぞれ個別の凝縮器、例えばフィンチューブ式熱交換器で構成されており、両凝縮部43・44の間に気液分離器70が配置されている。気液分離器70の流入ポートは第1凝縮部43の出口に接続され、気体流出ポートは第2凝縮部44の入口に接続され、液体流出ポートは第1流路21から第2流路22への分岐点を構成する。
【0051】
本発明に係る冷凍装置の適用対象は、第1実施形態で示した蓄冷材用の急速冷凍庫に限られず、食品用の冷凍庫や冷凍ショーケース、または製氷機などの各種の冷却機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 冷凍装置
11 蒸発器
18 圧縮機
19 凝縮器
20 膨張弁
21 第1流路
22 第2流路
25 入口ヘッダ
26 出口ヘッダ
27 チューブ
28 フィン
33 入口ヘッダの仕切り
34 入口ヘッダの上流部
35 入口ヘッダの下流部
36 始端口
37 出口ヘッダの仕切り
38 出口ヘッダの上流部
39 出口ヘッダの下流部
40 中間口
41 終端口
43 第1凝縮部
44 第2凝縮部
48 減圧部
49 吸熱部
51 第1温度センサ
52 第2温度センサ
54 自己熱交換器
55 放熱部
56 熱交換器
57 補助熱交換器
60 ギャップ部
61 抵抗部材
62 プレート
63 スペーサー
70 気液分離器