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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022097
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】トイレ用の液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20240208BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20240208BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20240208BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20240208BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/88
C11D1/75
C11D1/72
C11D3/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125454
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】溝田 志織
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 千尋
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AC14
4H003AD04
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA06
4H003EA03
4H003EB04
4H003EB33
4H003EB42
4H003FA17
4H003FA23
4H003FA26
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】低温時の起泡性を高め、かつ起泡性の温度依存度を低減させたトイレ用の液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分:両性界面活性剤及び半極性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と、(B)成分:下記式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(C)成分:ポリビニルアルコール系高分子及びセルロール系高分子から選ばれる1種以上の高分子と、を含有し、前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比は0.4~8である、トイレ用の液体洗浄剤組成物。
R-(OC-OH・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~18の脂肪族炭化水素基であり、nは(OC)の平均繰り返し数を表す数であり、nは31~70である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:両性界面活性剤及び半極性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と、
(B)成分:下記式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、
(C)成分:ポリビニルアルコール系高分子及びセルロール系高分子から選ばれる1種以上の高分子と、
を含有し、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比は0.4~8である、トイレ用の液体洗浄剤組成物。
R-(OC-OH・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~18の脂肪族炭化水素基であり、nは(OC)の平均繰り返し数を表す数であり、nは31~70である。)
【請求項2】
前記液体洗浄剤組成物の総質量に対して、前記(A)成分の含有量は0.15~5質量%であり、前記(B)成分の含有量は0.15~5質量%である、請求項1に記載のトイレ用の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、けん化度80%以上のポリビニルアルコール系高分子、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる高分子である、請求項1又は2に記載のトイレ用の液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレの便器の洗浄は、トイレ用の液体洗浄剤組成物を洗浄対象に塗布し、次いで、洗浄用ブラシで擦る(擦り洗い)のが一般的である。洗浄対象を洗浄ブラシで擦る際には、前屈したり、中腰となったりするため、手間がかかり、かつ身体的な負担が大きい。
また、便器の縁の裏等は、洗浄ブラシの届きにくい領域であり、洗浄をしにくい。
【0003】
従来、両性界面活性剤とポリビニルアルコール系高分子を組み合わせて、洗浄力に優れ、滞留性が良好で、かつ吐出性が良好なトイレ用の液体洗浄剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-105388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のトイレ用の液体洗浄剤組成物は、冬場にトイレ空間の気温が下がった場合(低温環境)においては、トイレ用の液体洗浄剤組成物の液温も下がるため、スプレーで吐出しても十分に泡立たない(起泡性が低い)という課題があった。この課題に対し、単に界面活性剤量を増やすと、トイレ用の液体洗浄剤組成物を便座等に吹き付け、拭き取っても、拭き跡が残る。加えて、単に界面活性剤量を増やすと、夏場に気温が上がった場合(高温環境)においては必要以上に泡量が増え、泡が消えにくくなる(使用性が悪い)。すなわち、トイレ用の液体洗浄剤組成物には、低温環境でも高温環境でも適度な起泡性を発揮する(温度依存度が低い)ことが求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、低温時の起泡性を高め、かつ起泡性の温度依存度を低減させたトイレ用の液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
両性界面活性剤及び半極性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と特定のエチレンオキサイド付加モル数のノニオン界面活性剤を特定の比率で併用し、かつ特定のポリビニルアルコール系高分子及びセルロール系高分子から選ばれる1種以上の高分子と組み合わせることにより、液体洗浄剤組成物の低温時の泡量を低下させることなく、かつ温度依存度を低減させることができる。
本発明は、以下の態様を有する。
[1](A)成分:両性界面活性剤及び半極性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と、
(B)成分:下記式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、
(C)成分:ポリビニルアルコール系高分子及びセルロール系高分子から選ばれる1種以上の高分子と、
を含有し、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比は0.4~8である、トイレ用の液体洗浄剤組成物。
R-(OC-OH・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~18の脂肪族炭化水素基であり、nは(OC)の平均繰り返し数を表す数であり、nは31~70である。)
[2]前記液体洗浄剤組成物の総質量に対して、前記(A)成分の含有量は0.15~5質量%であり、前記(B)成分の含有量は0.15~5質量%である、[1]に記載のトイレ用の液体洗浄剤組成物。
[3]前記(C)成分が、けん化度80%以上のポリビニルアルコール系高分子、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる高分子である、[1]又は[2]に記載のトイレ用の液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温時の起泡性を高め、かつ起泡性の温度依存度を低減させたトイレ用の液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(トイレ用の液体洗浄剤組成物)
本発明のトイレ用の液体洗浄剤組成物(以下、単に「液体洗浄剤組成物」ということがある。)は、(A)~(C)成分を含有する。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。液体洗浄剤組成物は、(A)成分を含有することで、洗浄力を発揮する。液体洗浄剤組成物は、(A)成分を含有することで、常温において吹き付ける際の起泡性がより高まって泡の量が多くなり、拭き取り性が高まる。
(A)成分としては、両性界面活性剤((a1)成分)、半極性界面活性剤((a2)成分)が挙げられる。これらの中でも、(A)成分としては、(a1)成分が好ましい。
【0011】
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.15~5質量%が好ましく、0.25~4質量%がより好ましく、0.3~4質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が前記下限値以上であると、常温における起泡性をより高めて泡の量が多くなる。(A)成分の含有量が前記上限値以下であると、拭き取り性を高められる。
【0012】
≪(a1)成分≫
(a1)成分は両性界面活性剤である。(a1)成分としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベタイン系両性界面活性剤、アミノ酸系両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、ベタイン系両性界面活性剤が好ましい。
ベタイン系両性界面活性剤としては、例えば、カルボベタイン系両性界面活性剤、アミドベタイン系両性界面活性剤、スルホベタイン系(ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系)両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン系両性界面活性剤、ホスホベタイン系両性界面活性剤、アミノプロピオン酸系両性界面活性剤等が挙げられる。カルボベタイン系両性界面活性剤、アミドベタイン系両性界面活性剤が好ましく、アミドベタイン系両性界面活性剤がより好ましい。
【0013】
(1)カルボベタイン系両性界面活性剤としては、ラウリン酸ジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
(2)アミドベタイン系両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(コカミドプロピルベタイン)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン等が挙げられる。
(3)スルホベタイン系両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸ジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン等が挙げられる。
(4)イミダゾリニウムベタイン系両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油アルキル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
(5)ホスホベタイン系両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルヒドロキシホスホベタイン等が挙げられる。
(6)アミノプロピオン酸系両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
(7)アミノ酸系両性界面活性剤としては、ラウリルアミノ脂肪酸塩、ステアリルアミノ脂肪酸塩、ミリスチルアミノ脂肪酸塩等が挙げられる。
【0014】
(a1)成分としては、上述の中でも、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインが好ましく、拭き取り性の面からラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが特に好ましい。
前記塩の対イオンとしては、例えば、アルカリ金属塩のイオン、アンモニウム塩のイオン、アルカノールアミン塩のイオン等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩のイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましい。
【0015】
(a1)成分は、商業的に入手可能である。商業的に入手可能な(a1)成分は、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタインである「エナジコールL-30B(一方社油脂工業(株)製)」、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインである「CAB-30(一方社油脂工業(株)製)」、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとして「TEGO BETAIN CK-OK(デグサ社製)」、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタインである「アンホレックスPB-1(ミヨシ油脂(株)製)」、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインである「レボンLD-36(三洋化成工業(株)製)」及び「オバゾリンLB-SF(東邦化学工業(株)製)」、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインである花王(株)製「アンヒトール86B」がある。
【0016】
≪(a2)成分≫
(a2)成分は、アミンオキシド型界面活性剤(半極性界面活性剤)である。(a2)成分としては、例えば、ドデシルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド等のアミドアミンオキシド等が挙げられる。中でも、ドデシルジメチルアミンオキシド(AX)が好ましい。
【0017】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の組み合わせて用いてもよい。(A)成分としては、(a1)成分を含むことが好ましく、(a1)成分が好ましい。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、下記式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。本発明の液体洗浄剤組成物は、(B)成分を含有することで、常温及び低温において吹き付ける際の起泡性がより高まって泡の量が多くなり、拭き取り性が高まる。
【0019】
R-(OC-OH・・・(1)
【0020】
式(1)中、Rは炭素数8~18の脂肪族炭化水素基である。Rは、直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。Rは、飽和炭化水素でもよいし、不飽和炭化水素でもよい。Rの炭素数は、12~18が好ましい。
【0021】
式(1)中、nは、オキシエチレン基(OC)の平均繰り返し数を表す31~70の数である。nは、31~60が好ましい。nが上記下限値以上であれば、起泡性がより高まって泡の量が多くなり、拭き取り性がより高まる。nが上記上限値以下であれば、泡の量がより多くなり、拭き取り性がより高まる。
【0022】
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.15~5質量%が好ましく、1~4.75質量%がより好ましく、1~4.7質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、常温及び低温における起泡性をより高めて泡の量が多くなる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、拭き取り性を高められる。
【0023】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(A/B比)は、0.4~8であり、1~7.1が好ましく、1.4~5がより好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、低温における起泡性をより高めて泡の量が多くなる。A/B比が上記上限値以下であれば、低温における起泡性をより高めて泡の量が多くなる。
【0024】
(A)成分と(B)成分との合計量(AB合計量)は、液体洗浄剤組成物の総質量に対
して、0.3~7質量%が好ましく、1~6質量%がより好ましい。AB合計量が上記下限値以上であれば、低温における起泡性をより高めて泡の量が多くなる。AB合計量が上記上限値以下であれば、拭き取り性を高められる。
【0025】
<(C)成分)>
(C)成分は、ポリビニルアルコール系高分子((c1)成分)及びセルロース系高分子((c2)成分)から選ばれる1種以上の高分子である。液体洗浄剤組成物は、(C)成分を含有することで、常温及び低温において吹き付ける際の起泡性がより高まって泡の量が多くなり、かつ泡の量の温度依存度を低減することができる。
本稿において「高分子」とは、分子量1,000以上の化合物である。(C)成分の分子量は、ポリエチレングリコール(PEG)を標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量である。
【0026】
(c1)成分は、エチレンから酢酸ビニルを調製後、それらを単独で重合し、アルカリにてけん化した「ホモポリマータイプ」と酢酸ビニルを調製後、他モノマーと共重合し、アルカリにてけん化した「共重合ポリマータイプ」のことである。
【0027】
(c1)成分としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニルアルコール(カチオン変性PVA)、アニオン変性ポリビニルアルコール(アニオン変性PVA)等が挙げられる。
PVAは変性していないホモポリマータイプである。PVAの市販品としては、日本合成化学株式会社製のゴーセノールシリーズ(GL-03、EG-05、EG-30、EG-40等)、株式会社クラレ製のポバール(PVA)シリーズ(403、405、420、420H、424H、203、205、210、217、220、224、235、217E、220E、224E等)等が挙げられる。
PVAのけん化価は、70%以上が好ましく、80%~98%がより好ましく、80%~90%がさらに好ましい。けん化価が前記下限値以上であれば、泡の温度依存度を低減することができる。
PVAとの共重合ポリマータイプとしては、カルボン酸変性PVA、ウンデシレン酸変性PVA、スルホン酸変性PVA等のアニオン変性PVA、及びアンモニウム変性PVA、スルホニウム変性PVA、アミノ基変性PVA等のカチオン変性PVAを用いることができる。
共重合ポリマータイプの市販品としては、日本合成化学株式会社製のゴーセネックスTシリーズ(T-350、T-330H等)、ゴーセネックスLシリーズ(L-3266等)、ゴーセネックスKシリーズ(K-434等)、株式会社クラレ製のKポリマーシリーズ(KL-506、KL-318、KL-118、KM-618、KM-118等)、Cポリマーシリーズ(C-506、CM-318等)が例示されるが、これに限らず使用することができる。
共重合ポリマータイプのけん化価は、泡の温度依存度の観点から、70%以上が好ましく、75%~99%がより好ましく、80%~99%がさらに好ましい。けん化価が前記下限値以上であれば、泡の温度依存度をさらに低減できる。共重合ポリマータイプの中では、アニオン変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0028】
(c1)成分の平均重合度は、500~2,400が好ましい。平均重合度が上記下限値以上であれば、泡の温度依存度をさらに低減できる。平均重合度が上記上限値以下であれば、泡の温度依存度をさらに低減できる。
【0029】
(c1)成分の分子量は、1,000以上であり、10,000~200,000が好ましく、20,000~120,000がより好ましい。
【0030】
(c1)成分の粘度は、5~95Paが好ましく、5~30Paがより好ましい。(c1)成分の粘度が前記下限値以上であると、低温における起泡性を高め、泡の温度依存度を低減することができる。(c1)成分の粘度が前記上限値以下であると、低温における起泡性を高め、泡の温度依存度を低減することができる。
【0031】
(c1)成分の粘度は、4%水溶液を調整後20℃に調温し、B型(ブルックフィールド型)粘度計を用い、60rpmで60秒後に読み取ることによって測定することができる。
【0032】
(c2)成分は、食物繊維から得られる多糖や酢酸セルロースを加水分解して得られるセルロースに由来する高分子化合物である。
(c2)成分としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。中でも、泡の温度依存度をさらに低減させる観点からは,カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0033】
(c2)成分の平均重合度は、400~6,000が好ましい。平均重合度が上記下限値以上であれば、低温における起泡性を高め、泡の温度依存度をさらに低減することができる。平均重合度が上記上限値以下であれば、泡の温度依存度を低減することができる。
【0034】
(c2)成分の分子量は、1,000以上であり、10,000~1,500,000が好ましく、500,000~1,200,000がより好ましい。
【0035】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.01~1質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましく、0.05~0.3質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、低温において吹き付ける際の起泡性がより高まって泡の量が多くなり、かつ泡の量の温度依存度を低減することができる。(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、泡の量の温度依存度を低減することができ、かつ拭き取り性を向上することができる。
【0036】
(A)成分/((B)成分+(C)成分)で表される質量比(A/BC比)は、0.3~7が好ましく、0.3~3.5がより好ましい。A/BC比が上記下限値以上であれば、泡の量の温度依存度を低減することができる。A/BCが上記上限値以下であれば、泡の量の温度依存度を低減することができる。
【0037】
<(D)成分>
(D)成分は水である。本発明の液体洗浄剤組成物は、必要に応じて、上記成分以外に、溶媒としての水を含有することができる。
(D)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、80~95質量%が好ましく、88~94質量%がより好ましい。
【0038】
<任意成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、必要に応じて、上記成分以外に、通常、トイレ用の洗浄剤組成物に使用されうる成分を含有することができる。このような任意成分としては、例えば、(A)成分以外の界面活性剤(任意界面活性剤)、有機溶剤、防腐剤、キレート剤、殺菌剤、防腐剤、抗カビ剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤、可溶化剤、香料、pH調整剤等が挙げられる。
【0039】
任意界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤(ただし、(B)成分を除く)、カチオン界面活性剤が挙げられる。
【0040】
有機溶剤としては、1価のアルコール、グリコールエーテル等が挙げられる。1価のアルコールとしては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール系エーテル類、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコール系エーテル類等のジアルキルグリコールエーテル系溶剤、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
防腐剤としては、ベンズイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、ブチルベンズイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン等のイソチアゾリン系防腐剤が挙げられる。中でも、防腐剤としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンが好ましい。
【0042】
キレート剤としては、アミノカルボン酸系キレート剤として、DEG(ジヒドロキシエチルグリシン)、HEIDA(N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、GLDA(Lグルタミン酸二酢酸)、ASDA(アスパラギン酸二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンコハク酸)、HIDS(ヒドロキシイミノジコハク酸)、IDS(イミノジコハク酸)、及び上記化合物の塩(例えば、アルカリ金属塩)や水和物等、多価カルボン酸系キレート剤(非窒素含有)として、酢酸、アジピン酸、モノクロル酢酸、シュウ酸、コハク酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、グリコール酸、ジグリコール酸、乳酸、酒石酸、カルボキシメチル酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、もしくはグルコン酸、またはそれらの塩等が挙げられる。
【0043】
pH調整剤としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア及びその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等から選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンから選ばれるアルカリ剤を用いることがより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがさらに好ましい。
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(製造方法)
液体洗浄剤組成物は、従来公知の製造方法により製造される。例えば、溶媒である(D)成分に、前記(A)~(C)成分を添加し、必要に応じて任意成分を加え、これを混合する方法等が挙げられる。
【0045】
(使用方法)
液体洗浄剤組成物の使用方法としては、例えば、液体洗浄剤組成物を吐出容器に収容し、この吐出容器から、適量の液体洗浄剤組成物を便器に塗布し、一定時間経過後に、フラッシュ等ですすぐ、「濯ぎ洗い」をする使用方法が挙げられる。
また、他の液体洗浄剤組成物の使用方法としては、適量の液体洗浄剤組成物を便器に塗布し、これを洗浄ブラシで擦る「擦り洗い」をする使用方法が挙げられる。
あるいは、便座やトイレの床に液体洗浄剤組成物を塗布し、これを布や紙で拭き取る「拭き取り洗い」をする使用方法が挙げられる。
【0046】
液体洗浄剤組成物を収容する吐出容器としては、スプレー容器やスクイズ容器等が挙げられる。中でも、洗浄対象に対する塗布性に優れることから、液体洗浄剤組成物を収容する吐出容器としては、スプレー容器が好ましい。
スプレー容器としては、エアゾールスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧型又は蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。これらの容器は、手動式のものでもよいし、電動式のものでもよい。エアゾールスプレー容器としては、例えば、特開平9-3441公報、特開平9-58765号公報等に記載されているものが挙げられる。
エアゾールスプレー容器に充填する場合、噴射剤としてLPG(液化プロパンガス)、DME(ジメチルエーテル)、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス等を使用できる。これら噴射剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
トリガースプレー容器の例としては、例えば、特開平9-268473号公報、特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。
ディスペンサースプレー容器の例としては、例えば、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。
蓄圧式のトリガースプレー容器としては、例えば、特開2013-154276号公報等に記載のものが挙げられる。
【実施例0047】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0048】
(使用原料)
<(A)成分:両性界面活性剤>
・A-1:ラウリン酸アミドプロピルベタイン:ライオン株式会社製「エナジコールL-30B」。
・A-2:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:三洋化成工業株式会社製「レボンLD-36」。
・A-3:ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:花王(株)「アンヒトール86B」。
・A-4:C12AX、n-ドデシルジメチルアミンオキシド:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、「カデナックスDM12D-W」。
【0049】
<(B)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル>
・B-1:POEステアリルエーテル(EO40):エマレックス640(日本エマルジョン株式会社)。
・B-2:POEラウリルエーテル(EO50):エマレックス750(日本エマルジョン株式会社)。
・B-3:POEイソトリデシルエーテル(EO60):TA600―75(ライオンケミカル株式会社)。
<(B’)成分:(B)成分の比較品>
・B-4:POEステアリルエーテル(EO5):エマレックス605(日本エマルジョン株式会社)。
・B-5:POEステアリルエーテル(EO20):エマレックス620(日本エマルジョン株式会社)。
【0050】
<(C)成分:ポリビニルアルコール系高分子またはセルロール系高分子>
・C-1:ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「ポバール22-88」。
・C-2:ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「ポバール26-80」。
・C-3:ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「ポバール5-88」。
・C-4:ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「ポバール28-98」。
・C-5:ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「ポバール95-88」。
・C-6:カルボキシメチルセルロース:ダイセルファインケム株式会社「CMC1290」。
・C-7:セチルヒドロキシエチルセルロース:Ashland社製「polysurf67」。
【0051】
<任意成分>
・pH調整剤:硫酸(関東化学工業株式会社)、水酸化ナトリウム:液体苛性ナト(AGC株式会社)。
・エタノール:日本アルコール販売株式会社製「合成95」。
・香料:特開2003-183697の香料組成物A。
・水
【0052】
(評価方法)
<泡量の評価>
各例の液体洗浄剤組成物を5℃(低温)又は25℃(常温)に調温し、吐出容器((株)吉野工業所製「TA-FA」、泡状トリガースプレー容器蓄圧式タイプ、1ストローク(約0.8g/ストローク))に収容した。この吐出容器を用いて200mLトールビーカーに液体洗浄剤組成物を5ストローク吐出し、泡の高さを定規で測定後、重量当たりの泡高さを算出し、下記評価基準に基づいて起泡性を評価した。
◎◎、◎、及び〇を合格とした。
≪評価基準≫
◎◎:泡の高さが1.0cm/g以上。
◎:泡の高さが0.75cm/g以上1.0cm/g未満。
〇:泡の高さが0.6cm/g以上0.75cm/g未満。
△:泡の高さが0.3cm/g以上0.6cm/g未満。
×:0.3cm/g未満。
【0053】
<拭き取り性評価>
スライドガラスに各例の液体洗浄剤組成物100μLを載せ、8ツ折にしたトイレットペーパーで軽くひと拭きした。乾燥後、拭き跡の残り具合を下記評価基準に従って、専門パネラが目視及び指で触った触感で評価した。
≪評価基準≫
◎◎:拭き跡が全く残らず、ベタつきも全く感じない。
◎:極わずかに細い線状の拭き跡が残るが、ベタつきもなく気にならない。
○:わずかに細い線状の拭き跡が残るが、ベタつきは気にならない。
△:部分的に拭き跡が残り、ベタつきも感じられる。
×:全面に拭き跡が残り、べたつきも感じられる。
【0054】
<泡量の温度依存度の評価>
各例の液体洗浄剤組成物を5℃、25℃、35℃に調温し、吐出容器((株)吉野工業所製「TA-FA」、泡状トリガースプレー容器蓄圧式タイプ、1ストローク(約0.8g/ストローク))に収容した。この吐出容器を用いて200mLトールビーカーに液体洗浄剤組成物を5ストローク吐出し、泡の高さを定規で測定後、重量当たりの泡高さを算出し、液温に対しプロットしたときの傾きを下記評価基準に基づいて評価した。
≪評価基準≫
◎◎:傾きが0.025以下。
◎:傾きが0.025より大きく、0.035以下。
○:0.035より大きく、0.045以下。
△:0.045より大きく0.05以下。
×:0.05より大きい。
【0055】
(実施例1~46、比較例1~8)
各例の液体洗浄剤組成物500gを下記の手順で調製した。
表1~7の配合に従い、(A)~(C)成分と共通成分とを水に混合し、必要に応じ、pH調整剤(硫酸又は水酸化カリウム)を新たに加えて、pH7.0として、各例の液体洗浄剤組成物を得た。
表中の配合量は純分換算値である。表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。表中、水の配合量「バランス」は、液体洗浄剤組成物の総量を100質量%にするのに要した量である。表中、硫酸の配合量「適量」は、液体洗浄剤組成物のpHを7.0に調整するのに要した量である。
得られた各例の液体洗浄剤組成物について、常温(25℃)時の泡量、低温(5℃)時の泡量、拭き取り性及び泡量の温度依存度を評価し、その結果を表中に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
表1~7に示す通り、本発明を適用した実施例1~46は、常温(25℃)時の泡量が「○」~「◎◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「○」~「◎◎」であり、拭き取り性が「○」~「◎◎」であり、泡量の温度依存度が「○」~「◎◎」であった。
実施例38と実施例43から、C-3成分を単独で用いた場合よりも、C-3成分とC-4成分を併用した場合の方が低温(5℃)時の泡量が多くなることが分かった。
実施例40と実施例44から、C-5成分を単独で用いた場合よりも、C-2成分とC-5成分を併用した場合の方が泡量の温度依存度が低減することが分かった。
実施例41と実施例45から、C-6成分を単独で用いた場合よりも、C-1成分とC-6成分を併用した場合の方が常温(25℃)時の泡量が多くなり、低温(5℃)時の泡量が多くなり、かつ泡量の温度依存度が低減することが分かった。
実施例42と実施例46から、C-7成分を単独で用いた場合よりも、C-1成分とC-7成分を併用した場合の方が常温(25℃)時の泡量が多くなり、低温(5℃)時の泡量が多くなり、かつ泡量の温度依存度が低減することが分かった。
(B)成分を比較品とした比較例1は、常温(25℃)時の泡量が「○」であり、低温(5℃)時の泡量が「×」であり、拭き取り性が「○」であり、泡量の温度依存度が「×」であった。
(B)成分を比較品とした比較例2は、常温(25℃)時の泡量が「○」であり、低温(5℃)時の泡量が「△」であり、拭き取り性が「○」であり、泡量の温度依存度が「△」であった。
A/B比が0.27である比較例3は、常温(25℃)時の泡量が「◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「×」であり、拭き取り性が「◎◎」であり、泡量の温度依存度が「◎」であった。
A/B比が9.00である比較例4は、常温(25℃)時の泡量が「◎◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「△」であり、拭き取り性が「◎◎」であり、泡量の温度依存度が「△」であった。
A/B比が16.00である比較例5は、常温(25℃)時の泡量が「◎◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「×」であり、拭き取り性が「◎◎」であり、泡量の温度依存度が「×」であった。
(A)成分を含まない比較例6は、常温(25℃)時の泡量が「◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「△」であり、拭き取り性が「○」であり、泡量の温度依存度が「×」であった。
(B)成分を含まない比較例7は、常温(25℃)時の泡量が「◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「×」であり、拭き取り性が「◎◎」であり、泡量の温度依存度が「×」であった。
(C)成分を含まない比較例8は、常温(25℃)時の泡量が「◎◎」であり、低温(5℃)時の泡量が「○」であり、拭き取り性が「◎◎」であり、泡量の温度依存度が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用した液体洗浄剤組成物は、常温(25℃)時の泡量、低温(5℃)時の泡量、拭き取り性及び泡量の温度依存度に優れることを確認できた。