(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022099
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A47J37/06 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125456
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】根笹 典政
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA03
4B040AA08
4B040AB03
4B040AC02
4B040AC03
4B040AD04
4B040AE06
4B040CB13
4B040CB20
(57)【要約】
【課題】加熱庫内の被調理物をその載置場所に左右されることなく略均一に加熱することができるグリルを提供する。
【解決手段】グリルバーナ8の燃焼部10の後方に位置する熱板12を備える。熱板12は、排気ガスの接触により被調理物Wへの輻射熱を生成すべく、排気ガスが加熱庫2から排気通路4に流入する経路を横切る位置に、加熱庫2の上壁から加熱庫2の後方に向かって次第に下降する傾斜姿勢で設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を載置可能な載置面を有する載置部材と、
前記載置部材を前面開口から出し入れ自在に収納する加熱庫と、
前記加熱庫の前面開口を開閉自在に閉塞するグリル扉と、
前記加熱庫の上壁に設けられて、前記加熱庫内で下方に向けて燃料ガスを燃焼する燃焼部を有する表面燃焼式のグリルバーナと、
前記加熱庫の後部に接続され、前記燃焼部から生じた排気ガスを排出方向へ案内する排気通路と、
前記グリルバーナの前記燃焼部の後方に位置する熱板とを備え、
前記熱板は、前記排気ガスの接触により前記被調理物への輻射熱を生成すべく、前記排気ガスが前記加熱庫から前記排気通路に流入する経路を横切る位置に、前記加熱庫の前記上壁から前記加熱庫の後方に向かって次第に下降する傾斜姿勢で設けられていることを特徴とするグリル。
【請求項2】
請求項1記載のグリルにおいて、
前記熱板は、前記排気ガスが通過する複数の通気孔を備えることを特徴とするグリル。
【請求項3】
請求項2記載のグリルにおいて、
前記通気孔は、前記熱板の下面側に突出するルーバ部を備えていることを特徴とするグリル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項記載のグリルにおいて、
前記熱板は、表面に高放射率塗料が塗布されていることを特徴とするグリル。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項記載のグリルにおいて、
前記グリルバーナの前記燃焼部の前端は、前記載置部材の前記載置面の前端の直上に位置し、
前記熱板の後端は、前記載置部材の前記載置面の後端の直上又は直上より後方に位置することを特徴とするグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き物調理等を行うためのグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱庫の側壁近傍に設けられた一対のグリルバーナにより、両グリルバーナの間の上方に設けられた熱板を加熱し、熱板から得られる輻射熱によって被調理物を加熱するグリルが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のグリルが備える熱板は、熱板の両側下方にあるグリルバーナの火炎により下側から加熱されるため、熱板の加熱ムラが生じることがある。熱板の加熱ムラが生じると、熱板からの輻射熱が、熱板の下面全体にわたって均一に発生し難く、被調理物に焼きムラが生じるおそれがある。
【0005】
近年、この種のグリルにおいては、焼き魚調理だけでなく、食パンを被調理物とするトースト調理が行われる。食パンは、比較的広い範囲に平坦な面を焼く必要があるが、熱板からの輻射熱を発生が不均一であると、加熱庫内の食パンの載置位置によっては、焼き上がったときの表面の焼き色が不均一となる不都合がある。しかも、トーストは、表面の焼き色が目立つために、焼き色が均一でないトーストは食卓においても好ましくない。
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、加熱庫内の被調理物をその載置場所に左右されることなく略均一に加熱することができるグリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、被調理物を載置可能な載置面を有する載置部材と、前記載置部材を前面開口から出し入れ自在に収納する加熱庫と、前記加熱庫の前面開口を開閉自在に閉塞するグリル扉と、前記加熱庫の上壁に設けられて、前記加熱庫内で下方に向けて燃料ガスを燃焼する燃焼部を有する表面燃焼式のグリルバーナと、前記加熱庫の後部に接続され、前記燃焼部から生じた排気ガスを排出方向へ案内する排気通路と、前記グリルバーナの前記燃焼部の後方に位置する熱板とを備え、前記熱板は、前記排気ガスの接触により前記被調理物への輻射熱を生成すべく、前記排気ガスが前記排気通路へ向かう経路を横切る位置に、前記加熱庫の前記上壁から前記加熱庫の後方に向かって次第に下降するように傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0008】
表面燃焼式のグリルバーナの燃焼部の直下に位置する被調理物は、燃焼部の面状に形成される火炎により略均一に加熱される。一方、燃焼部の直下よりも後方(加熱庫の奥側)位置の被調理物は、燃焼部の火炎による加熱を受け難い位置であるが、本発明における熱板の輻射熱により、燃焼部の火炎による加熱と同等に加熱される。
【0009】
更に詳しく説明すると、本発明における熱板は、排気ガスが排気通路へ向かう経路を横切って設けられており、これにより、燃焼部から生じた排気ガスが排気通路へ向かうときに、確実に燃焼ガスに接触する。しかも、熱板は、加熱庫の上壁から加熱庫の後方に向かって次第に下降する傾斜姿勢とされているので、熱板に接触した排気ガスは、傾斜に案内されて、均一に広がりながら流れを形成する。
【0010】
このようにして、熱板は、排気ガスによって熱板全体にわたって略均一に加熱され、熱板においては、被調理物へ向かう輻射熱が略均一に生成される。この輻射熱により、燃焼部の火炎の熱が届き難い加熱庫の奥側にある被調理物であっても十分に加熱することができ、載置部材の載置面上の被調理物に対して均等な熱分布を得ることができる。
【0011】
従って、載置部材の載置面上の被調理物を、その載置場所に殆ど左右されることなく略均一に加熱することができ、ムラの少ない焼き具合に調理することができる。しかも、熱板を設けることにより燃焼部を小さくして十分な加熱量を得ることが可能となるので、グリルバーナの小型化が可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0012】
なお、本発明における熱板は、排気ガスが排気通路へ向かう経路を横切るが、排気通路を閉塞するものではなく、適度な排気ガスの通過が維持されるように設けられている。
【0013】
第1発明のグリルにおいて、前記熱板は、前記排気ガスが通過する複数の通気孔を備えることを特徴とする(第2発明)。これによれば、熱板を排気ガスが円滑に通過するので、熱板に比較的多量の排気ガスを接触させることができる。
【0014】
更に、第2発明のグリルにおいて、前記通気孔は、前記熱板の下面側に突出するルーバ部を備えていることを特徴とする(第3発明)。
【0015】
熱板に形成された通気孔がルーバ部を備えることにより、通気孔を通過するときに排気ガスがルーバ部に接触する。これにより、排気ガスの接触による熱板の加熱が効率よく行われ、熱板全体を略均一に高い温度に昇温させることができる。よって、排気ガスの円滑な流動を維持しながら、熱板からはより多くの輻射熱を被調理物に向かって放射させることができ、被調理物を略均一に加熱することができる。
【0016】
また、第1発明~第3発明による何れかのグリルにおいて、前記熱板は、表面に高放射率塗料が塗布されていることを特徴とする(第4発明)。
【0017】
高放射率塗料として、例えば黒色顔料等を含有する塗料を用いることができ、熱板の表面に塗布することにより熱板の輻射熱の発生を高めることができる。
【0018】
更に、第1発明~第4発明による何れかのグリルにおいて、前記グリルバーナの前記燃焼部の前端は、前記載置部材の前記載置面の前端の略直上に位置し、前記熱板の後端は、前記載置部材の前記載置面の後端の略直上又は直上より後方に位置することを特徴とする(第5発明)。
【0019】
これによれば、不要な部分の加熱を抑えることができるので、被調理物を効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態のグリルの要部を側面視して示す説明的断面図。
【
図2】本実施形態のグリルの要部を正面視して示す説明的断面図。
【
図3】本実施形態のグリルに採用した熱板を示す斜視図。
【
図4】本実施形態のグリルの効果を説明するための調理後の被調理物を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示す本実施形態のグリル1は、図示省略したガスコンロに組み込まれるものであり、加熱庫2と、加熱庫2の前面開口を開閉するグリル扉3と、加熱庫2の後端から後方に延びる排気通路4とを備えている。
【0022】
加熱庫2内には、トレー状の載置部材5が収容される。載置部材5は、被調理物Wを載置する載置面6を有している。載置面6は、載置部材5の内側の平坦な部分に設けられている。載置部材5は、グリル扉3に一体に連結された支持フレーム7に着脱自在に支持されており、グリル扉3を加熱庫2の前方に向かって引っ張ることにより、加熱庫2の前面側が開放されると共に載置部材5の載置面6が加熱庫2の前方に引き出されて露出する。
【0023】
加熱庫2の上壁には、上火バーナ8が設けられている。上火バーナ8は、表面燃焼式であり、燃料ガスが供給される分布室9と、分布室9の下面に形成された多数の炎孔(図示省略)を有する燃焼部10とを備えている。燃焼部10は、加熱庫2内で下方に向けて燃料ガスを燃焼する。上火バーナ8は、本発明のグリルバーナに相当する。
【0024】
図2に示すように、加熱庫2の横方向両側部の下部(載置部材5よりも低い部分)には、横方向内方に向けて火炎を形成する下火バーナ11が配置されている。載置部材5の載置面6上に載置した被調理物Wは、上火バーナ8と下火バーナ11とで上下から加熱される。
【0025】
上火バーナ8及び下火バーナ11には、図示しない燃料ガス供給管が接続されている。燃料ガス供給管は、燃焼部10で燃焼させる燃料ガスを供給する。
【0026】
上火バーナ8の燃焼部10の燃焼面積は、載置部材5の載置面6よりも小さく形成されている。これにより、上火バーナ8の燃焼部10の燃焼に伴う不要な部分の加熱が抑制され、燃料ガスの消費量を小さく抑えることができる。しかも、上火バーナ8のグリル燃焼体9を小さくすることができるので、上火バーナ8の小型化が可能となる。
【0027】
更に、上火バーナ8の燃焼部10の前端は、載置部材5の載置面6の前端の略直上(直上から前後方向に1~2cmのずれは許容する)に位置している。これによれば、載置部材5の載置面6に載置された被調理物Wの前側に位置する部分の焼成が良好となる。
【0028】
また、加熱庫2の奥側であって燃焼部10の後方には、熱板12が設けられている。熱板12は、上火バーナ8の燃焼部10の燃焼による排気ガスが加熱庫2から排気通路4に流入する経路を横切る位置に設けられている。
【0029】
これにより、排気通路4へ向かう比較的高温の排気ガスが、熱板12に接触する。そして、排気ガスに接触した熱板12は、排気ガスの熱を受けて加熱される。
【0030】
更に、熱板12は、加熱庫2の上壁から加熱庫2の後方に向かって次第に下降する傾斜姿勢とされている。熱板12の後端は、載置部材5の載置面6の後端の直上よりも後方に位置している。これにより、加熱された熱板12の輻射熱を、被調理物Wに向けることができる。なお、熱板12は、その後端が、載置部材5の載置面6の後端の直上に位置するように設けてもよい。
【0031】
熱板12は、
図3に示すように、複数の通気孔13が形成された板面部12aと、板面部12aの両側から延出して加熱庫2の内壁に連結固定する連結片12bとを備えている。通気孔13は、ルーバ加工により形成され、下方に向かって突出するルーバ部14を備えている。熱板12の下方には、空隙が形成されており、通気孔13を通過できなかった排気ガスが当該空隙を通過する。
【0032】
燃焼部10によって生成された排気ガスは、熱板12に当たり、通気孔13を通過して排気通路4に流入する。このように、熱板12に通気孔13が形成されていることにより、加熱庫2から排気通路4へ向かう排気ガスの流動を妨げることなく通気孔13以外の熱板12の板面で排気ガスの熱を受けることができる。
【0033】
更に、通気孔13はルーバ部14を備えているので、排気ガスが通気孔13を通過するときにルーバ部14にも接触する。これにより、熱板12は通気孔13以外のの板面とルーバ部14とにより排気ガスからは比較的多くの熱を受けることができる。
【0034】
ルーバ部14は、
図1に示すように、熱板12の下面側に突出するが、このとき、熱板12の傾斜に沿うように形成することで、ルーバ部14からの輻射熱を、載置部材5の載置面6上の被調理物Wに向けて発生させることができる。
【0035】
また、熱板12は、排気ガスの接触に伴って熱を受けることで、表面が未塗装であっても輻射熱を発生させることができるが、熱板12の表面に高放射率塗料を塗布することで、一層多くの輻射熱を発生させることができる。なお、高放射率塗料は、高輻射率塗料も含む。
【0036】
熱板12の表面に塗布する高放射率塗料としては、例えば、艶消しの黒色顔料であり、セラミック塗料、カーボン系塗料、酸化鉄系無機顔料を成分とする塗料等を挙げることができる。
【0037】
本実施形態のグリル1は、上記構成の熱板12を備えることにより、排気ガスが接触して加熱された熱板12から輻射熱が発生して、加熱庫2の後端部側に位置する被調理物Wに対する加熱量を増加させることができる。そして、上火バーナ8の燃焼部10と熱板12の輻射熱とにより、被調理物Wに焼きムラが生じることなく、良好に調理することができる。
【0038】
ここで、食パンを被調理物Wとして焼け具合の比較試験を行い、熱板12の効果を確認した。当該試験は、熱板12を備えない従来のグリルと、熱板12を備えた本実施形態のグリル1とを用いて、加熱時間を同一として行った。その結果は次の通りとなった。
【0039】
熱板12を備えない従来のグリルを用いてトースト調理した食パンWは、
図4Aに示すように、加熱庫2の前面側の食パンWに比べて加熱庫2の奥側の食パンWの焼き目が殆ど付いておらず、焼きムラが目立つものであった。これは、排気通路4に近づく加熱庫2の奥側では排気ガスの流動が大きくなり、加熱庫2の奥側に位置する食パンWの後端部分R(図中二点鎖線で包囲した部分)への熱伝達が減少したものと考えられる。
【0040】
それに対して、熱板12を備えた本実施形態のグリル1を用いてトースト調理した食パンWは、
図4Bに示すように、その全体にわたって適度な焼き目が付いており、焼きムラが改善されていることが確認できた。このように、熱板12を設けることにより、食パンWをその載置場所に左右されることなく略均一に加熱することができることが明らかとなった。
【0041】
なお、本実施形態においては、
図3に示すように、熱板12の通気孔13がルーバ部14を備えるものを示したが、これに限るものではない。例えば、図示しないが、熱板12の通気孔13にルーバ部14を設けなくてもよい。ルーバ部14を設けないことにより本実施形態の熱板12に比べて輻射熱のが小さくなるが、熱板12の構成が簡単となってコストを抑えることができる。
【0042】
或いは、図示しないが、熱板12の通気孔13を設けなくてもよい。この場合、熱板12の下方だけでなく周囲に空隙を形成して排気ガスが通過する構成となり、本実施形態の熱板12に比べて熱板12の中央部への排気ガスの接触が小さくなるおそれがあるが、熱板12の加工が極めて容易となるため、一層コストを抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、トレー状の載置部材5を示したが、これ以外に、焼き網を載置部材として採用してもよい。
【0044】
また、本実施形態のグリル1は、
図2に示すように、加熱庫2の横方向両側部の下部に下火バーナ11が設けられているが、本発明は、下火バーナ11が設けられていないグリルであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…グリル、2…加熱庫、3…グリル扉、4…排気通路、5…載置部材、6…載置面、8…上火バーナ(グリルバーナ)、10…燃焼部、12…熱板、13…通気孔、14…ルーバ部、W…被調理物(食パン)。