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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022102
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】空調制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20240208BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20240208BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240208BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240208BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/84
F24F11/64
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125459
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 克樹
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA02
3L260BA22
3L260BA23
3L260BA73
3L260CA12
3L260DA03
3L260DA08
3L260EA21
3L260EA24
3L260EA28
3L260FA03
3L260FB25
3L260GA01
3L260GA12
(57)【要約】
【課題】空調システムにおいて室内の室内温度が予め設定された目標温度に達するまでの所要時間を極力短縮することができる空調制御システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】プロセッサ101は、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定する。プロセッサ101は、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値より小さい第2値であるときは、設定温度として第2設定温度を決定する。第1設定温度と目標温度との差分の絶対値は、第2設定温度と目標温度との差分の絶対値よりも大きい。プロセッサ101は、設定温度と室内温度との差分に従って冷温水2方弁31に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行う。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御する空調制御システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行可能なプログラムを記憶するメモリとを備え、
前記空調システムは、前記室内温度を検出するセンサと、前記空調制御システムの指令に従って動作する動作装置とを含み、
前記プロセッサは、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定し、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が前記第1値より小さい第2値であるときは、前記設定温度として第2設定温度を決定し、
前記第1設定温度と前記目標温度との差分の絶対値は、前記第2設定温度と前記目標温度との差分の絶対値よりも大きく、
前記プロセッサは、前記設定温度と前記室内温度との差分に従って前記動作装置に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行う、空調制御システム。
【請求項2】
前記設定温度は、所定の係数×(前記目標温度-(前記室内温度-前記目標温度))である、請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記所定の係数は、1である、請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記所定の係数を入力する入力部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記入力部によって入力された前記所定の係数を用いて前記フィードバック制御を行い、
前記目標温度に対する、前記設定温度および前記室内温度の推移とともに、前記所定の係数および前記室内温度が前記目標温度に達した時間を表示する表示部をさらに備える、請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記動作装置は、冷温水2方弁であり、
前記空調システムは、前記空調制御システムの指令に従って前記冷温水2方弁の弁を動作する、請求項1~4のいずれか1項に記載の空調制御システム。
【請求項6】
室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御する空調制御システムの制御方法であって、
前記空調システムは、前記室内温度を検出するセンサと、前記空調制御システムの指令に従って動作する動作装置とを含み、
前記制御方法は、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定するステップと、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が前記第1値より小さい第2値であるときは、前記設定温度として第2設定温度を決定するステップとを備え、
前記第1設定温度と前記目標温度との差分の絶対値は、前記第2設定温度と前記目標温度との差分の絶対値よりも大きく、
前記制御方法は、前記設定温度と前記室内温度との差分に従って前記動作装置に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行うステップをさらに備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御する空調制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セントラル空調機による室内の温度制御の方法として、計測した室内温度に基づき冷温水弁あるいは給気ファンを制御するものがある。たとえば、特開2012-107787号公報(特許文献1)には、給気温度の計測値と設定値との偏差に基づいて冷水弁および温水弁の操作量を算出する空調制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-107787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室内の室内温度を設定温度に追従させる温度制御を行いつつ、ユーザにより予め設定された目標温度に最終的に到達するよう室内温度を制御する場合、設定温度=目標温度(固定値)とすることが一般的である。温度制御において追従対象となる温度(設定温度)を固定値にした場合、たとえば、空調機を起動した場合、冷房と暖房とを切り替えた場合、あるいは、ユーザにより目標温度の大幅な変更が行われた場合に、室内温度が目標温度に達するまでの時間が長くなる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、空調システムにおいて室内の室内温度が予め設定された目標温度に達するまでの所要時間を極力短縮することができる空調制御システムおよび制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調制御システムは、室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御するシステムである。空調制御システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行可能なプログラムを記憶するメモリとを備える。空調システムは、室内温度を検出するセンサと、空調制御システムの指令に従って動作する動作装置とを含む。プロセッサは、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定する。プロセッサは、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値より小さい第2値であるときは、設定温度として第2設定温度を決定する。第1設定温度と目標温度との差分の絶対値は、第2設定温度と目標温度との差分の絶対値よりも大きい。プロセッサは、設定温度と室内温度との差分に従って動作装置に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行う。
【0007】
本開示に係る制御方法は、室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御する空調制御システムの制御方法である。空調システムは、室内温度を検出するセンサと、空調制御システムの指令に従って動作する動作装置とを含む。制御方法は、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定するステップと、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値より小さい第2値であるときは、設定温度として第2設定温度を決定するステップとを備える。第1設定温度と目標温度との差分の絶対値は、第2設定温度と目標温度との差分の絶対値よりも大きい。制御方法は、設定温度と室内温度との差分に従って動作装置に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行うステップをさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、空調システムにおいて室内の室内温度が予め設定された目標温度に達するまでの所要時間を極力短縮することができる。これにより、室内空間を快適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】制御システムおよび空調システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】設定温度算出機能がOFFである場合の温度制御の処理を説明するための図である。
図3】設定温度算出機能がOFFである場合の温度制御の様子を示す図である。
図4】設定温度算出機能をONである場合の温度制御の処理を説明するための図である。
図5】設定温度算出機能をONである場合の温度制御の様子を示す図である。
図6】係数を変更した場合の温度制御の様子を示す図である。
図7】表示部における表示の一例を示す図である。
図8】制御システムが実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、制御システム10および空調システム400のハードウェア構成の一例を示す図である。本実施の形態において、ビル内に、部屋20が複数設けられている。ビルには、空調システム400および制御システム(「空調制御システム」とも称する)10が備えられている。
【0012】
制御システム10は、空調システム400を制御する。空調システム400は、制御システム10の指令に従い、部屋20の室内温度を予め設定された目標温度に調整する。空調システム400は、空調機51と、室内温度を検出する温度センサ21と、室内の湿度を検出する湿度センサ22とを含む。
【0013】
空調機51には、冷温水コイル32と、給気ファン41と、排気ファン42とが設けられている。空調機51は、給気ファン41を動作させて、ビルの外部から外気OAを取り込む。取込まれた外気OAは、冷温水コイル32によって温度が調整されて、ダクトを介して給気SAとして部屋20に送られる。ダクト内の温度は、ダクト内に設けられた温度センサ23によって検出可能である。空調機51は、排気ファン42を動作させて、部屋20からの還気RAを取り込み、排気EAとしてビルの外部に排出する。
【0014】
冷温水コイル32には、流路33を介して冷温水が供給される。供給される冷温水は、事前に冷却または加熱されて所定の温度に調整された水である。ビルの外部から取込まれた外気OAは、冷温水コイル32に通過させることで熱交換させて、部屋20に供給される。冷水が供給された場合は外気OAが冷却され、温水が供給された場合は外気OAが加熱される。供給された冷温水は、流路34を介して冷温水コイル32の外部に排出される。
【0015】
流路34には、冷温水2方弁31が設置されている。冷温水コイル32に供給される冷温水の流量は、冷温水2方弁31によって調整される。冷温水2方弁31は、制御システム10の指令に従って動作する動作装置として動作する。
【0016】
冷温水2方弁31の開度を大きくすると、冷温水コイル32に供給される冷温水の流量が増加する。一方で、冷温水2方弁31の開度を小さくすると、冷温水コイル32に供給される冷温水の流量が減少する。
【0017】
外気OAに対して冷温水の温度が低い場合、冷温水2方弁31の開度を大きくすると外気OAの温度が下がりやすくなり、冷温水2方弁31の開度を小さくすると外気OAの温度が下がりにくくなる。外気OAに対して冷温水の温度が高い場合、冷温水2方弁31の開度を大きくすると外気OAの温度が上がりやすくなり、冷温水2方弁31の開度を小さくすると外気OAの温度が上がりにくくなる。
【0018】
制御システム10は、冷温水2方弁31に対する動作指令値として、冷温水2方弁31の開度を指令することで、部屋20の室内温度を上昇または下降させることができる。なお、上記のような冷温水コイル32を設置するものに限らず、冷水を供給する冷水コイルと、温水を供給する温水コイルとを別々に設置するものであってもよい。
【0019】
制御システム10は、制御装置100と、サーバ200と、端末300とを備える。制御装置100は、たとえば、PLC(Programmable Logic Controller)である。制御装置100は、空調システム400およびサーバ200と通信可能である。端末300は、サーバ200と通信可能である。
【0020】
サーバ200は、制御装置100を介して、空調システム400を監視および制御可能である。サーバ200が取得した各種情報は、端末300に送信される。
【0021】
端末300は、ビルの管理者が使用する。端末300が備える表示部320は、サーバ200が取得した各種情報を表示する。さらに、端末300の入力部310からの操作により、空調システム400を制御可能である。
【0022】
制御装置100は、プロセッサ101と、メモリ102と、サーバ200と接続するための通信インターフェイス(図示なし)と、空調システム400と接続するための入出力カード(図示なし)を備える。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)である。メモリ102は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、記憶部とで構成される。
【0023】
CPUは、ROMに保存されているプログラムをRAMに読み込んで実行し、制御装置100の各種機能を実現する。ROMは、制御装置100の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。記憶部は、不揮発性の記憶装置である。記憶部は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等であってもよい。
【0024】
制御装置100は、入出力カードを介して、空調システム400の信号を入出力する。入出力カードは、デジタル信号を入力するためのデジタル入力(「DI」とも称する)カードと、アナログ信号を入力するためのアナログ入力(「AI」とも称する)カードと、デジタル信号を出力するためのデジタル出力(「DO」とも称する)カードと、アナログ信号を出力するためのアナログ出力(「AO」とも称する)カードとで構成される。
【0025】
各入出力カードは、複数の端子を有する端子台を有している。空調システム400は、DIカードの端子台の端子を介して制御装置100にデジタル信号を入力する。空調システム400は、AIカードの端子台の端子を介して制御装置100にアナログ信号を入力する。制御装置100は、DOカードの端子台の端子を介して空調システム400にデジタル信号を出力する。制御装置100は、AOカードの端子台の端子を介して空調システム400にアナログ信号を出力する。
【0026】
たとえば、制御装置100は、温度センサ21、湿度センサ22および温度センサ23からAIカードを介してアナログ信号(温度、湿度の計測値)を取得する。制御装置100は、AOカードを介して冷温水2方弁31に対してアナログ信号(冷温水2方弁31の開度)を出力する。
【0027】
空調システム400から出力される信号は、制御装置100を介して最終的にサーバ200で取得可能である。サーバ200から出力される信号は、制御装置100を介して空調システム400に送信される。
【0028】
サーバ200は、図示しないプロセッサ(CPU)と、メモリと、通信インターフェイスとを備える。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。メモリとして、ROMと、RAMと、記憶部とを備えるようにしてもよい。
【0029】
CPUは、ROMに保存されているプログラムをRAMに読み込んで実行し、サーバ200の各種機能を実現する。ROMは、サーバ200の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。記憶部は、不揮発性の記憶装置であって、HDDやSSD等であってもよい。
【0030】
端末300は、図示しないCPUと、ROMと、RAMと、記憶部と、通信インターフェイスと、入力部310と、表示部320とを備える。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPUは、ROMに保存されているプログラムをRAMに読み込んで実行し、端末300の各種機能を実現する。ROMは、端末300の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。記憶部は、不揮発性の記憶装置であって、HDDやSSD等であってもよい。
【0032】
入力部310は、ユーザからの入力を受け付ける。入力部310は、たとえば、タッチパネルであるが、キーボード、マウスであってもよい。表示部320は、各種情報の表示を行う。表示部320は、たとえば、液晶表示器、ディスプレイである。
【0033】
制御装置100は、部屋20の室内温度を、最終的にユーザが設定した目標温度に制御するためのフィードバック制御を行う。制御装置100は、設定温度算出機能を有する。まず、図2図3を用いて設定温度算出機能がOFFである場合の温度制御について説明し、次に、図4以降の図を用いて設定温度算出機能がONである場合の温度制御について説明する。
【0034】
図2は、設定温度算出機能がOFFである場合の温度制御の処理を説明するための図である。制御装置100は、フィードバック制御部202を備える。制御装置100は、部屋20の室内温度が最終的に目標温度となるように空調システム400を制御する。制御装置100は、設定温度に追従させるようにフィードバック制御を行う。
【0035】
設定温度算出機能がOFFである場合、設定温度=目標温度(固定値)とする。制御装置100は、設定温度(=目標温度)と室内温度との差分に従って冷温水2方弁31に対する動作指令値(冷温水2方弁31の開度)を算出するフィードバック制御を行う。
【0036】
温度センサ21は、部屋20の室内温度を計測する。制御装置100は、目標温度(設定温度)と室内温度との偏差(目標温度-室内温度)をフィードバック制御部202に入力する。フィードバック制御部202は、目標温度と室内温度との偏差(誤差)が入力されると、冷温水2方弁31に対する動作指令値を出力する。
【0037】
冷温水2方弁31は、フィードバック制御部202から出力された動作指令値(弁の開度)に従って弁を動作させる。この動作により、部屋20の室内温度が変化する。温度センサ21は、変化した室内温度を検出して、再度、制御装置100に入力する。そして、フィードバック制御部202は、目標温度と新たな室内温度との偏差が入力されると、冷温水2方弁31に対する新たな動作指令値を出力する。
【0038】
このように、本実施の形態において、フィードバック制御部202は、目標温度(設定温度)と室内温度との偏差を入力して冷温水2方弁31の動作指令値を出力するフィードバック制御を行うコントローラとして動作している。
【0039】
本実施の形態においては、PID制御によるフィードバック制御を行うが、これに限らず、どのような制御方式を採用してもよい。また、PID制御における調整パラメータ(比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲイン)は、空調システム400の出荷時に予め設定されているものとする。あるいは、ビルに空調システム400を設置する際に、据付業者が上記パラメータを適宜調整してもよいし、空調システム400の保守を行う保守業者が上記パラメータを適宜調整してもよい。
【0040】
図3は、設定温度算出機能がOFFである場合の温度制御の様子を示す図である。温度制御開始前において、室内温度t=15℃、設定温度ta=目標温度tb=28℃(固定値)であったとする。この場合、設定温度taと室内温度tとの偏差(誤差)は13℃である。
【0041】
制御装置100による温度制御を開始すると、室内温度tが設定温度ta(目標温度tb)になるように冷温水2方弁31が制御される。これにより、制御開始14秒後に、室内温度tが設定温度ta(目標温度tb)に到達したものとする。
【0042】
そして、室内温度tは、設定温度ta(目標温度tb)を超えて34℃に達し、その後、目標温度tb(28℃)に達するように再び下降する。室内温度tは、設定温度ta(目標温度tb)を下回って26℃に達し、その後、目標温度tb(28℃)に達するように再び上昇する。
【0043】
このように、温度制御が開始すると、室内温度tは、設定温度ta(目標温度tb)になるように制御される。なお、実際には、室内温度tは、設定温度ta(目標温度tb)に近づくようにサインカーブを描き、その波は徐々に減衰していく。
【0044】
次に、設定温度算出機能がONである場合の温度制御について説明する。図4は、設定温度算出機能がONである場合の温度制御の処理を説明するための図である。
【0045】
設定温度算出機能がONである場合、設定温度算出部210によって、目標温度と室内温度に基づき設定温度が算出される。設定温度算出機能がONである場合、目標温度と、温度センサ21によって検出された室内温度とが、設定温度算出部210に入力される。
【0046】
制御装置100は、目標温度tbと室内温度t1との差分の絶対値=d1であるときは、設定温度=ta1と決定する。制御装置100は、目標温度tbと室内温度t2との差分の絶対値がd2であるときは、設定温度=ta2と決定する。この場合、d1(=目標温度tbと室内温度t1との差分の絶対値)>d2(=目標温度tbと室内温度t2との差分の絶対値)、設定温度ta1と目標温度tbとの差分の絶対値>設定温度ta2と目標温度tbとの差分の絶対値、の関係が成立する。
【0047】
具体的には、設定温度ta=係数K×(目標温度tb-(室内温度t-目標温度tb))の関係が成立する。本例では、係数K=1であるとする。係数Kは、任意の値に設定可能である。そして、制御装置100は、設定温度と室内温度との差分に従って冷温水2方弁31に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行う。
【0048】
冷温水2方弁31は、フィードバック制御部202から出力された動作指令値に従い弁を動作させる。この動作により、部屋20の室内温度が変化する。温度センサ21は、変化した室内温度を検出して、再度、制御装置100に入力する。以下同様に、設定温度算出部210は設定温度を算出し、フィードバック制御部202は動作指令値を算出する。このように、空調システム400は、制御システム10の指令に従って冷温水2方弁31の弁を動作させる。
【0049】
図5は、設定温度算出機能がONである場合の温度制御の様子を示す図である。温度制御開始前において、室内温度t=15℃、目標温度tb=28℃であったとする。設定温度算出部210は、係数K×(目標温度-(室内温度-目標温度))の式により、設定温度taを算出する。この場合、設定温度ta=41℃(=1×(28-(15-28)))が算出される。
【0050】
この場合、フィードバック制御部202に入力される偏差(誤差)=26℃(=41-15)となる。この値は、設定温度算出機能がOFFである場合の偏差(13℃)の倍である。このため、設定温度算出機能がONであるときは、OFFであるときよりも急激に温度が上昇するように温度制御が行われる。
【0051】
その結果、本例においては、制御開始6秒後に室内温度tが目標温度tbに到達している。このように、設定温度算出機能がONであるときは、OFFであるときよりも目標温度tbに到達する時間が短くなる(前者は6秒であるのに対し、後者は14秒)。
【0052】
そして、室内温度tは、目標温度tbを超えて29℃に達し、その後、目標温度tb(28℃)に達するように再び下降する。本例では、その後、室内温度tは28℃と29℃の間を上下している。図3図5に示したように、設定温度算出機能がONであるときは、OFFであるときよりもオーバーシュートが小さい(前者は29℃で止まるのに対し、後者は34℃まで上昇する)。
【0053】
これは、前者において、目標温度tbに近づくにつれて設定温度taと室内温度tとの偏差も小さくなり、また、室内温度tが目標温度tbを超えたときに、設定温度taが目標温度tbを下回るからである。これにより、室内温度tが行き過ぎないように、目標温度tbに引き戻されるような作用が生じるため、オーバーシュートが小さくなる。
【0054】
図6は、係数Kを変更した場合の温度制御の様子を示す図である。図6(a)は、係数K=1.0である場合の温度制御の様子を示し、図6(b)は、係数K=0.5である場合の温度制御の様子を示し、図6(c)は、係数K=1.5である場合の温度制御の様子を示す。
【0055】
図6(a)に示すように、係数K=1.0である場合は、図5の状況と同じである。設定温度ta=41℃(=1×(28-(15-28)))が算出される。フィードバック制御部202に入力される偏差(誤差)=26℃(=41-15)である。制御開始6秒後に室内温度tが目標温度tbに達し、その後、室内温度tは28℃と29℃の間を上下している。
【0056】
図6(b)に示すように、係数K=0.5である場合は、設定温度ta=34.5℃(=0.5×(28-(15-28)))が算出される。フィードバック制御部202に入力される偏差(誤差)=19.5℃(=34.5-15)である。制御開始12秒後に室内温度tが目標温度tbに達し、その後、室内温度tは28℃と28.5℃の間を上下している。この場合、係数K=1.0である場合よりも、室内温度tが目標温度tbに達する時間が遅いことが分かる。
【0057】
図6(c)に示すように、係数K=1.5である場合は、設定温度ta=47.5℃(=1.5×(28-(15-28)))が算出される。フィードバック制御部202に入力される偏差(誤差)=32.5℃(=47.5-15)である。制御開始4秒後に室内温度tが目標温度tbに達し、その後、室内温度tは28℃と36℃の間を上下している。
【0058】
係数K=1.5である場合、係数K=1.0である場合よりも、室内温度tが目標温度tbに達する時間が早いことが分かる。しかしながら、この場合、係数K=1.0である場合よりも、オーバーシュートが大きいことが分かる。
【0059】
このように、ユーザは、係数Kを変更することができる。そして、たとえば、ユーザは、オーバーシュートが小さく、かつ、早く目標温度に達する係数Kとして1.0を設定する、といったような検討を行うことができる。なお、上記図6における例は、あくまで温度制御の一例であり、空調機器の設置環境や設定されたパラメータの値等によって温度制御の結果は異なる。
【0060】
図7は、表示部320における表示の一例を示す図である。表示部320には、制御結果が表示される。表示部320の左側には、図6(a)と同じグラフが表示されている。表示部320の右側には、目標温度が28℃であり、係数Kが1.0であり、目標温度への到達時間が6秒であることが示されている。
【0061】
また、本画面にて、係数Kおよび目標温度が変更可能である。入力部310から、新たに設定したい係数Kを入力する。たとえば、係数K=0.5を入力して、「変更」ボタンをクリックすると、係数Kが1.0から0.5に変更される。そして、制御装置100は、入力部310によって入力された係数Kを用いてフィードバック制御を行う。その結果、たとえば、図6(b)で示したような結果が得られる。
【0062】
このようにして、ユーザは、係数Kを変更して、その結果、室内温度がどのように変動するかを検証することができる。その結果、最適な温度制御を行うことができる。
【0063】
また、本画面にて、入力部310から、新たに設定したい目標温度を入力する。たとえば、目標温度=30を入力して、「変更」ボタンをクリックすると、目標温度が28℃から30℃に変更される。これにより、室内温度が30℃になるようにフィードバック制御が行われる。
【0064】
以上説明したように、表示部320は、目標温度に対する設定温度および室内温度の推移とともに、係数Kおよび室内温度が目標温度に達した時間を表示する。
【0065】
図8は、制御システム10が実行する処理のフローチャートである。たとえば、制御装置100の電源がONになったときに、本処理が開始するようにしてもよい。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0066】
本処理が開始すると、制御装置100は、S101において、データ変更があったか否かを判定する。図7に示した画面において、係数Kまたは目標温度が入力されて、「変更」ボタンがクリックされた場合に、データ変更があったと判断される。
【0067】
制御装置100は、データ変更があった場合(S101でYES)、S102において、係数K、目標温度を取得し、S103に処理を進める。制御装置100は、データ変更がなかった場合(S101でNO)、S103に処理を進める。
【0068】
制御装置100は、S103において、設定温度=係数K×(目標温度-(室内温度-目標温度)の式により、設定温度を算出する。たとえば、図6(a)の例では、設定温度=41℃(=1×(28-(15-28)))が算出される。
【0069】
制御装置100は、S104において、設定温度と室内温度に基づき冷温水2方弁31の動作指令値を決定する制御を実行する。具体的には、フィードバック制御部202に設定温度と室内温度との偏差が入力されると、フィードバック制御部202は冷温水2方弁31の動作指令値を出力する。制御装置100は、S105において、表示データを更新して表示部320に出力し、処理をS101に戻す。
【0070】
S101~S105の処理を繰り返すことで、温度制御が行われるとともに、図7に示したようなグラフが表示される。なお、S101~S105の処理は、所定周期(たとえば、1秒)ごとに実行すればよい。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態においては、制御装置100は、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定する。制御装置100は、目標温度と室内温度との差分の絶対値が第1値より小さい第2値であるときは、設定温度として第2設定温度を決定する。第1設定温度と目標温度との差分の絶対値は、第2設定温度と目標温度との差分の絶対値よりも大きい。具体的には、制御装置100は、設定温度=係数K×(目標温度-(室内温度-目標温度))の式により設定温度を算出する。そして、制御装置100は、設定温度と室内温度との差分に従って冷温水2方弁31に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行う。
【0072】
本実施の形態においては、設定温度=目標温度(固定値)とすることなく、上記のような方法で設定温度を算出することで、図5に示したように、室内温度が目標温度に達するまでの所要時間を極力短縮することができる。これにより、室内空間を快適にすることができる。
【0073】
さらに、本実施の形態においては、図1図6図7等に示したように、係数Kを入力する入力部310を備え、入力部310によって入力された係数Kを用いてフィードバック制御を行い、目標温度に対する設定温度および室内温度の推移とともに、係数Kおよび室内温度が目標温度に達した時間を表示する表示部320を備えている。係数Kを変更することで、いかに早く室内温度が目標温度に達するか、オーバーシュートが大きくならないか等を検証しつつ、最適な係数Kを設定することができる。
【0074】
上述のように、PID制御における調整パラメータとして、比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインの3つのパラメータがある。これらのパラメータを最適化することで、制御性能を改善することも可能である。
【0075】
これらのパラメータは、ビルに空調システム400の据付時または保守時に工事業者または保守業者が調整することも可能である。しかしながら、これらのパラメータは現場で試行錯誤的に調整されるため、最適な値に調整することは容易ではなく、調整に時間もかかる。また、実運用として、スキルのないビルのオーナーや管理者が、これらのパラメータを調整することはない。
【0076】
一方、本実施の形態のように、目標温度と室内温度とに基づき設定温度を可変にすることで、PID制御の3つのパラメータを調整することなく、制御性能を改善することが可能となる。さらに、係数Kを変更可能にし、係数Kを変更したことによる制御性能の改善効果を画面上で確認可能に構成したことで、上記3つのパラメータを最適化するノウハウのないビルの管理者等であっても、容易に制御性能を改善することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、制御システム10の指令に従って動作する動作装置として冷温水2方弁31の弁の開度を制御し、室内の温度を調整するようにした。しかし、これに限らず、制御システム10の指令に従って動作する動作装置として給気ファン41の回転数を制御し、室内の温度を調整してもよい。あるいは、動作装置として、冷温水2方弁31および給気ファン41の双方を制御するようにしてもよい。
【0078】
[付記]
上述した実施形態は、以下の付記の具体例である。
【0079】
(付記1)
室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御する空調制御システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行可能なプログラムを記憶するメモリとを備え、
前記空調システムは、前記室内温度を検出するセンサと、前記空調制御システムの指令に従って動作する動作装置とを含み、
前記プロセッサは、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定し、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が前記第1値より小さい第2値であるときは、前記設定温度として第2設定温度を決定し、
前記第1設定温度と前記目標温度との差分の絶対値は、前記第2設定温度と前記目標温度との差分の絶対値よりも大きく、
前記プロセッサは、前記設定温度と前記室内温度との差分に従って前記動作装置に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行う、空調制御システム。
【0080】
(付記2)
前記設定温度は、所定の係数×(前記目標温度-(前記室内温度-前記目標温度))である、付記1に記載の空調制御システム。
【0081】
(付記3)
前記所定の係数は、1である、付記2に記載の空調制御システム。
【0082】
(付記4)
前記所定の係数を入力する入力部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記入力部によって入力された前記所定の係数を用いて前記フィードバック制御を行い、
前記目標温度に対する前記設定温度および前記室内温度の推移とともに、前記所定の係数および前記室内温度が前記目標温度に達した時間を表示する表示部をさらに備える、付記1~付記3のいずれか1項に記載の空調制御システム。
【0083】
(付記5)
前記動作装置は、冷温水2方弁であり、
前記空調システムは、前記空調制御システムの指令に従って前記冷温水2方弁の弁を動作する、付記1~付記4のいずれか1項に記載の空調制御システム。
【0084】
(付記6)
室内の室内温度を予め設定された目標温度に調整する空調システムを制御する空調制御システムの制御方法であって、
前記空調システムは、前記室内温度を検出するセンサと、前記空調制御システムの指令に従って動作する動作装置とを含み、
前記制御方法は、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が第1値であるときは、設定温度として第1設定温度を決定するステップと、
前記目標温度と前記室内温度との差分の絶対値が前記第1値より小さい第2値であるときは、前記設定温度として第2設定温度を決定するステップとを備え、
前記第1設定温度と前記目標温度との差分の絶対値は、前記第2設定温度と前記目標温度との差分の絶対値よりも大きく、
前記制御方法は、前記設定温度と前記室内温度との差分に従って前記動作装置に対する動作指令値を算出するフィードバック制御を行うステップをさらに備える、制御方法。
【0085】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10 制御システム、20 部屋、21 温度センサ、22 湿度センサ、23 温度センサ、31 冷温水2方弁、32 冷温水コイル、33,34 流路、41 給気ファン、42 排気ファン、51 空調機、100 PLC、101 プロセッサ、102 メモリ、200 サーバ、202 フードバック制御部、210 設定温度算出部、300 端末、310 入力部、320 表示部、400 空調システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8