(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022108
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
F02D9/02 351P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125466
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA33
3G065DA05
3G065KA14
3G065KA37
(57)【要約】
【課題】コイルスプリングが回転部材の誤った位置に取り付けられることによりコイルスプリングの外周側を支持する外周支持部の効果が発揮できなくなるのを抑止する。
【解決手段】一つの実施形態はスロットル装置であって、スロットルシャフトと結合され駆動源によって回転させられる回転部材と、スロットルボデーと回転部材との間に介装されスロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングとを備える。コイルスプリングは第一のスプリング部と第二のスプリング部とこれらを接続する中間フックとを有する。回転部材は、第一のスプリング部の内周側を支持する内周支持部と、第一のスプリング部の外周側を支持する外周支持部と、コイルスプリングを組み付ける際に第一のスプリング部が外周支持部の外側に嵌まり込むのを阻止する障害構造とを有している。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル装置であって、
吸気通路を形成するスロットルボデーと、
前記吸気通路を開閉するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブと結合されたスロットルシャフトと、
前記スロットルシャフトと結合され駆動源によって回転させられる回転部材と、
前記スロットルボデーと前記回転部材との間に介装され前記スロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングとを備え、
前記コイルスプリングは、第一の端部を含む第一のスプリング部と、第二の端部を含む第二のスプリング部と、前記第一のスプリング部と前記第二のスプリング部とを接続する中間フックとを有し、
第一の端部は前記回転部材に設けられた第一のスプリング係止部に係止され、第二の端部は前記スロットルボデーに設けられた第二のスプリング係止部に係止されており、前記中間フックは前記回転部材に設けられた第一のストッパと前記スロットルボデーに設けられた第二のストッパの少なくとも一方に係止されており、
前記回転部材または前記スロットルシャフトに設けられ前記第一のスプリング部の内周側を支持する内周支持部と、前記回転部材に設けられ前記第一のスプリング部の外周側を支持する外周支持部とを備えており、
前記回転部材は前記コイルスプリングを組み付ける際に前記第一のスプリング部が前記外周支持部の外側に嵌まり込むのを阻止する障害構造を有している、スロットル装置。
【請求項2】
請求項1のスロットル装置であって、前記障害構造は前記回転部材の前記外周支持部と前記第一のスプリング係止部との間に位置する、スロットル装置。
【請求項3】
請求項1または2のスロットル装置であって、前記障害構造は、前記コイルスプリングの前記第一の端部が前記回転部材の前記第一のスプリング係止部に係止された状態で前記中間フックを前記第一のストッパに係止させようとしたときに前記第一のスプリング部の前記第一の端部側の最初の周回が完全に前記外周支持部の外側まで行くのを阻止するように構成されている、スロットル装置。
【請求項4】
請求項1または2のスロットル装置であって、前記障害構造は、前記コイルスプリングの前記第一の端部が前記回転部材の前記第一のスプリング係止部に係止されるとともに前記第一のスプリング部の前記第一の端部側の最初の周回が前記障害構造の内側面に当たった状態で前記第一のスプリング部の前記第一の端部側の最初の周回が前記外周支持部の外側を通る位置で嵌まり込まないように構成されている、スロットル装置。
【請求項5】
請求項1または2のスロットル装置であって、前記障害構造は前記回転部材の基部から軸方向に突出しており、頂部から前記回転部材の基部に向かって内側へ傾斜する内側斜面を有する、スロットル装置。
【請求項6】
請求項1または2のスロットル装置であって、前記第一のスプリング部は前記スロットルバルブが前記デフォルト位置よりも閉じているときに作用するオープナスプリング部であり、前記第二のスプリング部は前記スロットルバルブが前記デフォルト位置よりも開いているときに作用するリターンスプリング部である、スロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術はスロットル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンに供給される吸気量を調節する自動車のスロットル装置は、通常、スロットルバルブ(ディスク)に固定されたシャフトを電気モータで回転させることによってボデーに形成された吸気通路を開閉するようになっている。多くの場合、このようなスロットル装置には、モータへの通電が断たれたときでも若干の吸気量を確保できるようにスロットルバルブを規定のデフォルト位置に動かす機構が設けられる。例えば、特開2020-033942号公報に開示されているスロットル装置では、コイルスプリング(トーションスプリング)によってスロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢している。具体的には、電気モータの回転をシャフトに伝達するためのギヤ列の最終ギヤとスロットル装置のボデーとの間にこのコイルスプリングが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにスロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングは、取り付け態様によってはその一部の周回が大きく偏心することがあるため、コイルスプリングの内側や外側に偏心を抑制するための支持部材が設けられることがある。上記の公報では、偏心しようとする周回をコイルスプリングの外側から押さえるための外周支持部がギヤに設けられている。しかし、このような外周支持部が存在すると、ギヤへの組み付けの際にコイルスプリングを誤って外周支持部の外側に取り付けてしまうことがありうるため、これを抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術のひとつの態様は、スロットル装置であって、吸気通路を形成するスロットルボデーと、前記吸気通路を開閉するスロットルバルブと、前記スロットルバルブと結合されたスロットルシャフトと、前記スロットルシャフトと結合され駆動源によって回転させられる回転部材と、前記スロットルボデーと前記回転部材との間に介装され前記スロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングとを備える。前記コイルスプリングは、第一の端部を含む第一のスプリング部と、第二の端部を含む第二のスプリング部と、前記第一のスプリング部と前記第二のスプリング部とを接続する中間フックとを有し、第一の端部は前記回転部材に設けられた第一のスプリング係止部に係止され、第二の端部は前記スロットルボデーに設けられた第二のスプリング係止部に係止されており、前記中間フックは前記回転部材に設けられた第一のストッパと前記スロットルボデーに設けられた第二のストッパの少なくとも一方に係止されている。前記スロットル装置はさらに、前記回転部材または前記スロットルシャフトに設けられ前記第一のスプリング部の内周側を支持する内周支持部と、前記回転部材に設けられ前記第一のスプリング部の外周側を支持する外周支持部とを備えている。前記回転部材は前記コイルスプリングを組み付ける際に前記第一のスプリング部が前記外周支持部の外側に嵌まり込むのを阻止する障害構造を有している。これにより、コイルスプリングが回転部材の誤った位置に取り付けられて外周支持部の効果が発揮できなくなるのを抑止することができる。
【0006】
実施形態によっては、前記障害構造は前記回転部材の前記外周支持部と前記第一のスプリング係止部との間に位置する。これにより、コイルスプリングの第一の端部が回転部材の第一のスプリング係止部に係止された状態で前記第一のスプリング部が外周支持部に対して誤った位置で嵌め込まれるのが阻止される。
【0007】
実施形態によっては、前記障害構造は、前記コイルスプリングの前記第一の端部が前記回転部材の前記第一のスプリング係止部に係止された状態で前記中間フックを前記第一のストッパに係止させようとしたときに前記第一のスプリング部の前記第一の端部側の最初の周回が完全に前記外周支持部の外側まで行くのを阻止するように構成されている。これにより、コイルスプリングを回転部材に取り付ける際、中間フックに加えられた力によって第一のスプリング部の一部が大きく偏心したとしても、第一のスプリング部が誤った位置に取り付けられることが抑止される。
【0008】
実施形態によっては、前記障害構造は、前記コイルスプリングの前記第一の端部が前記回転部材の前記第一のスプリング係止部に係止されるとともに前記第一のスプリング部の前記第一の端部側の最初の周回が前記障害構造の内側面に当たった状態で前記第一のスプリング部の前記第一の端部側の最初の周回が前記外周支持部の外側を通る位置で嵌まり込まないように構成されている。これにより、コイルスプリングを回転部材に取り付ける際、中間フックに加えられた力によって第一のスプリング部の一部が大きく偏心したとしても、第一のスプリング部が誤った位置に取り付けられることが抑止される。
【0009】
実施形態によっては、前記障害構造は前記回転部材の基部から軸方向に突出しており、頂部から前記回転部材の基部に向かって内側へ傾斜する内側斜面を有する。第一のスプリング部を外周支持部の外側で嵌め込もうとするとこの障害構造の内側斜面によって第一のスプリング部がその位置で嵌まり込むのが阻止される。また、内側斜面は障害構造の頂部に向かって外側へ傾斜しているため、第一のスプリング部の少なくとも中間フック側の周回が障害構造に摺動するのを抑制することができる。
【0010】
実施形態によっては、前記第一のスプリング部は前記スロットルバルブが前記デフォルト位置よりも閉じているときに作用するオープナスプリング部であり、前記第二のスプリング部は前記スロットルバルブが前記デフォルト位置よりも開いているときに作用するリターンスプリング部である。これによりオープナスプリング部が誤った位置に取り付けられることが抑止される。特にオープナスプリング部の巻き数がリターンスプリング部の巻き数よりも少ない場合にはスプリング係止部からの反力がオープナスプリング部の各周回に分散されにくく、取り付け時や使用時の各周回の偏心量が大きくなりがちであるため、またデフォルト位置よりも閉じた側は使用頻度が高く作動回数も多くなる傾向があるため、上記の外周支持部や障害構造の重要性が増すと考えらえる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一つの実施形態としてのスロットル装置の斜視図である。
【
図2】スロットル装置のモータとスロットルシャフトを通る平面で切った断面図である。
【
図5】スロットルギヤにコイルスプリングのオープナスプリング部を取り付けた状態を示す図であり、コイルスプリングは中間フックで切断されている。
【
図6】スロットルバルブがデフォルト位置にあるときのスロットル装置のハウジング部を蓋を開けて示す図である。
【
図7】スロットルバルブが全閉位置にあるときのスロットル装置のハウジング部を蓋を開けて示す図である。
【
図8】スロットルバルブが全開位置にあるときのスロットル装置のハウジング部を蓋を開けて示す図である。
【
図9】偏心するオープナスプリング部とそれに作用する外周支持部とを軸方向に見た図である。
【
図10】偏心するオープナスプリング部とそれに作用する外周支持部の側面図である。
【
図11】外周支持部がない場合の偏心するオープナスプリング部を軸方向に見た図である。
【
図12】外周支持部がない場合の偏心するオープナスプリング部の側面図である。
【
図13】スロットルギヤに取り付ける途中において正しく外周支持部の内側に嵌まり込もうとするコイルスプリングを示す斜視図である。
【
図14】障害構造がないスロットルギヤにコイルスプリングを取り付ける途中において誤って外周支持部の外側で嵌まり込もうとするコイルスプリングを示す斜視図である。
【
図15】スロットルギヤに取り付ける途中の大きく偏心したコイルスプリングとその偏心を阻止する障害構造とを軸方向に見た図である。
【
図16】障害構造の内側斜面と外周支持部の外側斜面とに阻まれて嵌まり込むことができないオープナスプリング部を示す側面図である。
【
図17】障害構造の内側に嵌まり込んだコイルスプリングを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各種実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[スロットル装置]
図1~
図3は、自動車等の車両に搭載されエンジンへの空気吸入量を調節する、ひとつの実施形態としてのスロットル装置10を示す。スロットル装置10は吸気通路13を形成するスロットルボデー12を備える。スロットルボデー12は金属製あるいは金属コア入りの樹脂製とすることができる。また、スロットル装置10は吸気通路13を通過する流量を調節する回転可能な円板状のスロットルバルブ(ディスク)15を備える。スロットルバルブ15は、吸気通路13の両側においてスロットルボデー12に取り付けられた軸受18、19を介して回転可能に支持されたスロットルシャフト17に固定される。スロットルバルブ15は吸気通路13にほぼ直交する全閉位置(
図7)から吸気通路13とほぼ平行になる全開位置(
図8)までの間で回転可能である。スロットルシャフト17が回転するとスロットルバルブ15が開閉する。スロットルバルブ15とスロットルシャフト17はいずれも金属製とすることができる。
【0014】
[モータと伝達機構]
スロットル装置10はスロットルバルブ15を駆動するための駆動源としてのモータ22を備える。モータ22が出力する回転は、伝達機構を介してスロットルシャフト17に伝達される。モータ22と伝達機構はスロットルボデー12に形成されたハウジング部に収容され、スロットルボデー12はこのハウジング部を閉じる蓋29を備える。一つの実施形態として、伝達機構は、モータ22の出力軸23に固定された駆動ギヤ24、スロットルボデー12に中間軸27を介して回転可能に支持された中間ギヤ26、スロットルシャフト17に同軸で固定された従動ギヤであるスロットルギヤ20からなる。中間ギヤ26は中間軸27に同軸に固定された大径歯部26aと小径歯部26bを有し、大径歯部26aには駆動ギヤ24、小径歯部26bにはスロットルギヤ20の歯部28がそれぞれ噛み合わされる。スロットルギヤ20は樹脂製とすることができる。スロットルシャフト17はスロットルギヤ20に設けられた取付穴21に差し込まれて、端部のかしめにより固定される。モータ22は外部の電子制御装置(ECU)によって制御される。モータ22の回転方向と回転量を制御することによりスロットルバルブ15の開度が調節される。
【0015】
[コイルスプリング]
図2、
図3に示すように、スロットル装置10は、スロットルバルブ15を全閉位置(
図7)から少し開いた位置である所定のデフォルト位置(
図6)に向かって付勢するコイルスプリング30を備える。このコイルスプリング30はトーションスプリングとして機能する。モータ22に通電されているとき(すなわち出力軸23を制御できるとき)には、コイルスプリング30の付勢力に逆らってスロットルバルブ15を全閉位置(
図7)と全開位置(
図8)の間の任意の位置に回転させることができる。モータ22への通電が断たれたときには、コイルスプリング30の付勢力によりスロットルバルブ15が自動的にデフォルト位置まで回転させられ、吸気通路13を通して若干量の空気をエンジンに供給することが可能となる。
【0016】
具体的には、コイルスプリング30は互いに逆向きに巻かれたリターンスプリング部35(例えば約6回巻き)とオープナスプリング部37(例えば約2回巻き)が接続されて構成され、スロットルボデー12とスロットルギヤ20との間に介装される。コイルスプリング30の両端部31、32は径方向外方に突出するように曲げられ、一方の端部31はスロットルボデー12に設けられたボデー側スプリング係止部40に係止され、他方の端部32はスロットルギヤ20に設けられたギヤ側スプリング係止部42に係止される。スロットルボデー12に係止された方の端部31はリターンスプリング部35の端部でもあり、スロットルギヤ20に係止された方の端部32はオープナスプリング部37の端部でもある。
【0017】
図3、
図5に示すように、リターンスプリング部35とオープナスプリング部37の接続部はU字状の折り返し部となっており、この折り返し部が径方向外方に突出するように曲げられる。この曲げられた折り返し部は中間フック33としてスロットルギヤ20に設けられたギヤ側ストッパ44とスロットルボデー12に設けられたボデー側ストッパ46の少なくともいずれかに係止されるようになっている。スロットルギヤ20がデフォルト位置(
図6)にあるとき、中間フック33は、スロットルギヤ20に設けられたギヤ側ストッパ44とスロットルボデー12に設けられたボデー側ストッパ46の両方に係止されている。このときリターンスプリング部35とオープナスプリング部37はいずれも自然状態から縮径する方向に捩じられて予荷重を付与された状態(弾性エネルギーを蓄えた状態)となっている。
【0018】
モータ22の駆動によりスロットルギヤ20がデフォルト位置(
図6)から全閉位置(
図7)に向かって回転しようとすると、コイルスプリング30の中間フック33はスロットルボデー12に設けられたボデー側ストッパ46に係止されるため、両端をスロットルボデー12によって拘束されたリターンスプリング部35は無効化される。一方で、スロットルギヤ20は中間フック33がボデー側ストッパ46に係止されたままスロットルボデー12に対して相対回転するため、スロットルギヤ20のギヤ側ストッパ44は中間フック33から離れる。スロットルギヤ20はコイルスプリング30の端部32を保持したまま回転するため、オープナスプリング部37はさらに縮径する方向に捩れる。スロットルギヤ20がデフォルト位置よりも全閉位置側にあるときにモータ22への通電が断たれると、スロットルギヤ20はオープナスプリング部37の付勢力によりデフォルト位置に戻される。
【0019】
モータ22の駆動によりスロットルギヤ20がデフォルト位置(
図6)から全開位置(
図8)に向かって回転しようとすると、中間フック33はスロットルギヤ20のギヤ側ストッパ44に係止されたままとなるため、両端をスロットルギヤ20によって拘束されたオープナスプリング部37は無効化される。一方で、スロットルギヤ20はギヤ側ストッパ44で中間フック33を係止したままスロットルボデー12に対して相対回転するため、リターンスプリング部35はさらに縮径する方向に捩れる。スロットルギヤ20がデフォルト位置よりも全開位置側にあるときにモータ22への通電が断たれると、スロットルギヤ20はリターンスプリング部35の付勢力によりデフォルト位置に戻される。
【0020】
スロットルギヤ20がデフォルト位置と全閉位置との間で回転するとオープナスプリング部37は捩れるが、この時のオープナスプリング部37のコイル線の各部分の回転量は均一ではない。例えば、オープナスプリング部37のうちスロットルギヤ20によって保持された端部32に近い部分はスロットルギヤ20に追随して回転するため、スロットルギヤ20に対する相対回転量は小さい。一方、オープナスプリング部37のうちボデー側ストッパ46に拘束された中間フック33に近い部分は、スロットルボデー12に対する回転量が小さい分、スロットルギヤ20に対する相対回転量は大きくなる。
【0021】
[内周支持部]
図4、
図5に示すように、スロットルギヤ20は、コイルスプリング30の内部に向かって突出しコイルスプリング30の偏心を抑制する内周支持部47を有する。一例として、内周支持部47はスロットルギヤ20の歯部28が形成された板状の基部から突出する筒状部として形成される。スロットルシャフト17を固定するための前述の取付穴21は、この筒状の内周支持部47の内側にインサート成形によって結合された金属板に形成することができる。内周支持部47は少なくともオープナスプリング部37を突き抜ける高さに形成され、リターンスプリング部35の内部に(例えば中間フック33からリターンスプリング部35の約2周分まで)突き出す高さに形成することもできる。
【0022】
図9、
図10に模式的に示したように、オープナスプリング部37は縮径方向に捩って予荷重を付与した状態で取り付けられるため、オープナスプリング部37の端部32側の周回37aはスロットルギヤ20の軸線に対しギヤ側スプリング係止部42から受ける反力とおおよそ同じ方向(矢印70)に偏心しようとする。内周支持部47は、特に、オープナスプリング部37の端部32側の周回37aの内周側を支持する。内周支持部47はまたスロットル装置10の作動中にスロットルギヤ20の回転によって捩られることで発生しうるコイルスプリング30の偏心を抑制する。
【0023】
図示しない別の実施形態として、スロットルギヤ20ではなくスロットルシャフト17に内周支持部を形成することもできる。
【0024】
図2に示すように、スロットルボデー12はスロットルギヤ20に近い方の軸受18を保持する軸受保持部45を有する。この軸受保持部45はリターンスプリング部35の内部に突き出す高さに形成し、リターンスプリング部35に対する内周支持部として機能させることができる。しかしながら、以下で単に内周支持部と言えばオープナスプリング部37に対する内周支持部47を指す。
【0025】
[外周支持部]
図4、
図5に示すように、スロットルギヤ20には、コイルスプリング30のオープナスプリング部37の外周側と当接する少なくとも一つの外周支持部50が設けられる。外周支持部50はスロットルギヤ20に一体的に形成することができる。一つの実施形態として、外周支持部50は、スロットルギヤ20の歯部28が形成された基部48から内周支持部47と同じ側に延びるように形成される。例えば、外周支持部50はオープナスプリング部37と点接触するような形状とすることができ、例えばスロットルギヤ20の軸方向に平行に延びる円柱状とすることができる。
【0026】
図11、
図12に模式的に示したように、外周支持部50が形成されていないスロットルギヤ120を用いた場合、オープナスプリング部37に付与された予荷重に起因して、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bはスロットルギヤ20の軸線に対しボデー側ストッパ46から受ける反力とおおよそ同じ方向(矢印72)に大きく偏心する。特にオープナスプリング部37の巻き数(約2回)が比較的少ないため、ボデー側ストッパ46とギヤ側スプリング係止部42から受ける反力が各周回に分散されにくく、オープナスプリング部37の各周回の偏心量は大きくなりがちである。これにより、オープナスプリング部37のうち中間フック33に近い部分(図において右側)が内周支持部47に押し当てられ、その対極側にある部分(図において左側)は内周支持部47から大きく離れる。スロットルギヤ20がデフォルト位置から全閉位置に向かって回転するとオープナスプリング部37がさらに縮径方向に捩れるため、オープナスプリング部37が内周支持部47を押す力は増加する。スロットルギヤ20がデフォルト位置と全閉位置との間で回転する際には、中間フック33がボデー側ストッパ46に拘束されているため、前述の通りオープナスプリング部37のうち中間フック33に近い部分はスロットルギヤ20に対する相対回転量が大きい。したがって、オープナスプリング部37のこの部分が内周支持部47に押し当てられていると、スロットルギヤ20が回転する際にオープナスプリング部37と内周支持部47との間に摩擦が生じ、結果的にスロットルギヤ20の回転抵抗となる。
【0027】
これに対し、
図9、
図10に示すように、スロットルギヤ20に外周支持部50が設けられている上述の実施形態の場合、外周支持部50がオープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bの外周側に当接し、その偏心を抑制する。これにより、その中間フック33側の周回37bがスロットルギヤ20の内周支持部47から離される。結果的に、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bの内周側が内周支持部47から離される。したがって、スロットルギヤ20がデフォルト位置と全閉位置との間で回転する際にオープナスプリング部37と内周支持部47との間に生じる摩擦をなくすことができる。これにより、内周支持部47の摩耗を抑えることができるだけでなく、モータ22への負荷が低減されることからモータ22の小型化や伝達機構の減速比の削減が可能となり、スロットル装置10の小型化につながる。
【0028】
図示しない別の実施形態として、外周支持部50は、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bを内周支持部47から完全に離す代わりに、オープナスプリング部37が内周支持部47を押す力を低減するように構成することもできる。すなわち、オープナスプリング部37が偏心しようとする方向(
図9の矢印72)とは逆の方向にオープナスプリング部37を押し返すように構成することができる。これにより、スロットルギヤ20が回転する際にオープナスプリング部37と内周支持部47との間に生じる摩擦を低減することができる。
【0029】
図5に示すように、外周支持部50は、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bに中間フック33から略180°~360°の範囲内(例えば約270°)の位置で当接するように配置することができる。これにより、オープナスプリング部37と内周支持部47との間の相対回転が比較的に大きい箇所における接触を避け、効果的に摩擦を低減することができる。
【0030】
スロットルギヤ20の軸線から内周支持部47の外周面までの距離は一定でなくてよい。例えば、内周支持部47の外周面のうちオープナスプリング部37の端部32側の周回37aを支持すべき部分では大きく、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bが偏心により外周面に近づいて来る部分では小さく設定することができる。
【0031】
図10に示すように、オープナスプリング部37が配置される内周支持部47と外周支持部50の間の最小間隔dは、オープナスプリング部37のコイル線径の2倍未満とすることができる。これにより、オープナスプリング部37のコイル線同士が内周支持部47と外周支持部50との間で重なるのを防止し、オープナスプリング部37の姿勢を安定化することができる。
【0032】
[スロットルギヤへのコイルスプリングの組み付け]
図13に示すように、コイルスプリング30をスロットルギヤ20に取り付けるには、端部32をギヤ側スプリング係止部42に係止させてから、オープナスプリング部37を縮径方向に捩りながら中間フック33をギヤ側ストッパ44に係止させる。このとき、オープナスプリング部37が確実に内周支持部47と外周支持部50との間に嵌まり込むように注意する必要がある。
【0033】
[障害構造]
図4、
図13に示すように、スロットルギヤ20には、コイルスプリング30を誤った位置に取り付けるのを防止するための障害構造60が設けられる。障害構造60はスロットルギヤ20の基部48から外周支持部50と同じ側に延びるブロックとすることができる。障害構造60は好ましくはスロットルギヤ20の外周支持部50とギヤ側スプリング係止部42との間に配置される。一つの具体例として、障害構造60はスロットルギヤ20の軸心から見て約45°の角度範囲にわたる弧状のブロックとすることができる。
【0034】
図14に示すように、障害構造60がないスロットルギヤ220を用いた場合、コイルスプリング30を取り付ける過程においてオープナスプリング部37が外周支持部50を乗り越えて外側に嵌まり込みやすい。前述のようにオープナスプリング部37の巻き数(約2回)が比較的少ないことからオープナスプリング部37の各周回の偏心量は組み付け時においても大きくなり、外周支持部50を乗り越えやすい。オープナスプリング部37がこのような誤った位置に取り付けられると、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bを内周支持部47から離すように作用する前述の外周支持部50の効果が発揮できない。
【0035】
一方、
図15、
図16に示すように障害構造60が存在すると、オープナスプリング部37の端部32がスロットルギヤ20のギヤ側スプリング係止部42に係止された状態で中間フック33をギヤ側係止部に係止させようとしたとき、中間フック33に加えた力(矢印74)によってオープナスプリング部37が大きく偏心しても、少なくともオープナスプリング部37の端部32側の周回37aが完全に外周支持部50の外側まで行くのが阻止される。また、コイルスプリング30の端部32がスロットルギヤ20のギヤ側スプリング係止部42に係止されているという条件においては、オープナスプリング部37の端部32側の周回37aが障害構造60に当たった状態で外周支持部50の外側を通る位置で嵌まり込むことがない。これにより、仮にオープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bが外周支持部50の外側まで行くほど大きく偏心したとしても、オープナスプリング部37が誤った位置に取り付けられることが抑止される。
【0036】
図4に示すように、障害構造60には頂部からスロットルギヤ20の基部48に向かって内側(内周支持部47側)へ傾斜する内側斜面62を設けることもできる。
図15、
図16に示すように、オープナスプリング部37を外周支持部50の外側で嵌め込もうとしてもこの障害構造60の内側斜面62によってオープナスプリング部37がその位置で嵌まり込むのが阻止される。また、
図17に示すように、内側斜面62は障害構造60の頂部に向かって外側へ傾斜しているため、スロットルギヤ20が回転する際にオープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bが障害構造60に摺動するのを抑制することができる。なお、コイルスプリング30がスロットルギヤ20に組み付けられた状態において、外周支持部50はオープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bの外周側に当接し、その偏心を抑制していたのに対し、障害構造60はオープナスプリング部37に当接しないという違いがある。
【0037】
図4、
図16に示すように、外周支持部50にはスロットルギヤ20の基部48から外周支持部50の頂部に向かって内側へ傾斜する外側斜面52を設けることができる。これにより、オープナスプリング部37を外周支持部50の外側で嵌め込もうとしてもこの外周支持部50の外側斜面52と障害構造60の内側斜面62によってオープナスプリング部37がその位置で嵌まり込むのが阻止される。またこのとき、オープナスプリング部37をさらに捩る力によってオープナスプリング部37が外周支持部50の外側斜面52を滑るように内側へ乗り越えて正しい位置に戻りやすい。
【0038】
[他の実施形態]
図示しない別の実施形態として、コイルスプリング30は、スロットルバルブ15の開閉に要求される回転方向やスロットルバルブ15から延びるスロットルシャフト17の方向によっては、図示したものに対して鏡像となる形態のコイルスプリングを用いることもできる。このような鏡像の形態を用いる場合でもリターンスプリング部とコイルスプリングとが依然として互いに逆向きに巻かれたものであることは言うまでもない。
【0039】
さらに別の実施形態として、コイルスプリング30のリターンスプリング部35とオープナスプリング部37の巻き数は図示したものとは異なる数とすることができる。また別の実施形態として、リターンスプリング部35とオープナスプリング部37の各周回の径の相対的な大きさも図示したものとは異なる大きさに設定することができる。
【0040】
さらに別の実施形態として、コイルスプリング30を構成する二つのスプリング部のうちスロットルギヤ20に係止された第一のスプリング部をリターンスプリング部、スロットルボデー12に係止された第二のスプリング部をオープナスプリング部として機能させることもできる。この場合、スロットルバルブ15を開閉する際のスロットルギヤ20の回転方向が
図5に示した方向とは逆になる。このような実施形態においても、上述のような外周支持部を設けることによりリターンスプリング部の偏心を抑えることができ、上述のような障害構造を設けることによりリターンスプリング部がスロットルギヤ20に対して誤った位置に取り付けられるのを抑止することができる。
【0041】
以上、具体的な実施形態を説明したが、本技術はこれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば本技術の目的を逸脱することなく様々な置換、改良、変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 スロットル装置
12 スロットルボデー
13 吸気通路
14 ハウジング部
15 スロットルバルブ
17 スロットルシャフト
18、19 軸受
20 スロットルギヤ
21 取付穴
22 モータ
23 出力軸
24 駆動ギヤ
26 中間ギヤ
26a 中間ギヤの大径歯部
26b 中間ギヤの小径歯部
27 中間軸
28 スロットルギヤの歯部
29 ハウジング部の蓋
30 コイルスプリング
31 コイルスプリングのボデー側の端部
32 コイルスプリングのギヤ側の端部
33 コイルスプリングの中間フック
35 リターンスプリング部
37 オープナスプリング部
37a オープナスプリング部の端部側の周回
37b オープナスプリング部の中間フック側の周回
40 ボデー側スプリング係止部
42 ギヤ側スプリング係止部
44 ギヤ側ストッパ
45 軸受保持部
46 ボデー側ストッパ
47 内周支持部
48 スロットルギヤの基部
50 外周支持部
52 外側斜面
60 障害構造
62 内側斜面