(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022118
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】中継装置、スリープ制御方法およびスリープ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240208BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125479
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】大津 智弘
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
(72)【発明者】
【氏名】呉 ダルマワン
(72)【発明者】
【氏名】芦邉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】川内 偉博
(72)【発明者】
【氏名】石塚 秀
(72)【発明者】
【氏名】黒谷 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和也
(72)【発明者】
【氏名】板津 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 大悟
(72)【発明者】
【氏名】安藤 博哉
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033BA06
5K033DB18
(57)【要約】
【課題】車載システムにおける省電力機能を向上させる。
【解決手段】中継装置は、3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置であって、前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させる状態遷移部と、前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するスリープ制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置であって、
前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させる状態遷移部と、
前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するスリープ制御部とを備える、中継装置。
【請求項2】
前記中継装置は、さらに、
前記3つ以上の車載装置がそれぞれ接続される3つ以上の通信ポートと、
前記通信ポートと前記車載装置が属するネットワークとの対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部とを備え、
前記スリープ制御部は、前記対応情報に基づいて前記第2の車載装置を選択する、請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記対応情報は、前記通信ポートとVLAN(Virtual Local Area Network)との対応関係を示し、
前記スリープ制御部は、前記対応情報に基づいて、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するVLANと同じVLANに属する前記車載装置を前記第2の車載装置として選択する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記対応情報は、前記通信ポートとPNC(Partial Network Cluster)との対応関係を示し、
前記スリープ制御部は、前記対応情報に基づいて、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するPNCと同じPNCに属する前記車載装置を前記第2の車載装置として選択する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項5】
前記対応情報は、前記通信ポートとVLANとPNCとの対応関係を示し、
前記スリープ制御部は、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するVLANと同じVLANに属する前記車載装置よりも、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するPNCと同じPNCに属する前記車載装置を前記第2の車載装置として優先的に選択する、請求項2に記載の中継装置。
【請求項6】
3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置におけるスリープ制御方法であって、
前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させるステップと、
前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するステップとを含む、スリープ制御方法。
【請求項7】
3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置において用いられるスリープ制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させる状態遷移部と、
前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するスリープ制御部、
として機能させるための、スリープ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継装置、スリープ制御方法およびスリープ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載システムにおける車載装置をスリープ制御することにより、消費電力の低減を図る技術が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2021-160472号公報)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、車載装置は、車載ネットワークにおける車載装置と通信する通信部と、前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する検知部と、前記検知部によって前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信するスリープ処理部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術を超えて、省電力機能を向上させることが可能な技術が望まれる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載システムにおける省電力機能を向上させることが可能な中継装置、スリープ制御方法およびスリープ制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の中継装置は、3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置であって、前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させる状態遷移部と、前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するスリープ制御部とを備える。
【0007】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える中継装置として実現され得るだけでなく、中継装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、中継装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車載システムにおける省電力の機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおいて伝送されるフレームの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保持するアドレステーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおけるスリープ処理のシーケンスの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る車載システムにおけるスリープ制御のシーケンスの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保持するネットワークテーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおけるスリープ制御のシーケンスの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例1の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例1の中継装置が保持するネットワークテーブルを示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例2の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例2の中継装置が保持するネットワークテーブルを示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例3の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例3の中継装置が保持するネットワークテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の実施の形態に係る中継装置は、3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置であって、前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させる状態遷移部と、前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するスリープ制御部とを備える。
【0012】
このように、第1の車載装置からウェイクアップ要求を受信した場合にウェイクアップ要求の送信先となる第2の車載装置を選択し、スリープ状態である第2の車載装置をウェイクアップ状態へ遷移させる構成により、第1の車載装置の通信相手でない他の車載装置のスリープ状態を維持することができるため、当該他の車載装置における電力消費を抑制することができる。したがって、車載システムにおける省電力機能を向上させることができる。
【0013】
(2)上記(1)において、前記中継装置は、さらに、前記3つ以上の車載装置がそれぞれ接続される3つ以上の通信ポートと、前記通信ポートと前記車載装置が属するネットワークとの対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部とを備えてもよく、前記スリープ制御部は、前記対応情報に基づいて前記第2の車載装置を選択してもよい。
【0014】
このような構成により、第1の車載装置以外の車載装置の中から第2の車載装置を簡単に選択することができる。
【0015】
(3)上記(2)において、前記対応情報は、前記通信ポートとVLAN(Virtual Local Area Network)との対応関係を示してもよく、前記スリープ制御部は、前記対応情報に基づいて、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するVLANと同じVLANに属する前記車載装置を前記第2の車載装置として選択してもよい。
【0016】
このような構成により、第1の車載装置が属するネットワークと同じネットワークに属する車載装置を第2の車載装置として簡単に選択することができる。
【0017】
(4)上記(2)において、前記対応情報は、前記通信ポートとPNC(Partial Network Cluster)との対応関係を示してもよく、前記スリープ制御部は、前記対応情報に基づいて、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するPNCと同じPNCに属する前記車載装置を前記第2の車載装置として選択してもよい。
【0018】
このような構成により、第1の車載装置が属するネットワークと同じネットワークに属する車載装置を第2の車載装置として簡単に選択することができる。
【0019】
(5)上記(2)において、前記対応情報は、前記通信ポートとVLANとPNCとの対応関係を示してもよく、前記スリープ制御部は、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するVLANと同じVLANに属する前記車載装置よりも、前記第1の車載装置が接続される前記通信ポートに対応するPNCと同じPNCに属する前記車載装置を前記第2の車載装置として優先的に選択してもよい。
【0020】
このような構成により、第1の車載装置が複数種類のネットワークに属している場合において、優先度の高いネットワークとしてPNCに属する車載装置を第2の車載装置として選択することができる。
【0021】
(6)本開示の実施の形態に係るスリープ制御方法は、3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置におけるスリープ制御方法であって、前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させるステップと、前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するステップとを含む。
【0022】
このように、第1の車載装置からウェイクアップ要求を受信した場合にウェイクアップ要求の送信先となる第2の車載装置を選択し、スリープ状態である第2の車載装置をウェイクアップ状態へ遷移させる構成により、第1の車載装置の通信相手でない他の車載装置のスリープ状態を維持することができるため、当該他の車載装置における電力消費を抑制することができる。したがって、車載システムにおける省電力機能を向上させることができる。
【0023】
(7)本開示の実施の形態に係るスリープ制御プログラムは、3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置において用いられるスリープ制御プログラムであって、コンピュータを、前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させる状態遷移部と、前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信するスリープ制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0024】
このように、第1の車載装置からウェイクアップ要求を受信した場合にウェイクアップ要求の送信先となる第2の車載装置を選択し、スリープ状態である第2の車載装置をウェイクアップ状態へ遷移させる構成により、第1の車載装置の通信相手でない他の車載装置のスリープ状態を維持することができるため、当該他の車載装置における電力消費を抑制することができる。したがって、車載システムにおける省電力機能を向上させることができる。
【0025】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0026】
[車載システム]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載システムの構成の一例を示す図である。
【0027】
図1を参照して、車載システム301は、たとえば、1または複数の中継装置101と、3つ以上の車載ECU202とを備える。
【0028】
図1に示す例では、車載システム301は、1つの中継装置101と、4つの車載ECU202A,202B,202C,202Dとを備える。中継装置101および車載ECU202は、車載ネットワーク401を構成する。車載システム301は、車両1に搭載される。車載ECU202は、車載装置の一例である。
【0029】
なお、車載システム301は、1つの中継装置101を備える構成に限らず、複数の中継装置101を備える構成であってもよい。また、車載システム301は、4つの車載ECU202を備える構成に限らず、3つの車載ECU202または5つ以上の車載ECU202を備える構成であってもよい。
【0030】
車載ECU202は、たとえば、TCU(Telematics Communication Unit)、自動運転ECU、顔認証用ECU、ドアロック用ECU、センサ、ナビゲーション装置、ヒューマンマシンインターフェース、およびカメラ等である。
【0031】
車載ネットワーク401において、たとえば、車載ECU202A,202Bと、車載ECU202C,202Dとは、互いに異なるVLANに属する。
【0032】
車載ECU202A,202Bの属するVLANのIDは「10」であり、車載ECU202C,202Dの属するVLANのIDは「20」である。なお、以下の説明において、VLANのIDを「VLAN-ID」と称する場合がある。
【0033】
中継装置101および車載ECU202は、所定の車載ネットワークマネジメント方式に準拠した装置である。より詳細には、中継装置101および車載ECU202は、車載ネットワークマネジメント方式の一例であるAUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)(登録商標)に準拠した装置である。
【0034】
車載ネットワーク401において、車載ECU202は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブル11を介して中継装置101に接続される。各車載ECU202は、イーサネットケーブル11および中継装置101を介して他の車載ECU202に接続される。
【0035】
中継装置101は、たとえばゲートウェイ装置である。中継装置101は、たとえば、レイヤ2、およびレイヤ2よりも上位のレイヤ3に従って中継処理を行うことが可能である。
【0036】
より詳細には、中継装置101は、たとえばイーサネットの通信規格に従って、イーサネットケーブル11を介して接続された車載ECU202間でやり取りされるイーサネットフレーム(以下、単に「フレーム」とも称する。)の中継処理を行う。
【0037】
中継装置101および各車載ECU202は、後述する各種情報を含むフレームを生成し、他の車載ECU202または中継装置101へ送信する。
【0038】
なお、車載システム301では、イーサネットの通信規格に従ってフレームの中継処理が行われる構成に限らず、たとえば、CAN(Controller Area Network)、CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oritend System Transport)(登録商標)およびLIN(Local Interconnect Network)等の通信規格に従ってフレームの中継が行われる構成であってもよい。
【0039】
[中継装置]
図2は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成の一例を示す図である。
【0040】
図2を参照して、中継装置101は、通信ポート51と、スイッチ部52と、処理部53と、記憶部54とを備える。
【0041】
スイッチ部52および処理部53の一方または両方は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。記憶部54は、たとえば上記処理回路に含まれる不揮発性メモリである。処理部53は、判断部61と、状態遷移部62と、スリープ制御部63とを含む。
【0042】
より詳細には、中継装置101は、3つ以上の車載ECU202がそれぞれ接続される3つ以上の通信ポート51を備える。通信ポート51は、たとえば、イーサネットケーブル11を接続可能な端子である。
【0043】
図2に示す例では、中継装置101は、通信ポート51である4つの通信ポート51A,51B,51C,51Dを備える。中継装置101において、通信ポート51A,51B,51C,51Dには、車載ECU202A,202B,202C,202Dがイーサネットケーブル11を介してそれぞれ接続されている。
【0044】
スイッチ部52は、たとえば、複数の通信ポート51にそれぞれ接続される図示しない複数の端子を含む。各端子には、固有のポート番号が割り当てられている。
【0045】
ここでは、通信ポート51A,51B,51C,51Dに接続された各端子のポート番号は、それぞれ#1,#2,#3,#4である。
【0046】
スイッチ部52は、車載ECU202間で送受信されるフレームを中継する。より詳細には、スイッチ部52は、ある車載ECU202から他の車載ECU202を宛先とするフレームを通信ポート51経由で受信すると、受信したフレームを宛先の車載ECU202へ送信する。
【0047】
また、スイッチ部52は、車載ECU202から中継装置101を宛先とするフレームを通信ポート51経由で受信すると、受信したフレームを処理部53へ出力する。
【0048】
また、スイッチ部52は、処理部53から受けたフレームを通信ポート51経由で宛先の車載ECU202へ送信する。
【0049】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおいて伝送されるフレームの一例を示す図である。
【0050】
図3を参照して、フレームは、アドレス、タグ、タイプおよびペイロードのフィールドを有する。
【0051】
アドレスのフィールドには、たとえば、宛先MACアドレスと、送信元MACアドレスとが格納される。タグのフィールドには、たとえば、VLAN-IDが格納される。ペイロードには、宛先IPアドレスおよび各種情報が格納される。
【0052】
ここでは、車載ECU202A,202B,202C,202DのMACアドレスは、それぞれ「MAC-A」,「MAC-B」,「MAC-C」,「MAC-D」である。
【0053】
再び
図2を参照して、記憶部54は、車載ECU202のMACアドレスと通信ポート51との対応関係を示すMACアドレステーブル(以下、「アドレステーブルM」とも称する。)を記憶する。
【0054】
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保持するアドレステーブルの一例を示す図である。
【0055】
図4を参照して、アドレステーブルMでは、MACアドレス「MAC-A」と通信ポート51Aのポート番号「#1」とが対応付けられ、MACアドレス「MAC-B」と通信ポート51Bのポート番号「#2」とが対応付けられ、MACアドレス「MAC-C」と通信ポート51Cのポート番号「#3」とが対応付けられ、MACアドレス「MAC-D」と通信ポート51Dのポート番号「#4」とが対応付けられている。
【0056】
(スリープ状態およびウェイクアップ状態)
中継装置101および車載ECU202は、ウェイクアップ状態からスリープ状態へ遷移し、また、スリープ状態からウェイクアップ状態へ遷移する。中継装置101および車載ECU202は、ウェイクアップ状態において、車載システム301における他の装置と通信を行い、スリープ状態において、車載システム301における他の装置との通信を停止する。ここで、スリープ状態とは、装置の一部の機能の停止、装置への電力供給の停止、または装置におけるクロック周波数の低下等により、ウェイクアップ状態よりも消費電力が小さい状態である。
【0057】
たとえば、中継装置101および車載ECU202の各々において、スリープ状態へ遷移するための条件であるスリープ条件と、ウェイクアップ状態へ遷移するための条件であるウェイクアップ条件とが予め設定されている。
【0058】
たとえば、スリープ条件は、車両1がイグニッションオフになること、および車両1が駐停車すること等である。また、たとえば、ウェイクアップ条件は、車両1がイグニッションオンになること、および車両1が走行を開始すること等である。
【0059】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおけるスリープ処理のシーケンスの一例を示す図である。
図5に示す「装置A」および「装置B」は、中継装置101または車載ECU202である。
【0060】
図5を参照して、まず、装置Aおよび装置Bは、ウェイクアップ状態において(ステップS51およびS52)、AUTOSARに従うNM(Network Management)メッセージが格納されたフレームを車載システム301における各装置へ送信する。具体的には、装置Aおよび装置Bは、死活監視のために、NMメッセージがペイロードに格納されたフレームを各装置へブロードキャストする(ステップS53およびS54)。
【0061】
次に、装置Aは、ウェイクアップ状態において自己のスリープ条件が成立した場合(ステップS55)、NMメッセージの送信を停止する(ステップS56)。
【0062】
また、装置Bは、ウェイクアップ状態において自己のスリープ条件が成立した場合(ステップS57)、NMメッセージの送信を停止する(ステップS58)。
【0063】
次に、装置Aおよび装置Bは、NMメッセージの送信を停止してから所定時間が経過するまでの間に車載システム301における他の装置からNMメッセージを受信しなかった場合、スリープ状態へ遷移する(ステップS59)。
【0064】
このように、NMメッセージを用いて装置Aおよび装置Bの状態をウェイクアップ状態からスリープ状態へ切り替えることにより、装置Aおよび装置Bの消費電力を低減することができる。
【0065】
なお、装置Aおよび装置Bは、スリープ状態において(ステップS59)、自己のウェイクアップ条件が成立した場合、ウェイクアップ状態へ遷移し、NMメッセージの定期的な送信を開始する。また、装置Aおよび装置Bは、スリープ状態において(ステップS59)、車載システム301における他の装置からウェイクアップ要求を受信した場合、ウェイクアップ状態へ遷移する。
【0066】
(判断部)
再び
図2を参照して、中継装置101における判断部61は、中継装置101のスリープ条件の成否、および中継装置101のウェイクアップ条件の成否を判断する。
【0067】
より詳細には、判断部61は、車両1の状態を監視し、監視結果に基づいて、中継装置101のスリープ条件の成否、および中継装置101のウェイクアップ条件の成否を判断する判断処理を行う。判断部61は、たとえば定期的に判断処理を行い、判断結果を状態遷移部62に通知する。
【0068】
(状態遷移部)
状態遷移部62は、中継装置101をスリープ状態へ遷移させる。また、状態遷移部62は、中継装置101をウェイクアップ状態へ遷移させる。
【0069】
ここで、スイッチ部52は、複数の通信ポート51にそれぞれ対応する複数の通信回路を含む。中継装置101がスリープ状態である場合、スイッチ部52におけるすべての通信回路は動作を停止している。中継装置101がウェイクアップ状態である場合、スイッチ部52の複数の通信回路のうち少なくとも1つの通信回路は動作している。以下、スイッチ部52の通信回路が動作を停止している状態を「オフ状態」、当該通信回路が動作している状態を「オン状態」とも称する。
【0070】
より詳細には、状態遷移部62は、中継装置101がウェイクアップ状態であり、かつ判断部61からスリープ条件が成立した旨の通知を受けた場合、中継装置101をスリープ状態へ遷移させる。
【0071】
状態遷移部62は、中継装置101がスリープ状態であり、かつ判断部61からウェイクアップ条件が成立した旨の通知を受けた場合、中継装置101をウェイクアップ状態へ遷移させる。
【0072】
また、状態遷移部62は、車載ECU202からウェイクアップ要求を通信ポート51およびスイッチ部52経由で受信した場合、スリープ状態である中継装置101をウェイクアップ状態へ遷移させる。以下、車載ECU202が中継装置101へ送信するウェイクアップ要求を、「ウェイクアップ要求R1」とも称する。ウェイクアップ要求R1は、第1のウェイクアップ要求の一例である。なお、「第1の」の記載は、優先順位を意味するものではない。
【0073】
より詳細には、車載ECU202は、ウェイクアップ要求R1を、イーサネットケーブル11を介して直接接続された中継装置101へ送信する。一例として、ウェイクアップ要求R1は、ハイレベルのパルス信号である。車載ECU202は、たとえば、OPEN Allianceの規格に従って、当該ハイレベルのパルス信号を中継装置101へ送信する。
【0074】
スイッチ部52は、車載ECU202からウェイクアップ要求R1を通信ポート51経由で受信すると、ウェイクアップ要求R1を受信した旨およびウェイクアップ要求R1を受信した通信ポート51のポート番号を示す受信通知を、状態遷移部62およびスリープ制御部63へ出力する。
【0075】
状態遷移部62は、スイッチ部52から受信通知を受けて、中継装置101をスリープ状態からウェイクアップ状態へ遷移させる。より詳細には、状態遷移部62は、ウェイクアップ要求R1を受信した通信ポート51に対応する通信回路をオフ状態からオン状態へ遷移させる。
【0076】
そして、中継装置101および車載ECU202は、各種情報を含むフレームをやり取りすることにより互いの通信接続を確立する。
【0077】
(スリープ制御部)
スリープ制御部63は、車載ECU202をウェイクアップ状態へ遷移させる制御を行う。
【0078】
より詳細には、たとえば、スリープ制御部63は、車載ECU202がスリープ状態である場合、ハイレベルのパルス信号等であるウェイクアップ要求をスイッチ部52および通信ポート51経由でウェイクアップ対象の当該車載ECU202へ送信する。車載ECU202は、ウェイクアップ要求を受信すると、ウェイクアップ状態へ遷移する。以下、中継装置101が車載ECU202へ送信するウェイクアップ要求を、「ウェイクアップ要求R2」とも称する。ウェイクアップ要求R2は、第2のウェイクアップ要求の一例である。なお、「第2の」の記載は、優先順位を意味するものではない。
【0079】
[課題の説明]
ところで、中継装置101と3つ以上の車載ECU202とを備える車載システム301において、中継装置101および各車載ECU202がスリープ状態である場合が考えられる。この場合、ある車載ECU202が、他の車載ECU202と通信を行う必要が生じたことによりウェイクアップ状態へ遷移すると、ウェイクアップ要求R1を中継装置101へ送信する。ここでは、車載ECU202Aが、車載ECU202Bと通信を行うためにウェイクアップ状態へ遷移し、ウェイクアップ要求R1を中継装置101へ送信する例を説明する。
【0080】
中継装置101は、ウェイクアップ要求R1を受信して、ウェイクアップ状態へ遷移する。しかしながら、ウェイクアップ要求R1は、ハイレベルのパルス信号であることから、車載ECU202Aの通信相手を示す情報を含んでいない。このため、中継装置101は、ウェイクアップ要求R1を受信しても、車載ECU202A以外の車載ECU202B,202C,202Dのうちのいずれの車載ECU202をウェイクアップ状態へ遷移させるべきかを判断することができない。以下、このような課題の詳細について説明する。
【0081】
図6は、比較例に係る車載システムにおけるスリープ制御のシーケンスの一例を示す図である。以下に説明する比較例に係る車載システムは、スリープ制御において上記課題が生じる点で本開示の実施の形態に係る車載システムと相違する。なお、以下に説明する比較例において、車両、車載システムおよび車載システムにおける各装置には、本開示の実施の形態と同一符号が付される。
【0082】
ここでは、比較例に係る車載システム301が、顔認証によってドアロックの解除が可能な車両1に搭載されるシステムであり、車載ECU202Aが顔認証用ECUであり、車載ECU202Bがドアロック用ECUであり、車両1の駐車中において、中継装置101および各車載ECU202はスリープ状態である例を想定する。
【0083】
図6を参照して、まず、中継装置101および車載ECU202A,202B,202C,202Dがスリープ状態である状況において(ステップS1)、車載ECU202Aが、ウェイクアップ状態へ遷移したものとする。ここでは、車載ECU202Aは、顔認証に成功し、ドアロックの解除を車載ECU202Bへ要求する必要が生じたことにより、ウェイクアップ状態へ遷移したものとする(ステップS2)。
【0084】
次に、車載ECU202Aは、ウェイクアップ要求R1を中継装置101へ送信する(ステップS3)。
【0085】
次に、中継装置101は、車載ECU202Aからウェイクアップ要求R1を受信して、ウェイクアップ状態へ遷移する。より詳細には、中継装置101における状態遷移部62は、ウェイクアップ要求R1を受信した通信ポート51Aに対応する通信回路をオフ状態からオン状態へ遷移させる(ステップS4)。
【0086】
次に、中継装置101および車載ECU202Aは、各種情報をやり取りすることにより互いに通信接続を確立する(ステップS5)。
【0087】
次に、中継装置101における状態遷移部62は、通信ポート51A以外の他の通信ポート51B,51C,51Dにそれぞれ対応する通信回路をオフ状態からオン状態へ遷移させる。このように、比較例に係る車載システム301における中継装置101は、車載ECU202Aとの間で通信接続を確立しても、車載ECU202Aの通信相手を示す情報がウェイクアップ要求R1に含まれていないため、車載ECU202Aの通信相手を特定することができない(ステップS6)。
【0088】
次に、中継装置101は、ウェイクアップ要求R2を車載ECU202B,202C,202Dへ送信する(ステップS7およびS8)。
【0089】
次に、車載ECU202B,202C,202Dは、中継装置101からウェイクアップ要求R2を受信して、ウェイクアップ状態へ遷移する(ステップS9およびS10)。
【0090】
次に、中継装置101と車載ECU202B,202C,202Dとは、それぞれ、各種情報をやり取りすることにより互いに通信接続を確立する(ステップS11)。
【0091】
次に、車載ECU202Aおよび202Bは、互いに通信を行う。たとえば、中継装置101は、車載ECU202Aから車載ECU202Bを宛先とするフレームを受信すると、アドレステーブルMを参照し、当該フレームに対応するポート番号として「#2」を特定する。そして、中継装置101は、受信したフレームを、特定したポート番号「#2」に対応する通信ポート51Bから宛先の車載ECU202Bへ送信する(ステップS12)。
【0092】
また、車載ECU202Aの通信相手でない車載ECU202C,202Dは、ウェイクアップ状態への遷移後(ステップS10)、他の車載ECU202と通信しない場合、自己のスリープ条件が成立するとNMメッセージの送信を停止する。そして、車載ECU202C,202Dは、NMメッセージの送信を停止してから所定時間が経過するまでの間に車載システム301における他の装置からNMメッセージを受信しなかった場合、スリープ状態へ遷移する(ステップS13)。
【0093】
このように、比較例に係る車載システム301において、中継装置101は、車載ECU202Aからウェイクアップ要求を受信すると、スリープ状態である他の車載ECU202B,202C,202Dをウェイクアップ状態へ遷移させる。そのため、比較例に係る車載システム301では、車載ECU202Aの通信相手でない車載ECU202C,202Dがウェイクアップ状態へ遷移することにより、余分な電力が消費される。
【0094】
これに対して、本開示の実施の形態に係る中継装置101は、以下のような構成および動作により、このような課題を解決する。
【0095】
[中継装置]
再び
図2を参照して、記憶部54は、通信ポート51と車載ECU202が属するネットワークとの対応関係を示すテーブル(以下、「ネットワークテーブルT」とも称する。)を記憶する。ネットワークテーブルTは、対応情報の一例である。
【0096】
図7は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保持するネットワークテーブルの一例を示す図である。
【0097】
図7を参照して、ネットワークテーブルT1は、通信ポート51とVLANとの対応関係を示す。より詳細には、ネットワークテーブルT1は、通信ポート51のポート番号と車載ECU202のVLAN-IDとの対応関係を示す。
【0098】
上述したように、
図1に示す例では、車載ECU202A,202BのVLAN-IDは「10」であり、車載ECU202C,202DのVLAN-IDは「20」である。そのため、ネットワークテーブルT1では、VLAN-ID「10」とポート番号「#1」,「#2」とが対応付けられ、VLAN-ID「20」とポート番号「#3」,「#4」とが対応付けられている。
【0099】
以下、車載ECU202Aが車載ECU202Bと通信を行うためにウェイクアップ状態へ遷移した場合に、中継装置101が車載ECU202Bのみをウェイクアップ状態へ遷移させる処理について説明する。車載ECU202Aは第1の車載装置の一例であり、車載ECU202Bは第2の車載装置の一例である。
【0100】
図1、
図2および
図7を参照して、スリープ制御部63は、車載ECU202Aからウェイクアップ要求R1を受けて自己の中継装置101がウェイクアップ状態へ遷移した場合、ネットワークテーブルT1に基づいて、車載ECU202A以外の車載ECU202B,202C,202Dの中からウェイクアップ要求R2の送信先を選択する。
【0101】
ここでは、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT1に基づいて、車載ECU202Aが接続される通信ポート51Aに対応するVLANと同じVLANに属する車載ECU202Bを選択する。
【0102】
より詳細には、スリープ制御部63は、スイッチ部52から受けた受信通知の示すポート番号の通信ポート51に対応する通信回路がオフ状態からオン状態へ遷移したと判断する。ここでは、スイッチ部52は、ウェイクアップ要求R1を受信した通信ポート51Aのポート番号「#1」をスリープ制御部63へ通知し、スリープ制御部63は、通信ポート51Aに対応する通信回路がオン状態へ遷移したと判断する。
【0103】
そして、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT1を参照し、スイッチ部52から通知されたポート番号「#1」に対応するVLAN-IDと同じVLAN-IDとして「10」を特定し、VLAN-ID「10」に対応する他のポート番号として「#2」を特定する。これにより、スリープ制御部63は、ポート番号「#2」の通信ポート51Bに接続された車載ECU202Bを、車載ECU202Aの通信相手として特定する。すなわち、スリープ制御部63は、ウェイクアップ要求R2の送信先として、車載ECU202B,202C,202Dの中から車載ECU202Bを選択する。そして、スリープ制御部63は、通信ポート51Bに対応する通信回路をオフ状態からオン状態へ遷移させる。
【0104】
スリープ制御部63は、車載ECU202Bをウェイクアップ状態へ遷移させるためのウェイクアップ要求R2を車載ECU202Bへ送信する。
【0105】
より詳細には、スリープ制御部63は、ウェイクアップ要求R2をスイッチ部52および通信ポート51B経由で車載ECU202Bへ送信する。
【0106】
車載ECU202Bは、中継装置101からウェイクアップ要求R2を受信して、ウェイクアップ状態へ遷移する。
【0107】
車載ECU202Bがウェイクアップ状態へ遷移すると、中継装置101および車載ECU202Bは、各種情報をやり取りすることにより互いに通信接続を確立する。
【0108】
車載ECU202Aは、中継装置101と車載ECU202Bとの通信接続の確立後、定期的または不定期に、車載ECU202B宛てのフレームを中継装置101へ送信する。
【0109】
中継装置101におけるスイッチ部52は、車載ECU202B宛てのフレーム、すなわち宛先MACアドレス「MAC-B」を含むフレームを受信すると、
図4に示すアドレステーブルMを参照し、MACアドレス「MAC-B」に対応するポート番号として「#2」を特定する。そして、中継装置101は、車載ECU202B宛てのフレームを通信ポート51Bから送信する。これにより、車載ECU202Aは、中継装置101を介して車載ECU202Bと通信を行うことができる。
【0110】
たとえば、車載ネットワーク401における中継装置101と各車載ECU202の接続関係が固定されている場合、中継装置101は、予め作成されたネットワークテーブルT1を記憶部54に保持している。なお、中継装置101は、各車載ECU202から受信したフレームのタグのフィールドに格納されているVLAN-IDを取得し、取得したVLAN-IDと当該フレームを受信した通信ポート51のポート番号とに基づいて、ネットワークテーブルT1を作成してもよい。
【0111】
また、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT1に基づいて、車載ECU202A以外の車載ECU202B,202C,202Dの中からウェイクアップ要求R2の送信先となる車載ECU202Bを選択する構成に限定されない。スリープ制御部63は、車載ECU202A以外の車載ECU202B,202C,202Dの一部である複数の車載ECU202を選択してもよい。
【0112】
[動作の流れ]
図8は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおけるスリープ制御のシーケンスの一例を示す図である。
【0113】
図8を参照して、まず、中継装置101および車載ECU202A,202B,202C,202Dがスリープ状態である場合において(ステップS101)、車載ECU202Aが、ウェイクアップ状態へ遷移したとする(ステップS102)。
【0114】
次に、車載ECU202Aは、ウェイクアップ要求R1を中継装置101へ送信する(ステップS103)。
【0115】
次に、中継装置101は、車載ECU202Aからウェイクアップ要求R1を受信して、ウェイクアップ状態へ遷移する。より詳細には、中継装置101における状態遷移部62は、ウェイクアップ要求R1を受信した通信ポート51Aに対応する通信回路をオフ状態からオン状態へ遷移させる(ステップS104)。
【0116】
次に、中継装置101および車載ECU202Aは、各種情報をやり取りすることにより互いに通信接続を確立する(ステップS105)。
【0117】
次に、中継装置101は、記憶部54におけるネットワークテーブルT1を参照し、ウェイクアップ要求R2の送信先として、車載ECU202A以外の車載ECU202B,202C,202Dの中から車載ECU202Bを選択する。具体的には、中継装置101におけるスリープ制御部63は、上述したように、ネットワークテーブルT1に基づいて、車載ECU202B,202C,202Dの中から、車載ECU202Aが接続される通信ポート51Aに対応するVLANと同じVLANに属する車載ECU202Bを選択する。そして、スリープ制御部63は、車載ECU202Bが接続された通信ポート51Bに対応する通信回路をオン状態へ遷移させる(ステップS106)。
【0118】
次に、中継装置101は、ウェイクアップ要求R2を車載ECU202Bへ送信する(ステップS107)。
【0119】
次に、車載ECU202Bは、中継装置101からウェイクアップ要求R2を受信して、ウェイクアップ状態へ遷移する(ステップS108)。
【0120】
次に、中継装置101および車載ECU202Bは、各種情報をやり取りすることにより互いに通信接続を確立する(ステップS109)。
【0121】
次に、車載ECU202Aおよび202Bは、互いに通信を行う。たとえば、中継装置101は、車載ECU202Aから車載ECU202Bを宛先とするフレームを受信すると、アドレステーブルMを参照し、当該フレームに対応するポート番号として「#2」を特定する。そして、中継装置101は、受信したフレームを、特定したポート番号「#2」に対応する通信ポート51Bから宛先の車載ECU202Bへ送信する(ステップS110)。
【0122】
なお、
図8において、車載ECU202Aがウェイクアップ状態へ遷移した場合、車載ECU202C,202Dの一方はスリープ状態であって、他方はウェイクアップ状態であってもよい。この場合でも、中継装置101は、車載ECU202C,202Dのうちのスリープ状態である車載ECU202をウェイクアップ状態へ遷移させないため、当該車載ECU202における電力消費を抑制することができる。
【0123】
<変形例1>
図9は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例1の構成を示す図である。
【0124】
図9を参照して、変形例1では、各車載ECU202のVLAN-IDは「10」である。このように、変形例1では、各車載ECU202のVLAN-IDは同じであるとする。
【0125】
変形例1では、車載ECU202は、AUTOSARに規定されたPN(Partial Network)を構成する。具体的には、複数の車載ECU202は、AUTOSARに従ってネットワークの一例であるPNCを形成する。
図9に示す例では、車載ECU202A,202Bと、車載ECU202C,202Dとは、互いに異なるPNCに属する。車載ECU202は、同じPNCに属する車載ECU202の中から通信相手を選択する。
【0126】
以下の説明において、車載ECU202A,202Bが属するPNCのID、すなわちPN情報は「1」であり、車載ECU202C,202DのPN情報は「2」である。PN情報は、たとえば、NMメッセージに格納されている。
【0127】
図10は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例1の中継装置が保持するネットワークテーブルを示す図である。
【0128】
図2および
図10を参照して、記憶部54は、通信ポート51とPNCとの対応関係を示すネットワークテーブルT2を記憶する。より詳細には、ネットワークテーブルT2は、通信ポート51のポート番号と車載ECU202のPN情報との対応関係を示す。
【0129】
ネットワークテーブルT2では、PN情報「1」とポート番号「#1」,「#2」とが対応付けられ、PN情報「2」とポート番号「#3」,「#4」とが対応付けられている。なお、ネットワークテーブルT2には、各ポート番号に対応するVLAN-ID、すなわちVLAN-ID「10」が示されてもよい。
【0130】
スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT2に基づいて、車載ECU202B,202C,202Dの中から車載ECU202Aが接続される通信ポート51Aに対応するPNCと同じPNCに属する車載ECU202Bを選択する。
【0131】
より詳細には、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT2を参照し、スイッチ部52から通知されたポート番号「#1」に対応するPN情報と同じPN情報として「1」を特定し、PN情報「1」に対応する他のポート番号として「#2」を特定する。これにより、スリープ制御部63は、ポート番号「#2」の通信ポート51Bに接続された車載ECU202Bを、車載ECU202Aの通信相手として特定する。すなわち、スリープ制御部63は、ウェイクアップ要求R2の送信先として、車載ECU202B,202C,202Dの中から車載ECU202Bを選択する。
【0132】
たとえば、車載ネットワーク401における中継装置101と各車載ECU202の接続関係が固定されている場合、中継装置101は、予め作成されたネットワークテーブルT2を記憶部54に保持している。なお、中継装置101は、各車載ECU202から受信したNMメッセージに格納されたPN情報を取得し、取得したPN情報と当該NMメッセージを受信した通信ポート51のポート番号とに基づいて、ネットワークテーブルT2を作成してもよい。
【0133】
<変形例2>
図11は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例2の構成を示す図である。
【0134】
図11を参照して、変形例2では、
図1に示す車載システム301と同様に、車載ECU202A,202Bと、車載ECU202C,202Dとは、互いに異なるVLANに属する。また、変形例2では、変形例1と同様に、車載ECU202A,202Bと、車載ECU202C,202Dとは、互いに異なるPNCに属する。
【0135】
図12は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例2の中継装置が保持するネットワークテーブルを示す図である。
【0136】
図2および
図12を参照して、記憶部54は、通信ポート51とVLANとPNCとの対応関係を示すネットワークテーブルT3を記憶する。より詳細には、ネットワークテーブルT3は、通信ポート51のポート番号と車載ECU202のVLAN-IDと車載ECU202のPN情報との対応関係を示す。ネットワークテーブルT3では、同じVLANに属する各車載ECU202のPN情報は同じである。
【0137】
より詳細には、ネットワークテーブルT3では、VLAN-ID「10」およびPN情報「1」がポート番号「#1」,「#2」に対応付けられ、VLAN-ID「20」およびPN情報「2」がポート番号「#3」,「#4」に対応付けられている。
【0138】
スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT3に基づいて、車載ECU202Aが接続される通信ポート51Aに対応するVLANと同じVLANに属する車載ECU202よりも、通信ポート51Aに対応するPNCと同じPNCに属する車載ECU202を優先的に選択する。
【0139】
より詳細には、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT3を参照し、スイッチ部52から通知されたポート番号「#1」に対応するPN情報と同じPN情報として「1」を特定し、PN情報「1」に対応する他のポート番号として「#2」を特定する。これにより、スリープ制御部63は、ポート番号「#2」の通信ポート51Bに接続された車載ECU202Bを、車載ECU202Aの通信相手として特定する。すなわち、スリープ制御部63は、ウェイクアップ要求R2の送信先として、車載ECU202B,202C,202Dの中から車載ECU202Bを選択する。
【0140】
<変形例3>
図13は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例3の構成を示す図である。
【0141】
図13を参照して、変形例3では、車載ECU202A,202Cと、車載ECU202B,202Dとは、互いに異なるVLANに属する。
図13に示す例では、車載ECU202A,202CのVLAN-IDは「10」であり、車載ECU202B,202DのVLAN-IDは「20」である。また、変形例3では、変形例1および2と同様に、車載ECU202A,202Bと、車載ECU202C,202Dとは、互いに異なるPNCに属する。
【0142】
図14は、本開示の実施の形態に係る車載システムの変形例3の中継装置が保持するネットワークテーブルを示す図である。
【0143】
図2および
図14を参照して、記憶部54は、通信ポート51とVLANとPNCとの対応関係を示すネットワークテーブルT4を記憶する。より詳細には、ネットワークテーブルT4は、通信ポート51のポート番号と車載ECU202のVLAN-IDと車載ECU202のPN情報との対応関係を示す。ネットワークテーブルT4では、同じVLANに属する各車載ECU202のPN情報は互いに異なる。
【0144】
より詳細には、ネットワークテーブルT4では、VLAN-ID「10」およびPN情報「1」がポート番号「#1」に対応付けられ、VLAN-ID「20」およびPN情報「1」がポート番号「#2」に対応付けられ、VLAN-ID「10」およびPN情報「2」がポート番号「#3」に対応付けられ、VLAN-ID「20」およびPN情報「2」が「#4」に対応付けられている。
【0145】
スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT4に基づいて、車載ECU202Aが接続される通信ポート51Aに対応するVLANと同じVLANに属する車載ECU202Bよりも、通信ポート51Aに対応するPNCと同じPNCに属する車載ECU202Cを優先的に選択する。
【0146】
より詳細には、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT4を参照し、スイッチ部52から通知されたポート番号「#1」に対応するVLAN-IDと同じVLAN-IDとして「10」を特定し、VLAN-ID「10」に対応する他のポート番号として「#2」を特定する。また、スリープ制御部63は、ネットワークテーブルT4を参照し、スイッチ部52から通知されたポート番号「#1」に対応するPN情報と同じPN情報として「1」を特定し、PN情報「1」に対応する他のポート番号として「#3」を特定する。
【0147】
そして、スリープ制御部63は、ウェイクアップ要求R2の送信先として、ポート番号「#2」の通信ポート51Bに接続された車載ECU202Bよりも、ポート番号「#3」の通信ポート51Cに接続された車載ECU202Cを優先的に選択する。
【0148】
なお、ネットワークテーブルTは、上述したネットワークテーブルT1,T2,T3,T4に限定されない。ネットワークテーブルTは、物理ポートのポート番号である通信ポート51のポート番号と、論理ポートの番号との対応関係を示すテーブルであってもよい。
【0149】
たとえば、車載ECU202Aが接続される通信ポート51Aおよび車載ECU202Bが接続される通信ポート51Bに同じ論理ポートが割り当てられており、車載ECU202Aからウェイクアップ要求R1を中継装置101へ送信した場合、中継装置101におけるスリープ制御部63は、ウェイクアップ要求R2の送信先として、車載ECU202A以外の車載ECU202B,202C,202Dの中から車載ECU202Bを選択する。
【0150】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0151】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN (Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0152】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
3つ以上の車載装置を備える車載システムにおいて用いられる中継装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記3つ以上の車載装置のうちの第1の車載装置から第1のウェイクアップ要求を受信した場合、スリープ状態である前記中継装置をウェイクアップ状態へ遷移させ、
前記第1の車載装置以外の前記車載装置の中から第2の車載装置を選択し、前記第2の車載装置を前記ウェイクアップ状態へ遷移させるための第2のウェイクアップ要求を前記第2の車載装置へ送信する、中継装置。
【符号の説明】
【0153】
1 車両
11 イーサネットケーブル
51,51A,51B,51C,51D 通信ポート
52 スイッチ部
53 処理部
54 記憶部
61 判断部
62 状態遷移部
63 スリープ制御部
101 中継装置
202,202A,202B,202C,202D 車載ECU
301 車載システム
401 車載ネットワーク