(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022150
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】埋設環境分類マップ作成装置、埋設環境特定装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設環境特定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20240208BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01N33/24 B
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125516
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勇太
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA06
2G050BA02
2G050BA03
(57)【要約】
【課題】より正確な埋設管の腐食予測を可能にする埋設環境分類マップ作成装置を提供する。
【解決手段】埋設環境分類マップ作成装置(第2埋設環境分類マップ作成部63)は、地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定する第1土壌特定部63aと、地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定する第2土壌特定部63bとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定する第1土壌特定部と、
前記地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定する第2土壌特定部とを備える、埋設環境分類マップ作成装置。
【請求項2】
埋設管の位置を含む埋設管データを読み出す埋設管データ読出部と、
請求項1に記載の前記埋設環境分類マップ作成装置によって作成された埋設環境分類マップに、前記埋設管データを適用して、前記埋設管の埋設環境を特定する埋設環境特定部とを備える、埋設環境特定装置。
【請求項3】
地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定するステップと、
前記地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定するステップとを備える、埋設環境分類マップ作成方法。
【請求項4】
埋設管の位置を含む埋設管データを読み出すステップと、
請求項3に記載の前記埋設環境分類マップ作成方法によって作成された埋設環境分類マップに、前記埋設管データを適用して、前記埋設管の埋設環境を特定するステップとを備える、埋設環境特定方法。
【請求項5】
請求項3に記載の前記埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサに実行させる、プログラム。
【請求項6】
請求項4に記載の前記埋設環境特定方法の各ステップをプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋設環境分類マップ作成装置、埋設環境特定装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設環境特定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水道管のような管が、土壌中に埋設されている。管を長期間使用している間に、管は腐食する。特開2007-107882号公報(特許文献1)は、埋設管の腐食予測方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、より正確な埋設管の腐食予測を可能にする埋設環境分類マップ作成装置、埋設環境特定装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設環境特定方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の埋設環境分類マップ作成装置は、地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定する第1土壌特定部と、地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定する第2土壌特定部とを備える。
【0006】
本開示の埋設環境特定装置は、埋設管の位置を含む埋設管データを読み出す埋設管データ読出部と、本開示の埋設環境分類マップ作成装置によって作成された埋設環境分類マップに、埋設管データを適用して、埋設管の埋設環境を特定する埋設環境特定部とを備える。
【0007】
本開示の埋設環境分類マップ作成方法は、地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定するステップと、地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定するステップとを備える。
【0008】
本開示の埋設環境特定方法は、埋設管の位置を含む埋設管データを読み出すステップと、本開示の埋設環境分類マップ作成方法によって作成された埋設環境分類マップに、埋設管データを適用して、埋設管の埋設環境を特定するステップとを備える。
【0009】
本開示のプログラムは、本開示の埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【0010】
本開示のプログラムは、本開示の埋設環境特定方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の埋設環境分類マップ作成装置、埋設環境特定装置、埋設環境分類マップ作成方法、埋設環境特定方法及びプログラムによれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態の漏水事故率予測装置のハードウェア構成を示す概略図である。
【
図2】実施の形態の漏水事故率予測装置の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図3】実施の形態の漏水事故率予測装置の記憶部の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図4】実施の形態の地図データベース部の機能的構成を説明するブロック図である。
【
図5】実施の形態の埋設管データに含まれる管路マップの例を示す図である。
【
図6】実施の形態の埋設管データに含まれる埋設管属性データのデータ構造の例を示す図である。
【
図7】公称管厚データベース部のデータ構造を示す図である。
【
図8】埋設環境分類暫定マップの例を示す図である。
【
図9】埋設環境と腐食速度との間の関係を表す箱ひげ図を示す図である。
【
図10】第1地盤情報と埋設環境との間の対応関係を示す図である。
【
図11】地下水の比抵抗と埋設管の腐食状況との間の関係を表す箱ひげ図を示す図である。
【
図12】砂礫系土壌における地下水の比抵抗と海岸線からの距離との間の関係を表す箱ひげ図を示す図である。
【
図13】表層地質図(小分類)において、砂礫系土壌と見なすことができる土壌と非砂礫系土壌と見なすことができる土壌の例を示す図である。
【
図14】海岸線から5km以下にある砂礫系土壌における地下水の比抵抗と標高との間の関係を表す箱ひげ図を示す図である。
【
図16】実施の形態の前処理済埋設管データのデータ構造を示す図である。
【
図17】実施の形態の漏水事故率予測結果の例を示す図である。
【
図18】実施の形態の漏水事故率予測結果の別の例を示す図である。
【
図19】実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法のフローチャートを示す図である。
【
図20】実施の形態の埋設環境分類マップ作成ステップのフローチャートを示す図である。
【
図21】実施の形態の漏水事故率の算出方法のフローチャートを示す図である。
【
図22】実施の形態の前処理済埋設管データを作成するステップのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
図1から
図3を参照して、埋設管の腐食予測装置の一例として、実施の形態の漏水事故率予測装置1を説明する。埋設管の漏水事故率は、埋設管の腐食予測の指標の一例である。
【0015】
<ハードウエア構成>
【0016】
図1を参照して、漏水事故率予測装置1のハードウェア構成を説明する。漏水事故率予測装置1は、入力装置11と、プロセッサ12と、メモリ13と、ディスプレイ14と、ネットワークコントローラ16と、記憶媒体ドライブ17と、ストレージ19とを含む。
【0017】
入力装置11は、各種の入力操作を受け付ける。入力装置11は、例えば、キーボード、マウスまたはタッチパネルである。
【0018】
ディスプレイ14は、漏水事故率予測装置1における処理に必要な情報などを表示する。ディスプレイ14は、例えば、後述する漏水事故率予測結果50(
図17または
図18を参照)を表示する。ディスプレイ14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0019】
プロセッサ12は、後述するプログラムを実行することによって、漏水事故率予測装置1の機能の実現に必要な処理を実行する。プロセッサ12は、例えば、CPUまたはGPUなどで構成される。
【0020】
メモリ13は、プロセッサ12がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ13は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスである。
【0021】
ネットワークコントローラ16は、通信ネットワーク(図示せず)を介して、外部装置(図示せず)との間でプログラムまたはデータを送受信する。例えば、ネットワークコントローラ16は、通信ネットワークを介して、漏水事故率予測結果50(
図17または
図18を参照)を、外部装置に送信する。ネットワークコントローラ16は、通信ネットワークを介して、埋設管データ30(
図3、
図5及び
図6を参照)を、顧客から受信してもよい。ネットワークコントローラ16は、例えば、イーサネット(登録商標)、無線LANまたはBluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応している。
【0022】
記憶媒体ドライブ17は、記憶媒体18に格納されているプログラムまたはデータを読み出す装置である。記憶媒体ドライブ17は、さらに、記憶媒体18にプログラムまたはデータを書き込む装置であってもよい。記憶媒体18は、非一過的(non-transitory)な記憶媒体であり、プログラムまたはデータを不揮発的に格納する。記憶媒体18は、例えば、光学ディスク(例えば、CD-ROMまたはDVD-ROM)などの光学記憶媒体、フラッシュメモリまたはUSBメモリなどの半導体記憶媒体、ハードディスク、FD(Floppy Disk)もしくはストレージテープなどの磁気記憶媒体、または、MO(Magneto-Optical)ディスクなどの光磁気記憶媒体である。
【0023】
ストレージ19は、例えば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスである。ストレージ19は、埋設管データ30(
図5及び
図6を参照)、地盤情報マップ(
図4に示される第1地盤情報マップ34及び第2地盤情報マップ35)、埋設環境分類暫定マップ36(
図8を参照)、埋設環境分類マップ38(
図15を参照)、公称管厚データ33(
図7を参照)、前処理済埋設管データ40(
図16を参照)、漏水事故率予測モデル42(
図3を参照)、埋設管の漏水事故率、及び、プロセッサ12において実行されるプログラムなどを格納する。このプログラムは、埋設環境分類マップ作成プログラム47(
図3を参照)と、漏水事故率予測プログラム48(
図3を参照)とを含む。
【0024】
埋設環境分類マップ作成プログラム47は、一般に入手可能な地盤情報マップ(
図4に示される第1地盤情報マップ34及び第2地盤情報マップ35)から、埋設環境分類マップ38(
図15を参照)を作成するためのプログラムである。漏水事故率予測プログラム48は、埋設管データ30から、埋設管の漏水事故率を算出するためのプログラムである。
【0025】
埋設環境分類マップ作成プログラム47及び漏水事故率予測プログラム48のような、漏水事故率予測装置1の機能を実現するためのプログラムは、非一過的な記憶媒体18に格納されて流通し、ストレージ19にインストールされてもよい。埋設環境分類マップ作成プログラム47及び漏水事故率予測プログラム48のような、漏水事故率予測装置1の機能を実現するためのプログラムは、インターネットまたはイントラネットを介して、漏水事故率予測装置1にダウンロードされてもよい。
【0026】
本実施の形態では、汎用コンピュータ(プロセッサ12)が、プログラムを実行することによって、漏水事故率予測装置1の機能を実現する例を示す。漏水事故率予測装置1の機能の全部または一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)のような集積回路を用いて実現されてもよい。
【0027】
<機能構成>
【0028】
図2から
図4を参照して、漏水事故率予測装置1の機能構成の例を説明する。
図2を参照して、漏水事故率予測装置1は、記憶部20と、埋設管データ受付部60と、埋設環境分類マップ作成部61と、埋設管データ前処理部64と、漏水事故率算出部66と、漏水事故率予測結果出力部67とを含む。
【0029】
<記憶部20>
【0030】
記憶部20は、ストレージ19(
図1を参照)または記憶媒体18(
図1を参照)によって実現される。
図3に示されるように、記憶部20は、埋設管データ記憶部21と、公称管厚データベース部22と、地図データベース部23と、埋設環境分類マップ記憶部24と、前処理済埋設管データ記憶部25と、漏水事故率予測モデル記憶部26と、漏水事故率記憶部27と、プログラム記憶部28とを含む。
【0031】
図3を参照して、埋設管データ記憶部21には、埋設管データ30が記憶されている。埋設管データ30は、顧客から受け付けた埋設管のデータである。埋設管は、例えば、水道管である。埋設管は、土壌中に埋設されている。埋設管データ30は、例えば、管路マップ31(
図5を参照)と、埋設管属性データ32(
図6を参照)とを含む。
【0032】
図5に示されるように、管路マップ31は、埋設管の管路IDと、管の埋設場所(位置)とを含む。管路マップ31では、埋設管の管路IDと管の埋設場所とが互いに対応付けられており、埋設管の管路ID毎に、管の埋設場所が地図に表示されている。
【0033】
図6を参照して、埋設管属性データ32は、例えば、埋設管の管路ID、布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び管路長を含む。埋設管属性データ32では、管路ID、布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び管路長は、互いに対応付けられている。埋設管の布設年は、埋設管が布設(埋設)された年である。接合形式として、A形、K形、T形またはNS形等を例示することができる。管厚の種類として、1種、2種または3種等を例示することができる。管路長は、埋設管の長さである。
【0034】
図3を参照して、公称管厚データベース部22には、公称管厚データ33(
図7を参照)が記憶されている。公称管厚データ33は、例えば、管の布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び公称管厚を含む。公称管厚データ33では、管の布設年、呼び径、接合形式、管厚の種類及び公称管厚は互いに対応付けられている。管の公称管厚は、管の規格管厚である。
【0035】
図3及び
図4を参照して、地図データベース部23には、第1地盤情報マップ34と第2地盤情報マップ35とが記憶されている。第1地盤情報マップ34は、例えば、表層地質図(大分類、小分類)34aと、地形分類図(大分類、小分類)34bとを含む。表層地質図(大分類、小分類)34a及び地形分類図(大分類、小分類)34bは、国土交通省などの公的機関などから提供されており、一般に入手可能である。第2地盤情報マップ35は、例えば、表層地質図(小分類)35aと、海岸線地
図35bと、標高地
図35cとを含む。表層地質図(小分類)35aと海岸線地
図35bと標高地
図35cとは、国土交通省などの公的機関などから提供されており、一般に入手可能である。表層地質図(小分類)35aの分類は、表層地質図(大分類、小分類)34aの小分類に該当する。
【0036】
図3を参照して、埋設環境分類マップ記憶部24には、埋設環境分類暫定マップ36(
図8を参照)と埋設環境分類マップ38(
図15を参照)とが記憶されている。埋設環境分類マップ38は、例えば、埋設環境A,B,C,Dの位置を示す地図である。
【0037】
埋設環境A-Dは、管が埋設されている土壌の分類である。埋設環境分類暫定マップ36及び埋設環境分類マップ38では、管が埋設されている土壌は、土壌の種類及び土壌比抵抗などに応じて、埋設環境A-Dの四つの埋設環境に分類されている。埋設環境Aは、1500Ω・cm未満の土壌比抵抗を有する土壌または埋設管に対して当該土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Bは、1500Ω・cm以上の土壌比抵抗を有する粘土系土壌または埋設管に対して当該粘土系土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Cは、1500Ω・cm以上の土壌比抵抗を有するシルト系土壌または埋設管に対して当該シルト系土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Dは、1500Ω・cm以上の土壌比抵抗を有する砂系土壌または埋設管に対して当該砂系土壌と等価な腐食性を有する土壌を表す。埋設環境Aは、埋設環境A-Dのうち、埋設管に対して最も高い腐食性を有する。
【0038】
以下の二つの理由により、管が埋設されている土壌は、埋設環境A-Dの四つの埋設環境に分類されている。第一の理由は、本発明者は、日本全国の約6000地点における管が埋設されている土壌と管の腐食状況との関係に関する調査データから、埋設環境A-Dと管の腐食速度との間に統計的に有意な相関があることを発見したからである(
図9を参照)。第二の理由は、四つの埋設環境A-Dを有する調査データの数は、調査データの総数の大部分(80%以上)を占めているからである。
【0039】
図3及び
図8を参照して、埋設環境分類暫定マップ36は、例えば、第1地盤情報マップ34から作成される。本発明者は、埋設管の腐食に関して、表層地質図(大分類、小分類)34a上の分類と地形分類図(大分類、小分類)34b上の分類との組み合わせ(
図10を参照)と埋設環境A-Dとの間に統計的に有意な相関があることを発見した。
図10に示されるように、表層地質図(大分類、小分類)34a上の分類と地形分類図(大分類、小分類)34b上の分類との組み合わせによって、管が埋設されている土壌を埋設環境A-Dの四つに分類する。こうして、埋設環境分類暫定マップ36は、作成される。
【0040】
図3及び
図15を参照して、埋設環境分類マップ38は、埋設環境分類暫定マップ36と、第2地盤情報マップ35とから作成される。
【0041】
本発明者は、海岸線を有するある自治体の調査データを分析した。本発明者は、管が埋設されている土壌に含まれる地下水の比抵抗と当該管の腐食状況との間の関係に統計的に有意な相関があることを発見した(
図11を参照)。具体的には、本発明者は、地下水の比抵抗が低いほど、管の腐食深さが大きくなることを発見した。
図11において、埋設管の腐食の程度が大きいことは埋設管の腐食深さが2mm以上であることを表し、埋設管の腐食の程度が中くらいであることは埋設管の腐食深さが0mmより大きくかつ2mm未満であることを表し、埋設管の腐食の程度が小さいことは埋設管の腐食深さが0mmであることを表す。
【0042】
図12を参照して、本発明者は、上記自治体の調査データのうち、表層地質図(小分類)35a(
図4を参照)において砂礫系土壌と見なすことができる土壌に含まれる地下水の比抵抗、当該土壌に埋設されている管の埋設場所、及び、海岸線地
図35b(
図4を参照)から、表層地質図(小分類)35aにおいて砂礫系土壌と見なすことができる土壌では、地下水の比抵抗と海岸線から管の埋設場所までの距離との間の関係に統計的に有意な相関があることを発見した(
図12を参照)。例えば、本発明者は、海岸線から5km以下の距離にある砂礫系土壌に含まれる地下水の比抵抗は、海岸線から5kmより大きい距離にある砂礫系土壌に含まれる地下水の比抵抗よりも、統計的に有意に小さいことを発見した。その第一の理由は、管が埋設されている土壌が砂礫系土壌と見なすことができる場合には、当該土壌は地下水を通しやすいためであると考えられる。その第二の理由は、管が埋設されている土壌が海岸線に近いほど、当該土壌に含まれる地下水は海水に含まれる塩分の影響をより強く受けるためであると考えられる。
【0043】
図13に示されるように、表層地質図(小分類)35aにおいて砂礫系土壌と見なすことができる土壌として、表層地質図(小分類)35aにおける砂、砂(砂丘砂)または砂礫堆積物などを例示することができる。これに対し、表層地質図(小分類)35aにおいて非砂礫系土壌と見なすことができる土壌として、表層地質図(小分類)35aにおける砂岩・頁岩互層、礫・砂・泥、花崗岩質岩石または凝灰質角礫岩などを例示することができる。
【0044】
本発明者は、上記自治体の調査データのうち、海岸線から5km以下の距離にある砂礫系土壌に埋設されている管の調査データ(以下、「海岸近傍調査データ」という。)をさらに分析した。
図14に示されるように、海岸近傍調査データのうち、表層地質図(小分類)35a(
図4を参照)において砂礫系土壌と見なすことができる土壌に含まれる地下水の比抵抗、当該土壌に埋設されている管の埋設場所、及び、標高地
図35c(
図4を参照)から、管が埋設されている土壌が、表層地質図(小分類)35aにおいて砂礫系土壌と見なすことができ、管の埋設場所が海岸線から5km以下の距離にあり、かつ、管の埋設場所における土壌の標高が3m以下である場合に、管の埋設場所における地下水の比抵抗が統計的に有意に小さくなることを発見した。その理由は、管の埋設場所における土壌の標高が低いほど、地下水が管に近づくためであると考えられる。
【0045】
そこで、埋設環境分類暫定マップ36を第2地盤情報マップ35に基づいて修正することによって、埋設環境分類マップ38を作成した。具体的には、埋設環境分類暫定マップ36及び表層地質図(小分類)35a(
図4を参照)を参照して、埋設環境分類暫定マップ36のうち、地下水を通しやすい土壌(地下水透過性土壌)を特定する。地下水透過性土壌は、例えば、表層地質図(大分類、小分類)34a上の分類と地形分類図(大分類、小分類)34b上の分類との組み合わせ(
図10を参照)にかかわらず、表層地質図(小分類)35aにおいて砂礫系土壌と見なすことができる土壌である。海岸線地
図35b及び標高地
図35cを参照して、地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内にある高腐食性土壌を特定する。高腐食性土壌は、例えば、地下水透過性土壌のうち、海岸線からの距離が5km以下であり、かつ、標高が3m以下である土壌である。埋設環境分類暫定マップ36のうち高腐食性土壌を、埋設環境分類暫定マップ36における埋設環境にかかわらず、埋設環境A-Dのうち管に対して最も高い腐食性を有する埋設環境Aに特定する。こうして、埋設環境分類マップ38が作成される。
【0046】
図3及び
図16を参照して、前処理済埋設管データ記憶部25には、前処理済埋設管データ40が記憶されている。前処理済埋設管データ40は、埋設管データ前処理部64(
図2を参照)によって埋設管データ30(
図3、
図5及び
図6)を処理することによって得られる。前処理済埋設管データ40は、例えば、埋設管の管路ID、埋設環境分類マップ38における埋設環境、埋設期間及び公称管厚を含む。埋設期間は、埋設管が埋設されている期間である。
【0047】
図3を参照して、漏水事故率予測モデル記憶部26には、複数の埋設環境に応じて互いに異なる複数の漏水事故率予測モデル42が記憶されている。漏水事故率予測モデル42は、例えば、埋設環境A用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境B用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境C用の漏水事故率予測モデルと、埋設環境D用の漏水事故率予測モデルとを含む。複数の漏水事故率予測モデル42は、特に限定されないが、例えば、特開2021-56224号公報に開示された漏水事故率予測モデルであってもよいし、公益財団法人水道技術研究センターによって提供される埋設管の漏水事故率推定式であってもよい。
【0048】
公益財団法人水道技術研究センターによって提供される埋設管の漏水事故率推定式は、以下の式(1)によって与えられる。yは管の漏水事故率(件/km/年)を表し、C1は管の仕様に関する補正係数を表し、C2は管の口径に関する補正係数を表し、C3は管が埋設されている地盤条件に関する補正係数を表し、f(T)は管種別の標準事故率曲線を表す。f(T)は、以下の式(2)によって与えられる。Tは管の埋設期間を表し、係数a及び係数bは経年時の漏水事故率の上昇程度を表す管種別の係数を表す。
y=C1・C2・C3・f(T) (1)
f(T)=a・Tb (2)
【0049】
図3を参照して、漏水事故率記憶部27は、漏水事故率算出部66(
図2を参照)によって算出された埋設管の漏水事故率を記憶している。
図18に示されるように、埋設管の漏水事故率は、埋設管の管路IDに対応付けられて、漏水事故率記憶部27に記憶されている。
【0050】
図3を参照して、プログラム記憶部28には、漏水事故率予測装置1の機能を実現するためのプログラム(例えば、埋設環境分類マップ作成プログラム47及び漏水事故率予測プログラム48)が記憶されている。
【0051】
<埋設管データ受付部60>
【0052】
図2を参照して、埋設管データ受付部60は、顧客から、埋設管データ30(
図3、
図5及び
図6を参照)を受け付ける。埋設管データ30は、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)に記憶される。埋設管データ30は、顧客から提供される記憶媒体18(
図1を参照)に格納されてもよい。埋設管データ30は、通信ネットワークを介して、顧客から受信してもよい。埋設管データ30は、予めストレージ19(
図1を参照)に格納されてもよい。
【0053】
<埋設環境分類マップ作成部61>
【0054】
埋設環境分類マップ作成部61は、第1埋設環境分類マップ作成部62と、第2埋設環境分類マップ作成部63とを含む。
【0055】
第1埋設環境分類マップ作成部62は、第1地盤情報マップ34(
図4を参照)から、埋設環境分類暫定マップ36(
図3及び
図8を参照)を作成する。第1地盤情報マップ34は、例えば、表層地質図(大分類、小分類)34aと、地形分類図(大分類、小分類)34bとを含む。
【0056】
具体的には、第1埋設環境分類マップ作成部62は、地図データベース部23から第1地盤情報マップ34を読み出す。第1埋設環境分類マップ作成部62は、表層地質図(大分類、小分類)34a上の分類と地形分類図(大分類、小分類)34b上の分類との組み合わせによって、管が埋設されている土壌を埋設環境A-Dの四つに分類する。こうして、第1埋設環境分類マップ作成部62は、埋設環境分類暫定マップ36を作成する。第1埋設環境分類マップ作成部62は、埋設環境分類暫定マップ36を、埋設環境分類マップ記憶部24(
図3を参照)に出力する。
【0057】
第2埋設環境分類マップ作成部63は、埋設環境分類暫定マップ36と、第2地盤情報マップ35(
図4を参照)とから、埋設環境分類マップ38を作成する。第2埋設環境分類マップ作成部63は、第1土壌特定部63aと、第2土壌特定部63bとを含む。第2地盤情報マップ35は、例えば、表層地質図(小分類)35aと、海岸線地
図35bと、標高地
図35cとを含む。
【0058】
具体的には、第1土壌特定部63aは、埋設環境分類マップ記憶部24から埋設環境分類暫定マップ36を読み出すとともに、地図データベース部23から表層地質図(小分類)35a(
図4を参照)を読み出す。第1土壌特定部63aは、埋設環境分類暫定マップ36のうち、地下水を通しやすい土壌(地下水透過性土壌)を特定する。地下水透過性土壌は、例えば、埋設環境分類暫定マップ36のうち、表層地質図(小分類)35aにおいて砂礫系土壌と見なすことができる土壌である。
【0059】
第2土壌特定部63bは、地図データベース部23から海岸線地
図35b及び標高地
図35cを読み出す。第2土壌特定部63bは、第1土壌特定部63aによって特定された地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内にある高腐食性土壌を特定する。例えば、第2土壌特定部63bは、地下水透過性土壌のうち、海岸線からの距離が5km以下であり、かつ、標高が3m以下である土壌を、高腐食性土壌として特定する。第2土壌特定部63bは、埋設環境分類暫定マップ36のうち高腐食性土壌を、埋設環境分類暫定マップ36における埋設環境にかかわらず、埋設環境A-Dのうち管に対して最も高い腐食性を有する埋設環境Aに特定する。こうして、第2埋設環境分類マップ作成部63は、埋設環境分類マップ38を作成する。第2埋設環境分類マップ作成部63は、埋設環境分類マップ38を、埋設環境分類マップ記憶部24(
図3を参照)に出力する。
【0060】
<埋設管データ前処理部64>
【0061】
図2を参照して、埋設管データ前処理部64は、埋設管データ30(
図3、
図5及び
図6を参照)から前処理済埋設管データ40(
図16を参照)を作成する。埋設管データ前処理部64は、埋設管データ読出部64aと、埋設期間算出部64bと、公称管厚特定部64cと、埋設環境特定部64dと、前処理済埋設管データ作成部64eとを含む。
【0062】
具体的には、埋設管データ読出部64aは、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)から、埋設管データ30を読み出す。埋設管データ30は、例えば、管路マップ31(
図5を参照)と、埋設管属性データ32(
図3及び
図6を参照)とを含む。
【0063】
埋設期間算出部64bは、管路ID毎に埋設管の埋設期間を算出する。例えば、現在年(埋設管の漏水事故率の予測を実行する年)における埋設管の漏水事故率の予測結果を得る場合には、埋設期間算出部64bは、記憶部20に記憶されている現在年と埋設管属性データ32の布設年(
図6を参照)との間の差を、埋設管の埋設期間(
図16を参照)として算出する。将来年における埋設管の漏水事故率の予測結果を得る場合には、埋設期間算出部64bは、入力装置11(
図1を参照)によって受け付けられかつ記憶部20に記憶されている将来年と埋設管属性データ32の布設年(
図6を参照)との間の差を、埋設管の埋設期間(
図16を参照)として算出する。
【0064】
公称管厚特定部64cは、公称管厚データベース部22(
図3を参照)から、公称管厚データ33(
図7を参照)を読み出す。公称管厚特定部64cは、埋設管属性データ32の布設年、呼び径、接合形式及び管厚の種類(
図6を参照)と公称管厚データ33とを参照して、管路ID毎に埋設管の公称管厚を特定する。
【0065】
埋設環境特定部64dは、埋設環境分類マップ記憶部24(
図3を参照)から、埋設環境分類マップ38(
図15を参照)を読み出す。埋設環境特定部64dは、管路マップ31と埋設環境分類マップ38とを参照して、管路ID毎に埋設管の埋設環境を特定する。前処理済埋設管データ作成部64eは、管路ID毎に得られた埋設管の埋設期間、公称管厚及び埋設環境を組み合わせて、前処理済埋設管データ40(
図16を参照)を作成する。埋設管データ前処理部64は、前処理済埋設管データ40を前処理済埋設管データ記憶部25(
図3を参照)に出力する。
【0066】
<漏水事故率算出部66>
【0067】
図2及び
図3を参照して、漏水事故率算出部66は、前処理済埋設管データ40を、漏水事故率予測モデル記憶部26に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル42のいずれかに適用して、管路ID毎に、埋設管の漏水事故率を算出する。
【0068】
具体的には、漏水事故率算出部66は、前処理済埋設管データ記憶部25から、前処理済埋設管データ40を読み出す。漏水事故率算出部66は、前処理済埋設管データ40から、管路ID毎に埋設環境を読み出す。漏水事故率算出部66は、漏水事故率予測モデル記憶部26に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル42のうち、読み出された埋設環境用の漏水事故率予測モデル42を、漏水事故率予測モデル記憶部26(
図3を参照)から読み出す。漏水事故率算出部66は、読み出された漏水事故率予測モデル42に、管路ID毎に埋設期間と公称管厚とを入力して、管路ID毎に埋設管の漏水事故率を算出する。埋設管の漏水事故率は、単位時間(例えば、1年)かつ単位距離(例えば、1km)当たりの埋設管の漏水事故件数である。漏水事故率算出部66は、管路ID毎の埋設管の漏水事故率を、漏水事故率記憶部27(
図3を参照)に出力する。
【0069】
<漏水事故率予測結果出力部67>
【0070】
図2を参照して、漏水事故率予測結果出力部67は、埋設管の漏水事故率予測結果50を、
図1に示されるディスプレイ14、記憶媒体18またはストレージ19の少なくとも一つに出力する。漏水事故率予測結果50は、例えば、漏水事故率予測マップ51(
図17を参照)であってもよいし、漏水事故率予測テーブル52(
図18を参照)であってもよい。
【0071】
漏水事故率予測結果出力部67は、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)から、管路マップ31(
図5を参照)を読み出す。漏水事故率予測結果出力部67は、漏水事故率記憶部27から、管路IDと埋設管の漏水事故率とを読み出す。漏水事故率予測結果出力部67は、管路マップ31に管路ID毎の埋設管の漏水事故率を反映させて、漏水事故率予測マップ51を作成する。漏水事故率予測マップ51では、管路ID毎に、埋設管の位置と漏水事故確率とが地図上に表示されている。
【0072】
漏水事故率予測結果出力部67は、管路IDと漏水事故確率とを互いに対応付けて、漏水事故率予測テーブル52を作成する。漏水事故率予測テーブル52では、埋設管の管路IDと漏水事故率とが互いに対応付けられている。
【0073】
<埋設環境分類マップ作成方法>
【0074】
図19及び
図20を参照して、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法を説明する。本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法は、埋設環境分類マップ作成部61(
図2を参照)によって実行される。本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法は、埋設環境分類暫定マップ36を作成するステップ(ステップS1)と、埋設環境分類マップを作成するステップ(ステップS2)とを含む。
【0075】
埋設環境分類暫定マップ36を作成するステップ(ステップS1)は、第1埋設環境分類マップ作成部62(
図2を参照)によって実行される。ステップS1では、第1埋設環境分類マップ作成部62は、第1地盤情報マップ34(
図4を参照)から、埋設環境分類暫定マップ36(
図3及び
図8を参照)を作成する。第1地盤情報マップ34は、例えば、表層地質図(大分類、小分類)34aと地形分類図(大分類、小分類)34bとを含む。
【0076】
具体的には、第1埋設環境分類マップ作成部62は、地図データベース部23から第1地盤情報マップ34を読み出す。第1埋設環境分類マップ作成部62は、表層地質図(大分類、小分類)34a上の分類と地形分類図(大分類、小分類)34b上の分類との組み合わせによって、管が埋設されている土壌を埋設環境A-Dの四つに分類する。こうして、第1埋設環境分類マップ作成部62は、埋設環境分類暫定マップ36を作成する。第1埋設環境分類マップ作成部62は、埋設環境分類暫定マップ36を、埋設環境分類マップ記憶部24(
図3を参照)に出力する。埋設環境分類暫定マップ36は、埋設環境分類マップ記憶部24に記憶される。
【0077】
埋設環境分類マップ38を作成するステップ(ステップS2)は、第2埋設環境分類マップ作成部63(
図2を参照)によって実行される。ステップS2では、第2埋設環境分類マップ作成部63は、埋設環境分類暫定マップ36と、第2地盤情報マップ35(
図4を参照)とから、埋設環境分類マップ38(
図3及び
図15を参照)を作成する。第2地盤情報マップ35は、例えば、表層地質図(小分類)35aと、海岸線地
図35bと、標高地
図35cとを含む。
【0078】
図20に示されるように、埋設環境分類マップを作成するステップ(ステップS2)は、第1土壌特定ステップ(ステップS4)を含む。具体的には、第1土壌特定部63aは、埋設環境分類マップ記憶部24から埋設環境分類暫定マップ36を読み出すとともに、地図データベース部23から表層地質図(小分類)35a(
図4を参照)を読み出す。第1土壌特定部63aは、埋設環境分類暫定マップ36のうち、地下水を通しやすい土壌(地下水透過性土壌)を特定する。地下水透過性土壌は、例えば、埋設環境分類暫定マップ36のうち、表層地質図(小分類)35aにおいて砂礫系土壌と見なすことができる土壌である。
【0079】
図20に示されるように、埋設環境分類マップを作成するステップ(ステップS2)は、第2土壌特定ステップ(ステップS5)をさらに含む。具体的には、第2土壌特定部63bは、地図データベース部23から海岸線地
図35b及び標高地
図35cを読み出す。第2土壌特定部63bは、第1土壌特定部63aによって特定された地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内にある高腐食性土壌を特定する。例えば、第2土壌特定部63bは、地下水透過性土壌のうち、海岸線からの距離が5km以下であり、かつ、標高が3m以下である土壌を、高腐食性土壌として特定する。第2土壌特定部63bは、埋設環境分類暫定マップ36のうち高腐食性土壌を、埋設環境分類暫定マップ36における埋設環境にかかわらず、埋設環境A-Dのうち管に対して最も高い腐食性を有する埋設環境Aに特定する。こうして、第2埋設環境分類マップ作成部63は、埋設環境分類マップ38を作成する。
【0080】
第2埋設環境分類マップ作成部63は、埋設環境分類マップ38を、埋設環境分類マップ記憶部24(
図3を参照)に出力する。埋設環境分類マップ38は、埋設環境分類マップ記憶部24に記憶される。
【0081】
<漏水事故率予測方法>
【0082】
図21及び
図22を参照して、埋設管の腐食予測方法の一例として、本実施の形態の漏水事故率予測方法を説明する。
【0083】
図21を参照して、埋設管データ受付部60(
図2を参照)は、顧客から、埋設管データ30(
図3、
図5及び
図6を参照)を受け付ける(ステップS11)。埋設管データ受付部60は、埋設管データ30を、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)に出力する。埋設管データ30は、例えば、管路マップ31(
図5を参照)と、埋設管属性データ32(
図6を参照)とを含む。埋設管データ30を、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)に記憶される。埋設管データ30は、顧客から提供される記憶媒体18(
図1を参照)に格納されてもよい。埋設管データ30は、通信ネットワークを介して、顧客から受信してもよい。埋設管データ30は、予めストレージ19(
図1を参照)に格納されてもよい。
【0084】
図21及び
図22を参照して、埋設管データ前処理部64(
図2を参照)は、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)に記憶されている埋設管データ30(
図3、
図5及び
図6を参照)から、前処理済埋設管データ40(
図16を参照)を作成する(ステップS12)。
【0085】
具体的には、
図22を参照して、埋設管データ読出部64a(
図2を参照)は、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)から、埋設管データ30を読み出す(ステップS21)。埋設管データ30は、例えば、管路マップ31(
図5を参照)と、埋設管属性データ32(
図3及び
図6を参照)とを含む。
【0086】
図22を参照して、埋設期間算出部64b(
図2を参照)は、管路ID毎に埋設管の埋設期間を算出する(ステップS22)。例えば、現在年(埋設管の漏水事故率の予測を実行する年)における埋設管の漏水事故率の予測結果を得る場合には、埋設期間算出部64bは、記憶部20に記憶されている現在年と埋設管属性データ32の布設年(
図6を参照)との間の差を、埋設管の埋設期間(
図16を参照)として算出する。将来年における埋設管の漏水事故率の予測結果を得る場合には、埋設期間算出部64bは、入力装置11(
図1を参照)によって受け付けられかつ記憶部20に記憶されている将来年と埋設管属性データ32の布設年(
図6を参照)との間の差を、埋設管の埋設期間(
図16を参照)として算出する。
【0087】
図22を参照して、公称管厚特定部64c(
図2を参照)は、管路ID毎に埋設管の公称管厚を特定する(ステップS23)。具体的には、公称管厚特定部64cは、公称管厚データベース部22(
図3を参照)から公称管厚データ33(
図7を参照)を読み出す。公称管厚特定部64cは、埋設管属性データ32の布設年、呼び径、接合形式及び管厚の種類(
図6を参照)と公称管厚データ33とを参照して、管路ID毎に埋設管の公称管厚を特定する。
【0088】
図22を参照して、埋設環境特定部64d(
図2を参照)は、管路ID毎に埋設管の埋設環境を特定する(ステップS24)。具体的には、埋設環境特定部64dは、埋設環境分類マップ記憶部24(
図3を参照)から埋設環境分類マップ38(
図15を参照)を読み出す。埋設環境特定部64dは、管路マップ31と埋設環境分類マップ38とを参照して、管路ID毎に埋設管の埋設環境を特定する。
【0089】
図22を参照して、前処理済埋設管データ作成部64e(
図2を参照)は、管路ID毎に得られた埋設管の埋設期間、公称管厚及び埋設環境を組み合わせて、前処理済埋設管データ40(
図16を参照)を生成する(ステップS25)。埋設管データ前処理部64は、前処理済埋設管データ40を前処理済埋設管データ記憶部25(
図3を参照)に出力する。前処理済埋設管データ40は、前処理済埋設管データ記憶部25に記憶される。
【0090】
図21を参照して、漏水事故率算出部66(
図2を参照)は、管路ID毎に、埋設管の漏水事故率を算出する(ステップS13)。具体的には、漏水事故率算出部66は、前処理済埋設管データ記憶部25(
図3を参照)から前処理済埋設管データ40を読み出す。漏水事故率算出部66は、前処理済埋設管データ40から、管路ID毎に埋設環境を読み出す。漏水事故率算出部66は、漏水事故率予測モデル記憶部26に記憶されている複数の漏水事故率予測モデル42のうち、読み出された埋設環境用の漏水事故率予測モデル42を、漏水事故率予測モデル記憶部26(
図3を参照)から読み出す。
【0091】
漏水事故率算出部66は、読み出された漏水事故率予測モデル42に、管路ID毎に埋設管の埋設期間及び公称管厚を入力して、管路ID毎に埋設管の漏水事故率を算出する。漏水事故率算出部66は、管路ID毎の埋設管の漏水事故率を、漏水事故率記憶部27(
図3を参照)に出力する。
図18に示されるように、埋設管の漏水事故率は、管路IDに対応付けられて、漏水事故率記憶部27に記憶される。
【0092】
図21を参照して、漏水事故率予測結果出力部67(
図2を参照)は、漏水事故率予測結果50を、
図1に示されるディスプレイ14、記憶媒体18またはストレージ19の少なくとも一つに出力する(ステップS14)。漏水事故率予測結果50は、例えば、漏水事故率予測マップ51(
図17を参照)であってもよいし、漏水事故率予測テーブル52(
図18を参照)であってもよい。
【0093】
漏水事故率予測結果出力部67は、埋設管データ記憶部21(
図3を参照)から、管路マップ31(
図5を参照)を読み出す。漏水事故率予測結果出力部67は、漏水事故率記憶部27から、管路IDと埋設管の漏水事故率とを読み出す。漏水事故率予測結果出力部67は、管路マップ31に管路ID毎の埋設管の漏水事故率を反映させて、漏水事故率予測マップ51を作成する。漏水事故率予測結果出力部67は、管路IDと漏水事故確率とを互いに対応付けて、漏水事故率予測テーブル52を作成する。
【0094】
埋設環境分類マップ作成プログラム47(
図3を参照)は、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法をプロセッサ12(
図1を参照)に実行させる。漏水事故率予測プログラム48(
図3を参照)は、本実施の形態の漏水事故率予測方法をプロセッサ12(
図1を参照)に実行させる。本実施の形態のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過的なコンピュータ可読記録媒体、例えば記憶媒体18)は、埋設環境分類マップ作成プログラム47及び漏水事故率予測プログラム48のようなプログラムが記録されてもよい。
【0095】
本実施の形態において、地下水透過性土壌は、表層地質図(小分類)35a(
図4を参照)において砂礫系土壌と見なすことができる土壌に限られない。本実施の形態では、塩分を含む水源として海を想定したが、塩分を含む水源は、例えば、塩湖であってもよい。海岸線からの第2領域の距離は、5km以下に限られない。第2領域の標高は、3m以下に限られない。
【0096】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置(第2埋設環境分類マップ作成部63)、埋設環境特定装置(埋設管データ前処理部64)、埋設環境分類マップ作成方法、埋設環境特定方法及びプログラムの効果を説明する。
【0097】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置(第2埋設環境分類マップ作成部63)は、地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定する第1土壌特定部63aと、地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定する第2土壌特定部63bとを備える。
【0098】
そのため、高腐食性土壌がより正確に特定され得る。本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置によれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【0099】
本実施の形態の埋設環境特定装置(埋設管データ前処理部64)は、埋設管の位置を含む埋設管データ30を読み出す埋設管データ読出部64aと、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成装置(第2埋設環境分類マップ作成部63)によって作成された埋設環境分類マップ38に、埋設管データ30を適用して、埋設管の埋設環境を特定する埋設環境特定部64dとを備える。
【0100】
そのため、埋設管の埋設環境がより正確に特定され得る。本実施の形態の埋設環境特定装置によれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【0101】
本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法は、地下水を通しやすい土壌である地下水透過性土壌を特定するステップ(ステップS4)と、地下水透過性土壌のうち、塩分を含む水源から所定距離内に位置しかつ標高が所定高さ内である土壌を、管に対して高い腐食性を有する高腐食性土壌として特定するステップ(ステップS5)とを備える。
【0102】
そのため、高腐食性土壌がより正確に特定され得る。本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法によれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【0103】
本実施の形態の埋設環境特定方法は、埋設管の位置を含む埋設管データ30を読み出すステップ(ステップS21)と、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法によって作成された埋設環境分類マップ38に、埋設管データ30を適用して、埋設管の埋設環境を特定するステップ(ステップS24)とを備える。
【0104】
そのため、埋設管の埋設環境がより正確に特定され得る。本実施の形態の埋設環境特定方法によれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【0105】
本実施の形態のプログラムは、本実施の形態の埋設環境分類マップ作成方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【0106】
そのため、高腐食性土壌がより正確に特定され得る。本実施の形態のプログラムによれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【0107】
本実施の形態のプログラムは、本実施の形態の埋設環境特定方法の各ステップをプロセッサに実行させる。
【0108】
そのため、埋設管の埋設環境がより正確に特定され得る。本実施の形態のプログラムによれば、より正確な埋設管の腐食予測が可能になる。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0110】
1 漏水事故率予測装置、11 入力装置、12 プロセッサ、13 メモリ、14 ディスプレイ、16 ネットワークコントローラ、17 記憶媒体ドライブ、18 記憶媒体、19 ストレージ、20 記憶部、21 埋設管データ記憶部、22 公称管厚データベース部、23 地図データベース部、24 埋設環境分類マップ記憶部、25 前処理済埋設管データ記憶部、26 漏水事故率予測モデル記憶部、27 漏水事故率記憶部、28 プログラム記憶部、30 埋設管データ、31 管路マップ、32 埋設管属性データ、33 公称管厚データ、34 第1地盤情報マップ、34a 表層地質図(大分類、小分類)、34b 地形分類図(大分類、小分類)、35 第2地盤情報マップ、35a 表層地質図(小分類)、35b 海岸線地図、35c 標高地図、36 埋設環境分類暫定マップ、38 埋設環境分類マップ、40 前処理済埋設管データ、42 漏水事故率予測モデル、47 埋設環境分類マップ作成プログラム、48 漏水事故率予測プログラム、50 漏水事故率予測結果、51 漏水事故率予測マップ、52 漏水事故率予測テーブル、60 埋設管データ受付部、61 埋設環境分類マップ作成部、62 第1埋設環境分類マップ作成部、63 第2埋設環境分類マップ作成部、63a 第1土壌特定部、63b 第2土壌特定部、64 埋設管データ前処理部、64a 埋設管データ読出部、64b 埋設期間算出部、64c 公称管厚特定部、64d 埋設環境特定部、64e 前処理済埋設管データ作成部、66 漏水事故率算出部、67 漏水事故率予測結果出力部。