(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022152
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】人体移動装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A61G7/057
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125518
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】太田 龍之介
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA01
4C040AA08
4C040BB06
4C040CC04
4C040EE05
(57)【要約】
【課題】寝ている状態の人体を容易に移動させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】人体移動装置1は、供給された流体を用いて膨張する人体駆動用アクチュエータ(第1体位変換アクチュエータ11,第1水平移動アクチュエータ71Aおよび第2水平移動アクチュエータ72A)と、供給された流体を用いて膨張する人体受側緩衝用アクチュエータ(第3体位変換アクチュエータ13、第1水平移動アクチュエータ71C)とを備える。人体駆動用アクチュエータは、流体が供給されることによって人体に力を加えて、初期体位から所定の方向へと人体を移動させる。人体受側緩衝用アクチュエータは、流体が供給された状態または流体が供給されて変形しながら人体に加わる重力を支え、流体が徐々に排出されることによって人体を支えながら人体を最終体位へと移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を移動させる人体移動装置であって、
供給された流体を用いて膨張する人体駆動用アクチュエータと、
供給された流体を用いて膨張する人体受側緩衝用アクチュエータとを備え、
前記人体駆動用アクチュエータは、流体が供給されることによって前記人体に力を加えて、初期体位から所定の方向へと前記人体を移動させ、
前記人体受側緩衝用アクチュエータは、流体が供給された状態または流体が供給されて変形しながら前記人体に加わる重力を支え、流体が徐々に排出されることによって前記人体を支えながら前記人体を最終体位へと移動させる、人体移動装置。
【請求項2】
供給された流体を用いて膨張する中間体位用アクチュエータをさらに備え、
前記中間体位用アクチュエータは、流体が供給された状態または流体が供給されて変形しながら前記人体に加わる重力を支え、前記人体が前記初期体位から前記最終体位へと移動するまでの中間体位となる状態において前記人体を所定の時間保持する、請求項1に記載の人体移動装置。
【請求項3】
供給された流体を用いて膨張する中間体位用アクチュエータをさらに備え、
前記中間体位用アクチュエータは、前記人体駆動用アクチュエータによって前記人体が移動する途中の中間体位において、流体が供給されることによって前記人体にさらに力を加えて、前記所定の方向に前記人体をさらに移動させる、請求項1に記載の人体移動装置。
【請求項4】
人体を移動させる人体移動装置であって、
供給された流体を用いて膨張する第1体位変換アクチュエータと、
供給された流体を用いて膨張する第2体位変換アクチュエータと、
供給された流体を用いて膨張する第3体位変換アクチュエータと、
前記第1体位変換アクチュエータ、前記第2体位変換アクチュエータ、および前記第3体位変換アクチュエータに対する流体の供給を制御する制御装置とを備え、
前記第1体位変換アクチュエータは、前記人体の一方の側面側に配置され、
前記第2体位変換アクチュエータは、前記人体の他方の側面側に配置され、
前記第3体位変換アクチュエータは、前記人体の下面側に配置され、
前記制御装置は、
前記第1体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、前記人体の少なくとも一部を起き上がらせて前記人体を体位変換させ、
前記第2体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した前記人体を受け止め、
前記第3体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した前記人体の少なくとも一部を支持する、人体移動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2体位変換アクチュエータに流体を供給した後に、前記第1体位変換アクチュエータに流体を供給する、請求項4に記載に人体移動装置。
【請求項6】
前記第1体位変換アクチュエータは、前記人体の上半身の少なくとも一部を起き上がらせて前記人体を体位変換させる上側第1体位変換アクチュエータと、前記人体の下半身の少なくとも一部を起き上がらせて前記人体を体位変換させる下側第1体位変換アクチュエータとを含む、請求項4または請求項5に記載の人体移動装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記上側第1体位変換アクチュエータに流体を供給した後に、前記下側第1体位変換アクチュエータに流体を供給する、請求項6に記載の人体移動装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記上側第1体位変換アクチュエータおよび前記下側第1体位変換アクチュエータに対して複数回にわたって交互に流体を供給する、請求項7に記載の人体移動装置。
【請求項9】
前記第2体位変換アクチュエータは、前記人体の上半身を受け止める上側第2体位変換アクチュエータと、前記人体の下半身を受け止める下側第2体位変換アクチュエータとを含む、請求項4に記載の人体移動装置。
【請求項10】
流体が供給された後の前記第1体位変換アクチュエータは、前記人体を体位変換させる方向に向かって傾斜面を有する、請求項4に記載の人体移動装置。
【請求項11】
流体が供給された後の前記第2体位変換アクチュエータは、前記人体を受け入れる方向に向かって傾斜面を有する、請求項4に記載の人体移動装置。
【請求項12】
流体が供給された後の前記第3体位変換アクチュエータは、前記人体を支持する方向に向かって傾斜面を有する、請求項4に記載の人体移動装置。
【請求項13】
人体を移動させる人体移動装置であって、
供給された流体を用いて膨張する複数の第1水平移動アクチュエータと、
前記複数の第1水平移動アクチュエータに対する流体の供給を制御する制御装置とを備え、
前記複数の第1水平移動アクチュエータは、前記人体を水平移動させる方向に並んで配置され、
前記複数の第1水平移動アクチュエータのうち、少なくとも2つの第1水平移動アクチュエータの境界は、前記人体の下面側に配置され、
前記制御装置は、前記複数の第1水平移動アクチュエータに対して順番に流体を供給することによって、前記人体を水平移動させる、人体移動装置。
【請求項14】
供給された流体を用いて膨張する少なくとも1つの第2水平移動アクチュエータをさらに備え、
前記少なくとも1つの第2水平移動アクチュエータは、前記人体と、前記少なくとも2つの第1水平移動アクチュエータの境界との間に配置されている、請求項13に記載の人体移動装置。
【請求項15】
流体が供給された後の前記複数の第1水平移動アクチュエータは、前記人体を水平移動させる方向に向かって傾斜面を有する、請求項13または請求項14に記載の人体移動装置。
【請求項16】
人体を移動させる人体移動装置であって、
前記人体を水平移動させる水平移動アクチュエータと、
前記人体を体位変換させる体位変換アクチュエータと、
前記水平移動アクチュエータおよび前記体位変換アクチュエータに対する流体の供給を制御する制御装置とを備え、
前記水平移動アクチュエータは、
供給された流体を用いて膨張する複数の第1水平移動アクチュエータを含み、
前記複数の第1水平移動アクチュエータは、前記人体を水平移動させる方向に並んで配置され、
前記複数の第1水平移動アクチュエータのうち、少なくとも2つの第1水平移動アクチュエータの境界は、前記人体の下面側に配置され、
前記制御装置は、前記複数の第1水平移動アクチュエータに対して順番に流体を供給することによって、前記人体を水平移動させ、
前記体位変換アクチュエータは、
供給された流体を用いて膨張する第1体位変換アクチュエータと、
供給された流体を用いて膨張する第2体位変換アクチュエータと、
供給された流体を用いて膨張する第3体位変換アクチュエータとを含み、
前記第1体位変換アクチュエータは、前記人体の一方の側面側に配置され、
前記第2体位変換アクチュエータは、前記人体の他方の側面側に配置され、
前記第3体位変換アクチュエータは、前記人体の下面側に配置され、
前記制御装置は、
前記第1体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、前記人体の少なくとも一部を起き上がらせて前記人体を体位変換させ、
前記第2体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した前記人体を受け止め、
前記第3体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した前記人体の少なくとも一部を支持する、人体移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人体を移動させる人体移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の高齢化社会においては、寝たきり状態の被介護者の数が増加している。被介護者が長時間にわたって同じ姿勢を取り続けてしまうと、いわゆる床ずれとも言われる褥瘡が生じる可能性がある。このため、介護者は、数時間おきに被介護者の体位を変える必要がある。また、たとえば、被介護者がベッドから立ち上がる際には、寝た状態でベッドの端に移動する必要があるが、このようなベッド上の水平移動についても、介護者の補助が必要になる。
【0003】
このように、介護者はベッド上で寝ている被介護者を移動させることが多いが、このような補助は、介護者および被介護者にとって負担が大きい。この点、特許文献1には、空気袋を利用して仰臥位の介護者の背中の通気をよくすることによって褥瘡を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によれば、介護者の背中を一時的に浮かすことによって褥瘡を防止することができるが、介護者の体位を変換させたり介護者をベッド上で水平移動させたりといったように、ベッド上で介護者を移動させることまではできない。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、寝ている状態の人体を容易に移動させることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う人体移動装置は、供給された流体を用いて膨張する人体駆動用アクチュエータと、供給された流体を用いて膨張する人体受側緩衝用アクチュエータとを備える。人体駆動用アクチュエータは、流体が供給されることによって人体に力を加えて、初期体位から所定の方向へと人体を移動させる。人体受側緩衝用アクチュエータは、流体が供給された状態または流体が供給されて変形しながら人体に加わる重力を支え、流体が徐々に排出されることによって人体を支えながら人体を最終体位へと移動させる。
【0008】
本開示の別の局面に従う人体移動装置は、供給された流体を用いて膨張する第1体位変換アクチュエータと、供給された流体を用いて膨張する第2体位変換アクチュエータと、供給された流体を用いて膨張する第3体位変換アクチュエータと、第1体位変換アクチュエータ、第2体位変換アクチュエータ、および第3体位変換アクチュエータに対する流体の供給を制御する制御装置とを備える。第1体位変換アクチュエータは、人体の一方の側面側に配置される。第2体位変換アクチュエータは、人体の他方の側面側に配置される。第3体位変換アクチュエータは、人体の下面側に配置される。制御装置は、第1体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、人体の少なくとも一部を起き上がらせて人体を体位変換させ、第2体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した人体を受け止め、第3体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した人体の少なくとも一部を支持する。
【0009】
本開示の別の局面に従う人体移動装置は、供給された流体を用いて膨張する複数の第1水平移動アクチュエータと、複数の第1水平移動アクチュエータに対する流体の供給を制御する制御装置とを備える。複数の第1水平移動アクチュエータは、人体を水平移動させる方向に並んで配置される。複数の第1水平移動アクチュエータのうち、少なくとも2つの第1水平移動アクチュエータの境界は、人体の下面側に配置される。制御装置は、複数の第1水平移動アクチュエータに対して順番に流体を供給することによって、人体を水平移動させる。
【0010】
本開示の別の局面に従う人体移動装置は、人体を水平移動させる水平移動アクチュエータと、人体を体位変換させる体位変換アクチュエータと、水平移動アクチュエータおよび体位変換アクチュエータに対する流体の供給を制御する制御装置とを備える。水平移動アクチュエータは、供給された流体を用いて膨張する複数の第1水平移動アクチュエータを含む。複数の第1水平移動アクチュエータは、人体を水平移動させる方向に並んで配置される。複数の第1水平移動アクチュエータのうち、少なくとも2つの第1水平移動アクチュエータの境界は、人体の下面側に配置される。制御装置は、複数の第1水平移動アクチュエータに対して順番に流体を供給することによって、人体を水平移動させる。体位変換アクチュエータは、供給された流体を用いて膨張する第1体位変換アクチュエータと、供給された流体を用いて膨張する第2体位変換アクチュエータと、供給された流体を用いて膨張する第3体位変換アクチュエータとを含む。第1体位変換アクチュエータは、人体の一方の側面側に配置される。第2体位変換アクチュエータは、人体の他方の側面側に配置される。第3体位変換アクチュエータは、人体の下面側に配置される。制御装置は、第1体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、人体の少なくとも一部を起き上がらせて人体を体位変換させ、第2体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した人体を受け止め、第3体位変換アクチュエータに流体を供給することによって、体位変換した人体の少なくとも一部を支持する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、供給された流体を用いて膨張するアクチュエータを用いて人体を移動させることができるため、介護者および被介護者に掛かる負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る人体移動装置の適用例を説明するための図である。
【
図2】体位変換アクチュエータの構成を示す図である。
【
図3】第1体位変換アクチュエータおよび第2体位変換アクチュエータの構成を示す図である。
【
図4】三角柱アクチュエータの組み立てを説明するための図である。
【
図5】第3体位変換アクチュエータの構成を示す図である。
【
図6】第3体位変換アクチュエータが人体を支持する様子を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る人体移動装置の構成を示す図である。
【
図8】制御装置による体位変換アクチュエータに対する空気の供給に係る制御を説明するための図である。
【
図9】実施の形態2に係る人体移動装置の適用例を説明するための図である。
【
図10】水平移動アクチュエータの構成を示す図である。
【
図11】第2水平移動アクチュエータの構成を示す図である。
【
図12】実施の形態2に係る人体移動装置の構成を示す図である。
【
図13】制御装置による体位変換アクチュエータに対する空気の供給に係る制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
実施の形態1に係る人体移動装置1について、
図1~
図9を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付して、その説明は原則的に繰り返さない。
【0014】
図1は、実施の形態1に係る人体移動装置1の適用例を説明するための図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る人体移動装置1は、ベッドなどに寝た状態の人体の体位を変換させるように構成されている。たとえば、
図1には、人体移動装置1が体位変換アクチュエータ10を用いて、人体を仰臥位(仰向け状態)から側臥位(うつ伏せ状態)へと体位変換させる例が示されている。
【0015】
体位変換アクチュエータ10は、人体駆動用アクチュエータと、人体受側緩衝用アクチュエータと、中間体位用アクチュエータとを備える。具体的には、体位変換アクチュエータ10は、第1体位変換アクチュエータ11と、第2体位変換アクチュエータ12と、第3体位変換アクチュエータ13とを備える。第1体位変換アクチュエータ11は、人体駆動用アクチュエータの一例である。第2体位変換アクチュエータ12は、中間体位用アクチュエータの一例である。第3体位変換アクチュエータ13は、人体受側緩衝用アクチュエータの一例である。第1体位変換アクチュエータ11、第2体位変換アクチュエータ12、および第3体位変換アクチュエータ13は、各々、空気(流体)が供給されることによって膨張し、供給された空気を内部に保持することで人体に対してクッションのような機能を有する。なお、実施の形態1に係る体位変換アクチュエータ10は、「流体」として空気を用いて膨張するが、体位変換アクチュエータ10は、たとえば、「流体」として空気以外のガスなどを用いて膨張してもよい。
【0016】
図2は、体位変換アクチュエータ10の構成を示す図である。
図2に示すように、体位変換アクチュエータ10は、第1体位変換アクチュエータ11、第2体位変換アクチュエータ12、および第3体位変換アクチュエータ13が一体化されたシート状で形成されており、寝ている人体の下面側(たとえば、仰臥位の人体の背中側)に敷くことが可能である。
【0017】
体位変換アクチュエータ10が人体の下面側に敷かれた場合、第1体位変換アクチュエータ11は、人体の一方の側面側(たとえば、仰臥位の人体の左側)に配置される。また、第1体位変換アクチュエータ11は、上半身側に配置される上側第1体位変換アクチュエータ11Aと、下半身側に配置される下側第1体位変換アクチュエータ11Bとを含む。
【0018】
体位変換アクチュエータ10が人体の下面側に敷かれた場合、第2体位変換アクチュエータ12は、人体の他方の側面側(たとえば、仰臥位の人体の右側)に配置される。また、第2体位変換アクチュエータ12は、上半身側に配置される上側第2体位変換アクチュエータ12Aと、下半身側に配置される下側第2体位変換アクチュエータ12Bとを含む。
【0019】
体位変換アクチュエータ10が人体の下面側に敷かれた場合、第3体位変換アクチュエータ13は、人体の下面側に配置される。
【0020】
図1に戻り、体位変換アクチュエータ10を用いて人体を仰臥位から伏臥位へと体位変換させる例について説明する。なお、
図1においては、体位変換アクチュエータ10に空気が供給されていない状態で人体が仰臥位であるときの体位を初期体位(
図1(A),(B)に示す体位)、体位変換アクチュエータ10に空気が供給されることによって人体が仰臥位から伏臥位へと体位変換する途中の体位を中間体位(
図1(C),(D),(E)に示す体位)、体位変換アクチュエータ10が排気された状態で人体が伏臥位であるときの体位を最終体位(
図1(F)に示す体位)と称している。
図1(A)に示すように、初期体位となる仰臥位において、人体の背中側には、第3体位変換アクチュエータ13が配置される。さらに、仰臥位の人体は、第2体位変換アクチュエータ12よりも第1体位変換アクチュエータ11が位置する側に配置される。
【0021】
先ず、
図1(B)に示すように、第2体位変換アクチュエータ12に空気が供給され、供給された空気によって第2体位変換アクチュエータ12が膨張する。
【0022】
第2体位変換アクチュエータ12が膨張した後、
図1(C)に示すように、第1体位変換アクチュエータ11に空気が供給され、供給された空気によって第1体位変換アクチュエータ11が膨張する。第1体位変換アクチュエータ11の空気圧によって人体に所定の方向(第2体位変換アクチュエータ12が位置する方向)へと力が加わり、第1体位変換アクチュエータ11に接触している人体の少なくとも一部が起き上がる。具体的には、人体の左上半身の少なくとも一部は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aによって起き上がる。人体の左下半身の少なくとも一部は、下側第1体位変換アクチュエータ11Bによって起き上がる。一方、第1体位変換アクチュエータ11に接触していない人体の右上半身および右下半身は起き上がらない。これにより、人体は、第2体位変換アクチュエータ12が位置する方(人体の右側)に向かって傾いて中間体位となり、徐々に仰臥位から側臥位へと体位変換する。
【0023】
図1(D)に示すように、体位変換する途中の中間体位において、人体は、既に膨張している第2体位変換アクチュエータ12に接触する。これにより、人体は、第2体位変換アクチュエータ12によって受け止められる。具体的には、人体の上半身の少なくとも一部は、上側第2体位変換アクチュエータ12Aによって受け止められる。人体の下半身の少なくとも一部は、下側第2体位変換アクチュエータ12Bによって受け止められる。さらに、第1体位変換アクチュエータ11が膨張することと並行して、第3体位変換アクチュエータ13に空気が供給され、供給された空気によって第3体位変換アクチュエータ13が膨張する。
【0024】
図1(E)に示すように、人体を受け止めた第2体位変換アクチュエータ12は、空気が供給された状態または空気が供給されて変形しながら人体に加わる重力を支え、中間体位の人体を所定の時間保持する。第2体位変換アクチュエータ12は、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮するとともに、第2体位変換アクチュエータ12によって受け止められながら、人体が徐々に側臥位から伏臥位へと体位変換する。また、体位変換した人体は、既に膨張している第3体位変換アクチュエータ13に接触する。第3体位変換アクチュエータ13は、空気が供給された状態または空気が供給されて変形しながら人体に加わる重力を支え、空気が徐々に排出されることによって人体を支えながら人体を伏臥位(最終体位)へと移動させる。これにより、体位変換した人体の少なくとも一部は、第3体位変換アクチュエータ13によって支持される。第3体位変換アクチュエータ13によって人体が支持されると、頭部とベッドとの間に空間が生じるため、被介護者が呼吸をし易い姿勢を維持することができる。
【0025】
図1(F)に示すように、第1体位変換アクチュエータ11が排気されて緩やかに収縮する。さらに、人体の上半身を受け止めた第3体位変換アクチュエータ13は、人体の上半身から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。これにより、体位変換アクチュエータ10が排気された状態で人体が伏臥位(最終体位)となる。
【0026】
このように、人体移動装置1は、仰臥位の人体の背中側に敷かれた体位変換アクチュエータ10に空気を供給することによって、人体を仰臥位から伏臥位へと体位変換させることができる。このような人体移動装置1を用いて被介護者の体位を変換させれば、人体に衝撃を与えることなく人体移動を行うことができるため、介護者および被介護者に掛かる負担を軽減することができる。
【0027】
なお、
図1においては、人体移動装置1が人体を仰臥位から伏臥位へと体位変換させる例が示されているが、最初に伏臥位の人体の背中側に体位変換アクチュエータ10を敷いておけば、人体移動装置1は、人体を伏臥位から仰臥位へと体位変換させることも可能である。
【0028】
図3は、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12の構成を示す図である。
図3に示すように、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12は、同様の構造を有している。具体的には、上側第1体位変換アクチュエータ11A、下側第1体位変換アクチュエータ11B、上側第2体位変換アクチュエータ12A、および下側第2体位変換アクチュエータ12Bは、同様の構造を有している。
【0029】
第1体位変換アクチュエータ11(上側第1体位変換アクチュエータ11A、下側第1体位変換アクチュエータ11B)および第2体位変換アクチュエータ12(上側第2体位変換アクチュエータ12A、下側第2体位変換アクチュエータ12B)は、上層に配置された三角柱アクチュエータ51、中層に配置された三角柱アクチュエータ53、および下層に配置された三角柱アクチュエータ52を含む三層構造を有する。上層の三角柱アクチュエータ51と下層の三角柱アクチュエータ52とは、同様の形状を有している。
【0030】
人体を移動させるための十分な変位と力を得るためには、人体と第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12とが接触する面積をより大きくする必要がある。一方、人体と第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12との接触面積を大きくすると、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を膨張させるための体積が増加し、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12の応答速度が低下するおそれがある。十分な力を発生可能な面を1つの面とし、かつ、面の数を最小とするための立体形状は、三角柱である。すなわち、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12の応答速度をより向上させるためには、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を三角柱アクチュエータによって複数の層に分割するとともに、各三角柱アクチュエータの体積を適切に設定することが有効である。第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を三角柱アクチュエータによって複数の層に分割することで、人体と第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12との接触面積を変えることなく、膨張後の各アクチュエータの体積を減少させることが可能となり、これにより第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12の応答速度を向上させることができる。但し、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を分割する層の数が多ければ多いほど、膨張後の各アクチュエータの体積は減少するが、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12の剛性が低下する懸念がある。このため、実施の形態1に係る第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12は、三角柱アクチュエータの三層構造としている。
【0031】
図3(A)には、三角柱アクチュエータ51の展開図が示されている。
図3(A)に示すように、三角柱アクチュエータ51は、5枚のプラスチックフィルム511~515が熱圧着されることによって袋状になり、供給された空気を用いて膨張することによって三角柱の形状となる。なお、三角柱アクチュエータ51は、5枚のプラスチックフィルム511~515に限らず、1枚のプラスチックフィルムを折り曲げることによって形成されてもよいし、その他の枚数のプラスチックフィルムが熱圧着されることによって形成されてもよい。さらに、三角柱アクチュエータ51は、プラスチックフィルム製の吸気口518と、プラスチックフィルム製の排気口519とを有する。
【0032】
図3(B)には、三角柱アクチュエータ53の展開図が示されている。
図3(B)に示すように、三角柱アクチュエータ53は、5枚のプラスチックフィルム531~535が熱圧着されることによって袋状になり、供給された空気を用いて膨張することによって三角柱の形状となる。なお、三角柱アクチュエータ53は、5枚のプラスチックフィルム531~535に限らず、1枚のプラスチックフィルムを折り曲げることによって形成されてもよいし、その他の枚数のプラスチックフィルムが熱圧着されることによって形成されてもよい。さらに、三角柱アクチュエータ53は、プラスチックフィルム製の吸気口538と、プラスチックフィルム製の排気口539とを有する。
【0033】
図3(C)には、三角柱アクチュエータ52の展開図が示されている。
図3(C)に示すように、三角柱アクチュエータ52は、5枚のプラスチックフィルム521~525が熱圧着されることによって袋状になり、供給された空気を用いて膨張することによって三角柱の形状となる。なお、三角柱アクチュエータ53は、5枚のプラスチックフィルム521~525に限らず、1枚のプラスチックフィルムを折り曲げることによって形成されてもよいし、その他の枚数のプラスチックフィルムが熱圧着されることによって形成されてもよい。さらに、三角柱アクチュエータ52は、プラスチックフィルム製の吸気口528と、プラスチックフィルム製の排気口529とを有する。
【0034】
プラスチックフィルム511~515,521~525,531~535の厚みは、たとえば約10mmであり、比較的小さく設定されている。このため、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12が人体の下面側に敷かれた場合でも、被介護者が違和感なく使用することができる。また、三角柱アクチュエータ51における人体の側面に接触する傾斜面の長さ51Sおよび三角柱アクチュエータ52における人体の側面に接触する傾斜面の長さ52Sは、人体の寸法の68%信頼区間に基づき、たとえば約244mmに設定されている。
【0035】
なお、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を構成する三角柱アクチュエータ51,三角柱アクチュエータ53、および三角柱アクチュエータ52は、プラスチックフィルムで形成されることに限らず、たとえば、ゴムなどのその他の材料で形成されてもよい。但し、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12をプラスチックフィルムで形成すれば、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12をゴムなどで形成するよりも安価で人体移動装置1を製造することができる。また、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12をプラスチックフィルムで形成すれば、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12をゴムなどで形成するよりも、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を軽量かつ柔軟にすることができるため、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12をより低圧で膨張させることができる。このため、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12を膨張または伸縮させる時間を短縮することができる。さらに、第1体位変換アクチュエータ11および第2体位変換アクチュエータ12に空気を供給するための後述するポンプ21,22を小型化することができるため、人体移動装置1のシステム全体を小型化することができる。
【0036】
図4は、三角柱アクチュエータ51,52の組み立てを説明するための図である。
図4(A),(B),(C)に示すように、三角柱アクチュエータ51,52は、各プラスチックフィルム面が熱圧着されることによって、三角柱の袋状に形成される。
【0037】
第1体位変換アクチュエータ11は、空気が供給されて三角柱となった三角柱アクチュエータ51,52の傾斜面が人体に接触するように配置される。具体的には、
図1(C)に示すように、空気が供給された後の第1体位変換アクチュエータ11は、人体を頭側から見たときに三角形の断面形状を有しており、傾斜面が人体に接触するように配置される。言い換えると、空気が供給された後の第1体位変換アクチュエータ11は、人体を体位変換させる方向に向かって傾斜面を有する。このため、空気が供給された後の第1体位変換アクチュエータ11は、膨張することで形成される傾斜面が人体に接しながら人体を仰臥位から側臥位へと緩やかに体位変換させることができる。
【0038】
第2体位変換アクチュエータ12は、空気が供給されて三角柱となった三角柱アクチュエータ51,52の傾斜面が人体に接触するように配置される。具体的には、
図1(D)に示すように、空気が供給された後の第2体位変換アクチュエータ12は、人体を頭側から見たときに三角形の断面形状を有しており、傾斜面が人体に接触するように配置される。言い換えると、空気が供給された後の第2体位変換アクチュエータ12は、人体を受け入れる方向に向かって傾斜面を有する。このため、空気が供給された後の第2体位変換アクチュエータ12は、膨張することで形成される傾斜面が人体に接触することによって、負担を掛けないように人体を受け止めることができる。
【0039】
なお、第1体位変換アクチュエータ11は、人体の上半身の少なくとも一部を起き上がらせて人体を体位変換させる上側第1体位変換アクチュエータ11Aと、人体の下半身の少なくとも一部を起き上がらせて人体を体位変換させる下側第1体位変換アクチュエータ11Bとで2分割されているが、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび下側第1体位変換アクチュエータ11Bを一体化させて1つのアクチュエータとしてもよい。但し、第1体位変換アクチュエータ11は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aと下側第1体位変換アクチュエータ11Bとで2分割されている方が、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび下側第1体位変換アクチュエータ11Bが一体化されるよりも、膨張または伸縮させる時間を短縮することができる。
【0040】
第2体位変換アクチュエータ12は、人体の上半身の少なくとも一部を起き上がらせて人体を体位変換させる上側第2体位変換アクチュエータ12Aと、人体の下半身の少なくとも一部を起き上がらせて人体を体位変換させる下側第2体位変換アクチュエータ12Bとで2分割されているが、上側第2体位変換アクチュエータ12Aおよび下側第2体位変換アクチュエータ12Bを一体化させた1つのアクチュエータとしてもよい。但し、第2体位変換アクチュエータ12は、上側第2体位変換アクチュエータ12Aと下側第2体位変換アクチュエータ12Bとで2分割されている方が、上側第2体位変換アクチュエータ12Aおよび下側第2体位変換アクチュエータ12Bが一体化されるよりも、膨張または伸縮させる時間を短縮することができる。
【0041】
図5は、第3体位変換アクチュエータの構成を示す図である。
図5に示すように、第3体位変換アクチュエータ13は、三角柱アクチュエータ61および三角柱アクチュエータ62が横に並ぶような構造を有する。三角柱アクチュエータ61と三角柱アクチュエータ62とは、同様の形状を有している。
【0042】
図5(A)には、三角柱アクチュエータ61の展開図が示されている。
図5(A)に示すように、三角柱アクチュエータ61は、5枚のプラスチックフィルム611~615が熱圧着されることによって袋状になり、供給された空気を用いて膨張することによって三角柱の形状となる。なお、三角柱アクチュエータ61は、5枚のプラスチックフィルム611~615に限らず、1枚のプラスチックフィルムを折り曲げることによって形成されてもよいし、その他の枚数のプラスチックフィルムが熱圧着されることによって形成されてもよい。さらに、三角柱アクチュエータ61は、プラスチックフィルム製の吸気口618と、プラスチックフィルム製の排気口619とを有する。
【0043】
図5(B)には、三角柱アクチュエータ62の展開図が示されている。
図5(B)に示すように、三角柱アクチュエータ62は、5枚のプラスチックフィルム621~625が熱圧着されることによって袋状になり、供給された空気を用いて膨張することによって三角柱の形状となる。なお、三角柱アクチュエータ62は、5枚のプラスチックフィルム621~625に限らず、1枚のプラスチックフィルムを折り曲げることによって形成されてもよいし、その他の枚数のプラスチックフィルムが熱圧着されることによって形成されてもよい。さらに、三角柱アクチュエータ62は、プラスチックフィルム製の吸気口628と、プラスチックフィルム製の排気口629とを有する。
【0044】
プラスチックフィルム611~615,621~625の厚みは、たとえば約10mmであり、比較的小さく設定されている。このため、第3体位変換アクチュエータ13が人体の下面側に敷かれた場合でも、被介護者が違和感なく使用することができる。
【0045】
なお、第3体位変換アクチュエータ13を構成する三角柱アクチュエータ61および三角柱アクチュエータ62は、プラスチックフィルムで形成されることに限らず、たとえば、ゴムなどのその他の材料で形成されてもよい。但し、第3体位変換アクチュエータ13をプラスチックフィルムで形成すれば、第3体位変換アクチュエータ13をゴムなどで形成するよりも安価で人体移動装置1を製造することができる。また、第3体位変換アクチュエータ13をプラスチックフィルムで形成すれば、第3体位変換アクチュエータ13をゴムなどで形成するよりも、第3体位変換アクチュエータ13を軽量かつ柔軟にすることができるため、第3体位変換アクチュエータ13をより低圧で膨張させることができる。このため、第3体位変換アクチュエータ13を膨張または伸縮させる時間を短縮することができる。さらに、第3体位変換アクチュエータ13に空気を供給するための後述するポンプ21,22を小型化することができるため、人体移動装置1のシステム全体を小型化することができる。
【0046】
図6は、第3体位変換アクチュエータ13が人体を支持する様子を示す図である。なお、
図6においては、伏臥位になった人体が第3体位変換アクチュエータ13によって支持される様子が示されている。
【0047】
第3体位変換アクチュエータ13は、空気が供給されて三角柱となった三角柱アクチュエータ61,62の傾斜面が人体に接触するように配置される。具体的には、
図6に示すように、空気が供給された後の第3体位変換アクチュエータ13は、人体を横(ベッド15の水平方向)から見たときに三角形の断面形状を有しており、傾斜面が人体の上半身(主に胸から腹に亘る部分)に接触するように配置される。言い換えると、空気が供給された後の第3体位変換アクチュエータ13は、人体を支持する方向に向かって傾斜面を有する。このため、空気が供給された後の第3体位変換アクチュエータ13は、膨張することで形成される傾斜面が人体に接触することによって、胸、腹、および腕などの上半身がベッド15と接触しないように頭部を持ち上げながら人体を支持することができるため、負担を掛けないように人体を支持することができる。これにより、側臥位または伏臥位であっても被介護者が呼吸をし易い姿勢を維持することができる。
【0048】
図7は、実施の形態1に係る人体移動装置1の構成を示す図である。
図7に示すように、人体移動装置1は、体位変換アクチュエータ10と、ポンプ21,22と、電磁弁31~35と、制御装置100とを備える。
【0049】
上述したように、体位変換アクチュエータ10は、第1体位変換アクチュエータ11と、第2体位変換アクチュエータ12と、第3体位変換アクチュエータ13とを含む。第1体位変換アクチュエータ11は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aと、下側第1体位変換アクチュエータ11Bとを含む。第2体位変換アクチュエータ12は、上側第2体位変換アクチュエータ12Aと、下側第2体位変換アクチュエータ12Bとを含む。
【0050】
ポンプ21,22は、体位変換アクチュエータ10に含まれる各アクチュエータに空気を供給する。具体的には、ポンプ21は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび上側第2体位変換アクチュエータ12Aに空気を供給する。ポンプ22は、下側第1体位変換アクチュエータ11B、下側第2体位変換アクチュエータ12B、および第3体位変換アクチュエータ13に空気を供給する。なお、上側第1体位変換アクチュエータ11A、下側第1体位変換アクチュエータ11B、上側第2体位変換アクチュエータ12A、下側第2体位変換アクチュエータ12B、および第3体位変換アクチュエータ13の全てに対して1つのポンプが空気を供給してもよいし、各アクチュエータに対して1つのポンプが空気を供給してもよい。ポンプとアクチュエータとの組み合わせは適宜設定可能である。
【0051】
電磁弁31~35は、制御装置100の制御に従って、ポンプ21,22と体位変換アクチュエータ10との間の空気の供給路を開放または閉鎖する。具体的には、電磁弁31は、制御装置100の制御に従って、ポンプ21と上側第1体位変換アクチュエータ11Aとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁32は、制御装置100の制御に従って、ポンプ21と上側第2体位変換アクチュエータ12Aとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁33は、制御装置100の制御に従って、ポンプ22と下側第1体位変換アクチュエータ11Bとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁34は、制御装置100の制御に従って、ポンプ22と下側第2体位変換アクチュエータ12Bとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁35は、制御装置100の制御に従って、ポンプ22と第3体位変換アクチュエータ13との間の空気の供給路を開放または閉鎖する。
【0052】
制御装置100は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)であり、電磁弁31~35を制御することによって、第1体位変換アクチュエータ11、第2体位変換アクチュエータ12、および第3体位変換アクチュエータ13に対する空気の供給を制御する。
【0053】
制御装置100は、たとえば、マイクロコントローラ(microcontroller)、CPU(central processing unit)またはMPU(Micro-processing unit)などのプロセッサで構成されている。なお、制御装置100の一例であるプロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、制御装置100の一例である「プロセッサ」は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、制御装置100は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、制御装置100の一部または全ての機能は、図示しないサーバ装置(たとえば、クラウド型のサーバ装置)に設けられてもよい。さらに、制御装置100は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、SSD(solid state drive)またはHDD(hard disk drive)などの記憶装置を含んでいてもよい。
【0054】
図8は、制御装置100による体位変換アクチュエータ10に対する空気の供給に係る制御を説明するための図である。なお、
図8においては、
図1の例に合わせて、人体が初期体位(仰臥位)から中間体位を経て最終体位(伏臥位)になるまでの各アクチュエータの制御を示す。
図8に示すように、制御装置100は、先ず、期間T1において、上側第2体位変換アクチュエータ12Aおよび下側第2体位変換アクチュエータ12Bに空気を供給する。これにより、第2体位変換アクチュエータ12が膨張し、第2体位変換アクチュエータ12によって人体を受け入れる準備が整う。
【0055】
制御装置100は、期間T2において、上側第1体位変換アクチュエータ11Aに空気を供給する。このとき、制御装置100は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aが最大限に膨張しないように少し(たとえば、半分)の空気を供給する。これにより、上側第1体位変換アクチュエータ11Aが一部(たとえば、半分)膨張する。上側第1体位変換アクチュエータ11Aの空気圧によって、上側第1体位変換アクチュエータ11Aに接触している人体の上半身の少なくとも一部が少しだけ起き上がる。
【0056】
制御装置100は、期間T3において、下側第1体位変換アクチュエータ11Bに空気を供給する。このとき、制御装置100は、下側第1体位変換アクチュエータ11Bが最大限に膨張しないように少し(たとえば、半分)の空気を供給する。これにより、下側第1体位変換アクチュエータ11Bが一部(たとえば、半分)膨張する。下側第1体位変換アクチュエータ11Bの空気圧によって、下側第1体位変換アクチュエータ11Bに接触している人体の下半身の少なくとも一部が少しだけ起き上がる。
【0057】
制御装置100は、期間T4において、上側第1体位変換アクチュエータ11Aに空気を供給する。このとき、制御装置100は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aが最大限に膨張するように残り(たとえば、残り半分)の空気を供給する。これにより、上側第1体位変換アクチュエータ11Aが最大限に膨張する。上側第1体位変換アクチュエータ11Aの空気圧によって、上側第1体位変換アクチュエータ11Aに接触している人体の上半身の少なくとも一部がさらに起き上がる。これにより、人体の上半身は、上側第2体位変換アクチュエータ12Aが位置する方に向かって傾き、徐々に仰臥位から側臥位へと体位変換する。
【0058】
さらに、制御装置100は、期間T4において、第3体位変換アクチュエータ13に空気を供給する。これにより、第3体位変換アクチュエータ13が膨張し、第3体位変換アクチュエータ13によって人体を支持する準備が整う。
【0059】
制御装置100は、期間T5において、下側第1体位変換アクチュエータ11Bに空気を供給する。このとき、制御装置100は、下側第1体位変換アクチュエータ11Bが最大限に膨張するように残り(たとえば、残り半分)の空気を供給する。これにより、下側第1体位変換アクチュエータ11Bが最大限に膨張する。下側第1体位変換アクチュエータ11Bの空気圧によって、下側第1体位変換アクチュエータ11Bに接触している人体の下半身の少なくとも一部がさらに起き上がる。これにより、人体の下半身は、下側第2体位変換アクチュエータ12Bが位置する方に向かって傾き、さらに仰臥位から側臥位へと体位変換する。
【0060】
期間T4,T5で体位変換する途中において、人体の上半身は、既に膨張している上側第2体位変換アクチュエータ12Aに接触する。これにより、人体の上半身は、上側第2体位変換アクチュエータ12Aによって受け止められる。人体の上半身を受け止めた上側第2体位変換アクチュエータ12Aは、人体の上半身から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。また、人体の下半身は、既に膨張している下側第2体位変換アクチュエータ12Bに接触する。これにより、人体の下半身は、下側第2体位変換アクチュエータ12Bによって受け止められる。人体の下半身を受け止めた下側第2体位変換アクチュエータ12Bは、人体の下半身から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0061】
さらに、仰臥位から側臥位へと体位変換した人体は、既に膨張している第3体位変換アクチュエータ13に接触する。これにより、体位変換した人体の少なくとも一部は、第3体位変換アクチュエータ13によって支持されるため、体位変換において被介護者が呼吸をし易い姿勢を維持することができる。
【0062】
その後、期間T6において、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび下側第1体位変換アクチュエータ11Bが排気され、緩やかに収縮する。さらに、人体の上半身を受け止めた第3体位変換アクチュエータ13は、人体の上半身から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。これにより、体位変換アクチュエータ10が排気された状態で人体が伏臥位(最終体位)となる。
【0063】
このように、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび下側第1体位変換アクチュエータ11Bのうち、先に人体の上半身側に位置する上側第1体位変換アクチュエータ11Aが膨張し、次に、人体の下半身側に位置する下側第1体位変換アクチュエータ11Bが膨張する。これにより、上半身、下半身の順番で段階的に人体が起き上がるため、人体移動装置1は、被介護者の気道を確保しながら、かつ胸を圧迫することなく、人体を仰臥位から側臥位へと体位変換させることができる。
【0064】
さらに、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび下側第1体位変換アクチュエータ11Bは、短時間で最大限に膨張することなく、複数回にわたって交互に空気が供給されることで徐々に膨張する。これにより、人体が徐々に起き上がるため、人体移動装置1は、被介護者に掛かる負担を軽減しながら、人体を仰臥位から側臥位へと体位変換させることができる。なお、制御装置100は、上側第1体位変換アクチュエータ11Aおよび下側第1体位変換アクチュエータ11Bに対して2回にわたって交互に空気を供給することに限らず、3回以上にわたって交互に空気を供給してもよい。
【0065】
<実施の形態2>
実施の形態2に係る人体移動装置2について、
図9~
図13を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付して、その説明は原則的に繰り返さない。
【0066】
図9は、実施の形態1に係る人体移動装置2の適用例を説明するための図である。
図9に示すように、実施の形態2に係る人体移動装置2は、ベッドなどに寝た状態の人体をベッド上で水平移動させるように構成されている。たとえば、
図9には、人体移動装置2が水平移動アクチュエータ70を用いて、人体を水平移動させる例が示されている。
【0067】
水平移動アクチュエータ70は、人体駆動用アクチュエータと、人体受側緩衝用アクチュエータと、中間体位用アクチュエータとを備える。具体的には、水平移動アクチュエータ70は、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cと、第2水平移動アクチュエータ72A,72Bとを備える。第1水平移動アクチュエータ71Aおよび第2水平移動アクチュエータ72Aは、人体駆動用アクチュエータの一例である。第1水平移動アクチュエータ71Cは、人体受側緩衝用アクチュエータの一例である。第1水平移動アクチュエータ71Bおよび第2水平移動アクチュエータ72Bは、中間体位用アクチュエータの一例である。第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cおよび第2水平移動アクチュエータ72A,72Bは、各々、空気(流体)が供給されることによって膨張し、供給された空気を内部に保持することで人体に対してクッションのような機能を有する。なお、実施の形態2に係る水平移動アクチュエータ70は、「流体」として空気を用いて膨張するが、水平移動アクチュエータ70は、たとえば、「流体」として空気以外のガスなどを用いて膨張してもよい。
【0068】
図10は、水平移動アクチュエータ70の構成を示す図である。
図10に示すように、水平移動アクチュエータ70は、複数の第1水平移動アクチュエータ71と、少なくとも1つの第2水平移動アクチュエータ72とが一体化されたシート状で形成されており、寝ている人体の下面側(たとえば、仰臥位の人体の背中側)に敷くことが可能である。
【0069】
複数の第1水平移動アクチュエータ71は、たとえば、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cを含む。水平移動アクチュエータ70が人体の下面側(たとえば、仰臥位の人体の背中側)に敷かれた場合、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cは、人体を水平移動させる方向に並んで配置される。
【0070】
少なくとも1つの第2水平移動アクチュエータ72は、たとえば、第2水平移動アクチュエータ72A,72Bを含む。水平移動アクチュエータ70が人体の下面側に敷かれた場合、少なくとも1つの第2水平移動アクチュエータ72は、人体と複数の第1水平移動アクチュエータ71との間に配置される。さらに、水平移動アクチュエータ70が人体の下面側に敷かれた場合、第2水平移動アクチュエータ72A,72Bは、人体と、少なくとも2つの第1水平移動アクチュエータ71の境界との間に配置される。たとえば、第2水平移動アクチュエータ72Aは、人体の下面側であって、かつ、第1水平移動アクチュエータ71Aと、第1水平移動アクチュエータ71Bとの間の境界の上側に配置される。第2水平移動アクチュエータ72Bは、人体の下面側であって、かつ、第1水平移動アクチュエータ71Bと、第1水平移動アクチュエータ71Cとの間の境界の上側に配置される。
【0071】
なお、複数の第1水平移動アクチュエータ71は、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cのように3つのアクチュエータに限らず、2つまたは4つ以上のアクチュエータで構成されてもよい。また、少なくとも1つの第2水平移動アクチュエータ72は、第2水平移動アクチュエータ72A,72Bのように2つのアクチュエータに限らず、1つまたは3つ以上のアクチュエータで構成されてもよい。第2水平移動アクチュエータ72は、並んで配置される複数の第1水平移動アクチュエータ71の境界の上側に配置されればよく、その数は、第1水平移動アクチュエータ71の数に応じて適宜設定することができる。
【0072】
図9に戻り、水平移動アクチュエータ70を用いて人体を水平移動させる例について説明する。なお、
図9においては、人体が水平移動前の体位を初期体位(
図9(A)に示す体位)、人体が水平移動中の体位を中間体位(
図9(B)~(F)に示す体位)、人体が水平移動後の体位を最終体位(
図9(G)に示す体位)と称している。
図9(A)に示すように、初期体位となる水平移動前において、仰臥位の人体の背中側には、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cおよび第2水平移動アクチュエータ72A,72Bが配置される。
【0073】
水平移動アクチュエータ70は、人体を水平移動させたい方向に向かって、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cおよび第2水平移動アクチュエータ72A,72Bに対して順番に空気を供給する。具体的には、先ず、
図9(B)に示すように、第1水平移動アクチュエータ71Aに空気が供給され、供給された空気によって第1水平移動アクチュエータ71Aが膨張する。第1水平移動アクチュエータ71Aの空気圧によって人体に所定の方向(
図9の例では人体の左側の方向)へと力が加わり、第1水平移動アクチュエータ71Aに接触している第2水平移動アクチュエータ72Aの少なくとも一部が持ち上がる。さらに、第2水平移動アクチュエータ72Aに接触している人体の右側の少なくとも一部が持ち上がる。これにより、人体は、左側に向かって水平移動する。その後、第1水平移動アクチュエータ71Aは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0074】
図9(C)に示すように、人体が移動する途中の中間体位において、第1水平移動アクチュエータ71Aに接触する第2水平移動アクチュエータ72Aに空気が供給され、供給された空気によって第2水平移動アクチュエータ72Aが膨張する。第2水平移動アクチュエータ72Aの空気圧によって人体に所定の方向(
図9の例では人体の左側の方向)へと力が加わり、第2水平移動アクチュエータ72Aに接触している人体の右側の少なくとも一部がさらに持ち上がる。これにより、人体は、左側に向かって水平移動する。その後、第2水平移動アクチュエータ72Aは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0075】
図9(D)に示すように、人体が移動する途中の中間体位において、第1水平移動アクチュエータ71Aの隣りに配置された第1水平移動アクチュエータ71Bに空気が供給され、供給された空気によって第1水平移動アクチュエータ71Bが膨張する。第1水平移動アクチュエータ71Bは、空気が供給されることによって人体にさらに力を加えて、所定の方向(
図9の例では人体の左側の方向)に人体をさらに移動させる。具体的には、第1水平移動アクチュエータ71Bの空気圧によって、第1水平移動アクチュエータ71Bに接触している第2水平移動アクチュエータ72Bの少なくとも一部が持ち上がる。さらに、第2水平移動アクチュエータ72Bが持ち上がることに起因して、第2水平移動アクチュエータ72Bに接触している人体の右側の少なくとも一部が持ち上がる。これにより、人体は、左側に向かって水平移動する。その後、第1水平移動アクチュエータ71Bは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0076】
図9(E)に示すように、人体が移動する途中の中間体位において、第1水平移動アクチュエータ71Bに接触する第2水平移動アクチュエータ72Bに空気が供給され、供給された空気によって第2水平移動アクチュエータ72Bが膨張する。第2水平移動アクチュエータ72Bは、空気が供給されることによって人体にさらに力を加えて、所定の方向(
図9の例では人体の左側の方向)に人体をさらに移動させる。具体的には、第2水平移動アクチュエータ72Bの空気圧によって、第2水平移動アクチュエータ72Bに接触している人体の右側の少なくとも一部がさらに持ち上がる。これにより、人体は、左側に向かって水平移動する。その後、第2水平移動アクチュエータ72Bは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0077】
図9(F)に示すように、人体が移動する途中の中間体位において、第1水平移動アクチュエータ71Bの隣りに配置された第1水平移動アクチュエータ71Cに空気が供給され、供給された空気によって第1水平移動アクチュエータ71Cが膨張する。第1水平移動アクチュエータ71Cは、空気が供給された状態または空気が供給されて変形しながら人体に加わる重力を支え、空気が徐々に排出されることによって人体を支えながら人体を水平移動後の最終体位へと移動させる。具体的には、第1水平移動アクチュエータ71Cの空気圧によって、第1水平移動アクチュエータ71Cに接触している第2水平移動アクチュエータ72Bの少なくとも一部が持ち上がる。さらに、第2水平移動アクチュエータ72Bが持ち上がることに起因して、第2水平移動アクチュエータ72Bに接触している人体の右側の少なくとも一部が持ち上がる。これにより、人体は、左側に向かって水平移動する。その後、第1水平移動アクチュエータ71Cは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0078】
図9(G)に示すように、水平移動アクチュエータ70の各アクチュエータが人体から受ける荷重によって排気されて収縮すると、人体は、
図9(A)に示す元の位置よりも左側の位置で留まる。
【0079】
このように、人体移動装置2は、仰臥位の人体の背中側に敷かれた水平移動アクチュエータ70に空気を供給することによって、人体を水平移動させることができる。具体的には、人体移動装置2は、隣り合って並べられた複数の第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cによって、人体を持ち上げながら水平移動させ、複数の第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cの境界に設けられた第2水平移動アクチュエータ72A,72Bによって、人体の水平方向への移動量を大きくする。このような人体移動装置2を用いて被介護者を水平移動させれば、人体に衝撃を与えることなく人体移動を行うことができるため、介護者および被介護者に掛かる負担を軽減することができる。
【0080】
なお、
図9においては、人体移動装置1が人体を左側に水平移動させる例が示されているが、第1水平移動アクチュエータ71C、第1水平移動アクチュエータ71B、第1水平移動アクチュエータ71Aの順に空気を供給すれば、人体移動装置1は、人体を右側に水平移動させることも可能である。
【0081】
上述した第1水平移動アクチュエータ71は、
図3(A),(C)および
図4に示す三角柱アクチュエータ51,52と同様に三角柱の形状を有し、三角柱アクチュエータ51,52と同様にプラスチックフィルムで構成されている。
【0082】
第1水平移動アクチュエータ71は、空気が供給されて三角柱となった三角柱アクチュエータ51,52の傾斜面が人体に接触するように配置される。具体的には、
図9(C)~(F)に示すように、空気が供給された後の第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cは、人体を頭側から見たときに三角形の断面形状を有している。言い換えると、空気が供給された後の第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cは、人体を水平移動させる方向に向かって傾斜面を有する。このため、空気が供給された後の水平移動アクチュエータ71は、膨張することで形成される傾斜面が人体を持ち上げながら緩やかに水平移動させることができる。
【0083】
図11は、第2水平移動アクチュエータ72の構成を示す図である。
図11(A)には、第2水平移動アクチュエータ72の展開分解図が示されている。
図11(A)に示すように、第2水平移動アクチュエータ72は、4枚のプラスチックフィルム721~724によって構成されている。
【0084】
図11(B),(C)に示すように、第2水平移動アクチュエータ72は、4枚のプラスチックフィルム721~724が熱圧着されることによって袋状になり、供給された空気を用いて膨張することによって直方体の形状となる。なお、第2水平移動アクチュエータ72は、4枚のプラスチックフィルム721~724に限らず、1枚のプラスチックフィルムを折り曲げることによって形成されてもよいし、その他の枚数のプラスチックフィルムが熱圧着されることによって形成されてもよい。さらに、第2水平移動アクチュエータ72は、プラスチックフィルム製の吸排気口728を有する。
【0085】
第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72を構成するプラスチックフィルムの厚みは、たとえば約10mmであり、比較的小さく設定されている。このため、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72が人体の下面側に敷かれた場合でも、被介護者が違和感なく使用することができる。
【0086】
なお、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72は、プラスチックフィルムで形成されることに限らず、たとえば、ゴムなどのその他の材料で形成されてもよい。但し、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72をプラスチックフィルムで形成すれば、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72をゴムなどで形成するよりも安価で人体移動装置2を製造することができる。また、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72をプラスチックフィルムで形成すれば、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72をゴムなどで形成するよりも、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72を軽量かつ柔軟にすることができるため、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72をより低圧で膨張させることができる。このため、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72を膨張または伸縮させる時間を短縮することができる。さらに、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72に空気を供給するための後述するポンプ81,82を小型化することができるため、人体移動装置2のシステム全体を小型化することができる。
【0087】
図12は、実施の形態2に係る人体移動装置2の構成を示す図である。
図12に示すように、人体移動装置2は、水平移動アクチュエータ70と、ポンプ81,82と、電磁弁91~95と、制御装置200とを備える。
【0088】
上述したように、水平移動アクチュエータ70は、第1水平移動アクチュエータ71と、第2水平移動アクチュエータ72とを含む。たとえば、
図12の例では、水平移動アクチュエータ70は、第1水平移動アクチュエータ71として、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cを含み、第2水平移動アクチュエータ72として、第2水平移動アクチュエータ72A,72Bを含む。
【0089】
ポンプ81,82は、水平移動アクチュエータ70に含まれる各アクチュエータに空気を供給する。具体的には、ポンプ81は、第1水平移動アクチュエータ71A,71Cおよび第2水平移動アクチュエータ72Bに空気を供給する。ポンプ82は、第1水平移動アクチュエータ71Bおよび第2水平移動アクチュエータ72Aに空気を供給する。なお、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cおよび第2水平移動アクチュエータ72A,72Bの全てに対して1つのポンプが空気を供給してもよいし、各アクチュエータに対して1つのポンプが空気を供給してもよい。ポンプとアクチュエータとの組み合わせは適宜設定可能である。
【0090】
電磁弁91~95は、制御装置200の制御に従って、ポンプ81,82と水平移動アクチュエータ70との間の空気の供給路を開放または閉鎖する。具体的には、電磁弁91は、制御装置200の制御に従って、ポンプ81と第2水平移動アクチュエータ72Bとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁92は、制御装置200の制御に従って、ポンプ81と第1水平移動アクチュエータ71Aとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁93は、制御装置200の制御に従って、ポンプ81と第1水平移動アクチュエータ71Cとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁94は、制御装置200の制御に従って、ポンプ82と第2水平移動アクチュエータ72Aとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。電磁弁95は、制御装置200の制御に従って、ポンプ82と第1水平移動アクチュエータ71Bとの間の空気の供給路を開放または閉鎖する。
【0091】
制御装置200は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)であり、電磁弁91~95を制御することによって、第1水平移動アクチュエータ71および第2水平移動アクチュエータ72に対する空気の供給を制御する。
【0092】
制御装置200は、たとえば、マイクロコントローラ、CPUまたはMPUなどのプロセッサで構成されている。なお、制御装置200の一例であるプロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASICまたはFPGAなどの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、制御装置200の一例である「プロセッサ」は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路と読み替えることもできる。なお、制御装置200は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、制御装置200の一部または全ての機能は、図示しないサーバ装置(たとえば、クラウド型のサーバ装置)に設けられてもよい。さらに、制御装置200は、DRAMまたはSRAMなどの揮発性メモリ、ROMまたはフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、SSDまたはHDDなどの記憶装置を含んでいてもよい。
【0093】
図13は、制御装置200による水平移動アクチュエータ70に対する空気の供給に係る制御を説明するための図である。なお、
図13においては、
図9の例に合わせて、人体が初期体位(水平移動前の体位)から中間体位を経て最終体位(水平移動後の体位)になるまでの各アクチュエータの制御を示す。
図13に示すように、制御装置200は、先ず、期間T1において、第1水平移動アクチュエータ71Aに空気を供給する。これにより、第1水平移動アクチュエータ71Aが膨張して人体の右側の少なくとも一部が持ち上がり、人体が左側に向かって水平移動する。第1水平移動アクチュエータ71Aは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0094】
制御装置200は、期間T2において、第2水平移動アクチュエータ72Aに空気を供給する。これにより、第2水平移動アクチュエータ72Aが膨張して人体の右側の少なくとも一部が持ち上がり、人体が左側に向かって水平移動する。第2水平移動アクチュエータ72Aは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0095】
制御装置200は、期間T3において、第1水平移動アクチュエータ71Bに空気を供給する。これにより、第1水平移動アクチュエータ71Bが膨張して人体の右側の少なくとも一部が持ち上がり、人体が左側に向かって水平移動する。第1水平移動アクチュエータ71Bは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0096】
制御装置200は、期間T4において、第2水平移動アクチュエータ72Bに空気を供給する。これにより、第2水平移動アクチュエータ72Bが膨張して人体の右側の少なくとも一部が持ち上がり、人体が左側に向かって水平移動する。第2水平移動アクチュエータ72Bは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。
【0097】
制御装置200は、期間T5において、第1水平移動アクチュエータ71Cに空気を供給する。これにより、第1水平移動アクチュエータ71Cが膨張して人体の右側の少なくとも一部が持ち上がり、人体が左側に向かって水平移動する。第1水平移動アクチュエータ71Cは、人体から受ける荷重によって排気され、緩やかに収縮する。期間T6において、水平移動アクチュエータ70の各アクチュエータが収縮すると、人体は、元の位置よりも左側の位置で留まる。
【0098】
その後、期間T6において、第1水平移動アクチュエータ71A,71B,71Cおよび第2水平移動アクチュエータ72A,72Bが徐々に排気され、緩やかに収縮する。
【0099】
このように、人体移動装置2は、第1水平移動アクチュエータ71、第2水平移動アクチュエータ72の順に空気を供給することによって、人体を持ち上げながら緩やかに水平移動させることができる。これにより、人体移動装置2は、被介護者に掛かる負担を軽減しながら、人体を水平移動させることができる。
【0100】
<実施の形態3>
実施の形態3に係る人体移動装置について、詳細に説明する。実施の形態3に係る人体移動装置は、実施の形態1に係る人体移動装置1が備える体位変換アクチュエータ10と、実施の形態2に係る人体移動装置2が備える水平移動アクチュエータ70とを備える。
【0101】
ベッド上の限られたスペースの中で人体を体位変換させる場合、先にベッドの一方の端に人体を水平移動させ、その後、他方の端に向かって人体を体位変換させるような手順が必要である。このため、実施の形態3に係る人体移動装置は、
図9に示すように、先に、水平移動アクチュエータ70を用いてベッドの一方の端に人体を水平移動させ、その後、
図1(A)および
図2に示すように、人体をベッドの一方の端から他方の端に向かって体位変換させる。
【0102】
このような実施の形態3に係る人体移動装置を用いれば、介護者および被介護者に掛かる負担を軽減しながら、スムーズに被介護者を水平移動および体位変換させることができる。
【0103】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1,2 人体移動装置、10 体位変換アクチュエータ、11,11A,11B 第1体位変換アクチュエータ、12,12A,12B 第2体位変換アクチュエータ、13 第3体位変換アクチュエータ、15 ベッド、21,22,81,82 ポンプ、31,32,33,34,35,91,92,93,94,95 電磁弁、51,52,53,61,62 三角柱アクチュエータ、70 水平移動アクチュエータ、71,71A,71B,71C 第1水平移動アクチュエータ、72,72A,72B 第2水平移動アクチュエータ、100,200 制御装置、511,512,513,514,515,521,522,523,524,525,531,532,533,534,535,611,612,613,614,615,621,622,623,624,625,721,722,723,724 プラスチックフィルム、518,528,538,618,628 吸気口、519,529,539,619,629 排気口、728 吸排気口。