(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022156
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20240208BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240208BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240208BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G09G5/00 510A
G09G5/00 510G
G09F9/00 324
G09F9/00 362
B60R11/02 C
H04N5/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125522
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 学
(72)【発明者】
【氏名】松田 脩平
(72)【発明者】
【氏名】村本 政忠
【テーマコード(参考)】
3D020
5C058
5C182
5G435
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BC01
3D020BD05
3D020BE03
5C058AA05
5C058AB06
5C058BA35
5C182AB25
5C182AC02
5C182AC03
5C182BB15
5C182CA32
5C182DA52
5C182DA68
5G435AA00
5G435DD13
5G435FF15
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】窓に設置された透明ディスプレイに情報を表示する場合に、簡単な構成や処理内容で表示情報の覗き見を防止することができる車両用表示装置を提供すること。
【解決手段】車両用表示装置100は、車両のウインドウガラス200に設置され、表示対象のコンテンツの画像を表示する透明ディスプレイ110と、透明ディスプレイ110に重ねて配置されて画像の表示領域に対する車両外部からの視認性が変更可能なマスク層112と、コンテンツの内容に応じてマスク層112の視認性を設定するマスク設定部126とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓に設置され、表示対象のコンテンツの画像を表示する透明ディスプレイと、
前記透明ディスプレイに重ねて配置され、前記画像の表示領域に対する車両外部からの視認性が変更可能なマスク手段と、
前記コンテンツの内容に応じて前記マスク手段の視認性を設定する視認性設定手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記視認性設定手段は、前記マスク手段の透明度を可変することにより視認性の変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記視認性設定手段は、透明の画面を不透明の画面に切り替えることにより視認性を低下させることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記不透明の画面は、所定色の画面であることを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記所定色は、黒色であることを特徴とする請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記視認性設定手段は、前記コンテンツの内容がプライバシー保護が必要な場合に、前記マスク手段の視認性を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記視認性設定手段は、前記コンテンツの内容が秘匿性が必要な場合に、前記マスク手段の視認性を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記視認性設定手段は、前記コンテンツの内容が注視が必要な場合に、前記マスク手段の視認性を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記視認性設定手段は、前記コンテンツの内容が、自車両の搭乗者が前記透明ディスプレイを通して見える背景を補足する情報であって、前記背景が見える状態を想定した情報である場合に、前記マスク手段の視認性を低下させないことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
前記視認性設定手段は、前記コンテンツの内容が、自車両の搭乗者が前記透明ディスプレイを通して見える背景が見える状態を想定した情報でない場合に、前記マスク手段の視認性を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項11】
前記マスク手段は、前記透明ディスプレイの表示領域の一部について視認性の変更が可能であり、
前記視認性設定手段は、視認性低下が必要な前記コンテンツが前記表示領域の一部に対応している場合に、この一部の表示領域について、前記マスク手段の視認性を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項12】
前記コンテンツには、前記マスク手段による視認性低下の要否を示すメタデータが対応付けられており、
前記視認性設定手段は、前記メタデータに基づいて、前記マスク手段の視認性を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項13】
前記コンテンツの画像を表示するアプリケーション毎に、マスク手段による視認性低下の要否が設定されており、
前記視認性設定手段は、前記コンテンツの画像を表示するアプリケーションについて、視認性低下が必要である旨の設定がされている場合に、前記マスク手段に対して視認性低下の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドウに映像を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表示対象となるコンテンツの機密度や周辺の他の移動体からの覗き見の可能性などを考慮して、コンテンツを表示する表示デバイスを変更したり、他の移動体に近い窓の透過率を可変するようにした情報処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この情報処理装置では、機密度が高い情報をディスプレイに表示しているときに、自車両の周囲の他の移動体の搭乗者の視線の向きなどを検出して覗き見の可能性を判断し、ディスプレイの覗き見が可能な窓の透過率を必要に応じて低下させることで、この情報を覗き見から保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された情報処理装置では、ディスプレイに表示された情報に対する覗き見の可能性を判断するために、他の移動体の存在やその搭乗者の視線の向きなどを知るためにカメラや近接センサーなど複雑な構成が必要になるとともに、それらを用いて得た情報の処理も複雑になるという問題があった。
【0005】
特に、上述した情報処理装置では、車室内に設置されたディスプレイに表示される情報を、自車両の窓越しに外部から覗き見る場合を想定しているため、ディスプレイに機密度が高い情報を表示する場合に、この機密度が高い情報表示の有無だけで窓の透過率を低下させてしまうと、この情報の表示中は常に窓の透過率を下げる必要があり、自車両の搭乗者の閉塞感低減等の観点からは望ましくない。これに対し、上述した情報処理装置では、自車両の周囲の他の移動体の有無や移動体の搭乗者の視線の向きを検出して、必要がある場合に限定して窓の透過率を下げている。
【0006】
ところで、自車両の窓に透明ディスプレイを重ねて各種の情報を表示する場合には、表示された情報を窓越しに覗き見するというよりは、窓そのものに映っている情報が外部から見えることになり、車室内のディスプレイに表示された情報を窓越しに覗き見するよりも、表示された情報の内容把握が容易となるため、このような使用形態に合わせた対策が望まれる。また、上述した情報処理装置では、窓越しに見えるディスプレイの窓上での位置が他の車両の搭乗者や車外の通行人などの位置との関係で相対的に変化するが、窓に設けられた透明ディスプレイの場合には窓上でのディスプレイの位置が固定化されるため、情報を覗き見から保護する際に窓全体の透過率を低下させる必要はないと考えられる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、窓に設置された透明ディスプレイに情報を表示する場合に、簡単な構成や処理内容で表示情報の覗き見を防止することができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用表示装置は、車両の窓に設置され、表示対象のコンテンツの画像を表示する透明ディスプレイと、透明ディスプレイに重ねて配置され、画像の表示領域に対する車両外部からの視認性が変更可能なマスク手段と、コンテンツの内容に応じてマスク手段の視認性を設定する視認性設定手段とを備えている。
【0009】
車両の窓に設置された透明ディスプレイの裏側にマスク手段を重ねて配置し、マスク手段の視認性を可変することにより、通常は窓を通して車外の風景を見ながらコンテンツの画像を表示させるとともに、マスク手段の設定を変えるだけでコンテンツの画像に対する車外からの視認性を低下させることができるため、簡単な構成や処理内容で表示情報(コンテンツ)の覗き見を防止することが可能となる。
【0010】
また、上述した視認性設定手段は、マスク手段の透明度を可変することにより視認性の変更を行うことが望ましい。具体的には、上述した視認性設定手段は、透明の画面を不透明の画面に切り替えることにより視認性を低下させることが望ましい。この不透明の画面は、所定色(特に、黒色)の画面であることが望ましい。透明度を低下、例えば透明の画面から黒色などの不透明の画面に変更することにより、車外からの視認性を確実に低下させることができる。
【0011】
また、上述した視認性設定手段は、コンテンツの内容がプライバシー保護が必要な場合に、マスク手段の視認性を低下させることが望ましい。あるいは、上述した視認性設定手段は、コンテンツの内容が秘匿性が必要な場合に、マスク手段の視認性を低下させることが望ましい。これより、プライバシー保護が必要な場合や秘匿性確保が必要な場合にのみ、コンテンツの内容が外部から見えないようにすることが可能となる。
【0012】
また、上述した視認性設定手段は、コンテンツの内容が注視が必要な場合に、マスク手段の視認性を低下させることが望ましい。これにより、注視して内容を確認する必要があるコンテンツについてその内容が外部から見えないようにすることにより、同時に、このコンテンツを表示する際に窓を通して外部の景色が透けて見えないことによるコンテンツの見やすさの改善が可能となる。
【0013】
また、上述した視認性設定手段は、コンテンツの内容が、自車両の搭乗者が透明ディスプレイを通して見える背景を補足する情報であって、背景が見える状態を想定した情報である場合に、マスク手段の視認性を低下させないことが望ましい。また、上述した視認性設定手段は、コンテンツの内容が、自車両の搭乗者が透明ディスプレイを通して見える背景が見える状態を想定した情報でない場合に、マスク手段の視認性を低下させることが望ましい。これにより、透明ディスプレイを通して外部の背景が見える状態を想定しているか否かで、外部からのコンテンツの視認性を変更することが可能となり、必要に応じてコンテンツの見やすさの改善が可能となる。
【0014】
また、上述したマスク手段は、透明ディスプレイの表示領域の一部について視認性の変更が可能であり、視認性設定手段は、視認性低下が必要なコンテンツが表示領域の一部に対応している場合に、この一部の表示領域について、マスク手段の視認性を低下させることが望ましい。これにより、必要な箇所のみ視認性を低下させることが可能となる。
【0015】
また、上述したコンテンツには、マスク手段による視認性低下の要否を示すメタデータが対応付けられており、視認性設定手段は、メタデータに基づいて、マスク手段の視認性を設定することが望ましい。これにより、コンテンツ毎に視認性低下の要否の判断が容易となる。
【0016】
また、上述したコンテンツの画像を表示するアプリケーション毎に、マスク手段による視認性低下の要否が設定されており、視認性設定手段は、コンテンツの画像を表示するアプリケーションについて、視認性低下が必要である旨の設定がされている場合に、マスク手段に対して視認性低下の設定を行うことが望ましい。これにより、コンテンツの画像を表示するアプリケーション毎に視認性低下の要否の判断が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の車両用表示装置の構成を示す図である。
【
図2】透明ディスプレイとマスク層の設置状態を示す図である。
【
図3】コンテンツの画像を表示する際にマスク層の視認性を設定する動作手順を示す流れ図である。
【
図4】透明ディスプレイを不透明化した際に外部に対して商品広告等の情報を表示する変形例を示す図である。
【
図5】車外の状況に応じてマスク処理の機会を限定する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用表示装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、一実施形態の車両用表示装置の構成を示す図である。本実施形態の車両用表示装置100は、透明ディスプレイ110、マスク層112、表示処理装置120を備えている。
【0020】
透明ディスプレイ110は、車両のウインドウガラス200に重ねて設置されており、様々なコンテンツの画像を表示する。また、マスク層112は、透明ディスプレイ110に重ねて、具体的にはウインドウガラス200と透明ディスプレイ110の間に配置されている。
図2は、透明ディスプレイ110とマスク層112の設置状態を示す図である。ウインドウガラス200上にマスク層112、透明ディスプレイ110の順に重ねて配置されている。
【0021】
また、
図1に示すように、表示処理装置120は、アプリケーション(AP)処理部122、表示処理部124、マスク設定部126を備えている。
【0022】
アプリケーション処理部122は、複数のアプリケーション(AP1、AP2、・・・)の中から一つあるいは複数を選択して実行する。例えば、これらのアプリケーションを選択的に実行することにより、ナビゲーション動作、動画再生動作、インターネット閲覧動作、メール送受信動作、動画再生動作、オーディオ再生動作、プレゼンテーション資料表示動作などが行われる。また、これらの各動作に伴って、表示用のコンテンツが作成される。本実施形態では、これらのコンテンツの画像の表示に関して、コンテンツの内容に応じて車外からの視認性を可変設定する処理が行われる。この処理の詳細については後述する。
【0023】
表示処理部124は、アプリケーション処理部122からアプリケーション毎のコンテンツの画像データが入力されており、この画像データに対応するコンテンツの画像を透明ディスプレイ110に表示する。
【0024】
マスク設定部126は、例えば透明度を可変することにより、車外からの視認性を変更する。なお、車外からの視認性を低下させると、同時に車内から車外を見た場合の視認性も低下する。
【0025】
上述したマスク層112がマスク手段に、マスク設定部126、アプリケーション処理部122が視認性設定手段にそれぞれ対応する。
【0026】
本実施形態の車両用表示装置100はこのような構成を有しており、次に、表示するコンテンツの内容に応じて外部からの視認性を可変する動作について説明する。
【0027】
図3は、コンテンツの画像を表示する際にマスク層112の視認性を設定する動作手順を示す流れ図である。マスク設定部126は、アプリケーション処理部122によっていずれかのアプリケーションが実行されてコンテンツの画像表示が開始されたか否かを判定する(ステップ100)。例えば、この判定は、アプリケーション実行開始時に、その旨と実行したアプリケーションの識別情報などをアプリケーション処理部122から取得することで行うことができる。画像表示が開始されない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、いずれかのコンテンツの画像表示が開始されるとステップ100の判定において肯定判断が行われる。
【0028】
ところで、本実施形態では、表示対象のコンテンツの内容に応じてマスク層112の視認性低下(不透明化)を行うが、その対象となるコンテンツの判別は、以下のいずれかの方法で行うものとする。
【0029】
(ケース1)視認性低下が指定された特定のアプリケーションについては、このアプリケーション実行時に表示するコンテンツの画像に対して、外部からの視認性を低下させる。例えば、メール送受信動作を行うアプリケーションや会社のプレゼンテーション資料表示動作を行うアプリケーションなどが実行された場合に表示されるコンテンツの画像は、利用者のプライバシー保護や会社情報などの秘匿確保が必要であって、外部から見えないようにすることが望ましい。このようなアプリケーションに該当するか否かはあらかじめ設定されており(利用者自身が設定画面を用いて設定してもよい)、マスク設定部126は、アプリケーション実行時に視認性低下の要否を知ることができる。
【0030】
(ケース2)コンテンツのデータに、このコンテンツの画像に対して外部からの視認性を低下させる旨(マスク処理が必要であることを示す旨)のメタデータが含まれる場合には、このメタデータに基づいて、外部からの視認性を低下させる。インターネット閲覧動作中にパスワード入力等を伴うコンテンツについて、外部から見えないようにするために、このコンテンツに対応して上記のメタデータを設定する場合が考えられる。
【0031】
次に、マスク設定部126は、コンテンツ画像の視認性低下が必要なアプリケーション(マスク処理が必要なAP)が実行されたか否か(ケース1に該当するか否か)を判定する(ステップ102)。該当しない場合には否定判断が行われる。次に、マスク設定部126は、コンテンツ画像の視認性低下をメタデータが示しているか否か(ケース2に該当する否か)を判定する(ステップ104)。ケース1あるいはケース2に該当する場合にはステップ102あるいはステップ104において肯定判断が行われる。
【0032】
次に、マスク設定部126は、コンテンツの画像を外部から見えなくするために、マスク層112の透明度を低下させるマスク処理を行う(ステップ106)。例えば、マスク層の画面を照明状態から不透明の画面に切り替えることにより、このマスク処理が行われる。
【0033】
この不透明の画面としては、所定色、特に黒色の画面であることが望ましいが、黒色以外の色の画面や所定の模様を有する壁紙等の画面を用いるようにしてもよい。
【0034】
その後、表示処理部124は、アプリケーション処理部122から送られてくる画像データにもとづいてコンテンツの画像を透明ディスプレイ110に表示する(ステップ108)。
【0035】
なお、ケース1とケース2に該当しない場合にはステップ104、106の判定において否定判断が行われ、ステップ106のマスク処理を経ることなくステップ108のコンテンツ画像の表示が行われる。
【0036】
次に、マスク設定部126は、コンテンツの画像表示が終了したか否かを判定する(ステップ110)。画像表示が継続している場合には否定判断が行われ、ステップ102に戻って一連の動作を継続し、マスク処理の要否判断を含む一連の動作を繰り返す。また、画像表示が終了した場合にはステップ110の判定において肯定判断が行われる。次に、マスク設定部126は、マスク処理を解除する(ステップ112)。なお、ステップ106のマスク処理が行われていない場合には、この解除動作は省略される。
【0037】
このように、本実施形態の車両用表示装置100では、車両のウインドウガラス200に設置された透明ディスプレイ110の裏側にマスク層112を重ねて配置し、マスク層112の視認性を可変することにより、通常はウインドウガラス200を通して車外の風景を見ながらコンテンツの画像を表示させるとともに、マスク層112の設定を変えるだけでコンテンツの画像に対する車外からの視認性を低下させることができるため、簡単な構成や処理内容で表示情報(コンテンツ)の覗き見を防止することが可能となる。
【0038】
特に、マスク層112の透明度を可変することにより視認性の変更を、具体的には、透明の画面を不透明(所定色、望ましくは黒色)の画面に切り替えることにより視認性を低下させており、コンテンツ画像に対する車外からの視認性を確実に低下させることができる。これにより、プライバシー保護が必要な場合や秘匿性確保が必要な場合にのみ、コンテンツの画像が外部から見えないようにすることが可能となる。
【0039】
また、コンテンツの画像を表示するアプリケーション毎に、マスク層112による視認性低下の要否を設定しておいて、視認性低下が必要である旨の設定がされているアプリケーションを実行したときに視認性低下の設定を行うようにすれば、コンテンツの画像を表示するアプリケーション毎に容易に視認性低下の要否の判断を行うことが可能となる。
【0040】
あるいは、コンテンツ毎に表示画像の視認性低下の要否を示すメタデータを対応付けることにより、このメタデータに基づいたコンテンツ毎に視認性低下の要否の判断が容易となる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、マスク層112を透明ディスプレイ110全体に対応させ、アプリケーション毎あるいはコンテンツ毎に透明ディスプレイ110全体を対象にマスク層112の視認性低下(透明/不透明)を設定したが、視認性低下が必要なコンテンツが表示領域の一部に対応している場合に、この一部の表示領域について、マスク層112の視認性を低下させてもよい。マスク層112を複数の画素で構成し、各画素毎に透明/黒画素の切り替えを行うことにより、マスク層112の一部領域について視認性を低下することができ、必要な箇所のみ視認性を低下させることが可能となる。例えば、送受信するメールの内容を表示する際にメールの本文が表示される部分のみをマスク処理(不透明化)したり、インターネット閲覧動作中にパスワード入力を伴うコンテンツについてこのパスワード入力領域のみをマスク処理したりする場合が考えられる。
【0042】
また、上述した実施形態では、利用者のプライバシー保護や会社情報などの秘匿確保の観点からコンテンツの表示画像が外部から見えないようにすることを想定していたが、視認性低下(不透明化)の要否判断をそれ以外の基準で行うようにしてもよい。
【0043】
例えば、マスク設定部126は、注視が必要なコンテンツ画像について視認性を低下させるようにしてもよい。映画などの動画再生などの場合は注視が必要であり、マスク処理によって背景を不透明の画面とすることにより、見やすさを改善してコンテンツの内容に集中しやすくなるという利点がある。一方、オーディオ再生時の再生情報や天気情報を見るなどの場合は、マスク処理はせずに、透明ディスプレイ110を通して車外の風景が映り込むようにする。また、テレビ電話やテレビ会議の場合も注視が必要であり、マスク処理によって背景を不透明の画面とすることが望ましい。このように、注視して内容を確認する必要があるコンテンツについてその内容が外部から見えないようにすることにより、同時に、このコンテンツを表示する際に窓を通して外部の景色が透けて見えないことによるコンテンツの見やすさの改善が可能となる。
【0044】
また、マスク設定部126は、コンテンツの内容が、自車両の搭乗者が透明ディスプレイ110を通して見える背景を補足する情報(AR地点情報など)であって、背景が見える状態を想定した情報である場合に、視認性を低下させないようにすることもできる。また、マスク設定部126は、コンテンツの内容が、自車両の搭乗者が透明ディスプレイ110を通して見える背景が見える状態を想定した情報でない場合(飲食店のメニュー情報など)に、マスク処理によって視認性を低下させるようにする。このように、透明ディスプレイ110を通して外部の背景が見える状態を想定しているか否かで、外部からのコンテンツの視認性を変更することが可能となり、必要に応じてコンテンツの見やすさの改善が可能となる。
【0045】
また、上述した実施形態では、マスク層112の視認性を低下させて外部からコンテンツの画像が見えないようにしたが、この見えない領域を利用して外部に商品広告等の情報を表示するようにしてもよい。
【0046】
図4は、透明ディスプレイ110を不透明化した際に外部に対して商品広告等の情報を表示する変形例を示す図である。
図4に示す車両用表示装置100Aは、
図1に示した車両用表示装置100に対して、マスク層112とウインドウガラス200の間に2つの目の透明ディスプレイ110Aを追加するとともに、表示処理装置120を表示処理装置120Aに置き換えたものである。この表示処理装置120Aは、表示処理装置120に対して、表示処理部124Aを追加し、アプリケーション処理部122を広告アプリを追加したアプリケーション処理部122Aに置き換えたものである。
【0047】
マスク設定部126によるマスク処理によってマスク層112を不透明化した際に、アプリケーション処理部122Aによって広告アプリを実行して生成された広告画面が表示処理部124Aによって透明ディスプレイ110Aに表示される。
【0048】
また、上述した実施形態では、利用者のプライバシー保護や会社情報などの秘匿確保の観点からマスク処理を行う場合について説明したが、このようなマスク処理は、透明ディスプレイ110に表示されたコンテンツの画像を見ることができる車外の第三者がいる場合にのみ行うようにマスク処理の機会を限定してもよい。
【0049】
図5は、車外の状況に応じてマスク処理の機会を限定する変形例を示す図である。
図5に示す車両用表示装置100Bは、
図1に示した車両用表示装置100に対して、カメラ140を追加するとともに、表示処理装置120を表示処理装置120Bに置き換えたものである。この表示処理装置120Bは、表示処理装置120に対して、車外状況判定部130が追加されている。
【0050】
カメラ140は、透明ディスプレイ110を車外から見ることできる範囲を撮像範囲として自車両の周囲を撮像する。車外状況判定部130は、カメラ140によって撮像された自車両周辺の画像の中から、自車両が走行中の場合の並走車の有無や、自車両が信号待ちなどで停車中の歩行者や並んで停車中の車両の有無を判定する。これらの車両や歩行者がいる旨の判定が行われると、マスク設定部126はマスク処理を実施し、それ以外の場合にはマスク設定部126は、マスク処理を行わない。これにより、マスク処理の機会を最小限に抑えることができる。
【0051】
また、上述した実施形態では、道路上を走行する車両を想定して説明を行ったが、線路上を走行する特急電車や新幹線などの車両について本発明を適用してもよい。これにより、例えば、特急電車や新幹線などの個室を用いる場合や一両全体を貸し切る場合などにおいて、車両の窓に設置された透明ディスプレイに表示された画像が、並走する他の電車の利用者や駅に停車時のホーム上の第三者によって覗かれることを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述したように、本発明によれば、車両の窓に設置された透明ディスプレイの裏側にマスク手段を重ねて配置し、マスク手段の視認性を可変することにより、通常は窓を通して車外の風景を見ながらコンテンツの画像を表示させるとともに、マスク手段の設定を変えるだけでコンテンツの画像に対する車外からの視認性を低下させることができるため、簡単な構成や処理内容で表示情報(コンテンツ)の覗き見を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
100 車両用表示装置
110 透明ディスプレイ
112 マスク層
120 表示処理装置
200 ウインドウガラス
122 アプリケーション(AP)処理部
124 表示処理部
126 マスク設定部