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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022164
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】廃油固化方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 15/00 20060101AFI20240208BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C11B15/00
C09K3/00 103L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125539
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522313732
【氏名又は名称】株式会社アルファテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博昭
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059BA90
4H059BB53
4H059CA92
4H059DA13
(57)【要約】
【課題】機械等に残存する廃油等を固化することで、廃油等の流出や飛散を防止することができる廃油固化方法を提案する。
【解決手段】容器内の廃油を固化させる廃油固化方法であって、容器内のオイルを抜き取るオイル抜取工程S1と、容器内に熱可塑性樹脂の高分子ポリマーからなるゲル化剤を噴霧して容器内に残存するオイルをゲル化させるオイルゲル化工程S2と、容器内に発泡ウレタンを注入するウレタン注入工程S3とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に残存する廃油を固化させる廃油固化方法であって、
前記容器内にゲル化剤を噴霧して前記廃油をゲル化させる工程と、
前記容器内に発泡ウレタンを注入する工程と、を備えることを特徴とする、廃油固化方法。
【請求項2】
前記ゲル化剤が熱可塑性樹脂の高分子ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の廃油固化方法。
【請求項3】
前記発泡ウレタンの発泡倍率が6~10倍であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の廃油固化方法。
【請求項4】
前記発泡ウレタンに水素結合する溶剤からなる添加剤を加えることを特徴とする、請求項3に記載の廃油固化方法。
【請求項5】
前記容器が減速機であり、
前記減速機内のギアオイルを抜き取る工程をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の廃油固化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械等に残存する廃油を固化する廃油固化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
減速機を有する機械を廃棄や解体する場合には、減速機内のギアオイルが漏出や飛散することを防止するために、減速機内からギアオイルを予め排出させる。ギア等が絡み合う減速機内では、ギアオイルを排出させた場合であっても、内部にギアオイルが残存してしまう。内部にギアオイルが残存した状態の機械を、解体、廃棄、輸送等すると、残存したギアオイルが漏出または飛散してしまう場合がある。そのため、減速機等を解体や輸送する場合には、周囲にギアオイルが飛散することがないように、養生する必要がある。また、減速機などを廃棄する場合において、減速機に加えられた衝撃によりギアオイルが飛散すると、周辺環境に悪影響を及ぼす恐れがある。
減速機等に残存するギアオイルの除去を目的として、フラッシングを行う場合がある。しかし、フラッシングは、手間が掛かるため、廃棄処分となる減速機等に対して行うのは効率的ではない。
ギアオイルを固化させることができれば、ギアオイルの漏出を抑制できる。従来、廃油に処理剤(固化材)を添加して固化させる技術が開示されている。例えば、特許文献1には、廃油に粉末又は粒状の結合材を添加混合する廃油固化体の製造方法が開示されている。
ところが、従来の廃油の固化技術は、廃油に対して処理剤を添加混合するのが一般的である。そのため、多数のギアが配設された減速機内のギアオイル固化させる技術は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-161338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は機械等に残存する廃油等を固化することで、廃油等の流出や飛散を防止することができる廃油固化方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の廃油固化方法は、容器内に残存する廃油を固化させる廃油常温固化方法であって、前記容器内にゲル化剤を噴霧して前記廃油をゲル化させる工程と、前記容器内に発泡ウレタンを注入する工程とを備えている。
かかる廃油固化方法によれば、廃油やギアオイルを吸着させたゲル化剤が発泡ウレタンにより封じ込められる(固化される)。そのため、機械等を解体する場合であっても、残存するギアオイルなどが流出や飛散することを防止できる。また、機械等を廃棄する場合において、機械に衝撃を加えた場合や、機械に破損が生じた場合であっても、ギアオイル等が飛散することを防止できる。また、輸送時における廃油等の流出を抑制できる。
前記ゲル化剤には、熱可塑性樹脂の高分子ポリマーを使用すればよい。
前記発泡ウレタンには、容器(筐体)内の回り込みを考慮して、発泡倍率が6~10倍のものを使用するのが望ましい。また、前記発泡ウレタンには、水素結合する溶剤からなる添加剤を加えるのが望ましい。
また、容器が減速機の場合には、前記減速機内のギアオイルを抜き取る工程をさらに備えているのが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の廃油固化方法によれば、機械等に残存する廃油等を固化することで、廃油等の流出や飛散を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の風力発電施設を示す斜視図である。
図2】廃油固化方法の手順を示すフローチャートである。
図3】実験に使用した容器を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】オイルが注入された容器を示す写真である。
図5】ゲル化剤噴霧後の容器を示す写真である。
図6】ウレタン注入状況を示す写真である。
図7】ウレタン注入後の容器を示す写真である。
図8】容器から取り出したウレタンとゲル化したギアオイルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態では、老朽化した風力発電施設1を解体する場合について説明する。図1に風力発電施設1を示す。風力発電施設1は、図1に示すように、風車21と、風車21を支持する支柱22とを有する上部構造体2と、上部構造体2を支持する基礎3とを備えている。風車21は、ブレード23およびナセル24を備えている。
風力発電施設1を解体する際には、何らかの原因によりナセル24のギアオイル等が飛散または漏出することがないように注意を払いながら作業を行う必要がある。以下、本実施形態では、ギアオイルを風力発電施設1の解体時に、予め減速機内においてギアオイルを固化することで、ギアオイルの飛散、漏出を抑制する。以下、廃油固化方法を示す。
【0009】
図2に廃油固化方法の手順を示す。廃油固化方法は、図2に示すように、オイル抜取工程S1と、オイルゲル化工程S2と、ウレタン注入工程S3とを備えている。
オイル抜取工程S1は、減速機内のギアオイルを抜き取る工程である。減速機には、オイル抜き取り口と給油口が形成されており、ギアオイルの抜き取り作業は、オイル抜き取り口からギアオイルを排出させることにより行う。
【0010】
オイルゲル化工程S2は、減速機内に残存するギアオイルをゲル化させる工程である。オイルゲル化工程S2では、減速機内にゲル化剤を噴霧する。ゲル化剤には、熱可塑性樹脂の高分子ポリマーまたはスチレンブタジエンゴムを使用する。ゲル化剤は、粉末または粒状であり、圧縮空気により減速機内に噴霧して、減速機内全体に行きわたるようにする。ゲル化剤は、減速機のオイル抜き取り口および給油口から噴霧する。本実施形態では、ゲル化剤が3~4倍のギアオイルを吸収すると推定して、減速機内のギアオイルの残量の予測値に応じた量のゲル化剤を噴霧する。また、ゲル化剤では反応が悪い廃油の場合には、ゲル化剤とともに、水分を吸収する素材(例えば、吸水性高分子ポリマー)を追加使用する。ゲル化剤を噴霧したら、所定時間(減速機に容量時に応じた時間であって、本実施形態では24時間とする)養生してギアオイルをゲル化剤に吸収させる。ゲル化剤を圧縮空気とともに墳入することで、減速機内に乱流が生じ、ゲル化剤とギアオイルとを撹拌させる。
【0011】
ウレタン注入工程S3は、減速機内に発泡ウレタンを注入する工程である。発泡ウレタンには、隅角部への回り込みを考慮して、発泡倍率が6~10倍のものを使用する。本実施形態では、速乾タイプ2液型の発泡ウレタンに、水素結合する溶剤からなる添加剤を加える。発泡ウレタン(添加剤を含む)は、減速機内の空間が充填されるまで注入する。発泡ウレタンを注入したら、所定時間養生する。
発泡ウレタンを充満させることで、減速機内のギアオイル(ギアオイルを吸収したゲル化剤)が固化される。そのため、減速機内からギアオイルが漏出すること抑制され、また、減速機が破損した場合であってもギアオイルが飛散することがない。
【0012】
本実施形態の廃油固化方法によれば、廃油やギアオイルがゲル化剤に吸着された後、発泡ウレタンにより固化される。そのため、機械等を解体する場合であっても、残存するギアオイルなどが漏出することや飛散することを防止できる。
また、機械等を廃棄する場合において、機械に衝撃を加えた場合や、機械に破損が生じた場合であっても、ギアオイル等が飛散することを防止できる。
さらに、解体した部品(例えば、ナセルから回収した減速機等)の輸送時における廃油等の漏出を抑制できる。
減速機内のギアオイルは、劣化しているとともに様々な添加剤が混入しているため、水分を吸収する素材をゲル化剤とともに噴霧することで吸収する。
ゲル化剤は、圧縮空気とともに墳入するため、通常の添加では行き届かない部分へも注入が可能である。また、撹拌棒等を利用した撹拌作業を要しないため、作業性に優れている。
【0013】
以下、廃油固化方法について実施した実験結果について説明する。
実験では、減速機を模擬した実験用アクリル模型(容器4)内にオイルを注入し、容器4内のオイルを本実施形態の廃油固化方法により固化させた。図3に容器4を示す。図3(a)および(b)に示すように、容器4は、矩形状に設けられた4つの側板41と、上面を覆う天板42と、下面を覆う底版43とにより箱型を呈している。容器4の長手方向一端に注入口44、他端に排出口45が形成されている。容器4の内部には、ギアを模した複数の仕切り壁46が設けられている。仕切り壁46は、高さが容器4の内空高さと同じで、幅が、容器4の内空幅よりも小さい。仕切り壁46は、左右のいずれか一方が、容器4の内面に当接していて、他方が容器4の内面との間に隙間を有している。本実施形態では、6つの仕切り壁46が、注入口44から排出口45の間に隙間をあけて配設されている。仕切り壁46と容器4の内面との隙間は、左右交互に設けられている。
【0014】
まず、容器4内にギアオイルを貯留させる。図4にギアオイルを貯留させた容器4を示す。本実験では、図4に示すように、容器4内に、深さ1cm(0.43リットル)のギアオイルを注入する。ギアオイルは、容器4の内面全体に付着した状態とする。
次に、容器4の注入口44から、250mlのゲル化剤を圧縮空気で噴霧する(オイルゲル化工程)。ゲル化剤は、3~4倍のギアオイルを吸収する。ゲル化剤を噴霧したら、所定時間養生する(図5参照)。図5は、ゲル化剤噴霧後の容器4を示す。
そして、ゲル化剤反応後、容器4内に発泡ウレタンを充填する(ウレタン注入工程)。図6に発泡ウレタン注入状況を示す。発泡ウレタンは、図6に示すように、注入口44から注入するものとし、容器4内に充満させる。本実験では、速乾タイプ2液型の発泡ウレタンに、水素結合する溶剤からなる添加剤を加えたものを充填する(図7参照)。図7は、発泡ウレタンが充満した容器4である。
【0015】
図8に実験後に容器から取り出した、発泡ウレタンとゲル化したギアオイルを示す。図8に示すように、容器の底部に貯留したギアオイルは、ゲル化剤によりゲル化する。ゲル化したギアオイルは、容器4に注入された発泡ウレタンにより固化されて、漏出または飛散が抑制されてる。
したがって、本実施形態の廃油固化方法によれば、容器4に残存する廃油を固化することが可能であることが確認できた。
【0016】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、風力発電施設を解体する際の減速機内のギアオイルの飛散防止方法について説明したが、廃油固化の対象となる装置は限定されるものではない。例えば、シールドマシンのカッタ洗浄環内の廃油処理や、杭打機に装備された減速機解体時の廃油処理等に使用してもよい。
機械器具の解体は、陸上の場合であってもよいし、水上(海上)であってもよい。
前記実施形態では、2箇所(オイル抜き取り口と給油口)から減速機内にゲル化剤を噴霧するものとしたが、ゲル化剤を噴霧する箇所数は限定されるものではない。例えば、オイル抜き取り口と給油口のいずれか1方のみでもよい。
オイル抜取工程S1において、ギアオイルを排出させたのち、必要に応じてフラッシングを行ってもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 風力発電施設
2 上部構造体
21 風車
22 支柱
23 ブレード
24 ナセル
3 基礎
4 容器
44 注入口
45 排出口
46 仕切り壁
S1 オイル抜取工程
S2 オイルゲル化工程
S3 ウレタン注入工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8