(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022173
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】受光素子の製造方法及び受光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20240208BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L27/144 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125561
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 大資
【テーマコード(参考)】
4M118
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
4M118AB01
4M118AB10
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(57)【要約】
【課題】リーク電流を低減できる受光素子の製造方法及び受光素子を提供する。
【解決手段】受光素子の製造方法は、基板の一方の面に第1コンタクト層を形成する工程と、前記第1コンタクト層の上に受光層を形成する工程と、前記受光層の上に第2コンタクト層を形成する工程と、前記第2コンタクト層、前記受光層及び前記第1コンタクト層の一部を除去し、前記第1コンタクト層が露出する第1溝を形成する工程と、前記第1溝に樹脂を埋め込む工程と、前記樹脂を埋め込む工程の後に、前記第2コンタクト層を除去し、画素を分離する第2溝を形成する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に第1コンタクト層を形成する工程と、
前記第1コンタクト層の上に受光層を形成する工程と、
前記受光層の上に第2コンタクト層を形成する工程と、
前記第2コンタクト層、前記受光層及び前記第1コンタクト層の一部を除去し、前記第1コンタクト層が露出する第1溝を形成する工程と、
前記第1溝に樹脂を埋め込む工程と、
前記樹脂を埋め込む工程の後に、前記第2コンタクト層を除去し、画素を分離する第2溝を形成する工程と、
を有する、受光素子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂を埋め込む工程と前記第2溝を形成する工程との間に、前記樹脂の上に絶縁膜を形成する工程を更に有する、
請求項1に記載の受光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2溝を形成する工程の後に、ダメージ層を除去する工程を更に有する、
請求項1に記載の受光素子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂は、ベンゾシクロブテン樹脂又はポリイミド樹脂である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の受光素子の製造方法。
【請求項5】
基板と、
前記基板の一方の面に設けられた第1コンタクト層と、
前記第1コンタクト層の上に設けられた受光層と、
前記受光層の上に設けられた第2コンタクト層と、
前記第2コンタクト層、前記受光層及び前記第1コンタクト層の一部が除去され、前記第1コンタクト層が露出する第1溝と、
前記第1溝の内部の一部に設けられた樹脂と、
前記第2コンタクト層が除去された画素を分離する第2溝と、
を有する、受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受光素子の製造方法及び受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
溝により分離された画素が2次元に配列された2次元アレイ型の受光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の受光素子では、電極引き出し部のメサを形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜を成膜した際に生じた画素部のメサ界面ダメージが残ったままになり、リーク電流が大きくなる。
【0005】
本開示は、リーク電流を低減できる受光素子の製造方法及び受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の受光素子の製造方法は、基板の一方の面に第1コンタクト層を形成する工程と、前記第1コンタクト層の上に受光層を形成する工程と、前記受光層の上に第2コンタクト層を形成する工程と、前記第2コンタクト層、前記受光層及び前記第1コンタクト層の一部を除去し、前記第1コンタクト層が露出する第1溝を形成する工程と、前記第1溝に樹脂を埋め込む工程と、前記樹脂を埋め込む工程の後に、前記第2コンタクト層を除去し、画素を分離する第2溝を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リーク電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る受光素子を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る受光素子を示す上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その14)である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その15)である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その16)である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その17)である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その18)である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その19)である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その20)である。
【
図23】
図23は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その21)である。
【
図24】
図24は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その22)である。
【
図25】
図25は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その23)である。
【
図26】
図26は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その24)である。
【
図27】
図27は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その25)である。
【
図28】
図28は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その26)である。
【
図29】
図29は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その27)である。
【
図30】
図30は、実施形態に係る受光素子の製造方法を示す断面図(その28)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る受光素子の製造方法は、基板の一方の面に第1コンタクト層を形成する工程と、前記第1コンタクト層の上に受光層を形成する工程と、前記受光層の上に第2コンタクト層を形成する工程と、前記第2コンタクト層、前記受光層及び前記第1コンタクト層の一部を除去し、前記第1コンタクト層が露出する第1溝を形成する工程と、前記第1溝に樹脂を埋め込む工程と、前記樹脂を埋め込む工程の後に、前記第2コンタクト層を除去し、画素を分離する第2溝を形成する工程と、を有する。この場合、第1溝を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜を成膜する際に、画素を形成するメサの側面が露出していない。このため、第1溝を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜の成膜時のメサの側面へのダメージを低減できる。その結果、リーク電流を低減できる。
【0012】
〔2〕 〔1〕において、前記樹脂を埋め込む工程と前記第2溝を形成する工程との間に、前記樹脂の上に絶縁膜を形成する工程を更に有してもよい。この場合、第2溝を形成する際に用いられるエッチングマスクを除去する際の樹脂のエッチングを抑制しやすい。
【0013】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記第2溝を形成する工程の後に、ダメージ層を除去する工程を更に有してもよい。この場合、第2溝を形成する際に生じたダメージ層を除去できる。
【0014】
〔4〕 〔1〕~〔3〕において、前記樹脂は、ベンゾシクロブテン樹脂又はポリイミド樹脂であってよい。この場合、塗布により第1溝に樹脂を埋め込みやすい。
【0015】
〔5〕 本開示の他の一態様に係る受光素子は、基板と、前記基板の一方の面に設けられた第1コンタクト層と、前記第1コンタクト層の上に設けられた受光層と、前記受光層の上に設けられた第2コンタクト層と、前記第2コンタクト層、前記受光層及び前記第1コンタクト層の一部が除去され、前記第1コンタクト層が露出する第1溝と、前記第1溝の内部の一部に設けられた樹脂と、前記第2コンタクト層が除去された画素を分離する第2溝と、を有する。この場合、画素分離のための第2溝を電極引き出しのための第1溝よりも後に形成できる。これにより、第1溝を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜を成膜する際に、画素を形成するメサの側面が露出していない。このため、第1溝を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜の成膜時のメサの側面へのダメージを低減できる。その結果、リーク電流を低減できる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0017】
(受光素子)
図1及び
図2を参照し、実施形態に係る受光素子100について説明する。
図1は、実施形態に係る受光素子100を示す断面図である。
図2は、実施形態に係る受光素子100を示す上面図である。
図1は、
図2のII-II線矢視断面図である。受光素子100は、近赤外光を検出する受光素子である。受光素子100は、いわゆる裏面入射型受光素子である。
図1に示されるように、受光素子100は、基板10を含む。
【0018】
基板10は、例えばInP基板である。基板10は、不純物元素としてFe(鉄)がドープされており半絶縁化されている。基板10の厚さは、例えば500μm~700μmである。基板10は、例えば一辺の長さが2mm~15mmの矩形状を有する。基板10は、第1主面10aと、第1主面10aと反対の第2主面10bとを有する。第1主面10aの上には、n型コンタクト層21と、受光層22と、ワイドギャップ層23と、p型コンタクト層24とがこの順に設けられている。第2主面10bには、反射防止膜80が設けられている。反射防止膜80は、例えばSiN膜により形成されている。
【0019】
n型コンタクト層21は、基板10の上に設けられている。n型コンタクト層21は、n-InPにより形成されており、n型となる不純物元素として珪素(Si)が約2×1018cm-3の濃度でドープされている。n型コンタクト層21の厚さは、例えば1μm~3μmである。
【0020】
受光層22は、n型コンタクト層21の上に設けられている。受光層22は、不純物元素がドープされていないIn0.53Ga0.47Asにより形成されている。受光層22の厚さは、例えば1μm~3μmである。
【0021】
ワイドギャップ層23は、受光層22の上に設けられている。ワイドギャップ層23は、例えばn型ワイドギャップ層23aと、p型ワイドギャップ層23bとを含む。n型ワイドギャップ層23aは、n-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1015cm-3の濃度でドープされている。n型ワイドギャップ層23aの厚さは、例えば0.2μm~0.8μmである。p型ワイドギャップ層23bは、p-InPにより形成されており、p型となる不純物元素として亜鉛(Zn)が約2×1015cm-3の濃度でドープされている。p型ワイドギャップ層23bの厚さは、例えば0.1μm~0.5μmである。n型ワイドギャップ層23aとp型ワイドギャップ層23bとの界面には、pn接合が形成されている。
【0022】
p型コンタクト層24は、ワイドギャップ層23の上に設けられている。p型コンタクト層24は、p-InGaAsにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約1×1019cm-3の濃度でドープされている。p型コンタクト層24の厚さは、例えば0.1μm~0.3μmである。
【0023】
受光素子100には、電極引き出しのための溝71と、画素分離のための溝72とが形成されている。
【0024】
溝71は、p型コンタクト層24、ワイドギャップ層23、受光層22及びn型コンタクト層21の一部を除去することにより形成されている。溝71は、外周に沿って形成されている。溝71は、底面においてn型コンタクト層21が露出し、側面においてn型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24が露出する。露出するn型コンタクト層21の上と、n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層の側面とには、第1パッシベーション膜41が設けられている。第1パッシベーション膜41は、例えば厚さが100nm~400nmのSiN膜により形成されている。溝71の内部には、樹脂51が埋め込まれている。樹脂51は、例えばベンゾシクロブテン(BCB)又はポリイミド樹脂であってよい。樹脂51の上には、第2パッシベーション膜42及び第3パッシベーション膜43がこの順に設けられる。
【0025】
第1主面10aと直交する方向から見たとき、受光素子100には、一部が溝71と重なる溝73が設けられている。溝73は、第3パッシベーション膜43、第2パッシベーション膜42、樹脂51及び第1パッシベーション膜41を除去することにより形成されている。溝73は、外周に沿って形成されている。溝73は、底面においてn型コンタクト層21が露出し、側面において第1パッシベーション膜41、樹脂51、第2パッシベーション膜42及び第3パッシベーション膜43が露出する。露出するn型コンタクト層21の上と、第1パッシベーション膜41、樹脂51、第2パッシベーション膜42及び第3パッシベーション膜43の側面と、第3パッシベーション膜43の上とには、n電極61が形成されている。n電極61は、例えばチタン(Ti)膜と白金(Pt)膜と金(Au)膜との積層膜により形成されている。
【0026】
溝72は、p型コンタクト層24及びワイドギャップ層23の一部を除去することにより形成されている。溝72は、底面においてn型ワイドギャップ層23aが露出する。溝72により分離されたメサ70により、各々の画素が形成される。メサ70におけるp型コンタクト層24の上には、p電極62が形成されている。p電極62は、例えばTi膜とPt膜とAu膜との積層膜により形成されている。露出するp型コンタクト層24の上と、ワイドギャップ層23及びp型コンタクト層24の側面とには、第3パッシベーション膜43が設けられている。ワイドギャップ層23のpn接合の側面は、第3パッシベーション膜43と接触している。第3パッシベーション膜43は、例えば厚さが100nm~400nmのSiN膜により形成されている。
【0027】
以上に説明したように、実施形態に係る受光素子100によれば、電極引き出しのための溝71の内部の一部に樹脂51が埋め込まれ、かつ画素分離のための溝72には樹脂51が埋め込まれていない構造を有する。この場合、画素分離のための溝72を電極引き出しのための溝71よりも後に形成できる。これにより、溝71を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜を成膜する際に、画素を形成するメサ70の側面が露出していない。このため、溝71を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜の成膜時のメサ70の側面へのダメージを低減できる。その結果、リーク電流を低減できる。
【0028】
(受光素子の製造方法)
図3~
図29を参照し、実施形態に係る受光素子100の製造方法について説明する。
【0029】
まず、
図3に示されるように、基板10の第1主面10aに、エピタキシャル成長により、n型コンタクト層21、受光層22、ワイドギャップ層23及びp型コンタクト層24をこの順に形成する。
【0030】
基板10は、例えばInP基板である。基板10は、不純物元素としてFeがドープされており半絶縁化されている。基板10の厚さは、例えば500μm~700μmである。
【0031】
n型コンタクト層21は、n-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1018cm-3の濃度でドープされている。n型コンタクト層21の厚さは、例えば1μm~3μmである。
【0032】
受光層22は、不純物元素がドープされていないIn0.53Ga0.47Asにより形成されている。受光層22の厚さは、例えば1μm~3μmである。
【0033】
ワイドギャップ層23は、例えばn型ワイドギャップ層23aと、p型ワイドギャップ層23bとを含む。n型ワイドギャップ層23aは、n-InPにより形成されており、n型となる不純物元素としてSiが約2×1015cm-3の濃度でドープされている。n型ワイドギャップ層23aの厚さは、例えば0.2μm~0.8μmである。p型ワイドギャップ層23bは、p-InPにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約2×1015cm-3の濃度でドープされている。p型ワイドギャップ層23bの厚さは、例えば0.1μm~0.5μmである。n型ワイドギャップ層23aとp型ワイドギャップ層23bとの界面には、pn接合が形成されている。
【0034】
p型コンタクト層24は、p-InGaAsにより形成されており、p型となる不純物元素としてZnが約1×1019cm-3の濃度でドープされている。p型コンタクト層24の厚さは、例えば0.1μm~0.3μmである。
【0035】
次に、基板10の外周に沿って電極引き出しのための溝71を形成する。まず、
図4に示されるように、p型コンタクト層24の上に、プラズマCVD(chemical vapor deposition)によりSiN膜31を成膜する。SiN膜31の厚さは、例えば0.6μm~2μmである。SiN膜31の代わりにSiO
2膜を用いてもよい。この後、成膜されたSiN膜31の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、レジストパターン32を形成する。レジストパターン32の厚さは、例えば1μm~4μmである。レジストパターン32は、溝71が形成される領域に開口部32aを有する。
【0036】
次に、
図5に示されるように、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、レジストパターン32の開口部32aにおけるSiN膜31を除去し、SiN膜31によりエッチングマスクを形成する。フッ素系ガスは、例えばCF
4ガス、SF
6ガスである。
【0037】
次に、
図6に示されるように、レジストパターン32を有機溶剤等により除去する。
【0038】
次に、
図7に示されるように、ハロゲン系ガスを用いたドライエッチングにより、SiN膜31が除去された領域のp型コンタクト層24、p型ワイドギャップ層23b、n型ワイドギャップ層23a、受光層22及びn型コンタクト層21の一部を除去し、溝71を形成する。溝71は、底面においてn型コンタクト層21が露出し、側面においてn型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24が露出する。n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24の露出面には、ドライエッチングにより図示しないダメージ層が生じうる。ハロゲン系ガスは、例えばCl
2ガス、SiCl
4ガスである。
【0039】
次に、
図8に示されるように、塩酸系のエッチング液により、溝71を形成する際に生じたダメージ層を除去する。この場合、溝71を形成する際に生じたダメージ層を除去できる。このとき、溝71の底面においてn型コンタクト層21が残るようにする。塩酸系のエッチング液は、例えばHClである。
【0040】
次に、
図9に示されるように、バッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、SiN膜31を除去する。
【0041】
次に、
図10に示されるように、p型コンタクト層24の上、溝71の底面及び側面に、プラズマCVDにより第1パッシベーション膜41を成膜する。第1パッシベーション膜41は、例えばSiN膜である。SiN膜の代わりにSiO
2膜を用いてもよい。第1パッシベーション膜41の厚さは、例えば100nm~400nmである。
【0042】
次に、
図11に示されるように、第1パッシベーション膜41の上に、スピン塗布により樹脂51を塗布し、溝71に樹脂51を埋め込む。このとき、溝71が樹脂51で完全に埋まるようにする。この後、樹脂51を熱硬化させる。樹脂51は、例えばBCB樹脂又はポリイミド樹脂であってよい。この場合、塗布により溝71に樹脂51を埋め込みやすい。
【0043】
次に、
図12に示されるように、フッ素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、p型コンタクト層24の上の樹脂51を除去し、第1パッシベーション膜41を露出させる。これにより、第1パッシベーション膜41の上面と樹脂51の上面とが面一又は略面一となる。フッ素系ガスは、例えばCF
4ガス、SF
6ガスである。
【0044】
次に、
図13に示されるように、第1パッシベーション膜41の上及び樹脂51の上に、プラズマCVDにより第2パッシベーション膜42を成膜する。この場合、溝72を形成する際に用いられるエッチングマスク用のSiN膜34を除去する際の樹脂51のエッチングを抑制しやすい。第2パッシベーション膜42は、例えばSiN膜である。SiN膜の代わりにSiO
2膜を用いてもよい。第2パッシベーション膜42の厚さは、例えば50nm~200nmである。
【0045】
次に、
図14に示されるように、第2パッシベーション膜42の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、レジストパターン33を形成する。レジストパターン33の厚さは、例えば1μm~2μmである。レジストパターン33は、溝71の上を除く領域に開口部33aを有する。
【0046】
次に、
図15に示されるように、バッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、レジストパターン33の開口部33aにおける第1パッシベーション膜41及び第2パッシベーション膜42を除去する。
【0047】
次に、
図16に示されるように、レジストパターン33を有機溶剤等により除去する。
【0048】
次に、画素分離のための溝72を形成する。まず、
図17に示されるように、p型コンタクト層24の上と、第1パッシベーション膜41の側面と、第2パッシベーション膜42の上および側面とに、プラズマCVDによりSiN膜34を成膜する。SiN膜34は、例えばバッファードフッ酸に対するエッチングレートが第1パッシベーション膜41および第2パッシベーション膜42よりも大きい膜である。例えば、SiN膜34の成膜温度を第1パッシベーション膜41および第2パッシベーション膜42の成膜温度よりも低くすることにより、バッファードフッ酸に対するエッチングレートが第1パッシベーション膜41および第2パッシベーション膜42よりも大きいSiN膜34を成膜できる。SiN膜34は、例えばバッファードフッ酸に対するエッチングレートが第1パッシベーション膜41および第2パッシベーション膜の2倍以上大きい膜であってよい。SiN膜34の代わりにSiO
2膜を用いてもよい。
【0049】
次に、
図18に示されるように、SiN膜34の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、レジストパターン35を形成する。このとき、溝71が樹脂51で埋め込まれているため、厚さの薄いレジストパターン35を使用できる。このため、寸法精度よく開口部35aを形成できる。結果として、溝72により分離されて画素を形成するメサ70を寸法精度よく形成できる。これに対し、溝71が樹脂51で埋め込まれていない場合、溝71の底面及び側面を覆うようにフォトレジストを塗布する必要がある。このため、フォトレジストに寸法精度よく開口部を形成することが困難である。レジストパターン35の厚さは、例えば1μm~2μmである。レジストパターン35は、溝72が形成される領域に開口部35aを有する。
【0050】
次に、
図19に示されるように、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、レジストパターン35の開口部35aにおけるSiN膜34を除去し、SiN膜34によりエッチングマスクを形成する。フッ素系ガスは、例えばCF
4ガス、SF
6ガスである。
【0051】
次に、
図20に示されるように、レジストパターン35を有機溶剤等により除去する。
【0052】
次に、
図21に示されるように、ハロゲン系ガスを用いたドライエッチングにより、SiN膜34が除去された領域のp型コンタクト層24、p型ワイドギャップ層23b及びn型ワイドギャップ層23aの一部を除去し、溝72を形成する。溝72は、底面においてn型ワイドギャップ層23aが露出し、側面においてn型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24が露出する。溝72により分離されたメサ70により、各々の画素が形成される。n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24の露出面には、ドライエッチングにより図示しないダメージ層が生じうる。ハロゲン系ガスは、例えばCl
2ガス、SiCl
4ガスである。
【0053】
次に、
図22に示されるように、塩酸系のエッチング液により、溝72を形成する際に生じたダメージ層を除去する。この場合、溝72を形成する際に生じたダメージ層を除去できる。このとき、溝72の底面においてn型ワイドギャップ層23aが残るようにする。塩酸系のエッチング液は、例えばHClである。
【0054】
次に、
図23に示されるように、バッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、SiN膜34を除去する。このとき、溝71の底面および側面に形成された第1パッシベーション膜41と、樹脂51の上に形成された第2パッシベーション膜42とが残るようにする。例えば、SiN膜34がバッファードフッ酸に対するエッチングレートが第1パッシベーション膜41および第2パッシベーション膜42の2倍以上大きい膜である場合、オーバーエッチングを考慮しても第2パッシベーション膜42を残すことが容易である。
【0055】
次に、
図24に示されるように、p型コンタクト層24の上と、第1パッシベーション膜41の側面と、第2パッシベーション膜42の上および側面と、溝72の底面及び側面とに、プラズマCVDにより第3パッシベーション膜43を成膜する。このとき、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24の露出面のダメージ層が除去されかつダメージがない状態のまま第3パッシベーション膜43を成膜できるので、リーク電流を低減できる。一方、画素を形成する溝72を形成した後に電極引き出しのための溝71を形成する場合、ダメージ層が除去された後に、溝71を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO
2膜を成膜する。このため、エッチングマスク用のSiN膜又はSiO
2膜の成膜時に、画素を形成するメサ70の側面(n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24の露出面)にダメージが生じ、生じたダメージが残ったままになる。その結果、リーク電流が大きくなる。なお、溝71を形成した後であり、かつ溝72を覆うパッシベーション膜を成膜する前にダメージ層を除去しようとすると、メサ70の上面が露出しているため、p型コンタクト層24の一部又は全部がエッチングされるため、ダメージ層を除去できない。第3パッシベーション膜43は、例えばSiN膜である。SiN膜の代わりにSiO
2膜を用いてもよい。第3パッシベーション膜43の厚さは、例えば100nm~400nmである。
【0056】
次に、
図25に示されるように、第3パッシベーション膜43の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、レジストパターン36を形成する。レジストパターン36は、n電極61が形成される領域に開口部36aを有する。第1主面10aと直交する方向から見たとき、例えば開口部36aは樹脂51が設けられた領域の少なくとも一部と重なる位置に形成される。開口部36aの幅は、例えば溝71の幅よりも狭くてよい。
【0057】
次に、
図26に示されるように、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、レジストパターン36の開口部36aにおける第3パッシベーション膜43、第2パッシベーション膜42、樹脂51及び第1パッシベーション膜41を除去する。これにより、溝73が形成される。開口部36aの幅は溝71の幅よりも狭いため、溝73の両側には第1パッシベーション膜41及び樹脂51が残る。このため、n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24の側面がドライエッチングの際にフッ素系ガスに晒されない。その結果、n型コンタクト層21、受光層22、n型ワイドギャップ層23a、p型ワイドギャップ層23b及びp型コンタクト層24の側面はダメージを受けない。溝73は、底面においてn型コンタクト層21が露出し、側面において第1パッシベーション膜41、樹脂51、第2パッシベーション膜42及び第3パッシベーション膜43が露出する。フッ素系ガスは、例えばCF
4ガス、SF
6ガスである。
【0058】
次に、
図27に示されるように、レジストパターン36を有機溶剤等により除去する。
【0059】
次に、
図28に示されるように、メサ70における第3パッシベーション膜43の一部を除去し、p型コンタクト層24を露出させる。具体的には、第3パッシベーション膜43の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、不図示のレジストパターンを形成する。レジストパターンは、p電極62が形成される領域に開口部を有しており、レジストパターンの開口部における第3パッシベーション膜43をドライエッチングにより除去し、p型コンタクト層24の表面を露出させる。
【0060】
次に、
図29に示されるように、n型コンタクト層21の上、溝73の側面及び外周のメサ74における第3パッシベーション膜43の上にn電極61を形成し、メサ70におけるp型コンタクト層24の上にp電極62を形成する。n電極61及びp電極62は、リフトオフ法により形成する。具体的には、各々の電極が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成し、EB蒸着により金属膜を成膜した後、有機溶剤等に浸漬させることにより、レジストパターンと共にレジストパターンの上の金属膜を除去することにより形成する。n電極61及びp電極62は、例えばTi膜とPt膜とAu膜との積層膜により形成されている。
【0061】
次に、
図30に示されるように、基板10の第2主面10bに、プラズマCVDにより、反射防止膜80を形成する。反射防止膜80は、例えばSiN膜である。SiN膜の代わりにSiON膜を用いてもよい。以上により、実施形態に係る受光素子100を製造できる。
【0062】
以上に説明したように、実施形態に係る受光素子100の製造方法によれば、画素分離のための溝72を電極引き出しのための溝71よりも後に形成する。この場合、溝71を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜を成膜する際に、画素を形成するメサ70の側面が露出していない。このため、溝71を形成するためのエッチングマスク用のSiN膜又はSiO2膜の成膜時のメサ70の側面へのダメージを低減できる。その結果、リーク電流を低減できる。
【0063】
上記の実施形態では、受光素子100が2次元アレイ型である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、受光素子100は溝72により分離された画素が1次元に配列されたものであってもよい。
【0064】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 基板
10a 第1主面
10b 第2主面
21 n型コンタクト層
22 受光層
23 ワイドギャップ層
23a n型ワイドギャップ層
23b p型ワイドギャップ層
24 p型コンタクト層
31 SiN膜
32 レジストパターン
32a 開口部
33 レジストパターン
33a 開口部
34 SiN膜
35 レジストパターン
35a 開口部
36 レジストパターン
36a 開口部
41 第1パッシベーション膜
42 第2パッシベーション膜
43 第3パッシベーション膜
51 樹脂
61 n電極
62 p電極
70 メサ
71 溝
72 溝
73 溝
74 メサ
80 反射防止膜
100 受光素子