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特開2024-22179温度予測方法、軸受温度予測システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022179
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】温度予測方法、軸受温度予測システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20240208BHJP
   G01M 13/04 20190101ALI20240208BHJP
【FI】
G01K1/14 M
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125568
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 大貴
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AC05
2G024BA27
2G024CA09
2G024CA17
2G024DA09
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】将来実行予定の駆動モード下での軸受の温度予測をより正確に行う。
【解決手段】転がり軸受の温度予測方法は、既駆動スケジュールにより転がり軸受を駆動した際の、転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出し、既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定し、第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、測定した転がり軸受の温度の測定値に対応する第1の発熱特性曲線上の点と、測定した周囲温度の測定値に対応する温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出し、先駆動スケジュールにより転がり軸受を駆動させた場合の、転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出し、2軸平面上における第2の発熱特性曲線と放熱特性直線との交点に対応する温度値を、先駆動スケジュールにより転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の温度を予測する温度予測方法であって、
前記転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出工程と、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定工程と、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定工程にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定工程にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出工程と、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出工程と、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出工程と、
を有することを特徴とする温度予測方法。
【請求項2】
前記第1の発熱特性曲線は、前記既駆動スケジュールによる前記転がり軸受を駆動した際の平均回転速度、および前記転がり軸受に対する荷重を用いて導出されることを特徴とする請求項1に記載の温度予測方法。
【請求項3】
前記第2の発熱特性曲線は、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の平均回転速度、および前記転がり軸受に対する荷重を用いて導出されることを特徴とする請求項1に記載の温度予測方法。
【請求項4】
前記第4の導出工程にて導出された推定温度を用いて、前記転がり軸受の異常診断を行う診断工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の温度予測方法。
【請求項5】
前記診断工程における診断結果に基づき、前記先駆動スケジュールを再設定する再設定工程を更に有することを特徴とする請求項4に記載の温度予測方法。
【請求項6】
転がり軸受の温度を予測する温度予測システムであって、
前記転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出手段と、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定手段と、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定手段にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定手段にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出手段と、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出手段と、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出手段と、
を有することを特徴とする温度予測システム。
【請求項7】
コンピュータに、
転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出工程、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定工程、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定工程にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定工程にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出工程、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出工程、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出工程、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、軸受の温度変化を予測する温度予測方法、温度予測システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製鉄や製紙などの製造機械において生産性向上のための高速化が進んでいる。このような機械には軸受が備えられ、軸受の使用環境によっては、軸受の発熱が問題となる。例えば、冷却水や油潤滑などにより、十分な放熱が行われている際には発熱は問題とならない場合があるが、冷却水の不足や周辺の雰囲気温度環境などによっては軸受が高温となり、焼き付きなどの問題が発生し得る。
【0003】
このような発熱の問題に対し、軸受温度を直接監視し、異常な温度上昇を検知することが行われている。例えば、特許文献1では、温度センサ付きの軸受が開示されている。また、特許文献2では、転がり軸受の実際の温度と温度センサによる検出温度との関係を予め定義しておき、その関係とリアルタイムの温度センサからの温度情報に基づいて転がり軸受の温度を予測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-098011号公報
【特許文献2】特開2003-254840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構成において温度異常を検知した場合、すでに軸受が損傷に至ってしまっていることが考えられ、突発的に生産を停止する必要がある。そのため、膨大な事後保全コストが発生し、また、生産性の低下が生じてしまう。
【0006】
また、特許文献2の方法では、リアルタイムの温度情報に基づいているが、その時点の転がり軸受の実際の温度を適正に推定できる。に留まっており、予め生産停止のおそれを予測しそれに備えることまでは考慮されていない。
装置の周辺環境や軸受の今後の動作スケジュールなどの時間経過を考慮していないため、その温度予測の適用範囲は限られたものとなっていた。
【0007】
上記課題を鑑み、本願発明は、予め設定された将来実行予定の駆動モード下での転がり軸受の温度予測をより正確に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、転がり軸受の温度を予測する温度予測方法であって、
前記転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出工程と、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定工程と、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定工程にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定工程にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出工程と、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出工程と、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出工程と、
を有する。
【0009】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、転がり軸受の温度を予測する温度予測システムであって、
前記転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出手段と、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定手段と、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定手段にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定手段にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出手段と、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出手段と、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出手段と、
を有する。
【0010】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムであって、コンピュータに、
転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出工程、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定工程、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定工程にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定工程にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出工程、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出工程、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出工程、
を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明により、予め設定された将来実行予定の駆動モード下での転がり軸受の温度予測をより正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願発明の軸受温度予測方法が適用される軸受装置の部分断面構造と、温度予測システムの構成とを示す要部構成図。
図2】本願発明の一実施形態に係る発熱特性曲線を示す説明図。
図3】本願発明の一実施形態に係る時間経過に伴う回転速度と軸受温度の変化を示す説明図。
図4】本願発明の一実施形態に係る回転速度の平均値の算出方法を示す説明図。
図5】本願発明の一実施形態に係る温度予測システムの処理のフローチャート。
図6】本願発明の一実施形態に係る軸受温度の推定方法を示す説明図。
図7】本願発明の一実施形態に係る駆動スケジュールにおける回転速度の経時変化を示す説明図。
図8】本願発明の一実施形態に係る軸受温度の予測精度を検証するための既駆動スケジュールにおける速度パターンおよび検証条件を示す図。
図9】本願発明の一実施形態に係る軸受温度の予測精度を検証するための先駆動スケジュールとなる速度パターンおよび検証条件を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0015】
[全体構成]
図1は、本実施形態にかかる各装置の全体構成の一例を示す図である。図1には、本実施形態に係る軸受温度予測方法の対象となる軸受装置の部分断面構造と、温度予測システムの構成とを示す要部構成図である。なお、本実施形態において、温度予測の対象とする転がり軸受の種類を特に限定するものでは無いが、例えば、自動調心ころ軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受などに適用可能である。
【0016】
軸受装置100は、例えば製造機械の回転軸11の軸端を回転自在に支持する。回転軸11は、複列円すいころ軸受等の転がり軸受13を介して、回転軸11の外側を覆うハウジング15に支持される。図1では不図示であるが、転がり軸受13は、回転軸11側の内輪、ハウジング15側の外輪、および外輪と内輪の間の転動体(ころ)を含んで構成される。回転軸11の軸端部には環状部材17が固定され、転がり軸受13の一方の端面に当接する。また、転がり軸受13の環状部材17と反対側には、回転軸11の外周面を覆うカラー19が取り付けられる。転がり軸受13の内輪(図示略)は、環状部材17とカラー19によって軸方向に位置決めされて回転軸11に固定される。また、外輪(図示略)はハウジング15に固定される。また、転がり軸受13において、所定の潤滑方式により、内輪と転動体の間、および、外輪と転動体の間の摩擦が軽減される。潤滑方式は特に限定するものではないが、例えば、グリース潤滑や油潤滑などが用いられ、また潤滑剤の種類についても特に限定するものではない。
【0017】
ハウジング15の一端部には、回転軸11の端部を覆うカバー21が取り付けられる。カバー21には、環状部材17のフランジ外周面171に対面して配置され、回転軸11の回転速度を検出する回転速度センサ23と、転がり軸受13の温度(以下、「軸受温度」とも称する)を検出する軸受温度センサ25とが取り付けられる。また、カバー21の外側には、軸受装置100の周囲温度を検出する周囲温度センサ27が配置される。
【0018】
回転速度センサ23、軸受温度センサ25、及び周囲温度センサ27は、制御部31に接続される。制御部31には、記憶部33、報知部35、および駆動部37が接続されている。
【0019】
記憶部33は、回転軸11を駆動する速度パターン等の駆動スケジュール331や、各種の駆動条件が記憶された駆動条件データベース(不図示)を備える。この駆動条件データベースは、ハードディスクやメモリ等の記憶媒体により構成され、制御部31からの指示により各種情報の入出力が可能になっている。
【0020】
駆動部37は、不図示のモータや変速機等を含んで構成され、制御部31からの指示により回転軸11を回転駆動する。
【0021】
報知部35は、スピーカやライト、或いは液晶ディスプレイ等の表示デバイス等から構成され、制御部31からの指示により、警報等の作業者への報知を行う。報知部35による報知方法は特に限定するものではないが、例えば、音声による聴覚的な報知であってもよいし、画面出力による視覚的な報知であってもよい。または、ネットワークを介した外部装置(不図示)へのデータ送信により報知が行われてもよい。
【0022】
制御部31と、これに接続される回転速度センサ23、軸受温度センサ25、周囲温度センサ27、記憶部33、報知部35、駆動部37は、温度予測システム200を構成する。制御部31は、例えば、温度予測システム200が備えるCPU(Central Processing Unit)が本実施形態に係る各種プログラムを記憶部33から読み出して実行することで各種機能を実現してよい。
【0023】
回転速度センサ23は、回転軸11の駆動時間と回転数を監視し、回転軸11の回転速度を検出する。なお、回転速度は、単位時間当たりの回転数に対応するものであり、この情報が用いられてよい。軸受温度センサ25は、転がり軸受13の所定の位置の温度を検出する。周囲温度センサ27は、軸受装置100が動作する環境の温度を検出し、軸受装置100から所定の範囲の温度を検出する。
【0024】
温度予測システム200は、回転速度センサ23、軸受温度センサ25、及び周囲温度センサ27による各検出値と記憶部33に記憶された駆動スケジュール331に基づいて、転がり軸受13の軸受温度を予測する。駆動スケジュール331は、予め設定され、必要に応じて更新可能であるものとする。そして、温度予測システム200は、この予測結果に基づいて、継続して行う駆動スケジュールに問題があるか否かを判断する。ここでの問題とは、例えば、軸受温度が上昇し、異常発熱が生じる場合などが挙げられる。駆動スケジュールに問題がある場合には、温度予測システム200は、報知部35により作業者へ報知する、或いは駆動部37を停止させるなどの制御を行う。また、温度予測システム200は、駆動スケジュールにより異常が生じると判断した場合には、ユーザーへの報知と併せて、スケジュールの変更を受け付けるような構成であってもよい。また、温度予測システム200は、所定の条件に基づいて、駆動スケジュール331を自律的に調整するような構成であってもよい。制御部31は、これら一連の処理を統括して制御する。
【0025】
[予測方法]
次に、制御部31に入力される回転速度(単位時間当たりの回転数)、軸受温度、周囲温度の情報、転がり軸受13の発熱特性及び放熱特性に基づいて軸受温度を推定し、駆動スケジュールの実施後の軸受温度を予測する方法について説明する。
【0026】
図2は、回転軸11の回転により転がり軸受13にて生じる発熱量と、軸受温度との関係を示す発熱特性曲線を示す説明図である。図2において、縦軸は転がり軸受13の発熱量[W]を示し、横軸は転がり軸受13の温度[℃]を示す。図2においては、2種類の異なる条件における発熱特性として、第1の発熱特性曲線C、および第2の発熱特性曲線Cを例示している。
【0027】
第1の発熱特性曲線Cと第2の発熱特性曲線Cとでは、転がり軸受13の回転速度、転がり軸受13へ負荷される荷重(ラジアル荷重やアキシアル荷重)、グリースの種類等の潤滑方式、等の条件が異なる。第1の発熱特性曲線C、および第2の発熱特性曲線Cが示す特性の例としては、潤滑剤の粘度の影響を受け、軸受温度が低い領域では、潤滑剤の粘度が上がるため、転がり軸受13の発熱量が大きくなる。一方、軸受温度が高い領域では、潤滑剤の粘度が下がるため、転がり軸受13の発熱量が小さくなる。
【0028】
転がり軸受13にて生じる発熱量は、発熱量と等価な動トルクによって求めることができる。動トルクを求める方法としては、例えば、下記の式(1)~(3)で示す軸受トルク計算式が利用可能である(ISO 15312:2003参照)。
【0029】
M=M+M ・・・(1)
=10-7×f×(νV)2/3×d ・・・(2)
=f×P×d ・・・(3)
M:動トルク [Nmm]
,M:速度と荷重に依存する摩擦トルク [Nmm]
,f:摩擦に関する係数
ν:運転動粘度 [mm/s](転がり軸受の温度T[℃]に依存)
V:内輪回転速度 [min-1
:(内径d+外径D)/2 [mm]
:摩擦に関与する荷重
【0030】
ここでは、上記の式(1)により求まる動トルクMを転がり軸受13の発熱量とみなして、以下に説明する軸受温度の推定に供する。式(1)において、f、f、dは、対象となる転がり軸受13の仕様から特定できる。νは、転がり軸受13にて用いられる潤滑方式や潤滑剤の種類などから特定できる。また、V、Pは駆動条件から特定できる。なお、上記計算式は一例であって、転がり軸受13の発熱量は、これに限らず、他の方法によって求めることであってもよい。
【0031】
図3(A)は、回転軸11の回転速度の経時変化を示す図である。図3(A)において、縦軸は回転速度を示し、横軸は時間の経過を示す。なお、縦軸に示す回転速度は単位時間当たりの回転数に置き換えることが可能である。図3(B)は、回転軸11の回転による軸受温度の経時変化を示す。図3(B)において、縦軸は転がり軸受13の温度を示し、横軸は時間の経過を示す。図3(A)と図3(B)の時間は対応しているものとする。
【0032】
図3に示すように、回転軸11の回転速度である内輪回転速度Vは、時間の経過とともに複雑に変化する。そのため、軸受温度の変化も複雑となり、軸受温度を正確に予測することは難しい。
【0033】
本実施形態では、図4に示すように、まず、内輪回転速度Vの経時変化の波形Vを、矩形状の波形VMDLに変換して単純化する。つまり、回転速度Vから回転速度Vに徐々に変化する波形Vの区間において、回転速度VとVとの中間点を求め、この中間点で回転速度VからVに切り替える。同様に、回転速度Vから回転速度Vに徐々に変化する波形Vの区間において、回転速度VとVとの中間点を求め、この中間点で回転速度VからVに切り替える。この処理を繰り返すことで、各中間点で回転速度が切り替わる矩形状の波形VMDLが得られる。つまり、回転速度が切り替わる立ち上がりと、立ち下がりのタイミングが明確になった矩形波としての波形VMDLが得られることとなる。
【0034】
次に、得られた波形VMDLを用いて、下記式(4)により一定期間の平均回転速度Vを計算し、得られた平均回転速度Vを、前述した発熱特性曲線を求める回転速度Vとして用いる。これにより、実際の内輪回転速度Vの逐次変化を単純化でき、転がり軸受13の発熱量を求めることができる。
【0035】
【数1】
【0036】
変数nは、図4に示すように、波形の区間を示す。なお、上記例では回転速度が変化する中間点で切り替えをしているが、これに限られない。例えば、回転速度の切り替わりタイミングを、回転速度間の差異において特定の割合となった時点としてもよく、波形Vの切り替わり開始点や終了点としてもよい。また、経過時間と回転速度の変化量の関係に応じて、1の区間を複数の区間に分割したうえで切り替わりタイミングを決定してもよい。具体的には、VからVに変化するまでの区間が一定の時間以上である場合には、その区間を所定の単位長さにて複数の区間に分割し、分割した区間ごとに回転速度を決定してよい。
【0037】
[処理フロー]
図5は、本実施形態に係る転がり軸受13の温度予測処理のフローチャートである。本処理は、温度予測システム200により実行され、例えば、温度予測システム200が備えるCPUが図1に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶部33から読み出して実行することにより実現されてよい。
【0038】
S501にて、温度予測システム200は、転がり軸受13の使用状態をモニタリングする。具体的には、温度予測システム200は、図7に示す既駆動スケジュールの所定時間範囲における回転速度を回転速度センサ23により検出し、駆動中における軸受温度を軸受温度センサ25により検出する。また、温度予測システム200は、駆動部37に備わる図示しない荷重検出機能により、転がり軸受13に対する荷重(ラジアル荷重やアキシアル荷重)を検出する。上述したように、平均回転速度Vは、回転速度センサ23による速度検出値から、式(4)を用いて導出される。つまり、本工程において、平均回転速度Vは、既駆動スケジュールの所定時間範囲における回転速度センサ23による実測値に基づいて算出される。
【0039】
S502にて、温度予測システム200は、S501で算出された平均回転速度V、荷重、および軸受温度センサ25にて検出した軸受温度に基づいて、回転軸11を回転駆動させた際の、転がり軸受13の発熱量と軸受温度との関係を表す第1の発熱特性曲線Cを、前述した軸受トルク計算式に基づく演算と検出温度により導出する(図6参照)。上記の式(1)~(3)を用いる場合、軸受温度は、例えば、運転動粘度(ν)を特定する際に用いられてよい。このとき、実際に測定した軸受温度を用いて軸受発熱量を算出して、その算出結果をプロットし、その結果にカーブフィッティングを行うことで、第1の発熱特性曲線Cを導出してよい。または、一定間隔の温度値を用いて軸受発熱量を算出して、その算出結果をプロットし、その結果にカーブフィッティングを行うことで、第1の発熱特性曲線Cを導出してもよい。なお、本例では、図2図6それぞれに示す第1の発熱特性曲線Cと第2の発熱特性曲線Cは対応しているものとして説明する。
【0040】
記憶部33に記憶される駆動スケジュールは、図7に示すように既に回転軸11の駆動を実施した既駆動スケジュール(実施済みスケジュール)と、これから実施する先駆動スケジュール(実施予定スケジュール)とに分けられる。上述したように、既駆動スケジュールにおいては、各種情報の実測値が取得できることとなる。
【0041】
図7は、既駆動スケジュールにおける回転速度の経時変化の例と先駆動スケジュールにおける回転速度の経時変化の例とを示す説明図である。前述した軸受温度センサ25から検出される温度検出値は、回転軸11が既駆動スケジュールにより駆動されて転がり軸受13が発熱し、その発熱が軸受周囲に伝達された結果の温度である。一方、先駆動スケジュールにおいては、実際に転がり軸受13が駆動していないため、軸受温度センサ25による発熱温度は検出できないが、回転速度は先駆動スケジュールの内容に応じて予測可能である。
【0042】
S503にて、温度予測システム200は、図7に示す既駆動スケジュールが実施された現在の時点Xにおける、軸受温度センサ25からの軸受温度を検出し、得られた温度検出値を実測温度T1とする。また、温度予測システム200は、周囲温度センサ27から周囲温度を検出し、得られた温度検出値を周囲温度T0(室温)とする。図6に周囲温度T0と実測温度T1を示す。
【0043】
そして、温度予測システム200は、図6に示すグラフにおける第1の発熱特性曲線Cから、実測温度T1に対応する点PIを導出する。つまり、点PIは、実測温度T1に対応する第1の発熱特性曲線C上の点である。そして、温度予測システム200は、周囲温度T0を示す点と点PIとを直線で結び、更に、点PIからこの直線を延長することで、周囲温度T0を示す点と、点PIを通る放熱特性直線Lを導出する。放熱特性直線Lは、図6に示すように、軸受温度が高いほど熱量(放熱量)が大きくなる特性を有する。
【0044】
S504にて、温度予測システム200は、図7に示す先駆動スケジュールを設定する。すなわち、温度予測システム200は、図1に示す記憶部33に記憶された駆動スケジュール331のうち、これから実行される所定の時間の駆動スケジュールを読み出し、これを先駆動スケジュールに設定する。図7の例の場合、現在の時点X以降の駆動スケジュールが先駆動スケジュールとして設定される。つまり、以降の処理において予測される推定温度は、先駆動スケジュールが完了した時点での転がり軸受13の温度となる。これに伴い、温度予測システム200は、転がり軸受13に負荷される荷重条件に変更があるか等も確認する。
【0045】
S505にて、温度予測システム200は、S504にて設定した先駆動スケジュールにおける回転軸11の回転速度から、前述した式(4)により平均回転速度Vを算出する。つまり、本工程において、平均回転速度Vは、先駆動スケジュールにおける回転軸11の回転速度の予測値に基づいて算出される。温度予測システム200は、算出した平均回転速度V、および回転軸11の他の駆動条件から前述した軸受トルク計算方法(ISO 15312:2003)に基づき、回転軸11を先駆動スケジュールで回転駆動させた場合の転がり軸受13の軸受発熱量と軸受温度との関係を表す第2の発熱特性曲線Cを導出する(図6参照)。このとき、転がり軸受13は実際に動作させていないため、軸受温度は軸受温度センサ25により検出できない。そのため、ここでは、一定間隔の温度値を用いて軸受発熱量を算出して、その算出結果をプロットし、その結果にカーブフィッティングを行うことで、第2の発熱特性曲線Cを導出する。
【0046】
S506にて、温度予測システム200は、図6に示すように、転がり軸受13の温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示したグラフにおいて、S505で求めた第2の発熱特性曲線Cと、S503で求めた放熱特性直線Lとの交点PIを求める。
【0047】
S507にて、温度予測システム200は、S506で求めた交点PIに対応する温度値を軸受温度の推定温度T2とする。この推定温度が、先駆動スケジュール実施後の軸受温度の予測結果となる。
【0048】
S508にて、温度予測システム200は、S507で予測された軸受温度(推定温度T2)の予測結果に基づいて異常診断処理を実行する。例えば、推定温度が予め定めた限界温度を超える場合に異常が生じる可能性があると判定し、限界温度範囲内であれば、異常が生じる可能性はないと判定してよい。この異常診断処理により異常生じる可能性があると判定された場合には、報知部35による報知動作が実行される。上述したように、報知動作の内容は特に限定するものではなく、例えば音声出力により報知してもよい。
【0049】
S509にて、温度予測システム200は、再診断を実行するか否かを判定する。再診断を実行する場合には(S508にてYES)S501へ戻り、S501以降の処理を再度実行する。再診断を実行しない場合には(S508にてNO)本処理フローを終了する。ここでの再診断を行うか否かは、S507にて異常が生じる可能性があると判定されたことに伴って受け付けるユーザーから指示に基づいて判定してもよい。または、S504にて先駆動スケジュールの再設定が可能な場合に、その再設定の内容にて再診断を行うような構成であってもよい。この場合、再設定の内容は、ユーザーから受け付けてもよいし、予め規定された条件に基づいて、システム側で再設定を行ってもよい。
【0050】
[検証例]
ここで、上記説明した軸受温度予測方法による軸受温度の予測精度を検証(予測時間との対比)した結果を説明する。以下に説明する検証では、自動調心ころ軸受(銘番:23144)を対象として用いて温度の予測及び実測を行っている。図8は、ここでの検証に用いる既駆動スケジュールにおける転がり軸受13の駆動条件を示す。
【0051】
図8(A)は、既駆動スケジュールにおける転がり軸受13の回転速度の波形パターンを示す。図8(A)において、縦軸は回転速度を示し、横軸は時間を示す。波形パターンにおいて、波形Vに対し、上述した方法により、平均回転速度VAV1が得られたものとする。また、図8(B)は、既駆動スケジュールにおける転がり軸受13の主要寸法、荷重(ラジアル荷重)、および平均回転速度を示す。本例では、周囲温度T0が27[℃]であり、既駆動スケジュール終了時の実測温度T1が115.6[℃]であった。これをもとに図9の先駆動スケジュールにおける転がり軸受13の駆動条件として温度予測検証を行なった。
【0052】
図9(A)は、先駆動スケジュールにおける転がり軸受13の回転速度の波形パターンを示す。図9(A)において、縦軸は回転速度を示し、横軸は時間を示す。ここでは、区間t1の開始タイミング以降を先駆動スケジュールとし、それ以前は、図8(A)に示す既駆動スケジュールに対応するものとする。波形パターンに対し、上述した方法により、平均回転速度VAV2が得られる。なお、先駆動スケジュールにおいて、最大回転速度をVとし、最小回転速度Vとする。図9(A)の例において、区間t1と区間t5の回転速度はVであり、区間t3の回転速度はV1である。また、区間t2においては、回転速度がVからVへ徐々に変化(増加)している。一方、区間t4においては、回転速度がVからVへ徐々に変化(減少)している。
【0053】
また、図9(B)は、先駆動スケジュールにおける転がり軸受13の主要寸法、荷重(ラジアル荷重)、および平均回転速度を示す。主要寸法、および荷重は、図8(B)に示した既駆動スケジュールと同様であるとする。先駆動スケジュールとして、Vを720[min-1]、Vを317[min-1]、t1を160[sec]、t2を90[sec]、t3を80[sec]、t4を20[sec]として設定する。その結果、平均回転速度は、図4および式(4)の手法により、559[min-1]が得られる。
【0054】
上記条件に基づき、第1の発熱特性曲線Ca、第2の発熱特性曲線C、および放熱特性直線Lを導出し、先駆動スケジュール完了時の転がり軸受13の推定温度を導出した。その結果、表1に示す推定温度が得られた。併せて、実際の試験の確認温度(実測温度)を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、推定温度は103.5[℃]であり、実際の軸受装置の確認温度(実測値)は102.3[℃]であることから、その差は約1℃であった。この結果からも、本実施形態に係る軸受温度推定方法により、精度の高い温度予測を行うことが可能であることが確認された。更なる試験結果から、実際の確認温度に対して1%以内の精度にて軸受の温度の推定を行うことが可能であることが確認された。したがって、本実施形態に係る軸受温度予測方法によれば、複雑に変化する速度パターンであっても、軸受温度の推定により、先駆動スケジュール実施後の軸受温度を正確に予測できる。
【0057】
転がり軸受を備え、その駆動における速度条件が複雑に変化する製造機械の駆動制御に対して、図5に示す処理手順を適用することにより、先駆動スケジュールによる軸受温度の予測が実用的なレベルで可能である。これによって製造機械の駆動が安定化し、突発的な生産停止回避でき生産性の向上を図ることができる。また、先駆動スケジュールの条件下における転がり軸受の状態を予測できるため、例えば、先駆動スケジュールの制御パラメータを再設定したり、駆動期間を調整したりするなど、予測結果を踏まえた動作制御を行うことが可能となる。
【0058】
なお、既駆動スケジュールに基づく第1の発熱特性曲線C、放熱特性直線L、および先駆動スケジュールに基づく第2の発熱特性曲線Cを導出する順序は任意であって、必ずしも図5のフローチャートに示す順序でなくてもよい。また、図2図6に示す第1の発熱特性曲線Cと第2の発熱特性曲線Cの位置関係は一例であり、駆動条件などによってその位置関係は変化し得る。
【0059】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0060】
<その他の実施形態>
本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0061】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0062】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 転がり軸受の温度を予測する温度予測方法であって、
前記転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出工程と、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定工程と、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定工程にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定工程にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出工程と、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出工程と、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出工程と、
を有することを特徴とする温度予測方法。
この構成によれば、予め設定された将来実行予定の駆動モード下での軸受の温度予測をより正確に行うことが可能となる。
【0063】
(2) 前記第1の発熱特性曲線は、前記既駆動スケジュールによる前記転がり軸受を駆動した際の平均回転速度、および前記転がり軸受に対する荷重を用いて導出されることを特徴とする(1)に記載の温度予測方法。
この構成によれば、既駆動スケジュールにおける実測値に基づいて、転がり軸受の温度予測のための特性を導出することができ、温度予測の精度を向上させることが可能となる。
【0064】
(3) 前記第2の発熱特性曲線は、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の平均回転速度、および前記転がり軸受に対する荷重を用いて導出されることを特徴とする(1)または(2)に記載の温度予測方法。
この構成によれば、先駆動スケジュールから特定される平均回転速度および荷重を用いることで、複雑な速度変化にも対応して転がり軸受の温度予測のための特性を導出することができる。
【0065】
(4) 前記第4の導出工程にて導出された推定温度を用いて、前記転がり軸受の異常診断を行う診断工程を更に有することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の温度予測方法。
この構成によれば、先駆動スケジュールに対応した温度予測結果に基づいて、転がり軸受の異常診断を行うことができる。
【0066】
(5) 前記診断工程における診断結果に基づき、前記先駆動スケジュールを再設定する再設定工程を更に有することを特徴とする(4)に記載の温度予測方法。
この構成によれば、先駆動スケジュールに対応した温度予測結果に基づいて、転がり軸受を動作させる先駆動スケジュールの調整が可能となる。
【0067】
(6) 転がり軸受の温度を予測する温度予測システムであって、
前記転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出手段と、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定手段と、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定手段にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定手段にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出手段と、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出手段と、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出手段と、
を有することを特徴とする温度予測システム。
この構成によれば、予め設定された将来実行予定の駆動モード下での軸受の温度予測をより正確に行うことが可能となる。
【0068】
(7) コンピュータに、
転がり軸受を駆動させる駆動スケジュールのうち既に実行された既駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動した際の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第1の発熱特性曲線を導出する第1の導出工程、
前記既駆動スケジュールによる駆動後における前記転がり軸受の温度と周囲温度とを測定する測定工程、
前記第1の発熱特性曲線を温度軸と発熱量軸との2軸平面上で示した場合に、前記測定工程にて測定した前記転がり軸受の温度の測定値に対応する前記第1の発熱特性曲線上の点と、前記測定工程にて測定した前記周囲温度の測定値に対応する前記温度軸上の点とを通る放熱特性直線を導出する第2の導出工程、
前記駆動スケジュールのうち、これから実行する先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた場合の、前記転がり軸受の発熱量と温度との関係を表す第2の発熱特性曲線を導出する第3の導出工程、
前記2軸平面上における前記第2の発熱特性曲線と前記放熱特性直線との交点に対応する温度値を、前記先駆動スケジュールにより前記転がり軸受を駆動させた際の推定温度として導出する第4の導出工程、
を実行させるためのプログラム。
この構成によれば、予め設定された将来実行予定の駆動モード下での軸受の温度予測をより正確に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
11…回転軸
13…転がり軸受
15…ハウジング
23…回転速度センサ
25…軸受温度センサ
27…周囲温度センサ
31…制御部
33…記憶部
35…報知部
37…駆動部
100…軸受装置
200…温度予測システム
Ca…第1の発熱特性曲線
Cb…第2の発熱特性曲線
L…放熱特性直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9