(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022182
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】表面に複数の凸部を形成した生地及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/643 20060101AFI20240208BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
D06M15/643
D06M15/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125571
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】304048584
【氏名又は名称】丸和ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】木田 博久
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC15
4L033CA18
4L033CA59
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凸部の成形性に優れた生地及びその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】表面に複数の凸部が形成されている生地であって、前記凸部はシリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の凸部が形成されている生地であって、
前記凸部はシリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂であることを特徴とする生地。
【請求項2】
前記凸部は生地表面にドットパターン状に形成されていることを特徴とする生地。
【請求項3】
液状のシリコーン樹脂原材料と液状のアクリル樹脂原材料とを混合するステップと、
前記混合された液状の混合樹脂原材料を用いて生地表面に複数の凸部を形成するステップと、
次に硬化させるステップとを有することを特徴とする凸部形成生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地表面に複数の凸部を形成することで滑り止め,ずれの防止,座り心地の改善等を図った生地及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にはグローブの表面及び裏面に、シリコンゴムを凸状にコーティングした手袋を開示する。
しかし、生地にシリコンゴムを付着させるのが難しい。
【0003】
特許文献2には、表面にポリアクリル酸エステル,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル等からなるベース樹脂に発泡剤を混合して、加熱発砲により突起部を形成する技術を開示する。
しかし、加熱発砲では突起部の形状が安定しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3055215号公報
【特許文献2】特開2005-185559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、凸部の成形性に優れた生地及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る生地は、表面に複数の凸部が形成されている生地であって、前記凸部はシリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂であることを特徴とする。
【0007】
シリコーン樹脂は、Si-O-Siのシロキサン結合を骨格とし、官能基としてアルキル基,アルケニル基,フェニル基等が結合されていることで、熱硬化等にて重合化するものをいい、本発明に用いる原材料としての液状のシリコーン樹脂材料は、各種有機溶剤又は各種可塑剤を用いて液状にしてあるものをいう。
有機溶剤としては、キシレン,トルエン,ベンジン,シンナー,エーテル類等が例として挙げられる。
可塑剤としては各種エステル類、例えばフタル酸エステル,アジピン酸エステル,エポキシ化植物油等が例として挙げられる。
シリコーン樹脂材料は、モノマー,オリゴマー,ポリマーの状態が含まれる。
【0008】
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルあるいは、メタクリル酸エステルの重合体(共重合体を含む。)をいい、本発明に用いる原材料としての液状のアクリル樹脂材料は、各種可塑剤を用いて液状にしてあるものをいう。
アクリル樹脂材料は、モノマー,オリゴマー,ポリマーの状態が含まれる。
可塑剤の例としては、フタル酸エステル,アジピン酸エステル,リン酸エステル,エポキシ化植物油等が挙げられ、安定化剤が含まれていてもよい。
【0009】
本発明において特徴的なのは、共に油性の液状のシリコーン樹脂用原材料と、液状のアクリル樹脂用原材料とを混合し撹拌したところ、均一に混合した液状の混合樹脂原材料を得ることができ、これを用いて生地の上に塗布,転写等によりシリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる凸部を形成した点にある。
【0010】
凸部の形状は、本発明に係る生地を用いて、製作する製品の用途に合せて設計される。
生地を用いて製作される製品が手袋等であれば、滑り止めを目的、ソファー,車両の座席シート,シーツ類にあっては人体のずれ止め、人体への適度な刺激を与える目的からは、複数の凸部がドットパターン状に形成されているのが好ましい。
【0011】
生地に凸部を形成する方法も生地が用いられる製品に合せて、選択することができる。
例えば、手袋であれば孔版印刷に分類されるスクリーン印刷を用いることができ、シート材等の長尺の生地にあっては、円筒形状のスクリーンマスク内にスキージ(ブレード)を配置したロータリースクリーン機を用いることができる。
また、ロールに転写パターンが形成されたグラビアコーターを用いてもよい。
これらの工法は、公知の技術を用いることができる。
【0012】
生地としては、織物,編み物,不織布等、使用される製品の用途に合せて選定することができ、それらを形成する繊維も綿,絹,羊毛,麻等の天然繊維、ポリエステル,ナイロン,ポリアミド,アクリル,オレフィンの合成繊維等、特に制限はない。
【0013】
上記のように、生地に凸部を形成した凸部形成生地の製造方法は、液状のシリコーン樹脂原材料と液状のアクリル樹脂原材料とを混合するステップと、前記混合された液状の混合樹脂原材料を用いて生地表面に複数の凸部を形成するステップと、次に硬化させるステップとを有することを特徴とする。
硬化する方法は、加熱硬化,重合剤を用いる方法,光照射硬化であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表面に複数の凸部を形成した生地は、凸部がシリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂からなるので、そのシリコーン樹脂材料とアクリル樹脂材料との配合比率を調整することで、シリコーン樹脂に有する弾力性,抗菌性,防汚性,耐熱性,耐候性等の効果と、アクリル樹脂に有する密着性,汎用性,透光性等の効果とを組み合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】生地の表面にドットパターン状の複数の凸部を形成した例の外観写真を示す。
【
図2】シリコーン樹脂の原材料100%を用いて形成した凸部の赤外吸収スペクトルチャートを示す。
【
図3】シリコーン樹脂の原材料50%,アクリル樹脂の原材料50%の比率で混合したものを用いて形成した凸部の赤外吸収スペクトルチャートを示す。
【
図4】シリコーン樹脂の原材料20%,アクリル樹脂の原材料80%の比率で混合したものを用いて形成した凸部の赤外吸収スペクトルチャートを示す。
【
図5】アクリル樹脂の原材料100%を用いて形成した凸部の赤外吸収スペクトルチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に生地の表面に、複数の凸部を形成した実施例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0017】
(1)シリコーン樹脂の原材料としては、シリカ換算として約15~30%含有する液状の原材料を用いるのが好ましく、これは、水不溶性である。
今回の試作評価には、商品名:SHKS-TA-02(株式会社豊和化成)を用いた。
この商品は、有機溶剤を用いてゾル化したものであり、シリカ換算で約18%含有する。
(2)アクリル樹脂の原材料としては、可塑剤を用いた液状(ペースト状)の原材料を用いた。
アクリル樹脂40~50%,可塑剤40~50%,安定化剤0.5~2%のものが好ましい。
今回の試作には、株式会社コバヤシ製の商品名:コバゾールAC-192-W(コバゾールは登録商標)を用いた。
本製品は、メチルメタクリレート共重合体約54%,フタル酸系の可塑剤約45%,その他の添加剤約1%含有している。
上記の2種類の原材料を容量比率で、サンプル1:シリコーン樹脂100%
サンプル2:シリコーン樹脂50%及びアクリル樹脂50%
サンプル3:シリコーン樹脂20%及びアクリル樹脂80%
サンプル4:アクリル樹脂100%に調整したものを用いて、スクリーン印刷を用いて複数の凸部をドットパターン状に形成した。
【0018】
サンプル3の外観写真を
図3に示す。
本実施例は、同心円状に複数の凸部を形成したドットパターンであるが、パターンに限定はなく、格子状,千鳥状,ランダム状であってもよい。
液状のシリコーン樹脂原材料と、液状のアクリル樹脂原材料とが混合された液状の樹脂原材料が乾燥工程や熱処理工程にて硬化反応が進む際に、表面張力が作用し、突起状や半球状の凸形状になる。
凸部の外径は1~8mm程度、凸部の間隔は3~20mm程度が好ましい。
【0019】
上記にて製作したサンプル1~4の赤外吸収スペクトルを
図2~
図5に示す(日本分光株式会社製、赤外分光度計:FT/IR-6700)。
図2は、サンプル1(シリコーン樹脂原材料100%)の分析チャートを示す。
これに対して
図3に示したサンプル2は、シリコーン樹脂原材料50%,アクリル樹脂原材料50%の混合原料を用いたものであり、アクリル樹脂を示す1720[cm-1]付近に吸収ピークが表れている。
サンプル3は、シリコーン樹脂原材料20%とアクリル樹脂原材料80%の混合原料を用いたものであり、サンプル4はアクリル樹脂原材料100%を用いたものであるが、
図2~
図5のチャートを比較すると、シリコーン樹脂原材料とアクリル樹脂原材料とが混合された混合樹脂原料を用いることで、シリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂からなる凸部が形成されているのが分かる。
混合比率は、製品の用途に合せて設定することができる。
本発明において、シリコーン樹脂とアクリル樹脂との混合比率には特に制限はないが、両方の特性を活かすにはシリコーン樹脂とアクリル樹脂との比率20:80~80:20レベルが好ましい。
また、シリコーン樹脂の原材料は、液状(ペースト状)になっていれば、その含有量はシリカ成分として質量%で10~30%含有したものを用いることができる。
アクリル樹脂の原材料は、可塑剤を用いて油性の液状(ペースト状)になっていれば、アクリル樹脂の含有量の制限はないが、容量%で15~40%の範囲が好ましい。
本発明において、シリコーン樹脂材料とアクリル樹脂材料とが油性の液状原材料として混合されていれば用いることができる。