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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022207
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】定置式燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04701 20160101AFI20240208BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240208BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240208BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240208BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125622
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智志
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB02
5H127AB03
5H127AC04
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127CC07
5H127DB47
5H127DB66
5H127DB68
5H127DB70
5H127DB74
5H127DC45
5H127DC72
5H127DC79
(57)【要約】
【課題】定置式燃料電池システムの騒音を簡易な構成で低減する。
【解決手段】補機の制御量Cntと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係、燃料電池FCの発電電力Powと騒音レベルとの対応関係、または、温度検出部Stにより検出される温度Tと騒音レベルとの対応関係を示すマップを有し、定置式燃料電池システム1の騒音レベルを許容値Nth以下に保とうとする場合、マップを参照して、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する制御量Cnt、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する発電電力Pow、または、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する温度Tを上限値として設定し、補機の制御量Cnt、燃料電池の発電電力Pow、または、温度検出部Stにより検出される温度Tが上限値を超えると、冷却水または燃料電池FCの目標温度を上昇させる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池を冷却する冷却水の温度または前記燃料電池の温度を検出する温度検出部と、
前記燃料電池を発電させる補機と、
前記温度検出部により検出される温度が目標温度に追従するように前記補機の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記補機の制御量と当該定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係、前記燃料電池の発電電力と当該定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係、または、前記温度検出部により検出される温度と当該定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係を示すマップを有し、当該定置式燃料電池システムの騒音レベルを許容値以下に保とうとする場合、前記マップを参照して、前記許容値に相当する騒音レベルに対応する前記制御量、前記許容値に相当する騒音レベルに対応する前記発電電力、または、前記許容値に相当する騒音レベルに対応する前記温度を上限値として設定し、前記補機の制御量、前記燃料電池の発電電力、または、前記温度検出部により検出される温度が前記上限値を超えていると、前記目標温度を上昇させる
ことを特徴とする定置式燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の定置式燃料電池システムであって、
前記制御部は、ユーザの指示に基づいて前記許容値を変更する
ことを特徴とする定置式燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の定置式燃料電池システムであって、
前記制御部は、当該定置式燃料電池システムの外部に設けられる外部端末から送信される指示に基づいて前記許容値を変更する
ことを特徴とする定置式燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の定置式燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記目標温度を上昇させた後、前記温度検出部により検出される温度が上昇後の前記目標温度を超えていると、前記燃料電池の発電電力を制限する
ことを特徴とする定置式燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の定置式燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記目標温度を上昇させた後、前記燃料電池のインピーダンスが閾値を超えていると、前記目標温度を低下させる
ことを特徴とする定置式燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定置式燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、燃料電池を冷却する冷却水の温度を低下させるファンの騒音を抑えるために、冷却水の温度が上昇すると推定される場合、冷却水の目標温度を予め低下させることでファンの回転数の上昇を抑えるものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、燃料電池システムが一定の場所に設置される定置式燃料電池システムとして構成される場合、その定置式燃料電池システムの騒音規制(騒音レベルの許容値)は、国や自治体が定める条例や規則などにより、定置式燃料電池システムの設置場所や一日における時間帯など様々な条件で異なる。例えば、住宅街に設置される場合は工業地帯に設置される場合に比べて騒音レベルの許容値が低い。また、時間帯が深夜である場合は日中に比べて騒音レベルの許容値が低い。
【0004】
そのため、上記燃料電池システムを定置式燃料電池システムとして構成する場合では、設置場所や時間帯などの様々な条件に対する騒音規制に対応するために、冷却水の目標温度を複数用意し、それら複数の目標温度を様々な条件に応じて切り替えていく必要があり、騒音低減のための燃料電池の発電制御が複雑化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-207539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、簡易な構成で騒音低減が可能な定置式燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である定置式燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池を冷却する冷却水の温度または前記燃料電池の温度を検出する温度検出部と、前記燃料電池を発電させる補機と、前記温度検出部により検出される温度が目標温度に追従するように前記補機の動作を制御する制御部とを備える。
【0008】
前記制御部は、前記補機の制御量と当該定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係、前記燃料電池の発電電力と当該定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係、または、前記温度検出部により検出される温度と当該定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係を示すマップを有し、当該定置式燃料電池システムの騒音レベルを許容値以下に保とうとする場合、前記マップを参照して、前記許容値に相当する騒音レベルに対応する前記制御量、前記許容値に相当する騒音レベルに対応する前記発電電力、または、前記許容値に相当する騒音レベルに対応する前記温度を上限値として設定し、前記補機の制御量、前記燃料電池の発電電力、または、前記温度検出部により検出される温度が前記上限値を超えていると、前記目標温度を上昇させる。
【0009】
これにより、補機の制御量、燃料電池の発電電力、または、温度検出部により検出される温度が上限値を超えて定置式燃料電池システムの騒音レベルが許容値を超えそうになる場合に目標温度を上昇させることで、燃料電池の発電電力を増加させることができるため、冷却水の温度を低下させるファンや冷却水を循環させる冷却水ポンプ内のモータの回転数を低下させることができ、定置式燃料電池システムの騒音を低減することができる。また、補機の制御量と定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係、燃料電池の発電電力と定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係、または、温度検出部により検出される温度と定置式燃料電池システムの騒音レベルとの対応関係を示すマップを参照して許容値に対して上限値を一意に設定することができるため、定置式燃料電池システムの設置場所や時間帯などの様々な条件に対して複数の上限値を用意し、それら複数の上限値を様々な条件に応じて切り替える必要がなく、簡易な構成で定置式燃料電池システムの騒音を低減することができる。
【0010】
また、前記制御部は、ユーザの指示に基づいて前記許容値を変更するように構成してもよい。
【0011】
これにより、定置式燃料電池システムの騒音レベルを、ユーザが希望する騒音レベルに抑えることができる。
【0012】
また、前記制御部は、当該定置式燃料電池システムの外部に設けられる外部端末から送信される指示に基づいて前記許容値を変更するように構成してもよい。
【0013】
これにより、定置式燃料電池システムの騒音レベルを、遠隔地に設置される定置式燃料電池システムまで出向かずに外部端末から送信される騒音レベルに抑えることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記目標温度を上昇させた後、前記温度検出部により検出される温度が上昇後の前記目標温度を超えていると、前記燃料電池の発電電力を制限するように構成してもよい。
【0015】
これにより、燃料電池FCの発熱を抑えることができるため、燃料電池の温度上昇を抑えることができる。また、ファンの回転数やエアコンプレッサ内のモータの回転数など各補機の制御量をそれぞれ低下させることができるため、各補機の騒音を抑制することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記目標温度を上昇させた後、前記燃料電池のインピーダンスが閾値を超えていると、前記目標温度を低下させるように構成してもよい。
【0017】
これにより、燃料電池の目標発電電力が低下するため、エアコンプレッサ内のモータの回転数が低下してエアコンプレッサから燃料電池への酸化剤ガスの供給量が低下し、燃料電池内の乾燥が緩和され燃料電池の電圧低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、定置式燃料電池システムにおいて簡易な構成で騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の定置式燃料電池システムの一例を示す図である。
図2】記憶部に記憶されているマップの一例を示す図である。
図3】実施例1における静音運転モード時の制御部の動作を示すフローチャートである。
図4】実施例2における静音運転モード時の制御部の動作を示すフローチャートである。
図5】実施例3における静音運転モード時の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0021】
図1は、実施形態の定置式燃料電池システムの一例を示す図である。
【0022】
図1に示す定置式燃料電池システム1は、例えば、工業用定置式発電機、家庭用定置式発電機、または非常用定置式発電機など、一定の場所に設置され、負荷Loに一定の電力を供給するものとする。
【0023】
また、定置式燃料電池システム1は、燃料電池FCと、燃料タンクHTと、主止弁SVと、インジェクタINJと、気液分離機GLSと、循環ポンプHPと、排気排水弁EDVと、希釈器DILと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、エアシャット弁ASVとを備える。
【0024】
また、定置式燃料電池システム1は、ラジエタRと、ファンFと、冷却水ポンプWPと、インタークーラICと、温度検出部Stと、電力変換器CNVと、蓄電装置Bと、電流センサSifと、電圧センサSvfと、ユーザインタフェースUIと、記憶部2と、通信機3と、制御部4とを備える。
【0025】
燃料電池FCは、複数の燃料電池セルを積層させて構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。なお、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスが比較的多くなると、燃料電池FC内(燃料電池セル)が乾燥し易くなる。燃料電池FC内が乾燥すると、燃料電池FC(燃料電池セル内の電解質膜)が劣化し燃料電池FCの電圧が低下するおそれがある。
【0026】
燃料タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。燃料タンクHTに貯蔵された燃料ガスは主止弁SV及びインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0027】
主止弁SVは、電磁弁などにより構成され、燃料ガスをインジェクタINJに供給する。また、主止弁SVは、制御部4の動作制御によりインジェクタINJへの燃料ガスの供給を遮断する。
【0028】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの圧力が一定になるように燃料ガスの流量を調整する。
【0029】
気液分離機GLSは、燃料電池FCから排出される燃料ガスと液水とを分離する。
【0030】
循環ポンプHPは、気液分離機GLSにより分離された燃料ガスを燃料電池FCに再度供給する。
【0031】
排気排水弁EDVは、気液分離機GLSにより分離された液水を希釈器DILに送る。希釈器DILに送られた液水は、希釈器DIL内のタンクに溜まる。また、燃料電池FCから排出された燃料ガスと酸化剤ガスは希釈器DILで合流し、定置式燃料電池システム1の外部に排出される。
【0032】
エアコンプレッサACPは、定置式燃料電池システム1の周囲に存在する酸化剤ガスを圧縮しインタークーラIC及びエアシャット弁ASVを介して燃料電池FCに供給する。なお、エアコンプレッサACPの圧縮率は、燃料電池FCの下流に設けられるエア調圧弁ARVの開度を調節することで制御される。
【0033】
インタークーラICは、圧縮により高温になった酸化剤ガスをインタークーラICに流れる冷却水と熱交換させる。
【0034】
エアシャット弁ASVは、制御部4の動作制御により燃料電池FCへの酸化剤ガスの供給を遮断する。
【0035】
エア調圧弁ARVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力や流量を調整する。
【0036】
ラジエタRは、燃料電池FCの発熱により温められた冷却水を外気と熱交換させる。
【0037】
ファンFは、ラジエタRの放熱量を上昇させる。
【0038】
冷却水ポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷却水をインタークーラICを介して燃料電池FCに供給する。
【0039】
温度検出部Stは、例えば、サーミスタなどにより構成され、冷却水の温度Tを検出し、その検出した温度Tを制御部4に送る。なお、温度検出部Stは燃料電池FCに取り付けられ、燃料電池FCの温度Tを検出し、その検出した温度Tを制御部4に送るように構成してもよい。
【0040】
なお、ファンFの騒音レベルは、エアコンプレッサACPや電力変換器CNVなどのその他の補機に比べて大きいものとする。また、定置式燃料電池システム1を覆う筐体のうち、エアコンプレッサACP近傍の筐体部分は、外部から酸化剤ガスを効率よく取り込むために孔が設けられているものとする。そのため、その孔から外部にファンFの騒音が漏れないようにエアコンプレッサACPと離れた位置にファンFが取り付けられているものとする。
【0041】
また、ファンFやエアコンプレッサACPなどの各補機は、冷却水または燃料電池FCの温度Tが目標温度Ttに追従するように動作が制御されるものとする。例えば、目標温度Ttが大きくなるほど、ファンFや冷却水ポンプWP内のモータの回転数が小さくなるものとする。そのため、目標温度Ttを上昇させることで、定置式燃料電池システム1の騒音を低減することができる。
【0042】
電力変換器CNVは、燃料電池FCの後段に接続され、燃料電池FCから出力される電圧を所定の電圧に変換する。また、電力変換器CNVから出力される電力は、負荷Loや蓄電装置Bの他に、ファンF、エアコンプレッサACP、冷却水ポンプWP、循環ポンプHP、主止弁SV、エアシャット弁ASV、及びエア調圧弁ARVなどの各補機に供給される。
【0043】
蓄電装置Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、電力変換器CNVと負荷Loとの間に接続されている。
【0044】
電力変換器CNVから出力される電力と、各補機に供給される合計電力との差に相当する供給電力が、負荷Loから要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうちの要求電力に相当する電力が負荷Loに供給されるとともに残りの電力が蓄電装置Bに供給される。電力変換器CNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電量Cが増加する。また、電力変換器CNVから出力される電力と、各補機に供給される合計電力との差に相当する供給電力が、負荷Loから要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電量Cが減少する。なお、充電量Cとは、蓄電装置Bの充電率[%](蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合)、または、蓄電装置Bに電流が流れていないときの蓄電装置Bの開回路電圧[V]、または、蓄電装置Bに電流が流れているときの蓄電装置Bの閉回路電圧[V]、または、蓄電装置Bに流れる電流の積算値[Ah]などとする。
【0045】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池FCから電力変換器CNVに流れる電流Ifcを検出し、その検出した電流Ifcを制御部4に送る。
【0046】
電圧センサSvfは、分圧抵抗などにより構成され、燃料電池FCの電圧Vfcを検出し、その検出した電圧Vfcを制御部4に送る。
【0047】
ユーザインタフェースUIは、例えば、タッチパネルディスプレイなどにより構成され、ユーザや管理者などから指示(ユーザや管理者などが希望する定置式燃料電池システム1の運転モードや定置式燃料電池システム1の騒音レベルの許容値など)が入力されると、その入力された指示を制御部4に送る。また、ユーザインタフェースUIは、ユーザに情報(現在の運転モードや現在の騒音レベル)を表示する。
【0048】
記憶部2は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成され、後述するマップなどを記憶している。
【0049】
ここで、図2は、記憶部に記憶されているマップの一例を示す図である。
【0050】
図2(a)に示す二次元座標の横軸は補機の制御量Cntを示し、縦軸は定置式燃料電池システム1の騒音レベルを示し、実線は補機の制御量Cntと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示すマップM1を示している。図2(a)に示すマップM1では、補機の制御量Cntが大きくなるほど、定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなる。
【0051】
例えば、マップM1は、実験やシミュレーションなどにより予め求めたファンFの回転数と定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示し、ファンFの回転数が大きくなるほど、ファンFから発生する騒音が大きくなり定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなるものとする。
【0052】
または、マップM1は、実験やシミュレーションなどにより予め求めたエアコンプレッサACP内のモータの回転数と定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示し、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が大きくなるほど、エアコンプレッサACPから発生する騒音が大きくなり定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなるものとする。
【0053】
または、マップM1は、実験やシミュレーションなどにより予め求めた電力変換器CNVの出力電力と定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示し、電力変換器CNVの出力電力が大きくなるほど、電力変換器CNV内のスイッチング素子から発生するスイッチングノイズが大きくなり定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなるものとする。
【0054】
または、マップM1は、実験やシミュレーションなどにより予め求めた冷却水ポンプWP内のモータの回転数と定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示し、冷却水ポンプWP内のモータの回転数が大きくなるほど、冷却水ポンプWPから発生する騒音が大きくなり定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなるものとする。
【0055】
または、マップM1は、実験やシミュレーションなどにより予め求めた循環ポンプHP内のモータの回転数と定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示し、循環ポンプHP内のモータの回転数が大きくなるほど、循環ポンプHPから発生する騒音が大きくなり、定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなるものとする。
【0056】
なお、燃料電池FCの発電電力が大きくなるほど、ファンFの回転数、エアコンプレッサACP内のモータの回転数、電力変換器CNVの出力電力、冷却水ポンプWP内のモータの回転数、及び循環ポンプHP内のモータの回転数がそれぞれ大きくなり、ファンF、エアコンプレッサACP、電力変換器CNV、冷却水ポンプWP、及び循環ポンプHPのそれぞれの騒音が大きくなるものとする。
【0057】
また、温度検出部Stにより検出される温度Tが大きくなるほど、ファンFの回転数、エアコンプレッサACP内のモータの回転数、電力変換器CNVの出力電力、冷却水ポンプWP内のモータの回転数、及び循環ポンプHP内のモータの回転数がそれぞれ大きくなり、ファンF、エアコンプレッサACP、電力変換器CNV、冷却水ポンプWP、及び循環ポンプHPのそれぞれの騒音が大きくなるものとする。
【0058】
また、ファンFの騒音>エアコンプレッサACPの騒音>電力変換器CNVの騒音>冷却水ポンプWPの騒音または循環ポンプHPの騒音となる場合、定置式燃料電池システム1の騒音レベルを低減するために、ファンFやエアコンプレッサACPの騒音を特に抑制することは有効である。
【0059】
また、図2(b)に示す二次元座標の横軸は燃料電池FCの発電電力Powを示し、縦軸は定置式燃料電池システム1の騒音レベルを示し、実線は燃料電池FCの発電電力Powと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示すマップM2を示している。図2(b)に示すマップM2では、発電電力Powが大きくなるほど、ファンFの騒音、エアコンプレッサACPの騒音、電力変換器CNVの騒音、冷却水ポンプWPの騒音、及び循環ポンプHPの騒音がそれぞれ大きくなり定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなる。
【0060】
また、図2(c)に示す二次元座標の横軸は温度検出部Stにより検出される温度Tを示し、縦軸は定置式燃料電池システム1の騒音レベルを示し、実線は温度検出部Stにより検出される温度Tと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示すマップM3を示している。図2(c)に示すマップM3では、温度Tが大きくなるほど、定置式燃料電池システム1の騒音レベルが大きくなる。
【0061】
記憶部2には、マップM1~M3のうちの少なくとも1つのマップが記憶されているものとする。
【0062】
また、図1に示す通信機3は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークを介して外部端末UNに接続され、外部端末UNと制御部4との間で送受信されるデータの変換を行う通信インタフェース回路である。
【0063】
制御部4は、マイクロコンピュータなどにより構成される。
【0064】
また、制御部4は、ユーザや管理者などからの指示や時間帯により、燃料電池FCの運転モードを、通常運転モードから静音運転モードに、または、静音運転モードから通常運転モードに切り替える。
【0065】
また、制御部4は、通常運転モード時または静音運転モード時、燃料電池スタックFCSを発電させているとき、蓄電装置Bの充電量Cに応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させる。
【0066】
また、制御部4は、通常運転モード時または静音運転モード時、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Ttに追従するように、目標発電電力Ptを変化させる。なお、目標温度Ttは、通常運転モード時において、燃料電池FCの発電電力Powが目標発電電力Ptに追従しているときに温度検出部Stにより検出される温度Tとする。
【0067】
例えば、目標温度Ttを目標温度Ttより大きい目標温度Tt1に上昇させた場合、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Tt1に追従するように、目標発電電力Ptを目標発電電力Ptより大きい目標発電電力Pt1に増加させる。すると、制御部4は、燃料電池FCの発電電力Powが目標発電電力Pt1に追従するように、各補機の負荷(エアコンプレッサACP内のモータの回転数など)を増加させる。
【0068】
また、目標温度Ttを目標温度Ttより小さい目標温度Tt2に低下させた場合、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Tt2に追従するように、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1より小さい目標発電電力Pt2に低下させる。すると、制御部4は、燃料電池FCの発電電力Powが目標発電電力Pt2に追従するように、各補機の負荷(エアコンプレッサACP内のモータの回転数など)を低下させる。
【0069】
また、制御部4は、静音運転モード時、定置式燃料電池システム1の騒音レベルが許容値以下に保たれるように、補機の動作(目標発電電力Pt)を制御する。なお、許容値は、例えば、ユーザや管理者などにより予め決められている任意の値であり、国や自治体が定める条例や規則などにより、定置式燃料電池システム1の設置場所や一日における時間帯などに応じて決められている値とする。
【0070】
また、制御部4は、定置式燃料電池システム1の騒音レベルの許容値をユーザインタフェースUIから受け取る。これにより、定置式燃料電池システム1の騒音レベルを、ユーザが希望する騒音レベルに抑えることができる。
【0071】
または、制御部4は、定置式燃料電池システム1の騒音レベルの許容値を外部端末UNから通信機3を介して受信する。これにより、定置式燃料電池システム1の騒音レベルを、遠隔地に設置される定置式燃料電池システム1まで出向かずに外部端末UNから送信される騒音レベルに抑えることができる。
【0072】
<実施例1>
図3は、実施例1における静音運転モード時の制御部4の動作を示すフローチャートである。
【0073】
まず、制御部4は、上限値を設定する(ステップS101)。
【0074】
次に、制御部4は、補機の制御量CntがステップS101で設定した上限値を超えていると、または、燃料電池FCの発電電力PowがステップS101で設定した上限値を超えていると、または、温度検出部Stにより検出される温度TがステップS101で設定した上限値を超えていると(ステップS102:Yes)、目標温度Ttを上昇させる(ステップS103)。例えば、制御部4は、目標温度Ttを目標温度Tt1に上昇させる。このように、目標温度Ttを上昇させると、ファンFの回転数や冷却水ポンプWP内のモータの回転数を低下させることができるため、各補機のうちで騒音レベルが比較的大きいファンFの騒音を抑制することができ定置式燃料電池システム1の騒音を低減することができる。
【0075】
そして、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Ttを超えていると(ステップS104:Yes)、燃料電池FCの発電電力Powを制限する(ステップS105)。このように、燃料電池FCの発電電力Powを制限すると、燃料電池FCの発熱を抑えることができるため、燃料電池FCの温度上昇を抑えることができる。また、ファンFの回転数、エアコンプレッサACP内のモータの回転数、電力変換器CNVの出力電力、冷却水ポンプWP内のモータの回転数、及び循環ポンプHP内のモータの回転数がそれぞれ低下するため、ファンF、エアコンプレッサACP、電力変換器CNV、冷却水ポンプWP、及び循環ポンプHPの騒音を抑制することができる。
【0076】
なお、制御部4は、補機の制御量CntがステップS101で設定した上限値を超えていない場合、燃料電池FCの発電電力PowがステップS101で設定した上限値を超えていない場合、もしくは、温度検出部Stにより検出される温度TがステップS101で設定した上限値を超えていない場合(ステップS102:No)、または、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Ttを超えていない場合(ステップS104:No)、目標温度Ttを上昇させないとともに燃料電池FCの発電電力Powを制限しない。
【0077】
ここで、例えば、図2(a)に示すマップM1が記憶部2に記憶され、ユーザや管理者などの指示により設定される騒音レベルの許容値が許容値Nthである場合を想定する。
【0078】
この場合、制御部4は、静音運転モード時、図2(a)に示すマップM1を参照して、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する制御量Cntαを上限値として設定する。
【0079】
次に、制御部4は、ファンFの回転数が制御量Cntαを超えていると、目標温度Ttを目標温度Tt1に上昇させる。
【0080】
そして、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Tt1を超えていると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1に増加させる。
【0081】
または、図2(b)に示すマップM2が記憶部2に記憶され、ユーザや管理者などの指示により設定される騒音レベルの許容値が許容値Nthである場合を想定する。
【0082】
この場合、制御部4は、図2(b)に示すマップM2を参照して、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する発電電力Powαを上限値として設定する。
【0083】
次に、制御部4は、電流Ifcと電圧Vfcとの乗算値である発電電力Powが発電電力Powαを超えていると、目標温度Ttを目標温度Tt1に上昇させる。
【0084】
そして、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Tt1を超えていると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1に増加させる。
【0085】
または、図2(c)に示すマップM3が記憶部2に記憶され、ユーザや管理者などの指示により設定される騒音レベルの許容値が許容値Nthである場合を想定する。
【0086】
この場合、制御部4は、図2(c)に示すマップM3を参照して、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する温度Tαを上限値として設定する。
【0087】
次に、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが温度Tαを超えていると、目標温度Ttを目標温度Tt1に上昇させる。
【0088】
そして、制御部4は、温度検出部Stにより検出される温度Tが目標温度Tt1を超えていると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1に増加させる。
【0089】
実施例1における定置式燃料電池システム1によれば、補機の制御量Cntと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示すマップM1、燃料電池FCの発電電力Powと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示すマップM2、または、温度検出部Stにより検出される温度Tと定置式燃料電池システム1の騒音レベルとの対応関係を示すマップM3を参照して許容値に対して上限値を容易に設定することができるため、定置式燃料電池システム1の設置場所や時間帯などの様々な条件に対して複数の上限値を用意し、それら複数の上限値を様々な条件に応じて切り替える必要がなく、簡易な構成で定置式燃料電池システム1の騒音を低減することができる。
【0090】
また、実施例1における定置式燃料電池システム1によれば、マップM1~M3を用いて許容値に対応する上限値を一意に求めることができるため、ユーザや管理者などの仕様に応じた設計変更を少なくすることができ、製造コストを低減することができる。
【0091】
<実施例2>
図4は、実施例2における静音運転モード時の制御部4の動作を示すフローチャートである。なお、図4に示すステップS101~S105は、図3に示すステップS101~S105と同じであるため、その説明を省略する。
【0092】
制御部4は、目標温度Ttを上昇させた後(ステップS103)、燃料電池FCのインピーダンスを算出し(ステップS201)、ステップS201で算出したインピーダンスが閾値を超えていると(ステップS202:Yes)、目標温度Ttを低下させる(ステップS203)。なお、閾値は、実験やシミュレーションなどによって予め求められる値であって、例えば、燃料電池FC内の乾燥による燃料電池FCの劣化により燃料電池FCの最大電圧が定格電圧より低下し始めるときの燃料電池FCのインピーダンスとする。
【0093】
例えば、制御部4は、電気化学インピーダンス法や交流インピーダンス法などの周知のインピーダンス計算方法を用いて、燃料電池FCのインピーダンスを算出する。
【0094】
また、制御部4は、ステップS201で算出したインピーダンスが閾値を超えている場合、目標温度Ttを目標温度Tt2に低下させる。なお、目標温度Tt2は、実験やシミュレーションなどによって予め求められる値であってもよいし、閾値とステップS201で算出したインピーダンスとの差分により求められる値であってもよい。
【0095】
一般に、燃料電池FC内の水分量が小さくなるほど、すなわち、燃料電池FC内が乾燥するほど、燃料電池FCのインピーダンスが大きくなる。そのため、燃料電池FCのインピーダンスが比較的大きい場合、燃料電池FC内が乾燥していると推定することができる。
【0096】
また、目標温度Ttを上昇させたとき、負荷Loから要求される要求電力が比較的大きい場合、エアコンプレッサACPから燃料電池FCへの酸化剤ガスの目標供給量が増加するため、燃料電池FC内が乾燥し易くなる。
【0097】
そこで、実施例2における制御部4では、燃料電池FCのインピーダンスが閾値を超えている場合、目標温度Ttを低下させている。これにより、燃料電池FCの目標発電電力Ptが低下するため、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が低下してエアコンプレッサACPから燃料電池FCへの酸化剤ガスの供給量が低下し、燃料電池FC内の乾燥が緩和され燃料電池FCの劣化による燃料電池FCの電圧低下を抑制することができる。また、目標温度Ttを低下させることで、燃料電池FCの目標発電電力Ptが低下するため、エアコンプレッサACPだけでなく他の各補機も低負荷になるため、定置式燃料電池システム1の騒音を低減することができる。
【0098】
<実施例3>
図5は、実施例3における静音運転モード時の制御部4の動作を示すフローチャートである。なお、図5に示すステップS101~S105、S203は、図4に示すステップS101~S105、S203と同じであるため、その説明を省略する。
【0099】
制御部4は、目標温度Ttを上昇させた後(ステップS103)、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が上限値を超えていると(ステップS301:Yes)、目標温度Ttを低下させ(ステップS203)、温度検出部Stにより検出される温度Tが、ステップS203で低下させた目標温度Ttを超えているか否かを判断する(ステップS104)。例えば、制御部4は、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が上限値を超えていると、目標温度Ttを目標温度Tt2に低下させる。なお、制御部4は、図2(a)に示すマップM1を参照し、許容値Nthに相当する騒音レベルに対応する制御量Cntα(エアコンプレッサACP内のモータの回転数)を上限値として設定する。
【0100】
また、制御部4は、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が上限値を超えていない場合(ステップS301:No)、目標温度Ttを低下させず、温度検出部Stにより検出される温度Tが、ステップS201で上昇させた目標温度Ttを超えているか否かを判断する(ステップS104)。
【0101】
目標温度Ttを上昇させたとき、負荷Loから要求される要求電力が比較的大きい場合、エアコンプレッサACPから燃料電池FCへの酸化剤ガスの目標供給量が増加するため、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が大きくなりエアコンプレッサACPの騒音が大きくなることが懸念される。
【0102】
そこで、実施例3における制御部4では、目標温度Ttを上昇させた後、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が上限値を超えていると、目標温度Ttを低下させている。これにより、エアコンプレッサACP内のモータの回転数が低下してエアコンプレッサACPの騒音を抑制することができ定置式燃料電池システム1の騒音を低減することができる。
【0103】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 燃料電池システム
2 記憶部
3 通信機
4 制御部
Lo 負荷
FC 燃料電池
HT 燃料タンク
SV 主止弁
INJ インジェクタ
GLS 気液分離機
HP 循環ポンプ
EDV 排気排水弁
DIL 希釈器
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
ASV エアシャット弁
R ラジエタ
F ファン
WP ウォータポンプ
IC インタークーラ
CNV 電力変換器
B 蓄電装置
Sif 電流センサ
Svf 電圧センサ
UN 外部端末
図1
図2
図3
図4
図5