(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022217
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125638
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
(72)【発明者】
【氏名】伊東 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 尚威
(72)【発明者】
【氏名】田多 伸光
(72)【発明者】
【氏名】田代 匠太
(72)【発明者】
【氏名】奥野 公晴
(72)【発明者】
【氏名】大部 利春
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
(57)【要約】
【課題】大エネルギー破壊時に電気導通を維持できる半導体モジュールを提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体モジュールは、第1金属部材と、第2金属部材と、第1半導体パッケージと、第2半導体パッケージと、を持つ。前記第1半導体パッケージ及び前記第2半導体パッケージのそれぞれは、第1導電部材と、第2導電部材と、半導体素子と、を備える。半導体素子は、前記第1導電部材及び前記第2導電部材に接続される。前記第1導電部材及び前記第2導電部材の少なくとも一方は、屈曲形状を有する。前記第1導電部材及び前記第2導電部材の少なくとも一方は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に反発電磁力を発生させる。反発電磁力は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方を前記半導体素子とは反対側に押し上げる力である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された第1金属部材及び第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に配置された第1半導体パッケージ及び第2半導体パッケージと、を備え、
前記第1半導体パッケージ及び前記第2半導体パッケージのそれぞれは、
前記第1金属部材に接続された第1導電部材と、
前記第2金属部材に接続された第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材との間に配置され、前記第1導電部材及び前記第2導電部材に接続された半導体素子と、を備え、
前記第1導電部材及び前記第2導電部材の少なくとも一方は、屈曲形状を有するとともに、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方を前記半導体素子とは反対側に押し上げる反発電磁力を発生させる、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記第2金属部材は、前記第1金属部材の上方に配置され、
前記半導体素子は、金属ケースに収納され、
前記金属ケースは、
前記第1導電部材における前記半導体素子に接続している面の反対側の面を露出させる下部開口と、
前記下部開口に対して交差するように前記半導体素子の側方を開口する側部開口と、を有し、
前記第1導電部材は、前記下部開口を通じて前記第1金属部材に接続され、
前記第2導電部材は、前記側部開口を通じて前記第2金属部材に接続される、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第2導電部材は、
前記半導体素子に接続している面に沿って延びるとともに前記側部開口から前記金属ケースの外へ突出する第1延在部と、
前記第1延在部の突出端から前記第2金属部材に向けて上方へ延びる第2延在部と、を備える、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記金属ケースは、前記半導体素子と電気的に絶縁するための第1絶縁部材で覆われる、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第1金属部材は、前記第2金属部材と絶縁ケースを介して接続され、
前記第2導電部材の上端は、前記絶縁ケースの上端よりも低い位置にあり、
前記第2導電部材は、締結部材を介して前記第2金属部材に接続される、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第2導電部材は、前記締結部材と並んで配置された弾性部材を介して前記第2金属部材に接続される、
請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記第2導電部材は、前記弾性部材と並んで配置された導通部材を介して前記第2金属部材に接続される、
請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記弾性部材において前記半導体素子の側の端部は、前記第2導電部材において前記第2金属部材の側に突出した部分よりも前記締結部材の側にずれた位置にある、
請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記第2導電部材は、上面視で前記側部開口の片側に寄った位置から突出し、
前記第1半導体パッケージ及び前記第2半導体パッケージは、互いに対向して配置される、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記第2導電部材の厚さは、3mm以上である、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記第2金属部材の厚さは、2mm以上12mm以下である、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記第1金属部材は、前記第2金属部材と絶縁ケースを介して接続され、
前記第1金属部材は、前記絶縁ケースよりも側方に突出した第1接続端子を有し、
前記第2金属部材は、前記絶縁ケースよりも側方に突出した第2接続端子を有する、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記第1金属部材において前記第1導電部材に接続される部分は、前記第2導電部材と電気的に絶縁するための第2絶縁部材で覆われる、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、耐圧数kVでMW級の電力変換器を構築するためには、半導体素子の電流容量を大きくすることが求められる。そのために、複数の半導体素子を並列実装した半導体モジュールが提案されている。高圧大電流を許容するためには、半導体素子の故障時に半導体モジュールの運転継続性や安全性を確保することが必要である。そのような観点から、大エネルギー破壊時に電気導通を維持することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、大エネルギー破壊時に電気導通を維持できる半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体モジュールは、第1金属部材と、第2金属部材と、第1半導体パッケージと、第2半導体パッケージと、を持つ。第1金属部材及び第2金属部材は、互いに対向して配置される。第1半導体パッケージ及び第2半導体パッケージは、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に配置される。前記第1半導体パッケージ及び前記第2半導体パッケージのそれぞれは、第1導電部材と、第2導電部材と、半導体素子と、を備える。第1導電部材は、前記第1金属部材に接続される。第2導電部材は、前記第2金属部材に接続される。半導体素子は、前記第1導電部材と前記第2導電部材との間に配置される。半導体素子は、前記第1導電部材及び前記第2導電部材に接続される。前記第1導電部材及び前記第2導電部材の少なくとも一方は、屈曲形状を有する。前記第1導電部材及び前記第2導電部材の少なくとも一方は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に反発電磁力を発生させる。反発電磁力は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方を前記半導体素子とは反対側に押し上げる力である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の半導体モジュールの側断面図。
【
図2】第1実施形態の半導体パッケージの側断面図。
【
図3】第1実施形態の半導体モジュールの反発電磁力の説明図。
【
図4】半導体モジュール内の半導体素子が故障したときの電流及び電圧の関係を示す図。
【
図5】チップ応力増加倍率と短絡故障発生確率との関係を示す図。
【
図6】上電極の厚さとチップ応力増加倍率との関係を示す図。
【
図7】天板厚さとチップ応力増加倍率との関係を示す図。
【
図8】第2実施形態の半導体モジュールの側断面図。
【
図9】第2実施形態の半導体モジュールのアーク発生の説明図。
【
図10】第3実施形態の半導体モジュールの側断面図。
【
図13】想定電流と導通部材温度との計算結果を示す図。
【
図14】第4実施形態の半導体モジュールの上面図。
【
図15】第4実施形態の半導体モジュールの側断面図。
【
図16】第5実施形態の半導体モジュールの側断面図。
【
図17】第1変形例の半導体モジュールの側断面図。
【
図18】第2変形例の半導体モジュールの側断面図。
【
図19】第3変形例の半導体モジュールの側断面図。
【
図20】第4変形例の半導体モジュールの側断面図。
【
図21】第5変形例の半導体モジュールの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の半導体モジュールを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、第1実施形態の半導体モジュール1の側断面図である。
図2は、第1実施形態の半導体パッケージPの側断面図である。
実施形態の半導体モジュール1は、底板2(第1金属部材の一例)と、天板3(第2金属部材の一例)と、絶縁ケース4と、第1半導体パッケージPAと、第2半導体パッケージPBと、を備える。
【0009】
底板2及び天板3は、互いに対向して配置される。例えば、底板2及び天板3は、電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料で形成される。例えば、底板2及び天板3は、銅又はアルミニウムを主成分に含む。例えば、底板2及び天板3は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの金属で形成される。
【0010】
底板2及び天板3は、水平面に沿う板状に形成される。天板3は、底板2の上方に配置される。天板3は、水平面に沿って一様な厚さ(上下方向の長さ)を有する。例えば、天板3の厚さは、2mm以上12以下である。例えば、天板3の厚さは、4mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0011】
底板2は、天板3と絶縁ケース4を介して接続される。例えば、絶縁ケース4は、接着剤又は締結部材により、底板2及び天板3と接続されている。例えば、絶縁ケース4は、樹脂などの電気絶縁性を有する絶縁材料で形成される。絶縁ケース4の上端は、天板3の下面に接続される。絶縁ケース4の下端は、底板2の上面に接続される。これにより、底板2、天板3及び絶縁ケース4で囲まれる空間は、密閉空間とされる。
【0012】
底板2は、絶縁ケース4よりも側方に突出した下側接続端子5(第1接続端子の一例)を有する。天板3は、絶縁ケース4よりも側方に突出した上側接続端子6(第2接続端子の一例)を有する。実施形態では、下側接続端子5から上側接続端子6へ通電される。
【0013】
第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、底板2と天板3との間に配置される。半導体モジュール1は、第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPB以外にも複数の半導体パッケージPを備える。これら複数の半導体パッケージPは、半導体モジュール1内に並列実装される。
【0014】
第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBのそれぞれは、下電極10(第1導電部材の一例)と、上電極20(第2導電部材の一例)と、半導体素子30と、金属ケース40と、封止部材50(第1絶縁部材の一例)と、を備える。以下、第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBを区別する場合を除き、第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBを含む複数の半導体パッケージPを単に「半導体パッケージP」と称することがある。
【0015】
例えば、下電極10及び上電極20は、銅などの電気抵抗が小さい金属材料で形成されている。下電極10は、底板2に接続される。上電極20は、天板3に接続される。半導体素子30は、下電極10と上電極20との間に配置される。半導体素子30は、下電極10及び上電極20に接続される。例えば、半導体素子30は、電力変換に用いられるパワー半導体素子である。例えば、半導体素子30は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の制御電極を有するスイッチング素子である。例えば、半導体素子30は、FRD(Fast Recovery Diode)等のダイオードであってもよい。
【0016】
半導体パッケージPは、1つ又は複数の半導体素子30を備える。例えば、1つの半導体パッケージPに複数の半導体素子30が搭載された場合、複数の半導体素子30はすべて同一でなくてもよい。例えば、1つの半導体パッケージP内にIGBT等のスイッチング素子とFRD等のダイオードとが混在していてもよい。
【0017】
例えば、半導体素子30の一方の面(下面)には、コレクタ電極、ドレイン電極、アノード電極が形成される。これらの電極は、接合材31によって下電極10に接続される。例えば、接合材31は、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト等である。
【0018】
例えば、半導体素子30の他方の面(上面)には、エミッタ電極、ソース電極、カソード電極が形成される。これらの電極は、接合材32によってスペーサ15に接続される。例えば、スペーサ15は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの金属で形成される。スペーサ15は、接合材33によって上電極20に接続される。例えば、接合材33は、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト等である。
【0019】
半導体素子30は、金属ケース40に収納される。例えば、金属ケース40は、ステンレス、アルミニウム、鉄などの金属で形成される。例えば、金属ケース40は、半導体素子30等の収納空間を有する直方体箱状に形成される。
【0020】
金属ケース40は、下部開口41と、側部開口42と、を有する。
下部開口41は、下電極10における下面(半導体素子30に接続している面の反対側の面の一例)を露出させる。下部開口41は、金属ケース40の下面に形成される。
側部開口42は、下部開口41に対して交差するように半導体素子30の側方に開口する。側部開口42は、金属ケース40の一側面に形成される。側部開口42は、下部開口41に対して略垂直な位置にある。
【0021】
下電極10は、下部開口41を通じて底板2に接続される。下電極10は、接合材34によって底板2の上面に接続される。例えば、接合材34は、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト等である。
【0022】
上電極20は、側部開口42を通じて天板3に接続される。上電極20は、屈曲形状を有する。実施形態において、上電極20は、クランク形状を有する。上電極20は、板状部材をクランク形状に折り曲げて形成されている。上電極20は、半導体素子30から側方へ延びた後に屈曲して上方へ延び、その後、更に屈曲して側方へ延びている。上電極20は、第1延在部21と、第2延在部22と、第3延在部23と、を備える。第1延在部21、第2延在部22及び第3延在部23は、同一の金属部材で一体に形成されている。
【0023】
第1延在部21は、半導体素子30の上面(半導体素子30に接続している面の一例)に沿って延びる。第1延在部21は、側部開口42から金属ケース40の外へ突出する。
第2延在部22は、第1延在部21の突出端から天板3に向けて上方へ延びる。
第3延在部23は、第2延在部22の上端から水平面に沿って延びる。第3延在部23は、第2延在部22の上端から隣の半導体パッケージが有する第3延在部23に向けて側方へ延びる。
【0024】
金属ケース40は、半導体素子30と電気的に絶縁するための封止部材50で覆われる。例えば、封止部材50は、樹脂などの電気絶縁性を有する絶縁材料で形成される。封止部材50は、金属ケース40において下部開口41から下電極10が延びる部分及び側部開口42から上電極20が延びる部分以外を覆っている。下電極10のうち下部(底板2に接続される部分)は、封止部材50で覆われずに露出している。上電極20のうち第1延在部21の突出端よりも上部(第2延在部22及び第3延在部23)は、封止部材50で覆われずに露出している。
【0025】
上電極20は、上電極20が延びる方向に沿って一様な厚さを有する。上電極20のうち第1延在部21及び第3延在部23は、水平面に沿って一様な厚さ(上下方向の長さ)を有する。第2延在部22は、鉛直面に沿って一様な厚さ(紙面左右方向の長さ)を有する。例えば、上電極20の厚さは、3mm以上10以下である。
【0026】
上電極20の上端は、絶縁ケース4の上端よりも低い位置にある。実施形態において、上電極20の上端は、第3延在部23の上面に相当する。絶縁ケース4の上端は、絶縁ケース4において天板3の下面に接続される側の端部である。第3延在部23の上面は、水平面に沿う平面である。上電極20は、締結部材60,61を介して天板3に接続される。
【0027】
実施形態において、上電極20には、ナット60(締結部材の一例)が一体化されている。ナット60は、第3延在部23の下面に接続されている。天板3及び第3延在部23のそれぞれは、ボルト61(締結部材の一例)を挿通可能な貫通孔(ボルト通し孔)を有する。例えば、天板3の上方からボルト61を各貫通孔に挿通し、ナット60に螺合する。これにより、ボルト61等の締結部材を介して上電極20を天板3に接続することができる。上電極20は、ボルト61によって天板3の向き(上方)へ荷重がかかった状態となる。この荷重は、半導体素子30に初期応力を発生させる。
【0028】
半導体パッケージPは、下電極10及び上電極20によって底板2及び天板3と電気的に接続されている。複数の半導体パッケージPは、下電極10及び上電極20を介して、底板2と天板3との間に、電気的に並列接続されている。実施形態においては、下側接続端子5から通電される。電流は、半導体パッケージPの上下方向を流れる。
【0029】
通常動作(正常動作)時、各半導体パッケージPが有する下電極10に電流が分流する。図の例では、通常動作時において第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBのそれぞれに電流が分流する。その後、電流は天板3に沿って上側接続端子6に向けて流れる。
【0030】
例えば、通常動作時に半導体素子30が発生した熱は、半導体モジュール1の両側にある底板2及び天板3に熱伝導する。このため、半導体素子30を冷却することができる。例えば、半導体パッケージPの一方側のみを金属部材と接続した構成と比較して、冷却性能を向上させることができる。例えば、底板2は冷却器を兼ねていてもよい。
【0031】
図3は、第1実施形態の半導体モジュール1の反発電磁力MFの説明図である。
図4は、半導体モジュール1内の半導体素子30が故障したときの電流及び電圧の関係を示す図である。
例えば、半導体モジュール1内のいずれか1つ又は複数の半導体素子30が故障すると、半導体素子30のコレクタとエミッタとの電極間が短絡する。すると、故障した半導体素子30(以下「故障チップ」ともいう。)を経路として、
図4に示すような数百kAピークの大電流が流れる。実施形態では、上電極20が略直角に曲がっていることで、通電時に反発電磁力MFを発生させる。反発電磁力MFは、天板3を半導体素子30とは反対側に押し上げる力である。本実施形態では、上電極20において第1延在部21を流れる電流の向きVA(横向き)と第2延在部22を流れる電流の向きVB(縦向き)とは互いに異なる。そのため、上電極20を天板3側に押し上げる反発電磁力MF(ローレンツ力)が発生する。
【0032】
大電流が流れると、故障チップがジュール発熱する。すると、故障チップの構成材料(例えば半導体材料のシリコン)が溶融し、気化することがある。すると、半導体パッケージ内の圧力が数百MPa上昇する。半導体パッケージ内の圧力上昇により、上電極20が天板3側に押し上げられる。天板3は、反発電磁力MFと圧力上昇による上電極20の押し上げにより、上方向へ数mm変形する。天板3の変形により、故障した半導体パッケージと並列接続された他の半導体パッケージの上電極20が天板3側に引き上げられる。上電極20が引き上げられることで、はんだ等で接続された半導体素子30に追加応力が発生する。初期応力と追加応力とにより、半導体素子30にクラックが発生する。すると、
図4に示すピーク電流に遅れて発生する数百Vの電圧印加で半導体素子30のコレクタとエミッタとの電極間が短絡する(短絡故障)。以下、初期故障した半導体素子30以外の半導体素子30が、追加応力の発生によって短絡故障することを「伴連れ短絡故障」という。
【0033】
図5は、チップ応力増加倍率と短絡故障発生確率との関係を示す図である。
チップ応力増加倍率は、半導体素子30にクラックが発生する応力を1とした場合の応力増加倍率である。半導体素子30に発生する応力が基準値より小さいとクラックが発生しない。半導体素子30に発生する応力が基準値を超えて大きいほどクラックが発生しやすい。例えば、
図5に示す特性を利用して、半導体モジュール1内に並列した半導体素子30を伴連れ短絡故障させる。例えば、初期応力が基準値1を超えないこと、かつ、初期応力と追加応力との合計が基準値1を超えるように設計する。これにより、通常時は短絡故障を起こさず、故障時に伴連れ短絡故障を起こすことができる。
【0034】
図6は、上電極20の厚さとチップ応力増加倍率との関係を示す図である。
上電極20の厚さが厚いほど半導体素子30へ荷重を伝えやすいため、チップ応力増加倍率が大きくなる。一方、上電極20の厚さが厚いほど剛性が上がり天板3が変形しにくくなるため、チップ応力増加倍率が大きくなりにくくなるという特性がある。そのため、上電極20の厚さは厚すぎないことが望ましい。例えば、上電極20の厚さを3mm以上とすることで、チップ応力増加倍率が1以上となる。これにより、伴連れ短絡故障に必要な基準値以上の応力を発生させることができる。
【0035】
図7は、天板厚さとチップ応力増加倍率との関係を示す図である。
チップ応力増加倍率は、天板厚さがある厚さのときに極大値となる特徴がある。この理由は、天板厚さが薄すぎると初期故障した半導体素子30直上の天板3しか変形できず、天板厚さが厚すぎると天板3そのものが変形しにくくなるためである。例えば、天板厚さを2mm以上12mm以下とする。これにより、半導体素子30にクラックが発生しやすくなる。
【0036】
以上に説明されたように、本実施形態の半導体モジュール1は、底板2と、天板3と、第1半導体パッケージPAと、第2半導体パッケージPBと、を持つ。底板2及び天板3は、互いに対向して配置される。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、底板2と天板3との間に配置される。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBのそれぞれは、下電極10と、上電極20と、半導体素子30と、を備える。下電極10は、底板2に接続される。上電極20は、天板3に接続される。半導体素子30は、下電極10と上電極20との間に配置される。半導体素子30は、下電極10及び上電極20に接続される。上電極20は、屈曲形状を有する。上電極20は、底板2から天板3へ通電した場合に反発電磁力MFを発生させる。反発電磁力MFは、上電極20を半導体素子30とは反対側に押し上げる力である。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
第1半導体モジュール1内の半導体素子30が故障すると、半導体素子30のコレクタとエミッタとの電極間が短絡する。すると、故障した半導体素子30(故障チップ)を経路として、数百kAピークの大電流が流れる。本実施形態では、上電極20が屈曲形状を有することで、通電時に反発電磁力MFを発生させ、天板3が押し上げられる。天板3は、上電極20の押し上げにより、上方向へ変形する。天板3の変形により、故障した第1半導体パッケージPAと並列接続された第2半導体パッケージPBの上電極20が天板3側に引き上げられる。第2半導体パッケージPBの上電極20が引き上げられることで、第2半導体パッケージPB内の半導体素子30に追加応力が発生する。初期応力と追加応力とにより、第2半導体パッケージPB内の半導体素子30にクラックが発生する。これにより、初期故障した第1半導体パッケージPA以外の第2半導体パッケージPBを機械的破壊により短絡させることが可能となる。
加えて、第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBが壊れても、他の半導体パッケージPで電気導通を維持することができる。したがって、大エネルギー破壊時に電気導通を維持できる半導体モジュール1を提供することができる。
【0037】
例えば、半導体パッケージ単体では短絡故障時に電気導通維持可能なエネルギーには限界がある。これに対し本実施形態では、半導体モジュール1内に並列された第2半導体パッケージPBを機械的破壊で短絡故障させることで、半導体モジュール1として電気導通維持可能なエネルギーを半導体パッケージ単体の2倍以上にすることができる。
【0038】
例えば、大エネルギーに耐えるための構造として、半導体素子の電流経路に高電気抵抗を持つ抵抗端子を配置した構造がある。この構造は、大電流通電時には抵抗端子でエネルギーを消費する構造である。しかし、抵抗端子を配置することで半導体モジュールが大型化してしまう問題がある。これに対し本実施形態では、短絡故障が発生した半導体素子30(故障チップ)以外の半導体素子30(健全チップ)を積極的に伴連れで破壊し、半導体モジュール1として電気導通を維持する構造である。このため、本実施形態では抵抗端子は不要である。抵抗端子を削減することで、小型化及び低コスト化を図ることができる。したがって、半導体モジュール1を大型化することなく、故障時電気導通維持の許容エネルギーを2倍以上に向上することができる。
【0039】
本実施形態の天板3は、底板2の上方に配置される。半導体素子30は、金属ケース40に収納される。金属ケース40は、下電極10の下面を露出させる下部開口41と、下部開口41に対して交差するように半導体素子30の側方を開口する側部開口42と、を有する。下電極10は、下部開口41を通じて底板2に接続される。上電極20は、側部開口42を通じて天板3に接続される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
金属ケース40により半導体素子30を外的要因から保護することができる。加えて、上電極20が側部開口42を通じて天板3に接続されることで、通電時に、より大きな反発電磁力MFを発生させることができる。このため、上電極20の押し上げ力がより大きくなり、天板3を上方向へより大きく変形させることができる。これにより、第1半導体パッケージPAと並列接続された第2半導体パッケージPBの上電極20の引き上げ力がより大きくなる。このため、第2半導体パッケージPB内の半導体素子30に発生する追加応力がより大きくなる。したがって、初期故障した第1半導体パッケージPA以外の第2半導体パッケージPBを機械的破壊により短絡させる上で好適である。
【0040】
本実施形態の上電極20は、第1延在部21及び第2延在部22を備える。第1延在部21は、半導体素子30の上面に沿って延びるとともに側部開口42から金属ケース40の外へ突出する。第2延在部22は、第1延在部21の突出端から天板3に向けて上方へ延びる。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
上電極20において第1延在部21と第2延在部22とが略直角になることで、通電時に反発電磁力MFを発生させる上で好適である。
【0041】
本実施形態の金属ケース40は、半導体素子30と電気的に絶縁するための封止部材50で覆われることで、以下の効果を奏する。
金属ケース40及び封止部材50により半導体素子30を外的要因から保護することができる。加えて、封止部材50により金属ケース40と半導体素子30とを電気的に絶縁することができる。
【0042】
底板2は、天板3と絶縁ケース4を介して接続される。上電極20の上端は、絶縁ケース4の上端よりも低い位置にある。上電極20は、締結部材60,61を介して天板3に接続される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
上電極20は締結部材60,61によって天板3の向きに荷重がかかった状態となる。この荷重は、半導体素子30に初期応力を発生させる。したがって、締結部材60,61を備えた簡単な構成で、半導体素子30に初期応力を発生させることができる。
加えて、絶縁ケース4の上端を高くすることで、組み立て時に上電極20に予荷重をかけてあそびを無くすことができる。
【0043】
本実施形態の半導体モジュール1は、第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBのそれぞれの上電極20が締結部材60,61を介して天板3に接続される。それぞれの上電極20が締結部材60,61を介して天板3に接続される部分は、互いに隣り合う位置にある。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
通電時の反発電磁力MFにより、それぞれの上電極20が締結部材を介して天板3に接続される部分(天板3の一部)を山なりに大きく変形させることができる。したがって、初期故障した第1半導体パッケージPA以外の第2半導体パッケージPBを機械的破壊により短絡させる上で好適である。
【0044】
本実施形態の上電極20の厚さは、3mm以上であることで、以下の効果を奏する。
チップ応力増加倍率が1以上となるため、伴連れ短絡故障に必要な基準値以上の応力を発生させることができる。
【0045】
本実施形態の天板3の厚さは、2mm以上12mm以下であることで、以下の効果を奏する。
例えば、天板3の厚さが2mm未満であると薄すぎ、初期故障した半導体素子30直上の天板3しか変形できない可能性が高い。例えば、天板3の厚さが12mmを超えると厚すぎ、天板3そのものが変形しにくくなる可能性が高い。これに対し本実施形態では、天板3の厚さが2mm以上12mm以下であることで、半導体素子30にクラックが発生しやすくなる。
【0046】
本実施形態の底板2は、天板3と絶縁ケース4を介して接続される。底板2は、絶縁ケース4よりも側方に突出した下側接続端子5を有する。天板3は、絶縁ケース4よりも側方に突出した上側接続端子6を有する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
下側接続端子5及び上側接続端子6が絶縁ケース4よりも内側に位置する場合と比較して、接続端子5,6に電源等を接続しやすいため、好適である。
【0047】
これまで説明した第1実施形態は、上電極20が締結部材60,61を介して天板3に接続される例である。しかしながら、半導体パッケージPは半導体素子30や電極10,20を積み重ねた構造であるため、上電極20の高さ位置にばらつきが生じる。半導体モジュール1内に複数の半導体パッケージPを並列し、上電極20と天板3との接触電気抵抗を悪化させないことが重要である。そのためには、高さにばらつきがある上電極20すべての接触圧力を確保する必要がある。以下の実施形態では、弾性部材の弾性力により、高さにばらつきがある上電極20すべての接触圧力を確保する例を説明する。
【0048】
次に、半導体モジュールの一例として第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第2実施形態は、ばね構造270(弾性部材の一例)を備える点が第1実施形態と異なる。
図8は、第2実施形態の半導体モジュール201の側断面図である。
上電極20は、締結部材61と並んで配置されたばね構造270を介して天板3に接続される。
【0049】
ばね構造270は、複数の皿バネ271を積み重ねた構造である。複数の皿バネ271において上下方向に隣り合う2つの皿バネ271は、互いに面接触しておらず、皿バネ271の端部で線接触又は点接触している。例えば、皿バネ271は、導電性の金属材料で形成される。複数の皿バネ271の中心孔には、ボルト61が挿通されている。ばね構造270は、天板3をボルト61で締結することで圧縮状態となる初期長さを有する。
【0050】
ばね構造270において半導体素子30の側の端部は、上電極20において天板3の側に突出した部分よりもボルト61(締結部材の一例)の側にずれた位置にある。ここで、ばね構造270において半導体素子30の側の端部は、複数の皿バネ271のうち最も下側に位置する皿バネ271において半導体素子30に最も近い端部である。上電極20において天板3の側に突出した部分は、第3延在部23において半導体素子30に最も近い端部である。
【0051】
図9は、第2実施形態の半導体モジュール201のアーク発生の説明図である。
本実施形態では、ばね構造270がボルト61の方向にずれている。図中のずれSは、最も下側に位置する皿バネ271において半導体素子30に最も近い端部と第3延在部23において半導体素子30に最も近い端部との水平方向の間隔である。
【0052】
例えば、短絡故障時の圧力上昇により上向き荷重(上向き矢印方向の力)が作用すると、てこの原理でボルト61を引き伸ばす荷重が作用する。すなわち、ボルト61には支点FPを介して作用する下向き荷重(下向き矢印方向の力)が作用する。短絡故障によって大電流が流れている場合にボルト61が破断すると、天板3と上電極20とが非接触状態となる。すると、天板3と上電極20との間にアークが発生する。アークによる圧力によって、天板3は上へ押し上げられる。すると、並列した半導体パッケージPの上電極20が引き上げられる。これにより、他の半導体パッケージPを伴連れ短絡故障させやすくなる。
【0053】
以上に説明されたように、第2実施形態では、上電極20は、ボルト61と並んで配置されたばね構造270を介して天板3に接続されることで、以下の効果を奏する。
高さにばらつきのある上電極20すべての接触圧力を確保することができる。このため、上電極20の高さ位置にばらつきが生じた場合でも、各上電極20と天板3との間に電気導通経路を形成することができる。さらに、各上電極20と天板3との間の接触熱抵抗を低減することができる。
加えて、組み立て時に、上電極20の上端高さ公差をばね構造270で吸収することができる。
【0054】
第2実施形態では、ばね構造270において半導体素子30の側の端部は、上電極20において天板3の側に突出した部分よりもボルト61の側にずれた位置にあることで、以下の効果を奏する。
てこの原理でボルト61を引き伸ばす荷重が作用する。短絡故障によって大電流が流れている場合にボルト61が破断すると、アークが発生する。アークの発生により、天板3は上へ押し上げられる。すると、並列した半導体パッケージPの上電極20が引き上げられる。したがって、アークが発生しない構造と比較して、伴連れ短絡故障が発生しやすくなる。
【0055】
これまで説明した第2実施形態は、上電極20が締結部材60,61及びばね構造270を介して天板3に接続される例である。しかしながら、短絡故障時の電流通電の大きさ等によっては、さらに電気抵抗を低減する必要がある。以下の実施形態では、導通部材により、さらに電気抵抗を低減する例を説明する。
【0056】
次に、半導体モジュールの一例として第3実施形態について説明する。第3実施形態において、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については説明を省略する。第3実施形態は、導通部材380を備える点が第2実施形態と異なる。
図10は、第3実施形態の半導体モジュール301の側断面図である。
上電極20は、ばね構造270(弾性部材の一例)と並んで配置された導通部材380を介して天板3に接続される。
【0057】
例えば、導通部材380は、銅などの電気抵抗が小さい金属材料で形成されている。導通部材380は、ばね構造270よりも電気抵抗の小さい金属材料で形成されている。導通部材380は、U字形状を有する。導通部材380は、板状部材をU字形状に折り曲げて形成されている。導通部材380の一方の端部は、上電極20とばね構造270下端との間にある。導通部材380の他方の端部は、天板3とばね構造270上端との間にある。導通部材380は、想定される電流が流れた場合でもジュール発熱で溶断しないよう、十分な断面積を有する。
【0058】
図11は、導通部材の変形例を示す側断面図である。
図12は、導通部材の変形例を示す斜視図である。
例えば、導電部材480の長さL(
図11の左右方向の長さ)は、上電極20の第3延在部23の長さ(
図11の左右方向の長さ)よりも長くてもよい。導電部材480がターンする構造であるため、導電部材480には逆向き(
図11の右方向の矢印、
図11の左方向の矢印)の電流が流れる。逆向きの電流の作用により、反発電磁力MFが発生する。これにより、導電部材480が上電極20や天板3に押し付けられる向きの電磁力が発生する。したがって、接触圧力の向上を図り、かつ、接触電気抵抗の悪化を防ぐ上で好適である。
【0059】
例えば、導通部材480は、複数の貫通孔481(ボルト通し孔)を有してもよい。例えば、貫通孔481は、導通部材480の幅方向に一対配置されていてもよい。これにより、各貫通孔481にボルト61を挿通することで、組み立て時の予荷重などを調整することが可能となる。加えて、上電極20及び天板3に対する導通部材480の接触圧力の更なる向上を図り、かつ、接触電気抵抗の悪化を防ぐ上で好適である。
【0060】
例えば、導通部材480は、以下のように設計してもよい。導通部材480の材料は、銅(電気抵抗率1.78×10-8Ω・m、融点1084.5℃)としてもよい。導通部材480の寸法は、厚さt=1mm、幅w=28mm、長さL=15mmとしてもよい。
【0061】
図13は、想定電流と導通部材温度との計算結果を示す図である。
図13の例では、導通部材の最高温度は840℃である。
例えば、短絡故障時に想定される電流通電により発生するジュール発熱に対して、温度上昇を融点よりも小さくする。これにより、導通部材の溶断を防ぎ、半導体モジュールの電気導通を維持することが可能となる。
【0062】
以上に説明されたように、第3実施形態では、上電極20は、ばね構造270と並んで配置された導通部材380を介して天板3に接続されることで、以下の効果を奏する。
ボルト61及びばね構造270に加えて導通部材380にも電流が流れる構造となるため、半導体モジュール301の電気抵抗を低減することが可能となる。
【0063】
第2実施形態及び第3実施形態では、ばね構造270(弾性部材)が複数の皿バネ271を積み重ねた構造(皿バネ271を含む構成)である。これに対して、弾性部材は皿バネ271を含む構成でなくてもよい。例えば、弾性部材は、コイルバネ又は板バネ、薄板であってもよい。例えば、弾性部材の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0064】
次に、半導体モジュールの一例として第4実施形態について説明する。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第4実施形態は、半導体モジュール内で対になる半導体パッケージの配置が第1実施形態と異なる。
図14は、第4実施形態の半導体モジュール401の上面図である。
図15は、第4実施形態の半導体モジュール401の側断面図である。
上電極20は、上面視で側部開口42の片側に寄った位置から突出する。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、互いに対向して配置される。
【0065】
第1半導体パッケージPAの上電極20は、上面視で側部開口42の一方側に寄った位置から突出する。第2半導体パッケージPBの上電極20は、上面視で側部開口42の他方側に寄った位置から突出する。第2半導体パッケージPBの上電極20は、上面視で、第1半導体パッケージPAの側部開口42の他方側に向けて突出する。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、上面視で互いにクランク形状の隙間をあけて、それぞれL字形状に設けられている。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、上面視で互い違いに並ぶ配置となる。
【0066】
第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、それぞれの上電極20の第3延在部23が紙面奥行き方向に並んで配置されている。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、それぞれの上電極20の貫通孔(ボルト通し孔)が紙面奥行き方向に重なる位置にある。
【0067】
以上に説明されたように、第4実施形態では、上電極20は、上面視で側部開口42の片側に寄った位置から突出する。第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBは、互いに対向して配置される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
第1半導体パッケージPA及び第2半導体パッケージPBが上面視で互い違いに並ぶ配置となるため、並列する上電極20の間隔が近くなる。これにより、故障した半導体パッケージと並列接続された他の半導体パッケージの上電極20を天板3方向へ引き上げやすくなる。このため、他の半導体パッケージの機械的破壊が発生しやすくなる。加えて、小さなスペースにより多くの半導体パッケージを配置することができる。
【0068】
次に、半導体モジュールの一例として第5実施形態について説明する。第5実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第5実施形態は、半導体モジュール内のコレクタ電位露出面が無い点が第1実施形態と異なる。
図16は、第5実施形態の半導体モジュール501の側断面図である。
底板2において下電極10に接続される部分は、上電極20と電気的に絶縁するための下部封止部材590(第2絶縁部材の一例)で覆われる。
【0069】
例えば、下部封止部材590は、樹脂などの電気絶縁性を有する絶縁材料で形成される。例えば、樹脂は、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂である。例えば、流動性が高い状態の下部封止部材590を半導体モジュール501内に注入し、硬化させる。これにより、下電極10と底板2とを樹脂封止してもよい。
【0070】
下部封止部材590は、半導体モジュール501内において絶縁ケース4の下部と底板2の上面とで囲まれる部分に設けられる。下部封止部材590は、半導体モジュール501内の底板2上面と半導体パッケージPの下電極10(コレクタ側金属部分)を覆っている。半導体モジュール501内の半導体パッケージPの上部(天板3に接続される部分)は、下部封止部材590で覆われずに露出している。
【0071】
以上に説明されたように、第5実施形態では、底板2において下電極10に接続される部分は、上電極20と電気的に絶縁するための下部封止部材590で覆われることで、以下の効果を奏する。
上電極20側電位の部材と下電極10側電位の部材とを電気的に絶縁することができる。したがって、半導体モジュール501の高耐圧化や小型化が可能となる。
【0072】
次に、実施形態の変形例について説明する。
実施形態の上電極は、第1延在部及び第2延在部を備える。これに対して、上電極は、第2延在部を有しなくてもよい。例えば、
図17に示すように、上電極1020は、半導体素子30の上面に沿って延びるとともに側部開口42から金属ケース40の外へ突出していてもよい。ボルト61は、上電極1020の突出端と天板3とにわたって上下方向に沿って延びていてもよい。例えば、上電極1020とボルト61とにより、反発電磁力を発生させるための屈曲形状を有していてもよい。例えば、上電極の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0073】
実施形態の上電極は、クランク形状を有する。これに対して、上電極は、他の形状(例えばJ字形状)を有していてもよい。例えば、
図18に示すように、上電極1120は、第1延在部21と、第2延在部22と、第3延在部23と、第4延在部1124と、を備えていてもよい。第3延在部23及び第4延在部1124は、水平面に沿って互いに反対方向に延びていてもよい。例えば、第3延在部23の端部と第4延在部1124の端部とをそれぞれ天板3にボルト61で締結してもよい。例えば、上電極と天板との締結態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0074】
実施形態の上電極は、天板にボルトで締結される。これに対して、上電極は、天板にボルト締結されなくてもよい。例えば、
図19に示すように、上電極1220は、半導体素子30から一側方(紙面右方)へ延びた後に屈曲して上方へ延び、その後、更に屈曲して他側方(紙面左方)へ延び、その後、更に屈曲して上方へ延びていてもよい。例えば、上電極1220の上端は、天板3の下面にはんだ等で接続されていてもよい。例えば、上電極と天板との接続態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0075】
実施形態の上電極は、クランク形状を有する。これに対して、上電極は、他の形状(例えばS字形状)を有していてもよい。例えば、
図20に示すように、上電極1320は、半導体素子30から一側方(紙面右方)へ延びた後に屈曲して上方へ延び、その後、更に屈曲して他側方(紙面左方)へ延び、その後、更に屈曲して上方へ延びた後に屈曲して一側方(紙面右方)へ延びていてもよい。例えば、上電極の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0076】
実施形態の上電極は、天板の上方からボルトで締結される。これに対して、上電極は、天板の上方からボルトで締結されなくてもよい。例えば、
図21に示すように、上電極20は、天板3の下方(上電極20の下方)からボルト61で締結されてもよい。例えば、ナット60は、天板3の上面に設けられていてもよい。例えば、上電極の締結態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0077】
実施形態の天板(第2金属部材)は、底板(第1金属部材)の上方に配置される。これに対して、天板(第2金属部材)は、底板(第1金属部材)の上方に配置されなくてもよい。例えば、第2金属部材は、第1金属部材の下方又は左右側方に配置されてもよい。例えば、各金属部材は、板状でなく、ブロック形状であってもよい。例えば、各金属部材の配置及び形状等の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0078】
実施形態の半導体モジュールは、底板(第1金属部材)から天板(第2金属部材)へ通電される。これに対して、底板(第1金属部材)から天板(第2金属部材)へ通電されなくてもよい。例えば、天板(第2金属部材)から底板(第1金属部材)へ通電されてもよい。例えば、半導体モジュールにおける通電方向は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0079】
実施形態の半導体素子は、金属ケースに収納される。これに対して、半導体素子は、金属ケースに収納されなくてもよい。例えば、半導体素子は、金属ケースを介さずに樹脂などで覆われてもよい。例えば、金属ケースの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0080】
実施形態の金属ケースは、封止部材(第1絶縁部材)で覆われる。これに対して、金属ケースは、封止部材(第1絶縁部材)で覆われなくてもよい。例えば、金属ケースの封止態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
実施形態の上電極は、屈曲形状を有するとともに、底板から天板へ通電した場合に反発電磁力を発生させる。これに対して、上電極は、屈曲形状を有しなくてもよい。例えば、下電極は、屈曲形状を有するとともに、天板から底板へ通電した場合に反発電磁力を発生させてもよい。例えば、下電極及び上電極の少なくとも一方は、屈曲形状を有するとともに、底板及び天板の一方から他方へ通電した場合に底板及び天板の少なくとも一方を半導体素子とは反対側に押し上げる反発電磁力を発生させてもよい。例えば、下電極及び上電極の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1導電部材及び第2導電部材の少なくとも一方は、屈曲形状を有するとともに、第1金属部材及び第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に第1金属部材及び第2金属部材の少なくとも一方を半導体素子とは反対側に押し上げる反発電磁力を発生させる。これにより、大エネルギー破壊時に電気導通を維持できる半導体モジュールを提供することができる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0084】
(付記1)
互いに対向して配置された第1金属部材及び第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に配置された第1半導体パッケージ及び第2半導体パッケージと、を備え、
前記第1半導体パッケージ及び前記第2半導体パッケージのそれぞれは、
前記第1金属部材に接続された第1導電部材と、
前記第2金属部材に接続された第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材との間に配置され、前記第1導電部材及び前記第2導電部材に接続された半導体素子と、を備え、
前記第1導電部材及び前記第2導電部材の少なくとも一方は、屈曲形状を有するとともに、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方を前記半導体素子とは反対側に押し上げる反発電磁力を発生させる、
半導体モジュール。
【0085】
(付記2)
前記第2金属部材は、前記第1金属部材の上方に配置され、
前記半導体素子は、金属ケースに収納され、
前記金属ケースは、
前記第1導電部材における前記半導体素子に接続している面の反対側の面を露出させる下部開口と、
前記下部開口に対して交差するように前記半導体素子の側方を開口する側部開口と、を有し、
前記第1導電部材は、前記下部開口を通じて前記第1金属部材に接続され、
前記第2導電部材は、前記側部開口を通じて前記第2金属部材に接続される、
付記1に記載の半導体モジュール。
【0086】
(付記3)
前記第2導電部材は、
前記半導体素子に接続している面に沿って延びるとともに前記側部開口から前記金属ケースの外へ突出する第1延在部と、
前記第1延在部の突出端から前記第2金属部材に向けて上方へ延びる第2延在部と、を備える、
付記2に記載の半導体モジュール。
【0087】
(付記4)
前記金属ケースは、前記半導体素子と電気的に絶縁するための第1絶縁部材で覆われる、
付記2又は3に記載の半導体モジュール。
【0088】
(付記5)
前記第1金属部材は、前記第2金属部材と絶縁ケースを介して接続され、
前記第2導電部材の上端は、前記絶縁ケースの上端よりも低い位置にあり、
前記第2導電部材は、締結部材を介して前記第2金属部材に接続される、
付記2から4の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0089】
(付記6)
前記第2導電部材は、前記締結部材と並んで配置された弾性部材を介して前記第2金属部材に接続される、
付記5に記載の半導体モジュール。
【0090】
(付記7)
前記第2導電部材は、前記弾性部材と並んで配置された導通部材を介して前記第2金属部材に接続される、
付記6に記載の半導体モジュール。
【0091】
(付記8)
前記弾性部材において前記半導体素子の側の端部は、前記第2導電部材において前記第2金属部材の側に突出した部分よりも前記締結部材の側にずれた位置にある、
付記6又は7に記載の半導体モジュール。
【0092】
(付記9)
前記第2導電部材は、上面視で前記側部開口の片側に寄った位置から突出し、
前記第1半導体パッケージ及び前記第2半導体パッケージは、互いに対向して配置される、
付記2から8の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0093】
(付記10)
前記第2導電部材の厚さは、3mm以上である、
付記1から9の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0094】
(付記11)
前記第2金属部材の厚さは、2mm以上12mm以下である、
付記1から10の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0095】
(付記12)
前記第1金属部材は、前記第2金属部材と絶縁ケースを介して接続され、
前記第1金属部材は、前記絶縁ケースよりも側方に突出した第1接続端子を有し、
前記第2金属部材は、前記絶縁ケースよりも側方に突出した第2接続端子を有する、
付記1から11の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0096】
(付記13)
前記第1金属部材において前記第1導電部材に接続される部分は、前記第2導電部材と電気的に絶縁するための第2絶縁部材で覆われる、
付記1から12の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【符号の説明】
【0097】
1,201,301,401,501…半導体モジュール、2…底板(第1金属部材)、3…天板(第2金属部材)、4…絶縁ケース、5…下側接続端子(第1接続端子)、6…上側接続端子(第2接続端子)、10…下電極(第1導電部材)、20,1020,1120,1220,1320…上電極(第2導電部材)、21…第1延在部、22…第2延在部、30…半導体素子、40…金属ケース、41…下部開口、42…側部開口、50…封止部材(第1絶縁部材)、60…ナット(締結部材)、61…ボルト(締結部材)、270…ばね構造(弾性部材)、380,480…導通部材、590…下部封止部材(第2絶縁部材)、MF…反発電磁力、P…半導体パッケージ、PA…第1半導体パッケージ、PB…第2半導体パッケージ