(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022218
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240208BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240208BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240208BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240208BHJP
H04N 23/57 20230101ALI20240208BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G03B15/00 V
G03B30/00
H04N5/225 100
H04N5/225 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125639
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坂 智彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊
【テーマコード(参考)】
2H044
5C122
【Fターム(参考)】
2H044BD10
2H044BD16
2H044BE04
2H044BE06
2H044BE10
2H044BE17
2H044BE18
5C122DA09
5C122DA14
5C122EA05
5C122FA18
5C122FD01
5C122GE05
5C122GE11
5C122GE19
5C122HA75
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】光学素子の移動に対する抵抗の発生を防止すること。
【解決手段】光学素子駆動装置は、光学素子を駆動する光学素子駆動装置であって、光学素子を保持可能な保持部と、保持部を内側に収容する収容部と、保持部の外周面と収容部の内周面との間に介在し、リテーナーに転動可能に保持される複数の転動部材を有し、複数の転動部材により収容部に対して保持部を移動可能に支持する支持部と、を備え、外周面及び内周面の少なくとも一方は、リテーナーと対向する部分に形成される第1凹部を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を駆動する光学素子駆動装置であって、
前記光学素子を保持可能な保持部と、
前記保持部を内側に収容する収容部と、
前記保持部の外周面と前記収容部の内周面との間に介在し、リテーナーに転動可能に保持される複数の転動部材を有し、前記複数の転動部材により前記収容部に対して前記保持部を移動可能に支持する支持部と、
を備え、
前記外周面及び前記内周面の少なくとも一方は、前記リテーナーと対向する部分に形成される第1凹部を有する、
光学素子駆動装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記収容部に対して前記保持部を前記光学素子の光路方向に移動可能に支持し、
前記第1凹部は、前記光路方向に直交する方向における前記リテーナーの端部に対向するように配置される、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項3】
前記第1凹部は、前記光路方向に延在する前記リテーナーの前記端部に沿って延在する、
請求項2に記載の光学素子駆動装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記収容部に対して前記保持部を前記光学素子の光路方向に移動可能に支持し、
前記外周面及び前記内周面の少なくとも一方は、前記光路方向に直交する方向において、前記支持部の側とは反対側で前記第1凹部と隣接して形成される第2凹部を有する、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記複数の転動部材を収容する溝を前記外周面及び前記内周面の少なくとも一方に有し、前記収容部に対して前記保持部を前記光学素子の光路方向に移動可能に支持し、
前記第1凹部と前記溝とは、前記光路方向に直交する方向において凸部を介して隔てられている、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子駆動装置と、
前記保持部を駆動する駆動部と、
前記光学素子を用いて被写体像を撮像する撮像部と、
を備える、
カメラモジュール。
【請求項7】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項6に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、
を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を駆動する光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォンやドローン等のカメラ搭載装置には、カメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、光学素子を駆動する光学素子駆動装置が使用されている。なお、ドローンとは、遠隔操作又は自動制御により飛行させることができる無人航空機であり、マルチコプターと呼ばれるものもある。
【0003】
光学素子駆動装置は、オートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto
Focus)を有している。光学素子駆動装置は、AF機能により、レンズを光軸方向に移動して、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行っている。
【0004】
例えば、特許文献1には、レンズを保持するレンズ保持部と、レンズ保持部をガイド部材に沿って光軸方向に案内する中間移動体と、レンズ保持部をガイド部材に沿って光軸方向に移動させる駆動部と、を備えたレンズ駆動装置が開示されている。中間移動体は、ガイド部材のガイド溝に案内される複数のボールと、ボールを転動可能に保持するリテーナーと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レンズ駆動装置では、特許文献1に示すように、レンズ保持部を光軸方向に案内するため、ボール及びリテーナーが用いられている。このような構成においては、ボールとリテーナーとの間の潤滑性のため、ボールにグリスが塗布されている。そして、例えば、落下等の外部衝撃により、リテーナーに保持されるボールの位置が基準位置から変位した場合でも、塗布されたグリスにより、ボールは転動可能である。
【0007】
このように、ボールに塗布されたグリスは、ボールとリテーナーとの間の潤滑性に寄与する。しかしながら、例えば、落下等の外部衝撃により、グリスが周囲に飛散する可能性があり、飛散したグリスがリテーナーとその周囲の部材との隙間に入り込んだ場合には、当該部材にリテーナーが張り付く可能性がある。リテーナーはボールと共に光軸方向に移動するが、リテーナーの張り付きが起こった場合、レンズ保持部の移動に対する抵抗が発生する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、光学素子の移動に対する抵抗の発生を防止可能な光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学素子駆動装置は、
光学素子を駆動する光学素子駆動装置であって、
前記光学素子を保持可能な保持部と、
前記保持部を内側に収容する収容部と、
前記保持部の外周面と前記収容部の内周面との間に介在し、リテーナーに転動可能に保持される複数の転動部材を有し、前記複数の転動部材により前記収容部に対して前記保持部を移動可能に支持する支持部と、
を備え、
前記外周面及び前記内周面の少なくとも一方は、前記リテーナーと対向する部分に形成される第1凹部を有する。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは、
前記光学素子駆動装置と、
前記保持部を駆動する駆動部と、
前記光学素子を用いて被写体像を撮像する撮像部と、
を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
前記カメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学素子の移動に対する抵抗の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す正面図である。
【
図2】カメラモジュール及び撮像部を示す斜視図である。
【
図3】カメラモジュールの光学素子駆動装置が有する光学素子駆動装置本体の平面図である。
【
図4】
図3に示す光学素子駆動装置本体の支持部を拡大して示す図である。
【
図5】
図3に示す光学素子駆動装置本体の支持部の一部を分解して示す分解斜視図である。
【
図6】
図3に示す光学素子駆動装置本体の保持部の外周面を示す側面図であって、支持部の周辺を示す図である。
【
図7】
図3に示す光学素子駆動装置本体の収容部の内周面を示す側面図であって、支持部の周辺を示す図である。
【
図8】
図3に示す光学素子駆動装置本体の基板部を示す平面図であって、基板部を平面に展開した図である。
【
図9】
図3に示す光学素子駆動装置本体を外側から見た図である。
【
図10】
図3に示す光学素子駆動装置本体の収容部を内側から見た図である。
【
図11A】車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[スマートフォン]
図1A及び
図1Bは、本実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。
図1AはスマートフォンMの正面図であ
り、
図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0016】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュールAが適用されている。
【0017】
カメラモジュールAは、AF機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うことができる。なお、カメラモジュールAは、振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を備えていてもよい。OIS機能
により、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して、像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0018】
[カメラモジュール]
図2は、カメラモジュールA及び撮像部5を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すカメラモジュールAの光学素子駆動装置1が有する光学素子駆動装置本体4の平面図である。
図2及び
図3に示すように、本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。また、後述する図においても、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。
【0019】
カメラモジュールAは、例えば、スマートフォンMで撮影が行われる場合、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が、
図2に示すレンズ部2の光軸OAの光軸方向であり、
図2において、図中上側(+Z側)が光軸方向の受光側、下側(-Z側)が光軸方向の結像側である。
【0020】
なお、以降では、光軸OAを用いて説明を行うが、光軸OAの光軸方向は、光学素子の種類に応じて、光路方向、焦点方向(焦点を調整する方向)と言い換えてもよい。ここで、後述するカバー3の開口部301、後述する保持部10の開口部11、あるいは、後述する収容部20の収容開口部21によって形成される光の通り道が光路であり、この光路の延びる方向(各開口部の貫通方向)が光路方向である。
【0021】
図2及び
図3に示すように、カメラモジュールAは、AF機能を実現する光学素子駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2及びレンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部5等を備える。すなわち、光学素子駆動装置1は、光学素子としてレンズ部2を駆動する、いわゆる、レンズ駆動装置である。
【0022】
[カバー]
光学素子駆動装置1において、光学素子駆動装置本体4は、外側をカバー3で覆われている。カバー3は、Z方向から見た平面視で略矩形状の有蓋四角筒状体である。本実施の形態では、カバー3は、平面視で略正方形状を有している。カバー3は、上面に略円形の開口部301を有する。レンズ部2は、光学素子駆動装置本体4の保持部10の開口部11に収容され、カバー3の開口部301から外部に臨み、Z方向における移動に伴い、カバー3の開口面よりも受光側に突出するように構成されている。カバー3の内壁は、光学素子駆動装置本体4の収容部20(底部22a)に、例えば、接着により固定され、光学素子駆動装置本体4を収容する。
【0023】
カバー3は、光学素子駆動装置1の外部やカバー3の内部からの電磁波を遮断する部材、例えば、磁性体からなるシールド部材を有している。
【0024】
[撮像部]
撮像部5は、光学素子駆動装置1の結像側に配置される。撮像部5は、例えば、イメージセンサー基板501、イメージセンサー基板501に実装される撮像素子502及び制御部503を有する。撮像素子502は、例えば、CCD(charge-coupled device)型
イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージ
センサー等により構成され、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。
【0025】
制御部503は、例えば、制御ICで構成され、光学素子駆動装置1の駆動制御を行う。光学素子駆動装置1は、イメージセンサー基板501に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。制御部503は、イメージセンサー基板501に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(本実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0026】
なお、
図2では、位置が固定されたイメージセンサー基板501に対し、レンズ部2を光学素子駆動装置1でZ方向に駆動することで、被写体像を撮像素子502に結像しているが、例えば、撮像素子502をZ方向に駆動してもよい。この場合、レンズ部2をカバー3に固定し、光学素子である撮像素子502を光学素子駆動装置1でZ方向に駆動することで、被写体像を撮像素子502に結像すればよい。
【0027】
[光学素子駆動装置本体]
光学素子駆動装置本体4は、光学素子であるレンズ部2をZ方向に駆動する光学素子駆動装置1の本体部分である。なお、以降では、説明の便宜上、光学素子駆動装置1がレンズ部2を駆動することを前提に説明を行うが、上述したように、光学素子駆動装置1が撮像素子502を駆動してもよい。
【0028】
光学素子駆動装置本体4は、
図3に示すように、保持部10、収容部20、支持部30A、30B、30C、駆動部40A、40B、基板部50等を有する。
【0029】
[保持部]
保持部10は、中央部に開口部11が形成された枠部12を有し、開口部11は、レンズ部2を内側に保持可能に構成されている。例えば、開口部11は、その内周面に取付溝等を形成することにより、レンズ部2を内周面に保持可能に構成されている。このように、保持部10は、レンズ部2の外周を囲んでレンズ部2を保持する。
【0030】
枠部12の外周側である外周面13は、その複数箇所(
図3では、一例として、3箇所)が、Z方向に沿って延在する支持部30A、30B、30Cにより、Z方向に移動可能に支持されている。
【0031】
また、外周面13は、その複数箇所(
図3では、一例として、2箇所)が、駆動部40A、40Bに保持されており、保持部10は、駆動部40A、40Bにより、Z方向に移動可能である。
【0032】
また、外周面13には、その複数箇所(
図3では、一例として、2箇所)に、Z方向位置の検出用の磁石14A、14Bが設けられている。磁石14A、14Bに対向するように、後述する位置検出センサー54A、54Bがそれぞれ設けられている。
【0033】
なお、開口部11は、円筒形状のレンズ部2に対応して、円筒形状に形成されているが、レンズ部2の形状に対応して、適宜な形状に変更可能である。
【0034】
また、光学素子駆動装置1が撮像素子502を駆動する場合、保持部10に開口部11はなくてもよく、つまり、保持部10は枠部でなくてもよく、その場合、例えば、保持部
10の上面(受光側の面)に撮像素子502を保持するようにすればよい。
【0035】
[収容部]
収容部20は、中央部に収容開口部21が形成された枠部22を有し、収容開口部21は、保持部10の外周を囲んで保持部10を内側に収容可能に構成されている。
【0036】
収容開口部21の内側である内周面23には、その複数箇所に支持部30A、30B、30Cが設けられている。収容部20は、支持部30A、30B、30Cにより、保持部10をZ方向に移動可能に支持する。
【0037】
また、内周面23には、その複数箇所に駆動部40A、40Bが設けられている。収容部20に設けられた駆動部40A、40Bは、保持部10をZ方向に移動する。保持部10は、駆動部40A、40Bに駆動される可動部として機能し、収容部20は、保持部10に対する固定部として機能する。
【0038】
平面視において、内周面23は、保持部10の外周面13の形状に対応して形成される。
図3において、保持部10の外周面13及び収容開口部21の内周面23の形状は一例であり、例えば、支持部30A、30B、30C、駆動部40A、40Bの配置等に応じて、適宜に変更可能である。
【0039】
枠部22は、底部22a、側壁部22bを有する。底部22aには、例えば、接着により、上述したカバー3の内壁が固定される。側壁部22bの外周側である外周面24には、外周面24に沿って、基板部50が取り付けられる。
【0040】
[支持部]
支持部30A、30B、30Cは、保持部10の外周面13と収容部20の内周面23との間に介在し、収容部20に対して、保持部10をZ方向に移動可能に支持する。支持部30A、30B、30Cは、
図3に示すように、内周面23(外周面13)において、周方向の3箇所に分散した位置にそれぞれ配置される。支持部30A、30B、30Cについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0041】
図4は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4の支持部30Cを拡大して示す図である。
図5は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4の支持部30Cの一部を分解して示す分解斜視図である。なお、ここでは、一例として、支持部30Cを
図4及び
図5に図示して説明を行う。また、
図4に示す支持部30Cの周辺の構成(凹部16a、16b、27a、27b等)については、後述の
図6及び
図7を参照して説明する。
【0042】
支持部30Cは、第1溝部15、第2溝部26、第1レール部材31、第2レール部材32、転動部材33(例えば、ボール部材等)、リテーナー34を有する。
【0043】
第1溝部15は、保持部10の枠部12の外周面13において、Z方向に延在して設けられ、V字状に凹むように形成された溝である。第2溝部26は、収容部20の枠部22の内周面23において、Z方向に延在して設けられ、V字状に凹むように形成された溝である。第1溝部15及び第2溝部26は、互いに対向して配置される。
【0044】
第1レール部材31は、取り付け時にZ方向となる長手方向に延在するV字断面の部材である。第1レール部材31は、転動部材33が配置される側にV字状の案内溝31a(本発明における溝)を有し、当該側と反対側が第1溝部15に取り付けられる。
【0045】
第2レール部材32も、取り付け時にZ方向となる長手方向に延在するV字断面の部材
である。第2レール部材32は、転動部材33が配置される側にV字状の案内溝32a(本発明における溝)を有し、当該側と反対側が第2溝部26に取り付けられる。第1レール部材31が第1溝部15に取り付けられ、第2レール部材32が第2溝部26に取り付けられるので、それぞれの案内溝31aと案内溝32aとが互いに対向して配置されることになる。
【0046】
このように配置された第1レール部材31の案内溝31aと第2レール部材32の案内溝32aとの間に、複数(
図5では、一例として、2個)の転動部材33が収容され、転動可能に挟持される。複数の転動部材33は、案内溝31a及び案内溝32aに沿って転動して、Z方向に案内される。
【0047】
リテーナー34は、転動部材33の数に応じた保持孔34aを有する。複数の転動部材33は、それぞれの保持孔34aに転動可能に保持されて、Z方向に沿って配置されることになる。リテーナー34により、複数の転動部材33は、互いの距離が一定に保たれることになる。
【0048】
支持部30Cは、上述した構成を有しており、支持部30A、30Bも同様の構成である。このように構成される支持部30A、30B、30Cにより、保持部10は、収容部20に対して、Z方向に移動可能に支持される。そして、支持部30A、30B、30Cは、上述したように、Z方向に沿って配置された複数の複数の転動部材33を有するので、保持部10の傾き(チルト)をより安定して抑制することができる。
【0049】
また、転動部材33は、通常、セラミックスや合金等の材料からなる。金属材料等からなる第1レール部材31、第2レール部材32を第1溝部15、第2溝部26に設けることで、転動部材33からの押圧力を受けても、第1レール部材31、第2レール部材32は変形し難くい。このような構成により支持部30A、30B、30Cは、Z方向に移動可能に安定して保持部10を支持することができる。
【0050】
[支持部周辺の構成]
図6は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4の保持部の10の外周面13を示す側面図であって、支持部30Cの周辺を示す図である。また、
図7は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4の収容部20の内周面23を示す側面図であって、支持部30Cの周辺を示す図である。なお、ここでも、一例として、支持部30Cを
図6及び
図7に図示して説明を行う。
【0051】
上述したように、保持部10の枠部12の外周面13に第1溝部15が形成されており、第1溝部15に第1レール部材31が取り付けられている。また、収容部20の枠部22の内周面23に第2溝部26が形成されており、第2溝部26に第2レール部材32が取り付けられている。そして、第1レール部材31の案内溝31aと第2レール部材32の案内溝32aとの間に転動部材33が挟持されるように、リテーナー34は配置される。
【0052】
本実施の形態においても、転動部材33とリテーナー34(保持孔34a)との間の潤滑性のため、転動部材33にグリスが塗布されている。塗布されたグリスにより、例えば、落下等の外部衝撃により、リテーナー34(保持孔34a)に保持される転動部材33の位置が基準位置から変位した場合でも、転動部材33は転動可能である。
【0053】
一方で、転動部材33に塗布されたグリスは、例えば、落下等の外部衝撃により、周囲に飛散する可能性があり、飛散したグリスがリテーナー34とその周囲の部材との隙間に入り込んだ場合には、当該部材にリテーナー34が張り付く可能性がある。
【0054】
例えば、
図4に示すように、リテーナー34と、リテーナー34に対向する外周面13や内周面23との間には、リテーナー34がZ方向に移動可能な隙間が形成されている。上述した隙間において、リテーナー34との間にグリスが入り込むと、グリスにより外周面13や内周面23にリテーナー34が張り付き、リテーナー34の移動、ひいては、保持部10の移動を阻害する可能性がある。
【0055】
そこで、本実施の形態では、外周面13においてリテーナー34に対向する部分に形成され、外周面13から凹設される凹部16a、16b(本発明における第1凹部)を備えるようにしている。また、内周面23においてリテーナー34に対向する部分に形成され、内周面23から凹設される凹部27a、27b(本発明における第1凹部)を備えるようにしている。
【0056】
図6に示す側面図も参照すると、凹部16aは、Z方向に直交する方向(
図6では、Y方向)におけるリテーナー34の一端部(
図6中の左側)に対向するように配置され、Z方向に延在するリテーナー34の一端部に沿って延在する。
【0057】
また、凹部16bは、Z方向に直交する方向(
図6では、Y方向)におけるリテーナー34の他端部(
図6中の右側)に対向するように配置され、Z方向に延在するリテーナー34の他端部に沿って延在する。
【0058】
また、
図7に示す側面図も参照すると、凹部27aは、Z方向に直交する方向(
図6では、Y方向)におけるリテーナー34の一端部(
図7中の右側)に対向するように配置され、Z方向に延在するリテーナー34の一端部に沿って延在する。
【0059】
また、凹部27bは、Z方向に直交する方向(
図6では、Y方向)におけるリテーナー34の他端部(
図7中の左側)に対向するように配置され、Z方向に延在するリテーナー34の他端部に沿って延在する。
【0060】
リテーナー34は、外周面13と内周面23との間の隙間において、転動部材33を回転中心として、Z軸周りに回転可能である(
図4を参照)。
【0061】
リテーナー34がZ軸周りに回転して、リテーナー34の一端側(
図4中の上側、
図6中の左側)が外周面13に近接する場合には、リテーナー34と外周面13との隙間が狭くなる。また、リテーナー34の他端側(
図4中の下側、
図6中の右側)が外周面13に近接する場合にも、リテーナー34と外周面13との隙間が狭くなる。
【0062】
本実施の形態では、上述した凹部16a、16bを設けることで、上述したリテーナー34の一端側及び他端側に対し、凹部16a、16bの底面を外周面13より離すようにしている。これにより、飛散したグリスが凹部16a、16bに付着しても、当該グリスがリテーナー34に接触し難いようにしている。
【0063】
また、第1溝部15と凹部16a、16bとは、Z方向に直交する方向(
図4及び
図6ではY方向)において、凸部19a、19bを介して隔てられている。
【0064】
凸部19a、19bにより、リテーナー34のZ軸周りの回転を規制し、リテーナー34と凹部16a、16bの底面との間に所定量の隙間を確保するようにして、凹部16a、16bに付着したグリスがリテーナー34に接触し難いようにしている。また、凸部19a、19bにより、グリスが第1溝部15内に留まるようにしている。
【0065】
このように、外周面13に凹部16a、16bを設けることで、飛散したグリスがリテーナー34に接触し難いようにして、グリスによるリテーナー34の張り付きを防止するようにしている。
【0066】
なお、
図6では、凸部19a、19bは、Y方向の幅が同じ幅でZ方向に延在されているが、同じ幅に限る必要はない。例えば、凸部19a、19bのZ方向において、両端に対して中央部分の幅が広くてもよいし、狭くてもよいし、また、両端から中央部分に向かって幅が徐々に広くなってもよいし、徐々に狭くなってもよい。
【0067】
凹部27a、27bも、凹部16a、16bと同様の機能を果たす。
【0068】
リテーナー34がZ軸周りに回転して、リテーナー34の一端側(
図4中の上側、
図7中の右側)が内周面23に近接する場合には、リテーナー34と内周面23との隙間が狭くなる。また、リテーナー34の他端側(
図4中の下側、
図7中の左側)が内周面23に近接する場合にも、リテーナー34と内周面23との隙間が狭くなる。
【0069】
本実施の形態では、上述した凹部27a、27bを設けることで、上述したリテーナー34の一端側及び他端側に対し、凹部27a、27bの底面を内周面23より離すようにしている。これにより、飛散したグリスが凹部27a、27bに付着しても、当該グリスがリテーナー34に接触し難いようにしている。
【0070】
また、第2溝部26と凹部27a、27bとは、Z方向に直交する方向(
図4及び
図7ではY方向)において、凸部29a、29bを介して隔てられている。
【0071】
凸部29a、29bにより、リテーナー34のZ軸周りの回転を規制し、リテーナー34と凹部27a、27bの底面との間に所定量の隙間を確保するようにして、凹部27a、27bに付着したグリスがリテーナー34に接触し難いようにしている。また、凸部29a、29bにより、グリスが第2溝部26内に留まるようにしている。
【0072】
このように、内周面23に凹部27a、27bを設けることで、飛散したグリスがリテーナー34に接触し難いようにして、グリスによるリテーナー34の張り付きを防止するようにしている。
【0073】
なお、ここでは、外周面13に凹部16a、16bを設け、内周面23に凹部27a、27bを設けているが、凹部16a、16b及び凹部27a、27bのいずれか一方を設ける構成でもよい。
【0074】
また、外周面13及び内周面23の少なくとも一方は、Z方向に直交する方向において、支持部30Cの側とは反対側で、凹部16a、16b及び凹部27a、27bの少なくとも1つと隣接して形成される他の凹部等を有していてもよい。
【0075】
一例として、
図6を参照すると、外周面13は、Z方向に直交する方向(
図6では、Y方向)において、支持部30C(第1溝部15)の側とは反対側で、凹部16aと隣接して形成される凹部17(本発明における第2凹部)を有している。凹部17は、凹部16aより開口面積が広く、凹部16aより深く凹設されている。
【0076】
凹部17を凹部16aに隣接して設けることにより、凹部16aのグリスがリテーナー34から離れる方向の凹部17に広がるようにして、グリスが凹部16aに滞留しないようにしており、グリスによるリテーナー34の張り付きを防止するようにしている。
【0077】
なお、凹部16a、16bや凹部27a、27bに隣接して設ける構成は、グリスがリテーナー34から離れる方向に広がるようにできれば、凹部17のような凹部に限らない。例えば、
図4に示すように、凹部16bに隣接して傾斜部18が設けられており、凹部16bのグリスがリテーナー34から離れる方向の傾斜部18に広がるようにしてもよい。
【0078】
[駆動部]
駆動部40A、40Bは、収容部20に対して、保持部10をZ方向に駆動する。駆動部40A、40Bは、
図3に示すように、内周面23(外周面13)において、周方向の2箇所に分散した位置にそれぞれ配置される。光学素子駆動装置本体4は、上述した支持部30A、30B、30C及び駆動部40A、40Bにより、保持部10と共にレンズ部2をZ方向に駆動することができ、これにより、AF機能を実現する。
【0079】
駆動部40A、40Bは、
図3に示す例では、支持部30Aが配置された隅部22bAとは異なる隅部であって、平面視において、光軸OAに点対称となるような位置の隅部22bB、22bCにそれぞれ配置される。このように配置することにより、レンズ部2等の光学素子の重量が増加しても、保持部10を安定して移動することができる。
【0080】
駆動部40A、40Bとしては、圧電素子を有するアクチュエーター、例えば、超音波モーターを用いる。なお、ボイスコイルモーター(VCM:Voice Coil Motor)等の駆動源を用いることもできる。
【0081】
[基板部]
基板部50について、
図3と共に、
図8、
図9も参照して説明を行う。
図8は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4の基板部50を示す平面図であって、基板部50を平面に展開した図である。
図9は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4を外側から見た図であり、
図3に示す方向D1から見た図である。なお、駆動部40A、40Bは基板部50のFPC51上に実装されていないが、
図8においては、位置関係を分かりやすくするため、駆動部40A、40Bを図示している。
【0082】
基板部50は、駆動部40A、40Bを駆動する回路を有する。基板部50は、FPC(Flexible Printed Circuit;フレキシブルプリント基板)51、ドライバーIC52、インダクタ53A、53B、位置検出センサー54A、54B等を有する。
【0083】
FPC51は、可撓性がある基板であり、樹脂フィルム等の薄い絶縁層や銅箔等の金属層が積層されて構成される。図示は省略するが、金属層は、信号線や電源線の回路として形成されており、駆動部40A、40B、ドライバーIC52、インダクタ53A、53B、位置検出センサー54A、54B等が電気的に接続される。
【0084】
ドライバーIC52は、駆動部40A、40Bを駆動する駆動信号を制御するICである。ドライバーIC52は、例えば、位置検出センサー54A、54Bで検出した検出信号に基づいて、駆動信号を出力し、出力された駆動信号は、インダクタ53A、53Bを介して、駆動部40A、40Bへ出力される。
【0085】
インダクタ53A、53Bは、それぞれコイルを有し、ドライバーIC52から入力された駆動信号における電圧(入力電圧)を昇圧して、駆動部40A、40Bへそれぞれ出力する。
【0086】
位置検出センサー54A、54Bは、例えば、ホール素子等の磁気センサーであり、対向して配置された磁石14A、14BのZ方向の位置(磁石14A、14Bによる磁場の
強さ)に応じた信号を検出信号として出力する。
【0087】
なお、図示は省略しているが、FPC51には、駆動部40A、40Bと電気的に接続される接続配線が設けられている。
【0088】
以上説明したドライバーIC52、インダクタ53A、53B、位置検出センサー54A、54BをFPC51上に実装するため、FPC51は、1枚の長尺な基板としている。そして、FPC51は、収容部20の枠部22の外周面24に沿って、外周面24を略一周するように配置される。
【0089】
FPC51を外周面24に沿って配置するため、隅部22bA、22bB、22bCの部分の外周面24は、平面視において、円弧状に形成されている。これにより、隅部22bA、22bB、22bCの部分の外周面24を含めて、FPC51を外周面24に密着させて配置することができる。このため、FPC51の外側に配置されるカバー3のサイズを大きくする必要はなく、装置全体の小型化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0090】
また、FPC51は、FPC主部51aと、FPC狭窄部51b、51cと、FPC端部51d、51eとを有する。FPC主部51aは、長手方向の一端側のFPC狭窄部51b及びFPC端部51dと他端側のFPC狭窄部51c及びFPC端部51eとを接続し、ドライバーIC52、位置検出センサー54A、54Bが実装される。
【0091】
FPC狭窄部51b、51cは、それぞれ、FPC主部51aとFPC端部51dとの間、FPC主部51aとFPC端部51eとの間に配置され、長手方向に直交する方向の幅が狭くなっている部分である。FPC狭窄部51b、51cは、
図9に示すように、支持部30B、30Cが配置される収容部20の部分を避けるように形成された部分である。このようなFPC狭窄部51b、51cを設けることにより、FPC51の外側に配置されるカバー3のサイズを大きくする必要はなく、装置全体の小型化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0092】
FPC51の長手方向における両端部であるFPC端部51d、51eには、それぞれ、インダクタ53A、53Bが実装される。インダクタ53A、53Bは、上述したように、コイルを有し、コイルからの漏れ磁束やノイズの放射がある。漏れ磁束やノイズの放射の影響を受ける可能性がある位置検出センサー54A、54Bとの距離を確保するため、インダクタ53A、53BはFPC端部51d、51eに配置される。一方、位置検出センサー54A、54Bは、位置検出のため、駆動力が作用する駆動部40A、40Bに近い位置に配置される。
【0093】
また、光学素子駆動装置本体4は、漏れ磁束やノイズを抑制するため、カバー部材60A、60Bと金属層55とを備える。
【0094】
カバー部材60A、60Bは、漏れ磁束やノイズをシールドする金属性の材料から形成される。カバー部材60A、60Bは、蓋部61、フランジ部63、開口部等を有する。
【0095】
蓋部61は、開口部を有する有蓋四角筒状体である。フランジ部63は、蓋部61の開口部の外周に延在する。具体的には、開口部62の外周部である蓋部61の縁の外周に、FPC端部51d、51eの表面に沿うように、延在する。
【0096】
そして、カバー部材60A、60Bは、FPC端部51d、51e上に実装されたインダクタ53A、53Bを、蓋部61の開口部内に収容し、且つ、フランジ部63をFPC
端部51d、51e上に配置した状態で覆うよう構成されている。
【0097】
このように、カバー部材60A、60Bは、蓋部61だけでなく、フランジ部63も備える。そのため、インダクタ53A、53Bからカバー部材60A、60B側へ放射された漏れ磁束やノイズを、蓋部61及びフランジ部63でより広い範囲でシールドすることができる。この結果、フランジ部がないカバー部材よりも、外部に漏れる磁束やノイズを低減することができる。
【0098】
フランジ部63は、例えば、接着剤等により、FPC端部51d、51eの表面上に固定してもよい。フランジ部がない場合と比較して、フランジ部63とFPC端部51d、51eの表面との接触面積が広くなるので、カバー部材60A、60BをFPC端部51d、51eの表面に確実に固定することができる。
【0099】
金属層55は、FPC端部51dにおいて、FPC端部51dに取り付けられるインダクタ53Aに対向するように配置される。金属層55は、例えば、FPC端部51dにおいて、インダクタ53Aが実装される面と反対側の面に設けられる。そして、金属層55は、平面視において、インダクタ53Aが配置される領域を少なくとも含むようなベタパターンで形成される。
【0100】
このように、インダクタ53Aが実装されるFPC端部51dに金属層55を設けているので、インダクタ53AからFPC端部51d側へ放射された漏れ磁束やノイズを、金属層55でシールドすることができる。この結果、上述した金属層55を有していないFPCよりも、FPC51を通過して外部に漏れる磁束やノイズを低減することができる。
【0101】
更に、金属層55は、
図8に示すように、フランジ部63と重なるように形成されることが望ましい。この結果、フランジ部63と金属層55との間の隙間を小さくすることができる。これは、基板として、FPCを用いる場合に特に有効である。
【0102】
このように、フランジ部63と金属層55との間の隙間を小さくするので、インダクタ53Aの周囲の略全部をカバー部材60Aと金属層55とで覆うことになる。これにより、インダクタ53Aから放射された漏れ磁束やノイズを、カバー部材60Aと金属層55とでシールドすることができる。この結果、外部に漏れる磁束やノイズをより低減することができる。
【0103】
カバー部材60A、60Bは、漏れ磁束やノイズを低減する金属材料から構成される。カバー部材60A、60Bとしては、例えば、強磁性体であるSPCC(Steel Plate Cold Commercial;冷間圧延鋼板)等の鉄からなる層に、少なくとも、銅、ニッケルからな
る層を積層する積層構造を用いる。この積層構造では、鉄層、銅層、ニッケル層の順に積層されており、これにより、鉄層の錆を防ぐことができる。
【0104】
銅層は、鉄層によりインダクタンスが高くなる影響を相殺することも目的として、積層されており、銅層をニッケル層より厚くすることにより、ノイズに対するシールド性を向上させることもできる。このように、カバー部材60A、60Bとしては、少なくとも、鉄層、銅層及びニッケル層を積層する積層構造において、銅層をニッケル層より厚くする構成がより好適である。
【0105】
また、金属層55は、FPC51の回路において、電源を供給する電源層又はグランド層を利用してもよい。また、金属層55は、1つの層に限らず、絶縁層を介して積層された複数の層から構成してもよい。例えば、絶縁層を介して積層された2つの層から構成する場合、一方の層を上述した電源層とし、他方の層をグランド層としてもよい。
【0106】
また、金属層55として、FPC51の回路の電源層又はグランド層を利用しない場合には、金属層55は、カバー部材60A、60Bと同様に、複数の金属層を積層して構成してもよい。
【0107】
ここで、
図10は、
図3に示す光学素子駆動装置本体4の収容部20を内側から見た図であり、レンズ部2及び保持部10を取り外した状態で、
図3に示す方向D2から見た図である。
【0108】
装置の小型化を図るため、収容部20は、上述した構成のカバー部材60A、60Bが挿入される挿入部25A、25Bを有する。挿入部25A、25Bは、
図10に示すように、枠部22の側壁部22bを貫通して設けられているが、カバー部材60A、60Bが挿入できれば、側壁部22bを貫通しない構成、例えば、凹部のような構成でもよい。
【0109】
このような挿入部25A、25Bにカバー部材60A、60Bを挿入することにより、装置全体の小型化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0110】
また、
図10に示す構成の場合、例えば、収容部20とFPC端部51dとの間を接着剤等で固定すれば、収容部20とFPC51との間にフランジ部63が固定されるので、フランジ部63をFPC端部51d、51eの表面上に固定しなくてもよい。これにより、光学素子駆動装置本体4の製造工程を簡略化できる。
【0111】
また、挿入部25A、25Bに篏合するように、カバー部材60A、60Bを挿入する場合には、カバー部材60A、60Bが、挿入部25A、25Bを有する収容部20の補強を兼ねることになり、収容部20の変形等を抑制することができる。
【0112】
[他の実施の形態]
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0113】
例えば、上記実施の形態では、第1溝部15、第2溝部26に第1レール部材31、第2レール部材32を設けているが、これらを設けず、第1溝部15及び第2溝部26が転動部材33を直接挟持する構成でもよい。
【0114】
また、上記実施の形態では、支持部30A、30B、30Cを同じ構成としているが、これらの1つ以上の支持部において、保持部10の外周面13を内側に向かって押圧するよう、転動部材33に付勢力を付与する付勢部材を設けてもよい。このような付勢部材を設けることにより、保持部10の傾き(チルト)を抑制することができる。
【0115】
ここで、収容部20の枠部22は、
図3に示すように、4つの隅部22bA、22bB、22bC、22bDを有する。平面視において、隅部22bA、22bB、22bC、22bDはスペースを有しており、付勢部材を有する支持部はスペースを必要とするので、当該支持部は、隅部22bA、22bB、22bC、22bDの少なくとも1つに配置する。
【0116】
例えば、
図3に示す例では、支持部30Aに上記付勢部材を設け、当該支持部30Aを隅部22bAに配置する。このように配置することにより、装置の省スペースを図ることができ、装置全体の小型化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0117】
また、これらの1つ以上の支持部において、第1レール部材31の案内溝31a及び第
2レール部材32の案内溝32aの少なくとも一方の溝内で転動部材33が周方向に変位可能なようにしてもよい。
図4に示すように、第1溝部15及び第2溝部26はV字状の溝に形成されているが、これらの少なくとも一方を、例えば、転動部材33の直径より幅が広いU字状の溝に形成する。また、第1レール部材31及び第2レール部材32はV字断面に形成されているが、例えば、これらの少なくとも一方をI字断面に形成する。このような構成により、第1溝部15と第1レール部材31とにより形成される溝及び第2溝部26と第2レール部材32とにより形成される溝の少なくとも一方をU字状の溝とする。
【0118】
このような構成のU字状の溝により、当該溝内で転動部材33が周方向に変位可能となり、対向する保持部10の外周面13と収容部20の内周面23との相対変位を可能とする。このように構成した支持部により、保持部10、収容部20等の寸法やこれらを組み立てた状態に個体差があっても、当該個体差を吸収することができる。
【0119】
更に、支持部の1つ以上が上述した付勢部材を有する場合、上記U字状の溝を有する支持部においては、付勢部材の付勢力に起因して転動部材33を押圧する力とその反力が釣り合うように、保持部10の外周面13及び収容部20の内周面23は相対変位する。この結果、上記U字状の溝を有する支持部を含む複数の支持部に対し、保持部10の支持位置が定まることになり、がたつきのない安定した支持を実現することができる。
【0120】
図3に示す例では、隅部22bBと隅部22bDとの間の辺の部分に配置された支持部30Bや隅部22bCと隅部22bDとの間の辺の部分に配置された支持部30Cにおいて、上記U字状の溝を有する構成とすればよい。
【0121】
また、
図3に示す例では、スペースを要しない支持部30B、30Cを、隅部22bA、22bB、22bC、22bDを避けて、辺の部分に配置するので、スペースを要する駆動部40A、40Bを、隅部22bB、22bCに配置することができる。
【0122】
また、上記実施の形態では、2つの位置検出センサー54A、54Bを設けているが、位置検出センサーは1つでもよい。この場合、V字状の溝に転動部材が挟持された構成の支持部(言い換えると、上述した付勢部材やU字状の溝を有していない支持部)の近傍に位置検出センサーを設けることが望ましい。例えば、
図3において、支持部30Aが付勢部材を有し、支持部30BがU字状の溝を有し、支持部30CがV字状の溝に転動部材が挟持された構成である場合、支持部30Cは、収容部20に対して相対変位可能な保持部10の基準(回転中心)となる。そのため、このような基準となる支持部30Cの近傍の位置検出センサー54Bが1つあればよい。
【0123】
また、支持部30A、30B、30C同士の間の角度は、120°間隔で配置することが望ましいが、この角度は適宜に変更可能である。支持部30A、30B、30C同士を120°間隔以外の角度で配置する場合、以下のような構成、配置とすることが望ましい。
【0124】
例えば、支持部30Aに付勢部材を設け、支持部30B及び支持部30Cの一方において、第1溝部15及び第2溝部26の一方をU字状の溝とする。そして、平面視において、支持部30Aの付勢部材による転動部材の押圧方向を光軸OAに向かう方向とし、当該方向に対し、線対称の位置となるように、支持部30B及び支持部30Cを配置する。このような構成、配置とすることにより、支持部30B及び支持部30Cにおいて、支持部30A側から受ける押圧力が均等になり、保持部10を安定して支持することができる。
【0125】
また、支持部は、内周面23(外周面13)の周方向の3箇所以上に分散配置されても
よい。この場合、対象を安定して支持可能な3点支持を基本として、3点支持の間を更に支持するよう、6箇所や9箇所等の3の倍数箇所に支持部を配置することが望ましい。
【0126】
また、上記実施の形態では、スマートフォンMを例に挙げて説明したが、本発明は、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部とを有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)等を含む。また、輸送機器は、例えば、自動車やドローン等を含む。
【0127】
図11A、
図11Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。
図11Aは自動車Vの正面図であり、
図11Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、上記実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。
図11A、
図11Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば、前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0128】
また、上記実施の形態では、光学素子としてレンズ部2を駆動する光学素子駆動装置1について説明したが、駆動対象となる光学素子は、ミラーやプリズム等のレンズ以外の光学素子であっても、撮像素子502のような光学素子でもよい。この場合、保持部10の開口部11は、取り付ける光学素子の形状に応じて、形状を変更したり、場合によっては、無くしたりしてもよい。
【0129】
また、上記実施の形態では、光学素子駆動装置1はAF機能を有しているが、AF機能だけでなく、ズーム機能等、レンズ部2をZ方向に移動させる機能を有するものでもよい。
【0130】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は、本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る光学素子駆動装置及びカメラモジュールは、例えば、スマートフォン、携帯電話機、デジタルカメラ、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、車載カメラ、ドローン等のカメラ搭載装置に搭載して、有用なものである。
【符号の説明】
【0132】
1 光学素子駆動装置
2 レンズ部
3 カバー
4 光学素子駆動装置本体
5 撮像部
10 保持部
11 開口部
12 枠部
13 外周面
14A、14B 磁石
15 第1溝部
16a、16b 凹部
17 凹部
18 傾斜部
19a、19b 凸部
20 収容部
21 収容開口部
22 枠部
22a 底部
22b 側壁部
22bA、22bB、22bC、22bD 隅部
23 内周面
24 外周面
25A、25B 挿入部
26 第2溝部
27a、27b 凹部
29a、29b 凸部
30A、30B、30C 支持部
31 第1レール部材
32 第2レール部材
31a、32a 案内溝
33 転動部材
34 リテーナー
34a 保持孔
40A、40B 駆動部
50 基板部
51 FPC
51a FPC主部
51b、51c FPC狭窄部
51d、51e FPC端部
52 ドライバーIC
53A、53B インダクタ
54A、54B 位置検出センサー
55 金属層
60A、60B カバー部材
61 蓋部
63 フランジ部
301 開口部
501 イメージセンサー基板
502 撮像素子
503 制御部