(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002222
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】鉄道車両用引戸
(51)【国際特許分類】
B61D 19/00 20060101AFI20231228BHJP
E06B 3/72 20060101ALI20231228BHJP
E06B 3/968 20060101ALI20231228BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20231228BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B61D19/00 A
E06B3/72
E06B3/968 A
F16B7/18 D
F16B7/18 E
F16B5/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101291
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰朗
【テーマコード(参考)】
2E016
2E035
3J001
3J039
【Fターム(参考)】
2E016HA06
2E016JA01
2E016JC09
2E016KA05
2E016KA06
2E016LA01
2E016LC02
2E016MA03
2E016MA06
2E016MA11
2E016QA11
2E016QA13
2E035BA02
2E035CA02
2E035CA06
2E035CB03
2E035DB02
3J001FA07
3J001JA10
3J001JD16
3J001KA19
3J001KB01
3J039AA07
3J039AA08
3J039BB02
3J039GA02
3J039GA03
3J039GA07
(57)【要約】
【課題】組付けが容易な構造の引戸の提供。
【解決手段】縦骨部材110及び横骨部材120に保持される表面板材105を有する鉄道車両用の引戸100において、骨部材は、押出形材よりなる縦骨部材110と横骨部材120とを含んでいる。縦骨部材110には、雌ネジ部が備えられたナット106が挿入されナット106が内部を移動可能な溝部107が、長手方向に沿って設けられ、溝部107は押出形材の少なくとも1辺の長手方向に連通して形成されている。そして、縦骨部材110に挿入されたナット106に対して、横骨部材120に固定される角金具115にボルト104を挿通させて締結することで、縦骨部材110と横骨部材120が固定されて構造体150を成し、構造体150に対して表面板材105が固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨部材と、該骨部材に保持される表面板材を有する鉄道車両用引戸において、
前記骨部材は、押出形材よりなる縦骨部材と横骨部材とを含み、
前記縦骨部材には、雌ネジ部が設けられたナット部材が挿入され該ナット部材が内部を移動可能な溝部が、長手方向に沿って設けられ、
前記溝部は前記押出形材の少なくとも1辺の長手方向に連通して形成され、
前記縦骨部材に挿入された前記ナット部材に対して、前記横骨部材に固定される接続金具にボルトを挿通させて締結することで、前記縦骨部材と前記横骨部材が固定されて構造体を成し、
該構造体に対して前記表面板材が固定されること、
を特徴とする鉄道車両用引戸。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用引戸において、
前記縦骨部材と前記横骨部材の前記溝部は、少なくとも、
前記縦骨部材に対して前記横骨部材が接する面である骨部材接面と、
前記縦骨部材及び前記横骨部材が前記表面板材に接する面である表面板材接面と、に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両用引戸。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両用引戸において、
前記縦骨部材の間に備える第1の前記横骨部材に対し留められた第1の前記接続金具は、第2の前記横骨部材に留められた第2の前記接続金具と、向かい合う位置に設けられていること、
を特徴とする鉄道車両用引戸。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載の鉄道車両用引戸において、
前記構造体の外周面に前記溝部が設けられ、
吊り具が取り付けられていること、
を特徴とする鉄道車両用引戸。
【請求項5】
骨部材と、該骨部材に保持される表面板材を有する鉄道車両用引戸を用いた鉄道車両において、
前記骨部材は、縦骨部材と横骨部材とを含み、
前記縦骨部材には、雌ネジ部が備えられたナット部材が挿入され該ナット部材が内部を移動可能な溝部が、長手方向に沿って設けられ、
前記縦骨部材に挿入された前記ナット部材に対して、前記横骨部材に固定される接続金具にボルトを挿通させて締結することで、前記縦骨部材と前記横骨部材が固定されて構造体を成し、
該構造体に対して前記表面板材が固定された前記鉄道車両用引戸が、取り付けられたこと、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の引戸の構造における技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には複数の扉が備えられており、妻構体や客室仕切りに取り付けられる扉や側構体に取り付けられる扉は引戸構造である場合が多い。こうした引戸は、多くの場合、車両の形状に合わせて専用品として作られる。その構造は、ステンレス鋼材又はアルミニウム合金材を骨組みとして溶接し組み立てるケースが多い。
【0003】
しかしながら、引戸を溶接構造で作る場合には、溶接による歪みが発生して引戸にうねり、反り、ねじれなどが生じ、引戸の平面度が公差外となることがあるために、要求精度を満たすように修正しながら作らねばならず、高度な溶接技術・組み立て技術を要し製作時間もかかるため、より簡単な製造方法が求められている。
【0004】
特許文献1に、鉄道車両用ドアリーフ、締結構造、及び鉄道車両用ドアリーフの製造方法に関する技術が示されている。鉄道車両用ドアリーフは、縦枠を貫通して横枠に設けられた下穴にねじ立てしながらねじ込まれ、縦枠と横枠とを締結するタッピングねじを備える。横枠における下穴を形成する壁は、タッピングねじと接触する接触領域と、タッピングねじと接触しない非接触領域を有する。
【0005】
このような構造を採用することで、タッピングねじを締め付けるときの締め付けトルクを低減することができ、タッピングねじを用いて縦枠と横枠とを締結することができるため、溶接を用いずに鉄道車両用ドアリーフを容易に製造することができる。
【0006】
特許文献2に、鉄道車両用ドアリーフ及び鉄道車両用ドアリーフの製造方法に関する技術が示されている。鉄道車両用ドアリーフは、直交した状態で配置される縦枠と横枠と、縦枠と横枠とが嵌め合わせ方向にのみ相対移動して接続され嵌め合わせ方向以外には互いの移動が規制される接続部と、接続部を嵌め合わせ方向の両側から挟む2枚の表面板とを備える。このような構造を採用することで、ドアリーフの枠を構成する枠体同士をねじや溶接を用いずに接続することができ、ドアリーフを容易に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-178616号公報
【特許文献2】特開2021-123297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術を用いて鉄道車両用の引戸を製造する場合、何れも縦枠と横枠の製造に精度を要するために、コストが高くなる。特許文献1の技術では、縦枠と横枠を締結するためにタッピングねじを備える必要があるが、タッピングねじは横枠に下穴とねじ立て壁に対してねじ込まれるため、下穴とねじ立て壁の位置や、縦枠に設ける貫通穴の位置は高い精度を要する。
【0009】
また、特許文献2の技術では縦枠と横枠が嵌め合わせを用いた接続部を備える必要がある。したがって、特許文献1又は特許文献2の何れもこの接続部の形成に高い部品精度を要し、かつ組立時に嵌め合わせを要することから、組み立てにも時間を要する。つまり、引戸の製造にかかるコストは高くなる。したがって、もっと簡易な構成で寸法精度を高めることが可能な引戸が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、組み立て性を高めることで安価となる引戸の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両用引戸は、以下のような特徴を有する。
【0012】
(1)構造体として骨部材と、該骨部材に保持される表面板材を有する鉄道車両用引戸において、
前記骨部材は、押出形材よりなる縦骨部材と横骨部材とを含み、
前記縦骨部材には、雌ネジ部が設けられたナット部材が挿入され該ナット部材が内部を移動可能な溝部が、長手方向に沿って設けられ、
前記溝部は前記押出形材の少なくとも1辺の長手方向に連通して形成され、
前記縦骨部材に挿入された前記ナット部材に対して、前記横骨部材に固定される接続金具にボルトを挿通させて締結することで、前記縦骨部材と前記横骨部材が固定されて前記構造体を成し、
前記構造体に対して前記表面板材が固定されること、
を特徴とする。
【0013】
上記(1)に記載の態様によって、より容易な組み立てを実現する鉄道車両用引戸の提供が可能となる。これは、押出形材を用いた縦骨部材に設けられた溝部にナット部材を挿入して、横骨部材に固定された接続金具にボルトを挿通させて、そのボルトをナット部材に設けられた雌ネジ部に螺合することで、縦骨部材と横骨部材が固定されて構造体を成すため、構造体を仮組みした後でも、縦骨部材と横骨部材の細かな位置調整が可能となる。
【0014】
また、この構造体に対して表面板材を固定する構造であるため、ボルトを締めることで鉄道車両用引戸を完成させることが可能である。引戸に溶接を用いた構造を採用すると、溶接によるひずみによって引戸の平面度や戸先の建て付け、引戸の対角寸法差等の各種寸法精度の悪化が生じる問題がある。一方で、課題に示すようにタッピングねじを備えたり、嵌め合わせ構造の接続部を備えたりする場合には、引戸の製造コストが高くなってしまう。しかし、押出形材を用いてボルト締結の構造を採用することで、こういった溶接によるひずみなどに起因する問題が生じにくく、引戸の組み付けにおいて作業性を向上させることが出来て、結果的に組み付け工数を削減することに繋がる。
【0015】
また、縦骨部材と横骨部材に溝部を有する押出形材を用い、溝部にナット部材を挿入して移動させる構造を採用したことで、縦骨部材に横骨部材を固定する位置を任意に変更することが可能となり、微調整し易くなるので、引戸骨組組立時の作業効率を向上させて組み立て時間の短縮を図ることが可能となる。つまり、引戸の組み付け精度を高めることが可能となることで、車両内部での作業効率向上に貢献し、結果的にコスト削減に繋がる。
【0016】
(2)(1)に記載の鉄道車両用引戸において、
前記縦骨部材と前記横骨部材の前記溝部は、少なくとも、
前記縦骨部材に対して前記横骨部材が接する面である骨部材接面と、
前記縦骨部材及び前記横骨部材が前記表面板材に接する面である表面板材接面と、に設けられていること、
が好ましい。
【0017】
上記(2)に記載の態様によって、縦骨部材と横骨部材よりなる構造体に対して、表面板材の取り付けが容易となり、縦骨部材に対して横骨部材の位置を調整し易くなる。このため、例えば引戸に窓部を設ける場合には、別途縦骨部材や横骨部材を追加するなどの、異なる設計仕様にも対応し易く引戸の製造が容易になり、結果的に組み付け工数を削減することに繋がる。
【0018】
(3)(2)に記載の鉄道車両用引戸において、
前記縦骨部材の間に備える第1の前記横骨部材に対し留められた第1の前記接続金具は、第2の前記横骨部材に留められた第2の前記接続金具と、向かい合う位置に設けられていること、
が好ましい。
【0019】
上記(3)に記載の態様によって、第1の接続金具と第2の接続金具とが向かい合う位置に設けられていることで、向かい合う横骨部材と縦骨部材とで構成されるロの字状の構造体が形成され、引戸の強度を確保することが可能となる。
【0020】
(4)(2)又は(3)のいずれかに記載の鉄道車両用引戸において、
前記構造体の外周面に前記溝部が設けられ、
吊り具が取り付けられていること、
が好ましい。
【0021】
上記(4)に記載の態様によって、構造体の外周面に溝部が備えられることで、ドアストッパーや戸車などを固定する際に作業が容易となるため、組付け工数を削減することに繋がる。
【0022】
また、前記目的を達成するために、本発明の別態様による鉄道車両は、以下のような特徴を有する。
【0023】
(5)構造体として骨部材と、該骨部材に保持される表面板材を有する鉄道車両用引戸を用いた鉄道車両において、
前記骨部材は、縦骨部材と横骨部材とを含み、
前記縦骨部材には、雌ネジ部が備えられたナット部材が挿入され該ナット部材が内部を移動可能な溝部が、長手方向に沿って設けられ、
前記縦骨部材に挿入された前記ナット部材に対して、前記横骨部材に固定される接続金具にボルトを挿通させて締結することで、前記縦骨部材と前記横骨部材が固定されて前記構造体を成し、
前記構造体に対して前記表面板材が固定された前記鉄道車両用引戸が、取り付けられたこと、
を特徴とする。
【0024】
上記(5)に記載の態様によって、(1)に示すような鉄道車両用引戸を鉄道車両に採用することで、鉄道車両の製造にあたって作業が簡素化するために引戸の組み立て作業時間を短縮する効果を得られ、引戸の組み立て精度を向上できるために車両への組み付けを容易にする。結果、コスト削減に貢献することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】第1実施形態の、鉄道車両用引戸の正面図である。
【
図3】第1実施形態の、構造体の角部の拡大図である。
【
図4】第1実施形態の、構造体の中間部の拡大図である。
【
図6】第1実施形態の、吊車の取り付け部分の拡大図である。
【
図8】第2実施形態の、鉄道車両用引戸の正面図である。
【
図9】第2実施形態の、縦骨部材又は横骨部材の断面図である。
【
図10】第2実施形態の、縦骨部材又は横骨部材の別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、鉄道車両の斜視図を示す。鉄道車両10は、側構体12、屋根構体13、台枠14、妻構体16、図示しない台車などより成り、車両内部には客室仕切15などを備えている。このうち引戸構造を採用しているのは側出入口引戸100Aと客室仕切引戸100B及び図示しない妻引戸である。第1実施形態では客室仕切引戸100Bに本発明を適用した事例を説明するが、第1実施形態では特に区別無く引戸100と称して説明を行う。また、第1実施形態では、客室仕切りを有する先頭車両を例示して鉄道車両10としているが、客室仕切りを有さない車両であっても、中間車両であっても適用が可能である。
【0027】
図2に、鉄道車両用の引戸の正面図を示す。第1実施形態の鉄道車両10の引戸100は、縦骨部材110と横骨部材120とで構成される構造体150の表面に表面板材105を取り付ける構成となっている。縦骨部材110と横骨部材120は骨部材であり、それぞれ一辺が20mmの押出形材を用いている。押出形材はアルミニウム合金製で、一般的に流通するアルミフレームを用いており、後述する長手方向に溝部107を有している。なお、縦骨部材110と横骨部材120は同一断面の材料を用いているが、異なる断面形状の部材を用いることを妨げない。
【0028】
ここで説明の都合上、縦骨部材110のうち
図2の紙面左側を第1縦骨部材111、紙面右側を第2縦骨部材112としているが、特に断らずに縦骨部材110と表記した場合は、第1縦骨部材111又は第2縦骨部材112、或いはその両方のことを示す。また、横骨部材120のうち
図2の紙面上側から第1横骨部材121、第2横骨部材122、第3横骨部材123、第4横骨部材124としているが、特に断らずに横骨部材120と表記した場合は、いずれか1つか或いは全てのことを示す。
【0029】
第1縦骨部材111と第2縦骨部材112に対し、その間に配置される横骨部材120が、後述する角金具115を用いて固定されて、構造体150を成している。
図3に、構造体の角部の拡大図を示す。
図2のA部拡大図にあたる。
図4に、構造体の中間部の拡大図を示す。
図2のB部拡大図にあたる。
図5に、横骨部材の断面図を示す。
図4のC-C断面にあたる。
図3及び
図4に示すように、縦骨部材110に対して横骨部材120が角金具115を用いて固定されており、角金具115は
図5に示すようにナット106を溝部107に通して、ボルト104で締め込むことで固定を行う。
【0030】
縦骨部材110又は横骨部材120に形成される溝部107は、
図5に示される様にその断面が、底面部107Aの両端部から両外側に拡幅する斜面部107Bが連なり、斜面部107Bの両上端部からそれぞれ内側に突出する一対の突出部107Cを備えたアリ溝様形状となっており、縦骨部材110又は横骨部材120の長手方向に沿って形成されている。一対の突出部107Cは係止部として機能し、対向する先端間にボルト104が挿通可能な隙間を形成するとともに、ナット106の骨部材断面方向への移動を規制する。
【0031】
この溝部107に挿入されるナット106は、溝部107と同一形状である台形断面を有し、その中央には雌ネジ部が形成されている。したがって、溝部107の内部をナット106が縦骨部材110又は横骨部材120の長手方向に沿って自由に移動させることが可能である。このナット106を適切な位置に移動させて、ボルト104を締め込むことで、角金具115と縦骨部材110又は横骨部材120の突出部107Cを挟み込み、結果的に横骨部材120とが縦骨部材110が固定される。
【0032】
ここで、縦骨部材110と横骨部材120との接続方法についてもう少し詳しく説明する。
図3に示すように、第1横骨部材121は、その端面が第1縦骨部材111の骨部材接面110aに当接するように配置され、角金具115によって固定される。角金具115は
図3に示される様に、外面が直交して一端同士が接続される横板部115Aと縦板部115Bを有し、横板部115Aと縦板部115Bの内面を繋ぎ交差角度を維持する補強板115Cとを備える正面視略直角二等辺三角形状の接続金具である。そして、
図3に示される様に骨部材接面110aと内側面120aとに接する面には、ボルト104を貫通させるための挿通孔が1つずつ設けられている。
【0033】
したがって、
図3では横骨部材120の内側面120aと、角金具115の横板部115Aの外面とが平行に接するように配置され、縦骨部材110の骨部材接面110aと角金具115の縦板部115Bの外面とが平行に接するように配置される。そして、ボルト104でナット106の雌ネジ部に螺合させることで、縦骨部材110と横骨部材120とを連結させる。
【0034】
同様にして、
図4に示すように、第2横骨部材122の端面が、第2縦骨部材112の骨部材接面110aに対して当接するように配置される。この時、角金具115は、第2縦骨部材112の骨部材接面110aと第2横骨部材122の内側面120aに接するように保持される。
【0035】
このようにして、第1縦骨部材111と第2縦骨部材112を並べた間に、第1横骨部材121乃至第4横骨部材124を並べ、角金具115で結合した構造としたのが、構造体150ということになる。そして、その外周面100aには、吊車130や戸尻ゴム140が固定されている。また、構造体150の表面或いは裏面となる表面板材接面150aには
図2に示すように表面板材105が固定される。表面板材105は、構造体150の
図2正面側に挿入されているナット106を用いて固定しても良いし、構造体150の表面に両面テープなどを用いて固定をしても良い。
【0036】
図6に、吊車の取り付け部分の拡大図を示す。
図2のD部拡大図である。
図7に、吊車部分の拡大図を示す。
図6の側面から、客室仕切15に取り付けられた様子を示している。引戸100は、吊り引戸構造を採用しているため、構造体150の上面に2つの吊車130を取り付けてある。
図6に示すように、ローラ131が
図7に示すレール20の上を移動する構造になっており、この吊車130によって引戸100は支持される。レール20は、客室仕切15に固定されて、鉄道車両10の幅方向(つまり、枕木方向)に長い形状となっていて、このレール20にガイドされて引戸100は車両の幅方向に移動する。つまりレール20にガイドされて引戸100は開閉される。
【0037】
吊車130は構造体150の上面にボルト135を用いて取り付けられている。第1横骨部材121には上部にも溝部107が設けられており、その中にナット106が挿入されているので、このナット106にボルト135が締結されることで、構造体150に対して吊車130が固定される。そして、吊車130はレール20をローラ131と下部ローラ132とで挟むように保持することで、引戸100を移動可能にしている。
【0038】
また、
図2に示すように、構造体150の側面には戸尻ゴム140が取り付けられている。この戸尻ゴム140も、第2縦骨部材112の側面に設けられた溝部107にナット106が挿入されており、このナット106と図示しないボルトが締結されることで、構造体150に対して戸尻ゴム140が固定される。この他、図示しないが、必要に応じて引戸100の把手などを取り付けることも可能である。
【0039】
本実施形態の鉄道車両用の引戸100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0040】
まず、組付けが容易な構造の引戸100の提供が可能となることが効果として挙げられる。これは、構造体として骨部材と、縦骨部材110及び横骨部材120に保持される表面板材105を有する鉄道車両用の引戸100において、骨部材は、押出形材よりなる縦骨部材110と横骨部材120とを含んでいる。縦骨部材110には、雌ネジ部が備えられたナット部材(ナット106)が挿入されナット106が内部を移動可能な溝部107が、長手方向に沿って設けられ、溝部107は押出形材の少なくとも1辺の長手方向に連通して形成されている。そして、縦骨部材110に挿入されたナット106に対して、横骨部材120に固定される接続金具(角金具115)にボルト104を挿通させて締結することで、縦骨部材110と横骨部材120が固定されて構造体150を成し、構造体150に対して表面板材105が固定されるためである。
【0041】
すなわち、押出形材よりなる縦骨部材110と横骨部材120とが角金具115を用いてボルト104とナット106で締結された構造体150と、この構造体150に表面板材105などを取り付けることで引戸100を構成する。前述した通り、溶接構造を採用した引戸は、溶接による歪みが発生する為に、その歪み取りに技術と時間を要する。また、鉄道車両内部での調整も難しいことから、引戸を外して外部で調整してまた組み付けるといった作業を必要とする。
【0042】
しかし、第1実施形態の引戸100であれば、縦骨部材110と横骨部材120に押出形材を用いることで形状精度を高めることが可能となる上、溶接を用いずに角金具115によって締結する構造を採用している為に、表面板材105を組み付けた際に表面板材105の平面度を高めることができる。また、引戸100の対角寸法等の向上を図ることができる。この様な構成を引戸100に採用することで、引戸100の組み立て作業の簡易化を図ることができ、かつ寸法精度を高めることができ、引用文献1や引用文献2に示される技術を使う場合よりも簡易に組み付けが可能となるので、結果的に引戸100の組み立て時間を短縮することが可能となる。また、鉄道車両10への組み付けもスムーズに行うことができるために、コスト削減に貢献できる。
【0043】
また、構造体150の外周面100aには吊車130や戸尻ゴム140などが固定されているが、外周面100aにも溝部107が形成されており、吊車130や戸尻ゴム140はナット106を用いて固定されているために、鉄道車両10の車内に引戸100を持ち込んでからの微調整が容易である。したがって、鉄道車両10の側構体12や客室仕切15、或いは妻構体16に引戸100を取り付けた後に、吊車130や戸尻ゴム140の付属部品の位置の微調整を、現物合わせで行うことが可能である。
【0044】
また、縦骨部材110と横骨部材120の溝部107は、少なくとも、縦骨部材110に対して横骨部材120が接する面である骨部材接面110aと、縦骨部材110及び横骨部材120が表面板材105に接する面である表面板材接面150aと、に設けられているので、ボルト104を弛めて横骨部材120を任意の高さに調整することが容易となる。また、表面板材接面150aに表面板材105をビス留め又は接着するなどの手法で取り付けることが可能である。
【0045】
また、縦骨部材110の間に備える第1の横骨部材(第1横骨部材121)に対し留められた第1の角金具115は、第2の横骨部材(第2横骨部材122)に留められた第2の角金具115と、向かい合う位置に設けられているので、第1縦骨部材111と第2縦骨部材112、そして第1横骨部材121と第2横骨部材122で囲まれる四角い空間の四隅に角金具115が配置されることとなる。つまり、第1縦骨部材111、第2縦骨部材112、第1横骨部材121、及び第2横骨部材122が角金具115に連結されることで構造体となって強度を受け持つ部分となる。また、この領域の表面板材接面150aに表面板材105が貼られることで更に強度を増すことができる。
【0046】
引戸100は、客室仕切15、側構体12、及び妻構体16に設けられる何れの場合にも、乗客が体重を預けることが想定されるために所定の強度を必要とするが、こうした構造を採用することでその強度を確保することが可能となる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2実施形態は第1実施形態と共通する部分については同じ符号を付して説明している。また、第1実施形態と区別するために引戸100Cと称して説明するが、第1実施形態同様に側出入口引戸100Aと客室仕切引戸100B及び図示しない妻引戸の何れにも適用が可能である。
【0048】
図8に、第2実施形態の鉄道車両用引戸の正面図を示す。引戸100Cには、窓部材160が設けられており、窓部材160の左右には第3縦骨部材113及び第4縦骨部材114が配置されている。窓部材160は左右に配置される第3縦骨部材113及び第4縦骨部材114に保持されている。
【0049】
第2実施形態の引戸100Cは、第1実施形態の引戸100と窓部材160を備える点で異なり、窓部材160の左右に第3縦骨部材113及び第4縦骨部材114が配置される点でも異なる。このような形状の違いに関しても、構造体150に縦骨部材110と横骨部材120を用いて構成しているため、容易に対応が可能である。また、窓部材160の取り付けに関しても、第3縦骨部材113及び第4縦骨部材114を足すことで取り付けができ、その位置調整も容易に行える。このため、引戸100Cの組み立て工程における調整作業がやり易くなるというメリットがある。
【0050】
図9に、縦骨部材又は横骨部材の断面図を示す。
図10に、縦骨部材又は横骨部材の別の断面図を示す。構造体150に用いる縦骨部材110及び横骨部材120は、第1実施形態の
図5で示した様な、4辺に溝部107を設けた押出形材を用いずとも、
図9や
図10に示すような溝部107が2つないし3つ設けられるような押出形材を用いても良い。溝部107は外観のためや水やゴミが溜まらないように塞ぐことが好ましいケースもあるが、溝部107を使わないと分かっている面に設ける必要はないため、
図9や
図10の様に溝部107を有していない面を備える断面を持つ縦骨部材110及び横骨部材120を適宜選択することもできる。
【0051】
以上、本発明に係る鉄道車両10に用いる引戸100及び引戸100Cに関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、類似した押出形材を用いているが、これ以外の断面形状の押出形材を用いることを妨げない。
【符号の説明】
【0052】
100、100C 引戸
110 縦骨部材
111 第1縦骨部材
112 第2縦骨部材
113 第3縦骨部材
114 第4縦骨部材
120 横骨部材
121 第1横骨部材
122 第2横骨部材
150 構造体