(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022225
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ラッチ解除装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/12 20140101AFI20240208BHJP
E05B 81/90 20140101ALI20240208BHJP
E05B 41/00 20060101ALI20240208BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E05B85/12 Z
E05B81/90
E05B41/00 H
B60J5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125654
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玲貴
(72)【発明者】
【氏名】高岡 真之輔
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250KK02
2E250LL01
2E250PP13
2E250SS10
2E250VV01
(57)【要約】
【課題】ラッチ解除装置の操作レバーの視認性を向上する。
【解決手段】ラッチ解除装置20は、非常操作位置へ回動によってラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換えるための操作レバー30と、通常操作位置への操作レバー30の回動によってラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換えるためのスイッチユニット40とを備える。スイッチユニット40は、通常操作位置への操作レバー30の回動によって進退する一方、非常操作位置への操作レバー30の回動によってレバー本体30aが離間する可動部43と、後退位置への可動部43の移動によってオン状態とオフ状態が切り換わるスイッチ45とを有する。スイッチユニット40は光源46を有し、レバー本体30aは光源46の光を透光可能な光学的表示部32を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアから露出したレバー本体を有し、中立位置と第1操作位置との間の回動と、前記中立位置と前記第1操作位置とは反対側の第2操作位置との間の回動とが可能で、前記第2操作位置へ回動によってラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換えるための操作レバーと、
前記第1操作位置への前記操作レバーの回動によって前記レバー本体に押圧されて進出位置から後退位置に移動する一方、前記第2操作位置への前記操作レバーの回動によって前記レバー本体が離間する可動部と、前記後退位置への前記可動部の移動によってオン状態とオフ状態が切り換わり、前記ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換えるためのスイッチとを有するスイッチユニットと
を備え、
前記スイッチユニットは光源を有し、
前記レバー本体は前記光源の光を透光可能な光学的表示部を有する、
ラッチ解除装置。
【請求項2】
前記スイッチユニットは、前記光源の光を前記可動部の外側に導く導光部材を有し、
前記レバー本体には、前記中立位置から前記第1操作位置に向かう方向に貫通した貫通孔が設けられ、
前記導光部材には、前記可動部から突出し、前記操作レバーが前記中立位置にあるときに先端部分が前記貫通孔内に位置する突出部が設けられ、
前記光学的表示部は、前記突出部の先端面によって構成されている、
請求項1に記載のラッチ解除装置。
【請求項3】
前記スイッチユニットは、前記光源の光を前記可動部の外側に導く導光部材を有し、
前記光学的表示部は、前記導光部材の対向位置に設けられ、
前記レバー本体には、前記光学的表示部以外の部分を覆うように、遮光性を有する被覆層が設けられている、
請求項1に記載のラッチ解除装置。
【請求項4】
前記光学的表示部の形状は文字状又は図柄状である、請求項3に記載のラッチ解除装置。
【請求項5】
前記スイッチユニットは、前記導光部材を前記レバー本体に向けて付勢する付勢部材を有する、請求項2から4のいずれか1項に記載のラッチ解除装置。
【請求項6】
前記導光部材は、前記可動部と一体に移動可能に設けられ、
前記付勢部材は、前記可動部を介して前記導光部材を付勢している、
請求項5に記載のラッチ解除装置。
【請求項7】
前記操作レバーは前記レバー本体の一端側に回転軸を有し、
前記光学的表示部は前記レバー本体の前記回転軸とは反対の他端側に設けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のラッチ解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチの操作により、アクチュエータによってラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に切り換えるようにした電動式のドアラッチ装置が知られている。このドアラッチ装置では、例えば車両のバッテリの容量が不足しているとき、電気的にラッチ機構をラッチ解除に切り換えられない。
【0003】
特許文献1には、ラッチ状態からラッチ解除へのラッチ機構の切り換えを、通常時には電気的に行い、非常時には機械的に行うことを可能としたラッチ解除装置が開示されている。このラッチ解除装置は、ドアに対して直交する方向に延びる軸によって回動可能な操作レバー、操作レバーの操作をラッチ機構に電気的に伝えるスイッチ、及び操作レバーの操作をラッチ機構に機械的に伝えるロッドを備える。
【0004】
操作レバーを中立位置から第1操作位置に回動させると、スイッチがオフ状態からオン状態に切り換わることで、アクチュエータが駆動する。操作レバーを中立位置から第1操作位置とは反対側の第2操作位置に回動させると、ロッドを介してラッチ機構に操作力が伝達されることで、ラッチ機構がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のラッチ解除装置では、周囲が暗いときに操作レバーの位置確認が困難である。そのため、操作レバーの視認性向上について、特許文献1のラッチ解除装置には改良の余地がある。
【0007】
本発明は、ラッチ解除装置の操作レバーの視認性向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ドアから露出したレバー本体を有し、中立位置と第1操作位置との間の回動と、前記中立位置と前記第1操作位置とは反対側の第2操作位置との間の回動とが可能で、前記第2操作位置へ回動によってラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換えるための操作レバーと、前記第1操作位置への前記操作レバーの回動によって前記レバー本体に押圧されて進出位置から後退位置に移動する一方、前記第2操作位置への前記操作レバーの回動によって前記レバー本体が離間する可動部と、前記後退位置への前記可動部の移動によってオン状態とオフ状態が切り換わり、前記ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換えるためのスイッチとを有するスイッチユニットとを備え、前記スイッチユニットは光源を有し、前記レバー本体は前記光源の光を透光可能な光学的表示部を有する、ラッチ解除装置を提供する。
【0009】
ラッチ機構に電気的に接続されたスイッチユニットが光源を備え、ラッチ機構に機械的に接続された操作レバーのレバー本体が光源の光を透光可能な光学的表示部を備える。よって、周囲が暗い状況であっても操作レバーの位置を容易に確認できるため、操作レバーの視認性と操作性を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ラッチ解除装置の操作レバーの視認性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態のラッチ解除装置をドアに取り付けた状態の平面図。
【
図2】車内側から見たラッチ解除装置とドアラッチ装置の斜視図。
【
図3】車外側から見たラッチ解除装置とドアラッチ装置の斜視図。
【
図4】車内側から見たラッチ解除装置の分解斜視図。
【
図5】車外側から見たラッチ解除装置の分解斜視図。
【
図7】
図2のVII-VII線で切断した非操作状態のラッチ解除装置の断面図。
【
図8】通常操作状態のラッチ解除装置の
図7と同様の断面図。
【
図9】非常操作状態のラッチ解除装置の
図7と同様の断面図。
【
図12】変形例のラッチ解除装置の
図6と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1から
図3を参照すると、本発明の第1実施形態に係るラッチ解除装置20は、車体1に開閉可能に取り付けられたドア3内に配置され、同じドア3内に配置されたドアラッチ装置10のラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に切り換える。
【0014】
添付図面におけるX方向は車長方向であり、矢印が示す向きが前側で、矢印とは逆向きが後側である。Y方向は車幅方向であり、矢印が示す向きが車内側で、矢印とは逆向きが車外側である。Z方向は車高方向であり、矢印が示す向きが上側で、矢印とは逆向きが下側である。以下では、ドア3を閉じた状態を基準として説明する。
【0015】
図1を参照すると、ドア3は、アウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6を備える。アウタパネル4とインナパネル5は、車幅方向に対向し、それぞれXZ平面に沿って延びている。エンドパネル6は、アウタパネル4及びインナパネル5それぞれの車長方向の後端部に連なり、YZ平面に沿って延びている。ドア3は、車高方向に延びるヒンジ軸によって回動可能な汎用ドアである。但し、ドア3は、車長方向に延びるヒンジ軸によって回動可能なガルウイングドア、及び車体1に沿って車長方向に移動するスライドドア等の方式であってもよい。
【0016】
まず、
図1から
図3を参照して、ラッチ解除装置20が接続されるドアラッチ装置10の概要を説明する。
【0017】
ドアラッチ装置10は、一部がエンドパネル6から露出するようにドア3内に配置され、車体1が備えるストライカ2を保持することで、車体1に対してドア3を閉状態に保持する。ドアラッチ装置10は、通常時にアクチュエータ17の駆動力でストライカ2の保持を解除する電動式である。バッテリ容量が不足した非常時には、ラッチ解除装置20が備えるエマージェンシ用の操作レバー30の操作によって、ストライカ2の保持が手動で解除される。ドアラッチ装置10は、車高方向から見てL字形状のハウジング11内に、ラッチ機構12とリリース機構16を備える。
【0018】
ラッチ機構12は、フォーク13、クロー14、及びオープンレバー15を備える。リリース機構16によってオープンレバー15が矢印Aで示す向きに回動されると、クロー14が
図2に示す係止位置から係止解除位置へ同じ向きA(
図2では時計回り)に一体に回動する。これにより、フォーク13が
図2に示すラッチ位置からオープン位置へ矢印Bで示す向き(
図2では時計回り)に回動し、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。その結果、
図1に示すストライカ2がフォーク13から離脱可能になり、車体1に対してドア3を開放できる。開状態のドア3が閉じられると、
図1に示すストライカ2の進入によってフォーク13がオープン位置から
図2に示すラッチ位置に向きBとは逆向き(
図2では反時計回り)に回動する。これにより、ストライカ2を保持したフォーク13をクロー14が係止することで、ドア3を閉状態に保持する。
【0019】
リリース機構16は、アクチュエータ17、作動部材18、及び操作レバー19を備える。アクチュエータ17は、ECU(Electronic Control Unit)7によって制御され、作動部材18を矢印Cで示す向き(
図2では反時計回り)に回動させる。このアクチュエータ17による作動部材18の作動時に操作レバー19は回動しない。操作レバー19は、機械的に接続されたラッチ解除装置20の手動操作によって作動され、作動部材18をアクチュエータ17による作動と同じ向きCに回動させる。向きCへの作動部材18の回動によって、オープンレバー15とクロー14が向きAに回動し、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。
【0020】
次に、ラッチ解除装置20について具体的に説明する。
【0021】
図1を参照すると、ラッチ解除装置20は、ドアラッチ装置10の車長方向前側に位置するように、ドア3のインナパネル5に取り付けられている。
図2から
図5を参照すると、ラッチ解除装置20は、ベース部材25、操作レバー30、及びスイッチユニット40を備える。操作レバー30がケーブル(伝達部材)8を介して操作レバー19に機械的に接続され、スイッチユニット40がECU7に電気的に接続されている。
【0022】
図4及び
図5を参照すると、ベース部材25は、車長方向の寸法が車高方向の寸法よりも長いベース板25aを備える。ベース板25aには、操作レバー30を配置する凹部26、操作レバー30を軸支する軸受部27、及びスイッチユニット40を取り付ける取付部28が設けられている。
【0023】
凹部26は、ベース板25aから車幅方向外側に窪んでおり、車長方向に延びる楕円筒状の周壁26aを備える。周壁26aの車幅方向外端のうち、車長方向前側は底壁26bによって塞がれ、車長方向後側が開放されている。この開放された部分に軸受部27が設けられ、底壁26bに取付部28が設けられている。
【0024】
軸受部27は、上壁27aと下壁27bを備え、凹部26内に空間的に連通している。上壁27aと下壁27bは、周壁26aにそれぞれ連なり、車幅方向外側に突出して車高方向に対向している。上壁27aと下壁27bには、操作レバー30の回転軸33を取り付ける一対の取付孔27cが設けられている。下壁27bには更に、後に詳述するキックバネ(付勢部材)34の第2アーム部34cを係止する係止部27dが設けられている。上壁27aと下壁27bの車長方向後側には、ケーブル8が備えるチューブ8aのアウタエンド8bを保持する保持部27eが設けられている。
【0025】
取付部28は、四角筒状で、底壁26bから車幅方向外側に突出している。取付部28の車幅方向の内端、つまり底壁26bの取付部28と対応する部分には連通口26cが設けられ、この連通口26cを通して取付部28内と凹部26内が空間的に連通している。取付部28の対向する上部と下部には、スイッチユニット40をネジ止めするボス28aがそれぞれ設けられている。
【0026】
図2、
図4、及び
図5を参照すると、操作レバー30は、ベース部材25の凹部26内に車幅方向内側から配置されている。操作レバー30は、レバー本体30aと軸着部31を備え、車高方向に延びる回転軸33まわりに回動可能である。また、レバー本体30aには、後に詳述するスイッチユニット40が備えるLED(光源)46(
図6参照)の光を透光可能な光学的表示部32が設けられている。ベース部材25を
図1に示すインナパネル5に車幅方向内側から配置することで、ベース板25a、凹部26、レバー本体30a、及び光学的表示部32が車内に露出している。
【0027】
レバー本体30aは、遮光性を有する不透明な樹脂からなる板体であり、外周部に車幅方向外側に突出する補強リブ30bを備える。レバー本体30aの車長方向の長さは、凹部26の車長方向の長さよりも短く、レバー本体30aの車長方向前端と凹部26の車長方向前端との間には、指を挿入可能な操作空間35が設けられている。レバー本体30aの車長方向前側の部分には、光学的表示部32を露出させる長円形状の貫通孔30cが車幅方向に貫通して設けられている。貫通孔30cの下側には、車幅方向外側に突出して車高方向に延びるリブ30dが設けられている。
【0028】
図5を参照すると、軸着部31は、ベース部材25の軸受部27と対応するように、レバー本体30aの車長方向後側の部分、つまり貫通孔30cとは車長方向の反対側に設けられている。軸着部31は、上壁31a、下壁31b、及び側壁31cを備える。上壁31aと下壁31bは、補強リブ30bにそれぞれ連なり、車幅方向外側に突出して車高方向に対向している。側壁31cは、上壁31a及び下壁31bそれぞれの車長方向前側とレバー本体30aとに連なっている。上壁31aと下壁31bには、軸受部27の取付孔27cと対応する軸孔31dがそれぞれ設けられている。
【0029】
上壁31aには更に、ケーブル8が備えるワイヤ8cに設けられたインナエンド8dを保持する保持部31eが設けられている。保持部31eは、車高方向から見て車幅方向外側が開放されたC字形状の上枠31fと、上枠31fの下側に間隔をあけて設けられた円環状の下枠31gとを備える。上枠31fと下枠31gの間の隙間は、ワイヤ8cを挿通する挿通溝を構成する。
【0030】
図2及び
図4を参照すると、本実施形態の光学的表示部32は、スイッチユニット40が備えるレンズ(導光部材)47の先端面からなり、レバー本体30aの貫通孔30c内に配置されている。なお、レンズ47については後に詳述する。
【0031】
図3及び
図5を参照すると、操作レバー30は、軸着部31を軸受部27内に配置した状態で、上壁27aの上側から回転軸33を取付孔27cに差し込み、軸着部31の一対の軸孔31dを貫通させた回転軸33の先端を下壁27bの取付孔27cに差し込むことで、ベース部材25に回動可能に支持される。
【0032】
図6及び
図7を参照すると、操作レバー30は、スイッチユニット40が備えるコイルスプリング(付勢部材)44と、回転軸33に配置されたキックバネ34とによって、
図7に示す中立位置に保持されている。
【0033】
コイルスプリング44は、後に詳述するケーシング41内に配置され、可動カバー(可動部)43を介して操作レバー30を、
図8に示す通常操作位置(第1操作位置)から
図7に示す中立位置に向けて付勢する。なお、コイルスプリング44の具体的な配置については、後に詳述する。
【0034】
キックバネ34は、巻回部34a、第1アーム34b、及び第2アーム34cを備え、巻回部34aによって回転軸33を取り囲むように軸着部31内に配置されている。第1アーム34bはレバー本体30aに当接され、第2アーム34cは軸受部27の係止部27dに係止されている。これにより、キックバネ34は、操作レバー30を、
図9に示す非常操作位置(第2操作位置)から
図7に示す中立位置に向けて付勢する。キックバネ34の付勢力はコイルスプリング44の付勢力よりも弱い。
【0035】
操作レバー30は、ユーザによるプッシュ操作(通常操作)によって、
図7に示す中立位置から
図8に示す通常操作位置に車幅方向外側に回動する。これにより、操作レバー30がスイッチユニット40を作動させ、スイッチユニット40からECU7(
図3参照)への信号の出力状態が切り換わることで、ECU7がラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換える。ユーザが操作レバー30から手を離すと、操作レバー30は、コイルスプリング44の付勢力によって
図8に示す通常操作位置から
図7に示す中立位置に復帰する。
【0036】
操作レバー30は、ユーザによるプル操作(非常操作)によって、
図7に示す中立位置から
図9に示す非常操作位置に車幅方向内側に回動する。これにより、
図3に示すように、保持部31eにインナエンド8dが保持されたワイヤ8cを介して、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換わる。ユーザが操作レバー30から手を離すと、操作レバー30は、キックバネ34の付勢力によって
図9に示す非常操作位置から
図7に示す中立位置に復帰する。
【0037】
図3から
図5を参照すると、スイッチユニット40は、ベース部材25の取付部28に車幅方向外側から取り付けられている。スイッチユニット40は、ケーシング41とスイッチ45を備え、
図8に示す通常操作位置への操作レバー30の操作を検出し、その検出結果をECU7に出力する。スイッチユニット40は更に、LED46とレンズ47を備え、LED46が発する光によって操作レバー30の視認性を向上する。
【0038】
ケーシング41は、ケース本体42と、ケース本体42に対して車幅方向に移動可能な可動カバー43とを備える。可動カバー43は、操作レバー30のプッシュ操作によって
図7に示す進出位置と
図8に示す後退位置との間を車幅方向に移動可能であり、コイルスプリング44によって進出位置に付勢されている。
【0039】
ケース本体42は、車幅方向外端が閉鎖され、車幅方向内端が開放された四角筒状である。外端壁42aには、ボス28aと対応する貫通孔が形成されたネジ止め片42bが設けられている。ケース本体42の対向する上下の壁には、車高方向に貫通して車幅方向に延びる係止溝42cがそれぞれ設けられている。係止溝42cの車幅方向の全長は、
図7に示す進出位置から
図8に示す後退位置までの可動カバー43の進退ストロークよりも長い。
【0040】
可動カバー43は、ケース本体42に嵌め込み可能な大きさで、車幅方向内端が閉鎖され、車幅方向外端が開放された四角筒状である。内端壁43aには、操作レバー30のリブ30dが、
図7に示す中立位置及び
図8に示す通常操作位置では線接触し、
図9に示す非常操作位置では離間する。可動カバー43には、ケース本体42の係止溝42cに対応する係止爪43bが設けられている。可動カバー43の内部には、スイッチ45を操作する棒状の操作部43cが設けられている。
【0041】
図6を参照すると、コイルスプリング44は、一端がケース本体42の外端壁42aに当接し、他端が可動カバー43の内端壁43aに当接するように、ケーシング41内に配置されている。コイルスプリング44による可動カバー43の移動は、係止溝42cの車幅方向内側の縁への係止爪43bの係止によって停止する。コイルスプリング44の付勢力がキックバネ34の付勢力よりも強いため、キックバネ34の付勢力によって可動カバー43が
図7に示す進出位置から
図8に示す後退位置側に移動することはない。つまり、キックバネ34の付勢力によって、操作レバー30が
図7に示す中立位置から
図8に示す通常操作位置に移動することはない。
【0042】
スイッチ45は、車幅方向に移動可能な操作受部45aを備えるタクトスイッチからなり、回路基板48に配置され、
図3に示すECU7に電気的に接続されている。
図8に示す後退位置への可動カバー43の移動によって、操作受部45aが操作部43cによって移動され、スイッチ45は信号を出力しないオフ状態から信号を出力するオン状態に切り換わる。一方、
図8に示す後退位置から
図7に示す進出位置に可動カバー43が移動すると、操作部43cによる操作受部45aの押圧が解除され、スイッチ45はオン状態からオフ状態に切り換わる。但し、スイッチ45は、
図8に示す後退位置への可動カバー43の移動によって、オン状態からオフ状態に切り換わってもよい。
【0043】
LED46は、異なる色の光を発することが可能な2色LEDからなり、スイッチ45と一緒に回路基板48に配置されている。LED46の車長方向と車高方向の位置は、操作レバー30の貫通孔30cの車長方向と車高方向の位置と対応している。車両の所定範囲内に電子キーを携帯したユーザが存在するとき、LED46は、
図3に示すECU7によって所定の色で発光される。但し、LED46は、異なる2色以上の光を発することが可能な構成であればよい。
【0044】
例えば、
図2及び
図3に示すECU7は、車両の走行時にはロック処理を実行し、車両の停止時にはアンロック処理を実行する。ロック処理では、LED46を赤色に発光させ、スイッチ45が操作されてもアクチュエータ17を作動させることなく、ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に切り換えない。アンロック処理では、LED46を緑色に発光させ、スイッチ45が操作されるとアクチュエータ17を作動させて、ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に切り換える。バッテリの容量不足時であってもLED46は点灯される。
【0045】
引き続いて
図6を参照すると、レンズ47は、レンズ本体47aと突出部47bを備え、LED46の車幅方向内側に配置され、LED46の光を可動カバー43の外側に導く。レンズ47は、可動カバー43に取り付けられ、可動カバー43の移動に追従して一体に移動可能である。つまり、レンズ47は、可動カバー43を介してコイルスプリング44によってレバー本体30aに向けて付勢されている。
【0046】
レンズ本体47aは板状で、ケーシング41内に配置され、LED46に対して車幅方向に間隔をあけて位置している。この間隔は、可動カバー43が
図8に示す後退位置に移動したときに、LED46に当接しない範囲で可能な限り小さい寸法に設定されている。
【0047】
突出部47bは、車長方向と車高方向の寸法がレンズ本体47aの車長方向と車高方向の寸法よりも小さい板状で、内端壁43aを貫通して可動カバー43から車幅方向内側に突出している。操作レバー30が
図7に示す中立位置にあるとき、突出部47bの先端部分は、レバー本体30aを車幅方向に貫通した貫通孔30c内に位置する。この突出部47bの先端面が光学的表示部32を構成する。突出部47bの車長方向の寸法は、操作レバー30の回動に伴う貫通孔30c内での突出部47bの変位を許容できる範囲で、貫通孔30cの車長方向の寸法よりも短い。
【0048】
次に、ラッチ解除装置20の動作について具体的に説明する。
【0049】
図7に示すように、操作レバー30が操作されることなく中立位置にあるとき、スイッチ45はオフ状態になっており、
図3に示すケーブル8のワイヤ8cは初期位置にあるため、ラッチ機構12は作動されることなくラッチ状態に維持されている。LED46は、
図3に示すECU7によって、車両の走行時には赤色に発光され、車両の停止時には緑色に発光される。よって、ユーザは、操作レバー30の位置、及びドアラッチ装置10を電気的に解錠可能か否かの状態を、容易に確認できる。
【0050】
図8に示すように、操作レバー30が通常操作位置にプッシュ操作されると、レバー本体30aによって可動カバー43が後退位置に移動され、操作部43cによってスイッチ45がオフ状態からオン状態に切り換わる。オン信号が入力されたECU7(
図3参照)は、車両が停止している場合、アクチュエータ17を作動させてラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換える。
【0051】
一方で、
図8に示すように、操作レバー30がプッシュ操作されると、
図3に矢印D1で示す向きにケーブル8のワイヤ8cがチューブ8aに押し込まれる。これにより、
図3に示すドアラッチ装置10の操作レバー19は、クロー14を係止位置から係止解除位置に回動させる向きCとは逆向きに回動する。その結果、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換わることはないし、アクチュエータ17による作動部材18の作動を妨げることもない。
【0052】
ユーザが操作レバー30から手を離すと、コイルスプリング44(
図6参照)の付勢力によって、可動カバー43が
図7に示す進出位置に移動し、操作レバー30も中立位置に回動する。この操作レバー30の通常操作時、レンズ47は可動カバー43の移動に追従して進退するため、貫通孔30c内の光学的表示部32の表示位置は維持される。
【0053】
図9に示すように、操作レバー30が非常操作位置にプル操作されると、
図3に矢印D2で示す向きにケーブル8のワイヤ8cがチューブ8aから引き出される。これにより、
図3に示すドアラッチ装置10の操作レバー19は、作動部材18を介してクロー14を係止位置から係止解除位置に回動させる向きCに回動するため、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換わる。なお、操作レバー30のプル操作によるラッチ機構12の機械的な切り換えは、車両の運転状態及びバッテリ容量に関わらず可能である。
【0054】
一方で、
図9に示すように、操作レバー30がプル操作されると、レバー本体30aが可動カバー43から離間し、可動カバー43は進出位置を維持するため、スイッチ45もオフ状態を維持する。オン信号が入力されないECU7(
図3参照)は、アクチュエータ17を作動させることはないため、ドアラッチ装置10の操作レバー19によるラッチ機構12の切り換えを作動部材18が妨げることはない。
【0055】
ユーザが操作レバー30から手を離すと、操作レバー30は、キックバネ34の付勢力によって回動し、コイルスプリング44(
図6参照)によって付勢された可動カバー43に当接することで、
図7に示す中立位置で止まる。この操作レバー30の非常操作によって、レンズ47の突出部47bは、貫通孔30cから露出した後(
図9参照)、再び光学的表示部32以外が覆われる(
図7参照)。
【0056】
このように構成したラッチ解除装置20は、以下の特徴を有する。
【0057】
ラッチ機構12に電気的に接続されたスイッチユニット40がLED46を備え、ラッチ機構12に機械的に接続された操作レバー30のレバー本体30aがLED46の光を透光可能な光学的表示部32を備える。よって、周囲が暗い状態であっても、操作レバー30の位置を容易に確認できるため、操作レバー30の視認性と操作性を向上できる。
【0058】
しかも、ラッチ解除装置20をドア3の車内側に配置し、ラッチ機構12を備えるドアラッチ装置10がロック状態であるときとアンロック状態であるときで、LED46の発光色が変更される。よって、ドアラッチ装置10の状態をユーザが容易に判別できるため、利便性を向上できる。
【0059】
回動可能な操作レバー30ではなく、ドア3に対して移動不可能なスイッチユニット40にLED46が配置されているため、ラッチ解除装置20の全体構造を簡素化できるとともに、電気的に接続するための配線も簡素化できる。
図9に示す非常操作位置への操作レバー30の操作によってラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切り換えるとき、レバー本体30aが可動カバー43から離間する。よって、スイッチユニット40が抵抗になることはないため、操作レバー30の操作性を向上できる。
【0060】
光学的表示部32は、操作レバー30が
図7に示す中立位置にあるときに、レバー本体30aの貫通孔30c内に位置するレンズ47の突出部47bの先端面によって構成されている。つまり、LED46の光を導くレンズ47の外側には光を遮る部材はない。よって、光学的表示部32の光量を確保できるため、操作レバー30の視認性を確実に向上できる。
【0061】
スイッチユニット40は、レンズ47をレバー本体30aに向けて付勢するコイルスプリング44を有する。そのため、
図7に示す中立位置から
図8に示す通常操作位置に向けた操作レバー30の回動時、レンズ47が操作レバー30の回動に追従して移動できる。よって、レンズ47と光学的表示部32の間の距離を一定に維持できるため、光学的表示部32の表示状態を維持できる。
【0062】
コイルスプリング44は、可動カバー43を介してレンズ47を付勢している。これにより、操作レバー30は、スイッチユニット40が備える可動カバー43を介して、
図8に示す通常操作位置から
図7に示す中立位置に復帰可能である。つまり、操作レバー30には、通常操作位置から中立位置に復帰させる専用の付勢部材が不要である。よって、ラッチ解除装置20の全体構造を簡素化できる。
【0063】
光学的表示部32がレバー本体30aの回転軸33とは反対側に設けられている。これにより、ユーザは、レバー本体30aの光学的表示部32近傍を操作することによって、回転軸33の近傍を操作するときと比較して、スイッチ45又はケーブル8を小さな操作力で容易に作動できる。よって、操作レバー30の操作性を更に向上できる。
【0064】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は第1実施形態と同様である。以下で言及する図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0065】
(第2実施形態)
図10及び
図11を参照すると、第2実施形態のラッチ解除装置20は、光学的表示部32の構成を変更した点で、第1実施形態のラッチ解除装置20と相違している。具体的には、レバー本体30aには、車幅方向内側の面に塗装等による遮光性を有する被覆層50が設けられている。
【0066】
光学的表示部32は、例えばレーザーによって被覆層50の一部を剥がすことで形成されている。但し、レンズ47の先端部分にマスキングテープを貼着した状態で被覆層50を設け、マスキングテープを剥がすことによって光学的表示部32を設けてもよい。また、透光性を有する樹脂フィルムによって被覆層50を構成し、光学的表示部32と対応する部分以外に遮光性を有する油性インキを印刷して、光学的表示部32を設けてもよい。
【0067】
図10に最も明瞭に示すように、光学的表示部32の形状は、操作レバー30の機能に関連する文字状であり、本実施形態では「OPEN」という文字形状としている。但し、光学的表示部32の形状は、操作レバー30の機能に関連する図柄状であってもよい。
【0068】
このように構成された第2実施形態のラッチ解除装置20は、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、レバー本体30aに設けた遮光性を有する被覆層50以外の部分によって光学的表示部32が構成されているため、操作レバー30に対する光学的表示部32の位置が変位しない。よって、操作レバー30の外観を向上できる。しかも、光学的表示部32の形状は、操作レバー30の機能に関する文字状又は図柄状に形成されているため、ラッチ解除装置20の使用性を向上できる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、
図12に示すように、レンズ47は、先端面が可動カバー43の外面に位置する構成とし、二色成形によってレバー本体30aを、レンズ47と対向して透光性を有する光学的表示部32と遮光性を有する遮光部30eとを有する構成としてもよい。この場合でも、光学的表示部32の形状は、第2実施形態と同様に文字状又は図柄状に形成されてもよい。
【0071】
操作レバー30は、通常時に車幅方向内側に操作し、非常時に車幅方向外側に操作する構成であってもよい。また、操作レバー30は、通常時に車高方向下側に操作し、非常時に車高方向上側に操作する構成であってもよい。つまり、操作レバー30の操作方向は、通常時に中立位置から通常操作位置に操作可能で、非常時には中立位置から通常操作位置とは反対側の非常操作位置に操作可能な構成であればよい。
【0072】
可動カバー43を後退位置から進出位置に付勢する付勢部材は、スイッチ45が備えるスプリングであってもよい。
【0073】
回転軸33には、
図9に示す非常操作位置から
図7に示す中立位置に操作レバー30を付勢するキックバネ34(
図5参照)に加え、
図8に示す通常操作位置から
図7に示す中立位置に操作レバー30を付勢するキックバネが配置されてもよい。つまり、コイルスプリング44の代わりに通常操作位置から中立位置に復帰させる付勢部材を、操作レバー30の軸着部31に配置してもよい。また、操作レバー30を
図7に示す中立位置に保持できれば、付勢部材の種類や数等は必要に応じて変更が可能である。
【0074】
ラッチ解除装置20の操作レバー30とドアラッチ装置10の操作レバー19とは、ロッドによって機械的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車体
2 ストライカ
3 ドア
4 アウタパネル
5 インナパネル
6 エンドパネル
7 ECU
8 ケーブル
8a チューブ
8b アウタエンド
8c ワイヤ
8d インナエンド
10 ドアラッチ装置
11 ハウジング
12 ラッチ機構
13 フォーク
14 クロー
15 オープンレバー
16 リリース機構
17 アクチュエータ
18 作動部材
19 操作レバー
20 ラッチ解除装置
25 ベース部材
25a ベース板
26 凹部
26a 周壁
26b 底壁
26c 連通口
27 軸受部
27a 上壁
27b 下壁
27c 取付孔
27d 係止部
27e 保持部
28 取付部
28a ボス
30 操作レバー
30a レバー本体
30b 補強リブ
30c 貫通孔
30d リブ
30e 遮光部
31 軸着部
31a 上壁
31b 下壁
31c 側壁
31d 軸孔
31e 保持部
31f 上枠
31g 下枠
32 光学的表示部
33 回転軸
34 キックバネ(付勢部材)
34a 巻回部
34b 第1アーム
34c 第2アーム
35 操作空間
40 スイッチユニット
41 ケーシング
42 ケース本体
42a 外端壁
42b ネジ止め片
42c 係止溝
43 可動カバー(可動部)
43a 内端壁
43b 係止爪
43c 操作部
44 コイルスプリング(付勢部材)
45 スイッチ
45a 操作受部
46 LED(光源)
47 レンズ(導光部材)
47a レンズ本体
47b 突出部
48 回路基板
50 被覆層