(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022226
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】厚み計測方法、計測装置及び計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/08 20060101AFI20240208BHJP
G01B 21/20 20060101ALI20240208BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20240208BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20240208BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240208BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01B21/08
G01B21/20 C
G01B21/20 D
G01B21/00 E
G01B11/06 Z
G01B11/00 A
G01B11/24 A
G01B11/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125655
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】木坂 靖
【テーマコード(参考)】
2F065
2F069
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065AA60
2F065CC14
2F065FF05
2F065FF11
2F065QQ25
2F065QQ28
2F069AA04
2F069AA46
2F069AA66
2F069GG01
2F069GG04
2F069GG07
(57)【要約】
【課題】小さな計測誤差で簡易に被覆材の厚みを計測することができる厚み計測方法、計測装置及び計測プログラムを提供する。
【解決手段】厚み計測方法は、施工面を被覆する被覆材の厚みを計測する計測方法であって、被覆材に少なくとも1つの孔部を、施工面の一部が内底に露出するように被覆材を厚さ方向に貫通して設ける設置工程(P11)と、孔部を含めた被覆材の表面形状と孔部の内面形状とを測定して表面形状及び内面形状を取得する第1工程(P21)と、被覆材の表面と孔部の内面形状のうちの先端面との間隔から、被覆材の厚みを算出する算出工程(P31)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面を被覆する被覆材の厚みを計測する計測方法であって、
前記被覆材に少なくとも1つの孔部を、前記施工面の一部が内底に露出するように前記被覆材を厚さ方向に貫通して設ける設置工程と、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを測定して前記表面形状及び前記内面形状を取得する第1工程と、
前記被覆材の表面と前記孔部の内面形状のうちの内底面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程と、を備えることを特徴とする厚み計測方法。
【請求項2】
前記孔部の内面形状のうちの内底面形状を利用し、複数の前記孔部からそれぞれ得た内底面形状に基づいて、前記施工面の表面形状を取得する第2工程をさらに備え、
前記算出工程は、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項3】
前記孔部を、前記被覆材の表面に沿って伸びる溝状に設ける請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項4】
前記孔部を、3つ以上設ける請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項5】
前記被覆材がウレタンフォームである請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項6】
施工面を被覆する被覆材の厚みを計測する計測装置であって、
前記被覆材は、前記施工面の一部が内底で露出するように、前記被覆材を厚さ方向に貫通して設けられた少なくとも1つの孔部を備えるものとし、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データが入力される入力部と、前記点群データを利用した演算処理を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記点群データに基づき、前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状及び前記孔部の内面形状を取得し、
前記点群データから前記孔部の内底面形状の点群データを取得し、
前記被覆材の表面形状、及び前記孔部の内底面形状に基づき、前記被覆材の表面と前記孔部の内底面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことを特徴とする計測装置。
【請求項7】
前記演算部は、
前記孔部の内底面形状の点群データを用いて前記施工面の表面形状を算出し、
前記被覆材の表面形状、及び前記施工面の表面形状に基づき、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記入力部と接続され、前記被覆材の前記孔部を含めた表面形状と、前記孔部の内面形状とを測定し、それらを3次元座標の点群で表現した点群データを出力する測定装置をさらに備える請求項6に記載の計測装置
【請求項9】
請求項1に記載の厚み計測方法をコンピュータに実行させる計測プログラムであって、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データを取得するステップと、
前記点群データから前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状を取得するステップと、
前記点群データから少なくとも1つの前記孔部の内底面形状の点群データを選択して取得するステップと、
前記被覆材の表面形状と、前記孔部の内底面形状との間隔から、前記被覆材の厚みを算出するステップと、を備えることを特徴とする計測プログラム。
【請求項10】
少なくとも1つの前記孔部の内底面形状の点群データから前記施工面の表面形状を算出するステップと、
前記孔部の内面形状を位置の基準として、前記被覆材の表面形状及び前記施工面の表面形状を各々の位置に配置するステップと、をさらに備え、
前記被覆材の厚みを算出するステップが、前記被覆材の表面形状及び前記施工面の表面形状との間隔から算出される請求項9に記載の計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や家屋の壁等に設けられた施工面を断熱材等の被覆材で被覆する場合に、その被覆材の厚みを計測する計測方法、計測装置及び計測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルディングや家屋等の建築物には、壁、床、天井等に、吹付け工法による断熱構造を有しているものがある。吹付け工法は、壁等に設けられた施工面に対し、発泡樹脂等を吹き付けて固化させ、その発泡樹脂等が固化してなる被覆材で施工面を被覆する方法である。被覆材は、厚みにばらつきがあると断熱性能に悪影響を及ぼすことから、厚みを均等にするため、施工後に厚みの計測が行われる。
通常、被覆材の厚みの計測は、被覆材に針状の測定具を突き刺し、その測定具を用いて被覆材の複数個所で厚みを計測して行われるが、作業が煩雑なうえ、測定具の刺し方次第で計測結果が変わり、計測誤差が大きなものとなってしまう。このため、被覆材の厚みの計測方法として、特許文献1~3が提案された。
特許文献1には、対象部位に施工した被覆材の三次元形状を計測する方法が記載されている。この方法は、対象部位の三次元形状を含む施工前形状を取得する工程と、被覆材の表面の三次元形状を含む施工形状を取得する工程と、施工前形状と施工形状の位置合わせを行う工程と、施工前形状と施工形状から被覆材の表面および被覆材と対象部位との接触面からなる領域形状を算出する工程と、を備えている。
特許文献2には、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法が記載されている。この方法は、被覆材の表面の三次元座標、対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、被覆材の表面の三次元座標、等距離点の三次元座標及び基準三次元座標に基づいて被覆材の厚さを算出する工程と、を備えている。
特許文献3には、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法が記載されている。この方法は、被覆材の表面の三次元座標および対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、4点以上の基準三次元座標に基づいて対象面を推定した推定対象面形状を算出する工程と、被覆材の表面の三次元座標および推定対象面形状に基づいて被覆材の厚さを算出する工程とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-76585号公報
【特許文献2】国際公開第2020/179336号公報
【特許文献3】特開2021-152497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載された計測方法は、被覆材等の三次元形状や被覆材の表面等の三次元座標を取得するのに、3Dスキャナ等の測定器と基準マーカーを用いる。基準マーカーは、全体の長さが定められたピン状をなしており、その先端が対象面に達するように、被覆材に突き刺して使用される。
上記の計測方法は、被覆材に突き刺した基準マーカーについて、被覆材の表面から突出する分の長さを、全体の長さと対比することで、被覆材の厚みの計測を可能としている。よって、基準マーカーは、被覆材の厚みを正確に計測するため、その被覆材の厚さ方向に沿うように、突き刺す必要がある
基準マーカーを被覆材の厚さ方向に沿うように突き刺す場合、通常、基準マーカーの突き刺し方向が、被覆材の表面に対して垂直方向となるようにする方法が採用される。しかし、吹付け工法で設けられた被覆材の表面は、必ずしも平坦状になっておらず、凹凸状になっていることも多いため、基準マーカーを被覆材の表面に対して垂直方向に突き刺すことが難しく、計測誤差が大きくなる場合があった。また、計測誤差を小さくするために、水準器等の他の器具を使用して、基準マーカーの突き刺し方向の基準を定める方法も挙げられるが、この場合、作業の繁雑化と長時間化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、小さな計測誤差で簡易に被覆材の厚みを計測することができる厚み計測方法、計測装置及び計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1]本発明の厚み計測方法は、施工面を被覆する被覆材の厚みを計測する計測方法であって、
前記被覆材に少なくとも1つの孔部を、前記施工面の一部が内底に露出するように前記被覆材を厚さ方向に貫通して設ける設置工程と、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを測定して前記表面形状及び前記内面形状を取得する第1工程と、
前記被覆材の表面と前記孔部の内面形状のうちの内底面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程と、を備えることを要旨とする。
[2]本発明の厚み計測方法では、前記孔部の内面形状のうちの内底面形状を利用し、複数の前記孔部からそれぞれ得た内底面形状に基づいて、前記施工面の表面形状を取得する第2工程をさらに備え、
前記算出工程は、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことができる。
[3]本発明の厚み計測方法では、前記孔部を、前記被覆材の表面に沿って伸びる溝状に設けることができる。
[4]本発明の厚み計測方法では、前記孔部を、3つ以上設けることができる。
[5]本発明の厚み計測方法では、前記被覆材がウレタンフォームであるものとすることができる。
[6]本発明の計測装置は、施工面を被覆する被覆材の厚みを計測する計測装置であって、
前記被覆材は、前記施工面の一部が内底で露出するように、前記被覆材を厚さ方向に貫通して設けられた少なくとも1つの孔部を備えるものとし、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データが入力される入力部と、前記点群データを利用した演算処理を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記点群データに基づき、前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状及び前記孔部の内面形状を取得し、
前記点群データから前記孔部の内底面形状の点群データを取得し、
前記被覆材の表面形状、及び前記孔部の内底面形状に基づき、前記被覆材の表面と前記孔部の内底面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことを要旨とする。
[7]本発明の計測装置では、前記演算部は、
前記孔部の内底面形状の点群データを用いて前記施工面の表面形状を算出し、
前記被覆材の表面形状、及び前記施工面の表面形状に基づき、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出することができる。
[8]本発明の計測装置では、前記入力部と接続され、前記被覆材の前記孔部を含めた表面形状と、前記孔部の内面形状とを測定し、それらを3次元座標の点群で表現した点群データを出力する測定装置をさらに備えることができる。
[9]本発明の計測プログラムは、[1]に記載の厚み計測方法をコンピュータに実行させる計測プログラムであって、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データを取得するステップと、
前記点群データから前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状を取得するステップと、
前記点群データから少なくとも1つの前記孔部の内底面形状の点群データを選択して取得するステップと、
前記被覆材の表面形状と、前記孔部の内底面形状との間隔から、前記被覆材の厚みを算出するステップと、を備えることを要旨とする。
[10]本発明の計測プログラムでは、少なくとも1つの前記孔部の内底面形状の点群データから前記施工面の表面形状を算出するステップと、
前記孔部の内面形状を位置の基準として、前記被覆材の表面形状及び前記施工面の表面形状を各々の位置に配置するステップと、をさらに備え、
前記被覆材の厚みを算出するステップが、前記被覆材の表面形状及び前記施工面の表面形状との間隔から算出されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際の施工面と被覆材の表面のデータを基準として被覆材の厚み測定を行うため、算出した厚みと実際の厚みとの誤差が少なく、被覆材全体の厚みの測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】厚み計測方法の実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】設置工程における被覆材を示す斜視図である。
【
図3】第1工程と計測装置を説明する説明図である。
【
図4】(a)は第2工程を説明する説明図、(b)は算出工程を説明する説明図である。
【
図6】計測プログラムの実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構成的な詳細を示すことを意図しておらず、本説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
なお、以下の説明で方向をいう場合、各図中に矢印で示したx、y、zを基準として、x方向は縦方向、y方向は横方向、z方向は厚さ方向とする。
また、厚さ方向においては、z方向を先端側、z方向と逆方向を基端側とする。
【0010】
〔1〕厚み計測方法
本発明の厚み計測方法は、施工面を被覆する被覆材の厚みを計測する計測方法であって、
前記被覆材に少なくとも1つの孔部を、前記施工面の一部が内底に露出するように前記被覆材を厚さ方向に貫通して設ける設置工程(P11)と、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを測定して前記表面形状及び前記内面形状を取得する第1工程(P21)と、
前記被覆材の表面と前記孔部の内面形状のうちの内底面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程(P31)と、を備えることを特徴とする(
図1参照)。
【0011】
厚み計測方法は、被覆材の厚みを計測する方法であり、その被覆材は、作業現場等において施工面に施工されることによって、その施工面を被覆するものである。
施工面は、被覆材で被覆されるものであれば、特に限定されないが、通常、ビルディングや家屋等といった建築物の壁、床、天井、屋根、屋上等に設けることができる。また、施工面は、建築物に限らず、船舶、航空機、鉄道車両、自動車の壁、床、天井等や、冷蔵庫、冷凍庫等の電気製品の壁等に設けることもできる。
【0012】
被覆材は、上述の施工面を被覆するものであれば、特に限定されないが、例えば、断熱材、防湿材、不燃材、吸音材、遮音材、遮熱材、耐火材、防水材、化粧材等を挙げることができる。施工面が建築物の壁等に設けられる場合、通常、被覆材としては、断熱材等として用いられるウレタンフォーム、耐火材等として用いられるロックウール、防水材や化粧材等として用いられるウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリルゴム等を挙げることができる。
上述した中でもウレタンフォーム、特に、吹付け工法により施工される硬質ウレタンフォーム(例えば、JIS A9526に規定の硬質ウレタンフォーム)は、均一な厚みに施工することが難しい一方で、断熱性能等を好適に発揮するために均等な厚みにすることが要求されることから、本発明の厚み計測方法における計測対象として有用である。
なお、以下の文中では、特にことわりがない限り、施工面は、建築物の壁に設けられるものとし、被覆材は、吹付け工法で施工される硬質ウレタンフォームであるものとする。
【0013】
以下、厚み計測方法が備える各工程について説明する。
(1)設置工程
厚み計測方法が備える設置工程(P11)は、施工面を被覆する被覆材に孔部を設ける工程である(
図1参照)。
孔部は、本発明の厚み計測方法において、計測の基準とされるものであり、被覆材に少なくとも1つ設けられる。
【0014】
設置工程において、孔部13は、被覆材12を厚さ方向に貫通して設けられる(
図2参照)。この孔部13は、先端となる内底に施工面11の一部が露出しており、基端が被覆材12の表面で外側へ向けて開口している。
即ち、孔部13は、被覆材12の表面12Aにおいて外側に向けて開放された基端開口13Aと、孔部13の内側に露出する施工面11の一部からなる内底面13Bとを有している。この孔部13は、施工面11が被覆材12で被覆された状態であっても、基端開口13Aから内底面13Bを測定等することにより、施工面11の計測等を可能にするものである。
設置工程における孔部13の形成方法は、特に限定されない。通常、孔部13の形成方法として、ホールソー等の工具を用い、被覆材12の一部をくり抜き、孔部13を形成する方法を挙げることができる。他の形成方法として、例えば、施工面に孔部形状のマスキングを施し、吹付け工法で被覆材であるウレタンフォームを施工した後、マスキングを取り外して、孔部を形成する方法を挙げることができる。
【0015】
被覆材12に設ける孔部13の個数は、1個以上であれば特に限定されないが、3個以上とする場合、複数の孔部13の内底面13B形状に基づいて施工面11の表面形状を取得することができ、厚み計測における正確性の向上を図ることができる。
孔部13を複数設ける場合、孔部13同士の位置関係は、特に限定されない。通常、孔部13同士の位置関係は、縦方向(x方向)及び横方向(y方向)のうち少なくとも何れか1方向でそれらの方向に沿って複数が並ぶ位置とすることができる。また、4つの孔部13を被覆材12の表面12Aの四隅の角部に設けたり、複数の孔部13を被覆材12の表面12Aで周縁に沿う位置に設けたりすることにより、孔部13同士の位置関係を、施工面11の外周に沿って並ぶ位置とすることができる。
孔部13を複数設ける場合、孔部13同士の間隔は、特に限定されない。具体的に、孔部13同士の間隔は、互いの基端開口13Aの中心の間の長さで0.1m以上10m以下とすることができる。孔部13同士の間隔は、好ましくは0.3m以上7m以下、より好ましくは1m以上5m以下とすることができる。
【0016】
孔部13の基端開口13A及び内底面13Bの外形形状は、特に限定されない。それらの外形形状は、通常、円形とすることができる。また、外形形状は、円形以外に、例えば、楕円形や、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形などとすることができる。
孔部13は、縦方向(x方向)又は横方向(y方向)における断面の外形形状について、特に限定されないが、通常、相互対向して厚さ方向(z方向)に伸びる両面が互いに平行な形状、例えば、長方形、正方形、ひし形、平行四辺形等とすることができる。また、断面の外形形状は、相互対向して厚さ方向(z方向)に伸びる両面が、先端側又は基端側へ向かうほど互いに接近するテーパー形状とすることもできる。
さらに、孔部13は、例えば、基端開口13A及び内底面13Bの外形形状を長方形等とすることにより、被覆材12の表面に沿って伸びる溝状とすることができる(
図5参照)。孔部13を溝状とする場合、内底面13Bの面積が広がることで、施工面11の計測域を広げることができ、厚み計測における計測誤差を抑えることができる。
【0017】
孔部13において、基端開口13Aのサイズは、特に限定されず、内底面13Bである施工面11の計測等が可能なサイズとすることができる。この基端開口13Aのサイズは、基端開口13Aの外形形状に応じて定めることができる。
外形形状が円形の場合、直径で10mm以上200mm以下とすることができる。外形形状が楕円形や多角形の場合、最長幅で10mm以上200mm以下とすることができる。
直径又は最長幅は、好ましくは30mm以上100mm以下、より好ましくは50mm以上70mm以下とすることができる。
【0018】
孔部13において、基端から先端に向かう伸び方向は、特に限定されないが、通常、被覆材12の厚さ方向(z方向)に沿う方向、換言すると厚さ方向(z方向)に真っ直ぐな方向とすることができる。この厚さ方向に沿う方向とは、被覆材12の表面に対して垂直方向ともいうことができる。即ち、孔部13は、基端から先端に向かう伸び方向を、被覆材12の表面に対して垂直方向とすることができる。
また、孔部13において、基端から先端に向かう伸び方向は、厚さ方向(z方向)に対して斜め方向とすることもできる。孔部13の伸び方向を厚さ方向(z方向)に対して斜め方向とする場合には、基端開口13Aから内底面13Bである施工面11の計測等が可能な方向とすることが好ましい。
具体的に、孔部13の伸び方向は、厚さ方向(z方向)との間の角度が好ましくは0度以上30度以下、より好ましくは0度以上20度以下、さらに好ましくは0度以上10度以下となる方向とすることができる。
【0019】
(2)第1工程
厚み計測方法が備える第1工程(P21)は、孔部を含めた被覆材の表面形状と、孔部の内面形状とを取得する工程である(
図1参照)。
具体的に、第1工程は、
図3に示すように、測定装置21を使用し、孔部13を含めた被覆材12の表面形状と、孔部13の内面形状とを走査し、それら形状を取得することによって実行される。
上述したように、孔部13は、その内側に露出する施工面11の一部からなる内底面13Bを有している。つまり、第1工程は、取得した孔部13の内面形状に含まれる内底面13Bの形状について、これを施工面11の一部の表面形状として取得する工程であるともいうことができる。
【0020】
測定装置21は、被覆材12の表面形状等を測定可能なものであれば、特に限定されない。測定装置21としては、3Dスキャナ、ステレオカメラ等を挙げることができる。
3Dスキャナとしては、LIDAR(ライダ)方式のもの、TOF方式のもの等を挙げることができる。LIDAR方式とは、パルス状に発光するレーザー光を測定対象面に照射し、その散乱光を測定して、測定対象面までの距離等に基づき測定対象面の3次元座標を算出する方式である。TOF方式は、センサからパルス状に投光されたレーザー光がセンサ内の受光素子に戻るまでの時間を計測し、その時間を測定対象面までの距離に換算して、測定対象面までの距離等に基づき測定対象面の3次元座標を算出する方式である。
ステレオカメラは、通常、2台のカメラによって測定対象面を撮像し、それらの画像から三角測量の原理に基づき、測定対象面までの距離を算出し、その距離に基づいて測定対象面の3次元形状を算出するものである。なお、ステレオカメラは、アクティブステレオ方式の場合、2台のうちの1台を、パターン光を投影するプロジェクターとしており、この場合、1台のカメラで3次元形状を算出することができる。
【0021】
上述の3Dスキャナ、ステレオカメラの何れも測定装置21として使用可能であるが、3Dスキャナは、測定対象面の3次元座標を算出し、これをデータとして種々の利用ができることから、厚み計測方法に用いる測定装置21として有用である。
測定装置21に3Dスキャナを使用する場合、算出した3次元座標は、被覆材12の表面上における任意の点の位置及び孔部13の内面上における任意の点の位置を、3次元直交座標系の立体的な座標値で示すことができる。よって、3次元座標によって示される点を複数集合させることにより、被覆材12の表面形状及び孔部13の内面形状を算出することができる。
【0022】
3次元座標のデータ形式は、そのデータを利用する計測装置30が処理可能なものであれば、特に限定されない。
データ形式として、例えば、(x,y,z) の3次元直交座標系の座標値の集合からなる点群データ、測定対象の外面のみの集合体からなるメッシュデータ、測定対象の内部の情報を含む測定対象全体をボクセルで構成してなるボリュームデータ等を挙げることができる。
これらの中でも点群データは、汎用性が高く、種々の用途、目的で利用可能であることから、厚み計測方法で用いる3次元座標のデータ形式として有用である。
【0023】
(3)第2工程
厚み計測方法は、上述の第1工程(P21)に加え、施工面の表面形状の要否(P22)に応じて、第2工程(P23)をさらに備えることができる(
図1参照)。
第2工程(P23)は、施工面の表面形状を取得する工程である。
【0024】
即ち、第1工程(P21)では、取得した孔部の内面形状に含まれる内底面の形状により、施工面の一部の表面形状を取得することができる。このため、施工面の一部の表面形状を利用することにより、施工面の表面形状を要さず(P22;no)、被覆材の厚みを算出することができる。
一方、第1工程の後、施工面の表面形状を要する場合(P22;yes)には、第2工程で施工面の表面形状を取得し、これを利用して被覆材の厚みを算出することができる。
【0025】
施工面の表面形状を要する場合について、その理由としては、厚み計測方法における計測結果を可視化する、計測の正確性を向上させる等を挙げることができる。
例えば、多くの場合、施工面は平坦状であるから、この場合、施工面11の一部の表面形状を利用して、被覆材の厚みを算出することができる。
一方、壁等の内側に配管が敷設されている、壁同士が突き合わされている等の場合、施工面は凹凸状等となり、この場合、施工面の一部の表面形状を利用して被覆材の厚みを算出すると、誤差が生じやすくなるから、施工面の表面形状が必要とされる。
【0026】
第2工程において、施工面の表面形状を取得する場合、複数の孔部を用い、それぞれの内面形状のうちの内底面形状を利用し、複数の内底面形状に基づいて、施工面の表面形状を算出する。
具体的に、第2工程は、電子計算機(コンピュータ)である計測装置30を使用し、上述の第1工程で取得した孔部13の内面形状のうち内底面13Bの形状を利用して、施工面11の表面形状を算出することにより、実行される(
図3参照)。
即ち、孔部13の内底面13Bの形状は、施工面11の一部の表面形状であることから、これを利用し、複数(少なくとも3つ以上)の孔部13を用い、それぞれの内底面13Bの形状である施工面11の一部の表面形状から、施工面11の表面形状を推定することにより、施工面11の表面形状を算出することができる。
【0027】
図4(a)に示すように、被覆材12に設けられた複数(
図4(a)中では4つ)の孔部13は、第1工程で各々の内面形状が取得されており、それら内面形状には、各孔部13の内底面13Bの形状が含まれている。
例えば、第1工程で使用された測定装置21が3Dスキャナの場合、各孔部13の内面形状は、3次元座標の集合からなる点群データ等として取得されており、こうした点群データ等の中には、各孔部13の内底面13Bの形状に該当する点群データ等が含まれている。
【0028】
施工面11の表面形状を取得する場合には、各孔部13の内面形状から、内底面13Bの形状がそれぞれ選択、抽出される。その抽出は、具体的に、孔部13の内面形状に係る点群データ等から、内底面13Bの形状に該当する点群データ等を選択して実行される。
各孔部13の内底面13Bの形状を抽出した後、これら内底面13Bの形状を基準とし、複数の内底面13Bの形状から推定される推定面11Aの形状が算出される。具体的には、複数の内底面13Bによって囲まれた内側において、各内底面13Bの位置情報(点群データ等)を含む推定面11Aが推定され、その推定面11Aの形状が算出される。
【0029】
第2工程では、上述の推定面11Aを施工面11と見做し、算出された推定面11Aの形状を、施工面11の表面形状として取得することができる。
施工面11の表面形状を取得する際、孔部13の内面形状からの内底面13Bの形状の選択は、作業者が手動で内底面13Bの位置を指示することができ、あるいは、コンピュータ(電子計算機)の演算部やデータ処理部に自動的に認識させることができる。
【0030】
複数の内底面13Bの形状から推定面11Aの形状を推定して算出する場合、例えば、複数の内底面13Bが略同一の平面に存在するのであれば、複数の内底面13Bの3次元座標による点群データ等から、最小二乗法で3次元座標に対する最小二乗平面を求める等の既知の手法を用いて平均面を算出し、その平均面を推定面11Aとして、推定面11Aの形状を算出することができる。
あるいは、3次元座標による点群データ等から上述の既知の手法を用いて内底面13B毎に平均面を算出し、複数の平均面を3次元座標に基づきフィッティングし、組み合わせて推定面11Aとし、推定面11Aの形状を算出することができる。
【0031】
(4)算出工程
厚み計測方法が備える算出工程は、被覆材の厚みを算出する工程である(
図1参照)。
この算出工程は、電子計算機(コンピュータ)である計測装置30を使用し、上述の第1工程で取得した被覆材12の表面形状と孔部13の内面形状、あるいは、第1工程で取得した形状等に加えて第2工程で取得した施工面11の表面形状を利用して、被覆材12の厚みTを算出することにより、実行される。
【0032】
具体的に、算出工程は、
図4(b)に示すように、被覆材12の表面12Aと、孔部13の内底面13B(施工面11の一部の表面)との間隔から、被覆材12の厚みTを算出することができる。
即ち、第1工程では、被覆材12の表面形状に関し、3次元座標による点群データを取得しており、孔部13において、施工面11の一部の表面からなる内底面13Bを含めた内面形状に関し、3次元座標による点群データを取得している。
よって、取得した3次元座標を利用することにより、
図4(b)に示すように、被覆材12の表面12Aと孔部13の内底面13Bとの位置関係から、互いの間隔を算出することができ、その算出された間隔を被覆材12の厚みTと見做して、厚みTを計測することができる。
【0033】
算出工程は、上述の第2工程で施工面11の表面形状を取得している場合、被覆材12の表面12Aと、施工面11との間隔から、被覆材12の厚みTを算出することができる。
即ち、第2工程では、施工面11の表面形状に関し、3次元座標を取得することができ、その取得した3次元座標を利用することにより、
図4(b)に示すように、被覆材12の表面12Aと施工面11との位置関係から、互いの間隔を算出することができ、その算出された間隔を被覆材12の厚みTと見做して、厚みTを計測することができる。
【0034】
第1工程で取得した孔部13の内底面13Bを施工面11の一部の表面として、被覆材12の厚みTを算出する場合、内底面13Bの3次元座標による点群データ等から既知の手法を用いて平均面を算出し、その平均面を仮想的な施工面11とすることができる。
そして、被覆材12の表面12Aと仮想的な施工面11との位置関係から、互いの間隔を算出することができ、その算出された間隔を被覆材12の厚みTと見做して、厚みTを計測することができる。
【0035】
3次元座標を利用して被覆材12の表面12Aと、内底面13Bや施工面11や仮想的な施工面11等との間隔を算出する場合、その間隔の算出は、被覆材12の表面の全域の点にわたって実行することができる。
即ち、被覆材12の表面の任意の点について、その点における間隔は、当該点と縦方向(x方向)及び横方向(y方向)の座標値が一致する点を、内底面13Bや施工面11や仮想的な施工面11の表面形状に関する3次元座標中から抽出し、当該点と、その抽出された点との厚さ方向(z方向)における座標値の差異から、算出することができる。
【0036】
上述した被覆材12の表面の全域の点にわたる間隔の算出は、施工面11や仮想的な施工面11の場合、被覆材12の表面の全域の点で座標値の差異を算出することにより、実質的に実行することができる。
また、内底面13Bの場合、被覆材12の表面の一部の点で間隔を算出し、その一部の点を基準として、被覆材12の表面の全域の点について偏差を算出する等することにより、仮想的に実行することができる。
そして、被覆材12の表面の全域の点にわたって間隔を算出することにより、被覆材12の全体の厚みTを、その表面12Aの凹凸形状を含めて、取得することができ
【0037】
(5)その他
厚み計測方法は、上述の算出工程の後、さらに以下の工程を備えることができる。
算出工程において、被覆材12の全体の厚みTを、その表面12Aの凹凸形状を含めて、取得した場合、当該表面12Aにおける凹凸の分布を着色又は濃淡で示した画像で表示する画像表示工程を備えることができる。この場合、被覆材12の表面12Aの凹凸を可視化することで、その凹凸を容易に認識することができる。
被覆材12の厚みTに関して、その範囲が規定されている場合、当該厚みTが範囲外である個所を施工不良個所として、その施工不良個所を示した画像を表示する不良表示工程を備えることができる。通常、被覆材12の厚みTは、被覆材12がウレタンフォームの場合、施工する条件に合わせて10mm以上500mm以下に設定することができる。
不良表示工程を備える場合、施工する被覆材の厚みTと、厚みTの許容範囲(例えば、厚みTに対し、±10mm、0~+10mm等)を設定し、厚みTが規定された範囲(又は許容範囲)に満たない、あるいは規定された範囲(又は許容範囲)を超える施工不良個所を、容易に把握することができる。
不良表示工程において、施工不良個所は、着色などで厚みが不足する個所や厚みが超える個所を視覚的に確認できるようにすることができる。
また、不良表示工程において、被覆材12の厚みTの施工不良個所の結果は、プロジェクターなどを利用し、被覆材12の表面12Aに、直接的に実寸で投影することができる。この場合、施工された被覆材12の表面12Aにおいて、施工不良個所を直接的に認識することができることから、施工不良個所の修正を簡潔かつ的確に行うことができる。
設置工程で被覆材12に設けられた孔部13を埋め戻す、及び/又は、被覆材12の表面12Aにおける凹凸や施工不良個所を埋める、削る等することにより、被覆材12の表面12Aを仕上げる仕上げ工程を備えることができる。この場合、被覆材12を所定の厚みで仕上げることができる。
【0038】
〔2〕計測装置
本発明の計測装置は、施工面を被覆する被覆材の厚みを計測するものであって、
前記被覆材は、前記施工面の一部が内底で露出するように、前記被覆材を厚さ方向に貫通して設けられた少なくとも1つの孔部を備えるものとし、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データが入力される入力部と、前記点群データを利用した演算処理を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記点群データに基づき、前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状及び前記孔部の内面形状を取得し、
前記点群データから前記孔部の内底面形状の点群データを取得し、
前記被覆材の表面形状、及び前記孔部の内底面形状に基づき、前記被覆材の表面と前記孔部の内底面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことを特徴とする。
【0039】
図3には、具体例としての計測装置のブロック図を示す。
計測装置30は、被覆材12の厚みを計測するものであり、本発明の厚さ計測方法及び計測プログラムを実行するべく、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を備える電子計算機(コンピュータ)を用いることができる。
計測装置30に用いることができる電子計算機として、例えば、パーソナルコンピューターや、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末を挙げることができる。
【0040】
計測装置30は、入力部31と、演算部32とを備えている。
入力部31は、孔部13を含めた被覆材12の表面12Aの形状と、孔部13の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データを、入力するためのものである。
入力部31は、点群データの入力が可能であれば、特に限定されないが、具体例として、測定装置21等を接続するためのUSB端子等の接続装置、測定装置21等と通信を行う無線LAN等による通信装置、記憶ストレージに記憶されたデータを読み出すリーダ装置、キーボードやタッチパネル等の入力装置などを用いることができる。
【0041】
演算部32は、入力部31から入力された点群データを利用して、本発明の厚さ計測方法及び計測プログラムの実行に関する演算処理を行うためのものである。
演算部32は、点群データの利用及び演算処理の実行のために、記憶部321とデータ処理部322とを備えている。
記憶部321は、入力部31から入力された点群データを記憶するものであり、例えば、SSD、HDD、EEPROM等といった周知の記憶装置を用いることができる。
データ処理部322は、演算処理に際し、記憶部321に記憶された点群データを読み込み、必要となるデータの抽出、選択、加工等を実行するものであり、RAM等のメモリとCPU等のプロセッサなどを用いることができる。
【0042】
演算部32は、記憶部321とデータ処理部322を利用して、本発明の厚さ計測方法、特に厚さ計測方法の第1工程と算出工程を実行するために、演算処理を行う。
即ち、演算処理に際して、演算部32は、孔部13を含めた被覆材12の表面12Aの形状、及び孔部13の内面形状を、3次元座標による点群データとして、記憶部321を利用し取得する。
演算部32は、データ処理部322を利用し、記憶部321から取得した点群データの中から、孔部13の内底面13Bの形状に関する点群データを選択、抽出し、これを取得する。
そして、演算部32は、被覆材12の表面12Aの形状に関する点群データと、内底面13Bの形状に関する点群データとを利用し、3次元座標に基づき、被覆材12の表面12Aと内底面13Bとの間隔を演算し、その間隔を被覆材12の厚みTとして算出する。
【0043】
また、演算部32は、厚さ計測方法の第1工程と算出工程に加え、さらに第2工程を実行するために、演算処理を行うことができる。
この場合、演算部32は、取得した孔部13の内底面13Bの形状に関する点群データを利用し、複数の孔部13の内底面13Bの形状に関する点群データから、3次元座標に基づき、既知の手法を用いることにより、複数の内底面13Bの平均面である推定面11Aを演算することができる。
演算部32は、この推定面11Aを施工面11とし、施工面11の表面形状に関する3次元座標のデータを算出することができる。この算出された施工面11の表面形状に関する3次元座標のデータ形式は、特に限定されず、例えば、3次元座標を示す関数データとすることができる。
そして、演算部32は、被覆材12の表面12Aの形状に関する点群データと、施工面11の表面形状に関する3次元座標のデータとを利用し、3次元座標に基づき、被覆材12の表面12Aと施工面11との間隔を演算し、その間隔を被覆材12の厚みTとして算出することができる。
【0044】
上述した演算部32は、記憶部321とデータ処理部322に加え、3Dモデル形成部323をさらに有することができる。
3Dモデル形成部323は、上述の点群データや関数データから、3次元座標に基づき、対象を立体化した3Dモデルを形成するためのものである。
即ち、演算部32は、3Dモデル形成部323を有する場合、被覆材12の表面12Aの形状、孔部13の内面形状、孔部13の内底面13Bの形状、施工面11の表面形状等について、3次元座標に基づき、それらを立体化した3Dモデルにより、可視化することができる。
【0045】
上述の計測装置30は、入力部31と演算部32に加え、出力部33をさらに備えることができる。出力部33は、演算部32による演算結果や算出結果等を出力するためのものであり、上述の接続装置や通信装置等を用いることができる。
また、被覆材12の表面12Aの形状、孔部13の内面形状、孔部13の内底面13Bの形状、施工面11の表面形状等を立体化した3Dモデルにより可視化する場合、出力部33にディスプレイ34を接続し、作業者等が3Dモデルを視認できるようにすることができる。
さらに、3Dモデルは、そのデータを変換等することにより、3次元CADデータを取得することができる。3次元CADデータを取得した場合、そのデータを取り込んだ3次元CADを利用することにより、施工現場の建物等の3Dモデル上において、施工箇所に被覆材の3Dモデルを配置して表示することができ、建物等の3Dモデル上での被覆材の厚みの表示や表示内容の編集を行うことができる。
【0046】
計測装置30は、入力部31を利用することにより、被覆材12の厚みTの範囲を、演算部32の記憶部321等に記憶させることができる。
この場合、計測装置30は、記憶された被覆材12の厚みTの範囲に基づき、算出された被覆材12の厚みが範囲内であるか範囲外であるかを判断することができる。そして、計測装置30は、被覆材12の厚みが範囲外である場合に、出力部33に接続されたディスプレイ34に、被覆材12の表面12Aで厚みが範囲外となる部位を可視化して表示させることができる。
範囲外となる部位を可視化する方法は、特に限定されないが、例えば、当該部位を着色する、当該部位について他の個所と濃淡を変更する等を挙げることができる。
【0047】
計測装置30は、測定装置21をさらに備える構成とすることができる。
この測定装置21は、被覆材12の孔部13を含めた表面12Aの形状と、孔部13の内面形状とを測定し、それらを3次元座標の点群で表現した点群データを出力するものであり、具体例として、上述の3Dスキャナを挙げることができる。
計測装置30が測定装置21を備える場合、通常、測定装置21は、計測装置30の入力部31と接続される構成とすることができる。あるいは、測定装置21は、上述した計測装置30が奏する機能を搭載されたものとすることができ、この場合、計測装置30としても用いることができる。
【0048】
〔3〕計測プログラム
本発明の計測プログラムは、本発明の厚み計測方法をコンピュータに実行させるプログラムであり、
前記孔部を含めた前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データを取得するステップ(S211)と、
前記点群データから前記被覆材の表面形状と前記孔部の内面形状を取得するステップ(S212)と、
前記点群データから少なくとも1つの前記孔部の内底面形状の点群データを選択して取得するステップ(S213)と、
前記被覆材の表面形状と、前記孔部の内底面形状との間隔から、前記被覆材の厚みを算出するステップ(S31)と、を備えることを特徴とする(
図6参照)。
【0049】
図6は、計測プログラムの具体例を示すフローチャートである。
計測プログラムのステップ(S211)では、孔部を含めた被覆材の表面形状と、孔部の内面形状とを3次元座標の点群で表現した点群データが取得される。このステップ(S211)は、厚さ計測方法の第1工程に係るステップであり、測定対象を被覆材の表面と孔部の内面とした、3Dスキャナ等の測定装置による測定結果が、上述の計測装置等に入力され、記憶されることにより実行することができる。
ステップ(S212)では、先のステップ(S211)で取得された点群データから、被覆材の表面形状と、孔部の内面形状が取得される。このステップ(S212)は、厚さ計測方法の第1工程に係るステップであり、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
【0050】
ステップ(S213)では、先のステップ(S212)で取得された孔部の内面形状に関する点群データの中から、孔部の内底面の形状に関する点群データが選択され、取得される。また、ステップ(S213)では、孔部に係るデータとして複数が取得されている場合、少なくとも1つの孔部に係るデータが選択されて取得される。このステップ(S213)は、厚さ計測方法の第1工程に係るステップであり、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
【0051】
ステップ(S31)では、被覆材の厚みが算出される。このステップ(S31)は、厚さ計測方法の算出工程に係るステップであり、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
ステップ(S31)において、被覆材の厚みは、先のステップ(S211)で取得された被覆材の表面形状と、先のステップ(S213)で取得された孔部の内底面の形状とを利用することにより、算出することができる。
つまり、ステップ(S31)では、被覆材の表面形状に係る3次元座標と、内底面の形状に係る3次元座標とに基づき、互いの3次元座標から被覆材の表面と内底面との間隔を算出して、その間隔が被覆材の厚みとして取得される。
【0052】
上述の計測プログラムは、少なくとも1つの孔部の内底面形状の点群データから施工面の表面形状を算出するステップ(S231)と、孔部の内面形状を位置の基準として、被覆材の表面形状及び施工面の表面形状を各々の位置に配置するステップ(S232)と、をさらに備えることができる。
即ち、計測プログラムは、ステップ(S211)の後、施工面の表面形状の要否を判断するステップ(S22)を備えることができる。ステップ(S22)において、施工面の表面形状の要否が「否」と判断された場合(S22;no)、ステップ(S31)が実行される。一方、ステップ(S22)において、施工面の表面形状の要否が「要」と判断された場合(S22;yes)、ステップ(S231)が実行される。
なお、施工面の表面形状の要否が最初から決められている場合、ステップ(S22)は省略することができる。この場合、ステップ(S211)から、次のステップとしてステップ(S231)やステップ(S31)へ進むようにしてもよい。
【0053】
ステップ(S231)及びステップ(S232)は、厚さ計測方法の第2工程に係るステップである。
ステップ(S231)では、施工面の表面形状が算出される。このステップ(S231)は、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。即ち、ステップ(S231)は、複数の孔部について、それぞれの内底面の形状に関する点群データを利用し、複数の内底面の平均面である推定面を演算し、当該推定面を施工面として、施工面の表面形状として3次元座標を示す関数データ等を算出することができる。
【0054】
ステップ(S232)では、先のステップ(S212)で取得された被覆材の表面形状と、ステップ(S231)で取得された施工面の表面形状とが、各々の位置に配置される。このステップ(S231)は、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
ステップ(S232)における配置は、孔部の内面形状を位置の基準として実行することができる。
つまり、孔部は、基端開口が被覆材の表面上に位置しており、内底面が施工面上に位置している。従って、基端開口と内底面に関する3次元座標を基準とすることにより、被覆材の表面形状と、施工面の表面形状とを略正確な位置関係に配置することができる。
【0055】
ステップ(S232)の後に実行されるステップ(S31)では、被覆材の表面形状と、施工面の表面形状と利用することにより、被覆材の厚みを算出することができる。
つまり、ステップ(S31)では、被覆材の表面形状に係る3次元座標と、施工面の表面形状に係る3次元座標とに基づき、互いの3次元座標から被覆材の表面と施工面との間隔を算出して、その間隔が被覆材の厚みとして取得される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
建築分野において、ウレタンフォーム等の被覆材を、壁等の施工面へ吹付けた際、本発明の使用により、被覆材の厚みを小さな計測誤差で簡易に計測することができる。
【符号の説明】
【0057】
11;施工面、11A;推定面、
12;被覆材、12A;表面、
13;孔部、13A;基端開口、13B;内底面、
21;測定装置、
30;計測装置、31;入力部、32;演算部、321;記憶部、322;データ処理部、323;3Dモデル形成部、33;出力部、34;ディスプレイ。